[オキセタン化合物及びその特性]
本発明の新規オキセタン化合物は、下記式(1)で表される。
(式中、Ar1及びAr2はアレーン環、Z1及びZ2は縮合多環式アレーン環、R1a及びR1b並びにR2a及びR2bは置換基、R3a及びR3bは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、R4a及びR4bは水素原子又は置換基、k1及びk2、m1及びm2並びにn1及びn2は0以上の整数を示す)。
前記式(1)において、環Ar1及びAr2で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などのC6-14アレーン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環であり、特に好ましくは、ベンゼン環である。環Ar1及びAr2で表されるアレーン環の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
環Ar1及びAr2は、両環の間に介在する5員環とともに縮合環骨格、例えば、環Ar1及びAr2のうち、双方がベンゼン環であるフルオレン骨格;一方がベンゼン環、他方がナフタレン環であるベンゾフルオレン骨格(例えば、ベンゾ[a]フルオレン骨格、ベンゾ[b]フルオレン骨格、ベンゾ[c]フルオレン骨格など);双方がナフタレン環であるジベンゾフルオレン骨格(例えば、ジベンゾ[b,h]フルオレン骨格など)などのフルオレン環が内在する芳香族骨格(好ましくはフルオレン骨格又はベンゾフルオレン骨格、特に、フルオレン骨格)を形成してもよい。
環Z1及びZ2で表される縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい環Z1及びZ2としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環、より好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環Z1及びZ2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。なお、前記5員環に結合する環Z1及びZ2の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z1及びZ2がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよい。
置換基R1a及びR1bとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基など)など]、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。これらの基R1a及びR1bのうち、アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基)、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、特にアルキル基(特に、メチル基などのC1-3アルキル基)が好ましい。
基R1a及びR1bの置換数k1及びk2は、0以上の整数、例えば、0~8程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~4の整数、0~2の整数であって、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。なお、置換数k1及びk2は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1a及びR1bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、k1及びk2が2以上である場合、同一の環に置換する2以上の基R1a及び2以上の基R1bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1a及びR1bの置換位置は、特に制限されず、例えば、環Ar1及びAr2並びに前記5員環がフルオレン環を形成する場合、2位乃至7位(2位、3位及び7位など)であってもよい。
置換基R2a及びR2bとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)など}、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基など)、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基など)など]などが挙げられる。
これらの基R2a及びR2bのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。置換数m1及びm2が1以上である場合、好ましい基R2a及びR2bとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であって、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、C6-14アリール基、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基、さらに好ましくは、メチル基、フェニル基、メトキシ基であってもよい。より好ましい基R2a及びR2bとしては、アルキル基、アリール基が挙げられ、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、C6-10アリール基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
基R2a及びR2bの置換数m1及びm2は、0以上の整数であればよく、環Z1及びZ2の種類に応じて適宜選択できる。置換数m1及びm2は、例えば、0~8程度の整数であってもよく、好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であって、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0であってもよい。なお、置換数m1及びm2は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R2a及びR2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、置換数m1及びm2が2以上である場合、同一の環に置換する2以上の基R2a及び2以上の基R2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。基R2a及びR2bの置換位置は、特に制限されず、オキセタン環含有基の置換位置以外の位置に置換していればよい。
基R3a及びR3bで表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基において、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状C2-6アルキレン基、好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基が挙げられ、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基、好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基、特にプロピレン基などが挙げられる。これらの基R3a及びR3bのうち、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基など)、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基であってもよい。なお、異なる環Z1及びZ2に置換したオキセタン環含有基において、基R3a及びR3bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
オキシアルキレン基(OR3a及びOR3b)の繰り返し数n1及びn2は、0以上の整数、例えば、0~20程度の整数の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~10の整数、1~10程度の整数、2~7程度の整数、3~5程度の整数であってもよい。また、繰り返し数n1及びn2のより好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~8程度の整数、0~5程度の整数、0~3程度の整数であって、より好ましくは0~2程度の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。n1及びn2が大きすぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。また、n1及びn2は、互いに同一又は異なっていてもよい。オキセタン環含有基において、繰り返し数n1及びn2が2以上である場合、2以上の基R3a及びR3bの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「オキシアルキレン基の繰り返し数」(及び後述する「オキシアルキレン基の合計数(合計付加数)」)とは、化合物1分子中におけるオキシアルキレン基の数(整数)、及び化合物の分子集合体におけるオキシアルキレン基の個数の平均値[すなわち、平均付加モル数]の双方を含む意味に用いる。そのため、繰り返し数n1及びn2は、前記式(1)で表される化合物の分子集合体における平均値(相加平均又は算術平均)であってもよく、その範囲は、前記整数の範囲と好ましい態様も含めて同等程度であってもよい。
また、繰り返し数n1及びn2の合計数は、前記式(1)で表される化合物1分子中のオキシアルキレン基の合計数(合計付加数)を意味し、単にn1+n2という場合がある。n1+n2は、例えば、0~40程度の整数の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~30の整数、1~20の整数、2~10の整数、4~6の整数であってもよい。また、より好ましい範囲としては、以下、段階的に、0~15の整数、0~8の整数、0~6の整数、0~4の整数であり、さらに好ましくは0~2の整数、特に0であってもよい。また、n1+n2は前記のように整数であってもよいが、前記式(1)で表される化合物の分子集合体における平均付加モル数であってもよく、その範囲は、例えば、前記整数の範囲と好ましい態様も含めて同等程度であってもよい。n1+n2の値が大きすぎると、硬化物の単位量(例えば、単位重量)当たりのビスアリールフルオレン骨格含有量(例えば、含有モル数)が低下するため、前記骨格に由来する高屈折率、高耐熱性などの優れた特性が低下するおそれがある。
なお、n1+n2は、慣用の方法で測定することができ、例えば、前記式(1)で表される化合物の調製において、原料となるビスアリールフルオレン骨格を有するヒドロキシ化合物の量と、反応で消費されるアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)の量との割合から、相加平均又は算術平均の値として算出する方法(例えば、国際公開第2013/022065号記載の方法など)などにより測定できる。
基R4a及びR4bは水素原子又は置換基であり、置換基としては、例えば、炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など);アリル基など};フッ素含有基[例えば、フッ素原子;フッ化アルキル基(トリフルオロメチル基などのC1-6フッ化アルキル基)などのフッ化炭化水素基など];ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基など)などが挙げられる。
好ましい基R4a及びR4bとしては、水素原子又は炭化水素基が挙げられる。このうち炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、C1-6アルキル基がより好ましく、C1-4アルキル基がさらに好ましく、特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。なお、基R4a及びR4bの種類は、互いに異なっていてもよく、通常、同一である。
オキセタン環含有基の置換位置は特に制限されず、環Z1及びZ2の適当な位置に置換でき、環Z1及びZ2がナフタレン環である場合には、対応するナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、環Ar1及びAr2の間に介在する前記5員環に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特に2,6位の関係)でオキセタン環含有基が置換している場合が多い。
前記式(1)で表されるオキセタン化合物として、例えば、(A)環Ar1及びAr2がベンゼン環である化合物、(B)環Ar1及びAr2のうち少なくとも一方がナフタレン環である化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの化合物のうち、(A)環Ar1及びAr2がベンゼン環である化合物が好ましい。
(A)環Ar1及びAr2がベンゼン環である化合物として代表的には、例えば、環Z1及びZ2がナフタレン環であるビスナフチルフルオレン類などが挙げられる。ビスナフチルフルオレン類として具体的には、例えば、(A1)前記式(1)において、n1及びn2が0である9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン類;(A2)n1及びn2が1以上[例えば、1~20であり、好ましい範囲としては、以下、段階的に、1~10、2~8、、3~5であってもよく、より好ましくは、以下、段階的に、1~6、1~4、1~3、1又は2、さらに好ましくは1]である9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ(ポリ)アルコキシ-ナフチル]フルオレン類などが挙げられる。
なお、前記(A1)及び(A2)は、前記式(1)におけるk1及びk2が1以上である化合物も含む。また、本明細書及び特許請求の範囲において、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
(A1)9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン類としては、例えば、前記式(1)において、m1及びm2が0、R4a及びR4bが水素原子である9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-((3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-((3-オキセタニル)メトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなど];前記式(1)において、m1及びm2が0、R4a及びR4bがアルキル基である9,9-ビス[(3-アルキル-3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[(3-C1-6アルキル-3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレンなど]などが挙げられる。
(A2)9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ(ポリ)アルコキシ-ナフチル]フルオレン類(すなわち、前記(A1)に例示の化合物に対応してn1及びn2が1以上である化合物)としては、例えば、前記式(1)において、m1及びm2が0、R4a及びR4bが水素原子である9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ(ポリ)アルコキシ-ナフチル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-(2-((3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-((3-オキセタニル)メトキシ)プロポキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-((3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-((3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ(モノ乃至イコサ)C2-6アルコキシ-ナフチル]フルオレンなど];前記式(1)において、m1及びm2が0、R4a及びR4bがアルキル基である9,9-ビス[(3-アルキル-3-オキセタニル)メトキシ(ポリ)アルコキシ-ナフチル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)プロポキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[(3-C1-6アルキル-3-オキセタニル)メトキシ(モノ乃至イコサ)C2-6アルコキシ-ナフチル]フルオレンなど)など}などが挙げられる。
これらの前記式(1)で表されるオキセタン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましいオキセタン化合物としては、前記(A1)9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン類、前記(A2)においてn1及びn2が1~3程度である9,9-ビス[(3-オキセタニル)メトキシ(モノ乃至トリ)アルコキシ-ナフチル]フルオレン類などが挙げられ、なかでも、9,9-ビス[(3-アルキル-3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[(3-アルキル-3-オキセタニル)メトキシ(モノ乃至ジ)C2-4アルコキシ-ナフチル]フルオレンが好ましく、より好ましくは9,9-ビス[(3-C1-4アルキル-3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[(3-C1-4アルキル-3-オキセタニル)メトキシ(モノ乃至ジ)C2-4アルコキシ-ナフチル]フルオレンであって、さらに好ましくは9,9-ビス[(3-C1-2アルキル-3-オキセタニル)メトキシ-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[(3-C1-2アルキル-3-オキセタニル)メトキシC2-3アルコキシ-ナフチル]フルオレンが挙げられ、特に好ましくは9,9-ビス[6-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-ナフチル]フルオレンが挙げられる。これらの中でも、9,9-ビス[(3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)-ナフチル]フルオレンが好ましく、特に、9,9-ビス[6-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)-2-ナフチル]フルオレンが好ましい。
本発明のオキセタン化合物は、高い屈折率及び耐熱性を有するとともに、取扱性(溶媒に対する溶解性)に優れている。
本発明のオキセタン化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば、1.6~1.7程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.67、1.635~1.665、1.64~1.66であって、より好ましくは1.64~1.65であってもよい。なお、屈折率は、後述の実施例に記載の方法などにより測定できる。
本発明のオキセタン化合物の10重量%減少温度は、例えば、300~500℃程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、350~450℃、370~440℃、380~440℃、400~430℃であって、より好ましくは410~420℃程度であってもよい。発熱ピーク温度は、例えば、350~450℃、好ましくは400~430℃、さらに好ましくは410~420℃であってもよい。なお、10重量%減少温度及び発熱ピーク温度は、後述の実施例に記載の方法などにより測定できる。
本発明のオキセタン化合物の融点は、従来のオキセタン化合物と比べて極めて高く、例えば、130~300℃程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、150~250℃、160~220℃であって、より好ましくは170~200℃、さらに好ましくは180~190℃であってもよい。なお、融点は、後述の実施例に記載の方法などにより測定できる。
本発明のオキセタン化合物は、溶媒に対する高い溶解性を有しており、種々の溶媒に溶解可能である。代表的な溶媒としては、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など);グリコールエーテル類[例えば、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1-4アルキルセロソルブなど)、カルビトール類(例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのC1-4アルキルカルビトールなど)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールジC1-4アルキルエーテルなど];グリコールエーテルアセテート類[例えば、セロソルブアセテート類(例えば、メチルセロソルブアセテートなどのC1-4アルキルセロソルブアセテートなど)、カルビトールアセテート類(例えば、メチルカルビトールアセテートなどのC1-4アルキルカルビトールアセテートなど)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルアセテートなど];ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などの鎖状ケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など);カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸など);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル、乳酸メチルなどの乳酸エステルなど);カーボネート類(例えば、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートなど);ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど);アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど);スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)など);ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど);芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど);及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
これらの溶媒のうち、極性溶媒、芳香族炭化水素類が好ましく、より好ましくはアミド類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテルアセテート類、ケトン類、ニトリル類、スルホキシド類、ハロゲン化炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくはN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド、酢酸C1-4アルキルエステル、C2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルアセテート、環状C4-10ケトン、C1-4ニトリル、ジC1-4アルキルスルホキシドが挙げられ、特に好ましくはDMF、酢酸エチル、酢酸ブチル、PGMEA、シクロヘキサノン、アセトニトリル、DMSOが挙げられる。また、これらの溶媒のうち、エーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類が好ましく、より好ましくは環状C4-6エーテル、鎖状C3-9ケトン、塩素化C1-6炭化水素類、モノ又はジC1-4アルキルベンゼンであって、特にTHF、1,4-ジオキサン、アセトン、MEK、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンが好ましい。
前記オキセタン化合物を含む溶液の濃度(溶液全体の重量に対する本発明のオキセタン化合物の重量の割合)は、特に制限されないが、室温(23℃程度)において、例えば、1重量%以上(例えば、3~70重量%)、好ましくは5重量%以上(例えば、7~60重量%)、さらに好ましくは9重量%以上(例えば、10~50重量%)であってもよい。前記オキセタン化合物の溶解性が高いため、高濃度であっても容易に溶解できる。
[オキセタン化合物の製造方法]
本発明のオキセタン化合物は、慣用の方法(例えば、特開2000-336082号公報記載の方法など)により調製してもよく、代表的には、例えば、下記式(1A)で表される化合物と、下記式(1B)で表される化合物とを反応させて調製する方法などであってもよい。
(式中、Ar1及びAr2、Z1及びZ2、R1a及びR1b、R2a及びR2b、R3a及びR3b、k1及びk2、m1及びm2並びにn1及びn2は、好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
(式中、Xはハロゲン原子、R4は水素原子又は置換基を示す)。
前記式(1A)で表される化合物として代表的には、例えば、前記式(1)で表されるオキセタン化合物として例示した化合物において、(3-オキセタニル)メチル基又は(3-アルキル-3-オキセタニル)メチル基を水素原子に置換したジヒドロキシ化合物などが挙げられ、好ましい態様も同様である。より具体的には、前記式(1A)において、環Ar1及びAr2がベンゼン環、環Z1及びZ2がナフタレン環である化合物(9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類など)などが例示できる。
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、m1及びm2が0である9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、m1及びm2が0である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至イコサ)C2-6アルコキシ-ナフチル]フルオレンなど]などが挙げられる。
これらの前記式(1A)で表される化合物のうち、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類、n1及びn2が1~3である9,9-ビス(ヒドロキシ(モノ乃至トリ)アルコキシナフチル)フルオレン類が好ましく、より好ましくは9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン、さらに好ましくは9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、特に、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンが好ましい。
前記式(1A)で表される化合物は、市販品を使用してもよく、慣用の方法[例えば、環Ar1及びAr2に対応するフルオレノン化合物(ベンゾフルオレノン類又はジベンゾフルオレノン類を含む)と、環Z1及びZ2に対応するフェノール又はアルコールとを、硫酸などの酸触媒、β-メルカプトプロピオン酸などの助触媒などの存在下で反応させる方法など]により調製してもよい。
前記式(1B)において、R4で表される水素原子又は置換基は、前記式(1)におけるR4a及びR4bと好ましい態様を含めて同様である。
前記式(1B)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、塩素であるのが好ましい。
前記式(1B)で表される化合物として具体的には、例えば、3-クロロメチル-オキセタンなどの3-ハロメチル-オキセタン;3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、3-クロロメチル-3-エチルオキセタンなどの3-ハロメチル-3-C1-6アルキルオキセタンなどが挙げられる。これらの前記式(1B)で表される化合物のうち、3-ハロメチル-3-C1-4アルキルオキセタンが好ましく、より好ましくは3-ハロメチル-3-C1-2アルキルオキセタン、特に3-クロロメチル-3-メチルオキセタンが好ましい。前記式(1B)で表される化合物は市販品などを使用できる。
前記式(1B)で表される化合物の割合は、前記式(1A)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.5~10モル程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、1~5モル、1~2モル、1.05~1.5モル、1.1~1.3モルであってもよい。前記式(1B)で表される化合物の割合が少なすぎると、反応速度が低下するおそれがあるが、本発明では、理由は定かではないものの、前記式(1B)で表される化合物の割合が比較的少量であっても効率よく反応が進行するようである。
反応は、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物の存在下で行ってもよい。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウムなど);アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど);アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などが挙げられる。
これらのアルカリ金属又はアルカリ金属化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのアルカリ金属又はアルカリ金属化合物のうち、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物などが汎用される。アルカリ金属又はアルカリ金属化合物の割合は、前記式(1A)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、1~2モル、好ましくは1.1~1.5モル、さらに好ましくは1.2~1.4モル程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど);エーテル類(ジブチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など);アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドンなど);スルホキシド類(ジメチルスルホキシド(DMSO)など);水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、DMFなどのアミド類が好ましい。溶媒の割合は、前記式(1A)で表される化合物100重量部に対して、例えば、100~1000重量部、好ましくは200~800重量部、さらに好ましくは400~600重量部程度であってもよい。
反応は、反応促進剤の存在下で行ってもよい。反応促進剤としては、例えば、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属ヨウ化物などが挙げられる。反応促進剤の割合は、前記式(1A)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.001~0.5モル、好ましくは0.01~0.1モル、より好ましくは0.02~0.08モル、さらに好ましくは0.04~0.06モル程度であってもよい。
反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、第四級アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムブロミドなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのアラルキルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、第四級ホスホニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミドなどのトリアルキルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムブロミドなどのテトラアリールホスホニウムハライドなど)、クラウンエーテルなどが挙げられる。
これらの相間移動触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの相間移動触媒のうち、第四級アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムブロミドなどのテトラアルキルアンモニウムハライド)などが汎用される。相間移動触媒の割合は、前記式(1A)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.01~0.5モル、好ましくは0.02~0.2モル、さらに好ましくは0.04~0.15モル程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性ガス(例えば、窒素;アルゴン、ヘリウムなどの希ガスなど)中で行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。反応温度は、例えば、50~150℃、好ましくは70~120℃程度であってもよい。反応時間は特に制限されず、例えば、1~12時間、好ましくは5~7時間程度であってもよい。反応終了後、反応生成物は、洗浄、抽出、濃縮、ろ過、再沈殿、遠心分離、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段や、これらを組み合わせた方法により、分離精製してもよい。
[硬化性組成物]
(他のカチオン重合性化合物)
本発明の硬化性組成物は、前記式(1)で表されるオキセタン化合物を少なくとも含んでいればよく、必ずしも必要ではないが、前記式(1)で表されるオキセタン化合物以外の他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環含有化合物[例えば、(3-エチル-3-オキセタニル)メタノールなどの単官能性オキセタン化合物;p-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼンなどの多官能性オキセタン化合物など];慣用のエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂など);ビニルエーテル基含有化合物(例えば、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノビニルエーテル;トリエチレングリコールジビニルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールジビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのビス(ビニルオキシアルキル)シクロアルカンなど)などが挙げられる。
硬化性組成物における前記式(1)で表されるオキセタン化合物の割合は、カチオン重合性化合物全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択でき、例えば、50重量%以上(例えば、50~99重量%)、好ましくは70重量%以上(例えば、70~97重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、90~95重量%)であってもよく、実質的に100重量%(他のカチオン重合性化合物を含まない態様)であってもよい。
(酸発生剤)
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤(又は硬化剤)として、慣用の酸発生剤を含んでいてもよい。酸発生剤としては、光により酸を発生する光酸発生剤、熱により酸を発生する熱酸発生剤などが挙げられる。
光酸発生剤としては、例えば、イミジルスルホネート化合物、チオキサントンオキシムエステル化合物、オニウム塩(トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩など)、メタロセン錯体、スルホンイミド化合物、ジスルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、トリアジン化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物などが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、オニウム塩[例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩(アリールヨードニウム塩など)、スルホニウム塩(アリールスルホニウム塩など)、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩など]、スルホン酸エステル化合物(オキシムエステル、アルキルエステル、トシラート化合物(ベンゾイントシラート、2-ニトロベンジルトシラートなど)など)、シクロヘキサジエノン化合物(2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノンなど)、ジシアンジアミド化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体化合物(モノエチルアミン錯体、イミダゾール錯体、ピペリジン錯体など)、アルミニウムキレート錯体化合物(ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)など)などが挙げられる。
これらの酸発生剤は、光及び熱のいずれの作用によっても酸を発生できる場合がある。また、これらの酸発生剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの酸発生剤のうち、スルホニウム塩などのオニウム塩が好ましい。
前記オニウム塩の対アニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-などが挙げられる。また、スルホニウム塩としては、例えば、三新化学工業(株)製「サンエイドSI-60」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110」、「サンエイドSI-150」、「サンエイドSI-180」などが挙げられる。
酸発生剤の割合は、カチオン重合性化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.01~30重量部程度の範囲から選択できる。好ましい範囲としては、以下、段階的に、0.05~20重量部、0.1~10重量部、0.3~5重量部、0.5~2重量部であって、より好ましくは0.8~1.2重量部である。
(溶媒)
本発明の硬化性組成物は、取り扱い性や塗工性を向上できる点から、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、前述の[オキセタン化合物及びその特性]の項に記載の前記式(1)で表される化合物を溶解可能な溶媒と同様の溶媒などが挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、アミド類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテルアセテート類、ケトン類、ニトリル類、スルホキシド類、ハロゲン化炭化水素類などの極性溶媒、芳香族炭化水素類などが好ましく、なかでも酢酸ブチルなどのエステル類が好ましい。
溶媒の割合は特に制限されず、代表的には、カチオン重合性化合物の総量100重量部に対して、例えば、100~10000重量部、好ましくは150~1000重量部、さらに好ましくは180~250重量部であってもよい。
(他の添加剤)
本発明の硬化性組成物は、さらに慣用の他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、増感剤(クマリン類、キノリン類、キノン類、フェノキサジン類、芳香族炭化水素類(ピレン類など)、アミン類など)、反応性ポリマー(フェノール系樹脂などのオキセタニル基に対する反応性基を有するポリマーなど)、着色剤(染顔料)、増粘剤、安定剤(老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、消泡剤、レベリング剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤(シリカなど)、導電剤、滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の割合は、添加剤の種類に応じて適宜選択できるが、例えば、カチオン重合性化合物の総量100重量部に対して、100重量部以下、例えば、0.1~50重量部、好ましくは0.3~30重量部、さらに好ましくは0.5~20重量部である。
硬化性組成物は、カチオン重合性化合物、及び必要に応じて他の成分(酸発生剤、慣用の添加剤など)を配合し、必要に応じて溶媒又は分散剤により、溶解、分散及び混合などで均一に混合することによって得られる。
[硬化物及びその製造方法]
本発明では、前記硬化性組成物に光照射処理及び/又は加熱処理して硬化物を形成する硬化工程を含む製造方法により硬化物(三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどの一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物など)を製造してもよい。
光照射処理における光の波長は、酸発生剤の種類に応じて適宜選択してもよく、紫外光線又は可視光線などであってもよい。光の照射光量(露光量)は、硬化性組成物(塗膜)の厚みなどに応じて選択でき、例えば、10mJ/cm2以上(例えば、10~10000mJ/cm2)、好ましくは100~5000mJ/cm2、さらに好ましくは500~3000mJ/cm2であってもよい。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、レーザー光(LEDレーザーなど)などが利用できる。硬化性組成物の硬化を促進するために、光照射処理のみならず、加熱処理を行ってもよい。
加熱処理における温度及び時間は、酸発生剤の種類に応じて適宜選択でき、加熱温度としては、例えば、80~200℃、好ましくは90~180℃、より好ましくは100~150℃、さらに好ましくは110~130℃であってもよい。加熱時間は、例えば、5秒~10時間、好ましくは30分~5時間、さらに好ましくは1~3時間であってもよい。硬化性組成物が溶媒を含む場合、溶媒を除去するために、硬化物形成後、さらに加熱処理してもよい。
また、本発明のオキセタン化合物は溶剤溶解性が高く、取り扱い性に優れた硬化性組成物を形成できるため、硬化物は、前記硬化性組成物を基材上に塗布して均質な塗膜を形成した後、前記硬化工程を経て形成してもよい。
塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などであってもよい。塗膜の厚みは、特に制限されず、硬化物の用途に応じて、通常、0.01μm~10mm程度の範囲から選択できる。
基材の材質は、特に制限されず、用途に応じて選択され、例えば、半導体(シリコンなど)、金属(アルミニウム、銅など)、セラミック(酸化ジルコニウムなど)、透明無機材料(ガラス、石英など)、透明樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなど)などであってもよい。
このようにして得られる硬化物は、高い光学的特性(高屈折率など)、高い耐熱性(融点、10重量%減少温度など)、及び高い耐溶剤性(耐溶剤膨潤性、外観保持性など)を有するため、例えば、フォトレジスト、プリント配線基板、光学薄膜(液晶ディスプレイなどの反射防止膜の高屈折率層、反射板など)などとして好適に利用してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、使用した原料を下記に示す。
[原料]
BNF:9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BNEF:9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BisA:ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン]、東京化成工業(株)製
3-クロロメチル-3-メチルオキセタン:東京化成工業(株)製。
[実施例1]
BNF(91g、202mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(455g)に溶解し、次いで、炭酸カリウム(東京化成工業(株)製)(72.6g、525mmol)、ヨウ化カリウム(KI、関東化学(株)製)(3.35g、20.2mmol)を添加して60℃で撹拌した。この溶液に、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン(58.8g、487mmol)を60℃で滴下し、滴下終了後、80℃に昇温して5時間反応させ、さらに、100℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後、水1.4Lを添加し、酢酸エチル300gによる抽出を3回行った。さらに、水300gによる洗浄を6回行い、得られた有機相(酢酸エチル相)を減圧濃縮して、122g(収率97.6%)の化合物を淡橙色結晶の形態で得た。
得られた化合物を1H NMR[測定装置:BRUKER社製「ULTRA SHIELD(登録商標)300」、溶媒:重クロロホルム(CDCl3)、標準物質:テトラメチルシラン(TMS);以下同じ。]により分析したところ、9,9-ビス[6-(3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ-2-ナフチル]フルオレン(下記式(1a)で表される化合物、以下、単にBNFOともいう。)であった。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.47(s、6H)、4.12(s、4H)、4.48(d、J=5.9Hz、4H)、4.67(d、J=5.9Hz、4H)、7.09-7.12(m、4H)、7.30(dd、J=1.1、7.5Hz、2H)、7.38(dt、J=1.5、7.1Hz、4H)、7.50-7.54(m、6H)、7.63(d、J=8.7Hz、2H)、7.82(d、J=7.35Hz、2H)。
[比較例1]
BisA(34.1g、150mmol)をDMF(388g)に溶解し、次いで、炭酸カリウム(53.9g、390mmol)、KI(2.47g、15mmol)を添加して60℃で撹拌した。この溶液に、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン(49.76g、413mmol)を60℃で滴下し、滴下終了後、80℃に昇温して5時間反応させ、さらに、100℃に昇温して7時間反応させた。反応終了後、水1Lを添加し、酢酸エチル300gによる抽出を3回行った。さらに、水300gによる洗浄を6回行った。得られた有機相(酢酸エチル相)の減圧濃縮を試みたところ、目的物の溶解性が低いためか、白色結晶が析出したため、60℃から室温(25℃程度)まで温度を低下させ、室温で終夜撹拌した後、吸引ろ過により43.0g(収率72.3%)の固体を得た。
得られた化合物を1H NMRにより分析したところ、2,2-ビス[4-(3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ-フェニル]プロパン(下記式で表される化合物、以下、単にBisAOともいう。)であった。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.42(s、6H)、1.64(s、6H)、3.99(s、4H)、4.44(d、J=5.9Hz、4H)、4.62(d、J=5.9Hz、4H)、6.83(d、J=8.8Hz、4H)、7.15(d、J=8.8Hz、4H)。
[比較例2]
BCF(28.4g、75mmol)をDMF(168g)に溶解し、次いで、炭酸カリウム(26.3g、190mmol)、KI(1.28g、7.7mmol)を添加して60℃で撹拌した。この溶液に、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン(24.87g、206mmol)を60℃で滴下し、滴下終了後、80℃に昇温して5時間反応させ、さらに、100℃に昇温して8時間反応させた。反応終了後、水525mLを添加し、酢酸エチル112gによる抽出を3回行った。さらに、水100gによる洗浄を6回行い、得られた有機相(酢酸エチル相)を減圧濃縮して、39.2g(収率95.7%)の化合物を淡橙色結晶の形態で得た。
得られた化合物を1H NMRにより分析したところ、9,9-ビス[4-(3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ-3-メチルフェニル]フルオレン(下記式で表される化合物、以下、単にBCFOともいう。)であった。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.42(s、6H)、2.12(s、6H)、3.96(s、4H)、4.44(d、J=5.9Hz、4H)、4.62(d、J=5.8Hz、4H)、6.67(d、J=8.2Hz、2H)、6.98(d、J=7.7Hz、4H)、7.23-7.40(m、6H)、7.75(d、J=7.3Hz、2H)。
[実施例2]
60%NaH[水素化ナトリウム(流動パラフィン分散液、NaH濃度60重量%)、東京化成工業(株)製、16.3g、408mmol]を添加したDMF500mlに、BNEF(100g、186mmol)を添加した。その後、テトラメチルアンモニウムブロミド(TMAB、東京化成工業(株)製、5.7g、37.0mmol)、KI(6.2g、37.7mmol)を添加した。さらに、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン(62.7g、520mmol)を23℃で滴下した。その後、65℃まで昇温して5時間反応させた。反応液を冷却後、酢酸エチル500mlで希釈した。さらに、水750mlを添加してクエンチした後、酢酸エチル500mlで抽出した。水200mlで5回洗浄した後、有機層を減圧濃縮し、淡黄色でアモルファス状(又は不定形状)粗体143gを得た。
得られた粗体143gを、60%NaH(1.8g、45.0mmol)を添加したDMF500mlに添加した。その後、TMAB(0.2g、1.3mmol)、KI(200mg、1.2mmol)を添加した。さらに、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン(38.0g、315mmol)を23℃で滴下した。その後、55℃まで昇温して5時間反応させた。反応液を冷却後、酢酸エチル500mlで希釈した。さらに、水750mlを添加してクエンチした後、酢酸エチル500mlで抽出した。水200mlで5回洗浄した後、有機層を減圧濃縮し、さらに、100℃で乾燥して水あめ状の液体を得た。この水あめ状の液体を水に分散させて得られた結晶を回収し、70℃で乾燥して淡黄色結晶124g(収率94.5%)を得た。
得られた化合物を1H NMRにより分析したところ、9,9-ビス[6-(2-((3-メチル-3-オキセタニル)メトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(下記式(1b)で表される化合物、以下、単にBNEFOともいう。)であった。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)1.33(s、6H)、3.64(s、4H)、3.90(t、J=4.8Hz、4H)、4.23(t、J=4.8Hz、4H)、4.36(d、J=5.7Hz、4H)、4.53(d、J=5.7Hz、4H)、7.08-7.10(m、4H)、7.30(d、J=7.4Hz、2H)、7.39(t、J=7.0Hz、4H)、7.50-7.55(m、6H)、7.62(d、J=8.7Hz、2H)、7.82(d、J=7.5Hz、2H)。
[特性評価]
(屈折率)
実施例及び比較例で得られた各オキセタン化合物について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR-M2<循環式恒温水槽60-C3>)を使用して、温度25℃、589nmにおける屈折率を測定した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例では、比較例に比べて、高い屈折率を有している。
(耐熱性)
(1)融点
BUCHI社製「Melting point M-565」を使用して、実施例及び比較例で得られた各オキセタン化合物の融点を測定した。結果を表2に示す。
(2)重量減少温度
実施例及び比較例で得られた各オキセタン化合物について、熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)(現(株)日立ハイテクサイエンス)製「TG/DTA6200」]を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下で、試料の重量が10重量%減少した温度、並びに試料の発熱量が最大になる温度(発熱ピーク)及び試料の吸熱量が最大になる温度(吸熱ピーク又は融点)を測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例では比較例に比べて融点及び10重量%減少温度が高く、耐熱性に優れている。
特に、実施例1及び比較例2の融点を比べると59℃も向上しており、原料であるBNF[融点220℃又は236℃(結晶形により異なる)]及びBCF(融点218.5℃)の融点の差(1.5~17.5℃)から予想される値よりも、意外なことに顕著に向上した。
(溶剤溶解性)
(1)各オキセタン化合物の溶解性比較
実施例及び比較例で得られた各オキセタン化合物0.5gに対して、表3に記載の溶媒5gを室温(23℃程度)で添加し、各溶媒に対する溶解性を目視により以下の基準で評価した。なお、酢酸ブチルについては、各オキセタン化合物5gに対して、10gの酢酸ブチルを添加することにより評価した。結果を表3に示す。
○:すぐに溶解する
×:溶解しない(白濁する)。
(2)BNFOの溶解性確認
実施例1で得られたBNFO 0.5gに対して、表4に記載の溶媒5gを室温(23℃程度)で添加し、各溶媒に対する溶解性を目視により以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
◎:すぐに溶解する(○評価よりも早く溶解する)
○:徐々に溶解し、最終的には完全に溶解する
△:溶解するが、一部が不溶物として溶け残る
×:溶解しない。
表3及び4から明らかなように、フルオレン骨格を有する実施例1では、ビスフェノールA骨格を有する比較例1に比べて、溶解性が優れていた。また、実施例1は、溶解性の低下が予想される縮合多環式アレーン骨格であるナフタレン骨格を含むにも拘らず、比較例2と比べて、意外にも溶解性の差が見られなかった。しかも、実施例1で調製したBNFOは、多種の溶媒に対して優れた溶解性を示した。なお、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルについては、BNFOの濃度が50重量%、33重量%となる割合で溶液を調製しても溶解可能であることも確認した。
(硬化物の耐溶剤性)
実施例及び比較例で得られた各オキセタン化合物の硬化物を作製して、得られた硬化物の耐溶剤性を後述する(1)~(3)に記載の方法により評価した。なお、硬化物は以下の方法により作製した。
実施例及び比較例で得られたオキセタン化合物各5gに、BtOAc(沸点126℃)10gを加え、溶液(実施例1及び比較例2)又は懸濁液(分散液)[比較例1]を調製した。得られた各溶液又は懸濁液に、硬化剤(熱酸発生剤)として、三新化学工業(株)製「サンエイドSI-100L」(固形分48重量%)100mgを加えて撹拌し、硬化性組成物を調製した。得られた各硬化性組成物をアルミパンにのせて、乾燥機を用いて120℃で2時間加熱した。各硬化性組成物が硬化したのを確認し、残留溶媒を留去するために、真空ポンプを用いて120℃で2時間乾燥して各硬化物を調製した。
(1)高温環境下における耐溶剤性
得られた各硬化物を乳鉢を用いて粉砕した。粉砕した各硬化物0.2gに対して、10gのテトラヒドロフラン(THF)を添加し、撹拌しながら24時間浸漬した。浸漬温度は、60℃で8時間、室温(20℃程度)で16時間とした。
実施例1では溶剤(THF)が透明であるのに対して、比較例1及び2では白濁した。これは、比較例1及び2の硬化物が劣化(又は部分的に溶解)したことで、THF中に分散したためと考えられる。
(2)溶剤浸漬後の膨潤度合
得られた各硬化物の試験片(粉砕前の破片)に対して、10倍重量のTHFを加えて、室温(20℃程度)で18時間浸漬させた。浸漬前後の試験片の重量を測定して、下記式により、重量変化率を算出した。結果を表5に示す。
(重量変化率)=[(浸漬後重量)-(浸漬前重量)]/(浸漬前重量)
表5から明らかなように、比較例では重量変化率が高く、膨潤が確認されるのに対して、実施例の重量変化率は極めて低く、ほとんど膨潤は確認されなかった。
(3)溶剤浸漬後の外観
前記(2)溶剤浸漬後の膨潤度合の試験において、浸漬前後の各試験片の外観を確認したところ、実施例1の硬化物は浸漬前後で変化がなかったのに対して、比較例1の硬化物では浸漬後の試験片の中央に大きな欠けが確認された。また、比較例2の硬化物では浸漬後の試験片の表面にひび割れが見られるのみならず、試験片自体も割れてしまった。