JP7066131B2 - レーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置 - Google Patents
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Description
レーザ光を照射領域に照射する照射部及び前記照射領域に金属粉末を供給する供給部を有するヘッドと、前記ヘッド及び被加工物を相対的に移動させる移動機構と、を備えたレーザ積層造形装置を用いて、被加工物の表面に造形物を形成する方法であって、
レーザ光の照射及び金属粉末の供給を行う状態で、前記ヘッドを前記被加工物に対して移動させて積層する処理を複数回行って、前記被加工物の上に複数層からなる積層物を形成する積層工程と、
前記積層工程の後、レーザ光の照射を行い金属粉末の供給を行なわない状態で、前記ヘッドを前記被加工物に対して移動させて、前記積層物の表面にレーザ光を照射して再溶融させる再溶融工程と、
を含む積層、再溶融プロセスを少なくとも1回実施して前記造形物を形成する。
レーザ光を照射領域に照射する照射部及び前記照射領域に金属粉末を供給する供給部を有するヘッドと、
前記ヘッド及び被加工物を相対的に移動させる移動機構と、
前記照射部、前記供給部及び前記移動機構を制御する制御部と、
を備えた、被加工物の表面に造形物を形成する装置であって、
前記制御部が、
前記照射部及び前記供給部をオンにした状態で前記移動機構を駆動する制御処理を複数回行うことにより、前記ヘッドが前記被加工物に対して移動して積層が行なわれる処理が複数回行なわれて、前記被加工物の上に複数層からなる積層物が形成される積層ステップと、
前記積層ステップの後、前記照射部をオンにし、前記供給部をオフにした状態で前記移動機構を駆動することにより、前記積層物の表面にレーザ光が照射されて再溶融が生じる再溶融ステップと、
を含む積層、再溶融制御処理を少なくとも1回実施する。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では前述の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
はじめに、図1を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係るレーザ積層造形装置の説明を行う。図1は、本発明の1つの実施形態に係るレーザ積層造形装置の構成を模式的に示す図である。図1(a)は、レーザ積層造形装置2の吹出ノズル22部分を断面で示した模式的な側面図であり、図1(b)は、図1(a)の矢視A-A図である。
照射部10について更に詳細に述べれば、照射部10は、レーザ光源装置12と、レーザ光源装置12の出射側に光学的に接続された光ファイバ14と、光ファイバ14の出射側に光学的に接続された光学系16とを備える。本実施形態に係るレーザ光源装置12は、波長1060nmのレーザ光を出射するが、これに限られるものではなく、例えば、800~1080nm程度の近赤外波長のレーザ光であれば、任意の波長のレーザ光を用いることができる。レーザ光源装置12の出力としては、2kW~10kWを例示できるが、これに限られるものではない。レーザ光源装置12のタイプも、近赤外線領域のレーザ光を出射するレーザ光源であれば、YAGレーザをはじめとするその他の任意のシングルモードまたはマルチモードレーザ装置を用いることができる。
供給部20ついて更に詳細に述べれば、供給部20は、吹出ノズル22と、貯蔵部26と、吹出ノズル22及び貯蔵部26の間を繋ぐ供給管24とを備える。貯蔵部26に貯蔵された金属粉末が、キャリアガスとともに、供給管24内を流れて、供給部20の吹出ノズル22に流入する。吹出ノズル22には、供給管24と繋がったヘッド22Bと、ヘッド22Bに繋がった複数の流路22Aを備える。図1(a)の矢視A-A図である図1(b)に示すように、本実施形態では、略円形断面の8個の流路22Aが同心円状に配置されている。その内側の領域から、レーザ光が照射される。ただし、流路22Aの数は8に限られるものではなく、その他の任意の数の流路22Aを設けることができる。
更に、吹出ノズルとして、流路が円周状に繋がったテーパ状ノズルを用いることもできる。
流れて、流路22Aの出射口から照射領域Sに供給される(Pで示す破線の矢印参照)。キャリアガスとともに各流路22Aの出射口から流出した金属粉末が、照射領域Sに到達するように、流路22Aは同心円の中心側に向けて傾斜して配置されている。これにより、供給管24からヘッド22Bに流入した金属粉末Pは、各流路22A内を流れて、流路22Aの出射口から照射領域Sに供給される。
そして、照射領域Sに供給された金属粉末はレーザ光の照射により溶融して、金属の溶融池(メルトプール)が形成される。
キャリアガスとして、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いることが好ましい。更に、粉末材料を含むキャリアガスの外側に、不活性ガスからなるシールドガスを供給することもできる。これにより、レーザ積層における材料の酸化等を抑制することができる。また、レーザ光源装置12側に粉末材料等が流入することを防ぐため、同心円状に配置された流路22Aの内側の領域から、シールドガスを吹き出すようにすることもできる。
移動機構40について更に詳細に述べれば、図1に示すように、被加工物60をテーブルに固定し、移動機構40のアクチュエータ42により、ヘッド30を図面水平方向(白抜き矢印参照)に移動させることができる。これにより、レーザ光Lと粉末材料Pを供給しながら被加工物60に対して走査してレーザ積層を行うことができる。なお、逆に、ヘッド30の位置を固定し、被加工物60を取り付けたテーブルを、移動機構のアクチュエータにより、図面水平方向に移動させることもできる。また、ヘッド30及び被加工物60の両方を移動させることもできる。
本実施形態に係るレーザ積層造形装置2は、単独のレーザ積層造形装置の場合も、工作機械に組み込まれる場合もあり得る。工作機械に組み込まれる場合には、移動機構40として工作機械の移動機構を用いることもできる。
次に、図2及び図3を参照しながら、上記のレーザ積層造形装置2を用いて、被加工物60の表面上に積層物50を形成するレーザ積層造形方法の説明を行う。図2は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ積層造形方法の積層工程を模式的に示す図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ積層造形方法の再溶融工程を模式的に示す図である。
はじめに、図2を参照しながら積層工程の説明を行う。積層工程では、照射部10によるレーザ光Lの照射及び供給部20による金属粉末Pの供給を行う状態で、移動機構40によりヘッド30を被加工物60に対して移動させる。供給部20により照射領域Sに供給された金属粉末は、レーザ光Lの照射により溶融して、被加工物60上に溶融池(メルトプール)が形成される。ヘッド30の移動により、溶融池(メルトプール)の位置が移動し、レーザ光Lが照射されなくなった領域の溶融金属は凝固して、被加工物60の上に金属層が形成される。これにより、所定のストロークにおいて、金属を積層する処理が実施できる。
また、1回の積層する処理におけるヘッド30の被加工物60に対する移動量を変化させて、ヘッド30の移動開始地点、移動終了地点に対応する積層物50の側面において、斜めになった側面(例えば、図5、図6参照)や、曲面状の側面を形成することもできる。
次に、図3を参照しながら、再溶融工程の説明を行う。再溶融工程では、上記の積層工程で複数層の積層物50を形成した後、照射部10によるレーザ光Lの照射を行い、かつ供給部20による金属粉末の供給を行なわない状態で、移動機構40によりヘッド30を被加工物60に対して移動させる。これにより、積層物50の表面にレーザ光Lを照射して、積層物50を再溶融させる再溶融工程を実施できる。
具体的には、金属を積層する処理を10回(例えば、所定のストロークを5往復)行って10層の金属の積層物を形成する積層工程の後に、再溶融工程(例えば、所定のストロークを片道1回)を行う積層、再溶融プロセスを複数回繰り返して、数十層の造形物を形成する場合を例示することができる。なお、1回の積層工程で金属を積層する処理を繰り返す回数は、任意の回数を選択することができる。
本実施形態では、再溶融工程において、積層物50にレーザ光Lを照射して再溶融するので、レーザ照射方向(照射されたレーザ光Lの光軸方向)に向かって温度勾配が生じる。この温度勾配に応じて再凝固することにより、金属組織を改質され、結晶方位の乱れを低減できる。特に、Ni基合金等においては、金属結晶がこの温度勾配方向に沿って成長するため、結晶方位の乱れを効果的に解消できる。
金属組織を改質することにより、空孔を低減することができ、造形物の強度、特に表面近傍における強度を向上させるとともに、表面硬度を向上させることができる。後述するように、面心立方構造を有する造形物においては、再溶融工程により、金属結晶の(200)面をレーザ光Lが照射された積層物表面に向けることができるので、造形物の表面硬度を効果的に向上させることができる。
上記の積層工程及び再溶融工程を実施するための、図1に示すレーザ積層造形装置2の制御部70は、以下の制御ステップを実施する。
(1)積層ステップ
照射部10及び供給部20をオンにした状態で、移動機構40を駆動する制御処理を複数回行う。これにより、ヘッド30が被加工物60に対して移動して積層が行なわれる処理が複数回行なわれて、被加工物60の表面上に複数層からなる積層物が形成される。
(2)再溶融ステップ
上記の積層ステップの後、照射部10をオンにし、かつ供給部20をオフにした状態で移動機構40を駆動する制御処理を行う。これにより、積層物50の表面にレーザ光Lが照射されて再溶融処理を行うことができる。
(3)以上のような積層ステップ及び再溶融ステップを含む積層、再溶融制御処理を少なくとも1回実施する。
始めに図4を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るレーザ積層造形方法の説明を行う。図4は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ積層造形方法の再溶融工程を構成する(a)平面再溶融処理、及び(b)側面再溶融処理を模式的に示す図である。
図4では、上記の実施形態と同様に、広面である上面52、及び上面52と略垂直な側面54を有する積層物50を再溶融する場合を示す。
以上のように、第2の実施形態に係るレーザ積層造形方法により、上面だけでなく側面においても、強度及び表面硬度を向上させることができる。例えば、造形物が上面及び側面を稼働面とする工具チップの場合、強度及び表面硬度において優れた稼働面を有する工具チップを提供することができる。
次に、図5を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係るレーザ積層造形方法の説明を行う。図5は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ積層造形方法の再溶融工程を構成する(a)平面再溶融処理、及び(b)傾斜面再溶融処理を模式的に示す図である。
図5では、広面である上面52、及び上面52に対して角度θだけ傾斜した傾斜面56を有する積層物50を再溶融する場合を示す。
なお、傾斜角θが90度の場合が、図4に示す第2の実施形態に該当するということもできる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係るレーザ積層造形方法の説明を行う。図6は、本発明の第4の実施形態に係るレーザ積層造形方法の再溶融工程を模式的に示す図である。
図6では、広面である上面52の両側に、上面52に対して角度θだけ傾斜した傾斜面56A及び傾斜面56Bを有する積層物50を再溶融する場合を示す。
実際に上記の積層工程及び再溶融工程を実施して、被加工物の表面に造形物を形成して試験した結果を以下に詳細に述べる。なお、本実施例では、吹出ノズルとして、流路が円周状に繋がったテーパ状ノズルを用いた。
始めに、再溶融処理が造形物内部の空孔に与える影響を試験的に評価する空孔率低減試験を行った。空孔率低減試験では、積層工程で10層の積層物を形成するごとに再溶融工程を行う積層、再溶融プロセスを3回、5回及び7回繰り返して、30層、50層及び70層の造形物を実施例として形成した。更に、再溶融工程を行なわずに積層工程だけで、30層、50層及び70層の造形物を比較例として形成した。
空孔率低減試験における積層工程の条件及び再溶融工程の条件を下表に示す。
以上のように、積層工程に加えて再溶融工程を実施する本発明に係るレーザ積層造形方法によって、結晶方位の乱れを解消することにより、空孔を低減することができ、造形物の表面近傍における強度を向上させることができることが実証できた。
次に、再溶融処理が結晶方位及び表面硬さに与える影響を試験的に評価する結晶方位制御試験を行った。結晶方位制御試験における積層工程の条件及び再溶融工程の条件を下表に示す。
図8(a)に示すように、積層物をジグに固定し、ステージを90度回転さて水平から垂直にする。次に、図8(b)に示すように、一方の側面の1 ラインにレーザ光を照射して再溶融処理を行い、ステージを180度回転させて、反対の側面の1 ラインにもレーザ光を照射して再溶融を行う。次に、図8(b)に示すY方向に、レーザヘッド3mm移動させる。以上のような両側面のレーザ光照射を、両側面全体に再溶融処理が行われるまで繰り返す。
以上のように、造形物の両側面に再溶融処理を行い、結晶方位を造形物表面に向かせたことにより、表面硬さの向上が実現できることが実証された。
10 照射部
12 レーザ光源装置
14 光ファイバ
16 光学系
20 供給部
22 吹出ノズル
22A 流路
22B ヘッド
24 供給管
26 貯蔵部
30 ヘッド
40 移動機構
42 アクチュエータ
50 積層物
52 上面
54 側面
56、56A、56B 傾斜面
60 被加工物
70 制御部
S 照射領域
L レーザ光
P 金属粉末
Claims (7)
- レーザ光を照射領域に照射する照射部及び前記照射領域に金属粉末を供給する供給部を有するヘッドと、前記ヘッド及び被加工物を相対的に移動させる移動機構と、を備えたレーザ積層造形装置を用いて、被加工物の表面に造形物を形成する方法であって、
レーザ光の照射及び金属粉末の供給を行う状態で、前記ヘッドを前記被加工物に対して移動させて積層する処理を複数回行って、前記被加工物の上に複数層からなる積層物を形成する積層工程と、
前記積層工程の後、レーザ光の照射を行い金属粉末の供給を行なわない状態で、前記ヘッドを前記被加工物に対して移動させて、前記積層物の表面にレーザ光を照射して再溶融させる再溶融工程と、
を含む積層、再溶融プロセスを少なくとも1回実施して前記造形物を形成し、
前記積層工程において、ニッケル基合金からなる面心立方構造を有する前記積層物が形成され、
前記再溶融工程において、前記積層工程で形成された前記積層物の結晶の成長方向と交わる方向から前記積層物の表面にレーザ光を照射して、結晶の成長方向をレーザ照射方向に変化させることを特徴とするレーザ積層造形方法。 - 前記再溶融工程で再溶融する領域の深さが、前記積層工程で形成された前記積層物の積層厚みの1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ積層造形方法。
- 前記積層工程におけるレーザ光の照射出力及び前記ヘッドの前記被加工物に対する移動速度と、前記再溶融工程におけるレーザ光の照射出力及び前記ヘッドの前記被加工物に対する移動速度とが一致することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ積層造形方法。
- 前記積層工程におけるレーザ光の照射方向と、前記再溶融工程におけるレーザ光の照射方向が角度θをなすことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のレーザ積層造形方法。
- 前記造形物が工具チップであって、前記再溶融工程において、形成する前記造形物の稼働面側の積層物の面に、その法線方向からレーザ光を照射することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のレーザ積層造形方法。
- 前記再溶融工程において、レーザ光の照射方向を変化させながら前記ヘッドを被加工物に対して移動させることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のレーザ積層造形方法。
- レーザ光を照射領域に照射する照射部及び前記照射領域に金属粉末を供給する供給部を有するヘッドと、
前記ヘッド及び被加工物を相対的に移動させる移動機構と、
前記照射部、前記供給部及び前記移動機構を制御する制御部と、
を備えた、被加工物の表面に造形物を形成する装置であって、
前記制御部が、
前記照射部及び前記供給部をオンにした状態で前記移動機構を駆動する制御処理を複数回行うことにより、前記ヘッドが前記被加工物に対して移動して積層が行なわれる処理が複数回行なわれて、前記被加工物の上に複数層からなる積層物が形成される積層ステップと、
前記積層ステップの後、前記照射部をオンにし、前記供給部をオフにした状態で前記移動機構を駆動することにより、前記積層物の表面にレーザ光が照射されて再溶融が生じる再溶融ステップと、
を含む積層、再溶融制御処理を少なくとも1回実施し、
前記積層ステップにおいて、ニッケル基合金からなる面心立方構造を有する前記積層物が形成され、
前記再溶融ステップにおいて、前記積層ステップで形成された前記積層物の結晶の成長方向と交わる方向から前記積層物の表面にレーザ光が照射され、結晶の成長方向をレーザ照射方向に変化させることを特徴とするレーザ積層造形装置。
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