JP7058884B2 - 皮膚洗浄用組成物 - Google Patents
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Description
(項目1)
炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩を含む皮膚洗浄用組成物であって、該炭素数15以上の脂肪酸またはその塩と該炭素数15未満の脂肪酸またはその塩との重量比が、約4:6~約8:2である、皮膚洗浄用組成物。
(項目2)
前記炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩と前記炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩との重量比が、約5:5~約8:2である、項目1に記載の皮膚洗浄用組成物。
(項目3)
前記炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩と前記炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩との重量比が、約6:3~約8:2である、項目1に記載の皮膚洗浄用組成物。
(項目4)
前記炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩は、パルミチン酸、ステアリン酸、またはパルミチン酸およびステアリン酸、またはその塩である、項目1~3のいずれか一項に記載の皮膚洗浄用組成物。
(項目5)
前記炭素数15未満の1種以上の脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、またはラウリン酸およびミリスチン酸、またはその塩である、項目1~4のいずれか一項に記載の皮膚洗浄用組成物。
(項目6)
洗顔料である、項目1~5のいずれか一項に記載の皮膚洗浄用組成物。
本明細書において、「約」とは、示される値の±10%を意味する。
一態様において、本発明は、特定の脂肪酸の組み合わせを特定の比で含む皮膚洗浄用組成物に関する。起泡力は脂肪酸の炭素鎖長の長さに逆比例するが、泡保持力は炭素鎖長の長さに正比例する。また、皮膚刺激性においては、炭素鎖長と逆比例の関係にある。そのため、炭素鎖長の短い脂肪酸を使用すると、起泡力が上昇するが、泡保持力が減少し刺激性も強くなり、他方で、炭素鎖長の長い脂肪酸を使用すると、泡保持力が上昇し刺激性も低くなるが、起泡力が減少する。このように、泡保持力および刺激性と起泡力とは、トレードオフの関係にある。本発明者らは、起泡力および泡保持力が優れており、かつ刺激性が低くなるような、特定の脂肪酸の組み合わせおよび配合比を見出した。
、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N‘-カルボキシエチル-N‘-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルメチルグリシン)、薬効成分(L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-グルコシド等のビタミンC類等、レチノール、リポ酸、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ-オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等)を含んでもよい。
(材料)
脂肪酸カリウム塩を精製水に1%(重量%)で溶解した。脂肪酸カリウム塩は以下のものを使用した。炭素数12のラウリン酸カリウム(NIKKOL ラウリン酸カリ LK-120、日光ケミカルズ)、炭素数14のミリスチン酸カリウム(コスメチックソープ
MF-K、ミヨシ油脂)、炭素数16のパルミチン酸カリウム(パルミチン酸K、日東化成工業)、炭素数18のステアリン酸カリウム(ステアリン酸K、日東化成工業)。この溶液2mlを15mLの遠沈管(ポリプロピレン遠心分離用コニカルチューブ、コーニング)にとり、実験に供した。
起泡力、泡保持力の測定には様々方法が知られている。これらを簡易に測定する方法として以下の方法を開発した。1%(重量%)の脂肪酸塩溶液を作製し、この液を15mLのプラスチックチューブに2mL分注した。これを、多検体ミキサー(ミキシングステーション、MIX-101、サイニクス社)に15mL遠沈管ラックをセットし室温で5分間撹拌した。撹拌後、水平な場所にチューブを立て、液面から泡頂点までの高さを測定した。この時の高さ(「泡高さ」)を起泡力とした。次に、この泡の保持力を解析するため遠心操作による負荷を掛けた。先ほどのチューブをスイングローター式の遠心分離機で、1000g、15℃の条件で遠心し、1分後、6分後、21分後、36分後の泡の高さを測定した。遠心処理前の泡高さを100%とし、各遠心処理時間後の泡高さの比率を計算し、これを泡保持力とした。これを3回行い平均値を算出した。
起泡力はミリスチン酸カリウム(C14)、ラウリン酸カリウム(C12)、パルミチン酸カリウム(C16)、ステアリン酸カリウム(C18)の順に高く、泡の保持力はステアリン酸カリウム(C18)、パルミチン酸カリウム(C16)、ミリスチン酸カリウム(C14)、ラウリン酸カリウム(C12)になることが報告されている(文献2:大矢勝、皆川基 衣類の泡沫洗浄に関する研究、繊維製品消費科学、1989年30巻3号p.125-132)。本試験系でも同様の結果が得られるのか確認した。結果を図1及び図2に示す。この結果から、ミリスチン酸(C14)が最も起泡力が高く、次いでラウリン酸(C12)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)の順であった。文献2では30℃条件であるが概ね一致していた。次に、泡の保持力であるが、本試験系においてはステアリン酸(C18)が最も高く、次いでパルミチン酸(C16)、ミリスチン酸(C14)、ラウリン酸(C12)の順であった。文献2では遠心ではなく70℃の条件において、ステアリン酸(C18)>パルミチン酸(C16)>ミリスチン酸(C14)>ラウリン酸(C12)の順に保持力が高く、こちらも概ね一致していた。これらの結果から、本試験系はこれまでの知見と同様に泡の特性を解析することができることが確認された。
実施例1の方法を用いてラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)及びステアリン酸(C18)の様々な脂肪酸配合比率の泡特性を解析した。各配合例の組成を表1に示す(各脂肪酸の配合割合を数値と青色棒グラフでそれぞれのセルに示した)。また、起泡力に優れたラウリン酸(C12)とミリスチン酸(C14)、保持力に優れたパルミチン酸(C16)とステアリン酸(C18)、それぞれの合計割合を表1下段に黄色棒グラフと共に示した(単位は重量%である。)。
撹拌による起泡後、遠心により負荷を掛け、チューブ中の泡の高さを比較した(図3)。その結果、実施例#9、#19、#10、#5、#7及び#8が負荷後も25mm以上の泡を保持しており、泡の嵩高さでは優れた性質を示した。次に、泡の保持力を比較したところ、#9、#19、#10、#5及び#8が75%以上の高い保持力を示した(図4)。
本実施例から鎖長の異なる脂肪酸塩の配合比率が泡の特性に関与していることが確認された。炭素鎖長の長い脂肪酸の配合比率を上げることで嵩高く且つ保持力の高い泡を形成できることが確認された。しかし、その配合比率には限界があり、比率が80%を超えると両方の性質を失ってしまうことが示唆された。これら泡の性質と、炭素鎖長の短い脂肪酸による刺激性とを鑑みると、炭素鎖長の長い脂肪酸の配合比率は、好ましくは約50%~約80%、より好ましくは約60%~約80%、最も好ましくは約70~約80%であると推定される
(実施例2)
実施例1において、トレードオフの関係にある起泡力と泡保持力について、両立させ得る短鎖脂肪酸および長鎖脂肪酸の配合比率があることを示した。起泡力と泡保持力を両立させ得る短鎖脂肪酸および長鎖脂肪酸の配合比率とすることにより、敏感肌用洗顔料として適切な製品を提供できるようになる。容易に泡立てができ、且つ、泡保持力の高い泡は、洗浄時に摩擦が少なく、敏感肌の人にとって好ましい泡質であることが理解される。しかし、この配合比率脂肪酸の皮膚刺激性については不明であった。一般的に、短鎖長脂肪酸は皮膚刺激性高く、逆に長鎖長脂肪酸は低い。本実施例において、本発明の洗顔料による皮膚バリア破壊の程度を、経皮水分蒸散量を指標に、評価を行った。
図5及び6の結果を参考に、異なる泡質の検体を選び評価を行った。検体名C12、#6、#7、#8、#5、#19及び#14を使用した。また、陰性対象として純水を使用した。それぞれ1重量%の水溶液(分散液)を作製した。この水溶液50μLを皮膚テスト用パッチテープ(パッチテスター「トリイ」、鳥居薬品株式会社)に含侵させた。パッチテープ貼付前に被験者5名の前腕内側の経皮水分蒸散量(Trans Epidermal Water Loss:TEWL)をTEWAメーター(TEWA meter TM300、Courage + Khazaka electronic GmbH)を使って測定した。TEWL測定部位に検体を含侵させたパッチテープを貼付し、30分間検体に暴露させた。30分の貼付後、テープを剥がし、流水で洗浄、さらに30分間安静にして乾燥させた。その後、検体貼付部のTEWLを測定し、貼付前のTEWL値からの上昇率を計算し、その平均値を算出した。
検体暴露後のTEWL上昇率を図7Aに示す。陰性対象の純水暴露部(DW)においては、暴露前からのTEWL上昇はほとんど見られなかった(上昇率1%)。長鎖脂肪酸配合割合が最も高く、最も刺激性が低いと予想されるC18検体においては、27%のTEWL上昇率であった。一方、短鎖脂肪酸配合割合が最も高く、最も刺激性が高いと予想されるC12検体においては、34%の上昇であった。これに対し、#6、#7及び#8検体の上昇率はそれぞれ49%、53%及び47%で、C12検体より長鎖脂肪酸配合割合が高いにも関わらず(それぞれ23%、37%、50%)、高い上昇率を示した。長鎖脂肪酸配合割合が低い#5、#19及び#14検体(それぞれ63%、77%及び85%)においては、TEWL上昇率は14%、24%及び15%で、C18検体の上昇率27%とほぼ同等の上昇率であった。長鎖脂肪酸配合比率とTEWL上昇率の相関を図7Bに示す。長鎖脂肪酸配合割合を63%以上にしても、皮膚バリア破壊能はそれ以上低下せず、プラトーになることが示唆された。以上の結果から、皮膚刺激性と短鎖脂肪酸の配合比率は単純な比例関係になく、ある比率から刺激性が急激に変化することが示唆された。皮膚刺激性を低下させるためには、単に短鎖脂肪酸の割合を低下させるだけではなく、予想外にも短鎖脂肪酸および長鎖脂肪酸の比率が重要であることが明らかになった。
洗浄剤においては界面活性剤以外にも様々な添加剤が配合されることがある。本実施例では、添加剤が、本発明の泡保持力にどのような影響を与えるのか、解析を行った。
終濃度1%(重量割合)のC12、#6、#11、#7、#8、#19水分散液に対して、終濃度1%(重量割合)の賦形剤であるヒドロキシプロピルデンプンリン酸(以降デンプン、アクゾノーベル社製)およびグリセリン(阪本薬品工業)、終濃度0.1%(重量割合)のピーリング剤であるサリチル酸(和光純薬社製)、終濃度0.1%(重量割合)の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(花王ケミカル社製)、終濃度0.1%(重量割合)の両性界面活性剤であるココイルグルタミン酸TEA(旭化成ファインケム社製)をそれぞれ添加し、実施例1同様、多検体ミキサーによる起泡処理を行い、遠心負荷後の泡高さ及び泡保持率の解析を行った.陰性対象として添加剤を何も添加していないC12、#6、#11、#7、#8、#19水分散液との比較を行った。
遠心負荷後の泡高さ及び泡保持率を図8に示す。陰性対象では、泡保持率どちらにおいても#19、#8、#7、#11、#6、C12の順に高い泡保持力を示していた。同様の傾向は賦形剤(グリセリン)及び非イオン性界面活性剤で見られた。一方、賦形剤(デンプン)、ピーリング剤、両性界面活性剤においてはC12以外ではそのような傾向は見られず、泡保持力の低かった#6や#11でも#19同様の高い泡保持力を示した。つまり、長鎖脂肪酸配合割合が低い処方に対して、泡保持力の上昇効果があるものの、長鎖脂肪酸配合割合が高い#7、#8及び#19では陰性対象と比較して大きな差はなかった。このように、長鎖脂肪酸配合割合が約40%以上の処方(#7、#8及び#19)の泡保持力は添加剤の影響をほとんど受けなかった。さらに、起泡処理後の泡高さの結果を図9に示す。示される通り、添加剤を添加しても、泡高さは30mmを下回ることはなく、起泡力に関しても、添加剤によって大きな影響は受けなかった。以上から、優れた起泡力および泡保持力は、特定の脂肪酸の配合によってもたらされることがより明白となった。
Claims (2)
- 炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩を含む皮膚洗浄用組成物であって、該炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩が、パルミチン酸またはその塩およびステアリン酸またはその塩からなり、該炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩が、ミリスチン酸またはその塩およびラウリン酸またはその塩からなり、
該パルミチン酸またはその塩が、炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩の合計の約57重量%であり、
該ステアリン酸またはその塩が、炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩の合計の約20重量%であり、
該ミリスチン酸またはその塩が、炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩の合計の約17重量%であり、
該ラウリン酸またはその塩が、炭素数15以上の1種以上の脂肪酸またはその塩および炭素数15未満の1種以上の脂肪酸またはその塩の合計の約6%である、
皮膚洗浄用組成物。 - 洗顔料である、請求項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
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