JP7061433B2 - 発酵乳 - Google Patents

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NPMD NITE P-02403 IPOD FERM P-9442 IPOD FERM P-9443 NPMD NITE P-02404 NPMD NITE P-02405 IPOD FERM P-9440 IPOD FERM P-9441 IPOD FERM P-21666
本発明は、発酵乳、特に適度な硬さ及び十分な滑らかさを有する静置型ヨーグルト(Set type)及び攪拌型ヨーグルト(Stirred type)に関する。
従来、発酵乳を製造するために多種の方法が取られてきた。
例えば、特許文献1では、ゼラチン、ペクチン等の安定剤を含有することなく、果実、加工果肉等の副原料を高率で含有する攪拌型ヨーグルトを製造することを目的として、ラクトバチルス・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスに属する高粘性産生能を有する乳酸菌スターターを添加する方法が開示されている。そして、これらの乳酸菌スターターを添加することで糊感、もたつきがみられず、きめの細かい組織を有する攪拌型ヨーグルトが製造できたことが記載されている。しかし、引用文献1では硬さや滑らかさについて本願発明のような検討はされていない。
特許文献2では、攪拌型ヨーグルトの製造にあたり、ホエー粉及び/又はホエー蛋白濃縮物を添加し、これに、ラクトバチルス・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスに属する高粘性産生能を有する乳酸菌スターターを添加する方法が開示されている。そして、これらの乳酸菌スターターを添加することで、安定剤添加に起因するもたつき、糊感および良好な風味のマスキングが生じることなく、優れた食感ときめの細かい組織ならびに新鮮な爽やかな風味を有し、攪拌しても粘度が低下しない攪拌型ヨーグルトが製造できたことが記載されている。しかし、引用文献2は4種類の乳酸菌を組み合わせて用いることが好ましいことが記載されており、また、硬さや滑らかさについて本願発明のような検討はされていない。
特許文献3では、発酵乳の発酵時間を遅延させることなく、適度にマイルドな酸味を有し、これを維持することのできる嗜好性の高い発酵乳を製造する方法として、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクスの酸生成抑制株とストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズサーモフィルスの粘性物産生株を乳酸菌スターターとして併用する方法が開示されている。そして、これらを乳酸菌スターターとすることによって、適度にマイルドな酸味を発酵乳に付与し、この発酵乳の低温保存中にもマイルドな酸味を維持しつつ、かつ風味や組織などの点で高品質な発酵乳を製造できることが記載されている。しかし、引用文献3では、滑らかさについての評価はしているものの、硬さについて本願のような検討はされていない。
特許文献4は、TPA測定において、硬さ50g以上、付着性-10g・mm以下、弾力性0.9以上及び凝集性0.7以下の物性を示すくず餅やわらび餅のような食感の発酵乳とその製造方法を提供することを課題とし、その解決手段として(1)乳に、多糖産生乳酸菌と、ゲル化剤又はトランスグルタミナーゼとを添加して、発酵させることにより、又は(2)乳に多糖産生乳酸菌を添加し、発酵させ、得られた発酵乳にゲル化剤を添加することにより得られる発酵乳とその製造方法を開示している。
しかし、引用文献4では、硬さについての評価はしているものの、滑らかさについて本願のような検討はされていない。
このように従来の方法により、糊感やもたつきがない発酵乳やマイルドな酸味が維持された発酵乳等の製造が可能であるが、適度な硬さ及び十分な滑らかさを持つ静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを得ることができるとはいえず、このようなヨーグルトを得るための新たな製造方法等の提供が望まれていた。
本発明者らは本発明において、適度な硬さ及び十分な滑らかさを持つ静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを得るために、食品の硬さを示す指標のひとつである最大荷重に着目した。この指標を用いることにより、適度な硬さ及び十分な滑らかさを持つ静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを得ることが可能になると期待できる。
特開平1-235543号公報 特開平6-14708号公報 特開平7-236416号公報 特開2000-270766公報
本発明は、適度な硬さ及び十分な滑らかさを有する静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを得ることを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究した結果、次の特徴を有する発酵乳を製造することにより、適度な硬さ及び十分な滑らかさを有する静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
このように、本発明は次の(1)~(6)に示される発酵乳に関するものである。
(1)乳酸菌の粘性多糖を含有し、最大荷重が5gf以上60gf以下であり、かつ、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下である発酵乳。
(2)前記乳酸菌の粘性多糖がウロン酸を含有する前記(1)に記載の発酵乳。
(3)ウロン酸の含有量が粘性多糖の凍結乾燥物の重量当たり0.1重量%以上30.0重量%以下である前記(2)に記載の発酵乳。
(4)乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)および/またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)である前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の発酵乳。
(5)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)がストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087(NITE P-02403)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104(FERM P-9442)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113(FERM P-9443)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134(NITE P-02404)またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014(NITE P-02405)から選ばれるいずれか一種以上であり、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)がラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0098(FERM P-9440)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0167(FERM P-9441)またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577(FERM P-21666)から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする前記(4)に記載の発酵乳。
(6)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087(NITE P-02403)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104(FERM P-9442)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113(FERM P-9443)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134(NITE P-02404)、あるいはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014(NITE P-02405)から選ばれるいずれか一種以上のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、または、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0098(FERM P-9440)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0167(FERM P-9441)、あるいはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577(FERM P-21666)から選ばれるいずれか一種以上のラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を添加する工程を含む前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の発酵乳の製造方法。
本発明によって、適度な硬さ及び十分な滑らかさを有する静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを提供することが可能となる。
本発明の発酵乳をスプーンにて塊としてすくい上げた際の発酵乳の断面の状態を示した図である。
以下、本発明の静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトについて詳細に説明する。
本発明の発酵乳、及びこの提供によって得られる静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトは適度な硬さ及び十分な滑らかさを持つものである。
本発明の発酵乳における“適度な硬さ”とは、静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルト等の発酵乳をデザートスプーン(例えば、すくう部分が、縦32mm、横21mmの楕円で、深さ3.5mm)で塊として、すくいあげることができる硬さのことをいう。この“適度な硬さ”は発酵乳の最大荷重で定義できる。最大荷重は、英弘精機株式会社製のテクスチャーアナライザーを用いて、発酵乳を対象とした2回貫入試験により測定することができる。測定される最大荷重が5gf以上60gf以下であれば、発酵乳をデザートスプーンで塊として、すくいあげることができるので“適度な硬さ”となる。さらに、最大荷重が5gf以上60gf以下、特に5gf以上55gf以下であれば発酵乳をデザートスプーンで塊として容易にすくいあげることができ、また、塊としてスプーン上で維持し得るため“適度な硬さ”としてより好ましい。
発酵乳の最大荷重は、具体的には、10℃に調整したサンプルをテクスチャーアナライザーにかけ、Test Speed:1mm/s、貫入距離:10mm、治具:直径16mm高さ25mmの樹脂円柱プローブ、モード:圧縮の条件で測定できる。サンプルの大きさは、貫入距離の10mm以上の高さがあり、直径16mm以上であればよい。サンプルとして、例えば、縦99mm横70mmの上面、縦88mm、横57mmの底面、高さ107mmの台形容器に400g充填された発酵乳を用いてもよい。また、発酵乳は調製直後でもよく、賞味期限まで保存したものであってもよい。
本発明の発酵乳における“十分な滑らかさ”とは、スプーンにて塊としてすくい上げた発酵乳の断面を目視で観察した際に断面(図1の網掛け部分)が均一であり、かつ食べた時の食感も滑らかなものをいい、“十分な滑らかさ”は発酵乳のカード粒の数で定義できる。カード粒数は次の手順で測定することができる。
即ち、100gの発酵乳をカップに採取し、モーターと4枚羽根を具備した攪拌機で200rpm、1分間撹拌した。撹拌後の発酵乳を1/4の25gになるように調整し、水道水を加えて全量200gとした。これを撹拌子で400rpm、30秒間撹拌し、1mm目開きのふるいでろ過してふるい上に補足された粒の数を計測した。計測によって得られた粒数を4倍したものをカード粒数とした。なお、測定に用いる発酵乳は調製直後でもよく、賞味期限まで保存したものであってもよい。
このようにして測定されたカード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下のものを、適度な“滑らかさ”であるとした。本発明の発酵乳における“十分な滑らかさ”はさらに、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下であることが好ましく、特に0個以上400個以下であることが好ましい。
前記のとおり、最大荷重が5gf以上60gf以下であり、かつ、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下のものが適度な硬さと十分な滑らかさを併せ持つ発酵乳である。このうち、最大荷重が5gf以上55gf以下であり、かつ、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上400個以下のものが最も適度な硬さと十分な滑らかさを併せ持つ発酵乳である。本願によりこのような静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを得ることができる。
ここで、本発明における発酵乳とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)の発酵乳を指し、いわゆる撹拌型ヨーグルト、静置型ヨーグルト、前発酵ヨーグルト、後発酵ヨーグルト、ソフトヨーグルト、ハードヨーグルトを例示できる。
本発明の発酵乳を得るにあたり、乳酸菌としてストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)および/またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を使用することが好ましい。
本発明の高粘性産生能を有する乳酸菌はウロン酸を含む多糖類を産生するものがよく、このような乳酸菌として、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087(NITE P-02403)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104(FERM P-9442)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113(FERM P-9443)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134(NITE P-02404)、またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014(NITE P-02405)が挙げられる。
また同様に、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0098(FERM P-9440)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0167(FERM P-9441)、またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577(FERM P-21666)を例示することができる。
本発明の発酵乳の製造にあたり、これらの乳酸菌から選ばれる一種又は複数種を用いることができる。
これらの乳酸菌の培養は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、12重量%無脂乳固形分からなる脱脂粉乳培地を用い、培地に対して乳酸菌を3重量%接種し、37℃で16時間培養して乳酸菌スターターを得ることができる。
本発明の発酵乳に含まれる乳酸菌の粘性多糖は公知の方法に従って分離・精製することができる。例えば、乳酸菌の培養物を5℃、10000rpm、18592g、15分間遠心して上清を採取し、次いで1.5倍量のエタノールを加えて沈殿させ、沈殿物をMilliQ水に溶解し、トリクロロ酢酸(最終7.7v/v%)を加えて5℃で1時間保存する。その後、10℃、8000rpm、1189g、15分間遠心して上清を得て、この上清をイオン交換水に対して透析し、凍結乾燥した後、リン酸緩衝液に溶解し、たんぱく分解酵素(アクチナーゼAS、科研製薬社製)を用いてたんぱく質を分解する。これを透析し不純物の除去を行った後、得られた溶液の凍結乾燥品を乳酸菌の粘性多糖の凍結乾燥物とし、ウロン酸測定に供することができる。なお、たんぱく分解酵素としては、パンクレアチン(天野エンザイム社製)、パパインW40(天野エンザイム社製)、アルカラーゼ(ノボザイム社製)等、一般的に市販されているものでよく、動物起源、植物起源、あるいは微生物起源は問わない。
乳酸菌の粘性多糖におけるウロン酸は、標準液としてグルクロン酸溶液を用い、カルバゾール・硫酸法(Galambos,1967)で測定することができる。
ここで、本発明の発酵乳に含まれるウロン酸は、発酵乳に含まれる粘性多糖の凍結乾燥物の重量当たり0.1重量%以上30.0重量%以下であることが好ましい。さらに0.2重量%以上20.0重量%以下であることが好ましく、特に0.2重量%以上10.0重量%以下であることが好ましい。
本発明の発酵乳に用いられる乳原料は、通常の撹拌型ヨーグルトや静置型ヨーグルト等の発酵乳の製造で用いられるものであれば特に限定されない。
例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエー、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエーパウダー、たんぱく質濃縮ホエーパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、ホエーたんぱく質濃縮物(Whey Protein Concentrate:WPC)、ホエーたんぱく質分離物(Whey Protein Isolate:WPI)、乳たんぱく質濃縮物(Milk Protein Concentrate:MPC)、乳たんぱく質分離物(Milk Protein Isolate:MPI)、トータルミルクプロテイン(Total Milk Protein:TMP)、脱乳糖パーミエイト粉末(牛乳の限外濾過膜透過成分)、変性たんぱく質球状粒子(Microparticulated Whey:MPホエー)、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等を挙げることができる。本発明の乳原料はこれらのいずれを使用してもよく、これらの乳原料を組み合わせて使用することもできる。また、油脂、オリゴ糖、甘味料、酸味料、香料、果汁、果肉、ナッツ乳化剤等を配合してもよい。
また、本発明の発酵乳は、例えば、次のような公知の各処理工程を経ることによって製造することができる。
まず、乳原料、油脂原料、ショ糖等を所定量計量し、加温、溶解した後、60~70℃の温度で100~270kg/cmの均質圧で均質処理し、90~95℃の温度で5~10分間保持して殺菌処理する。次いで40~45℃程度に冷却する。この均質処理、殺菌および冷却した原料液をミックスという。
撹拌型ヨーグルトの場合、このミックスに乳酸菌を添加し、30~40℃で2.5~9時間発酵する。ミックスの乳酸酸度が0.7~1.3%に到達したところで発酵を終了し、ただちに撹拌して凝固したカードを粉砕し、プレートクーラーや冷却タンクで7℃程度まで冷却する。これを所定の容器に充填し5~10℃に冷却することにより発酵乳を得ることができる。なお、フルーツヨーグルトを製造する場合には、これに加工果肉類等の副原料を添加して充填する。
静置型ヨーグルトの場合、ミックスに乳酸菌を添加し、所定の容器に充填した後、発酵室に移送し発酵させる。発酵終了後、5~10℃に冷却することにより発酵乳を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
[実施例1~10]
表1~3に示す配合に従い、次の調製方法によって実施例品1~10及び比較例品1の発酵乳を調製した。実施例品の発酵乳はいずれも最大荷重が5gf以上60gf以下であり、かつ、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下である特徴を有する発酵乳であった。これに対して比較例品の発酵乳は最大荷重が60gfを超え、カード粒数が発酵乳100gあたり500個より多かった。
これらの実施例品の発酵乳は、ウロン酸を発酵乳の粘性多糖の凍結乾燥物の重量当たり0.1重量%以上30.0重量%以下含有するものであった。また実施例品及び比較例品の発酵乳のSNFはいずれも10.0%であった。
調製方法
脱脂粉乳10.0重量%、WPC0.5重量%、グラニュー糖5.5重量%、ヤシ油1.3重量%を40℃の温水に溶解した後、65℃に加温してホモゲナイザーで180kg/cm2の均質圧で均質処理した。この溶液を90℃で6分間保持して加熱殺菌した後、45℃まで冷却してヨーグルトミックスを得た。
次にストレプトコッカス・サーモフィルスを1.5重量%、ラクトバチルス・ブルガリクスを0.15重量%添加して容器に充填後、フィルム状蓋材でシールして41℃で酸度0.80~0.90%まで発酵した後、10℃以下に冷却することにより発酵乳11種(実施例品1~10、比較例品1)を得た。これらの発酵乳は静置型ヨーグルトに該当する。
なお、各発酵乳の調製において使用した乳酸菌の種類は表1に示した。
Figure 0007061433000001
Figure 0007061433000002
Figure 0007061433000003
評価方法
前記にて調製した発酵乳を10℃で18日間保存した後、滑らかさについて、官能評価の訓練を積んだ専門パネル10名によって次の評価基準に基づき、5点法で評価した。
ここで、本発明の評価における組織とは、デザートスプーン(すくう部分が、縦32mm、横21mmの楕円で、深さ3.5mm)にて塊として、すくい上げた際の発酵乳の断面(図1の網掛け部分)状態の目視観察、および食した際の食感を併せて評価する。断面が不均一でざらつく食感をざらつくとし、断面が均一で食感も滑らかなものを滑らかとした。
評価基準
(組織)
5:極めて滑らか
4:滑らか
3:やや滑らか
2:ややざらつく
1:ざらつく
結果
結果を表4に示した。表4から明らかなように、実施例品1~10は、いずれも評価が3点以上で十分な滑らかさを有するものであった。一方、実施例品より最大荷重が大きく、カード粒数も多い比較例品1の発酵乳はざらつきが感じられ、滑らかさが劣っていた。
Figure 0007061433000004
[実施例11]
実施例1~10、比較例品1と同様の調製方法によって、脱脂粉乳を13.7重量%、WPCを0.55重量%、MPCを0.55重量%、グラニュー糖を4.5重量%、ヤシ油を5.0重量%、ストレプトコッカス・サーモフィルス SBT1014を1.5重量%およびラクトバチルス・ブルガリクス SBT0167を0.15重量%含む発酵乳を調整した。この発酵乳は最大荷重が45.9gf、カード粒数が発酵乳100gあたり78個であり、発酵乳の粘性多糖の凍結乾燥物の重量当たりのウロン酸が12.8重量%であり、無脂乳固形分が14.0%であった。
調製した発酵乳を10℃に18日間保存した後、実施例1と同様の方法により、滑らかさについて官能試験により評価した結果、滑らか(4点)で十分な滑らかさを有するものであった。
[実施例12、13]
調製方法
脱脂粉乳10.0重量%、WPC0.5重量%、MPC0.3重量%、グラニュー糖5.0重量%、ヤシ油1.2重量%を40℃の温水に溶解した後、65℃に加温してホモゲナイザーで180kg/cm2の均質圧で均質処理した。この溶液を93℃で6分間保持して加熱殺菌した後、40℃まで冷却してヨーグルトミックスを得た。
次にストレプトコッカス・サーモフィルスを1.5重量%、ラクトバチルス・ブルガリクスを0.15重量%添加して、39℃で酸度0.80~0.90%まで発酵した後、シェアリングバルブにて0.4MPaの圧力でスムージングを行い、10℃以下に冷却する。この発酵乳80重量%に対し、フルーツプレザーブを20重量%の割合で加え、混合した後、容器に充填し、フィルム状蓋材でシールすることにより、無脂乳固形分8.3%の撹拌型発酵乳3種(実施例品12~13、比較例品2)を得た。
なお、各発酵乳の調製において使用した乳酸菌の種類は表5に示した。
調製した発酵乳を10℃に1日間保存した後、実施例1と同様の方法により、滑らかさについて官能試験により評価した結果、実施例12~13は、極めて滑らか(5点)で十分な滑らかさを有するものであるのに対し、比較例2は、ざらつく(1点)ものであった。
Figure 0007061433000005
本発明の発酵乳の提供によって、適度な硬さ及び十分な滑らかさを持つ静置型ヨーグルト及び攪拌型ヨーグルトを提供することが可能となる。
[寄託生物材料への言及]
(1)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成29年1月17日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02403
(2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
昭和62年6月30日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM P-9442
(3)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
昭和62年6月30日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM P-9443
(4)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成29年1月17日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02404
(5)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成29年1月17日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02405
(6)ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)SBT0098
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
昭和62年6月30日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM P-9440
(7)ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)SBT0167
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
昭和62年6月30日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM P-9441
(8)ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成20年9月4日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM P-21666

Claims (5)

  1. 乳酸菌の粘性多糖を含有し、前記乳酸菌の粘性多糖がウロン酸を含有し、最大荷重が5gf以上60gf以下であり、かつ、カード粒数が発酵乳100gあたり0個以上500個以下である発酵乳。
  2. ウロン酸の含有量が粘性多糖の凍結乾燥物の重量当たり0.1重量%以上30.0重量%以下である請求項に記載の発酵乳。
  3. 乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)および/またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)である請求項1又は2に記載の発酵乳。
  4. ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)がストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087(NITE P-02403)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104(FERM P-9442)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113(FERM P-9443)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134(NITE P-02404)またはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014(NITE P-02405)から選ばれるいずれか一種以上であり、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)がラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0098(FERM P-9440)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0167(FERM P-9441)またはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577(FERM P-21666)から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項に記載の発酵乳。
  5. ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0087(NITE P-02403)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0104(FERM P-9442)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT0113(FERM P-9443)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT10134(NITE P-02404)、あるいはストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SBT1014(NITE P-02405)から選ばれるいずれか一種以上のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、または、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0098(FERM P-9440)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT0167(FERM P-9441)、あるいはラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)SBT10577(FERM P-21666)から選ばれるいずれか一種以上のラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を添加する工程を含む請求項1~のいずれか一項に記載の発酵乳の製造方法。
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フジッコ株式会社,北海道産の生乳100%使用!さらに"とろ~りまろやか"リッチな味わいに 「カスピ海ヨーグルト プレーン 400g」 2013年2月1日リニューアル発売(東日本エリアより順次発売) ~新鮮な生乳のおいしさにこだわり 北海道工場を新設~,2013年01月30日,https://www.fujicco.co.jp/cms_news/news/upload/pr_20130130.pdf
星6つ! 明治「明治プロビオヨーグルトR-1 砂糖ゼロ」をレビュー!,ねとらぼ [online],2016年01月11日,https://nlab.itmedia.co.jp/hc/articles/1601/11/news009.html

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