以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係るドアインサイドハンドル装置(1,2)が装着される車両ドアDRの一例を、この車両ドアDRが取り付けられた車両の車室側(内方)から見た図である。図1において、左右方向が車両前後方向、右方が車両前方、左方が車両後方である。図1に示す車両ドアDRは、車体(図示略)に対して上下方向に沿った回転軸L1まわりにヒンジ等を介して回転可能に車体に支持される。また、車両ドアDRは、車体の側面に形成された乗降用の開口を閉鎖し得る位置に配設される。車両ドアDRは、乗降用の開口を閉塞している閉鎖位置から、乗降用の開口が開かれている所定の開放位置まで、回転軸L1を中心として揺動することができるように構成される。つまり、車両ドアDRは、乗降用の開口を開閉可能に構成される。
車両ドアDRは、ドア本体部BDとフレーム部FLを備える。ドア本体部BDは、図1に示す方向から見て略長方形状に形成される。ドア本体部BDは、所定の距離を隔てて対面したインナパネルとアウタパネルを備える箱状部材であり、両パネル間に形成された空間に、ウィンドウレギュレータ装置、後述するドアロック装置、補強用のビーム等の様々な部品が収容される。車両ドアDRが閉鎖位置にあるとき、アウタパネルがドア本体部BDの外壁を構成し、インナパネルがドア本体部BDの内壁を構成する。インナパネルの車内側に面する面には樹脂製のドアトリム等が貼付されていてもよい。図1には、車両ドアDRのインナパネルIPが図示されており、ドアトリムは省略されている。
フレーム部FLはドア本体部BDの上部に設けられており、立柱部FL1及びアッパー部FL2を有する。立柱部FL1はドア本体部BDの車両後方端から上方に延設される。アッパー部FL2は、ドア本体部BDの車両前方端側の上面から立柱部FL1の上端まで湾曲状に延設される。
ドア本体部BD内にはドアロック装置DLが収容される。ドアロック装置DLは、ラッチ、ポールを備える周知構造の装置であり、車両ドアDRの施開錠(ロック・アンロック)を行うことができるように構成される。この目的を達成するために、ドアロック装置DLは、ロック状態及びアンロック状態、という2つの施解錠作動状態を採り得るように構成される。ドアロック装置DLの施解錠作動状態がロック状態であるとき、閉鎖位置にある車両ドアDRが施錠される。ドアロック装置DLの施解錠作動状態がアンロック状態であるとき、閉鎖位置にある車両ドアDRが開錠される。
また、ドアロック装置DLは、その施解錠作動状態がアンロック状態であるとき、閉鎖位置にある車両ドアDRの閉鎖状態を維持し、或いは閉鎖位置にある車両ドアDRを開放することができるように構成される。この目的を達成するために、ドアロック装置DLは、オープン状態、クローズ状態、という2つの開閉作動状態を採り得るように構成される。ドアロック装置DLの施解錠作動状態がアンロック状態であり且つ開閉作動状態がオープン状態であるとき、閉鎖位置にある車両ドアDRを開放することができる。ドアロック装置DLの施解錠作動状態がアンロック状態であり且つ開閉作動状態がクローズ状態であるとき、閉鎖位置にある車両ドアDRの閉鎖状態を維持することができる。
従って、ドアロック装置DLは、車両ドアDRの施解錠作動状態(ロック状態、アンロック状態)と、車両ドアDRの開閉作動状態(オープン状態、クローズ状態)とを、それぞれ変化させることができるように構成される。
なお、ドアロック装置DLの詳細構成及び詳細な動作については、発明の本旨から外れるため省略する。ドアロック装置DLの作動の一例を概略的に述べると、ドアロック装置DLのラッチが車体のストライカに係合しているときにラッチがストライカを開放する回転動作をポールが規制することにより、開閉作動状態がクローズ状態に設定される。また、ドアロック装置DLが備えるオープンリンクが作動してポールによるラッチの規制が解除されることにより、開閉作動状態がオープン状態に設定される。また、オープンリンクの作動力をポールに伝達することができるようにオープンリンクの作動方向を設定することにより、施解錠作動状態がアンロック状態に設定され、オープンリンクの作動力をポールに伝達することができないようにオープンリンクの作動方向を設定することにより、施解錠作動状態がロック状態に設定される。
また、車両ドアDRにドアインサイドハンドル装置(1,2)が取り付けられる。ドアインサイドハンドル装置(1,2)は、ドアロック装置DLの上記した作動状態(施解錠作動状態、開閉作動状態)を所定の作動状態に設定することができるように構成される。
(第一実施形態)
図2、図3、図4は、それぞれ、第一実施形態に係るドアインサイドハンドル装置1の正面図、平面図(上面図)、及び背面図である。ここで、本明細書において、ドアインサイドハンドル装置及びドアインサイドハンドル装置を構成する各部品を説明するにあたり方向を用いる場合、そのドアインサイドハンドル装置が取り付けられる車両ドアに関して定義される方向を用いる。具体的には、前後方向、幅方向、上下方向、というそれぞれ直交する3方向が用いられる。前後方向は、車両ドアが閉鎖状態である場合にその車両ドアが取り付けられた車両の前後方向に相当する。幅方向は、車両ドアが閉鎖状態である場合にその車両ドアが取り付けられた車両の幅方向に相当する。上下方向は、前後方向及び幅方向に直交する方向(すなわち鉛直方向)である。また、幅方向のうち、車室内方に向かう方向を内方と呼び、車室外方に向かう方向を外方と呼ぶ。
図2は、内方から見たドアインサイドハンドル装置1の正面図である。図2又は図3によく示すように、ドアインサイドハンドル装置1は、ベース10と、インサイドハンドルレバー20と、円柱部材30とを備える。ベース10は、車両ドアDRの車室内に一部露呈した状態で、車両ドアDRのインナパネルIPに固定される。
図5は、図2のA-A断面図である。図2及び図5に示すように、ベース10は、平板状の底壁部11と、底壁部11の周縁から内方に向けて立設した側壁部12とを有する。ベース10の底壁部11の一方面が内方を向き他方面が外方を向く。また、底壁部11と側壁部12に囲まれた空間により凹部10aが形成される。ベース10は、凹部10aが車室内に露呈するように、車両ドアDRのインナパネルIPに取り付けられる。
インサイドハンドルレバー20は、把持部21及び延設部22を有する。把持部21は、凹部10aに面するように車室内に配設される。把持部21は、車室内の乗員がドアインサイドハンドル装置1を操作するときに乗員に把持される。把持部21は、図5に示す状態では、前後方向に沿って長尺状に形成され、その前方側には延設部22が接続される。延設部22は、把持部21の前方側の部分から外方に延設される。
図6は、インサイドハンドルレバー20の斜視図である。インサイドハンドルレバー20の延設部22は、図6に示す状態では、上方を向いた面(上面)、下方を向いた面(下面)、前方を向いた面(前面)、後方を向いた面(後面)を有するように、角柱状に形成される。この延設部22の外方端寄りの部分に係止凹部23及び軸孔24が形成される。
係止凹部23は、延設部22の上面から下方に向けて形成される有底穴であり、延設部22の上面及び前面に開口する。係止凹部23は、収容用凹部231及び導出用凹部232により構成される。収容用凹部231は、延設部22の上面に円形に開口し開口から下方に向けて形成された円柱状の凹部である。この収容用凹部231の前方側に導出用凹部232が形成される。導出用凹部232は延設部22の前面に開口する矩形状の凹部であり、その幅方向に沿った長さ(幅)が収容用凹部231の径よりも短くなるように形成される。この導出用凹部232の後方側に収容用凹部231が連通するように、収容用凹部231と導出用凹部232が接続される。従って、係止凹部23は、後方側に大きな凹部空間(収容用凹部231)を擁するとともに、延設部22の前面への開口部分が凹部空間に対して窄められているような形状に形成される。
収容用凹部231には、図5に示すように、インナーケーブル41の一方端に接続された球継手42が嵌め込まれる。この球継手42は、延設部22の上面から収容用凹部231に配設される。そして、球継手42に接続されたインナーケーブル41が、導出用凹部232を経由して前方側に導出される。ここで、球継手42の径は収容用凹部231の径よりも小さく、且つ、導出用凹部232の幅よりも大きい。従って、収容用凹部231に収容された球継手42は導出用凹部232を経由して収容用凹部231から抜け出すことはできずに、係止凹部23に係止される。このようにして、インナーケーブル41が球継手42を介して延設部22(インサイドハンドルレバー20)に接続される。
軸孔24は、延設部22のうち係止凹部23が形成されている位置よりも内方寄りの位置に形成される。軸孔24は、延設部22の上面から下面にかけて貫通するように形成される。軸孔24には、後述する軸ピン25が挿入される。
延設部22の外方寄りの部分には、図3に示すように円柱部材30が取り付けられる。図7は、円柱部材30の斜視図である。図7に示すように、円柱部材30は略円柱形状を呈する。円柱部材30には、その一方端面30a(内方端面)から軸方向に沿って形成された切り欠き凹部31を有する。切り欠き凹部31は、円柱部材30の一方端面30aから、円柱部材30の中心軸線を含む平面(中心平面)に平行で且つ中心平面から反対の方向に同じ距離だけ離間した一対の平面に沿って、円柱部材30の軸方向における略中央位置付近まで切りかかれることにより形成される。従って、切り欠き凹部31は、互いに対面した状態で円柱部材30の一方端面30aから軸方向に延設した一対の切り欠き平面31a,31aと、一対の切り欠き平面31a,31aの延設端(外方端)を接続する底面31bにより囲まれた空間により形成される。切り欠き凹部31が形成されることによって、円柱部材30は、切り欠き凹部31が形成されていない円柱状の本体部32と、それぞれの切り欠き平面31a,31aに沿って本体部32から延設して二股状に形成された一対の脚部33,33を備えることになる。一対の脚部33,33の延設方向に垂直な断面は略半円状である。また、一対の脚部33,33は、中心平面に面対称となるように、互いの切り欠き平面31aを対面させた状態で配置する。一対の脚部33,33間の距離、すなわち一対の切り欠き平面31a,31a間の距離は、延設部22の上下面間の距離よりも大きい。
円柱部材30の本体部32の外周面の一部に押圧突起34が設けられる。押圧突起34は、本実施形態においては、円柱部材30の軸方向から見た場合、一方端の高さが他方端の高さよりも高くなるように、三角形状に形成される。押圧突起34と円柱部材30は一体的に成形されていてもよいし、別体として成形して後に組み付けても良い。
円柱部材30の一対の脚部33,33に、位置合わせ突起35,35がそれぞれ形成される。位置合わせ突起35,35の外形形状は、円柱部材30の軸方向から見た場合、略長方形である。また、一方の脚部33に形成された位置合わせ突起35と他方の脚部33に形成された位置合わせ突起35は、それらを結ぶ直線が円柱部材30の中心軸を通るような位置に形成される。つまり、一方の脚部33に形成された位置合わせ突起35は、他方の脚部33に形成された位置合わせ突起35の位置に対し、円柱部材30の周方向において180°異なる位置に形成される。
さらに、円柱部材30の一対の脚部33,33のそれぞれに、軸孔36,36が形成される。軸孔36,36は、それぞれの脚部33,33を上下方向に同軸的に貫通する貫通孔である。また、軸孔36,36の軸線は、切り欠き平面31a,31aの法線方向に一致し、且つ、円柱部材30の中心軸線に垂直に交わる。また、本実施形態において、軸孔36,36の軸線と、一対の脚部33,33のそれぞれに形成された位置合わせ突起35,35を結ぶ直線とのなす角は、約45°である。上記したように、軸孔36,36の軸線は上下方向に一致する。従って、位置合わせ突起35,35を結ぶ直線は、上下方向に対して約45°傾斜する。より具体的には、位置合わせ突起35,35を結ぶ直線は、軸孔36,36の軸線を、円柱部材30の中心軸回りに内方から見て反時計回り方向に約45°回転した軸線に一致する。
図8は、インサイドハンドルレバー20に円柱部材30を組み付ける工程を示す図である。インサイドハンドルレバー20に円柱部材30を組み付ける場合、まず、図8(a)に示すように、インサイドハンドルレバー20の延設部22をその延設端側から円柱部材30の切り欠き凹部31に挿入する。このとき、延設部22の上面及び下面(すなわち軸孔24の開口面)が、それぞれ、一対の脚部33,33の切り欠き平面31a,31aに対面するように、円柱部材30の一方端面30a側から延設部22を切り欠き凹部31に挿入する。
このように延設部22を切り欠き凹部31に挿入した場合、円柱部材30の一対の脚部33,33に形成された軸孔36,36の軸方向と延設部22に形成された軸孔24の軸方向が一致する。そして、軸孔36,36と軸孔24が同軸配置するまで延設部22を切り欠き凹部31に挿入し、同軸配置した軸孔36,36及び軸孔24に軸ピン25を差し込む。差し込んだ軸ピン25を円柱部材30に固定することにより、図8(b)に示すように、延設部22(インサイドハンドルレバー20)に円柱部材30が組み付けられる。
上記のようにして円柱部材30が延設部22に組み付けられた場合、延設部22を有するインサイドハンドルレバー20は、円柱部材30に固定された軸ピン25の軸回りを回転することができる。つまり、インサイドハンドルレバー20は、軸ピン25の軸回り方向に回転可能に円柱部材30に支持される。
図9は、ベース10の斜視図である。図9に示すように、ベース10の底壁部11に、幅方向に貫通した抜け落ち防止孔13が形成される。抜け落ち防止孔13は、底壁部11に幅方向に沿って設けられた断面形状が円弧状の内周壁面14により囲まれた空間により形成される。円弧状の内周壁面14の断面に表される円弧の曲率半径は、円柱部材30の断面により表される円の曲率半径と同じか僅かに大きい。また、円弧状の内周壁面14には(すなわち抜け落ち防止孔13の周縁には)、一対のキー溝15,15が形成される。一対のキー溝15,15は、それぞれ幅方向に沿って内周壁面14に形成され、一方の端が底壁部11の内方を向いた面に開口する。なお、図9には、一方のキー溝15のみが示される。本実施形態において、一方のキー溝15と他方のキー溝15とを結ぶ直線が上下方向に沿うように、一対のキー溝15,15が抜け落ち防止孔13の周縁の上下部分に形成される。抜け落ち防止孔13の軸方向から見たキー溝15の形状は、円柱部材30に設けられている位置合わせ突起35の形状にほぼ一致する。
また、円弧状の内周壁面14には、周方向に沿ってガイド溝16が形成される。ガイド溝16は、円弧状の内周壁面14の軸方向(幅方向)におけるほぼ中央位置に形成される。ガイド溝16の幅は、円柱部材30に形成される位置合わせ突起35の幅(幅方向における長さ)よりも僅かに長く、ガイド溝16の溝深さは、位置合わせ突起35の高さよりも僅かに高い。また、一対のキー溝15,15の他方の端は、それぞれガイド溝16に連通している。
図10は、円柱部材30が組み付けられたインサイドハンドルレバー20をベース10に組み付ける様子を示す図である。円柱部材30が組み付けられたインサイドハンドルレバー20をベース10に組み付ける場合、まず、図10に示すように、抜け落ち防止孔13に円柱部材30を内方側から外方側に向けて差し込む。このとき、抜け落ち防止孔13の周縁に形成された一対のキー溝15,15の周方向位置と、円柱部材30に設けられた一対の位置合わせ突起35,35の周方向位置が、一致するように、円柱部材30を抜け落ち防止孔13に差し込む。こうしてキー溝15と位置合わせ突起35との周方向位置を合わせることにより、円柱部材30を抜け落ち防止孔13に挿通することができる。また、キー溝15,15と位置合わせ突起35,35との周方向位置を合わせた場合、把持部21の長手方向が、前後方向に対して約45°傾斜する。従って、把持部21を図10に示すように傾斜した状態で、円柱部材30が抜け落ち防止孔13に差し込まれることになる。
円柱部材30を抜け落ち防止孔13に挿入していくと、円柱部材30に設けられた位置合わせ突起35,35がキー溝15内を外方に移動し、やがて、位置合わせ突起35,35がキー溝15からキー溝15に連通したガイド溝16に至る。位置合わせ突起35,35がガイド溝16に達した時点で、把持部21の長手方向が前後方向に平行になるまで把持部21を延設部22の軸回りに回転させる。これにより、延設部22に接続した円柱部材30が軸回り回転して、位置合わせ突起35,35がキー溝15から離脱するとともにガイド溝16に嵌め合される。位置合わせ突起35,35がキー溝15,15から離脱してガイド溝16に嵌め合わされた状態では、円柱部材30を抜け落ち防止孔13から軸方向に引き抜こうとしても、位置合わせ突起35,35がガイド溝16の側壁に干渉するので、円柱部材30を引き抜くことができない。このようにして円柱部材30が軸方向移動不能にベース10に支持される。円柱部材30がベース10に支持されることにより、円柱部材30に接続されたインサイドハンドルレバー20が円柱部材30を介してベース10に組み付けられる。
インサイドハンドルレバー20が円柱部材30を介してベース10に組み付けられた場合、上記したように円柱部材30は軸方向移動不能であるが、位置合わせ突起35,35がガイド溝16に沿って移動することにより、円柱部材30は軸回り回転することができる。つまり、円柱部材30は、軸回り回転可能にベース10に支持される。円柱部材30が本発明の第一回転軸及び回転部材に相当する。なお、インサイドハンドルレバー20がベース10に組みけられた場合には、把持部21が図10に示す状態にまで傾斜しないように、規制部材等により把持部21の回転領域が規制される。これにより、組み付け後に位置合わせ突起35,35がキー溝15,15に進入して、インサイドハンドルレバー20が抜け落ちてしまうことが防止される。
また、円柱部材30がベース10に支持された状態では、円柱部材30の軸線が幅方向に一致する。従って、円柱部材30の軸回り回転方向は、幅方向に垂直な面内、すなわち鉛直面内での回転方向に一致する。
また、円柱部材30がベース10に支持された状態で軸回り回転すると、円柱部材30に接続されたインサイドハンドルレバー20も、円柱部材30を中心として鉛直面内を回転する。従って、インサイドハンドルレバー20は、円柱部材30を中心として鉛直面内を回転可能に円柱部材30を介してベース10に支持されることになる。
さらに、上記したように、インサイドハンドルレバー20は軸ピン25の軸まわりに回転可能に円柱部材30に支持される。従って、ベース10に組み付けられたインサイドハンドルレバー20は、軸ピン25を中心として回転可能である。ここで、軸ピン25は、延設部22の上下面に貫通した軸孔24を挿通しているので、軸ピン25の軸方向は上下方向(鉛直方向)である。よって、インサイドハンドルレバー20は、軸ピン25を中心として、軸ピン25の軸方向(上下方向)に垂直な平面内、すなわち水平面内を回転可能に構成される。軸ピン25が、本発明の第二回転軸に相当する。
このように、ベース10に組み付けられたインサイドハンドルレバー20は、円柱部材30を中心として鉛直面内を回転可能であり、且つ、軸ピン25を中心として水平面内を回転可能である。鉛直面内での回転方向と、水平面内での回転方向は、異なる回転方向である。つまり、インサイドハンドルレバー20は、異なる2方向に回転可能に構成される。
ベース10に組みつけられたインサイドハンドルレバー20は、図2において図示しないスプリング等の第一付勢手段により、円柱部材30を中心として、図2に示す方向(内方)から見て反時計回り方向に付勢される。さらに、インサイドハンドルレバー20は、図3において図示しないスプリング等の第二付勢手段により、軸ピン25を中心として、図3に示す方向(上方)から見て時計まわり方向に付勢される。
また、ベース10には、第一付勢手段によるインサイドハンドルレバー20の回転を規制するための第一ストッパ、及び、第二付勢手段によるインサイドハンドルレバー20の回転を規制するための第二ストッパが、設けられている。従って、第一ストッパにより円柱部材30を中心としたインサイドハンドルレバー20の回転位置が位置決めされるとともに、第二ストッパにより軸ピン25を中心としたインサイドハンドルレバー20の回転位置が位置決めされる。第一ストッパ及び第二ストッパにより位置決めされたインサイドハンドルレバー20の回転位置を、初期位置と呼ぶ。
図2、図3、図4、図5は、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるドアインサイドハンドル装置1を示す。これらの図からわかるように、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるとき、把持部21の長手方向が前後方向に一致する。また、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるとき、延設部22及び円柱部材30が同軸配置し、且つ、これらの軸方向が幅方向に一致する。さらに、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるとき、軸ピン25の軸方向が上下方向に一致する。
インサイドハンドルレバー20が図2に示す初期位置にあるとき、インサイドハンドルレバー20は、第一付勢手段によって、図2に示す方向(内方)から見て円柱部材30を中心として反時計回り方向に付勢されている。ここで、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20の把持部21に、第一付勢手段の付勢方向とは反対の方向に第一付勢手段の付勢力よりも大きい力を加えると、第一付勢手段の付勢力に抗してインサイドハンドルレバー20が円柱部材30を中心として、図2に示す方向から見て時計回り方向に回転する。この回転方向は、把持部21の後方側の部分が上方に押し上げられるように把持部21が鉛直面内で回転する方向である。このように把持部21が回転される操作を、アップ操作と呼ぶ。図11は、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20をアップ操作したドアインサイドハンドル装置1を内方から見た正面図である。図11に示すように、インサイドハンドルレバー20をアップ操作した場合、把持部21が、鉛直面内にて図11のX1方向で示すように、円柱部材30を中心として内方から見て時計回り方向に回転する。図11に示すX1方向が、本発明の第一回転方向に相当する。すなわち、インサイドハンドルレバー20は、第一回転方向に回転可能に円柱部材30を介してベース10に支持される。また、インサイドハンドルレバー20が第一回転方向(X1方向)に回転すると、それに伴い、円柱部材30も第一回転方向(X1方向)に回転する。従って、円柱部材30は、第一回転方向に回転可能にベース10に支持されていることになる。
また、インサイドハンドルレバー20が図3に示す初期位置にあるとき、インサイドハンドルレバー20は、第二付勢手段によって、図3に示す方向(上方)から見て軸ピン25を中心として時計回り方向に付勢されている。ここで、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20の把持部21に、第二付勢手段の付勢方向とは反対の方向に第二付勢手段の付勢力よりも大きい力を加えると、第二付勢手段の付勢力に抗してインサイドハンドルレバー20が軸ピン25を中心として、図3に示す方向から見て反時計回り方向に回転する。この回転方向は、把持部21の後方側の部分を車室内側に引き込むように把持部21が水平面内で回転する方向である。このように把持部21が回転される操作を、プル操作と呼ぶ。図12は、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20をプル操作したドアインサイドハンドル装置1を上方から見た平面図である。図12に示すように、インサイドハンドルレバー20をプル操作した場合、把持部21が、水平面内にて図12のX2方向で示すように、軸ピン25を中心として上方から見て反時計回り方向に回転する。図12に示すX2方向が、本発明の第二回転方向に相当する。すなわち、インサイドハンドルレバー20は、第二回転方向に回転可能に軸ピン25を介して円柱部材30に支持される。
このように、本実施形態に係るインサイドハンドルレバー20は、初期位置から第一回転方向(X1方向)及び第一回転方向とは異なる第二回転方向(X2方向)に回転することができるように構成される。
また、図3、図4、図5に示すように、車両ドアDR内にロック解除スイッチ50が配設される。ロック解除スイッチ50は、ベース10に取り付けられていてもよいし、或いは、車両ドアDRに固定されているブラケット等に取り付けられていても良い。
ロック解除スイッチ50は、図4によく示すように、ケース51、可動片52、及び接点53を有する。ケース51内には電子基板が配設される。可動片52は板バネにより構成され、ケース51から下方及び後方に向かって傾斜するように延設される。接点53は、ケース51の表面であって、可動片52が押圧されて撓んだときに可動片52に接触し得る位置に配設される。ロック解除スイッチ50は、可動片52が接点53に接触した場合にON信号を出力するように構成される。
ロック解除スイッチ50は、可動片52の幅方向位置が、円柱部材30に設けられている押圧突起34の幅方向位置に一致するように、円柱部材30に対して配設される。そして、円柱部材30が回転したときに押圧突起34によって可動片52が押圧されるように、円柱部材30に近接配置される。なお、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるときには、円柱部材30に設けられた押圧突起34がロック解除スイッチ50の可動片52を押圧しないように、ロック解除スイッチ50の取付位置が設定される。図4においては、ロック解除スイッチ50の取付け位置は、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20に取り付けられた円柱部材30に設けられた押圧突起34の表面に僅かに離間して可動片52が対面するように設定される。従って、図4に示す状態から、円柱部材30が図4において反時計回り方向(図2においては時計回り方向)に回転すると、押圧突起34が可動片52を押圧することになる。
本実施形態において、ロック解除スイッチ50が出力するON信号はドアロック装置DLに入力される。ドアロック装置DLにON信号が入力されたとき、ドアロック装置DLの施開錠作動状態がアンロック状態に設定される。この場合、例えば、ドアロック装置DLに備えられているアクチュエータ(例えばモータ)が駆動してオープンリンクの作動力をポールに伝達することができるようにオープンリンクの作動方向が設定される。
また、上記したように、インサイドハンドルレバー20の延設部22に球継手42を介してインナーケーブル41の一端が接続されている(図5参照)。インナーケーブル41の他端はドアロック装置DLに接続される。インナーケーブル41が引っ張られた場合、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。この場合、例えば、ドアロック装置DLのポールがインナーケーブル41の張力を受けて回転することにより、ポールによるラッチの規制が解除される。なお、インサイドハンドルレバー20が初期位置にあるときは、延設部22に接続されたインナーケーブル41は引っ張られていない状態にされる。
上記構成のドアインサイドハンドル装置1において、車両ドアDRが閉鎖状態であり、ドアロック装置DLの施開錠作動状態がロック状態であり、ドアロック装置DLの開閉作動状態がクローズ状態であるときに、ドアインサイドハンドル装置1のインサイドハンドルレバー20を操作して車両ドアDRを開放する動作について説明する。この場合、まず、車室内の乗員が、初期位置にあるインサイドハンドルレバー20をアップ操作する。
初期位置にあるインサイドハンドルレバー20をアップ操作すると、インサイドハンドルレバー20の把持部21が図11に示すようにX1方向(第一回転方向)に回転し、これに伴い延設部22に接続された円柱部材30が軸回り回転する。アップ操作による円柱部材30の回転方向は、図4においては反時計回り方向(図2においては時計回り方向)である。このように円柱部材30が回転することにより、円柱部材30に設けられた押圧突起34がロック解除スイッチ50の可動片52を押圧する。図13は、インサイドハンドルレバー20のアップ操作によりロック解除スイッチ50の可動片52が押圧された状態を示す、ドアインサイドハンドル装置1の背面図である。図13に示すように可動片52が押圧突起34に押圧されると、可動片52が接点53に接触してロック解除スイッチ50がON信号をドアロック装置DLに出力する。すると、ロック状態であったドアロック装置DLの施開錠作動状態がアンロック状態に設定される。
その後、車室内の乗員は、インサイドハンドルレバー20を初期位置に戻す。なお、アップ操作後に乗員が把持部21に加える力を弱くすることにより、インサイドハンドルレバー20は第一付勢手段の付勢力によって自動的に初期位置に復帰する。次いで、車室内の乗員はインサイドハンドルレバー20をプル操作する。
初期位置にあるインサイドハンドルレバー20をプル操作すると、インサイドハンドルレバー20の延設部22が、軸ピン25を中心として上方から見て反時計まわり方向に回転する。このような延設部22の回転により、図12に示すように、延設部22のうち軸ピン25よりも内方側の部分が前方に移動するとともに、延設部22のうち軸ピン25よりも外方側の部分が後方に移動する。このため、延設部22のうち軸ピン25よりも外方側に形成されている係止凹部23の前後方向位置が後方側に距離δだけ移動する。これにより係止凹部23に配設された球継手42に接続されたインナーケーブル41が、延設部22によって後方側に引っ張られる。インナーケーブル41が引っ張られることにより、クローズ状態であったドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。そして、この状態で、車両ドアDRを外方に押し出すことにより、車両ドアDRが開放する。
以上のように、本実施形態に係るドアインサイドハンドル装置1は、ベース10及びインサイドハンドルレバー20を備える。そして、インサイドハンドルレバー20は、初期位置から第一回転方向(X1方向)及び第一回転方向とは異なる第二回転方向(X2方向)に回転し、且つ、初期位置から第一回転方向に回転したとき、及び、初期位置から第二回転方向に回転したときに、ドアロック装置の作動状態が所定の作動状態に設定されるように構成される。具体的には、インサイドハンドルレバー20は、初期位置からアップ操作により第一回転方向に回転したときに、ドアロック装置DLの施解錠作動状態がアンロック状態に設定され、初期位置からプル操作により第二回転方向に回転したときに、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。このため、車室内の乗員は、インサイドハンドルレバー20の異なる回転方向への操作のみによりロック状態の車両ドアDRを開放することができ、車両ドアを開放する際における操作負担を軽減することができる。
また、インサイドハンドルレバー20は、円柱部材30を中心として初期位置から第一回転方向に回転し、軸ピン25を中心として初期位置から第二回転方向に回転するように構成される。そして、円柱部材30の軸線と軸ピン25の軸線が、交差する。具体的には、円柱部材30の軸線方向が幅方向であり、軸ピン25の軸線方向が上下方向であり、これらの軸線は交差角90°で交差する。これによれば、車室内の乗員は、インサイドハンドルレバー20を初期位置からアップ操作することでインサイドハンドルレバー20を初期位置から第一回転方向に回転させることができ、インサイドハンドルレバー20を初期位置からプル操作することでインサイドハンドルレバー20を初期位置から第二回転方向に回転させることができる。
また、ドアインサイドハンドル装置1は、第一回転方向(X1方向)に回転可能にベース10に支持された円柱部材30を備える。そして、インサイドハンドルレバー20は、第二回転方向(X2方向)に回転可能に円柱部材30に支持される。このように構成することにより、インサイドハンドルレバー20を第一回転方向及び第二回転方向に回転させることができる。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係るドアインサイドハンドル装置について説明する。図14は、第二実施形態に係るドアインサイドハンドル装置2を内方から見た概略図である。図14に示すように、本実施形態に係るドアインサイドハンドル装置2は、ベース60と、インサイドハンドルレバー70と、回転軸部材80とを備える。
ベース60は、内方から見て平行四辺形状に形成される。図15は、図14のB-B断面図である。図15からわかるように、ベース60は、上壁部61、下壁部62、内壁部63、外壁部64を有し、これらの4面により内部に空間60bが形成される。ベース60の内部の空間60bに、インサイドハンドルレバー70が配設される。
また、図14及び図15からわかるように、ベース60の内壁部63の上側部分に開口65が形成される。この開口65を通じて、車室内の乗員が、ベース60内に配設されたインサイドハンドルレバー70を操作することになる。
図16は、インサイドハンドルレバー70を内方から見た図である。図16に示すように、インサイドハンドルレバー70は、第一ハンドル部材71と第二ハンドル部材76を備える。第一ハンドル部材71は、把持部72と、第一支持部73と、第一係合部74と、押圧突起部75とを有する。把持部72は、車室内の乗員が把持する部分を構成し、図16に示す状態では前後方向に沿って長尺状に形成される。この把持部72の前方に第一支持部73が形成され、第一支持部73の前方に第一係合部74が形成される。第一係合部74の上方に押圧突起部75が形成される。
第二ハンドル部材76は、第二支持部77と、第二係合部78と、ケーブル接続部79とを有する。第二支持部77は図16に示す方向(内方)から見て略円形状に形成される。第二支持部77の前方に第二係合部78が形成され、第二係合部78の下方にケーブル接続部79が形成される。
図17は、図16のC-C断面図である。図17には、第一ハンドル部材71の第一支持部73の断面と第二ハンドル部材76の第二支持部77の断面が示される。図17に示すように、第一支持部73は、内方を向く内面731及び外方を向く外面732を有する。また、第一支持部73の下方部分に、内面731から外面732にかけて幅方向に貫通した軸孔733が形成される。
また、第二ハンドル部材76の第二支持部77は、第一支持部73の下方に位置する基部771と、基部771の内方端側から上方に延設される内方脚部772と、基部771の外方端側から上方に延設される外方脚部773とを有する。内方脚部772が第一支持部73の内面731に対面し、外方脚部773が第一支持部73の外面732に対面する。このように、第二支持部77は、第一支持部73の幅方向における両側に分かれて二股状に形成される。
第二支持部77の内方脚部772には、幅方向に貫通した軸孔772aが形成される。同様に、第二支持部77の外方脚部773にも、幅方向に貫通した軸孔773aが形成される。軸孔772aと軸孔773aの軸方向は一致する。つまり、同軸的に、軸孔772aと軸孔773aが形成される。
第一支持部73は、第二支持部77の内方脚部772及び外方脚部773に下方から挟み込まれるように、第二支持部77に対して配設される。このとき、第一支持部73に形成された軸孔773aが、第二支持部77に形成された2つの軸孔772a、773aに同軸配置される。そして、同軸配置した軸孔733,772a,773aに、回転軸部材80が挿通される。この回転軸部材80は、軸方向が幅方向に一致するようにベース60に固定される。従って、第一ハンドル部材71及び第二ハンドル部材76は、それぞれ、回転軸部材80の軸回りを回転可能であるように、すなわち幅方向に沿った軸回りを回転可能であるように、ベース60に支持されることになる。
図18は、図16のD-D断面図である。図18には、第二ハンドル部材76の第二支持部77と第二係合部78が示される。図18に示すように、第二支持部77の内方脚部772と外方脚部773は、前方にて合流して第二係合部78に接続される。
図19は、図16のE-E断面図である。図19には、第一ハンドル部材71の第一係合部74の断面と第二ハンドル部材76の第二係合部78及びケーブル接続部79の断面が示される。図19に示すように、第二係合部78は第一係合部74の下方に配置される。このため、第一係合部74の下面741と第二係合部78の上面781は対面配置し、両面は接触可能である。また、第二係合部78の下方にケーブル接続部79が形成される。
第一ハンドル部材71は、スプリング等の付勢手段によって、回転軸部材80の軸回りを図16に示す方向(内方)から見て時計回り方向に回転するように付勢される。一方、第二ハンドル部材76は、スプリング等の付勢手段によって、回転軸部材80の軸回りを図16に示す方向(内方)から見て反時計回り方向に回転するように付勢される。第一ハンドル部材71が付勢される方向は、第一ハンドル部材71の第一係合部74の下面741が第二ハンドル部材76の第二係合部78の上面781に近づく方向である。また、第二ハンドル部材76が付勢される方向は、第二ハンドル部材76の第二係合部78の下面が第一ハンドル部材71の第一係合部74の下面741に近づく方向である。従って、第一ハンドル部材71と第二ハンドル部材76は、それぞれの係合部で係合する方向に付勢される。
また、ベース60には、第二ハンドル部材76が図16に示す回転位置からさらに反時計回り方向に回転することを規制するストッパが設けられている。従って、第二ハンドル部材76は、付勢手段による付勢力を受けた状態で、ストッパにより図16に示す回転位置(初期位置)に位置決めされる。
また、第一ハンドル部材71を付勢する付勢手段の付勢力は、第二ハンドル部材76を付勢する付勢手段の付勢力よりも弱くなるよう設定される。このため、第一ハンドル部材71の第一係合部74と第二ハンドル部材76の第二係合部78が係合している場合、第一ハンドル部材71は自身に作用する付勢力のみによっては第二ハンドル部材76を連れ回り回転させることができない。したがって、第二ハンドル部材76がストッパにより図16に示す回転位置に位置決めされているとき、第一ハンドル部材71は、第一係合部74が第二係合部78に係合した状態を維持したまま、図16に示す回転位置(初期位置)に位置決めされる。図16に示すインサイドハンドルレバー70の回転位置が、初期位置である。初期位置において、第一ハンドル部材71の把持部72の長手方向は、前後方向に一致する。
また、第一ハンドル部材71の押圧突起部75は、第一支持部73の上面から突出するように、第一係合部74の上部に形成される。この押圧突起部75の上方に、Eラッチスイッチ90が設けられる。Eラッチスイッチ90は、図16によく示すように、ケース91、可動片92、及び接点93を有する。ケース91内には電子基板が配設される。可動片92は板バネにより構成され、ケース91から下方及び後方に向かって傾斜するように延設される。接点93は、ケース91の表面であって、可動片92が押圧されて撓んだときに可動片92に接触し得る位置に配設される。Eラッチスイッチ90は、可動片92が接点93に接触した場合にON信号を出力するように構成される。
Eラッチスイッチ90は、可動片92が押圧突起部75に対面するように押圧突起部75に対して配設される。そして、第一ハンドル部材71が図16に示す方向(内方)から見て反時計回り方向に回動したときに、押圧突起部75によって可動片92が押圧されるように、押圧突起部75に近接配置される。なお、インサイドハンドルレバー70の回転位置が初期位置であるときには、図16に示すように、押圧突起部75がEラッチスイッチ90の可動片92を押圧しないように、Eラッチスイッチ90の取付位置が設定される。
本実施形態において、Eラッチスイッチ90が出力するON信号はドアロック装置DLに入力される。ドアロック装置DLにON信号が入力されたとき、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。この場合、例えば、ドアロック装置DL内に備えられているアクチュエータ(例えばモータ)が駆動してポールを回転させることにより、ポールによるラッチの規制が解除される。
また、図16に示すように、第二ハンドル部材76のケーブル接続部79は、第二係合部78から下方に延びるように構成される。このケーブル接続部79の下方の部位に、係止凹部791が形成される。係止凹部791の構造は、上記第一実施形態にて説明した係止凹部23と同様の構造であるので具体的な説明は省略する。係止凹部791には、インナーケーブル41の一方端に接続された球継手42が収容される。球継手42が係止凹部791に係止されることにより、インナーケーブル41が第二ハンドル部材76に接続される。従って、第二ハンドル部材76が図16に示す位置から時計回り方向に回転すると、第二ハンドル部材76によってインナーケーブル41が引っ張られる。
インナーケーブル41の他端はドアロック装置DLに接続される。インナーケーブル41が第二ハンドル部材76に引っ張られた場合、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。この場合、例えば、ドアロック装置DLのポールがインナーケーブル41の張力を受けて回転することにより、ポールによるラッチの規制が解除される。なお、インサイドハンドルレバー70が初期位置にあるときは、延設部22に接続されたインナーケーブル41は引っ張られていない状態にされる。
上記したように、Eラッチスイッチ90がON信号を出力したとき、及び、インナーケーブル41が引っ張られたときに、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態にされる。Eラッチスイッチ90がON信号を出力したときには、アクチュエータが通電されることにより作動して、ドアロック装置DLの開閉作動状態が電気的にオープン状態に設定される。つまり、電気的駆動によって、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。一方、インナーケーブル41が引っ張られたときは、インナーケーブル41からの張力の作用により、ドアロック装置DLの開閉作動状態が機械的にオープン状態に設定される。つまり、機械的駆動によって、ドアロック装置DLの開閉作動状態がオープン状態に設定される。
上記構成のドアインサイドハンドル装置2において、ドアロック装置DLの開閉作動状態を電気的駆動によりオープン状態に設定するためには、車室内の乗員が、初期位置にあるインサイドハンドルレバー70の第一ハンドル部材71の把持部72を、回転軸部材80の軸回りに図16に示す方向(内方)から見て反時計回り方向に回転させる。このような回転方向は、把持部72の後方側の部分を回転軸部材80を中心として下方に押し下げる方向である。このような把持部72を押し下げるようなインサイドハンドルレバー70の操作を、ダウン操作と呼ぶ。
図20は、初期位置にあるインサイドハンドルレバー70をダウン操作した状態を内方から見た図を示す。図20に示すように、インサイドハンドルレバー70がダウン操作された場合、第一ハンドル部材71が付勢力に抗して、初期位置から、回転軸部材80を中心として図20に示す方向(内方)から見て図20のY1方向で示す反時計回り方向に回転する。これにより、第一ハンドル部材71の押圧突起部75が上方に移動してEラッチスイッチ90の可動片92を押圧する。これによりEラッチスイッチ90がON信号を出力する。このためドアロック装置DLの開閉作動状態が、電気的駆動によりオープン状態に設定される。図20のY1方向が、本発明の第一回転方向及び正方向に相当する。
第一ハンドル部材71が初期位置からY1方向(第一回転方向、正方向)に回転した場合、第二ハンドル部材76は、ストッパによって回転を規制されているので初期位置に維持される。つまり、第一ハンドル部材71が初期位置からY1方向に回転した場合、第二ハンドル部材76は回転しない。よって、第一ハンドル部材71が単独で回転する。このとき、第一ハンドル部材71の第一係合部74は第二ハンドル部材76の第二係合部78から離間する。
また、ドアロック装置DLの開閉作動状態を機械的にオープン状態に設定するためには、車室内の乗員が、初期位置にあるインサイドハンドルレバー70の第一ハンドル部材71の把持部72を、回転軸部材80の軸回りに図16に示す方向(内方)から見て時計回り方向に回転させる。このような回転方向は、把持部72の後方側の部分を回転軸部材80を中心として上方に押し上げる方向である。このような把持部72を押し上げるようなインサイドハンドルレバー70の操作を、アップ操作と呼ぶ。
図21は、初期位置にあるインサイドハンドルレバー70をアップ操作した状態を内方から見た図を示す。図21に示すように、インサイドハンドルレバー70がアップ操作された場合、第一ハンドル部材71が、初期位置から、図21に示す方向(内方)から見て回転軸部材80の軸回りを図21のY2方向で示す時計回り方向に回転する。図21のY2方向が、本発明の第二回転方向及び逆方向に相当する。
第一ハンドル部材71が初期位置からY2方向(第二回転方向、逆方向)に回転すると、第一ハンドル部材71の第一係合部74が下方に移動する。第一係合部74の下方には第二ハンドル部材76の第二係合部78が位置している。このため、第二ハンドル部材76は、第一係合部74と第二係合部78との係合状態を維持したまま、第二ハンドル部材76を付勢している付勢部材の付勢力に抗して、回転軸部材80を中心として内方から見て時計回り方向に回動する。すなわち、第一ハンドル部材71が回転軸部材80を中心として初期位置からY2方向(第二回転方向、逆方向)に回転した場合、第二ハンドル部材76は第一ハンドル部材71と係合して、第一ハンドル部材71とともに、Y2方向(第二回転方向、逆方向)に回転する。
第二ハンドル部材76が初期位置からY2方向(第二回転方向、逆方向)に回転した場合、第二ハンドル部材76のケーブル接続部79に形成された係止凹部791が後方に移動する。このため係止凹部791内の球継手42に接続されたインナーケーブル41が第二ハンドル部材76に引っ張られる。インナーケーブル41が引っ張られることにより、ドアロック装置DLの開閉作動状態が、機械的駆動によりオープン状態に設定される。
このように、本実施形態によれば、インサイドハンドルレバー70のダウン操作により電気的駆動によってドアロック装置DLの開閉作動状態をオープン状態に設定することができ、インサイドハンドルレバー70のアップ操作により機械的駆動によってドアロック装置DLの開閉作動状態をオープン状態に設定することができる。従って、通常時は、インサイドハンドルレバー70のダウン操作によりドアロック装置DLのオープン操作(ドアロック装置DLの開閉作動状態をオープン状態に設定する操作)を電気的駆動により実行し、断線等によってEラッチスイッチ90が出力するON信号がドアロック装置DLに入力されないような緊急時には、インサイドハンドルレバー70のアップ操作によりドアロック装置DLのオープン操作を機械的駆動により実行することができる。これによれば、通常時と緊急時のドアロック装置DLのオープン操作を使い分けることができ、なおかつ、その使い分けを片手で行うことができる。
なお、電気的駆動によるオープン操作が実行可能なドアロック装置を搭載している車両には、通常、電気的なオープン操作が実行不能に陥ったときに機械的駆動によりドアロック装置をオープン操作するための機構も搭載されている。しかし、機械的にオープン操作するための操作レバーは、通常は、電気的にオープン操作するための操作レバーとは異なる位置に取り付けられている。従って、緊急時に機械的にオープン操作を実行する場合、乗員は、機械的にオープン操作するための操作レバーを探さなければならず、それ故に、速やかに緊急時にドアロック装置DLをオープン状態にすることはできない。これに対し、本実施形態によれば、通常時も緊急時も同じインサイドハンドルレバー70を操作することにより、電気的なオープン操作も機械的なオープン操作も実行することができるので、速やかに緊急時にドアロック装置DLをオープン操作することができる。
このように、本実施形態に係るドアインサイドハンドル装置2は、ベース60及びインサイドハンドルレバー70を備える。そして、インサイドハンドルレバー70は、初期位置から第一回転方向(Y1方向)及び第一回転方向とは異なる第二回転方向(Y2方向)に回転し、且つ、初期位置から第一回転方向に回転したとき、及び、初期位置から第二回転方向に回転したときに、ドアロックの作動状態が所定の作動状態に設定されるように構成される。具体的には、インサイドハンドルレバー70は、初期位置からダウン操作により第一回転方向に回転したときに、ドアロック装置DLの開閉作動状態が電気的駆動によりオープン状態に設定され、初期位置からアップ操作により第二回転方向に回転したときに、ドアロック装置DLの開閉作動状態が機械的駆動によりオープン操作される。つまり、本実施形態においても、異なる2方向にインサイドハンドルレバー70を回転させることによりドアロック装置の作動状態を設定することができる。
また、本実施形態に係るドアインサイドハンドル装置2は、ベース60に固定される回転軸部材80を備える。そして、インサイドハンドルレバー70は、回転軸部材80を中心として、回転軸部材80の軸線に垂直な面内にて、初期位置から正方向(Y1方向)及び逆方向(Y2方向)に回転可能に回転軸部材80に支持される。
また、本実施形態に係るドアインサイドハンドル装置2が備えるインサイドハンドルレバー70は、第一ハンドル部材71及び第二ハンドル部材76を備える。第一ハンドル部材71は、車室内の乗員が把持する把持部72を有し、回転軸部材80を中心として回転可能に回転軸部材80に支持される。また、第二ハンドル部材76は、回転軸部材80を中心として回転可能に回転軸部材80に支持されるとともに、第一ハンドル部材71が回転軸部材80を中心として初期位置からY1方向(第一回転方向、正方向)に回転した場合に回転せず、第一ハンドル部材71が回転軸部材80を中心として初期位置からY2方向(第二回転方向、逆方向)に回転した場合に第一ハンドル部材71と係合して第一ハンドル部材71とともにY2方向に回転するように構成される。このようにインサイドハンドルレバーを構成すれば、インサイドハンドルレバーの正方向回転及び逆方向回転のそれぞれの回転動作によって、ドアロック装置DLの作動状態を設定することができる。また、Y1方向(第一回転方向、正方向)及びY2方向(第二回転方向、逆方向)に回転するインサイドハンドルレバーの回転軸を共通化することができる。よって、異なる2方向(Y1方向及びY2方向)に回転するインサイドハンドルレバーの構成部品点数の低減及びそれに伴う低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態においては、インサイドハンドルレバー70が、幅方向に沿った軸(回転軸部材80)回りに回転する。つまり、インサイドハンドルレバー70は、鉛直平面内を回転する。ここで、インサイドハンドルレバーが水平面内を回転する場合、車両が衝突する際の慣性力によって、意図せずにインサイドハンドルレバーが水平面内を回転して車両ドアDRが開放される虞がある。これに対し、本実施形態のようにインサイドハンドルレバー70を鉛直面内で回転させることにより車両ドアDRが開放するように構成することにより、上記した慣性力が把持部の回転動作を促す可能性を低減することができる。このため、上記慣性力によって把持部が作動して車両ドアDRが意図せずに開放することを、効果的に防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記第一実施形態では、インサイドハンドルレバー20のアップ操作によりドアロック装置DLの施解錠作動状態をアンロック状態に設定し、インサイドハンドルレバー20のプル操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態をオープン状態に設定する例を示した。しかしながら、例えば、インサイドハンドルレバー20のアップ操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態を電気的駆動によりオープン状態に設定し、インサイドハンドルレバー20のプル操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態を機械的駆動によりオープン状態に設定するように、ドアインサイドハンドル装置を構成してもよい。また、上記第二実施形態では、インサイドハンドルレバー70のダウン操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態を電気的駆動によりオープン状態に設定し、インサイドハンドルレバー70のアップ操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態を機械的駆動によりオープン状態に設定する例を示した。しかしながら、例えば、インサイドハンドルレバー70のダウン操作によりドアロック装置DLの施解錠作動状態をアンロック状態に設定し、インサイドハンドルレバー70のアップ操作によりドアロック装置DLの開閉作動状態をオープン状態に設定するように、ドアインサイドハンドル装置を構成してもよい。また、上記第二実施形態では、インサイドハンドルレバー70が第一ハンドル部材71及び第二ハンドル部材76を備えるように構成した例を示したが、例えば、把持部を有するハンドル部材と、Eラッチスイッチ90或いはロック解除スイッチ50を押圧するためのハンドル部材と、インナーケーブルを引っ張るためのハンドル部材の3つのハンドル部材によりインサイドハンドルレバーを構成することもできる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。