JP7065539B2 - 大腸がんの予後バイオマーカー - Google Patents

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Description

本発明は、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカー、該バイオマーカーを用いる大腸がん患者の予後を予測する方法、及び該バイオマーカーの量を測定するための試薬を含む、大腸がん患者の予後を予測するためのキット等に関する。
大腸がん(colorectal cancer、CRC)は、診断及び治療が大きく進歩しているにもかかわらず、世界中のがん死の主要な原因である。臨床現場で現在使用されている唯一の大腸がん予後分類は、臨床病理学的な病期(ステージ)分類であり、ステージに応じて治療方針が選択される。例えば、ステージI大腸がんは手術単独で良好な成績であるのに対し、ステージIII大腸がん患者は根治手術後に補助化学療法を行うことで予後の改善が期待できるという明確なエビデンスがある(非特許文献1)。一方、ステージII大腸がん患者でも手術後約15~20%に再発が見られるが、全例に補助化学療法を行っても予後は改善せず、かつ補助化学療法を行うか否かの選択に明確な基準は存在していなかった。
したがって、大腸がん患者、例えばステージII大腸がん患者の予後を予測することは予後予測に基づく個別的な大腸がん患者のマネージメント等にとって重要である。しかし、大腸がんの予後予測に臨床的に使用することができるバイオマーカーは、その種類及び性質の点で必ずしも十分と言えるものではなかった。
Andre T, Boni C, Navarro M et al., J. Clin. Oncol., 2009, 27, 3109-3116
一実施形態において、本発明は、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカーを提供することを課題とする。別の実施形態において、本発明は、ステージII大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカーを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、KRT17の発現レベルが高い患者群では、大腸がん切除手術後の予後が悪いのに対し、KRT17の発現レベルが低い患者群では、大腸がん切除手術後の予後が良い傾向があることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は以下の実施形態を包含する。
(1)KRT17タンパク質若しくはそのペプチド断片、又はKRT17遺伝子の転写産物若しくはその核酸断片からなる、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカー。
(2)前記KRT17タンパク質が、以下の(a)~(c)のいずれかのタンパク質である、(1)に記載のバイオマーカー。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、及び
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
(3)前記KRT17遺伝子が、(2)に示すタンパク質をコードする、(1)又は(2)に記載のバイオマーカー。
(4)前記大腸がんが、ステージIIの大腸がんである、(1)~(3)のいずれかに記載のバイオマーカー。
(5)予後が再発リスクを含む、(1)~(4)のいずれかに記載のバイオマーカー。
(6)大腸がん患者の予後を予測するための、(1)~(5)のいずれかに記載のバイオマーカーの使用。
(7)大腸がん患者の予後を予測する方法であって、
大腸がん患者から得た大腸がん細胞又は組織における、(1)~(5)のいずれかに記載のバイオマーカーの量を測定する測定工程、及び
前記測定工程で得られた測定結果に基づいて、大腸がん患者の予後を予測する予測工程を含み、
ここで、前記大腸がん細胞又は組織が前記バイオマーカーについて陰性である場合、又はその発現レベルが低い場合、前記大腸がん患者の予後は良いと予測する、及び/又は前記大腸がん細胞又は組織が前記バイオマーカーについて陽性である場合又はその発現レベルが高い場合、前記大腸がん患者の予後は悪いと予測する、方法。
(8)(1)~(5)のいずれかに記載のバイオマーカーの量を測定するための試薬を含む、大腸がん患者の予後を予測するためのキット。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2019-021987号の開示内容を包含する。
本発明により、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカーが提供される。一実施形態において、本発明は、ステージII大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカーを提供し、これは補助化学療法を行うか否かの選択及び決定に役立ち得る。
図1Aは、陽性対照としての正常な乳腺組織におけるKRT17タンパク質発現の免疫組織化学の結果を示す。図1B~Dは、IHC検証セット1の免疫組織化学の代表的な結果を示す。 図2は、IHC検証セットにおけるKRT17タンパク質発現陽性群と陰性群のカプランマイヤー分析の結果を示す。IHC検証セット1(A)及び2(B)の両方においてKRT17陽性腫瘍を有する患者が、KRT17陰性腫瘍を有する患者と比べて、手術後に有意に短いRFSを有していた(A:n=110、P=0.0294、B:n=44、P=0.0006)。
(大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカー)
一態様において、本発明は、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカーに関する。本発明に係るバイオマーカーは、KRT17タンパク質若しくはそのペプチド断片、又はKRT17遺伝子の転写産物若しくはその核酸断片からなる。
本明細書において、「大腸がん」は、結腸、直腸及び肛門を含む大腸に発生するがんを指す。大腸がんは、特に、結腸がん及び直腸がんを含む。
本明細書において、「予後」は、大腸がん患者において、大腸がんの切除手術後に予測される経過(例えば、再発の有無又は生死)を指す。「予後の予測」は、再発リスク、生存期間、又は手術から一定期間後(例えば、1年、2年、3年、4年、5年、10年、15年若しくは20年後又はそれ以上の時点)の無再発生存率又は生存率の予測であってもよい。一実施形態において、予後の予測は、再発リスク(例えば無再発生存率)の予測を含む。なお、本明細書において無再発生存率は、大腸癌の再発症のない患者の割合をいう。予後の予測は、予後の判定、評価、又は診断ということもできる。
KRT17(ケラチン17)タンパク質(サイトケラチン17とも呼ばれる)は、type Iサイトケラチンの一種であり、様々な腺の基底細胞及び筋上皮細胞等、例えば乳腺、気道上皮、及び尿路上皮において見出される中間径フィラメントである。ケラチン17タンパク質は、正常な皮膚では発現しないが、創傷等のストレス環境下において皮膚上皮細胞で速やかに誘導され、細胞の増殖をもたらす。ケラチン17タンパク質は、アダプタータンパク質である14-3-3σに結合し、Akt/mTOR経路を刺激することによって、上皮細胞のサイズ及び増殖の制御について、正の効果を有することが知られている。
本発明では、原則として、大腸がん患者の内在遺伝子に由来するKRT17タンパク質又はその遺伝子転写産物がバイオマーカーとなり得る。例えば、前記患者がヒトであれば、ヒトKRT17遺伝子に由来するヒトKRT17タンパク質及びヒトKRT17遺伝子の転写産物(mRNA)が本発明のバイオマーカーとなり得る。
KRT17タンパク質の具体例として、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む、又はからなるヒト由来のKRT17(ヒトKRT17)タンパク質が挙げられる。
また、KRT17タンパク質には、配列番号1で示されるKRT17タンパク質と機能的に同等の活性を有するKRT17バリアントや他生物種のKRT17オルソログも包含される。具体的には、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するKRT17タンパク質が包含される。
本明細書において「数個」とは、例えば、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換をいう。性質の類似するアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類することができる。
本明細書において「アミノ酸同一性」とは、2つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときに、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むKRT17タンパク質の全アミノ酸残基に対する2つのアミノ酸配列間での同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al, Nuc. Acids. Res. 25, 3389-3402, 1977及びAltschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990を参照されたい。
「KRT17遺伝子」は、前記KRT17タンパク質をコードする遺伝子である。KRT17遺伝子の具体例として、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むヒトKRT17タンパク質をコードするヒトKRT17遺伝子が挙げられる。より具体的には、KRT17遺伝子は、配列番号2で示される塩基配列を含む、又はからなる遺伝子である。
また、KRT17遺伝子には、配列番号2で示されるKRT17遺伝子がコードするKRT17タンパク質と機能的に同等の活性を有するKRT17バリアントや他生物種のKRT17オルソログをコードするKRT17遺伝子も包含される。具体的には、配列番号2で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列、あるいは配列番号2で示される塩基配列に対して80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の塩基同一性を有するKRT17遺伝子が包含される。さらに、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列の一部を含む核酸断片と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつKRT17タンパク質と機能的に同等の活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が包含される。
本明細書において「塩基同一性」とは、2つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときに、配列番号2で示される塩基配列を含むKRT17遺伝子の全塩基に対する2つの塩基配列間での同一塩基の割合(%)をいう。
本明細書において「高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、低塩濃度及び/又は高温の条件下でハイブリダイゼーションと洗浄を行うことをいう。例えば、6×SSC、5×Denhardt試薬、0.5%SDS、100μg/mL変性断片化サケ精子DNA中で65℃~68℃にてプローブと共にインキュベートし、その後、2×SSC、0.1%SDSの洗浄液中で室温から開始して、洗浄液中の塩濃度を0.1×SSCまで下げ、かつ温度を68℃まで上げて、バックグラウンドシグナルが検出されなくなるまで洗浄することが例示される。高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件については、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載されているので参考にすることができる。
このようなKRT17遺伝子の塩基配列情報は、公共のデータベース(GenBank、EMBL、DDBJ)より検索可能である。例えば、配列番号2で示されるKRT17遺伝子の既知塩基配列情報に基づいて、塩基同一性の高い遺伝子をデータベースから検索し、入手することができる。
「KRT17遺伝子の転写産物」とは、KRT17 mRNAを意味する。mRNAは、mRNA前駆体(pre-mRNA)及び成熟mRNA(mature mRNA)を問わない。通常、mRNA前駆体は、核内において直ちにスプライシングされて、成熟mRNA成熟体となることから、本発明のバイオマーカーとなるKRT17遺伝子の転写産物は、KRT17成熟mRNAであってよい。
本明細書において「ペプチド断片」とは、KRT17タンパク質を構成するアミノ酸配列の一部を含む、又はからなるペプチド断片であって、その断片を構成するアミノ酸配列からKRT17タンパク質の断片であることを同定することができるものをいう。例えば、「ペプチド断片」は、KRT17タンパク質の全長アミノ酸配列のうちの10個以上、20個以上、30個以上、40個以上、又は50個以上の連続するアミノ酸酸残基であってよく、また、200個以下、150個以下、120個以下、100個以下、又は80個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチドであってよい。例えば、「ペプチド断片」は、10個~200個、30個~120個、50個~80個の連続するアミノ酸残基からなるペプチドであってよい。
本明細書において「核酸断片」とは、KRT17 mRNAを構成する塩基配列の一部を含む、又はからなる核酸断片であって、その断片を構成する塩基配列からKRT17 mRNAの断片であることを同定することができるものをいう。例えば、「核酸断片」は、KRT17 mRNAの全長塩基配列のうちの10個以上、20個以上、30個以上、40個以上、又は50個以上の連続する塩基からなる核酸であってよく、また600個以下、450個以下、300個以下、200個以下、又は100個以下の連続する塩基からなる核酸であってよい。例えば、「核酸断片」は、KRT17 mRNAの全長塩基配列のうちの30個~600個、50個~300個、又は70個~100個の連続する塩基からなる核酸であってよい。
(バイオマーカーを指標とした予後の予測)
一態様において、本発明は、大腸がん患者の予後を予測するための、上述の本発明に係るバイオマーカーの使用に関する。
一態様において、本発明は、大腸がん患者の予後を予測する方法に関する。本方法は、大腸がん患者から得た大腸がん細胞又は組織における、上述の本発明に係るバイオマーカーの量を測定する測定工程、及び前記測定工程で得られた測定結果に基づいて、大腸がん患者の予後を予測する予測工程を含む。測定工程は、インビトロで行うことができる。
以下に各工程について具体的に説明する。
(1)測定工程
大腸がんは、進行度の低い方からステージ0、I、II、III及びIVに分類される。本発明では、病期(ステージ)の決定は、国際対がん連合(UICC)のTNM分類(UICC第7版; Sobin LH, Gospodarowicz MK, Wittekind C, International Union against Cancer. TNM classification of malignant tumours, 7th edn. Wiley-Blackwell (2010))に基づいて行う。上記の国際対がん連合(UICC)のTNM分類を、UICC-TNM分類と本明細書で称する。UICC-TNM分類では、壁深達度(T分類)、リンパ節転移(N分類)及び遠隔転移(M分類)の3つの因子により、がん病変の進行度を分類する。UICC-TNM分類に基づく病期の決定は当業者の通常の知識に従って行うことができる。
具体的には、大腸がんが粘膜内に留まる(Tis)場合をステージ0、大腸がんが粘膜下層(T1)又は固有筋層(T2)に留まる場合をステージI、大腸がんが固有筋層を超え漿膜下層(T3)又は漿膜若しくは隣接臓器(T4)に浸潤する場合をステージIIと判定する。なおステージ0~IIではいずれもリンパ節転移を伴わない(N0)。リンパ節転移を伴う(N1~2)場合はステージIIIと判定する。ステージ0~IIIはいずれも遠隔転移のない(M0)がんであり、遠隔転移を伴う(M1)がんはステージIVと判定する。
本発明の対象となる患者が患う大腸がんは、ステージI~IV、例えばステージIIの大腸がんであってよい。ステージII大腸がん患者では、手術後約15~20%に再発が見られるが、全例に補助化学療法を行っても予後は改善せず、従来は補助化学療法を行うか否かの選択に明確な基準は存在していなかった。本発明の予後予測マーカーは、補助化学療法を行うか否かの選択及び決定等、予後予測に基づく大腸がん患者のマネージメントに役立ち得る。
本発明における大腸がん患者は、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
本発明において使用する大腸がん細胞又は組織は、特に限定されないが、例えば、生検又は切除手術によって大腸がん患者から得ることができる。当該細胞又は組織は、そのままバイオマーカーの測定に用いてもよいが、測定のために適宜前処理してもよい。例えば、免疫組織化学染色法でバイオマーカーを検出する場合は、患者由来の試料からパラフィン包埋切片を調製してもよい。また、例えば、ウエスタンブロット法又はRT-PCR法によってバイオマーカーを検出する場合は、患者由来の試料からタンパク質抽出液又はmRNA抽出液を調製してもよい。
本方法で測定すべきバイオマーカーは、KRT17タンパク質若しくはそのペプチド断片又はKRT17遺伝子の転写産物若しくはその核酸断片のいずれであってもよい。量(発現量)の測定は、発現の有無、又は発現量若しくは発現濃度の大小等を測定することを包含する。本発明において、「測定」という用語には、検出、定性、定量及び半定量のいずれもが包含される。
測定すべきバイオマーカーがKRT17タンパク質又はそのペプチド断片の場合、その測定方法は、公知のタンパク質定量方法であればよく、特に限定はしないが、例えば、免疫学的検出法が挙げられる。
「免疫学的検出法」は、抗原である標的分子と特異的に結合する抗体又は抗体断片を用いて、標的分子の量を測定する方法である。
抗体は、哺乳動物及び鳥を含めたいずれの動物由来とすることができる。例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ロバ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、ニワトリ又はヒト等が挙げられる。
免疫学的検出法で使用する抗体は、特に限定されないが、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用してよい。
本明細書において「モノクローナル抗体」とは、単一免疫グロブリンのクローン群をいう。モノクローナル抗体を構成する各免疫グロブリンは、共通するフレームワーク領域及び共通する相補性決定領域を含み、同一抗原の同一エピトープを認識し、それに結合することができる。モノクローナル抗体は、単一細胞由来のハイブリドーマから得ることができる。
本明細書において「ポリクローナル抗体」とは、同一抗原の異なるエピトープを認識し結合する複数種の免疫グロブリン群をいう。ポリクローナル抗体は、標的分子を抗原として動物に免疫後、その動物の血清から得ることができる。
抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の場合、免疫グロブリン分子には、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDの各クラスが知られているが、本発明の抗体は、いずれのクラスであってもよく、例えばIgGであってよい。
KRT17タンパク質を認識し結合するポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製する方法は、KRT17タンパク質又はその断片を抗原として当該分野で公知の抗体作製方法に準じて行えばよい。抗体はまた、製造業者から得てもよい。
本明細書において「抗体断片」とは、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の部分断片であって、該抗体が有する抗原特異的結合活性と実質的に同等の活性を有するポリペプチド鎖又はその複合体をいう。例えば、抗原結合部位を少なくとも1つ包含する抗体部分、すなわち、少なくとも1組のVLとVHを有するポリペプチド鎖、又はその複合体が該当する。具体例としては、免疫グロブリンを様々なペプチダーゼで切断することによって生じる多数の十分に特徴付けられた抗体断片等が挙げられる。より具体的な例としては、Fab、F(ab')2、Fab'等が挙げられる。これらの抗体断片は、いずれも抗原結合部位を包含しており、抗原である標的分子と特異的に結合する能力を有している。
免疫学的検出法としては、例えば、免疫組織化学染色法、酵素免疫測定法(ELISA法、EIA法を含む)、ウエスタンブロット法、放射免疫測定(RIA)法、免疫沈降法、又はフローサイトメトリー法が挙げられる。
「免疫組織化学染色法」は、公知の方法を採用することができる。例えば、患者由来の試料をホルマリン固定後、パラフィンに包埋して組織片に薄切し、スライドガラスに貼り付けたものを切片試料として使用してよい。切片試料は、場合により熱処理して抗原を賦活化し、その後、Dako EnVision+ System(Agilent社)などの市販の検出システムを用いて切片試料について免疫組織化学染色を行ってよい。
また、測定すべきバイオマーカーがKRT17遺伝子転写産物又はその核酸断片の場合、その測定方法は、公知の核酸定量方法であればよく、特に限定はしないが、例えば、プライマーを用いる核酸増幅法又はプローブを用いるハイブリダイゼーション法が挙げられる。
「核酸増幅法」は、フォワード/リバースプライマーセット用いて、標的核酸の特定の領域を核酸ポリメラーゼによって増幅させる方法をいう。核酸増幅法としては、例えば、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法などのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が挙げられる。
「ハイブリダイゼーション法」は、検出すべき標的核酸の塩基配列の全部又は一部に相補的な塩基配列を有する核酸断片をプローブとして用い、その核酸と該プローブ間の塩基対合を利用して、標的核酸若しくはその断片を検出、定量する方法である。ハイブリダイゼーション法には、検出手段の異なるいくつかの方法が知られているが、例えば、ノザンハイブリダイゼーション法(ノザンブロットハイブリダイゼーション法)、in situハイブリダイゼーション法、又はマイクロアレイ法が挙げられる。
プライマー及びプローブ等の核酸鎖は、公知のバイオマーカー配列情報を基に当業者に公知の方法により適宜設計し、化学合成などの公知の作製方法により得ることができる。
上述の各測定法は、いずれも当該分野に公知の技術である。したがって、具体的な測定方法については、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載の方法を参考にすることができる。
(2)予測工程
本工程では、前記測定工程で得られた測定結果に基づいて、大腸がん患者の予後を予測する。
一実施形態において、本工程は、前記測定工程で得られた測定結果から、前記大腸がん細胞又は組織がバイオマーカーについて陽性であるか又は陰性であるか判定することを含む。大腸がん細胞又は組織がバイオマーカーについて陰性である場合、大腸がん患者の予後は良いと予測し得る。一方、大腸がん細胞又は組織がバイオマーカーについて陽性である場合、大腸がん患者の予後は悪いと予測し得る。
免疫組織化学染色法を用いる場合、例えば、一つ又は複数の細胞又は細胞クラスターが染色された場合、陽性と判定し、染色された腫瘍細胞数が存在しない場合、陰性と判定することができる。あるいは、腫瘍細胞総数に対して染色された腫瘍細胞数が一定割合(例えば10%、15%又は20%)を超える場合、陽性と判定し、腫瘍細胞総数に対して染色された腫瘍細胞数が前記一定割合以下の場合、陰性と判定してもよい。
一実施形態において、予測工程は、前記測定工程で得られた前記大腸がん細胞又は組織におけるバイオマーカーの発現レベルが、(例えば所定の閾値より)高いか低いかを判定することを含む。大腸がん細胞又は組織におけるバイオマーカーの発現レベルが、所定の閾値より低い(例えば、統計学的に有意に低い)場合、(例えば、所定の閾値より高い発現レベルを有する集団に対して)大腸がん患者の予後は良いと予測し得る。一方、大腸がん細胞又は組織におけるバイオマーカーの発現レベルが所定の閾値より高い(例えば、統計学的に有意に高い)場合、(例えば、所定の閾値より低い発現レベルを有する集団に対して)大腸がん患者の予後は悪いと予測し得る。
所定の閾値は、対照試料(対照細胞又は組織、例えば対照大腸細胞又は大腸組織)において測定した対照量であってもよい。対照試料は、健常個体(例えば健常人)、良性の大腸腺腫患者、又は大腸がん患者(例えばステージII大腸がん患者)に由来してもよい。本発明において「健常個体」とは、被験個体と同じ生物種の、がんに罹患していない健康な個体をいう。
例えば、これらの個体における発現量、又は複数の個体における発現量の中央値、平均値、上限レベル、下限レベル、又は一定範囲の値を所定の閾値として用いることができる。閾値は、予測の精度等に応じて適宜設定することができ、例えば、ROC(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)解析により定めることができる。
本明細書において「統計学的に有意」とは、得られた値の危険率(有意水準)が小さい場合、具体的には、p<0.05(5%未満)、p<0.01(1%未満)又はp<0.001(0.1%未満)の場合を指す。統計学的検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定しない。例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法、ログランク検定法を用いることができる。
本明細書において、「予後が悪い」とは、臨床転帰が不良である(例えば、大腸がんの切除手術後の再発リスク又は再発率が高い、疾患(がん)特異的生存率が低い、又は全生存率が低い)ことをいう。予後が悪い場合、大腸がんの切除手術後の5年後の無再発生存率又は生存率は90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満又は60%未満であり得る。本発明では生存率は、累積生存率を意味する。本発明では生存率は、疾患(がん)特異的生存率又は全生存率であってもよい。
本明細書において、「予後が良い」とは、臨床転帰が良好であることをいう。予後が良い場合、大腸がんの切除手術後の5年後の無再発生存率又は生存率は90%以上又は95%以上であり得る。
本発明によれば、大腸がん患者の予後を予測することができ、その結果に基づき、治療方針(例えば、抗がん剤の種類、投与量、投与間隔など)を決定し、又は大腸がんの再発及び転移の検査の間隔を決定することができる。
本発明により、大腸がん患者の予後が悪いと予測された場合、大腸がんの再発を防止し、又は予後を改善し、又は生存率を改善するために、患者に抗がん剤を投与してもよい。したがって、本発明はまた、本発明の方法により予後が悪いと予測された大腸がん患者に抗がん剤を投与することを含む、大腸がんの再発を防止し、又は予後を改善し、又は生存率を改善する方法を提供する。
抗がん剤としては、以下に限定されないが、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、オキサリプラチン、イリノテカン、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ及びレゴラフェニブなどが挙げられる。抗がん剤は、単独で又は組みあわせて使用できる。抗がん剤は、注射、静脈内投与、経口投与などの経路で投与され得る。
(キット)
一態様において、本発明は、上述の本発明に係るバイオマーカーの量を測定するための試薬を含む、大腸がん患者の予後を予測するためのキットも提供する。
バイオマーカーの量を測定するための試薬としては、例えば、上述のような抗体若しくは抗体断片、又はプローブ若しくはプライマーが挙げられる。キットは、公知の免疫組織化学染色、ELISA、ウエスタンブロット、又はRT-PCR用の試薬等、例えば、標識試薬、緩衝液、発色基質、二次抗体、ブロッキング剤、並びに試験に必要な器具及びコントロール等をさらに含んでもよい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<材料と方法>
患者サンプル
本発明者らは以前に、福島県立医科大学(FMU)附属病院で治療されたステージ0-IV原発性大腸がんを有する368人の患者から得られた大量のFFPE組織サンプルについて記載している(Noda M et al、Clin. Cancer. Res., 2018, 24(18), 4468-4481)。そのうち、IHC検証セット1と名付けた、術前化学療法又は放射線療法を行っていない、2000年~2009年に外科的切除(R0)を受けたステージII患者のFFPE切片が利用可能な110の組織を使用した。さらなる検証のために、2010年~2013年に手術を受けたステージI-IVの大腸がんを有する141人の患者のうち、44人のステージII患者をIHC検証セット2として用いた。全ての腫瘍を悪性腫瘍のTNM分類に従って分類した(Sobin LH et al., TNM classification of malignant tumours, Wiley-Blackwell, 2010)。ステージII疾患の臨床的及び病理学的情報並びに高リスク特性は、2017年12月の最後の追跡調査を有する医療記録のレビューによって遡及的に得た。手術日から最初の再発の日までの期間として定義されるRFSを、主要エンドポイントとした。本実施例は、ヘルシンキ宣言に従って実施され、福島県立医科大学の研究倫理審査委員会の承認を受けた。
免疫組織化学(IHC)
好適な抗体を、抗体ベースの網羅的なプロテオミクスデータが利用可能であるHuman Protein Atlasデータベース(www.proteinatlas.org)を用いて同定した(Noda M et al、上掲、及びUhlen M. et al., Science, 2017, vol.357)。マウスモノクローナル抗KRT17抗体(M7046、Cytokeratin17、[E3]、Dako、Glostrup、Denmark)を、KRT17染色のために用いた。4μmの厚さの切片をキシレン中で脱パラフィン化し、段階的なエタノール系列において再水和した。内在性ペルオキシダーゼを0.3%過酸化水素を含むメタノールでブロッキングした。抗原を10mMクエン酸緩衝液(105℃、pH6.0)中で5分間オートクレーブすることにより回収した。一次抗KRT17抗体をTween20(Sigma-Aldrich)を含有する10mMリン酸緩衝生理食塩水の1:40希釈液中で4℃で一晩インキュベートし、続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスポリマー(Envision +System-HRP、Dako、CA、USA)、及びそれに続いてジアミノベンジジン(Dako)とインキュベートすることにより検出した。全ての切片をカラッチヘマトキシリンで対比染色した。正常な乳腺標本を、KRT17染色の陽性対照として用いた。少なくとも幾つかの腫瘍細胞又は腫瘍細胞クラスターが腫瘍標本において染色されたときに陽性と定義した。切片は、臨床データの事前知識がない2人の研究者によって独立して評価された。
ミスマッチ修復(MMR)ステータスの決定
MLH1、MSH2、MSH6、及びPMS2を含むMMRタンパク質のIHCを、MLH1(クローンES05、1:50;Dako)、MSH6(クローンEP49、1:200;Dako)及びPMS2(クローンEP51、1:50;Dako)に対するマウス又はウサギモノクローナル抗体を用いてDako EnVision+ Systemを用いて、以前記載した通りに(Noda M et al、上掲)行った。MMRタンパク質の欠損は、内部対照における陽性核染色の存在下での腫瘍細胞の核染色の不在として定義した。少なくとも一つのMMRタンパク質の欠失は、deficient MMR(dMMR)と定義し、インタクトなMMRタンパク質発現を有する腫瘍を、proficient MMR(pMMR)と定義した。
統計解析
Student's t-検定、Mann-Whitney U 検定及び Fisherの正確確立検定を、2つの群間の臨床病理変数の差を決定するために用いた。ピアソン相関を、2つの群の発現レベルの間の相関を評価するために用いた。累積生存率は、カプランマイヤー法により推定し、2つの群間の差は、ログランク検定により解析した。単変量及び多変量モデルを、Cox比例ハザード回帰を用いて計算した。全ての統計的解析を両側で行い、またGraphpad Prism v7.0(Graphpad Software Inc.、La Jolla、CA、USA)又はSPSS Statistics version 24(IBM Corporation、NY、USA)を用いて行った。0.05未満のP値を、統計的に有意であるとみなした。
<結果>
組織におけるKRT17の発現
KRT17は乳腺筋上皮細胞において発現することが知られているので、免疫組織化学によるFFPE標本におけるKRT17タンパク質発現を評価するために、正常な乳腺組織を陽性対照として用いた(図1A)。次に、2000年~2009年に、福島県立医科大学付属病院で根治手術を受けたステージII患者から得た110のFFPE腫瘍サンプル(IHC検証セット1と名付けた。患者特性を以下の表1に示す)において、免疫組織化学によりKRT17の発現を評価した。代表的な画像を図1B~Dに示す。KRT17タンパク質の細胞質発現は、組織において部分的に又はまばらに、癌細胞及び癌細胞クラスターにおいて見出された。110の腫瘍のうち、19の腫瘍(17.2%)においてKRT17発現が陽性であると決定された。
複数のコホートにおけるKRT17タンパク質発現による予後診断
KRT17発現が、RFS不良であるステージII患者を同定するために用い得るかを調べるために、IHC検証セット1において生存分析を実施した。カプランマイヤー分析は、KRT17陽性腫瘍を有する患者が、KRT17陰性腫瘍を有する患者と比べて、手術後に有意に短いRFSを有していたことを示す(P=0.0294、図2A)。予後予測マーカーとしてのKRT17染色の有意性をさらに確かめるために、2000年~2013年に外科切除を受けた44人のステージII患者から、FFPE組織の追加の独立セットを新たに得た(IHC検証セット2と名付けた。患者特性を以下の表1に示す)。図2Bに示す通り、IHC検証セット2において、KRT17陽性腫瘍は、KRT17陰性腫瘍と比べて、RFS不良と有意に相関していた(P=0.0006)。
Figure 0007065539000001
ステージII大腸がんにおける独立した予後因子としてのKRT17
Cox回帰分析について、検定力を高めるために、IHC検証セット1及び2を組み合わせた。この組み合わせたIHCコホートにおいて、KRT17発現と他の臨床病理パラメーター(年齢、性別、腫瘍の位置、組織分化、MMRステータス、又は高リスク特性(表2))との間に、有意な相関は見いだされなかった。単変量Cox分析は、KRT17タンパク質の発現が、RFSと有意に相関していたことを示す(HR 6.60;95%CI 2.34-18.64;P<0.001)。さらに、KRT17タンパク質高発現のRFS予測に関する有意性は、従来の臨床因子及び多変量Cox分析によって見出された既知の高リスクステージII特性とは独立していた(HR 10.90;95%CI 2.98-39.85;P<0.001)(表3)。
Figure 0007065539000002
Figure 0007065539000003
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (8)

  1. KRT17タンパク質若しくはそのペプチド断片、又はKRT17遺伝子の転写産物若しくはその核酸断片からなる、大腸がん患者の予後を予測するためのバイオマーカー。
  2. 前記KRT17タンパク質が、以下の(a)~(c)のいずれかのタンパク質である、請求項1に記載のバイオマーカー。
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質、及び
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
  3. 前記KRT17遺伝子が、請求項2に示すタンパク質をコードする、請求項1又は2に記載のバイオマーカー。
  4. 前記大腸がんが、ステージIIの大腸がんである、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
  5. 予後が再発リスクを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
  6. 大腸がん患者の予後を予測するための、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオマーカーの使用。
  7. 大腸がん患者の予後予測のための方法であって、
    大腸がん患者から得た大腸がん細胞又は組織における、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオマーカーの量を測定する測定工程、及び
    前記測定工程で得られた測定結果と、健常個体に由来する試料で得られた測定結果とを比較して、前記大腸がん細胞又は組織が前記バイオマーカーについて陰性である場合又はその発現レベルが低い場合、前記大腸がん患者の予後は良いことを示唆し、及び/又は前記大腸がん細胞又は組織が前記バイオマーカーについて陽性である場合又はその発現レベルが高い場合、前記大腸がん患者の予後悪いことを示唆する、
    前記方法。
  8. 請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオマーカーの量を測定するための試薬を含む、大腸がん患者の予後を予測するためのキット。
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