JP7061695B2 - 多段連結多極子、多段多極子ユニット、及び荷電粒子線装置 - Google Patents

多段連結多極子、多段多極子ユニット、及び荷電粒子線装置 Download PDF

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Description

本発明は、多段連結多極子、多段多極子ユニット、及びそのような多段多極子が使用され得る荷電粒子線装置に関する。
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、LSIに荷電粒子線を照射し、試料から発生する二次電子を検出することでパターン形状の寸法計測や欠陥検査を行う荷電粒子線装置が用いられており、特に走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope :SEM)が多用されている。このような荷電粒子線装置は、半導体デバイスの性能向上やコストダウンのために微細化による集積度の向上に寄与する。
SEMによる微細パターンの計測には装置の分解能の向上が不可欠である。SEMにおいて高い加速電圧で試料に電子ビームを照射させることで、電子ビームのスポットサイズが小さくなり、高分解能なSEM画像を撮像することができる。しかし、加速電圧を増大させると、試料がダメージを受け微細パターンが収縮したり、また電子ビームが微細パターンを透過してしまい、微細パターンの表面情報が得られなかったりする。そのため低い加速電圧で高い分解能のSEMが必要である。
電子ビームの加速電圧が低い場合であっても電子ビームのスポットサイズを小さくするには、荷電粒子線光学系の球面収差と色収差の補正が必要である。このため、電子光学系に収差補正器を搭載した計測・検査用SEMが必要とされる。
収差補正器は、単段又は多段の極子を備え、電磁場を発生させることで電子ビームに対して凹レンズの作用を及ぼして収差を補正する。しかし正しい空間分布の電磁場を発生させなければ、寄生収差が発生し、電子ビームのスポットサイズを小さくすることができない。発生する寄生収差が大きければ、それを補正するために別の補正コイルを用いたり、個別の極子の電圧・電流を独立に調整したりする必要があり、制御が複雑化してしまう。寄生収差の発生量を低減するためには、多極子を高精度で加工し組み立てる必要がある。
特許文献1には、高精度な多極子を製造するための方法が開示されている。この方法では、6個の多極子とヨークとを有する部材を一体加工で単一の材料から成形し、そのような一体成型部材を2個用意する。そして、2個の一体成型部材の多極子とヨークの接続部分にコイルを巻き、その後に二つの一体成型部材を重ねて固定する。これにより、単段の極子が12個配列された12極レンズが形成される。この方法によれば、部品点数の削減を図ることができると共に、極子の組立公差を低減することができる。
特許文献2及び3には、単段の極子を複数個配列し、それらの間に絶縁材をロウ付けして連結して多段の極子を成形した後、溝を有するベースブロックに固定する方法が開示されている。
また、特許文献3では、光軸方向に平行な溝を複数持つ、非磁性材料からなる円筒形のハウジングの溝に多段連結極子を嵌め込み固定し、その後、コイルを巻き付けた磁性材のシャフトとヨークを取り付けることで多段多極子レンズを製造する方法が開示されている。
多段多極子を高精度に製造するためには、従来技術では以下の問題がある。
特許文献1に開示の方法では、一つの部材から一体で加工される6個の極子は機械加工の精度で製造できるが、二つの部材を組み立てる際の部材同士の間の組立公差は回避できず、寄生収差の原因となる。また極子間がヨークで接合されているため、極子間の電気絶縁ができず、静電多極子レンズは製作できない。このため、特許文献1の方法では球面収差補正器の製造は可能だが色収差補正器は製造できない。また、単段の多極子レンズを多段化する際には、単段レンズを積み上げるため、組立公差の発生を回避できず、発生する多極子磁場の磁場中心が段毎にずれたり、磁場の発生面が傾斜したりすることを回避することが難しい。
また、特許文献2及び特許文献3に開示の方法では、極子一つ一つを加工した後にロウ付けするため、多段極子部材の2段目以降の極子の1段目の極子に対する配置(極子先端の位置)の精度が、絶縁材をロウ付けする際の精度に左右される。絶縁材のロウ付け時に数μm~十μmのオーダーで極子の先端位置と角度の二つを精密に決定する必要がある。収差補正器では、多数の多段連結多極子を用いるため量産性が低く、多段連結多極子の精度のバラつき製造の再現性が作業者に依存する。
また、特許文献2に開示の方法では、多段連結多極子をベースブロックに固定する方法をとっている。また、特許文献3に開示の方法では、ハウジングと極子の間に隙間がある。このため、極子に磁性材シャフトを取り付ける際に、極子部材に掛かる応力のために各極子が変形したり、ベースブロック及びハウジングとの締結が緩んで多段連結多極子部材の位置がずれたりする虞が有る。
特開2015-153565号公報 特開2009-43533号公報 特開2012-209130号公報
本発明は、極子と絶縁材のロウ付けに精度を要求することなく、機械加工の精度で製作することができる多段連結多極子及び荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
本発明に係る多段連結多極子は、荷電粒子線の光軸方向に沿って配列され且つ対向する面において切り欠きを有する複数の極子と、前記複数の極子の間に配列される絶縁体からなる支柱とを備える。前記極子及び前記支柱は、前記切り欠きにおいて接合材を介して接合される。
本発明によれば、極子と絶縁材のロウ付けに精度を要求することなく、多段連結多極子を機械加工の精度で製作することができ、精度と量産性を両立させた多段連結多極子、多段多極子ユニット及び荷電粒子線装置を提供することができる。
第1の実施の形態の多段連結多極子100の構造を説明する概略斜視図である。 図1に示した多段連結多極子100において実行されるロウ付け工程を説明する模式図である。 第2の実施の形態の多段連結多極子100Aの構造を説明する概略斜視図である。 図3に示した多段連結多極子100Aにおいて実行されるロウ付け工程を説明する模式図である。 第3の実施の形態に係る色・球面収差補正器200の構造を説明する概略斜視図である。 図5のハウジング103に取り付けられる多段連結多極子100Bの構造を説明する概略斜視図である。 第3の実施の形態の色・球面収差補正器200の概略断面図である。 第4の実施の形態に係る色・球面収差補正器200Aの構造を説明する概略斜視図である。 図8のハウジング103Aに取り付けられる多段連結多極子100Cの構造を説明する概略斜視図である。 第4の実施の形態の色・球面収差補正器200Aの概略断面図である。 第5の実施の形態の色・球面収差補正器200Bの概略断面図である。 第6の実施の形態の荷電粒子線装置の全体構成を示す概略図である。 第6の実施の形態のような、色・球面収差補正器を搭載した荷電粒子線装置において、荷電粒子ビームの収差を補正する場合における、光学系制御部320の構成の一例を示すブロック図である。 第6の実施の形態のような、色・球面収差補正器を搭載した荷電粒子線装置において、荷電粒子ビームの収差を補正する場合における手順を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号又は対応する番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
以下の実施の形態の説明では、電子線を使用した走査電子顕微鏡(SEM)を用いた検査・計測装置に本発明を適用した例を示す。しかし、この実施の形態は限定的に解釈されるべきではなく、例えば、イオン等の荷電粒子線を使用する装置、また一般的な観察装置に対しても本発明は適用され得る。
[第1の実施の形態]
図1と図2を参照して、第1の実施の形態の多段連結多極子100(以下、単に「多極子100」という)を説明する。図1に示す多極子100は、12極4段で構成される色・球面収差補正器の一部を構成する4段の多段連結多極子である。
多極子100は、1段目の極子Q1、2段目の極子Q2、3段目の極子Q3、4段目の極子Q4の、計4個の極子を、荷電粒子線装置の光軸方向に沿って配列して構成される。各極子Q1~Q4は、磁場を導くことができるように、純鉄やパーマロイ、パーメンジュールなどの軟磁性金属を材料して構成される。
極子Q1~Q4には、隣接する極子と対向する面において、後述する支柱P1~P3を嵌め込むための切り欠きNを備えている。多極子100の両端にある1段目の極子Q1と4段目の極子Q4では、その片方の側面のみ切り欠きNが設けられる。一方、中間に位置する2段目の極子Q2と3段目の極子Q3では、その両側の側面に切り欠きNが設けられる。
各極子Q1~Q4は切り欠きNが対向するよう、荷電粒子線装置の光軸方向に沿って配置される。そして、各切り欠きNには、例えばアルミナ等のセラミックを材料として構成される支柱P1、P2、P3が配置される。各切り欠きNと支柱P1、P2、P3の間は、ロウ付けによって接合され、これにより各極子Q1~Q4と支柱P1~P3は一体化されている。
図2は、図1に示した多極子100において実行されるロウ付け工程を説明する模式図である。極子母材1は単一の軟磁性金属であり、機械加工によって一体で成形される。極子母材1は四か所のブロック11~14を有する。これらは、最終的に前述の極子Q1~Q4となる。ブロック11と14の内側側面と、ブロック12と13の両側側面に切り欠きNが設けられている。
ブロック11~14は、その先端(一端)と背面(他端)において、先端側連結部2と背面側連結部3に連結されている。先端側連結部2と背面側連結部3とは、ブロック11~14とともに極子母材1の一部を構成する。すなわち、極子Q1~Q4となるブロック11~14は、支柱P1~P3に接合材(ロウ材)により接合される前の段階では、共通の先端側連結部2と背面側連結部3とに連結され、先端側連結部2と背面側連結部3とともに単一の極子母材を構成している。支柱P1~P3の接合後、先端側連結部2と背面側連結部3が切断・分離されることにより、複数のブロック11~14は物理的に独立した部材である極子Q1~Q4となる。先端側連結部2と背面側連結部3とは、それぞれ一の切断面に沿って切断・分離されるため、分離後の極子Q1~Q4の複数の端面は、切断面で定義される一の面に沿った形状を有することになる。ブロック11~14は、先端側連結部2及び背面側連結部3に、多段連結多極子100の設計値に従った間隔で連結されている。
ロウ付けの際には極子母材1に設けられた切り欠きNに支柱P1~P3が配置され、それぞれの間に、例えば銀ロウなどの合金が配置されてロウ付けされる。ロウ付け後に先端側連結部2と背面側連結部3は機械加工で除去される。ブロック11~14がそれぞれ極子Q1~Q4となり、図1に示した4段の多段連結多極子100が形成される。
本実施の形態によれば、極子母材1における各ブロック11~14は、同一の加工基準、加工条件で一体加工できるため、各ブロック11~14の寸法、及びブロック11~14間の距離をマイクロメートルの精度で加工することができる。
また先端側連結部2と背面側連結部3の除去も機械加工により同一加工基準、加工条件で一体的に行われるので、極子Q1~Q4とそれぞれの間の間隔と方向を段間のずれ無く、マイクロメートルの精度で成形することができる。
また複数の4段の多段連結多極子を製作する場合にも、同一の加工基準、加工条件、加工冶具で加工できるため、マイクロメートルの精度のバラつきで加工を行うことができる。
また、第1の実施の形態では、支柱P1、P2、P3の配置が極子Q1~Q4間の位置精度に影響しない。すなわち、支柱P1~P3は、極子Q1~Q4となるブロック11~14が、先端側連結部2及び背面側連結部3と一体をなしている段階で、切り欠きNに嵌め込まれ、ロウ付けされる。極子Q1~Q4間の間隔の誤差の大小に拘わらず、支柱P1~P3を切り欠きNに嵌め込み、ロウ付けの接合材で接合することで、極子Q1~Q4を接合することができる。このため、ロウ付け時に支柱P1~P3の位置調整が不要である。従って、単体の極子を互いに支柱にロウ付けをする製造方法に比べ、ロウ付け工程の歩留まりが良く、結果として多段連結多極子の生成工程の歩留まりも向上させることができる。
第1の実施の形態によれば、極子母材1は、先端側と背面側に二つの連結部(先端側連結部2と背面側連結部3)を有する。これは、極子母材1を加工する際に極子母材1に蓄積される応力が、ロウ付け時の熱によって解放されてブロックが変形することを防止するのに寄与する。
なお、極子母材1の連結部の数や位置は、図示されているものに限定されるものではなく、極子母材1の連結部は先端側、背面側の何れか一方だけに設けられていても良い。また、極子の段数は4に制限されるものではなく、極子の段数は2段以上であればよい。
更に、支柱P1~P3も、特定の形状には限定されない。図1では、四角柱形状の支柱P1~P3を例示したが、これに限定されるものではなく、円柱、三角柱、台形形状などであってもよい。また、支柱P1~P3の材料はアルミナに制限されず、金属とのロウ付けが可能なセラミクス、又はその他の絶縁材であれば本実施の形態を適用できる。また、この多段連結多極子は、色・球面収差補正器だけでなく、球面収差補正器、非点補正器、ウィーンフィルタ、多極子構造の偏向器などにも適用することができる。
[第2の実施の形態]
次に、図3と図4を参照して、第2の実施の形態に係る多段連結多極子100Aを説明する。この第2の実施の形態でも、一例として、12極4段で構成される色・球面収差補正器の一部を構成する4段の多段連結多極子100Aを例として説明する。
図3は、多段連結多極子100A(以下、単に「多極子100A」という)の構成を示す概略斜視図である。図1の多極子100と同一の構成要素については図3において同一の参照符号を付し、以下では重複する説明は省略する。
第2の実施の形態の多極子100Aは、切り欠きNに嵌め込まれる部材の構造が、第1の実施の形態の多極子100とは異なっている。極子Q1~Q4の構造は、第1の実施の形態の多極子100と同一である。この第2の実施の形態では、切り欠きNにキャップCが嵌め込まれている。キャップCは、切り欠きNと略同一の形状で、切り欠きNに対し嵌め込み可能なよう、所定の隙間を空けて嵌め込み可能な大きさに構成される。また、キャップCの中心には、凹部11が設けられている。キャップCの材料は、極子Q1~Q4と同一の材料とするのが好適である。
支柱P11、P12、P13は、第1の実施の形態の支柱P1、P2、P3とは異なり、直接切り欠きNに嵌め込まれるのではなく、キャップCの凹部11を介して切り欠きNに嵌め込まれる。支柱P11~P13は、キャップCの凹部11に嵌合させるための突起部12(凸部)を有している。突起部12は、凹部11と略同一の形状で、所定のギャップを介して凹部11に嵌め込み可能とされている。嵌め込み後、極子Q1~Q4及びキャップCの間、並びに、支柱P11~P13とキャップCの間は、第1の実施の形態と同様に、ロウ付けによって接合され一体化される。なお、図3に示した例では、キャップCが凹部11を有し、支柱P11~P13がこれに嵌め込まれる突起部12を有しているが、これとは逆に、キャップCが突起部を有し、支柱P11~P13に、この突起部が挿入される凹部を有していてもよい。
図4は、図3に示した多極子100Aにおいて実行されるロウ付け工程を説明する模式図である。図4において、図3と同一の部材については同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。図3で説明したように、切り欠きNには、キャップCを介して支柱P11~P13が嵌め込まれ、ロウ付けで接合される。この第2の実施の形態(図4)の工程においても、キャップC及び支柱P11~P13の配置が極子Q1~Q4間の位置精度に影響しないため、ロウ付け時に部材の位置調整が不要である。また極子母材1とキャップCは同一の金属で構成することができるので、容易にロウ付けすることができる。そして、支柱P11~P13の突起部12がキャップCに設けられた凹部11に嵌合するため、異なる材料間であっても容易に強固なロウ付けをすることができる。そのため、この第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比べても更にロウ付け工程の歩留まりを向上させることができる。
[第3の実施の形態]
次に、図5~図7を参照して、第3の実施の形態に係る色・球面収差補正器200(以下、単に「収差補正器200」という)を説明する。この第3の実施の形態でも、一例として、12極4段の多段連結多極子を有する、磁場主体型の色・球面収差補正器を例として説明する。
図5は、第3の実施の形態の収差補正器200のハウジング103の斜視図である。このハウジング103は、軸Oを中心とした円筒形状を有している。このようなハウジング103の内壁に、図6に示す多段連結多極子100Bが搭載されることにより、収差補正器200が構成される。図5の例では、多段連結多極子100Bがハウジング103の内壁に、円周方向に略等間隔に12個配置されることにより、12極4段の多極子レンズが構成される。ハウジング103は、外部から供給される磁場を極子毎に分離して伝達させるため、非磁性の金属を材料として構成される。1つのハウジング103に取り付けられる多極子100Bは12個に限定されるものではなく、例えば4個、6個、8個等であってもよい。すなわち、n組(nは2以上の整数)の多段連結多極子100Bを、ハウジング103に対し、光軸Oに対して対称となるよう組み付けることができる。
図5に示すように、ハウジング103は、一例として、一方の端面近傍の内壁部において、厚肉部104と、厚肉部104の間に挟まれるテーパ付き溝105とを備えている。厚肉部104は、その下方の薄肉部108に比べ、周方向の厚さが大きくされている。厚肉部104は、円筒形状の周方向に所定の間隔で配置され、その間にテーパ付き溝105が、例えば12個設けられる。テーパ付き溝105は、その側壁が所定のテーパ角を与えられており、且つ軸Oの方向を長手方向として延びるように形成されている。
薄肉部108には、シャフト貫通穴106が設けられている。また、テーパ付き溝105には、シャフト貫通穴106に加え、ネジ貫通穴107が設けられている。ハウジング103の12個のテーパ付き溝105は、同一の加工基準、加工条件を用いて均一性良くマイクロメートルの精度で加工することができる。
図6は、ハウジング103に取り付けられる多段連結多極子100B(以下、単に「多極子100B」という)の構造の一例を示す概略斜視図である。この多極子100Bは、例えば第2の実施の形態の多極子100Aと略同一の構造を有することができる。ただし、この図6の多極子100Bは、極子Q1が、前述のテーパ付き溝105の形状に合致する(同一のテーパ角を有する)テーパ付き側面112を備えている。
1段目の極子Q1の背面にはネジ穴H1及びシャフト取り付け穴H2が形成されており、また、極子Q2~Q4の背面にはシャフト取り付け穴H2が設けられる。ネジ穴H1は、多極子100Bをハウジング103にネジ及びネジ貫通穴107により固定するためのネジ穴である。また、シャフト取り付け穴H2は、後述するシャフトの一端がシャフト貫通穴106を介して挿入される穴である。
第3の実施の形態の色・球面収差補正器200は、図5に示すハウジング103に、図6に示す12個の多極子100Bを組み込むことにより構成される。ハウジング103の厚肉部104の間に設けられたテーパ付き溝105に、多極子100Bのテーパ付き側面112を備えた極子Q1の背面部が挿入される。極子Q1の背面のネジ穴H1にネジ貫通穴107を介してネジが挿入されることで、ハウジング103に対し極子100Bが固定される。
多極子100Bのテーパ付き側面112とハウジング103のテーパ付き溝105は機械加工で成形されるため、高精度に加工を行うことができる。多極子100Bをハウジング103に組付けるとき、極子Q1のテーパ付き側面112とハウジング103のテーパ付き溝105が噛み合うため、ハウジング103に対する多極子100Bの位置と方向を、組付け時の調整なしで決定することができる。
図7は、第3の実施の形態の収差補正器200の概略断面図である。この図7は、ハウジング103の内壁に多極子100Bを取り付け、ハウジング103の外壁にシャフト121~124を取り付けた状態を示している。磁性金属で構成されたシャフト121~124が、ハウジング103の外壁側において、シャフト貫通穴106を介して、極子Q1、Q2、Q3、Q4の背面のシャフト取り付け穴H2に挿入される。シャフト121~124にはそれぞれ励磁コイル128が巻き付けられる。なお、シャフト貫通穴106の直径は、シャフト121~124の断面直径よりも十分大きく設定されている。このため、シャフト121~124は、ハウジング103とは接触しない。
また、シャフト121~124の後端部には樹脂などの絶縁材料で作られた絶縁スリーブ126が取り付けられ、絶縁スリーブ126の上から、軟磁性金属で構成される円筒形のリング磁路125が取り付けられる。また2段目及び3段目のシャフト122、123の後端には、電圧を導入するための端子127が取り付けられる。
励磁コイル128に電流を流れると、軟磁性金属のシャフト121~124に磁束が励起され、極子Q1~Q4に伝達される。この磁束は、円周方向に配置された別の極子にも伝達され、磁束は更に、その極子に取り付けられたシャフト121~124、及びリング磁路125にも伝達され、図示のシャフト121~124に戻る。このような閉磁気回路が形成されることにより、励磁コイル128の電流による磁束が伝達される。励磁コイル128に流す電流を調整することで、極子Q1~Q4の各段において光軸Oの近傍に様々な多極磁場を発生させることができる。
2段目から4段目の極子Q2~Q4は、ハウジング103の薄肉部108に配置され、ハウジング103とは接触しない。ハウジング103のシャフト貫通穴106はシャフト121~124の外径より十分大きく、シャフト121~124はと接触しない。また絶縁スリーブ126によりリング磁路125とシャフト122、123とは電気的に絶縁されているため、端子127に電圧を印加することで極子Q2、Q3の先端に独立に電圧を印加することができる。2段目、3段目の各12個の極子Q2、Q3に印加する電圧を調整することで、極子Q2、Q3において光軸Oの近傍に様々な多極電場を発生させることができる。
この第3の実施の形態では、1段目の極子Q1の背面部のテーパ付き側面112と、ハウジング103のテーパ付き溝105が噛み合うことで、多極子100Bがハウジング103に固定される。極子Q2~Q4はテーパ付き溝105とは噛み合わず、ハウジング103とは接触していない。このため、極子Q1~Q4の背面にシャフト121~124を挿入したときの応力は、テーパ付き溝105にのみ掛かる。従って、多極子100Bを固定するネジS1のゆるみや極子Q1~Q4の先端部の円周方向への変形を防ぐことができる。
この第3の実施の形態によれば、組立時の調整なしで、各段の極子の寸法、極子の位置、円周方向の方位の均一性が良い磁場主体型の色・球面収差補正器を提供することができる。なお、この第3の実施の形態における多極子100Bは、第2の実施の形態のように、キャップCを備えた多極子であってもよいし、第1の実施の形態のように、キャップCを有さず支柱P1~P3のみを有する多極子100であってもよい。
なお、図6の図示例では、テーパ付き側面112を有する極子は極子Q1のみであるが、これに限定されるものではなく、他の極子Q2~Q4も同様のテーパ付き側面112を有してもよい。ハウジング103のテーパ付き溝105も、図5のように、ハウジング103の上端部のみに設けることもできるが、これに限定されるものではなく、テーパ付き溝105は、多極子100Bの長さに対応した長さを有していてもよい。或いは、以下の第4の実施の形態のように、テーパ付き溝105を、ハウジング103の上端と下端にそれぞれ設けても良い。
更に、第3の実施の形態の多極子ユニットは、上述のように色・球面収差補正器として構成することもできるが、これに限定されるものではなく、球面収差補正器、非点補正器、ウィーンフィルタ、多極子構造の偏向器などにも適用することもできる。
[第4の実施の形態]
次に、図8~図10を参照して、第4の実施の形態に係る色・球面収差補正器200A(以下、単に「収差補正器200A」という)を説明する。この第4の実施の形態でも、一例として、12極4段の多段連結多極子を有する、磁場主体型の色・球面収差補正器(多段多極子ユニット)を例として説明する。
図8は、第4の実施の形態の収差補正器200Aのハウジング103Aの模式図である。このハウジング103Aは、第3の実施の形態と同様に、軸Oを中心とした円筒形状を有している。第3の実施の形態のハウジング103と同一の構成要素については図5と同一の参照符号を付しているので、以下では同一の部分についての重複する説明は省略する。
このハウジング103Aは、その光軸方向の一端に厚肉部104A及びテーパ付き溝105Aを有するだけでなく、他端にも厚肉部104B及びテーパ付き溝105Bを備えている。
図9は、ハウジング103Aに取り付けられる、4段の多段連結多極子100C(以下、「多極子100C」という)の模式図である。この多極子100Cの構造は、第3の実施の形態のものと略同一である。ただし、各極子Q1、Q2、Q3、Q4の全ての背面側の側面に、テーパ付き側面112’が成形されている。テーパ付き側面112’はハウジング103Aのテーパ付き溝105と同じ角度のテーパ角に成形される。極子Q1と極子Q4の背面にはネジ穴H1が設けられている。極子Q1~Q4の全ての背面には、シャフト取り付け穴H2が設けられる。
この第4の実施の形態における多極子100Cでは、全ての極子Q1~Q4の背面にテーパ付き側面が設けられる。このような12個の多極子100Cが、ハウジング103Aに挿入されることにより、収差補正器200Aが構成される。第4の実施の形態では、1段目の極子Q1の背面部のテーパ付き側面112’と一端側のテーパ付き溝105Aが噛み合い、4段目の極子Q4の背面部のテーパ付き側面112’と他端側のテーパ付き溝105Bとが噛み合い、計2か所でハウジング103Aと多極子100Cとが噛み合い、固定される。図10に示すように、ネジS1により、極子Q1、Q4の2か所において多極子100Cがハウジング103Aに接続される。そのため、極子Q1~Q4の背面にシャフト121、122、123、124を挿入したときの多極子100Cの固定及び応力に対する強さをより強くすることができる。
第4の実施の形態は、大きな収差の荷電粒子光学系の収差補正のため、極子Q1~Q4の光軸方向の長さ又は支柱P1~P3の長さを長くして、多極子100Cの全長が長くなる場合により好適である。多極子の全長が長くなると、第1の実施の形態のようにテーパ付き溝105が光軸方向に1か所のみのハウジング103の場合、多極子がハウジング103の軸Oに対して傾斜して組み付き、1段目の極子Q1と4段目の極子Q4の先端部の軸Oからの距離にずれが生じる。これに対し、この第4の実施の形態では、ハウジング103Aにおいて、光軸方向において2個のテーパ付き溝105A、105Bが設けられ、この2つのテーパ付き溝105A、105Bにおいて多極子100Cとハウジング103Aとが固定される。このため、多極子100Cが光軸方向に対し傾斜することを防ぐことができる。すなわち、この第4の実施の形態の構造によれば、組立時の調整なしで、多極子100Cの全長が長い場合でも、各段の極子Q1~Q4の寸法、極子Q1~Q4の位置、円周方向の方位の均一性が良い磁場主体型の色・球面収差補正器を提供することできる。
なお、図9に示した例では、多極子100Cの極子Q1~Q4の全てがテーパ付き側面112’を備えている。しかし、これに限定される趣旨ではなく、ハウジング103Aに対し多極子100Cが固定可能であれば、極子Q1、Q4のみがテーパ付き側面112’を備える構造を採用することも可能である。
[第5の実施の形態]
次に、図11を参照して、第5の実施の形態に係る色・球面収差補正器200B(以下、単に「収差補正器200B」という)を説明する。この第5の実施の形態も、一例として、12極4段の多段連結多極子を有する、色・球面収差補正器を例として説明する。ただし、この第5の実施の形態は、磁場主体ではなく、静電主体型の色・球面収差補正器を例として説明する。
図11は、第5の実施の形態の収差補正器の概略断面図である。ハウジング103Bの構成は、第3の実施の形態のハウジング103と略同一であるので、重複する説明及び図示は省略する。また、ハウジング103Bに取り付けられる多極子の構造も、前述の実施の形態と同一で良いので、やはり説明は省略する。ハウジング103B及び多極子の構造は、第4の実施の形態のものと置換されても良いことは言うまでもない。ただし、いずれの場合でも、全ての極子Q1~Q4に独立に電圧を印加するため、極子Q1~Q4とハウジング103Bとを電気的に絶縁する必要がある。
そのため、第5の実施の形態におけるハウジング103Bは、アルミナや樹脂などの非磁性の絶縁材料で構成される。ハウジング103Bに空けられたシャフト貫通穴106を介して極子Q1、Q4に端子175(第2の端子)が挿入される。一方、極子Q2、Q3には、前述の実施の形態と同様に、軟磁性金属を材料として構成されたシャフト122、123が挿入される。極子Q1、Q4には、シャフトを介さずに直接端子175が挿入されている。一方、シャフト122、123の後端には端子127(第1の端子)が接続される。シャフト122、123には絶縁スリーブ126が挿入され、その上から軟磁性金属で構成される円筒形のリング磁路125が固定される。また、シャフト122、123には、励磁コイル128が巻かれる。
各極子Q1~Q4は他の極子及びハウジング103Bと電気的に絶縁されているので、端子175、及び127に電圧を印加すると、極子Q1、Q2、Q3、Q4の各々において、光軸Oの近傍に様々な多極電場を発生させることができる。
第5の実施の形態では、ハウジング103Bが非磁性の絶縁材料で構成されている。このため、励磁コイル128に電流を流すことにより軟磁性金属のシャフト122、123に励起される磁束が2段目及び3段目の極子Q2、Q3に伝達される。磁束は更に、円周方向に配置された別の極子、その極子に取り付けられたシャフト、及びリング磁路125を通じて元のシャフト122、123に戻る。このような閉磁気回路が形成されることにより、励磁コイル128の電流による磁束が伝達される。励磁コイル128に流す電流を調整することで、極子Q2、Q3において、光軸Oの近傍に様々な多極磁場を発生させることができる。
この第5の実施の形態によれば、組立時の調整が不要で、極子の寸法精度が良く、段間の位置と円周方向のずれが小さな静電主体型の色・球面収差補正器を実現できる。なお、ハウジング103Bの材料は絶縁材に制限されない。ハウジング103Bが非磁性金属である場合は、極子Q1~Q4とハウジング103Bの電気絶縁のために、極子Q1~Q4の背面部と接触するハウジング103Bのテーパ付き溝の内壁に樹脂などの絶縁薄膜を挿入することができる。または、極子Q1~Q4の背面部又はテーパ付き溝に絶縁塗料を塗布することで絶縁を確保することもできる。
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態を、図12~図14を参照して説明する。この第6の実施の形態は、前述の実施の形態に係る色・球面収差補正器を搭載した荷電粒子線装置に関する。図12は、一例として、第3の実施の形態と同様の、磁場主体型の色・球面収差補正器209を搭載した、半導体計測・検査用SEM(荷電粒子線装置)の電子光学カラムの模式図である。
この荷電粒子線装置は、陰極201、第1陽極202、及び第2陽極203を備える。陰極201及び第1陽極202の間には、電子銃制御部300により引出し電圧が印加され、所定の電流密度で一次電子が陰極201より放出される。
陰極201と第2陽極203の間には、電子銃制御部300により加速電圧が印加され、一次電子が加速されて後段の荷電粒子光学系へと打ち出される。荷電粒子線光学系は、一例として、第1コンデンサレンズ204、対物可動絞り205、第2コンデンサレンズ206、色・球面収差補正器209、第3コンデンサレンズ211、及び対物レンズ218を備えて構成される。一次電子は、第1コンデンサレンズ制御部301により励磁電流が制御される第1コンデンサレンズ204により集束される。これにより、所定の電流が対物可動絞り205の開口部を通過する。
対物可動絞り205を通過した一次電子は、第2コンデンサレンズ制御部302によって励磁電流が制御される第2コンデンサレンズ206を通過する。これにより、一次電子は、光軸150に対して平行なビーム軌道に調整される。
その後、一次電子は補正電流制御部304と補正電圧制御部305で励磁電流及び印加電圧が制御される色・球面収差補正器209に入射する。これにより、荷電粒子線光学系の色収差と球面収差が補正され、一次電子の軌道の角度が調整されて色・球面収差補正器209から射出される。
その後、一次電子は第3コンデンサレンズ制御部307で励磁電流が制御される第3コンデンサレンズ211により、光軸O上の適切な位置に集束される。その後、一次電子は対物レンズ制御部312で励磁電流が制御される対物レンズ218により更に集束される。対物レンズ218から出射した一次電子は、ステージ制御部313で制御されるステージ219上に配置されたウェハ220上に集束され、微小スポットがウェハ220上に形成される。このとき、色・球面収差補正器209で調整された一次電子の角度変化と、対物レンズ218の色・球面収差によって一次電子の軌道に発生する角度変化が打ち消し合い、収差が補正された状態で微小スポットが形成される。
また、ステージ219には、リターディング電圧制御部314で制御されるリターディング電源230が接続されている。リターディング電圧制御部314は、減速電圧を印加することで対物レンズ218とウェハ220との間に減速電場を発生させる。この減速電圧は、一次電子のウェハ220への照射電圧を変更することができる。なお、対物レンズ218の励磁電流は、ステージ制御部313で制御される試料高さ計測器240で計測されたワーキングディスタンスに基づいて設定される。
偏向器制御部311で制御される走査偏向器217により、一次電子はウェハ220上を走査される。一次電子とウェハ220上に形成されている微小パターンとの相互作用により、二次電子が発生する。発生した二次電子は対物レンズ218を通過し、二次電子変換板212上で広がりを持ったスポットを形成する。二次電子は、走査偏向器217によって二次電子変換板212上を走査され、相互作用により三次電子が発生する。
三次電子は、ExB偏向器213により検出器215の方向へ偏向され、検出器215によって検出される。検出器215は、検出器制御部309により制御される。ExB偏向器213は、ExB制御部310で印加電圧及び励磁電流が制御される。検出器215により検出された三次電子は電気信号に変換され、光学系制御部320で演算され、画像表示部315にSEM画像として表示される。SEM像の視野を移動させる場合はステージ制御部313で制御されるステージ219を動かすか、偏向器制御部311で制御されるイメージシフト偏向器216によって一次電子のウェハ220上の照射位置を光軸150から移動させる。
色・球面収差補正器209の中心軸が光軸150に対してずれて組み立てられている場合、色・球面収差補正器209に入射する一次電子は、偏向器制御部303で制御される二段偏向器208により、色・球面収差補正器209の中心軸に向けてシフトされる。そして、色・球面収差補正器209から射出された一次電子は、偏向器制御部306で制御される二段偏向器210で光軸150に向けてシフトされる。更に、非点補正器制御部308で制御される非点補正器207は、電子光学カラムの寄生非点を補正する。
この色・球面収差補正器209は、4極-8極子系収差補正器であり、色収差と球面収差の補正を実行可能な補正器である。収差補正器209の各段で4極、8極電磁場を形成するが、これに更に12極の電極・磁極を用いると、4極、8極のほか、双極、6極、12極電磁場を重畳して発生させることができる。電極及び磁極の組み立て誤差、磁極材料の不均一性により生じる寄生収差、例えばビーム偏向、軸上コマ、3回非点、4回非点などを補正するためにこれらの多極子場を使用することができる。
第6の実施の形態の荷電粒子線装置で使用される収差補正器は、第3の実施の形態の磁場主体型の色・球面収差補正器に制限されるものではなく、第4の実施の形態で示した磁場主体型の色・球面収差補正器であってもよいし、又は、第5の実施の形態で示した静電主体型の色・球面収差補正器であってもよい。また、本実施の形態における収差補正器は、色・球面収差補正器に制限されず、色収差のみ、又は球面収差のみを補正する収差補正器であってもよい。
なお、第6の実施の形態では、収差補正器を搭載した荷電粒子線装置の例としてSEMを説明したが、荷電粒子線装置はSEMに制限されず、走査透過電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、集束イオンビーム装置などであってもよい。
上述の実施の形態の多段連結多極子又は収差補正器を、走査透過電子顕微鏡に適用する場合の例を以下に説明する。電子源及びコンデンサレンズと対物レンズとの間に上述の実施の形態の収差補正器を配置し、対物レンズの下に薄膜試料を配置する。更に、収差補正器と薄膜試料との間に一次電子を試料上に走査させるための偏向器を配置し、薄膜試料の下方に検出器を配置する。電子源より放出された一次電子が、コンデンサレンズ、上述の実施の形態による収差補正器、及び対物レンズを通じて薄膜試料に集束され、偏向器により集束された一次電子が試料上を走査される。薄膜試料を透過した一次電子が試料の下方に配置された検出器により検出される。
上述の実施の形態の多段連結多極子又は収差補正器を、透過電子顕微鏡に適用する場合の一例を以下に説明する。電子源及びコンデンサレンズと対物レンズとの間に薄膜試料を配置し、対物レンズの下方に、上述の実施の形態の収差補正器と、複数の投影レンズを配置し、その下方に検出器を配置する。電子源から放出された一次電子が、コンデンサレンズを通じて薄膜試料を照明し、薄膜試料を透過した一次電子が対物レンズ、収差補正器、複数の投影レンズを通じて、収差補正されつつ検出器上に拡大投影されて検出される。
次に、例えば、第6の実施の形態のような、色・球面収差補正器を搭載した荷電粒子線装置において、荷電粒子ビームの収差を補正する方法について、図13及び図14を参照して説明する。
図13は、この収差補正方法を実行する場合における光学系制御部320の構成の一例を示すブロック図であり、図14は、一次電子の収差補正方法の実行の手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS001において、観察する光学条件(加速電圧、コンデンサレンズの励磁電流、リターディング電圧など)を、図13の光学条件設定部401により各制御部を通じて設定する。設定された光学条件に従い、収差補正条件記録部402は色・球面収差補正器209等の動作条件を記録する。
続いて、ステップS002において観察位置にステージ219を移動させた後、ステップS003において、収差補正条件記録部402に記録された色・球面収差補正器209の動作条件を読み出し、これを補正電流制御部304と補正電圧制御部305を通じて設定する。
動作条件の設定が完了すると、続くステップS004では、フォーカス、非点補正の微調整が実行される。そして、ステップS005では、収差計測部403により荷電粒子線光学系の色収差及び幾何収差の計測が実行される。
ステップS006では、色収差及び幾何収差の計測結果から電子光学系の収差量が、目標とする収差量以下に補正されているかが判定される。収差量が目標値を超えている場合は(No)、ステップS007に移行し、収差補正量演算部404により、色・球面収差補正器209の各極子Q1~Q4の励磁電流及び印加電圧が演算され、これらが補正電流制御部304と補正電圧制御部305を通じて設定される。その後、ステップS005に戻り、上記の動作が繰り返される。
一方、ステップS006で収差量が目標値以下と判定される場合は(Yes)、ステップS008に移行し、各極子Q1~Q4の励磁電流、印加電圧を収差補正条件記録部402の色・球面収差補正器209の動作条件テーブルに記録し、更新する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Q1~Q4…極子、N…切り欠き、C…キャップ、P1~P3,P11~P13…支柱、11…凹部、12…突起部、1…極子母材、2…先端側連結部、3…背面側連結部、11~14…ブロック、H1…ネジ穴、H2…シャフト取り付け穴、100,100A,100B…多段連結多極子、103,103A,103B…ハウジング、104,104A…厚肉部、105,105A…テーパ付き溝、106…シャフト貫通穴、107…ネジ貫通穴、S1…ネジ、108…薄肉部、O…軸、112,112’…テーパ付き側面、121~124…シャフト、125…リング磁路、126…絶縁スリーブ、127…端子、128…コイル、201…陰極、202…第1陽極、203…第2陽極、204…第1コンデンサレンズ、205…対物可動絞り、206…第2コンデンサレンズ、207…非点補正器、208…2段偏向器、209…色・球面収差補正器、210…2段偏向器、211…第3コンデンサレンズ、212…二次電子変換板、213…ExB偏向器、215…検出器、216…イメージシフト偏向器、217…走査偏向器、218…対物レンズ、219…ステージ、220…ウェハ、230…リターディング電源、240…試料高さ計測器、300…電子銃制御部、301…第1コンデンサレンズ制御部、302…第2コンデンサレンズ制御部、303…偏向器制御部、304…補正電流制御部、305…補正電圧制御部、306…偏向器制御部、307…第3コンデンサレンズ制御部、308…非点補正器制御部、309…検出器制御部、310…ExB制御部、311…偏向器制御部、312…対物レンズ制御部、313…ステージ制御部、314…リターディング電圧制御部、315…画像表示部、320…光学系制御部、401…光学条件設定部、402…収差補正条件記録部、403…収差計測部、404…収差補正量演算部。

Claims (20)

  1. 荷電粒子線の光軸方向に沿って配列され且つ対向する面において切り欠きを有する複数の極子と、
    前記複数の極子の間に配列され絶縁体からなる支柱と
    を備え、
    前記極子及び前記支柱は、前記切り欠きにおいて接合材を介して接合される
    ことを特徴とする多段連結多極子。
  2. 前記切り欠きに前記接合材を介して接合されるキャップを更に備え、
    前記支柱は、前記キャップを介して前記極子に接合される、請求項1に記載の多段連結多極子。
  3. 前記支柱及び前記キャップは、互いに嵌合可能な凸部及び凹部を含む、請求項2に記載の多段連結多極子。
  4. 前記支柱を構成する絶縁体の材料はセラミクスであり、
    前記接合材はロウ材である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の多段連結多極子。
  5. 前記複数の極子の少なくともその一端側の複数の端面は、一の面に沿った形状を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の多段連結多極子。
  6. 前記複数の極子は、前記支柱を前記接合材により接合する前の段階では、一の連結部に連結され、前記連結部とともに単一の極子母材として成形される、請求項5に記載の多段連結多極子。
  7. 前記連結部は、前記極子の一端側と他端側の二か所で連結する、請求項6に記載の多段連結多極子。
  8. 前記複数の極子は軟磁性金属を材料として構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の多段連結多極子。
  9. 複数の多段連結多極子と、
    前記多段連結多極子が接続される円筒形状のハウジングと
    を備えた多段多極子ユニットであって、
    前記多段連結多極子は、荷電粒子線の光軸方向に沿って配列され且つ対向する面において切り欠きを有する複数の極子と、前記複数の極子の間に配列され絶縁体からなる支柱とを備え、前記極子及び前記支柱は、前記切り欠きにおいて接合材を介して接合され、
    前記ハウジングは、
    前記円筒形状の周方向に所定の間隔で配置され前記光軸方向に平行な溝を備え、
    前記多段連結多極子は、前記溝に嵌め込まれる
    ことを特徴とする多段多極子ユニット。
  10. 前記溝の側壁はテーパ形状を有し、
    前記極子の一端は、前記テーパ形状と同一のテーパ角を有する、請求項9に記載の多段多極子ユニット。
  11. 前記多段連結多極子に対し前記ハウジングに設けられた貫通穴を介して接続されるシャフトと、
    前記シャフトの一端に取り付けられるリング磁路と、
    前記シャフトに巻き付けられる励磁コイルと
    を更に備える、請求項9に記載の多段多極子ユニット。
  12. 前記切り欠きに前記接合材を介して接合されるキャップを更に備え、
    前記支柱は、前記キャップを介して前記極子に接合される、請求項9~11のいずれか1項に記載の多段多極子ユニット。
  13. 前記支柱及び前記キャップは、互いに嵌合可能な凸部及び凹部を含む、請求項12に記載の多段多極子ユニット。
  14. 前記複数の極子の少なくともその一端側の複数の端面は、一の面に沿った形状を有している、請求項9~11のいずれか1項に記載の多段多極子ユニット。
  15. 前記複数の極子は、前記支柱を前記接合材により接合する前の段階では、一の連結部に連結され、前記連結部とともに単一の極子母材として成形される、請求項14に記載の多段多極子ユニット。
  16. 前記多段連結多極子の複数の極子のうちの第1の極子に対し前記ハウジングに設けられた貫通穴を介して接続されるシャフトと、
    前記シャフトに接続される第1の端子と、
    前記多段連結多極子の複数の極子のうちの第2の極子に対し接続される第2の端子と、 前記シャフトの一端に取り付けられるリング磁路と、
    前記シャフトに巻き付けられる励磁コイルと
    を更に備える、請求項9に記載の多段多極子ユニット。
  17. 荷電粒子を放出する荷電粒子源と、
    前記荷電粒子を集束させる荷電粒子線光学系と、
    前記荷電粒子線光学系に含まれる収差補正器としての多段多極子ユニットと
    を備え、
    前記多段多極子ユニットは、複数の多段連結多極子を備え、
    前記多段連結多極子は、荷電粒子線の光軸方向に沿って配列され且つ対向する面において切り欠きを有する複数の極子と、前記複数の極子の間に配列され絶縁体からなる支柱とを備え、前記極子及び前記支柱は、前記切り欠きにおいて接合材を介して接合される
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  18. 前記切り欠きに前記接合材を介して接合されるキャップを更に備え、
    前記支柱は、前記キャップを介して前記極子に接合される、請求項17に記載の荷電粒子線装置。
  19. 前記支柱及び前記キャップは、互いに嵌合可能な凸部及び凹部を含む、請求項18に記載の荷電粒子線装置。
  20. 前記荷電粒子線光学系の色収差及び幾何収差を計測する収差計測部と、
    前記収差計測部における計測の結果に従い、前記多段連結多極子への印加電圧及び励磁電流を演算する収差補正量演算部と、
    前記収差補正量演算部における演算の結果を記憶する収差補正条件記録部と
    を更に備える、請求項17に記載の荷電粒子線装置。
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