[式(1)で表されるフルオレン化合物(またはジオール化合物)]
前記式(1)において、1価の基Y1aおよびY1bを表す前記式(Y1)中のZ1で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
好ましい環Z1としては、C6-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にナフタレン環である。なお、Z1が多環式アレーン環、特にナフタレン環などの縮合多環式アレーン環であると、屈折率や耐熱性を有効に向上し易いのみならず、低い融解温度、さらには高い溶解性(相溶性)を示す場合もあり好ましい。
また、1価の基Y1aおよびY1bにおける環Z1は、それぞれフルオレン骨格の1~4位、5~8位のいずれの位置に置換していてもよいが、2位、3位および/または7位などが挙げられる。Y1aおよびY1bの置換数k1aおよびk1bが1である場合、好ましい置換位置(または結合位置)としては、1,8-位、2,7-位、3,6-位、4,5-位などの前記式(1)において紙面上で左右対称な位置であり、特に2,7-位が好ましい。
なお、フルオレン骨格に対する環Z1上の結合位置は、環Z1がナフタレン環である場合、ナフタレン環の1位または2位のいずれであってもよく、ナフタレン環の2位であるのが好ましい。
R1で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基(または基[-Rh])、基[-ORh](式中、Rhは前記炭化水素基を示す)、基[-SRh](式中、Rhは前記炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基、モノまたはジ置換アミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記Rhで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
前記基[-ORh]としては、例えば、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rhの例示に対応する基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
前記基[-SRh]としては、例えば、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rhの例示に対応する基が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基(フェニルチオ基)などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
モノまたはジ置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
これらの基R1のうち、代表的な基としては、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。m1が1以上である場合、好ましい基R1としては、アルキル基、アルコキシ基であり、具体的には、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられ、なかでも、アルキル基、特にメチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基が好ましい。なお、基R1がアリール基であるとき、基R1は環Z1とともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。
置換数m1は、環Z1の種類に応じて選択してもよく、例えば0~7程度の整数から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、特に0である。
なお、置換数m1が2以上である場合、環Z1に置換する2以上の基R1の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、基R1の置換位置は特に制限されず、環Z1の種類に応じて選択してもよい。
前記式(Y1)で表される代表的な1価の基Y1a、Y1bとしては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などのナフチル基、ビフェニリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、ナフチル基がさらに好ましく、特に2-ナフチル基が好ましい。
1価の基Y1a、Y1bの置換数k1a、k1bは、例えば0~3程度の整数であり、好ましくは0~2、より好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。k1aおよびk1bは互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。k1aおよびk1bのうち、少なくとも一方は1以上の整数であり、好ましくは双方が1以上の整数であり、さらに好ましくは双方が1である。
なお、k1aおよびk1bがそれぞれ1以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、異なるベンゼン環に置換する基Y1aおよびY1bの種類は、互いに異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。また、k1a、k1bが2以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上の基Y1a、Y1bの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。
R2a、R2bで表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)は、前記基Y1a、Y1b以外の置換基であればよく、代表的な基としては、アルキル基などの炭化水素基(ただし、アリール基を除く)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。置換数m2a、m2bが1以上である場合、好ましいR2a、R2bとしては、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基である。
R2aおよびR2bの置換数m2aおよびm2bとしては、例えば、0~3程度の整数であり、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1であり、特に0である。m2aおよびm2bは互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。なお、m2aおよびm2bがそれぞれ1以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、異なるベンゼン環に置換するR2aおよびR2bの種類は、互いに異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。また、m2a、m2bが2以上である場合、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上のR2a、R2bの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。なお、R2aおよびR2bの置換位置は特に制限されず、基Y1a、Y1bの置換位置以外の位置に置換していればよい。
フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環における置換数の各合計値k1a+m2a、k1b+m2bは、それぞれ、例えば0~4の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。合計値k1a+m2aとk1b+m2bとは互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
フルオレン骨格の9,9-位に結合する1価の基(またはヒドロキシル基含有基)Y2aおよびY2bを示す前記式(Y2)中のZ2で表される多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環、環集合アレーン環などが挙げられる。縮合多環式アレーン環、環集合アレーン環としては、前述の式(Y1)におけるZ1と好ましい態様を含めて同様の縮合多環式アレーン環、環集合アレーン環などが挙げられる。
好ましい環Z2としては、C10-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはナフタレン環、ビフェニル環などのC10-12アレーン環、さらに好ましくはナフタレン環である。
なお、フルオレン骨格の9位に対する環Z2上の結合位置は、環Z2がナフタレン環である場合、ナフタレン環の1位または2位のいずれであってもよく、ナフタレン環の2位であるのが好ましく、環Z2がビフェニル環である場合、ビフェニル環の3位であるのが好ましい。
R3で表される置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)としては、前述の式(Y1)におけるR1と同様の基などが挙げられる。置換数m3が1以上の場合、好ましい置換基R3としては、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられ、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、さらに好ましくはメチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、フェニル基などのC6-14アリール基、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられる。これらのなかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、特にメチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が好ましい。なお、基R3がアリール基であるとき、基R3は、環Z2とともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。
基R3の置換数m3は、0または1以上の整数であればよく、環Z2の種類に応じて適宜選択でき、例えば、0~6程度の整数であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、0または1がさらに好ましく、特に0が好ましい。なお、m3が2以上である場合、2以上の基R3の種類は互いに同一または異なっていてもよい。特にm3が1である場合、環Z2がナフタレン環またはビフェニル環、基R3がメチル基であってもよい。また、基R3の置換位置は特に制限されず、環Z2と、基[-O-(A1O)n1-H]およびフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよく、環Z2において、基[-O-(A1O)n1-H]に対してオルト位(基[-O-(A1O)n1-H]の結合位置に隣接する炭素原子)に置換することが多い。
アルキレン基A1としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられ、繰り返し数n1が1以上である場合、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基であり、特にエチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基(-A1O-)の繰り返し数(付加モル数)n1は、0または1以上であればよく、例えば0~15程度の整数の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~10、0~8、0~6、0~4、0~2、0~1である。また、繰り返し数n1は、重合反応性などを向上できる点から、1以上であってもよく、例えば1~15程度の整数の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~10、1~8、1~6、1~4、1~3、1~2であり、特に1であるのが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、上記好ましい範囲(上記整数の範囲)と同様である。繰り返し数n1が大きすぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。
n1が2以上である場合、2以上のオキシアルキレン基(-A1O-)の種類は、互いに異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。
基[-O-(A1O)n1-H]の環Z2に対する置換位置は、環Z2がナフタレン環である場合、フルオレン環の9位に結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換してもよく、例えば、フルオレン環の9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して1,5-位、2,6-位などの関係が好ましく、特に2,6-位の関係で置換するのが好ましい。また、環Z2が環集合アレーン環である場合、フルオレンの9位に結合するアレーン環またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換してもよく、フルオレンの9位に結合するアレーン環に置換するのが好ましい。例えば、環Z2がビフェニル環の場合、ビフェニル環の3位(3-ビフェニリル基)がフルオレンの9位に結合し、このビフェニル環(3-ビフェニリル基)の6位に基[-O-(A1O)n1-H]が置換するのが好ましい。
前記式(Y2)で表される1価の基(またはヒドロキシル基含有基)Y2aおよびY2bの代表的な基としては、n1が0であるヒドロキシ多環式アリール基、n1が1以上であるヒドロキシ(ポリ)アルコキシ多環式アリール基などが挙げられる。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基、ポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
前記ヒドロキシ多環式アリール基としては、例えば、ヒドロキシ縮合多環式アリール基、ヒドロキシ環集合アリール基などが挙げられる。
ヒドロキシ縮合多環式アリール基としては、例えば、ヒドロキシナフチル基などのヒドロキシC10-14縮合多環式アリール基などが挙げられ、具体的なヒドロキシナフチル基としては、6-ヒドロキシ-2-ナフチル基、5-ヒドロキシ-1-ナフチル基などが挙げられ、6-ヒドロキシ-2-ナフチル基が好ましい。
ヒドロキシ環集合アリール基としては、例えば、ヒドロキシビフェニリル基(またはフェニル-ヒドロキシフェニル基)などのヒドロキシC12-16環集合アリール基などが挙げられ、具体的なヒドロキシビフェニリル基としては、6-ヒドロキシ-3-ビフェニリル基(または4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル基)などが挙げられる。
前記ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ多環式アリール基としては、例えば、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アリール基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ環集合アリール基などが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アリール基としては、例えば、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル基などのヒドロキシ(ポリ)アルコキシC10-14縮合多環式アリール基などが挙げられ、具体的なヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル基としては、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル基、6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル基、6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル基などの6-(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-2-ナフチル基;5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル基などの5-(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-1-ナフチル基などが挙げられ、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル基などの6-(モノないしヘキサ)C2-3アルコキシ-2-ナフチル基が好ましい。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ環集合アリール基としては、例えば、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシビフェニリル基[またはフェニル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基]などのヒドロキシ(ポリ)アルコキシC12-16環集合アリール基などが挙げられ、具体的なヒドロキシ(ポリ)アルコキシビフェニリル基としては、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-ビフェニリル基[または4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル基]、6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-ビフェニリル基などの6-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-3-ビフェニリル基などが挙げられる。
これらの1価の基(またはヒドロキシル基含有基)Y2aおよびY2bのうち、Z2が縮合多環式アレーン環であるヒドロキシ縮合多環式アリール基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アリール基が好ましく;Z2がナフタレン環であるヒドロキシナフチル基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル基がより好ましく;6-ヒドロキシ-2-ナフチル基、6-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-2-ナフチル基がさらに好ましく;なかでも6-ヒドロキシ-2-ナフチル基、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル基などの6-ヒドロキシ(モノないしヘキサ)C2-3アルコキシ-2-ナフチル基が好ましく;特に6-ヒドロキシ-2-ナフチル基が好ましい。
Y2aおよびY2bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。Y2aおよびY2bの種類が互いに異なる場合、Y2aおよびY2bにおけるZ2、R3、m3、A1の種類およびこれらの置換位置がそれぞれ同じで、繰り返し数n1のみが異なっていてもよい。好ましくはY2aおよびY2bの種類は同一である。
前記式(1)で表される代表的なフルオレン化合物としては、k1aおよびk1bが1であり、Y1aおよびY1bにおける環Z1が同一であり、Y2aおよびY2bにおける環Z2が同一である化合物などが挙げられる。このようなフルオレン化合物としては、例えば、Y1aおよびY1bにおける環Z1がベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、好ましくはナフタレン環であり、かつY2aおよびY2bにおける環Z2がナフタレン環またはビフェニル環、好ましくはナフタレン環である化合物などが挙げられる。なお、このようなフルオレン化合物において、m1、m2a、m2bおよびm3は0であってもよく、n1は0または1以上であってもよい。このようなフルオレン化合物のなかでも、Z1がナフタレン環であり、かつZ2がナフタレン環である化合物が好ましい。
前記Z1がナフタレン環であり、Z2がナフタレン環である化合物(すなわち、k1aおよびk1bが1であり、Y1aおよびY1bにおける環Z1がナフタレン環であり、Y2aおよびY2bにおける環Z2がナフタレン環である化合物)としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)-ジナフチルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]-ジナフチルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフチル]-2,7-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
これらのフルオレン化合物のうち、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンが好ましく、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンがさらに好ましい。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、高い屈折率を有している。前記フルオレン化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば1.75~1.85程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.76~1.82、1.77~1.81、1.78~1.8である。
また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、高い耐熱性を備えている。前記フルオレン化合物の5%質量減少温度は、例えば350~500℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、400~480℃、420~470℃、430~460℃、440~450℃である。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、高い5%質量減少温度を示すにも拘らず、意外にも低い融解温度(溶融温度)を有しており、融解開始温度は、例えば、100~250℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、120~230℃、150~210℃、160~200℃、170~190℃である。また、融解終了温度は、例えば、130~280℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、150~260℃、180~250℃、200~240℃、210~230℃である。そのため、溶融重合するためのモノマー成分や、樹脂と溶融混練などで混合して樹脂添加剤(樹脂改質剤)として用いることもできる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の屈折率および5%質量減少温度および融解温度(溶融温度)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、溶解性(相溶性)にも優れており、溶媒および/または樹脂などの有機化合物とともに均一な組成物を容易にまたは効率よく形成することもできる。また、前記組成物は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を高濃度で溶解(相溶)しても溶解(相溶)後に析出し難く、さらには溶解(相溶)後に低温環境下におかれても析出し難く、安定して溶解(相溶)状態を保持でき、保存安定性(溶液安定性または低温安定性)にも優れている。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物と組成物を形成するための前記溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類など;メタノール、エタノール、n-プロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなどの芳香族エーテル類など;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの鎖状ケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル類、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類など;エーテルエステル類、具体的には、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、3-エトキシプロピオン酸エチルなどのアルコキシカルボン酸エステル類など;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などであってもよい。
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、エーテルエステル類であってもよく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましく、PGMEAなどのC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル-アセテート類が好ましい。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物と溶媒とを含む組成物(液状組成物または溶液)を形成する場合、前記フルオレン化合物の割合は、組成物全体に対して、例えば1~80質量%、好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%、特に30~50質量%である。
前記組成物は、さらに、他の反応成分や触媒などを含む反応溶液(反応混合物)としてもよく、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物をモノマーとして溶液重合するための反応溶液などとしてもよい。
[式(1)で表されるフルオレン化合物(ジオール化合物)の製造方法]
(反応工程)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、例えば、下記反応工程式(第1の反応工程式)に従って調製してもよい。
(式中、X1aおよびX2aならびにX1bおよびX2bは、それぞれ独立して、カップリング反応により炭素-炭素結合(または直接結合)を形成可能な一対の反応性基を示し、
Y1aおよびY1b、k1aおよびk1b、R2aおよびR2b、m2aおよびm2b、ならびにY2aおよびY2bは好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
(第1の反応工程式における式(2)で表される化合物の調製)
前記式(2)で表される化合物は、前記式(4)で表される化合物と、前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物とを反応させることで調製でき、例えば、特開2011-68624号公報、特開2020-75904号公報などに記載の方法に準じて調製してもよい。
前記式(4)において、X1aおよびX1bとしては、後述するカップリング反応(式(2)で表される化合物と、式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物との反応)の項に記載の反応性基などが挙げられる。
前記式(4)で表される化合物としては、例えば、2,7-ジブロモ-9-フルオレノンなどのジハロ-9-フルオレノンなどが挙げられる。前記式(4)で表される化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよいが、単独で用いるのが好ましい。前記式(4)で表される好ましい化合物は、2,7-ジブロモ-9-フルオレノンなどの2,7-ジハロ-9-フルオレノンである。
前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物は、前記1価の基(ヒドロキシル基含有基)Y2aおよびY2bに対応するヒドロキシ多環式アレーン類(n1=0に対応する化合物)またはヒドロキシ(ポリ)アルコキシ多環式アレーン類(n1≧1に対応する化合物)であり、好ましい態様も前記Y2aおよびY2bに対応して同様である。具体的なヒドロキシ多環式アレーン類としては、1-ナフトール、2-ナフトールなどのナフトール、2-ヒドロキシビフェニルなどのヒドロキシビフェニルなどが挙げられ、具体的なヒドロキシ(ポリ)アルコキシ多環式アレーン類としては、1-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2-(2-ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ナフタレンなどのヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフタレン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニルなどのヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ビフェニルなどが挙げられる。これらの前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよいが、単独で用いるのが好ましい。なお、前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物は同一化合物であるのが好ましい。これらの前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物のうち、2-ナフトールなどのナフトール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレンなどのヒドロキシ(モノないしヘキサ)C2-3アルコキシ-ナフタレンが好ましい。
前記式(4)で表される化合物と、前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物の合計量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/10程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/2.2~1/5、1/2.5~1/4、1/2.7~1/3.3である。
反応は酸触媒の存在下で行ってもよい。酸触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。無機酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、リン酸などが挙げられる。無機酸は水溶液の形態、例えば、塩酸などであってもよい。有機酸としては、例えば、スルホン酸などが挙げられ、スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの(ハロ)アルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。固体酸としては、例えば、無機固体酸、具体的には、金属酸化物、複合金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、ポリ酸などの金属化合物、非金属硫酸塩、粘土鉱物、ゼオライト、カオリンなど;有機固体酸、具体的には、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などの陽イオン交換樹脂が挙げられる。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、デュポン社製のナフィオンなどのスルホン酸基を有するイオン交換樹脂などが挙げられる。弱酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸-ジビニルベンゼンコポリマーなどのカルボン酸基を有するイオン交換樹脂などが挙げられる。
これらの酸触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい酸触媒は、硫酸などの無機酸、陽イオン交換樹脂であり、反応の進行により生成する水の脱水剤としても作用する点から、硫酸、特に、濃硫酸が好ましい。
前記硫酸には、例えば、濃度30~90質量%程度の希硫酸、濃度90質量%以上の濃硫酸、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。硫酸としては、H2SO4換算で、濃度が80~99質量%程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、90~99質量%、93~99質量%、96~99質量%の濃硫酸であり、さらに好ましくは97~98.5質量%の濃硫酸であり、特に98質量%の濃硫酸が好ましい。
酸触媒の割合は、前記式(4)で表される化合物100質量部に対して、例えば、10~1000質量部程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、100~700質量部、300~500質量部、350~450質量部である。酸触媒の割合が少なすぎると、反応を効率よく進行できないおそれがある。
また、反応はチオール類の存在下で行ってもよい。チオール類としては、例えば、メルカプトカルボン酸、アミノアルカンチオール、チオカルボン酸、アルキルメルカプタン、アラルキルメルカプタンおよびこれらの塩などが挙げられる。
メルカプトカルボン酸としては、例えば、3-メルカプトプロピオン酸(またはβ-メルカプトプロピオン酸)などの3-メルカプトアルカン酸、2-メルカプトアルカン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸などが挙げられる。2-メルカプトアルカン酸としては、例えば、チオグリコール酸(メルカプト酢酸またはメルカプトエタン酸)、チオ乳酸(またはα-メルカプトプロピオン酸)、2-メルカプト酪酸(または2-メルカプト-n-ブタン酸)、2-メルカプトイソ酪酸(または2-メルカプト-イソブタン酸)などの2-メルカプトC2-6アルカン酸などが挙げられる。
アミノアルカンチオールとしては、例えば、2-アミノエタンチオール(またはシステアミン)、2-アミノプロパンチオール、3-アミノプロパンチオール、2-アミノブタンチオール、3-アミノブタンチオール、4-アミノブタンチオール、6-アミノヘキサンチオール、8-アミノオクタンチオール、11-アミノウンデカンチオール、16-アミノヘキサデカンチオールなどのアミノC2-20アルカンチオールなどが挙げられる。
チオカルボン酸としては、例えば、チオ酢酸、チオシュウ酸などが挙げられる。
アルキルメルカプタンとしては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1-16アルキルメルカプタンなどが挙げられる。
アラルキルメルカプタンとしては、例えば、ベンジルメルカプタンなどが挙げられる。
なお、これらの代表的な塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;酢酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩;またはこれらの複塩などが挙げられる。好ましくはナトリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられ、具体的な化合物としては、例えば、メチルメルカプタンナトリウム、エチルメルカプタンナトリウムなどが挙げられる。
これらのチオール類は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのチオール類のうち、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸などのメルカプトアルカン酸、システアミンなどのアミノアルカンチオールが好ましい。
チオール類の割合は、前記式(4)で表される化合物100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、具体的には、1~50質量部程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、2~20質量部、3~10質量部、4~6質量部である。また、チオール類の割合は、前記式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば0.01~0.5モル程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05~0.4モル、0.1~0.3モル、0.15~0.2モルである。なお、チオール類の割合は、前記酸触媒100質量部に対して、例えば0.001~50質量部程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.005~10質量部、0.01~1質量部、0.01~0.1質量部である。チオール類の割合が少な過ぎると、反応が効率よく進行しないおそれがあり、多すぎると、チオール類が硫黄成分などの不純物として残留するおそれがある。
反応は溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類、具体的には、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの鎖状ケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの鎖状エステル類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン(またはγ-ヘキサノラクトン)などの環状エステル類(ラクトン類)など;カーボネート類、具体的には、ジメチルカーボネート(または炭酸ジメチル)、ジエチルカーボネート(または炭酸ジエチル)などの鎖状カーボネート類、エチレンカーボネート(または炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(または炭酸プロピレン)などの環状カーボネート類など;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などの鎖状アミド類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの環状アミド類など;尿素類、具体的には、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素などの鎖状尿素類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMIまたはN,N’-ジメチルエチレン尿素)、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素(またはN,N’-プロピレン尿素)などの環状尿素類など;ニトリル類、具体的には、アセトニトリル、プロピオノニトリル、ベンゾニトリルなどのシアン化炭化水素など;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼンなどのニトロ化炭化水素類;ヘキサメチルホスホルアミドなどのホスホルアミド類;スルホン類、具体的には、エチルメチルスルホンなどの鎖状スルホン類、スルホランなどの環状スルホン類など;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロアルカン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロベンゼンなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、エーテル類、スルホン類および尿素類から選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、特に、少なくとも分子内に環状構造を有する環式化合物(環状構造を有する非プロトン性極性溶媒)、なかでも、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類、スルホランなどの環状スルホン類およびDMIなどの環状尿素類から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
溶媒の割合は、前記式(4)で表される化合物100質量部に対して、例えば100~10000質量部程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、300~2000質量部、400~1500質量部、500~1000質量部である。溶媒の割合が多すぎると、原料の濃度が低すぎて反応性が低下するおそれがあり、溶媒の割合が少なすぎると、粘度が高すぎて反応性が低下するおそれがある。
反応温度は、例えば0~200℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、10~100℃、20~80℃、30~60℃である。また、反応時間は、例えば30分~48時間程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~24時間、2~12時間、4~8時間である。
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中、または窒素ガスや希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧または加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
なお、反応終了後の反応混合物(反応液または反応混合液)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、中和、洗浄、乾燥、晶析、カラムクロマトグラフィーや、これらを組み合わせた手段により分離(または精製)してもよい。
(第1の反応工程式における式(1)で表される化合物の調製)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物(ジオール化合物)は、前記式(2)で表される化合物と、前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物とをカップリング反応(またはクロスカップリング反応)させることで調製できる。
カップリング反応としては、慣用のカップリング反応、例えば、鈴木-宮浦カップリング反応、右田-小杉-スティレ(Stille)カップリング反応、根岸カップリング反応、檜山カップリング反応などのパラジウム触媒(またはパラジウム(0)触媒)によるカップリング反応、熊田-玉尾-コリュー(Corriu)カップリング反応などのニッケル触媒(またはニッケル(0)触媒)によるカップリング反応などが挙げられる。これらのカップリング反応のうち、鈴木-宮浦カップリング反応が好ましい。
前記式(2)(または式(4))において、X1aおよびX1bはそれぞれ独立してカップリング反応により炭素-炭素結合(または直接結合)を形成可能な反応性基を示し;前記式(3a)および(3b)において、X2aは前記反応性基X1aと、X2bは前記反応性基X1bとともに、それぞれカップリング反応により炭素-炭素結合を形成可能な反応性基を示している。反応性基X1aおよびX1bならびにX2aおよびX2bは、前記カップリング反応の種類に応じて適宜選択できる。鈴木-宮浦カップリング反応により合成する場合、一方の反応性基、例えば、基X1aおよびX1bとしては、ハロゲン原子またはフッ化アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子などが挙げられる。フッ化アルカンスルホニルオキシ基としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(または基[-OTf])などのフッ化C1-4アルカンスルホニルオキシ基などが挙げられる。これらの一方の反応性基は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらの一方の反応性基のうち、ハロゲン原子が好ましく、ヨウ素原子、臭素原子がさらに好ましく、臭素原子がさらに好ましい。
鈴木-宮浦カップリング反応における前記一方の反応性基X1aおよびX1bとカップリング可能な他方の反応性基X2aおよびX2bとしては、例えば、ボロン酸基(ジヒドロキシボリル基または基[-B(OH)2])、ボロン酸エステル基などが挙げられる。ボロン酸エステル基としては、例えば、ジメトキシボリル基、ジイソプロポキシボリル基、ジブトキシボリル基などのジアルコキシボリル基;ピナコラートボリル基(または基[-Bpin])、1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基、5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル基などの環状ボロン酸エステル基などが挙げられる。これらの他方の反応性基は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。他方の反応性基のうち、基[-B(OH)2]が好ましい。
なお、基X1aおよびX1bと、基X2aおよびX2bとは、それぞれ互いにカップリング反応可能な一対の反応性基であればいずれの反応性基であってもよく、基X1aおよびX1bがボロン酸基などの前記他方の反応性基であり、基X2aおよびX2bがハロゲン原子などの前記一方の反応性基であってもよいが、基X1aおよびX1bがハロゲン原子などの前記一方の反応性基であり、基X2aおよびX2bがボロン酸基などの前記他方の反応性基であるのが好ましい。
前記式(2)で表される化合物しては、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の好ましい態様に対応する化合物、例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジブロモフルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)-ジハロフルオレン;9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジブロモフルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-ナフチル]-ジハロフルオレンなどが挙げられる。
前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物としては、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の好ましい態様に対応する化合物、例えば、フェニルボロン酸、1-ナフチルボロン酸、2-ナフチルボロン酸などが挙げられ、2-ナフチルボロン酸が好ましい。前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物は、同一の化合物であるのが好ましい。前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物は、市販品などを利用できる。
前記式(2)で表される化合物と、前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物の合計量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/10程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/2.1~1/5、1/2.2~1/3、1/2.3~1/2.5であってもよく、より効率よく調製できる点でさらに好ましくは1/2.1~1/2.3である。
カップリング反応は、触媒の存在下で行ってもよい。鈴木-宮浦カップリング反応により合成する場合、パラジウム触媒の存在下で反応させてもよく、パラジウム触媒としては、慣用のカップリング触媒、例えば、パラジウム(0)触媒、パラジウム(II)触媒などが挙げられる。
パラジウム(0)触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[またはPd(PPh3)4]、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)[またはPd(P(t-Bu)3)2]などのパラジウム(0)-ホスフィン錯体などが挙げられる。
パラジウム(II)触媒としては、例えば、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド[またはPdCl2(dppe)]、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)ジクロリド[またはPdCl2(dppp)]、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド[またはPdCl2(dppf)]、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[またはPdCl2(PPh3)2]、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド[またはPdCl2(P(o-tolyl)3)2]などのパラジウム(II)-ホスフィン錯体などが挙げられる。なお、パラジウム(II)触媒を用いる場合、例えば、ホスフィン、アミン、有機金属試薬などの反応系内の還元性化合物により、0価の錯体に還元されて反応が開始する。
なお、前記パラジウム触媒は、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体[またはPd2(dba)3・CHCl3]、酢酸パラジウム(II)などの触媒前駆体と、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、カルベン類などの配位子とを添加して反応系内で調製してもよい。前記触媒前駆体と、配位子との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/4~1/10程度であってもよく、好ましくは1/4~1/5である。
これらの触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの触媒のうち、Pd(PPh3)4などのパラジウム(0)-ホスフィン錯体、酢酸パラジウム(II)などの触媒前駆体、操作性(空気中での安定性)に優れる点から、特に、酢酸パラジウム(II)が好ましい。触媒の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、金属換算で、例えば0.0001~0.1モル程度であってもよく、好ましくは0.01~0.07モル、さらに好ましくは0.04~0.06モルであってもよく、より効率よく調製できる点で特に好ましくは以下段階的に、0.0001~0.001モル、0.0003~0.0007モルであり、前記酢酸パラジウム(II)などの触媒前駆体を用いる場合、特に好ましくは0.0005~0.0015モルである。
鈴木-宮浦カップリング反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属炭酸塩または炭酸水素塩、金属水酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩、金属有機酸塩、金属アルコキシドなどが挙げられる。
金属炭酸塩または炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩、炭酸タリウム(I)などが挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、水酸化タリウム(I)などが挙げられる。
金属フッ化物としては、例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属フッ化物などが挙げられる。
金属リン酸塩としては、例えば、リン酸三カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩などが挙げられる。
金属有機酸塩としては、例えば、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩などが挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。
これらの塩基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい塩基としては、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩が好ましい。塩基の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.1~50モル程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、0.5~5モル、1~3モル、1.5~2.5モルであってもよく、より効率よく調製できる点でさらに好ましくは以下段階的に、5~10モル、6~8モル、6.5~7.5モルである。
カップリング反応は、相間移動触媒の存在下または非存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。これらの相間移動触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
カップリング反応は、反応に不活性な溶媒の非存在下または存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類など炭化水素類などが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、グリコールエーテル類などが挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、水とトルエンなどの芳香族炭化水素類またはMIBKなどのケトン類との混合溶媒が好ましい。
カップリング反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば50~200℃、好ましくは60~100℃であり、さらに好ましくは70~90℃、特に75~83℃である。反応時間は、例えば0.5~24時間程度であってもよく、好ましくは10~20時間であってもよく、より効率よく調製できる点でさらに好ましくは0.5~8時間程度、0.5~1.5時間である。
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、乾燥、晶析、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、吸着、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、上記の方法とは異なる方法、例えば、下記反応工程式(第2の反応工程式)に従って調製してもよい。
(式中、Y1aおよびY1b、k1aおよびk1b、R2aおよびR2b、m2aおよびm2b、ならびにY2aおよびY2bは好ましい態様を含めて前記式(1)に同じであり、
X1aおよびX2aならびにX1bおよびX2bは前記第1の反応工程式と好ましい態様を含めて同じである)。
第2の反応工程式では、前記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物を反応させて基Y2aおよびY2bを導入する工程と、前記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物を反応させて基Y1aおよびY1bを導入する工程との順序が、前記第1の反応工程式と入れ替わっている。そのため、第2の反応工程式における前記式(6)で表される化合物の調製は、前記(第1の反応工程式における式(1)で表される化合物の調製)の項の記載において、前記式(2)で表される化合物に代えて前記式(4)で表される化合物を用いる(または前記式(2)を前記式(4)に読み替える)ことで調製できる。また、第2の反応工程式における前記式(1)で表される化合物の調製についても同様に、前記(第1の反応工程式における式(2)で表される化合物の調製)の項の記載において、前記式(4)で表される化合物に代えて前記式(6)で表される化合物を用いる(または前記式(4)を前記式(6)に読み替える)ことで調製できる。
上述したように、前記式(1)で表されるフルオレン化合物(ジオール化合物)の製造方法は、(i)前記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)で表される化合物および式(3b)で表される化合物とをカップリング反応させる工程;または(ii)前記式(6)で表される化合物と、下記式(5a)で表される化合物および式(5b)で表される化合物とを反応させる工程のいずれかを含んでいればよく、反応中間体である前記式(2)および(6)で表される化合物は、上述した方法や、他の慣用の方法を用いて調製してもよい。
(精製工程)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物(ジオール化合物)は、前述の慣用の分離精製方法で精製してもよいが、前記反応条件による影響のためか、十分にまたは効率よく分離精製できない場合があり、比較的高純度、かつ高収率で調製するのは困難である。しかし、前記反応工程で得られた前記フルオレン化合物を、溶媒、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物と組成物(液状組成物または溶液)を形成するための溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒、好ましくは(a)芳香族炭化水素類および脂肪族炭化水素類を少なくとも含む溶媒(再沈殿溶媒)、および(b)ケトン類を少なくとも含む溶媒(晶析溶媒)から選択された少なくとも一種の溶媒から析出(晶析もしくは再結晶または再沈殿)させる精製工程(晶析工程もしくは再結晶工程または再沈殿工程)により分離精製すると、カラムクロマトグラフィーなどの他の分離精製方法と比べて、高純度で効率よく前記フルオレン化合物を調製し易いようである。
(a)芳香族炭化水素類および脂肪族炭化水素類を少なくとも含む溶媒において、良溶媒である前記芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、トルエンが好ましい。貧溶媒である前記脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどのC5-12アルカンなどが挙げられ、ヘプタンなどのC6-8アルカンが好ましい。
トルエンなどの前記芳香族炭化水素類と、ヘプタンなどの前記脂肪族炭化水素類との割合は、例えば、前者/後者(体積比)=10/90~90/10程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、10/90~90/10、20/80~70/30、30/70~50/50である。なお、前記体積比は、20~25℃、1気圧下における体積割合であってもよい。
芳香族炭化水素類および脂肪族炭化水素類の総量の割合は、芳香族炭化水素類および脂肪族炭化水素類を含む溶媒全体に対して、例えば50質量%以上、好ましくは以下段階的に、70質量%以上、90質量%以上であり、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
また、(b)ケトン類を少なくとも含む晶析溶媒において、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのC3-6ケトン類などが挙げられる。ケトン類の割合は、ケトン類を含む晶析溶媒全体に対して、例えば50質量%以上、好ましくは以下段階的に、70質量%以上、90質量%以上であり、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
溶媒(a)を用いて精製すると、非晶質(非晶体)が得られ、溶媒(b)では結晶が得られるようである。溶媒(a)および(b)のうち、高い純度および収率を保持しつつ、着色を低減し易い点から、晶析溶媒(b)が好ましく、特に、MIBKなどのC5-6ケトン類を含む晶析溶媒から晶析させるのが好ましい。
精製工程、特に晶析工程では、例えば、溶液を濃度10~60質量%、好ましくは20~50質量%、さらに好ましくは30~50質量%に調整してもよい。また、攪拌および/または降温しながら晶析してもよく、例えば100~500rpm程度、好ましくは200~300rpm程度で攪拌しつつ、例えば40~100℃、好ましくは50~70℃程度から降温して、例えば30~60℃、好ましくは40~50℃程度の析出温度で晶析してもよい。また、撹拌することなく、静置しつつ降温、例えば、20~30℃程度の室温まで降温して晶析してもよい。
得られる前記式(1)で表されるフルオレン化合物のHPLC純度は、例えば75%以上であってもよく、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、なかでも95%以上、特に98%以上である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、HPLC純度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
また、得られる前記式(1)で表されるフルオレン化合物の収率は、例えば40%以上、好ましい範囲としては、以下段階的に、50%以上、60%以上、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
[式(1E)で表されるフルオレン化合物(エポキシ化合物またはエポキシ樹脂)]
前記式(1E)で表されるフルオレン化合物は、前記式(1)で表される化合物において、フルオレン骨格の9,9位に結合する基Y2aおよびY2b[前記式(Y2)で表されるヒドロキシル基含有基]に代えて、基Y3aおよびY3b[前記式(Y3)で表されるエポキシ基含有基]を有するエポキシ化合物(またはエポキシ樹脂)である。
前記式(Y3)で表されるエポキシ基含有基Y3aおよびY3bにおいて、R4は水素原子であるのが好ましい。また、前記式(Y3)において、R3、m3、A1およびn1は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(Y2)に同じである。
そのため、代表的なエポキシ基含有基Y3aおよびY3bは、前記式(1)の項に例示したヒドロキシル基含有基Y2aおよびY2bに対応して、ヒドロキシル基をグリシジルオキシ基またはβ-メチルグリシジルオキシ基に置き換えた基などが挙げられる。好ましいエポキシ基含有基Y3aおよびY3bもヒドロキシル基含有基Y2aおよびY2bに対応して同様であり、なかでも、6-グリシジルオキシ-2-ナフチル基、6-(2-グリシジルオキシエトキシ)-2-ナフチル基などの6-グリシジルオキシ(モノないしヘキサ)C2-3アルコキシ-2-ナフチル基が好ましく;特に6-グリシジルオキシ-2-ナフチル基が好ましい。なお、エポキシ基含有基Y3aおよびY3bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、同一が好ましい。
また、前記式(1E)において、Y1aおよびY1b、k1aおよびk1b、R2aおよびR2b、m2aおよびm2b、ならびに、k1a+m2aおよびk1b+m2bは、それぞれ前記式(1)および(Y1)と好ましい態様を含めて同じである。なお、Y1aおよびY1b中の環Z1が、特にナフタレン環などの縮合多環式アレーン環であると、屈折率や耐熱性を有効に向上し易いのみならず、意外にも低い溶融開始温度および高い溶解性(相溶性)を示すこともできるため、好ましい。
そのため、代表的な前記式(1E)で表されるエポキシ化合物についても、前述の代表的な前記式(1)で表されるジオール化合物に対応して、2つのヒドロキシル基をグリシジルオキシ基またはβ-メチルグリシジルオキシ基に置き換えた化合物などが挙げられる。好ましい前記式(1E)で表されるエポキシ化合物についても、前記式(1)で表されるジオール化合物の好ましい態様に対応して同様であり、なかでも、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(グリシジルオキシナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレン;9,9-ビス[6-(2-(グリシジルオキシ)エトキシ)-2-ナフチル]-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス[グリシジルオキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフチル]-2,7-ジナフチルフルオレンが好ましく、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンがさらに好ましい。
前記式(1E)で表されるエポキシ化合物は、高い屈折率を有している。前記エポキシ化合物の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば1.67~1.8、具体的には1.67~1.77程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.69~1.75、1.7~1.74、1.71~1.73であってもよく;さらに好ましくは以下段階的に、1.72~1.79、1.73~1.78、1.74~1.775、1.75~1.77である。
また、前記式(1E)で表されるエポキシ化合物は、高い耐熱性を備えている。前記エポキシ化合物の5%質量減少温度は、例えば300~500℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、350~450℃、370~430℃、380~420℃である。
前記式(1E)で表されるエポキシ化合物は、高い5%質量減少温度を示すにも拘らず、意外にも低い融解(溶融)温度を示し、融解(溶融)開始温度は、例えば100~250℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、120~200℃、130~180℃、140~160℃である。そのため、後述する他の成分などと溶融混練などで容易にまたは効率よく均一な硬化性組成物を調製することもできる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記式(1E)で表されるフルオレン化合物の屈折率、5%質量減少温度および融解温度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
また、前記エポキシ化合物(またはエポキシ樹脂)のエポキシ当量は、例えば300~1500g/eq程度の範囲から選択してもよく、好ましくは350~1000g/eq、さらに好ましくは400~500g/eqであってもよく;特に好ましくは、350~480g/eq、なかでも370~450g/eqである。なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記エポキシ化合物のエポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準じて後述する実施例に記載の方法により測定できる。
なお、前記エポキシ化合物(または後述する硬化性組成物)は、前記式(1E)で表される化合物(単量体)のみならず、その多量体、例えば、二量体、三量体、四量体などの二ないし十量体を含む混合物であってもよい。多量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
本明細書および特許請求の範囲において、特に断りのない限り、前記エポキシ化合物の「多量体」は、原料化合物[前記式(1)で表されるジオール化合物]に由来する構造(骨格)を化学構造中に2つ以上有するエポキシ化合物を意味し、この2つ以上のジオール化合物由来の構造が、後述するエピハロヒドリン成分由来の連結基、例えば2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル基などを介して結合(連結)されている。このような多量体は、後述する前記式(1E)で表される化合物(単量体)の製造過程で不可避的にまたは不純物として混入してもよく、必要に応じて、一段法(タフィー法又は直接法)や二段法(Advanced法、溶融法又は間接法)などの慣用の方法で調製した多量体を単量体に意図的に添加してもよい。
前記多量体の割合は、前記単量体および多量体の総モル数に対して、例えば0~50モル%程度、具体的には0~20モル%程度であってもよく、好ましくは0~10モル%、さらに好ましくは0~5モル%である。前記割合は、例えば0.1~8モル%、好ましくは0.2~3モル%であってもよい。
また、前記式(1E)で表されるフルオレン化合物(単量体)のHPLC純度は、例えば75%程度以上であってもよく、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、HPLC純度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
[式(1E)で表されるフルオレン化合物(エポキシ化合物)の製造方法]
前記式(1E)で表されるエポキシ化合物の製造方法は特に制限されず、例えば、前記式(1)で表されるジオール化合物と、エピハロヒドリン成分とを反応させることにより調製してもよい。
エピハロヒドリン成分(エピハロヒドリン類)としては、エピハロヒドリン、β-メチルエピハロヒドリンなどが挙げられる。エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどが挙げられる。β-メチルエピハロヒドリンとしては、β-メチルエピクロロヒドリン、β-メチルエピブロモヒドリン、β-メチルエピヨードヒドリンなどが挙げられる。これらのエピハロヒドリン成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのエピハロヒドリン成分のうち、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリン、β-メチルエピクロロヒドリンが好ましく、エピクロロヒドリンがさらに好ましい。
エピハロヒドリン成分の割合は、前記式(1)で表されるジオール化合物1モルに対して、例えば2モル以上であればよいが、前記ジオール化合物に対して過剰量、例えば5~100モル、好ましくは10~50モル、さらに好ましくは15~30モルである。
なお、必要に応じて、触媒の存在下で反応させてもよく、非存在下で反応させてもよい。触媒としては、例えば、第4級アンモニウム塩、具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどのテトラC1-20アルキルアンモニウムハライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのベンジルトリC1-4アルキルアンモニウムハライドなど;トリメチルアミンボランなどのトリC1-4アルキルアミンボラン、クラウンエーテル、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。
触媒を用いる場合、その割合は特に限定されないが、前記式(1)で表されるジオール化合物1モルに対して、例えば、0.001~1モル、好ましくは0.01~0.2モル、さらに好ましくは0.05~0.1モルである。
また、反応により生成するハロゲン化水素をトラップするため、塩基の存在下で反応させてもよい。塩基は、例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩または炭酸水素塩などの無機塩基;アミン類などの有機塩基などが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられる。金属炭酸塩または炭酸水素塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などが挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなどが挙げられる。塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、強塩基(強アルカリ)が好ましく、水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物がさらに好ましい。
塩基の割合は特に限定されないが、例えば、前記式(1)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば0.01~20モル、好ましくは以下段階的に、0.05~10モル、1~5モル、2~4モルである。
反応は、不活性な溶媒中で行ってもよく、溶媒を用いることなく行ってもよい。溶媒としては、非プロトン性溶媒などを使用でき、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類など;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、反応性の点から、MEK、MIBKなどのケトン類、アミド類、スルホキシド類が好ましく、DMFなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類がさらに好ましい。
反応は、空気中または窒素ガス、希ガスなどの不活性雰囲気中で行ってもよく、攪拌しながら行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
反応温度や反応時間は、原料の種類などに応じて適宜選択してもよい。反応温度は、例えば30~150℃、好ましくは以下段階的に、50~140℃、100~130℃であり、還流しながら(還流温度で)行ってもよく;さらに好ましくは30~50℃である。また、反応時間は、例えば30分~48時間、好ましくは2~6時間である。
反応終了後、必要により、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、乾燥、晶析、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、吸着、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
[硬化性組成物]
硬化性組成物は、前記式(1E)で表されるエポキシ化合物を少なくとも含んでいればよく、熱硬化性または光硬化性組成物などであってもよい。また、必要に応じて、前記エポキシ化合物とは異なる他のエポキシ化合物(エポキシ樹脂)、硬化剤、硬化促進剤、光重合開始剤、反応性希釈剤、溶媒、添加剤などの他の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。前記式(1E)で表されるエポキシ化合物は、特にY1aおよびY1b中の環Z1が縮合多環式アレーン環などの多環式アレーン環であると、化学構造中に多くのベンゼン環骨格を有しているにも拘らず、意外にも溶解性(相溶性)に優れるため、前記他の成分を含んでいても、容易にまたは効率よく均一な硬化性組成物および硬化物を調製できる。
(他のエポキシ化合物)
前記式(1E)とは異なる他のエポキシ化合物(エポキシ樹脂)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ビフェノール型などのビまたはビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型などのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどのテトラキスフェノール型エポキシ樹脂、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンなどの縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂、9,9-ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン類、9,9-ビス[グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などの他の9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂など;芳香族ジカルボン酸(またはその水添物の)ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルアミノフェノールなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの環状脂肪族型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、キサンテン単位を含むエポキシ樹脂などの複素環型エポキシ樹脂;テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などの含臭素エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの他のエポキシ樹脂は、単量体であってもよく、二量体、三量体などの多量体であってもよい。これらの他のエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。好ましい他のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビまたはビスフェノール型エポキシ樹脂である。
他のエポキシ樹脂を含む場合、前記エポキシ樹脂(前記式(1E)で表されるエポキシ化合物)の割合は、硬化性組成物中のエポキシ樹脂全体に対して、例えば50~99質量%、好ましくは60~98質量%、さらに好ましくは70~95質量%である。
(硬化剤、硬化促進剤、光重合開始剤)
硬化性組成物は、硬化剤、硬化促進剤および光重合開始剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤などが挙げられる。
アミン系硬化剤としては、特に第1級アミンであってもよく、例えば、鎖状脂肪族アミン、具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類など;環状脂肪族アミン、具体的には、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式、架橋環式またはスピロ環式脂肪族ポリアミンなど;キシリレンジアミンなどの芳香脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどが挙げられる。
ポリアミノアミド系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンヘキサミンなどのポリエチレンポリアミン類と、ダイマー酸と、必要に応じて脂肪酸との縮合物などが挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物などが挙げられる。
フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの硬化剤のうち、フェノール樹脂系硬化剤が好ましく、フェノールノボラック樹脂などのノボラック樹脂がさらに好ましい。
硬化剤の割合は、硬化性組成物中のエポキシ樹脂成分(エポキシ基を有する化合物)の総量100質量部に対して、例えば0.1~500質量部、好ましくは1~300質量部、さらに好ましくは10~150質量部である。また、硬化剤の官能基(または活性水素)の割合は、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して、例えば0.1~4当量、好ましくは以下段階的に、0.3~2当量、0.5~1.5当量である。
硬化促進剤としては、例えば、第3級アミン類、イミダゾール類およびその誘導体などのアミン類;アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシド;ホスフィン類、具体的にはトリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類;ダイマー酸ポリアミドなどのアミド化合物;三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体などのルイス酸錯体化合物;ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)などの硫黄化合物;フェニルジクロロボランなどのホウ素化合物;有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物などの縮合性有機金属化合物などが挙げられる。前記アミン類に関し、第3級アミン類としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどが挙げられ、前記イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのモノまたはジアルキルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなどが挙げられ、前記誘導体としては、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの硬化促進剤のうち、ホスフィン類が好ましく、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類がさらに好ましい。
硬化促進剤の割合は、硬化性組成物中のエポキシ樹脂成分(エポキシ基を有する化合物)の総量100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは以下段階的に、0.05~20質量部、0.1~10質量部、0.1~5質量部である。また、硬化促進剤の割合は、硬化性組成物中のエポキシ樹脂成分および硬化剤の総量100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。
硬化性組成物は、例えば、カチオン重合開始剤、光酸発生剤などの光重合開始剤を含む光硬化性組成物であってもよい。光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩などのブレンステッド酸のオニウム塩などが挙げられる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのベンゼンジアゾニウム類が挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルスルホニウム類、4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェートなどの4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド類などが挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジフェニルヨードニウム類、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム類が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの光重合開始剤の割合は、硬化剤組成物中のエポキシ樹脂成分(エポキシ基を有する化合物)の総量100質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部程度であってもよい。
(反応性希釈剤)
反応性希釈剤としては、低粘度、例えば、25℃における粘度が200mPa・s程度以下、好ましくは30mPa・s以下の単官能性または多官能性のエポキシ化合物であってもよい。単官能性エポキシ化合物としては、例えば、2-エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、これらの化合物に対応するアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキシド、スチレンオキシド、4-ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどのアルケンオキシド類などが挙げられる。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、シクロアルケンオキシドなどが挙げられる。前記ポリオールポリグリシジルエーテルとしては、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの(ポリ)アルカンジオールジグリシジルエーテル類、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテルなどが挙げられる。前記シクロアルケンオキシドとしては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキシドなどが挙げられる。
これらの反応性希釈剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。反応性希釈剤の割合は、硬化剤組成物中のエポキシ樹脂成分(エポキシ基を有する化合物)の総量100質量部に対して、例えば1~1000質量部、好ましくは5~500質量部、さらに好ましくは10~200質量部である。
(溶媒)
溶媒としては、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物と組成物(液状組成物または溶液)を形成するための溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒であってもよい。
これらの溶媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましく、PGMEAなどのC2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテル-アセテート類が好ましい。溶媒の割合は、硬化剤組成物中のエポキシ樹脂成分(エポキシ基を有する化合物)の総量100質量部に対して、例えば0~500質量部の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、10~400質量部、20~300質量部、30~200質量部である。また、溶媒を含む場合、硬化性組成物の固形分濃度は特に制限されず、硬化性組成物が所望の流動性を示すよう調整してもよく、例えば0.1~70質量%程度であってもよい。
(添加剤)
添加剤としては、慣用の添加剤、例えば、染料、顔料などの着色剤、安定剤、充填剤、導電剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可撓化剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、相溶化剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。前記安定剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。前記充填剤としては、シリカ、タルク、マイカなどが挙げられる。前記難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の合計割合は、固形分全体に対して、例えば10質量%以下、好ましくは0~3質量%であってもよく;例えば0.01~5質量%程度、好ましくは0.1~1質量%であってもよい。
硬化性組成物は、前記式(1E)で表されるエポキシ化合物と、必要に応じて前述のような他の成分とを、混合機または攪拌機で混合して分散させる方法で調製してもよい。混合機または攪拌機としては、例えば、ボールミル、タンブルミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。混合(混練)または攪拌する際の温度は、例えば50~250℃程度であってもよく、好ましくは100~200℃である。
[硬化物]
硬化物は、前記硬化性組成物を硬化反応(硬化処理)して調製できる。硬化処理は、硬化触媒の使用、加熱、光照射(活性エネルギー線照射)などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。
加熱により硬化処理を行う場合、加熱温度としては、例えば50~250℃、好ましくは以下段階的に、70~220℃、80~200℃、90~170℃であってもよく、さらに好ましくは150~200℃、特に170~180℃である。なお、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば比較的低温、具体的には50~130℃程度、好ましくは70~120℃で加熱処理したのち、比較的高温、具体的には140~350℃程度、好ましくは150~300℃で加熱処理してもよい。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性組成物を成形中および/または成形(または予備成形)後に行ってもよい。例えば、必要に応じて、前記硬化性組成物を加熱溶融して所定の型に注入し、加熱して硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。成形方法および硬化条件は特に限定されず、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法などを用いてもよい。また、硬化性組成物を接着部位に適用して硬化させてもよく、硬化性組成物で基材をコーティングして硬化、例えば、後述する光照射などにより硬化させてもよい。
光照射により硬化処理を行う場合、光の波長は、酸発生剤などの種類に応じて適宜選択してもよく、紫外光線または可視光線などであってもよい。光の照射光量(露光量)は、硬化性組成物(塗膜)の厚みなどに応じて選択でき、例えば10~10000mJ/cm2程度であってもよく、好ましくは100~5000mJ/cm2、さらに好ましくは500~3000mJ/cm2である。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LEDレーザーなどのレーザー光などが利用できる。硬化性組成物の硬化を促進するために、光照射のみならず、前記加熱処理を行ってもよい。
硬化物の形状は特に制限されず、一次元的形状(棒状など)、二次元的形状(シート状、フィルム状、板状など)、三次元的形状[例えば、ブロック状、棒状、中空状(管状又はチューブ状)など]のいずれであってもよい。このような硬化物は、前記式(1E)で表される化合物を含むため、高い屈折率および高い耐熱性を示す。
硬化物の5%質量減少温度は、例えば350~500℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、400~450℃、410~430℃である。また、硬化物の熱機械分析測定装置(TMA)により測定したガラス転移温度Tg(TMA)は、例えば150~300℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、200~250℃、200~220℃である。また、硬化物の動的粘弾性測定装置(DMA)により測定したガラス転移温度Tg(DMA)は、例えば150~300℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、200~250℃、210~230℃である。
なお、硬化物の5%質量減少温度、Tg(TMA)およびTg(DMA)は、後述の実施例に記載の方法に従って測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法の詳細などについて示す。
[評価方法]
(HPLC)
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-2010A HT」、カラムとして東ソー(株)製「ODS-80TM」を用いて、試料をアセトニトリルに溶解して測定し、HPLC純度[面積%]を算出した。
(1H-NMR)
試料を、内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重溶媒(CDCl3)に溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。
(屈折率nD)
屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製「RX-7000i」)を用いて、温度25℃、波長589nm(D線)で測定した。なお、屈折率の算出は、試料をジメチルスルホキシドに溶解して、濃度5.0質量%、10.0質量%および30.0質量%(実施例4で得られたDPBNFGのみ5.0質量%、10.0質量%および14.7質量%)の溶液を調製し、得られた溶液および濃度0質量%(ジメチルスルホキシドのみ)の屈折率を測定して作成した検量線(近似直線)において、濃度を100質量%に外挿して求めた。
(融解または溶融温度)
融点測定装置(BUCHI製「Melting Point M-565」)を用いて、下記条件で測定し、融解(溶融)開始温度と融解(溶融)終了温度とを読み取った。3回測定した融解(溶融)開始温度および融解(溶融)終了温度の平均値をそれぞれ算出した。
測定開始温度:100℃
昇温速度:10℃/min
融解開始検出条件:15%(試料の透過度の変化率が15%以上となった点を融解開始温度とした)
測定モード:局法モード
測定数:n=3
(5%質量減少温度)
熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG/DTA6200」)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件下で、試料の質量が5質量%減少した温度を測定した。
(ガラス転移温度Tg)
硬化物のガラス転移温度Tg(TMA)は、JIS K 7197に準じて、熱機械分析(TMA)測定装置((株)リガク製「TMA 8311」)を用い、下記条件で測定した。
試験寸法:約10mm×5mm×3mm
昇温速度:5℃/min
測定温度範囲:室温~300℃
測定モード:圧縮(荷重49mN)
雰囲気:窒素気流中(100mL/min)
測定数:n=1
また、硬化物のガラス転移温度Tg(DMA、tanδ)は、JIS K 7244に準じて、動的粘弾性(DMA)測定装置((株)ユービーエム製「Rheogel-E4000」)を用い、の下記条件で測定した。
昇温速度:4℃/min
周波数:1Hz
雰囲気:空気気流中
測定モード:曲げ
測定数:n=1
(溶解性)
試料200mgに対して、後述する各溶媒を濃度30質量%または50質量%になるようにそれぞれ添加し、室温(25℃)で攪拌した際の各溶媒に対する試料の溶解性を確認した。室温(25℃)で溶解しない場合は50℃または80℃まで段階的に加温して、以下の評価基準で溶解性を確認した。
○(25℃):25℃で溶解した
○(50℃):25℃で溶解せず、50℃に昇温する際に溶解した
○(80℃):50℃で溶解せず、80℃に昇温する際に溶解した
× :80℃まで昇温しても溶解しなかった
(保存安定性)
試料を濃度30質量%でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に完全に溶解した溶液を5℃で保管し、24時間後の溶液状態を観察して、以下の評価基準で保存安定性(溶液安定性または低温安定性)を確認した。
○:試料の析出が確認されなかった
×:試料の析出が確認された
(エポキシ当量)
JIS K 7236:2001に準じ、自動滴定装置(三菱化学(株)製GT-100)を用いて、過塩素酸溶液(酢酸性)にて滴定した。
[合成例1]9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジブロモフルオレン(以下、DBrBNFともいう)の合成
反応容器に2,7-ジブロモ-9-フルオレノン12.5g(0.037mol)、2-ナフトール16.0g(0.11mol)、1,4-ジオキサン90mL、3-メルカプトプロピオン酸0.5mL(5.8mmol)、98質量%濃硫酸26mLを仕込み、窒素雰囲気下にて攪拌し、60℃で24時間反応させた。室温まで冷却後、加熱減圧し溶媒を除いた後、ジクロロメタン300mLおよびイオン交換水300mLを加え分液抽出した。炭酸水素ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、イオン交換水300mLを加えて再度水洗した。このイオン交換水による水洗の操作を3回繰り返した後、加熱減圧にてジクロロメタンを除き黄色粗結晶を得た。得られた黄色粗結晶をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル担体、展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、減圧乾燥させることによりDBrBNF 6.01g(微褐色固体、収率24%、HPLC純度95.2%)を得た。得られたDBrBNFの1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)5.2(s、2H)、7.0-7.1(m,4H)、7.3(d,2H)、7.5(m,12H)。
[実施例1A]9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(以下、DNBNFともいう)の合成
反応器内にDBrBNF 0.78g(1.3mmol)、2-ナフチルボロン酸0.54g(3.1mmol)、トルエン10mL、および1M炭酸カリウム水溶液2.6mL(2.6mmol)を仕込み、窒素気流下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[またはPd(PPh3)4]75mg(0.065mmol)を添加し、内温85℃にて15時間加熱還流して反応させた。反応液にイオン交換水50mL、ジクロロメタン75mLを添加し攪拌した後、分液抽出した。このイオン交換水による水洗操作を3回繰り返した後、有機層を濃縮し淡褐色粗体を得た。得られた淡褐色粗体をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル担体、展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル(体積比)=100/1]で精製した後、減圧乾燥させることによりDNBNF 351mg(淡黄色固体、収率49.9%、HPLC純度97.4%)を得た。得られたDNBNFの屈折率nDは1.79であり、5%質量減少温度は443℃であり、1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)4.9(s,2H)、7.0(d,2H)、7.1(s,2H)、7.4-7.7(m,14H)、7.8-8.1(m,14H)
[実施例1B]DNBNFの合成
反応器内にDBrBNF 21.3g(0.035mol)、2-ナフチルボロン酸13.2g(0.077mol)、トルエン130mL、および8.1M炭酸カリウム水溶液30mL(0.245mol)を仕込み、窒素気流下、70~80℃で溶解した。さらに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[またはPd(PPh3)4]20.2mg(0.018mmol)を添加し、内温80℃にて1時間反応させた。反応液にイオン交換水30mLを添加し攪拌した後分液抽出した。このイオン交換水による水洗操作を3回繰り返した後、有機層をトルエンで2倍希釈し、ヘプタン350mlを滴下し、淡赤橙色粗結晶を得た。減圧乾燥後、DNBNF 20.5g(淡赤橙色固体、収率83.3%、HPLC純度88.6%)を得た。なお、得られたDNBNFの屈折率nD、5%質量減少温度、1H-NMRの結果は、実施例1Aと同様であった。また、融解(溶融)開始温度は176.4℃、融解(溶融)終了温度は224.1℃であった。なお、X線回折(XRD)ではハローピークが見られ、非晶質体(アモルファス)であることが確認された。
[実施例1C]DNBNFの合成
反応器内にDBrBNF 21.3g(0.035mol)、2-ナフチルボロン酸13.8g(0.081mol)、トリフェニルホスフィン36.7mg(0.140mmol)、メチルイソブチルケトン(MIBK)80mL、および4M炭酸カリウム水溶液60mL(0.245mol)を仕込み、窒素気流下、70℃で溶解した。さらに、酢酸パラジウム7.9mg(0.035mmol)を添加し、内温75℃にて7時間反応させた。反応溶液中の水を排出し、イオン交換水30mL添加後、10質量%塩酸で中和した。その後、イオン交換水による水洗操作を3回繰り返した。反応溶液を濃縮して濃度約40~45質量%に調整し、250rpmで攪拌しながら60℃から室温まで放冷して温度を下げることで晶析した。なお、約45℃で析出が始まった。減圧乾燥後、DNBNF 18.7g(白色固体、収率76.0%、HPLC純度99.0%)を得た。実施例1Aおよび1Bで得られたDNBNFと比べて、着色が大きく低減され、収率および純度も高かった。なお、得られたDNBNFの屈折率nD、5%質量減少温度、1H-NMRの結果は、実施例1Aと同様であった。また、融解開始温度は188.5℃、融解終了温度は218.8℃であった。なお、X線回折(XRD)では、ハローピークではなく所定の回折パターンが見られ、実施例1Bとは異なって結晶であることが確認された。
[実施例2]9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン(以下、DPBNFともいう)の合成
反応器内にDBrBNF 21.3g(0.035mol)、フェニルボロン酸9.9g(0.081mol)、トリフェニルホスフィン36.7mg(0.140mmol)、MIBK 80mL、および4M炭酸カリウム水溶液60mL(0.245mol)を仕込み、窒素気流下、70℃で溶解した。さらに、酢酸パラジウム7.9mg(0.035mmol)を添加し、内温75℃にて5時間反応させた。反応溶液中の水を排出し、イオン交換水30mL添加後、10質量%塩酸でpH7まで調整した。その後、イオン交換水による水洗操作を3回繰り返した。反応溶液を濃縮してMIBKを除去し、トルエンを21g(0.230mmol)添加した。トルエン溶液をヘプタン21g(0.210mmol)に滴下することでDPBNF 17.7g(淡黄色固体、収率84.0%、HPLC純度87.9%)を得た。得られたDPBNFの屈折率nDは1.75であり、5%質量減少温度は360℃であり、1H-NMRの結果を以下に示す。また、融解開始温度は180.7℃、融解終了温度は227.4℃であった。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)5.49(s,2H)、7.0(m,4H)、7.2-8.0(m,24H)
[比較例1]
9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BNF」)の屈折率nDは1.74であり、5%質量減少温度は369℃であり、融解開始温度は259℃、融解終了温度は263℃であった。
[比較例2]
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BPF」、融点223~224℃)の屈折率nDは1.68であり、5%質量減少温度は301℃であった。
[比較例3]
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BCF」、融点218~219℃)の屈折率nDは1.68であり、5%質量減少温度は313℃であった。
[比較例4]
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BPEF」、融点161~163℃)の屈折率nDは1.65であり、5%質量減少温度は342℃であった。
下記表1に、実施例および比較例で得られたフルオレン化合物の物性(屈折率、5%質量減少温度、融解温度)を示す(表1中の融解温度の( )内の数値は市販品の融点を示す)。
表1の結果から明らかなように、実施例では比較例に比べて非常に高い屈折率を示している。また、比較例1(BNF)のフルオレン骨格の2,7位に対して、ベンゼン環を導入した実施例2(DPBNF)では5%質量減少温度の低下が見られた一方で、ナフタレン環を導入した実施例1(DNBNF)では5%質量減少温度が大きく向上し、より耐熱性に優れている。なお、実施例1(DNBNF)および実施例2(DPBNF)は、高い5%質量減少温度を示す一方で、意外にも融解開始温度が低く、特に実施例1(DNBNF)では実施例2(DPBNF)よりもベンゼン環骨格の多いナフタレン環を導入するにも拘らず融解終了温度も低く、容易に溶融可能なことが分かった。
下記表2に、実施例1Cおよび実施例2,比較例1で得られたフルオレン化合物を濃度30質量%で各溶媒に溶解した際の溶解性の評価結果を示す。なお、表中、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテル、n-PrOHはn-プロパノール、NMPはN-メチル-2-ピロリドン、DMFはN,N-ジメチルホルムアミド、DMSOはジメチルスルホキシドをそれぞれ示す(以下、同じ)。
表2の結果から明らかなように、実施例1(DNBNF)および実施例2(DPBNF)は多くのベンゼン環骨格を含むため、溶解性が大きく低下することが予想されたが、意外にも高い溶解性を示した。特に、実施例1(DNBNF)では、測定した全ての溶媒種に対して溶解可能であった。
下記表3に、実施例1Cおよび実施例2,比較例1で得られたフルオレン化合物を濃度30質量%でPGMEAに溶解した溶液(表2の溶解性試験で調製した溶液)の保存安定性の評価結果を示す。
表3の結果から明らかなように、いずれの実施例でも、析出し易い高濃度、低温環境下において、析出することなく安定して溶液状態を保持していた。
[実施例3A]9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(以下、DNBNFGともいう)の合成
反応器内に実施例1Cで得られたDNBNF 105.43g(0.15mol)、クロロメチルオキシラン303.6g(3.3mol)、ジメチルスルホキシド83.2gを添加し、窒素気流下40℃で30分加熱溶解させた。その後、フレーク状の水酸化ナトリウム13.2g(0.33mol)を投入した。水酸化ナトリウムの投入から4時間後、温度を40℃に保持しつつ加熱攪拌した結果、HPLCにて原料であるDNBNFの消失を確認した。その後、エバポレーターにてクロロメチルオキシランを濃縮除去し、MIBKを550g加えた後、イオン交換水200mLによる水洗操作を5回繰り返した。MIBK溶液を固形分20質量%に調整し、イソプロピルアルコール(IPA)1635gに対して1時間かけて滴下することでDNBNFG 107g(白色固体、収率88%、HPLC純度95%)を得た。得られたDNBNFGの屈折率nDは1.76であり、5%質量減少温度は405℃であり、非常に高い屈折率および耐熱性を示した。得られたDNBNFGの融解開始温度(溶け始める温度)は149℃であり、エポキシ当量は432.4g/eqであり、1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)2.8(t,2H)、2.9(t,2H)、3.4(m,2H)、4.0(dd,2H)、4.3(dd,2H)、7.1(m,4H)、7.4-7.9(m,28H)
[実施例3B]DNBNFGの合成
200mL4つ口ナスフラスコに、実施例1Bで得られたDNBNF 35.1g(0.05mol)、エピクロロヒドリン101g(1.1mol、22eq.)を入れ、容器内を窒素置換した。水酸化ナトリウム(顆粒)6.6g(0.17mol、3.3eq.)を添加し、118℃で加熱還流しながら還流されたエピクロロヒドリンをディーンスタークで系内に戻した。3時間攪拌後エピクロロヒドリンを濃縮し、除去した。メチルイソブチルケトン(MIBK)199g(2.0mol、40eq.)で溶解後、蒸留水117gとセライト2gを添加し、70℃で攪拌した。セライトを濾過し、排水後、有機層を蒸留水80mLで洗浄する操作を4回繰り返した。有機層をメタノール205gで再沈殿し、得られた固体を70℃で乾燥することで淡黄色固体を得た。さらに、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン=6/4(体積比))で精製することで、DNBNFG 5.64g(微黄色固体、収率16.1%、HPLC純度94%)を得た。得られたDNBNFGの屈折率nDは、5%質量減少温度および溶融開始温度は実施例3Aと同様であった。なお、DNBNFGの1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)2.8(t,2H)、2.9(t,2H)、3.4(m,2H)、4.0(dd,2H)、4.4(dd,2H)、7.1(m,4H)、7.4-7.7(m,14H)、7.8-8.0(m,14H)
[実施例4]9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン(以下、DPBNFGともいう)の合成
DNBNFに代えて、DPBNF 90.4g(0.15mol)を用いた以外は実施例3Aと同様の方法により、DPBNFG 93g(淡黄色固体、収率87%、HPLC純度87%)を得た。得られたDPBNFGの屈折率nDは1.72であり、5%質量減少温度は380℃であり、溶融開始温度は195℃であり、エポキシ当量は384.4g/eqであり、1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)2.8(t,2H)、2.9(t,2H)、3.4(m,2H)、4.0(dd,2H)、4.3(dd,2H)、7.1(m,4H)、7.3-7.9(m,24H)
[比較例5]
9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BNFG」)の屈折率nDは1.70であり、5%質量減少温度は391℃であり、溶融開始温度は113℃であり、エポキシ当量は292.0g/eqであった。
[比較例6]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828」)の屈折率nDは1.58であり、5%質量減少温度は380℃であり、エポキシ当量は187g/eqであった。
下記表4に、実施例および比較例で得られたフルオレン化合物(エポキシ樹脂)の物性を示す。
表4の結果から明らかなように、実施例では比較例に比べて非常に高い屈折率を示している。また、比較例5(BNFG)のフルオレン骨格の2,7位に対して、ベンゼン環を導入した実施例4(DPBNFG)では5%質量減少温度の低下が見られた一方で、ナフタレン環を導入した実施例3(DNBNFG)では5%質量減少温度が大きく向上し、耐熱性に優れている。実施例は耐熱性に優れる一方で、溶融開始温度は比較的低く、硬化剤などの他の成分と容易にまたは効率よく混合できることが分かった。特に、ナフタレン環を導入した実施例3が、ベンゼン環を導入した実施例4よりも溶融開始温度が低かったのは意外であった。
下記表5に、実施例3Aおよび実施例4,比較例5で得られたフルオレン化合物(エポキシ樹脂)を濃度30質量%で各溶媒に溶解した際の溶解性の評価結果を示す。
表5の結果から明らかなように、実施例3A(DNBNFG)は多くのベンゼン環骨格を含むため、溶解性が大きく低下することが予想されたが、測定した全ての溶媒種に対して溶解可能であり、意外にも高い溶解性を示した。特に、ナフタレン環を導入した実施例3が、ベンゼン環を導入した実施例4よりも溶解性が優れていたのは意外であった。
なお、実施例3A(DNBNFG)は、濃度50質量%であっても、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、DMFおよびDMSOに対して、それぞれ室温(25℃)で溶解し、シクロヘキサノン、PGMEA、PGME、ベンジルアルコール、1,4-ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、NMPおよびトルエンに対して、それぞれ80℃以下の加温で溶解した。
これに対して、実施例4(DPBNFG)は、濃度50wt%ではNMPに室温(25℃)で溶解したのみであった。
<硬化性組成物および硬化物の調製>
実施例3Aおよび比較例5~6のエポキシ樹脂と、硬化剤としてのフェノールノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製「PSM-4261」、水酸基当量105g/eq)とを、当量比1:1の割合となるよう仕込み、二本ロールを用いて190℃で混練した。回収した混練物を室温まで冷ました後、触媒としてのTPP(トリフェニルホスフィン、関東化学(株)製)を、エポキシ樹脂およびフェノールノボラック樹脂の総量100質量部に対して1質量部加えて、ロールを用いて120℃で混練した。得られた混練物を175℃で30分間プレス成形した後、オーブンを用いて175℃で5時間加熱(ポストキュア)して硬化物を得た。
下記表6に、実施例および比較例で得られたフルオレン化合物(エポキシ樹脂)、およびこのエポキシ樹脂を用いて得られた硬化物の物性を示す。
表6から明らかなように、実施例3Aでは、比較例5~6に比べて、高い耐熱性を示した。また、実施例3Aで用いたDNBNFGは、比較例5~6に比べて、化学構造中に多くのベンゼン環骨格を有していることから、溶解性(相溶性)の低下が予想されるにも拘らず、意外にも硬化剤などと良好な相溶性を示し、均一な硬化性組成物および硬化物を調製できた。