JP7066967B2 - 波長変換シート及びそれに用いられるバリアフィルム - Google Patents

波長変換シート及びそれに用いられるバリアフィルム Download PDF

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Description

本発明は、主に表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートに関する。
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶表示装置の需要が増加している。又、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、スマートフォン、タブレット端末も広く普及しつつあることから、益々液晶表示装置の市場は拡大する状況にある。
このような液晶表示装置は、一般的に、カラーフィルタ、対向基板、これらに挟持された液晶層を有する液晶セル部を有し、更に、バックライト部とよばれる光源を有するものである。
又、最近では、量子ドットの技術を用いたバックライト部の開発も進められている。量子ドットとは、半導体のナノメートルサイズの微粒子をいう。又、量子ドットは、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、発光波長の可視領域全体に渡って調整することができる。量子ドットは、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができるため、表示装置が色純度の優れた三原色の光で照明することができるようになる。そのため、量子ドットを用いたバックライトによって、優れた色再現性を有する表示装置とすることができる。
この表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートは、半導体のナノメートルサイズの微粒子を樹脂の層に分散させた蛍光体層と、蛍光体層の劣化を抑制するために、蛍光体層の両表面に、バリアフィルムを積層させ、LED光源と組み合わせた構成を有する。
例えば、蛍光体が含有される蛍光体層にバリアフィルムを積層した波長変換シートであって、バリアフィルムが所定のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にバリア層を積層した波長変換シート及びそれを用いたバックライトユニットが開発されている(特許文献1)。バリア性及び透明性に優れたバリアフィルムを使用した波長変換シートであることで、より自然に近い鮮やかな色彩に、かつ色調の優れた表示装置を提供することができる。
WO2015/037733
波長変換シートは空気中の酸素と遮断されることが必要である。例えば、波長変換シートに硫化物量子ドットが使用された場合、空気中の酸素によって量子ドット粒子表面のS(硫黄)が光酸化され、それに伴い非輻射再結合中心となる欠陥が発生することで蛍光強度が低下する。特に、波長変換シートを高温環境下に晒した場合には、上記のメカニズムによって光酸化の速度が上昇し、蛍光強度が更に劣化する。
波長変換シートの量子ドット粒子表面から空気中の酸素を遮断するために、量子ドットを用いた蛍光体層の両表面側にバリアフィルムがそれぞれ配置された波長変換シートを挙げることができる。波長変換シート用のバリアフィルムとしては、例えば、樹脂等からなる基材層と、有機被覆層及び/又は無機酸化物薄膜層からなるバリア層とが積層された積層バリアフィルムを挙げることができる。
しかしながら、バリア層がバリアフィルムの最外面に積層された場合、バリアフィルムをロールする等の取扱いにより、基材層とバリア層とが接触し、バリア層に傷や割れが発生する場合がある。バリアフィルムのバリア層に傷や割れが発生した場合には、バリア層に傷や割れから水蒸気又は酸素が透過し、波長変換シートの歩留りの低下や波長変換シートの蛍光体層に欠陥が生じる原因になり得る。
特に、波長変換シートを高温環境下に晒した場合には、上記のメカニズムによって蛍光強度が更に低下する。又、高温環境下においては、バリアフィルム自体の酸素透過率が上昇する。よって、波長変換シートを高温環境下に晒した場合には、蛍光強度の劣化が更に進行することとなる。
そのため、バリアフィルム製造後の波長変換シートの製造段階におけるバリアフィルムの取扱いによるバリア層に傷や割れの発生を軽減し、且つ、波長変換シートを高温環境下に晒した場合であっても、蛍光体層の欠陥の発生を抑制することのできる波長変換シート用のバリアフィルム及びそれを用いた波長変換シートの開発が強く求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高温環境下に晒した場合であっても、酸素バリア性の低下が少なく、また、波長変換シートの製造段階におけるバリアフィルムの取扱いによるバリア層に傷や割れの発生を軽減し、バリア層に傷や割れの発生に起因する蛍光体層の欠陥の発生を抑制することのできる波長変換シート用のバリアフィルム及びそれを用いた波長変換シートを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層され、蛍光体層に積層される各基材フィルムの厚みが最適化されたバリアフィルムを備えた波長変換シートであれば上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートであって、量子ドットを用いた蛍光体層の両表面側にバリアフィルムがそれぞれ配置されており、それぞれの前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側から、少なくとも第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、前記第1基材フィルムの厚みは8μm以上50μm以下であって、前記第2基材フィルムの厚みは50μm超200μm以下である、波長変換シート。
(2) それぞれの前記バリア層が、有機被覆層及び/又は無機酸化物層で構成される、1又は複数の層である、(1)に記載の波長変換シート。
(3)(1)又は(2)に記載の波長変換シートを備えたバックライト光源を用いた表示装置。
(4)表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートを構成し、量子ドットを用いた蛍光体層の両表面側に配置されるバリアフィルムであって、第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、前記第1基材フィルムの厚みは8μm以上50μm以下であって、前記第2基材フィルムの厚みは50μm超200μm以下である、バリアフィルム。
本発明の波長変換シートは、高温環境下に晒した場合であっても、酸素バリア性の低下が少なく、量子ドットの劣化による蛍光強度の低下を防止することができる波長変換シートである。また、波長変換シートの製造工程におけるバリアフィルムのバリア層の傷や割れの発生を軽減し、バリア層に傷や割れの発生に起因する蛍光体層の欠陥を抑制することのできる波長変換シートである。
本発明の一実施形態の波長変換シートを模式的に表した断面図である。 本発明の一実施形態のバリアフィルムを模式的に表した断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<波長変換シート>
本実施形態の波長変換シート1は、図1に示すように、蛍光体112と封止樹脂111とが含有される蛍光体層11と、蛍光体層11の両表面に配置されるバリアフィルム12と、が積層された表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートである。蛍光体層11の両表面に、バリアフィルム12を積層させることにより、バリア性に優れる波長変換シートとすることができる。尚、本明細書において蛍光体層の両表面側とは、波長変換シート1をバックライト光源として用いた場合に、光源が配置されている側(入光面側)と、バックライト光源が配置されている側から反対側(出光面側)と、の両方の表面側であることを意味する。
そして、バリアフィルム12は、図2に示すように、第1基材フィルム124と、バリア層122と、第2基材フィルム121と、がこの順に積層される。バリアフィルム12のバリア層122が最外面に配置されるような構成とはせずに、バリア層122が第1基材フィルム124と第2基材フィルム121とに挟持されるような構成とすることにより、波長変換シートの製造段階におけるバリアフィルムの取扱いによってバリア層に傷や割れの発生を抑制することができる。
又、本実施形態の波長変換シート1は、バリア層122が第1基材フィルム124と第2基材フィルム121とに挟持されるような構成であって、波長変換シートの最表面に配置される第2基材フィルム121の厚さが第1基材フィルムの厚さより厚い、50μm超の厚さである。波長変換シートの最表面に配置される第2基材フィルム121の厚さがこのような厚さであることにより、高温環境下における酸素バリア性を向上させることができる。
更に、本実施形態の波長変換シート1に関するバリアフィルムは、第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、バリア層がバリアフィルムの最表面に配置されることはない。そのため、バリアフィルム製造後にバリアフィルム12を巻き取り、バリアフィルム12を巻き取った状態で流通、運搬することも容易であり、バリアフィルム12のハンドリング性は高い。尚、第2基材フィルム121の厚さが200μm以下、好ましくは150μm以下であることにより、波長変換シート可撓性が向上し、表示装置のバックライト光源と貼り合せる際のハンドリング性が向上する。
又、バリア層122と蛍光体層11とが直接密着しない本実施形態の波長変換シート1であれば、仮にバリア層122に傷や割れ等の欠陥が発生したとしても、バリア層122と蛍光体層11との間に第1基材フィルム124が積層されていることにより、バリア層122の欠陥から通過した酸素や水蒸気が第1基材フィルム124内の平面内に拡散される。そのため、バリア層122の欠陥から通過した酸素や水蒸気は、蛍光体層11の表面の一点にのみ集中せずに、蛍光体層11の表面にある程度分散されて到達することとなる。そのため、蛍光体層11の劣化を分散させ、目立たなくすることができるという効果をも有する。
更に、本実施形態の波長変換シート1の蛍光体層の側に配置される第1基材フィルム124は、膜厚が8μm以上50μm以下と調整されている。蛍光体層11の側に配置される第1基材フィルム124の膜厚を調整することにより、第1基材フィルム124のバリア性を向上させ、又、仮にバリア層122に傷や割れ等の欠陥が発生したとしても、バリア層122の欠陥から通過した酸素や水蒸気が蛍光体層11の表面にある程度分散されて到達し蛍光体層11の劣化を分散させ目立たなくするという効果をより効果的に奏する波長変換シートとすることができる。
本実施形態の波長変換シート1は、蛍光体層近傍に配置される第1基材フィルムの厚みが8μm以上50μm以下であり、蛍光体層から比較的遠傍に配置される第2基材フィルムの厚みを50μm超200μm以下である構成である。第1基材フィルムの厚みが上記範囲であることにより、第1基材フィルムの側面から通過する酸素や水蒸気の量を軽減することができる。又、第2基材フィルムの厚みを第1基材フィルムの厚みよりも厚くすることにより、バリアフィルムとしてのバリア性を向上するとともに、接着時のシワやたるみの発生を軽減できる程度の剛性を有するバリアフィルムとすることができる。第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、第1基材フィルムの厚さと第2基材フィルムの厚さが最適化することにより、上記の効果を全て有する波長変換シートとすることができる。そのような本実施形態の波長変換シート1は、従来には無い新規の波長変換シートである。
尚、本実施形態の波長変換シート1は、図1に示すように、バリア層122と第2基材フィルム121との間に接着剤層123が積層されていてもよい。接着剤層123が積層されることにより、第2基材フィルム121をバリアフィルムに接着剤層123を介して積層させることができる。尚、本発明の波長変換シートにおいて、第2基材フィルムを積層するための接着剤層は必須ではなく、例えば、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂に架橋剤等を含有させた樹脂により形成された樹脂層を積層することにより第2基材フィルム121をバリアフィルムに樹脂層を介して積層させてもよい。更に、熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融した熱可塑性樹脂を押し出して積層する押し出しラミネートにより接着する方法であってもよい。
次に本実施形態に関するバリアフィルム12及び蛍光体層11についてそれぞれ説明する。
[バリアフィルム]
本実施形態の波長変換シートにおいて、バリアフィルム12とは、図1に示すように蛍光体層11の両表面側に配置されるフィルムである。蛍光体層11の両表面に、バリアフィルム12を積層させることにより、バリア性に優れる波長変換シートとすることができる。
バリアフィルム12は、蛍光体層11側から、第1基材フィルム124と、バリア層122と、第2基材フィルム121と、がこの順に積層された積層フィルムである。又、バリア層122と第2基材フィルム121との間に接着剤層123が積層されている。以下、本実施形態に関するバリアフィルムの各構成について各々説明する。
(基材フィルム)
第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121に用いることのできる材質は、波長変換シートの機能を害することのない材質であれば特に制限はされず、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等の樹脂を挙げることができる。波長変換シートの機能を害することのない透明性と耐熱性等の観点からポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。尚、第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121の材質は同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
尚、本実施形態に関する第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121を形成する基材フィルムは、それぞれが単層からなるフィルムに限定されるものではなく、第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121のそれぞれが複数のフィルムを接着剤層等を介して積層されたフィルムであってもよい。尚、接着剤層は後述するバリア層122と第2基材フィルム121との間の接着剤層123を構成する接着剤と同様の接着剤を使用することができる。
第1基材フィルム124の厚みは、8μm以上50μm以下であり、8μm以上25μm未満であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることが更に好ましい。第1基材フィルム124の厚みが8μm以上であることにより、第1基材フィルム124のバリア性を向上させることができる。又、仮にバリア層122に傷や割れ等の欠陥が発生したとしても、バリア層122の欠陥から通過した酸素や水蒸気が蛍光体層11の表面にある程度分散されて到達し蛍光体層11の劣化を目立たなくするという効果をより効果的に奏する波長変換シートとすることができる。第1基材フィルム124の厚みが50μm以下であることにより、第1基材フィルム124の側面から通過する酸素や水蒸気を軽減することができる。
第2基材フィルム121の厚みは、50μm超200μm以下であることが好ましく、75μm以上150μm以下であることがより好ましい。第2基材フィルム121の厚みを50μmより厚くし、バリア層122を挟んで第1基材フィルム124と積層したので、高温環境下における酸素バリア性を向上させることができる。また、第2基材フィルム121の厚みが50μmより厚いことにより、接着時のシワやたるみの発生を軽減できる。第2基材フィルム121の厚みが200μm以下であることにより、波長変換シートの可撓性が向上し、表示装置のバックライト光源と貼り合せる際のハンドリング性が向上する。
本実施形態に関する第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121は、バックライト光源からの光が遮られることを回避するために、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態に関する第1基材フィルム124及び第2基材フィルム121は、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
[表面処理層]
本実施形態に関する第1基材フィルム124の一方のバリア層122側の表面には、後述するバリア層122との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、バリア層の積層前に予め、所望の表面処理層を設けてもよい(図示せず)。表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロ-放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他等を形成して設けることができる。
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシートと後述するバリア層との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコ-ト剤層、アンカーコート剤層、接着剤からなる層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
表面処理層に用いられる樹脂組成物としては、例えば、ポリエステル系樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド系樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を1又は2種以上併せて使用することができる。そして、これらの樹脂組成物を含有するコート剤を、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート等の公知の方法により、第1基材フィルム124の表面にコーティングし、溶剤等を乾燥除去することにより表面処理層を形成することができる。コート剤の塗布量は特に限定されるものではないが、0.1g/m以上5.0g/m以下であることが好ましい。
(プライマー層)
第1基材フィルム124の他方の蛍光体層11側の表面には、後述する蛍光体層11との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、蛍光体層の積層前に予め、所望のプライマー層を設けてもよい(図示せず)。プライマー層は、ポリウレタン系樹脂を含む樹脂から形成されるのが好ましく、更に、プライマー層は、シランカップリング剤と、充填材と、を含むことが好ましい。
ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナ-ト、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液ないし二液型ポリウレタン系樹脂を使用することができる。本実施形態において、上記のようなポリウレタン系樹脂を使用することにより、プライマー層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネート加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、波長変換シートの製造段階におけるバリアフィルムの取扱いによってバリア層の傷や割れの発生を抑制するものである。
プライマー層中には、上記のポリウレタン系樹脂組成物をプライマー層全量中40質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましい。70質量%以上であると、プライマー層の伸長度向上とバリア層のクラック発生を更に防止することができることから好ましい。
シランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルシリコ-ンの水溶液等の1種ないしそれ以上を使用することができる。
シランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、又は、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これが、第1基材フィルム124の表面上及び蛍光体層の表面上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、強固な結合を形成する。
プライマー層中には、上記のシランカップリング剤をプライマー層全量中1質量%以上30質量%以下含有することが好ましく、3質量%以上20質量%以下含有することがより好ましい。3質量%以上であると、バリア層とプライマー層とあるいはプライマー層と蛍光体層との密着性が向上する点で好ましい。20質量%以下であるとプライマー層の伸長度向上によるバリア層のクラックを防止できる点で好ましい。
本実施形態に関するポリウレタン系樹脂に含まれる充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末、その他等のものを使用することができる。これは、プライマー剤の粘度等を調整し、そのコ-ティング適性等を高めるものである。
プライマー層中には、上記の充填剤をプライマー層全量中0.5質量%以上30質量%以下含有することが好ましく、1質量%以上10質量%以下含有することがより好ましい。1質量%以上であると、プライマー層のコーティング性の向上と、波長変換シート用バリアフィルムあるいは波長変換シート用バリアフィルムを巻き取り形態にした時のプライマー層と対抗する基材とのブロッキングを防止する点で好ましく、10質量%以下であると、波長変換シート用バリアフィルムのヘイズを抑える点で好ましい。
プライマー層中には、更に、必要に応じて、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合してプライマー剤を調整する。
本実施形態に関するプライマー剤を、例えば、ロ-ルコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法で有機被覆層又は無機酸化物薄膜層の表面上にコーティングし、しかる後コーティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去して、本実施形態に関するプライマー層を形成することができる。なお、本実施形態において、プライマー層の膜厚としては、例えば、0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
(バリア層)
バリア層は、バリアフィルムにバリア性を付与する層であり、一般にポリビニルアルコール等の水溶性高分子等を含むコーティング剤を塗布して形成される有機被覆層、及び/又は、無機酸化物を蒸着することにより形成される無機酸化物薄膜層である。図2に示した本実施形態に関するバリア層は、有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが積層された複数の層からなる層である。尚、本発明に関するバリア層は、有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが積層された複数の層に限定されるものではなく、有機被覆層と無機酸化物薄膜層がそれぞれ単層であってもよく、又は有機被覆層と無機酸化物薄膜層とが交互に2層以上積層されるような層であってもよい。又、図2に示したバリアフィルム12のように、有機被覆層が無機酸化物薄膜層と密着して積層されることにより有機被覆層よりも内層に積層される無機酸化物薄膜層に傷や割れの発生を軽減することができる。
有機被覆層121aは、後工程での二次的な各種損傷を防止すると共に、バリアフィルムに高いバリア性を付与する層である。有機被覆層は、例えば水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物、水溶液若しくは水/アルコール混合溶液と、を含むコーティング液を塗布して形成される。有機被覆層121aは、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物及び金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも1種を成分として含有していることが好ましい。有機被覆層121aに用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びデンプン等が挙げられるが、特にポリビニルアルコールを用いた場合に、有機被覆層121aのガスバリア性が最も優れたものとなる。
有機被覆層121aの膜厚は、特に限定されるものではないが、100nm以上500nm以下であることが好ましい。有機被覆層121aの膜厚が100nm以上であることにより、バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができる。有機被覆層121aの膜厚が500nm以下であることにより、透明性に優れ、波長変換シートの特性を低下させることがなくなる。
無機酸化物薄膜層121bは、有機被覆層121aと同様にバリアフィルムに高いバリア性を付与する層である。無機酸化物薄膜層121bは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム又はこれらの混合物からなる層を例示することができる。バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができるという観点及びバリアフィルムの生産性の観点から、酸化アルミニウム又は酸化珪素を含むことが好ましい。
無機酸化物薄膜層121bを形成する方法は、無機酸化物を蒸着することにより形成する方法を挙げることができる。
無機酸化物薄膜層121bの膜厚は、特に限定されるものではないが、10nm以上500nm以下であることが好ましい。無機酸化物薄膜層121bの膜厚が10nm以上であることにより、無機酸化物薄膜層が均一となり、バリアフィルムに十分なバリア性を付与することができる。無機酸化物薄膜層121bの膜厚が500nm以下であることにより、無機酸化物薄膜層121bに十分に可撓性を付与することができるようになり、無機酸化物薄膜層121bに傷や割れが発生する危険性を軽減することができる。
本実施形態に関するバリア層122は、バックライト光源からの光が遮られることを回避するために、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態に関するバリアフィルム12は、JIS K 7361に基づき測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、全光線透過率は、PET12μmフィルム上にバリア層を形成した際の測定値である。
(接着剤層)
本実施形態の波長変換シート1は、図1に示すように、バリア層122と第2基材フィルム121との間に接着剤層123が積層されている。接着剤層123を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2-エチルヘキシルエステル等のホモポリマ-、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレ-ト系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマ-との共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロ-ス系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノ-ル樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコ-ン系接着剤、アルカリ金属シリケ-ト、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用することができる。
接着剤層123を構成する接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、又、その性状は、フィルム・シ-ト状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
接着剤層123を構成する接着剤は、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1g/m以上10g/m以下(乾燥状態)が望ましい。
尚、本発明の波長変換シートにおいて、バリア層に第2基材フィルムを積層するための層(バリア層と第2基材フィルムとの間に積層される層)は、接着剤層に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂に架橋剤等を含有させた樹脂により形成された樹脂層を積層することにより第2基材フィルム121をバリアフィルムに樹脂層を介して積層させてもよい。更に、EVA、アイオノマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融した熱可塑性樹脂を押し出して積層する押し出しラミネートにより接着する方法であってもよい。
(蛍光体層)
本実施形態の波長変換シートにおいて、蛍光体層11とは、バックライト光源から発せられた光の発光波長を調整するための層である。蛍光体層11には、量子ドットからなる1種又は2種以上の蛍光体が含有される。
蛍光体110を形成する量子ドットは、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有する所定のサイズの半導体粒子である。量子ドットは、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。量子ドットのサイズ又は物質の組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができ、様々なレベルの波長帯のエネルギーを得ることができる。とりわけ、量子ドットは、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができる。このため、表示装置が色純度の優れた三原色の光で照明することができるようになることで、優れた色再現性を有する表示装置とすることができる。
蛍光体は、発光部としてのコアが保護層(シェル)により被覆されたものである。コアには、例えばセレン化カドニウム(CdSe)、テルル化カドニウム(CdTe)、硫化カドニウム(CdS)を使用することができる。保護層には硫化亜鉛(ZnS)を使用することができる。
蛍光体層11は、蛍光体110が含有された封止樹脂111を積層することで形成することができる。例えば、蛍光体110と封止樹脂111とが含有された混合液を基材層の表面に塗布し、硬化することにより形成することができる。封止樹脂111は、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート樹脂等のアクリル樹脂の光重合樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、又はEVA、アイオノマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂に架橋剤等を含有させた樹脂を挙げることができる。蛍光体層と基材層との密着性の観点からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1以上の樹脂を含むことが好ましい。又、これらを単独で使用してもよいし、若しくは1つ以上を混合して使用してもよい。また密着性を高めるための密着層を形成してもよい。
<波長変換シートの製造方法>
本実施形態の波長変換シートの製造方法は、例えば、第1基材フィルムの一方の表面にバリア層を積層するバリア層積層工程と、第1基材フィルムのバリア層の表面に接着剤層を介して第2基材フィルムを積層する積層工程と、一対のバリアフィルムを蛍光体層を介して積層し、波長変換シートを製造する蛍光体層積層工程と、を含む波長変換シートの製造方法を挙げることができる。
[バリア層積層工程]
バリア層積層工程では、第1基材フィルムの一方の表面にバリア層として有機被覆層、及び/又は、無機酸化物薄膜層を積層する。有機被覆層は、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子等を含むコーティング剤を塗布、硬化して形成することができる。コーティング剤を塗布する方法は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法の塗布方式を挙げることができる。無機酸化物薄膜層は、無機酸化物を蒸着することにより形成することができる。無機酸化物を蒸着する方法は、CVD、PVDなどの真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理的蒸着法を挙げることができる。尚、基材フィルムの一方の表面に予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤からなる層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
尚、この段階での、基材フィルムとバリア層とを積層した段階におけるバリア性としては、JIS K-7126による酸素透過度の値が、0.5cc/m・day・atm以下(23℃、90%RH)であることが好ましい。又、JIS K-7129 B法による水蒸気透過度の値が、0.5g/m・day・atm以下(40℃、90%RH)であることが好ましい。酸素透過度は、例えば、MOCON社製 酸素透過率測定装置 OX-TRANにて測定できる(モコン法)。又、水蒸気バリア性は、例えば、MOCON社製 水蒸気透過率測定装置 PERMATRANにて測定できる。
[第2基材フィルム積層工程]
第2基材フィルム積層工程では、第1基材フィルムのバリア層の表面に接着剤層を介して第2基材フィルムを積層し、バリアフィルムを製造する。接着剤を塗布する方法は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法、あるいは、印刷法等によって施すことができる。
[蛍光体層積層工程]
蛍光体層積層工程は、一対のプライマー層付バリアフィルムのうち1のバリアフィルムのプライマー層の表面に蛍光体110と封止樹脂111とが含有された混合液(インク)を塗布し、他のプライマー層付バリアフィルムのプライマー層の積層側の面と混合液(インク)の塗布面とを接触させ、硬化させる工程である。蛍光体層積層工程を経ることによって、図1の実施形態のような波長変換シートを製造することができる(プライマー層図示せず)。
<表示装置>
波長変換シートを用いることにより、バックライト光源の発光波長の可視領域全体に渡って調整可能である。そのため、色純度の優れた三原色の光で照明することが可能となり、優れた色再現性を有する表示装置とすることができる。更に、本実施形態の波長変換シートを用いることにより、高温環境下に晒した場合においても、酸素バリアの低下が防げるので、蛍光強度の低下が起きにくい。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<バリアフィルムの製造>
[試験例1]
第1基材フィルムの表面にバリア層を積層した。具体的には、12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの1の表面に酸化珪素をCVD真空蒸着させることにより無機酸化物薄膜層を30nm積層した。そして、その無機酸化物薄膜層の表面に、テトラエトキシランとポリビニルアルコール等を含むコーティング剤を塗布し、硬化させることにより有機被覆層を200nm積層して、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの1の表面に無機酸化物薄膜層と有機被覆層からなるバリア層を形成した。
その後、バリア層側(有機被覆層)の表面に接着剤層と第2基材フィルムを積層した。具体的には、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアロールコート法により、バリア層(有機被覆層)の表面にコーティングして、厚さ4.0g/m(乾燥状態)の接着剤層を形成した。次に、接着剤層の表面に第2基材フィルムとして75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ね合わせ、ドライラミネート積層することにより、試験例1のバリアフィルム(層構成が、第1基材フィルム/バリア層/接着剤層/第2基材フィルムの順(「第1基材フィルム」と、「バリア層」と、「接着剤層」と、「第2基材フィルム」と、がこの順に積層されていることを意味し、以下、バリアフィルムや波長変換シートの層構成を「/」を用いてこのように表記する。))製造した。尚、試験例1のバリアフィルムは、ロール状の1000mm×200mmのバリアフィルムであり、ロール状にした際には第1基材フィルムと第2基材フィルムとが接触する。
[試験例2]
第2基材フィルムとして100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用したこと以外、試験例1と同様に試験例2のバリアフィルム(層構成が、第1基材フィルム/バリア層/接着剤層/第2基材フィルムの順)を製造した。尚、試験例2のバリアフィルムは、ロール状の1000mm×200mmのバリアフィルムであり、ロール状にした際に第1基材フィルムと第2基材フィルムとが接触する。
[試験例3]
第2基材として150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用したこと以外、試験例1と同様に試験例3のバリアフィルム(層構成が、第1基材フィルム/バリア層/接着剤層/第2基材フィルムの順)を製造した。尚、試験例3のバリアフィルムは、ロール状の1000mm×200mmのバリアフィルムであり、ロール状にした際に第1基材フィルムと第2基材フィルムとが接触する。
[試験例4]
第1基材フィルムの表面にバリア層を積層した。具体的には、12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの1の表面に酸化珪素をCVD真空蒸着させることにより無機酸化物薄膜層を30nm積層した。そして、その無機酸化物薄膜層の表面に、テトラエトキシランとポリビニルアルコール等を含むコーティング剤を塗布し、硬化させることにより有機被覆層を200nm積層して、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの1の表面に無機酸化物薄膜層と有機被覆層からなるバリア層を形成した。
その後、バリア層側(有機被覆層)の反対側(PET側)の表面に接着剤層と第2基材フィルムを積層した。具体的には、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアロールコート法により、バリア層側(有機被覆層)の反対側(PET側)の表面にコーティングして厚さ4.0g/m(乾燥状態)の接着剤層を形成した。次に、接着剤層の表面に第2基材フィルムとして50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、を重ね合わせ、ドライラミネート積層することにより、試験例4のバリアフィルム(層構成が、第2基材フィルム/接着剤層/第1基材フィルム/バリア層の順)を製造した。尚、試験例4のバリアフィルムはロール状の1000mm×200mmのバリアフィルムであり、ロール状にした際に第2基材フィルムとバリア層とが接触する。
[試験例5]
第1基材フィルムとして75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用したこと以外、試験例2と同様に試験例5のバリアフィルム(層構成が、第1基材フィルム/バリア層/接着剤層/第2基材フィルムの順)を製造した。尚、試験例5のバリアフィルムは、ロール状の1000mm×200mmのバリアフィルムであり、ロール状にした際に第1基材フィルムと第2基材フィルムとが接触する。
そして、上記の試験例1、2、3、5のバリア層が積層されたバリアフィルムの第1基材側の表面にポリウレタン系樹脂組成物をコーティングし、次いで、120℃で20秒間乾燥して、ポリウレタン系樹脂組成物によるプライマー層を500nm積層し、プライマー層付きのバリアフィルムを製造した。また、試験例4については、バリア層側の表面に同様のポリウレタン系樹脂組成物をコーティングすることによりプライマー層を積層した。
<バリアフィルムの酸素透過率測定試験>
試験例1~5のバリアフィルム(プライマー層付きのバリアフィルム)について、酸素バリアの酸素透過率を測定した。具体的には、室温高湿環境(23℃90%RT、表1中「23℃90%」と表記)及び高温(80℃、表1中「80℃」と表記)環境において各バリアフィルムの酸素透過率を測定した。尚、酸素透過率の測定は、MOCON社製 酸素透過率測定装置 OX-TRANにて測定を行った(モコン法)。酸素透過率の測定結果を表1に示す。
Figure 0007066967000001
[蛍光体層を形成する混合液(インク)の製造]
蛍光体層の形成に用いられる蛍光体と封止樹脂とが含有された混合液(インク)を製造した。具体的には、コアがセレン化カドニウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)からなる蛍光体(平均粒径3~5nmの量子ドット)に、封止樹脂(ウレタンアクリレート系樹脂)を封止樹脂100質量部に対して蛍光体が1質量部となるように混合して蛍光体層を形成する混合液(インク)を製造した。
[波長変換シートの製造]
上記の試験例1~5のプライマー層付きのバリアフィルム及び混合液(インク)を用いて実施例及び比較例の波長変換シートを製造した。具体的には、上記の試験例1、2、3、5については、バリアフィルムの第1基材フィルム側の表面に積層されているプライマー層の表面に、上記の試験例4については、バリア層の表面に積層されているプライマー層の表面に、蛍光体層を形成する混合液(インク)を塗布し、膜厚が100μmとなるように蛍光体層を積層した。
ついで、上記試験例1~5のプライマー層付きのバリアフィルムに積層された蛍光体層に、別途用意した同様の試験例1~5の他のプライマー層付きのバリアフィルムを、他のプライマー層付きのバリアフィルムのプライマー層と蛍光体層が密着するように積層し、蛍光体層の両表面側にバリアフィルムがそれぞれ配置された実施例及び比較例の波長変換シートを製造した。
その後にUV照射により、蛍光層を硬化させ蛍光層の両面にバリアフィルムをラミネートすることにより、実施例及び比較例の波長変換シートを製造した。
実施例1~3と比較例2の波長変換シートの層構成は、第2基材フィルム/接着剤層/バリア層/第1基材フィルム/プライマー層/蛍光層/プライマー層/第1基材フィルム/バリア層/接着剤層/第2基材フィルム、であり、比較例1の層構成は、第2基材フィルム/接着剤層/第1基材フィルム/バリア層/プライマー層/蛍光層/プライマー層/バリア層/第1基材フィルム/接着剤層/第2基材フィルム、である。
<環境試験後の蛍光体層の劣化確認試験>
実施例及び比較例の波長変換シートについて、環境試験後の蛍光体層の劣化確認試験を行った。具体的には、実施例及び比較例の波長変換シートを60℃、湿度90%及び80℃湿度0%の環境試験にそれぞれ500時間放置し、500時間放置後の実施例及び比較例の波長変換シートを青色LEDパネルの上に配置し、目視にて蛍光体層の劣化の確認を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 0007066967000002
表2より、第1基材フィルムと、バリア層と、第2基材フィルムと、がこの順に積層され、蛍光体層に積層第1基材フィルムの厚みが8μm以上50μm以下であって、第2基材フィルムの厚みが50μm超150μm以下であるバリアフィルムを備えた波長変換シートは、局所的に数mmサイズの点欠陥、輝度の低下あるいは波長変換シートの外周状に渡って欠陥が発生していない。よって、実施例1~3の波長変換シートは、バリア層に傷や割れの発生を抑制することができ、かつ、酸素による量子ドットの劣化による蛍光強度の低下を防止することができる波長変換シートであることが分かる。
一方、比較例1の波長変換シートは、環境試験後において、局所的に数mmサイズの点欠陥が多数見られた。これは、試験例4のバリアフィルムの製造後にロール状にした際に第2基材フィルムとバリア層とが接触したため、バリア層が部分的に劣化し、蛍光強度が低下したためと考えられる。
又、比較例2の波長変換シートは、環境試験後において、波長変換シートの外周状に渡って欠陥が見られた。これは、第1基材フィルムが50μmを超える膜厚となっており、第1基材フィルムの側面から酸素や水蒸気が通過し、波長変換シートの側面近傍の外周部分の蛍光強度が低下したためと考えられる。
1 波長変換シート
11 蛍光体層
111 封止樹脂
112 蛍光体
12 バリアフィルム
121 第2基材フィルム
122 バリア層
122a 有機被覆層
122b 無機酸化物薄膜層
123 接着剤層
124 第1基材フィルム

Claims (4)

  1. 表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートであって、
    量子ドットを用いた蛍光体層の両表面側にバリアフィルムがそれぞれ配置されており、
    それぞれの前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側から、少なくともポリウレタン系プライマー層と、ポリエチレンテレフタレートで構成される第1基材フィルムと、無機酸化物層を含むバリア層と、ポリウレタン系接着剤層と、ポリエチレンテレフタレートで構成される第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、
    前記ポリウレタン系接着剤層と前記第2基材フィルムとがバリア層を介さずに積層されており、
    前記第1基材フィルムの厚みは8μm以上50μm以下であって、前記第2基材フィルムの厚みは50μm超200μm以下であり、
    前記バリアフィルムの80℃における酸素透過率が0.33cc/m・day・atm以下である、波長変換シート。
  2. それぞれの前記バリア層が、有機被覆層及び無機酸化物層で構成される複数の層である、請求項1に記載の波長変換シート。
  3. 請求項1又は2に記載の波長変換シートを備えたバックライト光源を用いた表示装置。
  4. 表示装置のバックライト光源に用いられる波長変換シートを構成し、量子ドットを用いた蛍光体層の両表面側に配置されるバリアフィルムであって、
    少なくともポリウレタン系プライマー層と、ポリエチレンテレフタレートで構成される第1基材フィルムと、無機酸化物層を含むバリア層と、ポリウレタン系接着剤層と、ポリエチレンテレフタレートで構成される第2基材フィルムと、がこの順に積層されており、
    前記ポリウレタン系接着剤層と前記第2基材フィルムとがバリア層を介さずに積層されており、
    前記第1基材フィルムの厚みは8μm以上50μm以下であって、前記第2基材フィルムの厚みは50μm超150μm以下であり、
    前記バリアフィルムの80℃における酸素透過率が0.33cc/m・day・atm以下である、バリアフィルム。
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