以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10(作業機械)の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係る作業機械の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
クレーン10は、機体に相当する上部旋回体12と、この上部旋回体12を旋回可能に支持し、地上Gを走行可能な下部走行体14と、起伏部材として機能するブーム16(作業アタッチメント)と、ブーム起伏用部材であるラチスマスト17と、箱マスト21と、を備える。
ブーム16は、上部旋回体12に回動可能に支持される。ブーム16は、上部旋回体12に着脱可能に装着され、所定の作業を行うために作動する。なお、図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では2個)の中間部材と、上部ブームとから構成される。下部ブーム16Aは、上部旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間部材は、下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブームは中間部材の先端側に着脱可能に継ぎ足される。
下部ブーム16Aの下端部に備えられたブーム孔部16T(図4参照)と上部旋回体12に備えられた不図示の孔部とが合致した状態で、これらの孔部にブームフットピン16Sが挿入されると、ブーム16が上部旋回体12に起伏可能に装着される。逆に、これらの孔部からブームフットピン16Sが引き抜かれると、ブーム16が上部旋回体12から脱離される。このように、ブーム16は、上部旋回体12に対して着脱可能に装着される。
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームの中間部材の数は、上記とは異なるものでもよい。また、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。更に、ブームは伸縮式の形態からなるものでもよい。
ブーム16の下部ブーム16Aには左右一対のバックストップ45が設けられる。これらのバックストップ45は、ブーム16が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体12に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
ラチスマスト17は、ブーム16の後側の位置でブーム16の回動軸と平行な回動軸回りに上部旋回体12に回動可能に支持される。すなわち、ラチスマスト17もブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。図1に示すように、ラチスマスト17の先端部には、第1マストシーブ171と、第2マストシーブ172と、が配置されている。第1マストシーブ171および第2マストシーブ172には、後記のブーム起伏用ロープ22が掛けられる。ラチスマスト17は、ブーム16の回動における支柱となる。なお、他の実施形態において、ラチスマスト17によって例示されるマストは、箱型のマストなど他の形態からなるものでもよい。
ラチスマスト17の基端部側には左右一対のバックストップ46が設けられる。これらのバックストップ46は、ラチスマスト17が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体12に当接する。この当接によって、ラチスマスト17が強風等で後方に煽られることが規制される。
更に、クレーン10は、下部スプレッダ18と、上部スプレッダ19と、左右一対のガイライン20と、ブーム起伏用ロープ22と、ブーム起伏用ウインチ38と、を備える。
下部スプレッダ18は、ラチスマスト17の先端部に回動可能に支持される。下部スプレッダ18は、下部シーブブロック181を備える。下部シーブブロック181には、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
上部スプレッダ19は、下部スプレッダ18の前方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ19は、左右一対のガイライン20を介してブーム16の先端部に接続される。上部スプレッダ19は、上部シーブブロック191を備える。上部シーブブロック191には、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
左右一対のガイライン20は、図1の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ガイライン20の後端部は、上部スプレッダ19に接続され、ガイライン20の前端部は、ブーム16の先端部に着脱可能に接続される。ガイライン20は、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などを含む。
ブーム起伏用ロープ22は、ブーム起伏用ウインチ38から引き出され、ラチスマスト17の先端部の第1マストシーブ171、第2マストシーブ172に掛けられた後、下部シーブブロック181と上部シーブブロック191との間で複数回掛け回される。なお、下部シーブブロック181および上部シーブブロック191に掛け回された後のブーム起伏用ロープ22の先端部は、ラチスマスト17の先端部に固定される。
ブーム起伏用ウインチ38は、ラチスマスト17の基端部側に配置される。ブーム起伏用ウインチ38は、ブーム起伏用ロープ22の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ18の下部シーブブロック181と上部スプレッダ19の上部シーブブロック191との間の距離を変化させ、ブーム16をラチスマスト17に対して相対的に回動させながらブーム16を起伏させる。
箱マスト21は、基端及び回動端(先端)を有し、ラチスマスト17の後側で上部旋回体12に回動可能に連結される。箱マスト21は、断面視で矩形形状からなる。箱マスト21の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつラチスマスト17の回動軸とほぼ同じ位置に配置されている。すなわち、この箱マスト21もブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。
更に、クレーン10は、左右一対のガイライン23と、マスト起伏用ロープ26と、マスト起伏用ウインチ30と、を備える。
左右一対のガイライン23は、図1の紙面と直交する左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。ガイライン23は、ラチスマスト17の先端部と箱マスト21の回動端部とを接続する。この接続は、ラチスマスト17の回動と箱マスト21の回動とを連携させる。
マスト起伏用ロープ26は、上部旋回体12に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたたシーブブロック24と、箱マスト21の回動端部に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック25との間で複数回掛け回される。
マスト起伏用ウインチ30は、箱マスト21の基端部側に配置される。マスト起伏用ウインチ30は、マスト起伏用ロープ26の巻き取りおよび繰り出しを行う。マスト起伏用ウインチ30の巻き取り、繰り出し動作によって、箱マスト21の先端部のシーブブロック25と上部旋回体12の後端部のシーブブロック24との間の距離が変化し、上部旋回体12に対して箱マスト21およびラチスマスト17が一体的に回動しながら、ラチスマスト17が起伏する。なお、ラチスマスト17および箱マスト21の回動は、主にクレーン10の組立分解時に行われ、クレーン10の使用時にはラチスマスト17および箱マスト21の位置(対地角)はほぼ固定されている。
クレーン10には、前述のマスト起伏用ウインチ30およびブーム起伏用ウインチ38に加えて、吊り荷の吊り上げ及び吊り下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36が搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がいずれもブーム16の下部ブーム16Aに据え付けられる。
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ51による吊り荷の吊り上げおよび吊り下げを行う。この主巻について、ブーム16の先端部には不図示の主巻用ガイドシーブが回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブに隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用シーブブロックから垂下された主巻ロープ51には、吊り荷用の主フック53が連結されている。そして、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ51が主巻用ガイドシーブに順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックのシーブと、主フック53に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ51の巻き取りや繰り出しを行うと、主フック53の巻上げ及び巻下げが行われる。
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ52による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、上記の主巻と同様の不図示の構造が備えられている。そして、補巻用ウインチ36が補巻ロープ52の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ52の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
また、上部旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト40が積載されており、上部旋回体12の後方には、パレットウエイト41が更に配置されている。パレットウエイト41は、クレーン10が重量物を吊り上げるために備えられるSHL(Super Heavy Lifting)用ウェイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。パレットウエイト41は、ウエイトガイライン42によってラチスマスト17の先端部に接続されている。
図2は、本実施形態に係るクレーン10の制御部70の電気的なブロック図である。図3は、図2の制御部70の動作規制部701が有する複数のモードを示す模式図である。図4は、本実施形態に係るクレーン10の給脂構造を示す模式図である。
前述のように、本実施形態では、ブーム16の下部ブーム16Aに主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36が備え付けられている。主巻用ウインチ34は、不図示のウインチドラムと、当該ウインチドラムを回転可能に支持する一対の主巻用ウインチベアリング34A(図4参照)を備える。同様に、補巻用ウインチ36は、不図示のウインチドラムと、当該ウインチドラムを回転可能に支持する一対の補巻用ウインチベアリング36A(図4参照)を備える。ウインチドラムは、主巻ロープ51または補巻ロープ52を保持する周面を有する。そして、ウインチドラムの軸方向の両端部から突設されたシャフトが各ウインチベアリングに挿通される。このような構成では、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36の安定した回転のため、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36A(いずれも摺動部)に定期的に給脂する(潤滑剤を供給する)必要がある。各ベアリングは、内周部(第1部材)と当該内周部に対して摺動する外周部(第2部材)とを有する。ベアリングの内周部と外周部との間に潤滑剤が供給されることで、各ウインチのウインチドラムが安定して回転する。なお、内周部と外周部との間には複数の球体が備えられてもよいし、他の構造を有するベアリングでもよい。
本実施形態に係るクレーン10は、上部旋回体12に対して着脱可能な下部ブーム16Aに装着された主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対して自動的に給脂を行う構造を有するとともに、下部ブーム16Aが上部旋回体12から脱離された場合でも上部旋回体12の周囲に潤滑油が溢れ出すことが防止される。
図2および図4を参照して、クレーン10は、当該クレーン10の動作を統括的に制御する制御部70と、エンジン71と、給脂用モータ72と、給脂用ポンプ73(潤滑剤吐出部)と、リリーフ弁74と、給脂路75(潤滑剤供給路)と、操作部80と、表示部81と、を備える。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部70には、前述の主巻用ウインチ34、補巻用ウインチ36に加え、エンジン71、給脂用モータ72、操作部80、表示部81などが電気的に接続されている。なお、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36に接続された不図示の油圧モータを駆動するための油圧回路(たとえばコントロールバルブ)に対して、制御部70が電気的に接続される態様でもよい。
エンジン71は、クレーン10の上部旋回体12に搭載されている。エンジン71の出力を受けて給脂用モータ72が駆動する。なお、エンジン71のオンオフ指令は、作業者によって後記のエンジンスイッチ802に入力される。
給脂用モータ72は、所定の駆動源から駆動力を受けて作動する。給脂用モータ72は、給脂用ポンプ73を駆動するための駆動力を発生する。なお、給脂用モータ72を駆動する駆動源は、エンジン71に加え、不図示の油圧ポンプや発電機などによって駆動される油圧モータなど、特に限定されるものではない。
給脂用ポンプ73は、上部旋回体12に装着され、給脂用モータ72の駆動力を受けて回転し、潤滑剤(たとえば潤滑油やグリース)を吐出するように作動する。
リリーフ弁74は、給脂用ポンプ73から吐出された潤滑剤の圧力が所定の圧力(リリーフ圧)よりも大きくなると、潤滑剤の一部を排出する。
給脂路75は、給脂用ポンプ73と主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aとを互いに連通し、給脂用ポンプ73から吐出された前記潤滑剤を主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aの各摺動部分に導く。給脂路75は、上部旋回体12に配設される第1流路751(第1供給路)と、ブーム16の下部ブーム16Aに配設される第2流路752(第2供給路)と、クイックカプラ76(連結部)と、分配機77と、を有する。第1流路751は、給脂用ポンプ73に連通する一端部と当該一端部とは反対の他端部とを有する。一方、第2流路752は、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに連通する一端部と当該一端部とは反対の他端部とを有する。クイックカプラ76は、上部旋回体12側の第1流路751の前記他端部に備えられたメス側カプラ76Aと、下部ブーム16A側の第2流路752の前記他端部に備えられたオス側カプラ76Bと、を含む。クイックカプラ76は、ブーム16が上部旋回体12から装着されることに伴って作業者によって操作され、第1流路751と第2流路752とを連結する。この際、メス側カプラ76Aとオス側カプラ76Bとが互いに連結される。一方、クイックカプラ76は、ブーム16の下部ブーム16Aが上部旋回体12から脱離されることに伴って作業者によって操作され、第1流路751と第2流路752との連結を解除する。この際、クイックカプラ76のメス側カプラ76Aおよびオス側カプラ76Bが互いに分離されるとともに、各流路の端部に形成されている開口部を封止する。分配機77は、クイックカプラ76を通過した潤滑油を主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに向かって分配する。
操作部80は、上部旋回体12の運転室の内部に配置され、作業者による各種の操作を受け付ける。本実施形態では、操作部80は、モードスイッチ801と、エンジンスイッチ802と、複数の操作レバー803と、を有する。モードスイッチ801は、後記の動作規制部701が有するモードを選択的に受け付ける。また、エンジンスイッチ802は、エンジン71の作動に関するオン、オフ指令を受け付ける。更に、複数の操作レバー803は、下部走行体14の走行動作、上部旋回体12の旋回動作、ブーム起伏用ウインチ30、主巻用ウインチ34、補巻用ウインチ36およびブーム起伏用ウインチ38を駆動するための操作をそれぞれ受ける。また、操作部80は、タッチパネル式やボタン式の入力部を含み、クレーン10の各操作情報やパラメータ数値などを受け付ける。
表示部81は、操作部80と同様に、運転室の内部に配置される。表示部81は、クレーン10の各種の作業情報を表示する。一例として、表示部81は、下部ブーム16Aの上部旋回体12に対する装着情報、脱離情報および準脱離情報を表示する。また、表示部81は、後記の動作規制部701が有するモードを表示する。
制御部70(図2)は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、動作規制部701(アタッチメント規制部)、エンジン制御部702、駆動制御部703(吐出制御部)、カウント部704、判定部705、記憶部706および情報出力部707(阻止信号出力部)を備えるように機能する。
動作規制部701は、予め設定されたモードに応じてブーム16の駆動を規制する。図3に示すように、動作規制部701は、通常作業モードと組立分解モードとを有する。通常作業モードは、ブーム16が上部旋回体12に対して起立したクレーン10の作業姿勢において、クレーン10が通常の作業(吊り荷の吊り上げ作業)を実行することを許容するモードである。通常作業モードでは、動作規制部701は、ブーム16の先端部が所定の作業許容範囲に含まれるようにブーム16の駆動を規制するとともにブーム16が上部旋回体12から脱離されることを規制する。より詳しくは、動作規制部701は、クレーン10の作業姿勢においてブーム16の先端部が吊り荷の荷重に応じて設定された作業許容範囲に含まれるようにブーム16の回動を規制する(モーメントリミッタ機能)。一方、動作規制部701は、前記組立分解モードでは、ブーム16が地上に倒伏され上部旋回体12から脱着されることを許容する。
動作規制部701のモードの切換は、作業者によって操作部80のモードスイッチ801から入力される指令に応じて行われる。なお、他の実施形態において、所定の条件が満たされた場合に、動作規制部701のモードが自動的に切換えられてもよい。
エンジン制御部702は、ECU(Engine Control Unit)とも呼ばれる。エンジン制御部702は、操作部80のエンジンスイッチ802に入力される指令に応じて、エンジン71のオンオフや回転数を制御する。
駆動制御部703は、操作部80の操作レバー803に入力される操作に応じて、マスト起伏用ウインチ30、ブーム起伏用ウインチ38、主巻用ウインチ34、補巻用ウインチ36、給脂用モータ72などを含む、クレーン10の各駆動部材の駆動を制御する。この際、駆動制御部703は、クレーン10が備える各ウインチを回転させるための電動モータや油圧モータに接続された油圧回路に対して、駆動指令信号(駆動信号)を出力する。
また、駆動制御部703は、給脂用ポンプ73が予め設定されたタイミングで潤滑剤を吐出したのち所定の期間経過後に当該吐出を停止する自動吐出動作を実行するように給脂用ポンプ73(給脂用モータ72)を制御する。
カウント部704は、クレーン10における潤滑剤供給処理において、第1カウント時間T1および第2カウント時間T2をそれぞれカウントする。
判定部705は、クレーン10における潤滑剤供給処理において、各種の判定処理を実行する。判定部705は、ブーム16が上部旋回体12から脱離されている場合またはブーム16が上部旋回体12から脱離される可能性がある場合に成立する脱離条件の成立を判定する。
記憶部706は、クレーン10における潤滑剤供給処理において、判定部705によって参照される閾値(第1閾値時間TS1、第2閾値時間TS2)などを予め格納し、出力可能とされている。
情報出力部707は、ブーム16が上部旋回体12に装着されていることを示す情報である装着情報を表示部81に出力可能であるとともに、ブーム16が上部旋回体12から脱離されていることを示す情報である脱離情報およびブーム16が上部旋回体12から脱離される可能性があることを示す情報である準脱離情報のうちの少なくとも一方の情報を表示部81に出力可能である。特に、本実施形態では、情報出力部707は、動作規制部701の前記通常作業モードにおいて、前記装着情報を出力する一方、動作規制部701の前記組立分解モードにおいて、前記準脱離情報を出力する。動作規制部701が通常作業モードに設定されクレーン10の通常作業が実行されるためには、予めブーム16が上部旋回体12に装着されている必要がある。換言すれば、動作規制部701が通常作業モードに設定されている場合、予めブーム16が上部旋回体12に装着されているといえる。この場合、クイックカプラ76によって第1流路751と第2流路752とが連結されており、給脂用ポンプ73が吐出する潤滑剤を主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに供給することができる。一方、動作規制部701が組立分解モードに設定されている場合、作業者によってブーム16が上部旋回体12から脱離される可能性がある。ブーム16が上部旋回体12から脱離される際、作業者によってクイックカプラ76が操作され、第1流路751と第2流路752とが分離される。情報出力部707によって脱離情報または準脱離情報が出力されると、判定部705は脱離条件が成立していると判定する。そして、情報出力部707は、判定部705によって前記脱離条件が成立していると判定されると、給脂用ポンプ73に対して前記自動吐出動作を強制的に阻止する信号を出力する。
図5は、本実施形態に係るクレーン10において制御部70が実行する潤滑剤供給処理(給脂処理)を示すフローチャートである。なお、ステップS7の直後およびステップS8の直前の結合子1は同じものを意味する。当該給脂処理は、エンジン71の動作中に繰り返し実行される。クレーン10の運転室に備えられたエンジンキーが所定の角度だけ回されると、クレーン10の電源スイッチがオンされる。この結果、図5の潤滑剤供給処理が開始される。当該処理が開始されると、判定部705が記憶部706に記憶されているFLAGの値を確認する(ステップS1)。ステップS1において、FLAG=0の場合(ステップS1でYES)、カウント部704が第1カウント動作を開始する(ステップS2)。なお、ステップS1において、FLAG≠0、すなわち、FLAG=1の場合、後記のステップS8に進む。ステップS2の第1カウント動作が実行されると、判定部705はエンジン71が動作中か否かを判定する(ステップS3)。ここで、前述のクレーン10の電源スイッチがオンされた状態で、作業者が、更にエンジンキーを回すと、エンジンスイッチ802がオンされ、エンジン71が作動する。この結果、制御部70の判定部705はエンジンが動作中であると判定する(ステップS3でYES)。次に、判定部705は、動作規制部701のモードが通常作業モードであるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、動作規制部701のモードが通常作業モードの場合(ステップS4でYES)、カウント部704が、第1カウント時間T1のカウントを開始する(ステップS5、第1カウントアップ)。そして、判定部705は、カウント部704によってカウントされる第1カウント時間T1と、記憶部706から出力される第1閾値時間TS1との大小関係を判定する(ステップS7)。第1閾値時間TS1は、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対する潤滑剤供給の開始タイミングを決定するために予め設定されている。一例として、第1閾値時間TS1は、180分に設定されている。
ステップS7において、TS1≦T1の場合(ステップS7でYES)、給脂用ポンプ73による給脂動作のためのフロー(第2カウント動作)が開始される(ステップS8)。一方、ステップS3においてエンジン71が停止している場合(ステップS3でNO)またはステップS4において動作規制部701のモードが組立分解モードの場合(ステップS4でNO)、カウント部704が第1カウント時間T1のカウントを停止した状態で(ステップS6)、ステップS3、S4が繰り返される。また、ステップS7においてTS1>T1の場合(ステップS7でNO)、ステップS3~S5(S6)が繰り返される。
このようなステップS2からS7までのフローによれば、エンジン71が動作中でありかつ動作規制部701のモードが通常作業モードの場合に、第1カウント時間T1のカウントが継続される。一方、第1カウント動作の開始後に、エンジン71が停止した場合または動作規制部701のモードが組立分解モードとされた場合には、第1カウント時間T1のカウントが中断される。
ステップS7において、TS1≦T1が満たされ、第2カウント動作が開始されると(ステップS8)、カウント部704は記憶部706に記憶されているFLAGを1に更新する。当該FLAGが1の状態が、給脂動作が実行中であることを意味する。そして、カウント部704は、給脂用ポンプ73による潤滑剤供給時間(給脂時間)をカウントするための第2カウント動作を開始する。ここでも、上記の第1カウント動作と同様に、判定部705はエンジン71が動作中か否かを判定する(ステップS9)。エンジン71が動作中の場合(ステップS9でYES)、判定部705は、動作規制部701のモードが通常作業モードであるか否かを判定する(ステップS10)。ここで、動作規制部701のモードが通常作業モードの場合(ステップS10でYES)、駆動制御部703が給脂用モータ72を制御し、給脂用ポンプ73による潤滑剤供給(給脂動作)を実行する(ステップS11)。給脂用ポンプ73から吐出された潤滑剤は、給脂路75の第1流路751、第2流路752および分配機77を通じて、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに供給される。また、ステップS11では、カウント部704が、第2カウント時間T2のカウントを開始する(第2カウントアップ)。
そして、判定部705は、カウント部704によってカウントされる第2カウント時間T2と、記憶部706から出力される第2閾値時間TS2との大小関係を判定する(ステップS13)。第2閾値時間TS2は、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対する潤滑剤の1回あたりの供給時間を決定するために予め設定されている。一例として、第2閾値時間TS2は、120秒に設定されている。
ステップS13において、TS2≦T2の場合(ステップS13でYES)、駆動制御部703が給脂用モータ72を制御して、給脂用ポンプ73を停止させる。この結果、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対する潤滑剤供給(給脂動作)が終了する(ステップS14)。その後、カウント部704は、第1カウント時間T1および第2カウント時間T2をゼロにリセットするとともに、記憶部706に記憶されるFLAGを0にリセットする(ステップS15)。そして、判定部705が、エンジン71が停止しているか否かを判定する(ステップS16)。ここで、作業者によってエンジンスイッチ802がオフされ、エンジン71が停止している場合(ステップS16でYES)、潤滑剤供給処理が終了する。一方、ステップS16において、エンジン71が引き続き動作中の場合には、ステップS2からS15までが繰り返される。
一方、ステップS9においてエンジン71が停止している場合(ステップS9でNO)またはステップS10において動作規制部701のモードが組立分解モードの場合(ステップS10でNO)、駆動制御部703が給脂用モータ72を制御して給脂用ポンプ73を停止させるとともにカウント部704が第2カウント時間T2のカウントを停止し(ステップS12)、ステップS9、S10が繰り返される。また、ステップS13においてTS2>T2の場合(ステップS13でNO)、ステップS9~S11(S12)が繰り返される。この際、ステップS9でエンジンが動作中であり、ステップS10で通常作業モードが選択されている場合には、ステップS14に至るまでの間、ほぼ連続的に給脂動作が実行される。
このようなステップS8からS13までのフローによれば、エンジン71が動作中でありかつ動作規制部701のモードが通常作業モードの場合に、第2カウント時間T2のカウントが継続され、給脂用ポンプ73による給脂動作が継続される。一方、第2カウント動作の開始後に、エンジン71が停止した場合または動作規制部701のモードが組立分解モードになった場合には、給脂用ポンプ73による給脂動作および第2カウント時間T2のカウントが中断される。なお、第2カウント動作が開始された後に、クレーン10の作業が終了しクレーン10の電源がオフされた場合でも、記憶部706に記憶されているFLAGは1のままとされる。このため、次にクレーン10の電源がオンされると、ステップS1においてFLAG≠0となり(ステップS1でNO)、第1カウント動作(ステップS2~S7)がスキップされ、ステップS8に移行する。そして、第2カウント時間T2も電源オフ直前の値が記憶部706に保存されているため、ステップS11およびS13において、供給未了分の潤滑剤が供給される。
また、本実施形態では、ステップS10において、動作規制部701が通常作業モードではない場合(ステップS10でNO)、動作規制部701は組立分解モードでありブーム16が上部旋回体12から脱離される可能性があるため、判定部705は、脱離条件が成立していると判定する。この結果、情報出力部707が、給脂用ポンプ73に対して前記自動吐出動作を強制的に阻止する阻止信号を出力する。当該阻止信号を受けて給脂用ポンプ73は、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対する潤滑剤供給(給脂)動作を停止する(ステップS12)。この際、カウント部704は、第2カウント時間T2のカウントを停止する。また、ステップS4においても、動作規制部701が通常作業モードではない場合(ステップS4でNO)、カウント部704は、第1カウント時間T1のカウントを停止する(ステップS6)。第1カウント時間T1がカウントされないため、ステップS8以降の給脂動作が開始されることがない。
このように、組立分解モードにおいて、作業者によってブーム16の下部ブーム16Aが上部旋回体12から取り外されても、給脂用ポンプ73から潤滑剤が吐出されることがない。また、大量の潤滑剤がリリーフ弁74から放出されることがないため、潤滑剤の無駄な消費を抑えることができる。更に、作業者がクイックカプラ76を操作し、第1流路751と第2流路752とが分離されても、第1流路751に高圧の潤滑剤が供給されクイックカプラ76の第1流路751側部分が破損することが抑止される。
以上のように、本実施形態では、給脂用ポンプ73が吐出する潤滑剤は、給脂路75を通じて、ブーム16に備えられた主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36A(摺動部)に供給される。ブーム16は上部旋回体12に対して着脱可能とされ、ブーム16の脱離時にはクイックカプラ76が給脂路75の第1流路751と第2流路752とを分離する。また、駆動制御部703は、給脂用ポンプ73が予め設定されたタイミングで潤滑剤を吐出したのち所定の期間経過後に当該吐出を停止する自動吐出動作を実行するように給脂用ポンプ73を制御する。一方、情報出力部707は、判定部705によって前記脱離条件が成立していると判定されると、給脂用ポンプ73に対して前記自動吐出動作を強制的に阻止する信号を出力する。このため、ブーム16が上部旋回体12に装着されている場合には、摺動部への潤滑剤の供給が可能とされ、ブーム16が上部旋回体12から脱離された場合または脱離される可能性がある場合には、情報出力部707が摺動部への潤滑剤の供給を阻止する。この結果、ブーム16の脱離に伴って給脂路75の一部が途切れている状態で潤滑剤が供給されることが防止される。このため、ブーム16の脱離作業中に給脂路75の周囲に潤滑剤が漏れ出すことや無駄な潤滑剤の消費が防止される。したがって、ブーム16に設けられた摺動部に対して安定した潤滑剤供給(給脂)を行うことができるとともにブーム16の脱着作業を円滑に行うことが可能となる。
また、本構成によれば、クレーン10の動作規制部701が通常作業モードに設定されている場合には予めブーム16が上部旋回体12に接続されていることを利用して、情報出力部707がブーム16の装着情報を出力し、摺動部に対して潤滑剤を供給することができる。また、クレーン10の動作規制部701が組立分解モードに設定されている場合にはブーム16が上部旋回体12から脱離される可能性があることを利用して、情報出力部707がブーム16の準脱離装着情報(阻止信号)を出力する。この結果、ブーム16が上部旋回体12に装着されておらずクイックカプラ76において給脂路75が途切れている状態で、摺動部に対して潤滑剤が供給されることを阻止することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るクレーン10について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、本発明に係る摺動部として主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに潤滑剤が供給される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36のウインチドラムが所定の方向に回転するとともに逆回転することを防止するために、各ウインチが、ウインチドラムに係合可能なドラムロックを備え、当該ドラムロックに潤滑剤が供給されるものでもよい。また、主巻用ウインチ34、補巻用ウインチ36は、上部旋回体12に対して着脱可能なマスト21(作業アタッチメント)に備えられていてもよい。マスト21の基端部に配置された不図示のマストフットが、上部旋回体12に対して着脱可能とされる。
(2)また、上記の実施形態では、給脂路75の下流側が主巻用ウインチベアリング34A側および補巻用ウインチベアリング36A側に分流する態様にて説明したが、給脂路75は1本の供給路であってもよい。
(3)更に、図6は、本発明の変形実施形態に係るクレーン10(図1)の上部旋回体12とブーム16との間の電気的な接続状態を示す模式図である。本変形実施形態では、クレーン10は、電磁切換弁78(電気部品)と、電気回路91と、電源ユニット70Sと、を備える。
電磁切換弁78は、主巻用ウインチ34または補巻用ウインチ36を回転させるための不図示の油圧回路の一部である。電磁切換弁78は、ブーム16の下部ブーム16Aに配置され、所定の駆動電流を受け入れることで作動する。電源ユニット70Sは、上部旋回体12に配置され、前記駆動電流を出力する。電気回路91は、前記電源ユニット70Sと電磁切換弁78とを接続し、前記駆動電流を電磁切換弁78に導く。駆動電流を受けた電磁切換弁78は、不図示の油路における作動油の流通を許容する開弁位置と、前記作動油の流通を阻止する閉弁位置との間で切換えられる。電気回路91は、電気コネクタ90と、第1出力線901(導通路)、第2出力線902(信号出力線)、リターン線903、切換弁入力線911(導通路)、導通線912を有する。電気コネクタ90は、上部旋回体12側のメス側コネクタ90A(第1コネクタ部)と、下部ブーム16A側のオス側コネクタ90B(第2コネクタ部)と、を含む。メス側コネクタ90Aには、第1出力線901、第2出力線902およびリターン線903が一体に配設されている。一方、オス側コネクタ90Bには、切換弁入力線911および導通線912が一体に配設されている。第1出力線901は、上部旋回体12側に配設され前記電源ユニット70Sから延設されるとともにメス側コネクタ90Aに接続される。第2出力線902は、電源ユニット70Sから延設されるとともにメス側コネクタ90Aに接続され所定の信号を出力する。リターン線903は、制御部70とメス側コネクタ90Aとを接続し、第2出力線902から出力される前記信号をリターン信号として受け入れる。切換弁入力線911は、ブーム16側に配設され電磁切換弁78に接続される。導通線912は、オス側コネクタ90Bに配設され、メス側コネクタ90Aとオス側コネクタ90Bとの接続に伴って第2出力線902とリターン線903とを互いに導通させる。
ブーム16が上部旋回12に装着されることに伴って電気コネクタ90のメス側コネクタ90Aとオス側コネクタ90Bとが作業者によってまたは自動的に連結される。この結果、第1出力線901と切換弁入力線911とが導通するとともに、第2出力線902と導通線912の一端側とが導通する。更に、導通線912の他端とリターン線903とが導通する。一方、ブーム16が上部旋回体12から脱離されることに伴って電気コネクタ90のメス側コネクタ90Aとオス側コネクタ90Bとが作業者によってまたは自動的に分離される。この結果、第1出力線901と切換弁入力線911との導通が切断される。同様に、第2出力線902およびリターン線903と、導通線912との導通が切断される。
このような構造によれば、ブーム16の下部ブーム16Aが上部旋回体12に装着されると、電気コネクタ90の導通線912が、上部旋回体12側の第2出力線902とリターン線903とを導通させる。この場合、第2出力線902から出力された信号は、導通線912を通じてリターン線903に流入する。一例として、第2出力線902から出力される電圧は5Vである。一方、下部ブーム16Aが上部旋回体12から取り外される際、電気コネクタ90も上部旋回体12側のメス側コネクタ90Aとブーム16側のオス側コネクタ90Bにそれぞれ分離される。この結果、リターン線903には上記の信号が戻ってこないため、制御部70(判定部705)が受け入れる信号(リターン信号)が途切れる。
ブーム16が上部旋回体12に装着された状態では、第2出力線902から出力された所定の信号(たとえば+5V)は、リターン線903を通じて制御部70に入力される。この結果、判定部705は、前記脱離条件が成立していないと判定する。一方、ブーム16の下部ブーム16Aが上部旋回体12から脱離されると、電気コネクタ90が作業者によって上部旋回体12側と下部ブーム16A側とに分離される。この結果、判定部705は、前記リターン線903から入力される前記信号が切れていることで、前記脱離条件が成立していると判定する。
この結果、ブーム16が上部旋回体12に装着されておらずクイックカプラ76において給脂路75が途切れている状態では、主巻用ウインチベアリング34Aおよび補巻用ウインチベアリング36Aに対して潤滑剤が供給されることを阻止することができる。なお、下部ブーム16A側に配置され、駆動電流を受けることで作動する電気部品は、電磁切換弁78に限定されるものではなく、ブーム16の対地角を検出するセンサや風量を検出するセンサなど他の電気部品でもよい。