JP7058121B2 - 超伝導磁気シールド装置、及び脳磁計装置 - Google Patents

超伝導磁気シールド装置、及び脳磁計装置 Download PDF

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Description

本発明は、超伝導磁気シールド装置、及び脳磁計装置に関する。
従来、例えば脳磁計装置のような微弱な磁場を計測する装置では、外部磁場を遮蔽するために磁気シールド装置が用いられる。特許文献1には、超伝導材料を含んで構成される磁気シールドを有する超伝導磁気シールド装置が記載されている。超伝導磁気シールドは、溶射によって形成された超伝導層を有している。
特開2009-254747号公報
上述のような超伝導磁気シールド装置では、磁気シールドが溶射によって形成された超伝導層を有している。このような磁気シールドは、軸線方向に沿って隙間なく超伝導層を有しているため、シールド性能が高い。ここで、筒状の磁気シールドの軸線方向の端部では、超伝導層の臨界電流値が高いことが好ましく、遮蔽性能の向上の点で、改善の余地がある。また、このような遮蔽性能を容易に向上することが求められる。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、容易に遮蔽性能を向上することができる超伝導磁気シールド装置及び脳磁計装置を提供することを目的とする。
本発明の一形態に係る超伝導磁気シールド装置は、筒状の基板と、基板の側面側に形成され、超伝導材料を含んで構成される超伝導層と、を備え、超伝導層は、径方向の厚みが拡大された一対の第1の領域を基板の軸線方向の両端部に有し、 一対の第1の領域における厚みは、一対の第1の領域の間の第2の領域における厚みよりも大きく、超伝導層は、軸線方向に延びる第1の層と、第1の領域を形成する第2の層と、を備え、第1の層と第2の層とは別体に構成されている。
この超伝導磁気シールド装置において、超伝導層は、径方向の厚みが拡大された一対の第1の領域を基板の軸線方向の両端部に有し、一対の第1の領域における厚みは、一対の第1の領域の間の第2の領域における厚みよりも大きい。従って、超伝導層の両端部では、第1の領域にて厚みが拡大されるため、高い臨界電流値を得ることができる。従って、超伝導層の両端部にて要求される遮蔽電流が大きくなっても、当該端部における遮蔽性能を確保することができる。また、超伝導層は、軸線方向に延びる第1の層と、第1の領域を形成する第2の層と、を備え、第1の層と第2の層とは別体に構成されている。このように、第1の領域にて厚みを拡大するための第2の層が、第1の層と別体に構成されることで、第1の領域の厚みや位置を調整し易くなり、取り扱い性も向上する。以上により、容易に遮蔽性能を向上することができる。
一形態において、第2の層は、第1の層に対して巻かれた線状、または帯状の超伝導部材に含まれる超伝導材料によって形成されてよい。この構成によれば、第1の層に対して超伝導部材を巻き付けることで、容易に第2の層を形成することができる。
一形態において、第1の層は超伝導材料の溶射によって構成された層であってよい。この構成によれば、超伝導材料の溶射によって、軸線方向において広い範囲にわたって第1の層を隙間無く形成することができる。
一形態において、超伝導部材は、第1の層側にて露出する第2の層と、第1の層とは反対側にて第2の層を覆う保護層と、を備えてよい。この構造によれば、露出した箇所にて第2の層を効率良く冷却することができる。
本発明の一形態に係る脳磁計装置は、上述の超伝導磁気シールド装置を備える。この脳磁計装置によれば、上述の超伝導磁気シールド装置と同様な作用・効果を得ることができる。
本発明によれば、容易に遮蔽性能を向上することができる超伝導磁気シールド装置及び脳磁計装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る脳磁計装置を概略的に示す図である。 図1の脳磁計装置の超伝導磁気シールド装置の斜視図である。 図2のIII―III線に沿った断面図である。 超伝導部材の接合部を概略的に示す断面図である。 変形例に係る超伝導磁気シールド装置の断面図である。 変形例に係る超伝導磁気シールド装置の断面図である。 超伝導層の軸線方向における位置と遮蔽電流の電流値との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示される脳磁計装置1は、計測ユニット1A内の計測位置Hに頭が位置するように着座した被験者Pに対して、脳の神経活動に伴って発生する微弱な磁場を非接触で計測、解析する装置である。この計測ユニット1Aは、脳で発生する磁場を検出するSQUID(Superconducting Quantum Interference Device)センサ3を備えている。この脳磁計装置1では、被験者Pの脳の様々な位置から発生する磁場を検出するため、数十個~数百個(64個,128個,256個など)といった多数の上記SQUIDセンサ3が、計測位置Hの周囲に配置され、センサホルダ4で固定されている。
計測ユニット1Aは、SQUIDセンサ3を冷却する液体ヘリウム5を収納するためのデュワー(容器)7を備えている。デュワー7は、図1に示されるように、円筒状で有底の断熱容器である。また、デュワー7の底部7bは、被験者Pの頭部を覆うように内に凹んでいる。
センサホルダ4は、SQUIDセンサ3の耐震性を向上させて、生体磁場の計測に対する振動の影響を低減させるべく、デュワー7の内側面7aに固定されている。
更に、計測ユニット1Aは、デュワー7を包囲するように配置され、被験者Pを覆う二重構造の筒型体15を備えている。この二重構造の筒型体15の外筒部15aと内筒部15bとの間には、超伝導磁気シールド装置11が内臓されている。また、筒型体15とデュワー7との間には断熱材19が充填されている。
脳磁計装置1は、被験者Pの脳で発生する極めて微弱な磁場を検出するため、計測位置Hの近傍における外部磁場の影響を除去する必要がある。このため、脳磁計装置1は、中心軸線Cが計測位置Hを通るように配置された筒状の超伝導磁気シールド装置11を備えている。超伝導磁気シールド装置11は、デュワー7を包囲して筒型体15の外筒部15aに支持されると共に、筒型体15の上下寸法とほぼ同じ寸法で延在している。また、計測位置Hは、中心軸線C上に位置すると共に、上下方向においても超伝導磁気シールド装置11の全高のほぼ中央に位置している。
また、脳磁計装置1は、超伝導磁気シールド装置11を冷却するための極低温の冷却ガスを超伝導磁気シールド装置11は送出すると共に、超伝導磁気シールド装置11を冷却した後の冷却ガスが流入する冷凍機1Bを有している。なお、冷凍機1Bとして、GM冷凍機、スターリング冷凍機、パルスチューブ冷凍機等が特に好ましい。また、冷却ガスとして、例えばヘリウムガスを用いることもできる。
次に、本実施形態の超伝導磁気シールド装置11の構成について説明する。
図2及び図3に示される超伝導磁気シールド装置11は、計測位置Hの近傍において、例えば地磁気、外部磁場の変動等の影響を除去するためのものである。超伝導磁気シールド装置11は、基板20と、シールド層22と、端部シールド層23と、シールド層22及び端部シールド層23を冷却する冷却ガス配管(不図示)と、を備えている。冷却ガス配管は、例えば基板20の外周側に配置され、基板20に沿って上下に往復するように取り付けられる。
基板20は、シールド層22及び端部シールド層23を支持すると共に、冷却ガスが流通する冷却ガス配管により冷却されることでシールド層22及び端部シールド層23を冷却するためのものである。基板20は、中心軸線Cを中心とした中空の円筒形状をなしており、全体の上下寸法は、筒型体15の上下寸法とほぼ同じ寸法となっている。なお、本実施形態では、脳磁計装置1へ好適に適用される超伝導磁気シールド装置11の基板20の一例として、外形寸法が約650mm、基板20全体での上下寸法が約1600mm程度のものを用いる。また、本実施形態における基板20は、ニッケルを含む金属によって構成されているが、SUS304、真鍮、銅等の材料によって構成してもよい。
シールド層22及び端部シールド層23は、基板20の内周側及び外周側にそれぞれ設けられている。シールド層22及び端部シールド層23は、超伝導転移温度以下まで冷却されて超伝導状態となることで完全反磁性を示すため、超伝導磁気シールド装置11の内周側の磁場変動を除去することができる。すなわち、シールド層22,端部シールド層23の完全反磁性によって、超伝導磁気シールド装置11に包囲された計測位置Hが外部磁場から遮蔽される。これにより、SQUIDセンサ3では、外部磁場によるノイズの影響をほとんど受けることなく、微弱な磁場の計測が可能になる。
シールド層22は、基板20の内周側の側面20a側に形成された第1の超伝導層31によって構成される。第1の超伝導層31は、超伝導材料によって構成される層である。第1の超伝導層31は、ビスマス系酸化物超伝導体であり、磁束侵入長よりも十分に大きい膜厚を有している。第1の超伝導層31は、軸線方向に沿って延びており、側面20aの略全面に形成されている。すなわち、第1の超伝導層31の軸線方向における端面31a,31bは、基板20の端面20c、20dと一致するように形成されている。ただし、端面31a,31bは、端面20c,20dから僅かにずれる位置に配置されてもよい。第1の超伝導層31の厚さは、例えば、0.1~10mmとすることができる。第1の超伝導層31の厚さは、軸線方向に沿って一定である。ここで、第1の超伝導層31に用いられるビスマス系酸化物超伝導体として、例えば、組成式BiSrCaCuで表されるBi2223が好ましい。なお、周方向超伝導部材21に用いられる超伝導体としては、Bi2212等が採用されてもよい。
第1の超伝導層31は、超伝導材料の溶射によって構成される。すなわち、第1の超伝導層31は、溶射型の超伝導層である。第1の超伝導層31を形成する場合、基板20の中空部にプラズマ溶射装置を挿入し、ビスマス系酸化物超伝導体の材料(例えば、BiSrCaCu或いはBiSrCaCu)を用い、プラズマ溶射加工によって基板20の側面20a全体に溶射膜を形成させる。このとき、プラズマ溶射装置は、基板20の側面20aに対して、螺旋状にビスマス系酸化物超伝導体の材料を吹き付け溶射膜を形成していく。その後、形成された溶射膜を焼成して第1の超伝導層31を完成させる。
端部シールド層23は、線状または帯状の超伝導部材40によって構成される。端部シールド層23は、基板20の軸方向における両端部に形成される。本実施形態では、端部シールド層23は、基板20の外周側の側面20bのうち、端面20c,20dの近傍に設けられる。端部シールド層23は、超伝導部材40を基板20及び第1の超伝導層31に対して外周側から囲むように巻きつけることで、構成される。
超伝導部材40は、基板20の外周側の側面20bに巻きつけられることで、円環状に構成される。円環状の超伝導部材40の中心軸線Cと基板20の中心軸線Cとは、互いに一致するように配置される。上側の超伝導部材40の上面40aは、基板20の上側の端面20cと一致する位置に配置される。下側の超伝導部材40の下面40bは、基板20の下側の端面20dと一致する位置に配置される。ただし、上面40a,下面40bは、各端面20c,20dと完全に一致していなくともよく、ずれた位置に配置されてもよい。なお、本実施形態では、超伝導部材40は、基板20の各端面20c,20dにおいて、それぞれ一段形成されている。
超伝導部材40は、超伝導材料によって構成される第2の超伝導層41と、第2の超伝導層41を覆う保護層42と、を備える。超伝導部材40は、例えば両端部を接合することにより環状に形成されている。第2の超伝導層41及び保護層42は、超伝導部材40の全周に亘って連続して設けられている。
第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31と同様の超伝導材料によって構成されてよい。第2の超伝導層41の径方向の厚さは、例えば、0.1~10mmとすることができる。また、第2の超伝導層41の軸線方向の長さは、1~10mmとすることができる。なお、図3においては、第1の超伝導層31は、矩形状の断面形状を有しているが、特に断面形状は限定されず、円形、楕円形などであってもよい。また、第2の超伝導層41は、断面視において複数領域に分かれていてよい。第2の超伝導層41は、保護層42内部において、複数の線材又はシート材が組み合わせられることによって構成されてよい。例えば、第2の超伝導層41は、矩形状、円形状などの断面形状を有する線材が径方向及び軸線方向に複数個並べられることで構成されてよい。また、第2の超伝導層41は、複数のシート部材を径方向に積層することによって構成されてよい。なお、第2の超伝導層41が複数の部材を組み合わせることで構成する場合、各部材は同一の材料でなくともよく、部材毎に異なる材料であってもよい。例えば、第2の超伝導層41は、互いに異なる超伝導材料で構成されるシート部材を複数積層させることによって構成されてよい。
保護層42は、例えば銀を材料として構成される。なお、保護層42には、銅、ステンレス等を材料として用いてもよい。保護層42は、例えば、断面視において第2の超伝導層41を全周において(四方から)覆うように形成されている。なお、保護層42は、第2の超伝導層41の内周面及び外周面から挟み込むことで、上面及び下面が露出していてもよい。保護層42の厚さは、例えば0.1~10mmとすることができる。
第2の超伝導層41は、接合部50において接合されている(図2参照)。接合部50では、超伝導部材40の長手方向における一端部と他端部とが接合されている。接合部50では、端部において保護層42から露出した第2の超伝導層41と、他端部において保護層42から露出した第2の超伝導層41とが互いに接合されている。接合部50の一例について、図4を参照して説明する。図4に示すように、超伝導部材40の端部40Aにて第2の超伝導層41の露出面41Aが形成され、端部40Bにて第2の超伝導層41の露出面41Bが形成される。接合部50では、露出面41A,41B同士が互いに接合されている。
接合部50は、補強部材51によって補強されている。補強部材51は、接合部50へ圧力を付与している。これにより、端部40Aにおける第2の超伝導層41の露出面41Aと端部40Bにおける第2の超伝導層41の露出面41Bとを強固に押圧することができる。なお、図6では、理解を容易とするために、加圧前の状態における端部40A,40Bの様子を示している。ただし、完成品としての超伝導部材40では、露出面41A,41Bは一体となる。
補強部材51は、接合部50を挟み込む押圧部材52,53を備えている。押圧部材52は、露出面41Aとは反対側の保護層42から接合部50を押圧する。押圧部材53は、露出面41Bとは反対側の保護層42から接合部50を押圧する。押圧部材52,53は、板状の部材である。押圧部材52,53は四隅に貫通孔を有している。この貫通孔にはボルト54が挿通されている。これにより、押圧部材52,53は、ボルト54の締結力によって接合部50に圧力を付与する。なお、補強部材51は、磁化率の小さい材料によって構成される。
次に、超伝導磁気シールド装置11の超伝導層30の径方向の厚み関係について、更に詳細に説明する。なお、超伝導層30の「厚み」とは、超伝導層30の径方向(中心軸線CLと直交する方向)の寸法である。超伝導層30が径方向において複数の部材によって構成されている場合、各部材の合計の厚みが、超伝導層30の厚みに該当する。なお、超伝導層30が径方向において複数の部材によって構成されている場合、互いの部材同士が径方向において離間していてもよいが、当該離間した部分の寸法は、超伝導層30の厚みには含まない。
超伝導層30は、上述の第1の超伝導層31と、第2の超伝導層41と、を備える。上述のように、第1の超伝導層31は、中心軸線CLが延びる軸線方向に延びる。第1の超伝導層31は、超伝導層30の軸線方向における上端30aから下端30bの全域にわたって延びる。なお、超伝導層30の上端30aは、第1の超伝導層31の端面31aに該当し、下端30bは、第1の超伝導層31の端面31bに該当する。
第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31とは径方向において異なる位置に配置される。ここでは、第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31に対して径方向の外側へ配置される。従って、第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31と組み合わせられることにより、超伝導層30の径方向における厚みを拡大する領域W1,W2を形成する。すなわち、第2の超伝導層41は、領域W1,W2を形成する層である。これにより、第2の超伝導層41は、領域W1,W2における臨界電流値を高くすることができる。なお、「臨界電流値」とは、超伝導層の超伝導状態を維持しながら、当該超伝導層に流すことのできる電流値の最大値のことである。
第2の超伝導層41は、超伝導層30の軸線方向における両端部30A,30Bに配置される。ここで、図7のグラフL1で示すように、超伝導層30に要求される遮蔽電流の電流値は、略全域において低い値に設定されるが、両端側において急激に立ち上がる。従って、超伝導層30の両端部30A,30Bは、軸線方向において要求される遮蔽電流の電流値が立ち上がる領域とする。具体的には、端部30Aは、グラフL1のうちの最小値から当該最小値の10~30%だけ電流値が立ち上がる点P1から、超伝導層30の上端30aまでの間の領域である。端部30Bは、グラフL1のうちの最小値から当該最小値の10~30%だけ電流値が立ち上がる点P2から、超伝導層30の下端30bまでの間の領域である。
以上のような構成により、超伝導層30は、厚みが拡大された領域W1,W2を端部30A,30Bに有する。また、超伝導層30は、領域W1,W2間に領域W3を有する。領域W3は、上側の第2の超伝導層41の下面と上側の第2の超伝導層41の上面との間の領域である。領域W1,W2は、第1の超伝導層31の厚みと第2の超伝導層41の厚みを合計した厚みを有する領域である。領域W3は、第1の超伝導層31のみによって構成される領域である。従って、領域W1,W2の厚みは、領域W1,W2間の領域W3の全域における厚みよりも大きい。なお、超伝導層30は、領域W1よりも上端30a側、及び領域W2よりも下端30b側に、第1の超伝導層31の厚みのみによって構成される領域W4,W5を有する。
本実施形態において、領域W3は、軸線方向に沿って一定の厚みを有しているが、製造上の誤差や、製品上の都合により、厚みが一定ではない部分を有してよい。ただし、その場合も、当該部分の厚みは、領域W1,W2よりも小さい。これにより、遮蔽性能が過剰となり、超伝導材料の量が過剰となってコストが上昇することを抑制できる。
領域W1,W2の厚み、及び位置(すなわち第2の超伝導層41の厚み及び位置)については、装置全体のサイズや材料などの各種条件によって適宜変更されるため、特に限定されない。ただし、領域W1,W2の厚み及び位置については、端部30A,30Bでの超伝導層30の臨界電流値が、要求される遮蔽電流の電流値よりも高くなるように設定される。
例えば、図7に示すように、第1の超伝導層31の臨界電流値を「C1」とした場合、第1の超伝導層31のみによって得られる臨界電流値のグラフA1は、「C1」にて一定となる。超伝導層30の端部30A,30B以外の領域では、要求される遮蔽電流の電流値を示すグラフL1は、グラフA1よりも低い位置に位置する。従って、当該領域では、第1の超伝導層31の臨界電流値のみで要求を満たすことができる。
一方、端部30A,30Bにおける上端30a及び下端30b付近では、要求される遮断電流の電流値が高くなり、最大値を「MC」とした場合、「MC」は、「C1」よりも大きくなる。すなわち、第1の超伝導層31の臨界電流値のみでは要求を満たしていない。これに対し、端部30A,30Bでは、第1の超伝導層31に第2の超伝導層41が加えられることで、当該箇所における臨界電流値が、第2の超伝導層41による臨界電流値(B1,B2)の分だけ増加する。従って、臨界電流値のグラフA2,A3は、「C2」にて一定となる。従って、領域W1,W2の厚み及び位置は、「C2」が要求される電流値の最大値である「MC」よりも大きくなるように設定される。
第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31とは別体に構成されている。ここで、「別体」とは、第1の超伝導層と第2の超伝導層とが異なる部材として形成された状態を示す。例えば、溶射によって第1の超伝導層の一部の厚みを厚くすることによって第2の超伝導層を形成した場合、当該第2の超伝導層は、第1の超伝導層とは一体の構造物として形成されたものに該当し、「別体」として形成されたものには該当しない。第1の超伝道層と第2の超伝導層とが、別工程でそれぞれ形成され、第1の超伝導層に対して第2の超伝導層が着脱可能に固定、または着脱不能に固定されている場合、当該第2の超伝導層は、第1の超伝導層とは「別体」として形成されたものに該当する。このとき、第1の超伝導層の形成方法と第2の超伝導層の形成方法は、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
本実施形態では、第1の超伝導層31は、溶射によって基板20の内周側に形成されている。また、第2の超伝導層41は、超伝導部材40の内部に形成されている。よって、第1の超伝導層31と第2の超伝導層41とは、基板20及び保護層42を介して離間して配置されているので、互いに別体として構成されている。
次に、本実施形態に係る超伝導磁気シールド装置11及び脳磁計装置1の作用・効果について説明する。
まず、図7を参照して、比較例に係る超伝導磁気シールドについて説明する。例えば、比較例に係る超伝導磁気シールドとして、超伝導層が第1の超伝導層31のみによって構成されているものを考慮する。この場合、図7に示すように、臨界電流値がC1にて一定(グラフA1)であった場合、上端30a及び下端30bにて要求される遮断電流(最大値MC>C1)を確保することができない。一方、最大値MCに合わせた臨界電流値が得られるように第1の超伝導層31の厚みを設定した場合、臨界電流値が、例えば最大値MCで一定となるようなグラフL2を描くこととなる。この場合、端部30A,20以外の広い領域にわたって、遮蔽性能が過剰となってしまうという問題が生じる。
これに対し、本実施形態に係る超伝導磁気シールド装置11において、超伝導層30は、径方向の厚みが拡大された一対の領域(第1の領域)W1,W2を基板20の軸線方向の両端部30A,30Bに有し、一対の領域W1,W3における厚みは、一対の領域W1,W2の間の領域(第2の領域)W3における厚みよりも大きい。従って、超伝導層30の両端部30A,30Bでは、領域W1,W2にて厚みが拡大されるため、高い臨界電流値を得ることができる。従って、超伝導層30の両端部30A,30Bにて要求される遮蔽電流が大きくなっても、当該端部30A,30Bにおける遮蔽性能を確保することができる。また、超伝導層30は、軸線方向に延びる第1の超伝導層(第1の層)31と、領域W1,W2を形成する第2の超伝導層(第2の層)41と、を備え、第1の超伝導層31と第2の超伝導層41とは別体に構成されている。このように、領域W1,W2にて厚みを拡大するための第2の超伝導層41が、第1の超伝導層31と別体に構成されることで、領域W1,W2の厚みや位置を調整し易くなり、取り扱い性も向上する。以上により、容易に遮蔽性能を向上することができる。
第2の超伝導層41は、第1の超伝導層31に対して巻かれた線状、または帯状の超伝導部材40に含まれる超伝導材料によって形成されてよい。この構成によれば、第1の超伝導層31に対して超伝導部材40を巻き付けることで、容易に第2の超伝導層41を形成することができる。
第1の超伝導層31は超伝導材料の溶射によって構成された層であってよい。この構成によれば、超伝導材料の溶射によって、軸線方向において広い範囲にわたって第1の超伝導層31を隙間無く形成することができる。
本実施形態に係る脳磁計装置1は、上述の超伝導磁気シールド装置11を備える。この脳磁計装置1によれば、上述の超伝導磁気シールド装置11と同様な作用・効果を得ることができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、図5に示すような超伝導シールド装置111を採用してもよい。この超伝導シールド装置111の超伝導層30は、複数段(ここでは二段)の第2の超伝導層41を端部30A,30Bにそれぞれ有している。この場合、端部30Aでは、第2の超伝導層41が形成された領域W11,W13にて、第1の超伝導層31のみによる領域W15,W16,W17よりも厚みが大きくなる。端部30Bでは、第2の超伝導層41が形成された領域W12,W14にて、第1の超伝導層31のみによる領域W15,W18,W19よりも厚みが大きくなる。
なお、図5に示すような多段型の第2の超伝導層41の形成方法は特に限定されない。例えば、一本の超伝導部材40を螺旋状に複数周、第1の超伝導層31に対して巻きつけてよい。あるいは、一周分のリング状の超伝導部材40を軸線方向に複数個、重ねて配置してよい。
図6に示すような超伝導シールド装置211を採用してもよい。この超伝導シールド装置211では、超伝導部材240は、第1の超伝導層31側にて露出する第2の超伝導層41と、第1の超伝導層31とは反対側にて第2の超伝導層41を覆う保護層42と、を備えている。すなわち、保護層42が内周側に設けられておらず、露出した第2の超伝導層41が第1の超伝導層31と接触している。この構造によれば、基板20は、第1の超伝導層31を冷却し、露出した箇所にて第2の超伝導層41も効率良く冷却することができる。
1…脳磁計装置、11…超伝導磁気シールド装置、20…基板、30…超伝導層、31…第1の超伝導層(第1の層)、40…超伝導部材、41…第2の超伝導層(第2の層)、42…保護層、W1,W2,W11,W12,W13,W14…領域(第1の領域)、W3,W15…領域(第2の領域)。

Claims (4)

  1. 筒状の基板と、
    前記基板の側面側に形成され、超伝導材料を含んで構成される超伝導層と、を備え、
    前記超伝導層は、径方向の厚みが拡大された一対の第1の領域を前記基板の軸線方向の両端部に有し、
    一対の第1の領域における厚みは、一対の前記第1の領域の間の第2の領域の全域における厚みよりも大きく、
    前記超伝導層は、前記軸線方向に延びる第1の層と、前記第1の領域を形成する第2の層と、を備え、
    前記第1の層と前記第2の層とは別体に構成され、
    前記第2の層は、前記第1の層に対して巻かれた線状の超伝導部材に含まれる前記超伝導材料によって形成される、超伝導磁気シールド装置。
  2. 前記第1の層は前記超伝導材料の溶射によって構成された層である、請求項1に記載の超伝導磁気シールド装置。
  3. 前記超伝導部材は、前記第1の層側にて露出する前記第2の層と、前記第1の層とは反対側にて前記第2の層を覆う保護層と、を備える、請求項1に記載の超伝導磁気シールド装置。
  4. 請求項1~3何れか一項に記載の超伝導磁気シールド装置を備える、脳磁計装置。
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