JP7064652B2 - 加飾フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、成形品と、成形品の意匠面を覆うように配置された透明部材との間に配置される散乱フィルムに関する。
携帯情報端末の筐体のような成形品の意匠面には、当該意匠面の外観を調整するための処理がなされる場合がある。この処理の方法としては、例えば特許文献1のように、表面に皺が形成された光透過性層を成形品の意匠面に重ねて配置し、外光を成形品の意匠面で反射すると共に光透過性層の皺で散乱させる方法が知られている。この方法では、成形品の意匠面の質感や色調が、光透過性層で生じた散乱光により調整される。
特開2014-8470号公報
ところで成形品の意匠面には、当該意匠面を覆うように透明部材が配置され、成形品と透明部材とが透明な光学糊部材を介して密着される場合がある。この場合、特許文献1の方法では、光透過性層の皺が光学糊部材により埋められてしまい、散乱光が得られにくくなるおそれがある。
そこで本発明は、成形品の意匠面を覆うように透明部材が配置され、成形品と透明部材とが光学糊部材を介して密着される場合でも、成形品の意匠面で反射された外光を良好に散乱し、成形品の意匠面の外観を調整可能にすることを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明に一態様に係る散乱フィルムは、成形品と、前記成形品の意匠面を覆うように配置された透明部材との間において、前記透明部材を介して入射され且つ前記成形品の前記意匠面で反射した光を散乱させる散乱フィルムであって、内部ヘイズが10%以上90%以下の範囲の値に設定されたシート状の散乱部材を備える。
上記構成によれば、散乱部材は、内部ヘイズが上記範囲の値に設定されているので、表面に皺や凹凸が形成されていなくても内部ヘイズによりヘイズを調整できる。これにより、内部ヘイズを調整することで散乱部材に適度なヘイズを付与し、散乱フィルムの散乱部材による光散乱性を増大させることができる。
よって、成形品の意匠面を覆うように透明部材を配置した状態で、例えば、成形品と透明部材とを光学糊部材を介して密着させる場合でも、散乱部材の内部ヘイズを調整することで、成形品の意匠面で反射された外光を散乱フィルムにより散乱し、成形品の外観を良好に調整できる。
前記散乱部材を支持するシート状の支持部材を更に備え、前記散乱部材が、前記支持部材の一方の表面を覆うように配置されていてもよい。これにより、散乱フィルム内において散乱部材を支持部材により安定して支持できる。
前記散乱部材は、前記支持部材の前記表面に沿って延びるコート材と、前記コート材内に分散されたフィラー粒子とを有していてもよい。これにより、コート材とフィラー粒子とを用いて散乱部材を構成し易くすることができる。また、散乱部材の内部ヘイズを例えばフィラー粒子量により調整し易くすることができる。
前記散乱部材は、前記散乱部材の前記内部ヘイズの絶対値をH1、総ヘイズの絶対値をH2としたときの比H1/H2が、0.7以上1.0以下の範囲の値に設定されていてもよい。
上記構成によれば、散乱部材の内部ヘイズを幅広い値に設定でき、散乱部材において、例えば外部ヘイズに比べて内部ヘイズを大幅に大きい値に設定できる。これにより、散乱フィルムの光散乱性の設計自由度を向上でき、散乱フィルムに良好な光散乱性を付与できる。
前記散乱部材の前記支持部材とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下の範囲の値に設定されていてもよい。これにより、散乱部材の前記表面に高度な平坦性を付与できる。よって、散乱フィルムの光散乱性を確保しつつ、例えば散乱部材の前記表面に光学糊部材を重ねて配置する場合において、散乱部材と光学糊部材との密着性を向上できる。
前記散乱部材の前記支持部材とは反対側に配置されて前記散乱部材と前記透明部材との間に充填される光学糊部材を更に備えていてもよい。これにより、散乱フィルムの光散乱性を確保しつつ、散乱部材と透明部材とを光学糊部材を介して密着させることができる。
本発明の一態様に係る成形ユニットは、前記成形品と、前記透明部材と、上記散乱フィルムとを備える。ここで散乱部材は、表面に皺や凹凸が形成されていなくても内部ヘイズによりヘイズを調整できるので、散乱部材の内部ヘイズを高めることで、散乱部材の光散乱性を向上できる。よって成形ユニットにおいて、例えば、成形品と透明部材との間に光学糊部材を配置する場合でも、散乱部材の内部ヘイズを調整することで、成形品の意匠面で反射された外光を散乱フィルムにより良好に散乱できる。
本発明の各態様によれば、成形品の意匠面を覆うように透明部材が配置され、成形品と透明部材とが光学糊部材を介して密着される場合でも、成形品の意匠面で反射された外光を良好に散乱し、成形品の意匠面の外観を調整できる。
実施形態に係る成形ユニットの模式的な断面図である。 図1の散乱フィルムの拡大図である。
(実施形態)
以下、実施形態について、各図を参照して説明する。図1は、実施形態に係る成形ユニット10の模式的な断面図である。図2は、図1の散乱フィルム1の拡大図である。図1及び2に示すように、成形ユニット10は、成形品4、透明部材5、光学糊(OCA)部材6,7、及び散乱フィルム1を備える。散乱フィルム1は、共にシート状の支持部材2と散乱部材3とを備える。
成形ユニット10は、一例として、装置の筐体である。また成形ユニット10は、装置の外装品である。成形ユニット10の内部には、装置を駆動させる駆動要素が収容される。当該装置は、ここではスマートフォンやタブレット等の携帯情報端末であるが、これに限定されず、例えば手動や電力等により駆動されるその他の機器であってもよい。
成形品4は、一定形状を有する物品であり、成形ユニット10の基本構造を構成する。成形品4は、一例として射出成型品である。成形品4の材料は、適宜選択可能である。この材料としては、例えば、樹脂材料や金属材料が挙げられる。
成形品4は、単一又は複合材料により一体的に構成されていてもよいし、芯材と、芯材の表面を被覆する表面材とにより構成されていてもよい。成形品4の意匠面は、ここでは平坦状であるが、曲面状であってもよい。成形品4の意匠面は、全光線透過率が20%以下であり、一例として不透明である。本実施形態の成形品4の意匠面には、金属層が形成されている。
透明部材5は、成形品4の意匠面を覆うように配置される。透明部材5の材料は、適宜選択可能である。この材料としては、例えば、樹脂材料やガラス材料が挙げられる。透明部材は、単一の材料により構成されていてもよいし、複数の材料を重ねて構成されていてもよい。透明部材5の厚み寸法は、適宜設定可能である。透明部材5には、その少なくとも一部に印刷が施されていてもよい。透明部材5の全面に印刷を施す場合、印刷部分の少なくとも一部は透明性を有する。
光学糊部材6は、支持部材2の散乱部材3とは反対側に配置されて成形品4と支持部材2との間に充填される。光学糊部材6は、支持部材2に重ねて配置されている。光学糊部材6は、成形品4に散乱フィルム1を密着させる。
光学糊部材7は、散乱部材3の支持部材2とは反対側に配置されて散乱部材3と透明部材5との間に充填される。光学糊部材7は、散乱部材3に重ねて配置されている。光学糊部材7は、透明部材5に散乱フィルム1を密着させる。
散乱フィルム1は、成形品4と、成形品4の意匠面を覆うように配置された透明部材5との間において、透明部材5を介して入射され且つ成形品4の意匠面で反射した光を散乱させる。
ここで言う意匠面とは、対象物を加飾するために種々の意匠が施された面を指す。意匠は、散乱フィルム1が取り付けられる対象物の用途等に応じて異なる。代表的な意匠としては、例えば、金属調色、黒色その他の単一又は複数色、透明性を利用したもの、模様(文字、図形、記号、色彩等を利用したものを含む)、及び微細な凹凸パターン(エンボス等を利用したものを含む)のうち、1種又は2種以上が挙げられる。また意匠面は、単一部材からなる成形品4に直接形成されていてもよい。また意匠面は、ベース部材と、このベース部材に積層されたフィルム部材等の別部材からなる成形品4の前記別部材に形成されていてもよい。
本実施形態の散乱フィルム1は、全光線透過率が80%以上の範囲の値に設定されている。この全光線透過率は、一例として85%以上の範囲の値が更に好ましく、89%以上の範囲の値が特に好ましい。
また本実施形態の散乱フィルム1は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が、30%以上99%以下の範囲の値に設定されている。この透過像鮮明度は、一例として50%以上98%以下の範囲の値が更に好ましく、70%以上97%以下の範囲の値が特に好ましい。
また本実施形態の散乱フィルム1は、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の60°グロスが、3%以上100%以下の範囲の値に設定されている。この60°グロスは、一例として40%以上100%以下の範囲の値が更に好ましく、80%以上100%以下の範囲の値が特に好ましい。
散乱フィルム1の支持部材2はシート状であり、散乱部材3を支持する。支持部材2は、例えば成形可能な樹脂材料により構成される。この材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。支持部材2の厚み寸法は適宜設定可能であるが、ここでは数十μmの値に設定される。
散乱部材3は、支持部材2の一方の表面を覆うように配置されている。散乱部材3の厚み寸法は、適宜設定可能であるが、ここでは支持部材2の厚み寸法よりも小さい。散乱部材3の厚み寸法は、例えば5μm以上20μm以下の範囲の値に設定される。散乱部材3の支持部材2とは反対側の算術平均粗さRaが、0.1μm以下の範囲の値に設定されている。
散乱部材3は、内部ヘイズが10%以上90%以下の範囲の値に設定されている。一例として図2に示すように、散乱部材3は、コート材30とフィラー粒子31とを有する。コート材30は、支持部材2の前記表面に沿って延びている。コート材30は、ここでは紫外線硬化樹脂を含む。フィラー粒子31は、コート材30内に分散されている。フィラー粒子31は、スチレン等の樹脂材料、或いは、シリカ等の無機材料により構成される。
フィラー粒子31の平均粒径は適宜設定可能であるが、一例として、1.0μm以上3.0μm以下の範囲の値に設定できる。なお、本書で言う平均粒径とは、JIS Z8825に準拠した方法に基づき、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
なお、フィラー粒子31の平均粒径が1.0μm未満であると、フィラー粒子31による光散乱効果が得られにくくなる。またフィラー粒子31の平均粒径が3.0μmを超えると、散乱部材3からのフィラー粒子31の脱落が生じるおそれがある。
また散乱部材3の厚み寸法が5μm未満であると、散乱部材3からのフィラー粒子31の脱落が生じるおそれがある。また散乱部材3の厚み寸法が20μmを超えると、散乱部材3の表面の平滑性が過度に低下するおそれがある。
コート材30内にフィラー粒子31が分散されることで、散乱部材3は、表面の平坦性にとは無関係に、内部ヘイズによりヘイズが調整される。フィラー粒子31の添加量を増大させると、散乱部材3の内部ヘイズは増大する。これにより散乱フィルム1では、散乱部材3の内部ヘイズが、10%以上90%以下の範囲の値に設定されている。
また散乱フィルム1では、散乱部材3の内部ヘイズの絶対値をH1、総ヘイズの絶対値をH2としたときの比H1/H2が、0.7以上1.0以下の範囲の値に設定されている。この比H1/H2は、一例として0.9以上1.0以下の範囲の値が更に好ましく、0.99以上1.0以下の範囲の値が特に好ましい。
なお、比H1/H2の算出に当たっては、測定誤差を考慮し、内部ヘイズH1の測定値が総ヘイズH2の測定値よりも大きく、且つ、両測定値の差が0.5%以内である場合には、比H1/H2を1.00とする。
ここで散乱フィルム1は、散乱部材3の全ヘイズが10%以下で、且つ、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下の範囲の値に設定されたフィルムであると言うこともできる。
なお、散乱部材3の内部ヘイズが10%未満であると、散乱部材3に十分な光散乱性を付与するのが困難となる。また、散乱部材3の内部ヘイズが90%を超えると、成形品4の意匠面の視認性が悪くなり、所望する外観が得られないおそれがある。
また、比H1/H2が0.7未満であると、散乱部材3に十分な内部ヘイズを設定するのが困難となる。また、散乱部材3に対するフィラー粒子31の添加量が過度になると、散乱部材3の表面にフィラー粒子31が析出し、フィラー粒子31が脱落したり、散乱部材3が脆くなるおそれがある。
成形ユニット10では、外光が入射した際、外光の一部が、透明部材5、光学糊部材7、散乱フィルム1、及び光学糊部材6を通過し、成形品4の意匠面で反射する。この反射光は、光学糊部材6を再び通過して散乱フィルム1内に入射する。このとき反射光は、散乱部材3でフィラー粒子31により散乱される。この散乱光は、光学糊部材7及び透明部材5を順に通過する。
また成形ユニット10では、外光が入射した際、外光の一部が、透明部材5及び光学糊部材7を通過し、散乱部材3を通過することなく散乱部材3でフィラー粒子31により反射及び散乱される。この散乱光は、上記散乱光と同様に光学糊部材7及び透明部材5を順に通過する。
これにより成形ユニット10では、透明部材5、光学糊部材7、散乱フィルム1、及び光学糊部材6を介した成形品4の意匠面の外観が、散乱フィルム1によって調整される。この調整の具合は、主として散乱部材3の内部ヘイズによって変化する。
また、例えば成形品4の意匠面が平坦面である場合、散乱フィルム1を用いることによって、あたかも成形品4の意匠面に細かな凹凸が形成されているかのような質感が付与される。このように散乱フィルム1は、言い換えると、成形品4の意匠面からの反射光の広がり方を調整することにより当該表面を見掛け上修飾する加飾フィルムであると言うこともできる。
以上説明したように、散乱フィルム1によれば、散乱部材3は、内部ヘイズが上記範囲の値に設定されているので、表面に皺や凹凸が形成されていなくても内部ヘイズによりヘイズを調整できる。これにより、内部ヘイズを調整することで散乱部材3に適度なヘイズを付与し、散乱フィルム1の散乱部材3による光散乱性を増大させることができる。
よって、成形品4の意匠面を覆うように透明部材5を配置した状態で、例えば、成形品4と透明部材5とを光学糊部材6,7を介して密着させる場合でも、散乱部材3の内部ヘイズを調整することで、成形品4の意匠面で反射された外光を散乱フィルム1により散乱し、成形品4の外観を良好に調整できる。
また散乱フィルム1は、散乱部材3を支持するシート状の支持部材2を備え、散乱部材3が、支持部材2の一方の表面を覆うように配置されているので、散乱フィルム1内において散乱部材3を支持部材2により安定して支持できる。
また散乱部材3は、支持部材2の表面に沿って延びるコート材30と、コート材30内に分散されたフィラー粒子31とを有する。これにより、コート材30とフィラー粒子31とを用いて散乱部材3を構成し易くすることができる。また、散乱部材3の内部ヘイズを例えばフィラー粒子31の量により調整し易くすることができる。
また散乱部材3は、比H1/H2が、0.7以上1.0以下の範囲の値に設定されている。よって、散乱部材3の内部ヘイズを幅広い値に設定でき、散乱部材3において、例えば外部ヘイズに比べて内部ヘイズを大幅に大きい値に設定できる。これにより、散乱フィルム1の光散乱性の設計自由度を向上でき、散乱フィルム1に良好な光散乱性を付与できる。
また、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下の範囲の値に設定されている。これにより、散乱部材3の前記表面に高度な平坦性を付与できる。よって、散乱フィルム1の光散乱性を確保しつつ、例えば散乱部材3の前記表面に光学糊部材6,7を重ねて配置する場合において、散乱部材3と光学糊部材6,7との密着性を向上できる。
また散乱フィルム1は、散乱部材3に重ねて配置され、散乱部材3と透明部材5との間に充填される光学糊部材7を備えている。これにより、散乱フィルム1の光散乱性を確保しつつ、散乱部材3と透明部材5とを光学糊部材7を介して密着させることができる。
また成形ユニット10は、成形品4と、透明部材5と、散乱フィルム1とを備える。ここで散乱部材3は、表面に皺や凹凸が形成されていなくても内部ヘイズによりヘイズを調整できるので、散乱部材3の内部ヘイズを高めることで、散乱部材3の光散乱性を向上できる。よって成形ユニット10において、例えば、成形品4と透明部材5との間に光学糊部材6,7を配置する場合でも、散乱部材3の内部ヘイズを調整することで、成形品4の意匠面で反射された外光を散乱フィルム1により良好に散乱できる。
(確認試験)
次に、確認試験について説明するが、本発明は、以下に示す各実施例に限定されるものではない。実施例1~8の散乱フィルム1を製造する際に使用した原料は、以下の通りである。
[原料]
セルロースアセテートプロピオネート(CAP):イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000
ウレタンアクリレート:新中村化学工業(株)製「UAー1100H」
ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「EBECRYL600」
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」
ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」
ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「UVHC7800G」
シリカ球状微粒子A:(株)日本触媒製「KE-P250」(平均粒径2.5μm)
シリカ球状微粒子B:(株)日本触媒製「KE-S100」(平均粒径1.0μm)
微粉末合成シリカ:富士シリシア化学(株)製「サイリシア730」(不定形粒子、最大粒径3.0μm)
架橋スチレンビーズ:綜研化学(株)製「SX-130H」(平均粒径1.3μm)
重合性基を有するフッ素系化合物A:(株)ネオス製「フタージェント602A」
光開始剤A:BASFジャパン(株)製「イルガキュア184」
光開始剤B:BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:東レ(株)製「ルミラー」
セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フィルム(株)製「フジタックTG60UL」
透明光学粘着シート(OCA):日東電工(株)製「LUCIACS」
[実施例1]
ウレタンアクリレート77.6重量部、ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート19.4重量部、セルロースアセテートプロピオネート3重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部、重合性基を有するフッ素系化合物A0.2重量部を、メチルエチルケトン109重量部と1-ブタノール30重量部との混合溶媒に溶解した。また、この混合溶媒に、フィラー粒子31として、シリカ球状微粒子A1.6重量部を添加した。これにより、散乱部材3の材料となる溶液を調製した。
この溶液を、ワイヤーバー(#24)を用いて、支持部材2であるPETフィルム上に流延した。その後、溶液及び支持部材2を80℃のオーブン内に1分間放置し、溶液中の溶媒を蒸発させることで、前記溶液から厚み寸法が約13μmの散乱部材3の中間体を得た。その後、高圧水銀ランプにより紫外線を中間体に約5秒間照射(積算光量約100mJ/cm照射)することにより、中間体を紫外線硬化処理した。これによりコート材30を形成し、実施例1の散乱フィルム1を得た。
[実施例2,3]
シリカ球状微粒子Aの添加量を3.8重量部に変更した以外は、実施例1と同一の製造条件により、実施例2の散乱フィルム1を得た。また、シリカ球状微粒子Aの添加量を38重量部に変更した以外は、実施例1と同一の製造条件により、実施例3の散乱フィルム1を得た。
[実施例4,5]
シリカ球状微粒子Aの代わりにシリカ球状微粒子Bを3.8重量部添加した以外は、実施例1と同一の条件により、実施例4の散乱フィルム1を得た。コート材30の材料として、ウレタンアクリレートの代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを58.2重量部、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレートを19.4重量部添加し、シリカ球状微粒子Aを38重量部添加した以外は、実施例1と同一の条件により、実施例5の散乱フィルム1を得た。
[実施例6,7]
セルロースアセテートプロピオネートを6重量部、シリカ球状微粒子Aを3.8重量部とした以外は、実施例1と同一の条件により、実施例6の散乱フィルム1を得た。シリカ球状微粒子Aの代わりに微粉末合成シリカを10重量部添加した以外は、実施例1と同一の条件により、実施例7の散乱フィルム1を得た。
[実施例8]
ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物166.7重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部、架橋スチレンビーズ21重量部、重合性基を有するフッ素系化合物A0.2重量部を、メチルエチルケトン48重量部と1-ブタノール13重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
この溶液を、ワイヤーバー(#6)を用いて、支持部材2であるPETフィルム上に流延した。その後、溶液及び支持部材2を80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させることで、厚み寸法が約5μmの散乱部材3の中間体を形成した。その後は実施例1と同一の条件により、実施例8の散乱フィルム1を得た。
以上により得られた実施例1~8の散乱フィルム1について、以下の手順で、ヘイズ、全光線透過率、60°グロス、及び算術平均粗さRaを測定した。
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠し、全ヘイズを測定する場合、散乱フィルム1の散乱部材3が受光器側となるように配置して測定した。散乱部材3の内部ヘイズを測定する際、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面に光学糊部材でTACフィルムを貼合して測定し、得られたヘイズ値からTAC/OCAのみのヘイズ値(0.7%)を差し引いた値を散乱部材3の内部ヘイズの値とした。散乱フィルム1の散乱部材3の全ヘイズと内部ヘイズの差分が0.5%以下の場合、全ヘイズへの寄与は、全て内部ヘイズであるとした。
[透過像(写像)鮮明度]
写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM-1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、散乱フィルム1の支持部材2の製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように散乱フィルム1を設置し、散乱フィルム1の透過像鮮明度を測定した。本試験では、写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における散乱フィルム1の透過像鮮明度を測定した。
[60°グロス]
JIS K7105に準拠し、グロスメーター((株)堀場製作所製「IG-320」)を用いて、角度60°で散乱フィルム1の散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の60°グロスを測定した。
[算術平均粗さRa]
JIS B0601に準拠し、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製「サーフコム570A」)を用いて、散乱フィルム1の散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の算術平均粗さRaを測定した。各測定結果及び比H1/H2の算出結果を表1に示す。
なお、実施例2,3,5,及び6では、内部ヘイズH1の測定値が総ヘイズH2の測定値よりも大きく、且つ、両測定値の差が0.5%以内であったので、比H1/H2を1.00とした。
Figure 0007064652000001
表1に示されるように、実施例1~8は、少なくとも内部ヘイズが外部ヘイズよりも大きく設定されるように散乱部材3が構成されている。また実施例1~8は、散乱部材3の比H1/H2が、0.7以上1.0以下の範囲の値に設定されている。
このうち実施例1~6の散乱部材3は、比H1/H2が少なくとも0.98以上であり、内部ヘイズが外部ヘイズに比べて大幅に高められている。言い換えると、実施例1~6の散乱部材3は、支持部材2とは反対側の表面が高い平坦性を有するように構成されている。
また、実施例1~8のいずれにおいても、散乱部材3は、内部ヘイズが10.4以上の値に設定されており、ヘイズが適度に設定されている。これにより、外部ヘイズの有無に関わらず、実施例1~8の散乱部材3は、良好な光散乱性を有する。
実施例1~3の結果から、散乱部材3の全ヘイズと内部ヘイズ、及び、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、フィラー粒子31の配合量と比例関係にあることが分かった。また、散乱フィルム1の全光線透過率、透過像鮮明度、及び散乱部材3の60°グロスは、フィラー粒子31の配合量とは反比例の関係にあることが分かった。
また実施例2,4の結果から、フィラー粒子31の平均粒径は、散乱部材3の全ヘイズ及び内部ヘイズと比例関係にあることが分かった。また、実施例1,5,6の結果から、フィラー粒子31の配合量が同じでも、コート材30の材質を変更することで、散乱部材3の全ヘイズ及び内部ヘイズを調整できることが分かった。
実施例1~6は、散乱部材3の60°グロスの値が比較的高く保たれており、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面が高度に平坦に形成されているが、散乱部材3の全ヘイズが実質的に内部ヘイズのみにより設定されているため、成形品4の意匠面からの反射光を良好に散乱できるものと考えられる。
実施例7,8は、比H1/H2の値から、散乱部材3の外部ヘイズが比較的大きいことが分かった。その理由の一つとして、実施例7ではフィラー粒子31として不定形のシリカ粒子を用い、実施例8ではフィラー粒子31として球状のスチレンビーズ粒子を用いたことにより、散乱部材3の表面に若干の凹凸が形成され易くなったことが考えられる。
また、このように実施例7,8では、散乱部材3の外部ヘイズが比較的大きくなったことにより、防眩性が向上したものと考えられる。また実施例7,8では、散乱部材3の外部ヘイズが比較的大きくなったことにより、実施例1~6に比べると透過像鮮明度が抑制されている。それでも実施例7,8では、散乱部材3の内部ヘイズがある程度大きく設定されているため、成形品4の意匠面からの反射光を適度に散乱できるものと考えられる。
実施例1~8の散乱フィルム1は、いずれも適度な全光線透過率を有している。よって、実施例1~8の散乱フィルム1を成形ユニット10及びこれを備える装置に適用した場合、成形品4の意匠面からの反射光を透過することで成形品4の意匠面の美観を良好に調整できるものと考えられる。
上記試験結果から、実施例1~8の散乱フィルム1は、いずれも散乱部材3の全ヘイズに対する内部ヘイズの割合が大きく、散乱部材3の支持部材2とは反対側の表面が、平坦又はこれに準ずる状態であることが分かった。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。
成形ユニット10では、複数の散乱フィルム1が重ねて配置されていてもよい。この場合、隣接する散乱フィルム1同士の間に別のフィルムや光学糊部材が配置されていてもよい。また、散乱部材3が成形品4側に配置され、支持部材2が透明部材5側に配置されていてもよい。
また、散乱部材3がある程度の強度を有する場合、支持部材2は省略してもよい。この場合散乱フィルム1は、例えば散乱部材3のみで構成される。また散乱部材3の構成は、コート材30とフィラー粒子31とからなる構成のみに限定されない。
1 散乱フィルム
2 支持部材
3 散乱部材
4 成形品
5 透明部材
6,7 光学糊部材
30 コート材
31 フィラー粒子

Claims (7)

  1. 成形品と、前記成形品の全光線透過率が20%以下の意匠面を覆うように配置された透明部材との間において、前記透明部材を介して入射され且つ前記成形品の前記意匠面で反射した光を散乱させることにより前記意匠面を修飾する加飾フィルムであって、
    内部ヘイズが10%以上90%以下の範囲の値に設定されたシート状の散乱部材を備える、加飾フィルム。
  2. 前記散乱部材を支持するシート状の支持部材を更に備え、
    前記散乱部材が、前記支持部材の一方の表面を覆うように配置されている、請求項1に記載の加飾フィルム。
  3. 前記散乱部材は、前記支持部材の前記表面に沿って延びるコート材と、前記コート材内に分散されたフィラー粒子とを有する、請求項2に記載の加飾フィルム。
  4. 前記散乱部材は、前記散乱部材の前記内部ヘイズの絶対値をH1、総ヘイズの絶対値をH2としたときの比H1/H2が、0.7以上1.0以下の範囲の値に設定されている、請求項2又は3に記載の加飾フィルム。
  5. 前記散乱部材の前記支持部材とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下の範囲の値に設定されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
  6. 前記散乱部材に重ねて配置され、前記散乱部材と前記透明部材との間に充填される光学糊部材を更に備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
  7. 前記成形品と、前記透明部材と、請求項1~6のいずれか1項に記載の前記加飾フィルムとを備える、成形ユニット。
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