JP7056111B2 - 接着性樹脂組成物、それを用いたシート、容器用蓋材及び容器 - Google Patents

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Description

本発明は、剥離時に凝集破壊することで易開封性を示す接着性樹脂組成物、及びその接着性樹脂組成物の被膜が積層されたシートに関するものである。さらに詳細には、特に密着面がポリエステル系樹脂である容器に対する高い密封性と、凝集破壊することによる易開封性を有しながら、開封時の糸曳き、製造適性、耐ブロッキング性に優れた接着性樹脂組成物、及びその接着性樹脂組成物の被膜が積層されたシートに関するものである。
食品包装の分野では、これまで、カップラーメンやヨーグルト、ゼリー等の内容物を、ポリエチレン(以下、PEという)系樹脂で被覆された紙容器に充填し、該容器の開口部に、シール性の優れたヒートシール層を有する蓋材を接着する包装形態が盛んに利用されてきた。
しかし近年では、強度、透明性、耐熱性等の物理的性質が優れているという理由から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)系樹脂からなる容器の利用が増大している。
従来、主にポリエチレン系樹脂で被覆された紙容器を対象とした易開封性接着剤として、例えば、8~49質量%の少なくとも50,000の平均分子量を有する1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体、および92~51質量%の930kg/m3またはこれ以下の密度を有する変性または非変性低密度ポリエチレンを含む組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、メルトインデックスが0.1~100である熱可塑性樹脂Aと、この熱可塑性樹脂Aに非相溶系または部分相溶系の熱可塑性樹脂Bであって、メルトインデックスが前記熱可塑性樹脂Aと特定の関係にある熱可塑性樹脂Bとを特定の割合で含有する組成物が提案されている(特許文献2参照)。
さらに他の例として、メルトフローレートが1~5、密度が0.900~0.940であり、メルトテンションとメルトフローレートが特定の関係にあるエチレン系重合体(A)10~60重量%、グラフト変性オレフィン系重合体(B)1~60重量%、及びメルトフローレートが0.01~10、密度が0.880~0.925のブテン系重合体(C)10~70重量%からなる組成物が提案されている(特許文献3参照)。
特開平1-315443号公報 特開2000-302990号公報 特開2005-82736号公報
特許文献1で提案されている組成物は、ポリエチレン系樹脂で被覆された紙容器に対し、ヒートシールした場合には、密封性と易開封性の両方の性能を満たすものの、PET製の容器に対しては、接着性・密封性が不十分であった。また、接着層の凝集破壊時にシーラント樹脂の分散層である1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体と連続層である変性または非変性低密度ポリエチレンとの界面で発生すると考えられる糸曳きが発生し、剥離外観が悪いという問題があった。さらに言えば、1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体が蓋基材のポリエチレン面に対する接着性を阻害することから、ラミネート強度の低下の問題もあった。
一方、特許文献2で提案されている組成物は、主にポリエチレン系樹脂で被覆された紙容器を対象とするので、ポリエチレン系樹脂で被覆された紙容器に対し、ヒートシールした場合には、密封性と易開封性の両方の性能を満たす。しかし、PET容器に対しては、接着性・密封性が不十分であった。また、接着層の凝集破壊時にシーラント樹脂の分散層である1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体と連続層である変性または非変性低密度ポリエチレンとの界面で発生すると考えられる糸曳きが発生し、剥離外観が悪いという問題があった。さらに言えば、1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体が蓋基材のポリエチレン面に対する接着性を阻害することから、ラミネート強度の低下の問題もあった。
特許文献3で提案されている組成物は、ポリエチレン系樹脂で被覆された紙容器に対し、ヒートシールした場合には、密封性と易開封性の両方の性能を満たすものの、PET製の容器に対しては、接着性・密封性が不十分であった。また、接着層の凝集破壊時にシーラント樹脂の分散層である1-ブテンのホモポリマーまたは共重合体と連続層であるエチレン系重合体及びグラフト変性オレフィン系重合体との界面で発生すると考えられる糸曳きが発生し、剥離外観が悪いという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、耐ブロッキング性にも優れる蓋材(シート)であって、食品包装分野において近年広く利用されているPET容器に対し、十分な密封性を有しながらも、剥離する際、即ち開封する際にはジッピングのない易開封性を示し、また、糸曳きのないきれいな剥離面を形成できる蓋材(シート)を提供することである。
また、本発明の他の課題は、蓋材(シート)を製造する際の製造適性に優れる接着性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のメルトフローレート(以下、MFR)を有し、23℃における貯蔵弾性率が特定の範囲内である無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、特定のMFRのエチレン-オクテン共重合体(C)を特定範囲の比率で含有することで上記課題を解決することを見出した。すなわち、23℃における貯蔵弾性率が特定の範囲内にある無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)を用いることにより、凝集破壊を生じやすくなり、PET容器に対する易開封性を示す接着性組成物を提供することが可能となる。
さらに言えば、特定のMFRの無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)と特定のMFRのエチレン-オクテン共重合体(C)とを含むことで、剥離時の糸曳きを大きく低減できることが可能となる。
これは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)との相溶性が低く、かつ分散層であるポリブテン-1(B)とのMFR差が大きいエチレン-オクテン共重合体(C)を使用することで、前記(A)と(B)の界面で発生すると考えられる糸曳きを低減させるためだと考えられる。また、凝集力が低下することにより凝集破壊しやすくなり、PET容器に対し易開封性を示し、耐ブロッキング性にも優れる接着性組成物を提供することが可能となる。
すなわち本発明は、メルトフローレートが3~15g/10分であり、23℃における貯蔵弾性率が5×10Pa以上、5×10Pa以下である、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)35~55質量%、ポリブテン-1(B)20~40質量%、メルトフローレートが300~1500g/10分であるエチレン-オクテン共重合体(C)15~35質量%を含有する、接着性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、基材上に、上記接着性樹脂組成物の被膜が積層されたシートに関する。
また、本発明は、上記積層シートにより形成された蓋材に関する。
さらに、本発明は、ポリエステル系樹脂製の容器本体もしくは内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体と、上記蓋材とからなる、開封可能な密封容器用部材セットに関する。
さらに、本発明は、ポリエステル系樹脂製の容器本体もしくは内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体の開口部が、上記蓋材により密封された、開封可能な容器に関する。
本発明の接着性樹脂組成により、PET容器に対し十分な密封性を示し、剥離する際には凝集破壊して易開封性を示し、剥離面において糸曳きがみられず、耐ブロッキング性に優れる接着性樹脂組成物、積層シート、容器用蓋材及びそれに関する容器を得ることができる。
本願発明の接着性樹脂組成物は、前述の通り、メルトフローレートが3~15g/10分であり、23℃における貯蔵弾性率が5×10Pa以上、5×10Pa以下である、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)35~55質量%、ポリブテン-1(B)20~40質量%、メルトフローレートが300~1500g/10分であるエチレン-オクテン共重合体(C)15~35質量%を含有する。以下、「質量%」を「wt%」ということがある。
なお、本願におけるメルトフローレートとは、JIS.K7210に準ずる190℃、21.168Nにおけるメルトフローレート値である。
以下に、本発明の接着性樹脂組成物、これを積層したシート、該シートから製造される容器用蓋材、この蓋材により密封された容器について、更に詳細に説明する。
<無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)>
本発明における無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)は、オレフィン系重合体を無水マレイン酸によって変性した変性体である。例えば、過酸化物の存在下にオレフィン系重合体に無水マレイン酸を反応させることによって、得ることができる。
オレフィン系重合体としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンや、エチレンとα-オレフィンの共重合体、等が挙げられる。α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンが挙げられる。
本発明における前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)のMFRは3~15g/10分であり、好ましくは8~12g/10分である。上記の範囲内であると、易開封性、密封性及び製造適性の点で好ましい。
また、該無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)は、動的粘弾性測定により測定した、23℃における貯蔵弾性率が5×10Pa以上、5×10Pa以下であり、5×10~2×10Paであることが好ましい。5×10Pa以上であることにより、塗工適性が良好となり、5×10Pa以下であることにより、凝集破壊を促し、易開封性が良好となる。
本発明における前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)は、接着性樹脂組成物中、35~55wt%であり、好ましくは40~5wt%である。無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)が35wt%以上であることによって、蓋基材のポリエチレン面に対するラミネート強度や、容器への接着強度が向上する。また、55wt%以下であることによって凝集力を適度に低下させ、界面剥離となることを抑制でき、易開封性を向上できる。上記好ましい範囲であることにより、ラミネート強度、接着強度、易開封性の点でより好ましい。
<ポリブテン-1(B)>
本発明の接着性組成物を構成するポリブテン-1(B)は、接着性樹脂組成物中、20~40wt%であり、25~35wt%であることがより好ましい。ポリブテン-1が20wt%以上であると凝集力を適度に低下させ、界面剥離となることを抑制でき、易開封性を向上できる。40wt%以下であることにより、接着性樹脂組成物を蓋基材上に押出ラミネート加工する際、膜割れ、ネックイン等が発生せず、シートの製造適性が良好となる。上記好ましい範囲であることにより、易開封性、製造適性の点でより好ましい。
前記ポリブテン-1(B)のMFRは、0.5~5g/10分であることが好ましい。ポリブテン-1(B)のMFRが0.5g/10分以上であることにより、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)と混合しやすくなり、均一なシートを作製しやすくなる。5g/10分以下であることにより、押出ラミネート加工しやすい。
<エチレン-オクテン共重合体(C)>
本願発明の接着性樹脂組成物は、エチレン-オクテン共重合体(C)を含むことで、剥離時の糸曳きを大きく低減できるという効果を奏する。特に、MFRが300~1500g/10分のエチレン-オクテン共重合体(C)を使用することで、剥離時の糸曳きを大きく低減できるだけでなく、易開封性及び製造適性の点でも好ましい。MFRは500~1000g/10分であることが好ましい。
本発明の接着性組成物を構成するエチレン-オクテン共重合体(C)は、接着性組成物中、15~35wt%であり、20~30wt%であることがより好ましい。エチレン-オクテン共重合体が15wt%以上であると、連続層である無水マレイン酸変性ポリオレフィンと分散層であるエチレン-ブテン共重合体の界面に糸曳きが発生しにくくなり、剥離面の外観が向上する。35wt%以下であると、溶融張力が低下しにくくネックイン等が発生しにくくなり、シートの製造適性が向上する。上記好ましい範囲であることにより、糸曳き性及び製造適性の点でより好ましい。
<接着性樹脂組成物>
本発明の接着性組成物は、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、前記ポリブテン-1(B)、及び前記エチレン-オクテン共重合体(C)を、(A):(B):(C)=35~55:20~40:15~35(wt%)の組成で含有するものであり、(A):(B):(C)=40~50:25~35:20~30(wt%)の組成で含有することが好ましい。また、ポリブテン-1(B)とエチレン-オクテン共重合体(C)との合計は45~65wt%であり、5~60wt%が好ましい。但し、(A)、(B)、及び(C)の合計を100wt%とする。
無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、及びエチレン-オクテン共重合体(C)の合計量は、接着性樹脂組成物100質量%中、80質量%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲、すなわち、易開封性、密封性、糸曳き性、耐ブロッキング性、製造適性を損なわない範囲で、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、エチレン-オクテン共重合体(C)以外の樹脂を配合してもよい。
このような樹脂としては、具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等、公知のポリオレフィン樹脂及びその酸化物やマレイン酸変性物、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン-不飽和モノカルボン酸共重合体及びその金属塩、エチレン-プロピレン共重合エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合エラストマー、スチレン-ブタジエン共重合エラストマー及びその水素付加物等の各種エラストマー、あるいは、低密度ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、酸化ワックス、マレイン酸変性ワックス、スチレンモノマーのグラフトされたポリエチレンワックス等、公知のワックスが挙げられる。また、これらの樹脂は、単独で用いられても、2種類以上が併用されてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱分解、ブロッキング等を防止するためおよびフィルム加工、押出ラミネート加工等の加工適正を確保するために、さらに添加剤等が使用されてもよい。添加剤の例としては、例えばエルカ酸アミド等の有機滑剤、炭酸カルシウムやタルク等の無機滑剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、その他ブロッキング防止剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。これら添加剤は、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、エチレン-オクテン共重合体(C)の配合時に添加されてもよいし、予め無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、エチレン-オクテン共重合体(C)、及び粘着付与樹脂(D)のいずれかに練りこまれた後、添加剤が練りこまれた無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、及びエチレン-オクテン共重合体(C)を他の成分と混練することにより配合されてもよい。
無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、エチレン-オクテン共重合体(C)、及び必要に応じ用いられる添加剤の配合は、例えば、これら各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの混合装置に投入し、ブレンド時間5~20分間で混合した後、押出機に入れ、加熱混練した後押し出すことにより行われる。押出物は通常ペレット形状とされて、後の工程で利用される。押出機としては、例えば二軸押出機などが好ましいものとして挙げられるが、これに限られるものではない。また、押出は、通常140~200℃で行われる。
<積層シート>
次に、本発明の接着性樹脂組成物の被膜が積層されたシートについて説明する。
上記の如くして製造された接着性樹脂組成物は、基材シート上に積層される。
本発明の接着性樹脂組成物の基材シートへの積層方法としては、例えば、前記のごとくペレット化された樹脂組成物を用い、インフレーション法あるいはキャスト法などにより単層フィルム化し、このフィルムを基材シートと必要であれば接着剤層を介して積層する方法が挙げられる。あるいは、混練された組成物を直接基材シートに被覆してもよいし、更に他の方法がとられてもよい。
積層面の接着性を改善するために、基材シート面に火炎処理、オゾン処理、コロナ放電処理、アンカーコート剤による処理が行われてもよい。ポリエチレン系樹脂を予めラミネートしてある基材に対しては、ダイレクトに押出しラミネートすることも可能である。また、ポリエチレンやポリプロピレン等との共押出しで多層フィルム化しておき、ドライラミネーションまたはサンドラミネーションにより、基材となるポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸または未延伸フィルムと積層することにより、積層シートを得ることもできる。この場合にも、積層面の接着性を改善するために、必要であれば、基材シート面に対し、火炎処理、オゾン処理、コロナ放電処理、アンカーコート剤による処理などが行われてもよい。
また、本発明の接着性樹脂組成物層の厚みは、5μm以上とされ、10μm以上が好ましい。
なお、本発明で「シート」という用語は、長尺およびカットされた短尺のフィルム、シートを包含するものとして用いられ、さらに基材シートは単層のものおよび複数の層からなる積層物をも包含するものである。
また、本発明の接着性樹脂組成物が積層された積層シートは、後述するように蓋材として使用する他、これをシーラントフィルムとした製袋品(接着性樹脂組成物面を内面としてシール)にも好適に使用できる。
<蓋材>
本発明の接着性樹脂組成物が積層されたシートは、密封対象である容器本体の開口形状に合わせて裁断され蓋材として好適に用いられる。
蓋材として用いる場合、種々の基材に積層した形で使用される。使用される基材としては、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどを挙げることができる。このような基材は、単層である必要はなく、二層以上の積層体であっても良い。
基材シートとしては、例えば5~20μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)と5~30μmのポリエチレンとの積層体を用いることが好ましい。そして、本発明の蓋材は、前記積層体のポリエチレン面に、5~40μmの本発明の接着性樹脂組成物の被膜を積層したものが好ましい。
本発明の蓋材は、各種容器に使用することができるが、特に密封面がPET系樹脂である容器に使用した場合、密封性、易開封性、剥離外観の優れた蓋材となる。
<容器本体>
容器本体としては、ポリエステル系樹脂製の容器本体、内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体の他、ポリエチレン系樹脂製の容器本体、内面がポリエチレン系樹脂で覆われた容器本体等が挙げられ、特に、ポリエステル系樹脂製の容器本体、内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体が好ましい。
<開封可能な密封容器>
本発明の開封可能な密封容器は、容器本体の開口形状に合わせて裁断され蓋材によって、容器本体の開口部の封緘がなされたものである。即ち、蓋材の一方の面に配設された本発明の接着性樹脂組成物と、密封容器の開口部周囲の密封予定面(フランジとも言われる)とを接触させ加熱することによって、両者を接着する。接着条件は、110~170℃であることが好ましい。
容器本体がPET容器の場合、該容器本体と前記蓋材とを熱接着温度110~170℃で熱接着を行うことが好ましく、常温での封緘強度が18kPa以上、常温での開封強度が7~14Nの範囲であり、また剥離時に熱接着層が凝集破壊することが好ましい。
本発明の開封可能な密封には、例えばゼリー、プリン、ヨーグルトや冷菓、乾燥菓子、カップ麺等を包装することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
<接着性樹脂組成物の製造方法>
[実施例1~11および比較例1~8]
<接着性樹脂組成物(S-1)~(S-11)、(S-101)~(S-108)の製造>
表1、2に示した原料及び配合比率(Wt%)で、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)、ポリブテン-1(B)、エチレン-オクテン共重合体(C)等をヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダーを用いて下記押出機に供給し、ペレット状の接着性樹脂組成物(S-1)~(S-11)、(S-101)~(S-108)を作成した。
なお、添加剤として、ブロッキング防止剤:インクロスリップC(クローダ社製、DSC融点80℃、エルカ酸アミド)及び酸化防止剤:IRGANOX 10100(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)は各処方に0.1部ずつ一律に添加した。
≪押出機条件≫
押出機:アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32-40.5
バレル温度:180℃(供給口160℃)
スクリュー回転速度:200rmp
供給速度:10kg/hr
<接着性樹脂組成物の評価>
ペレット状の接着性樹脂組成物(S-1)~(S-11)、(S-101)~(S-108)について、積層シートを作製し、該積層シートを用いて、開封強度(易開封性)、封緘強度(密封性)、剥離時外観、耐ブロッキング性、塗工適性(加工性)、を、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表1、2に示す。
(積層シートの作製方法)
25μmのPETと12μmのポリエチレン(以下、PEという)とが積層された基材のポリエチレン(以下、PEという)面に、ペレット状の接着性樹脂組成物を、押出しラミネーターを用いて、厚さ20μmで積層して積層シートを作成した。以下に加工条件を示す。
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーターダイ直下樹脂温度:240℃。
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
<製造適性(塗工適性)>
積層シートの作製において、樹脂切れ、膜厚が不安定、ネックインがはげしい等の押出ラミネート加工上の不具合が生じた場合に、作製不可とした。
〇: 積層シートの作製可能
×: 積層シートの作製不可
<耐ブロッキング性>
上記の積層シート(蓋材)を5mm×5mmのサイズに断裁した後、10枚に重ね、45℃雰囲気内で1kg/cmの荷重をかけ、24時間静置する。その後、温度23℃、湿度65%の恒温恒湿室に1時間静置し、蓋材を手で剥離した際のブロッキングの有無を確認し、下記基準で評価した。
5: 抵抗感なく剥がれる(非常に良好)
4: 若干の抵抗感を伴って剥がれる(良好)
3: 抵抗感と音を伴って剥がれる(使用可)
2: 大きな抵抗感と音を伴って剥がれる(やや悪い(使用不可))
1: ブロッキングして剥がれない(悪い(使用不可))
<封緘強度(密封性)>
上記の積層シート(蓋材)を90mm×90mmのサイズに断裁後、ゲージ圧0.3MPa、15℃、1秒にてPET容器(71Φ)に、接着性樹脂組成物面を熱接着し、密封を行なった。温度23℃湿度65%の恒温恒湿室に24時間放置し、同恒温恒湿室にて昇圧速度13.3kPa/10秒で容器内圧を上昇させ、空気漏れが発生するまでのPET容器内圧の最大値を封緘強度とする。一般的に、18kPa以上の封緘強度であれば十分な密封性を有しているといるため、密封性を下記基準で評価した。
〇: 封緘強度が18kPa以上
×: 封緘強度が18kPa未満
<開封強度(易開封性)>
上記の積層シート(蓋材)を90mm×90mmのサイズに断裁後、ゲージ圧0.3MPa、15℃、1秒にて71ΦPET容器に、接着性樹脂組成物面を熱接着し、密封を行なった。温度23℃湿度65%の恒温恒湿室に24時間放置し、同恒温恒湿室にて45°の角度で剥離速度200mm/分の条件で測定を行い、最大値を開封強度とし、易開封性を下記基準で評価した。
〇: 9N以上、15N未満
△: 7N以上、9N未満
×: 7N未満、又は15N以上
<外観評価(糸曳き性)>
上記開封強度測定時のPET容器フランジ部の糸曳きの有無を目視で確認し、下記基準で評価した。
〇: フランジ部に糸曳きのないもの
△: 若干糸曳きがみられたもの
×: 著しい糸曳きがみられたもの
-:接着性樹脂組成物層が凝集破壊せず界面で剥離。
Figure 0007056111000001

Figure 0007056111000002

表1、2で用いた原料略称を以下に示す。
(A1):アドマーSF725(AT3101)(三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、MFR9.5g/10分、DSC融点℃、23℃における貯蔵弾性率1.2×10Pa)
(A2):アドマーSE810(三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、MFR6.3g/10分、DSC融点125℃、23℃における貯蔵弾性率2.5×10Pa)
(A3):UBE BOND F1100(宇部丸善ポリエチレン社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、MFR5g/10分、DSC融点115℃、23℃における貯蔵弾性率1.5×10Pa)
(A4):アドマーQE840(三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、MFR9.2g/10分、DSC融点140℃、23℃における貯蔵弾性率1.4×10Pa)
(A5):タフマーMA8510(三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、MFR2.4g/10分、DSC融点74℃、23℃における貯蔵弾性率1.0×10Pa)
(A6’):ペトロセン212(東ソー社製、低密度ポリエチレン(LDPE)、MFR13g/10分、DSC融点107℃、23℃における貯蔵弾性率4.1×10Pa)
(B1):タフマーBL4000(三井化学社製、ポリブテン-1、MFR1.8g/10分、DSC融点125℃)
(C1):アフィニティGA1900(ダウ社製、エチレン-オクテン共重合体、MFR1000g/10分、DSC融点68℃)
(C2):アフィニティGA195(ダウ社製、エチレン-オクテン共重合体、MFR50g/10分、DSC融点70℃)
(C3):アフィニティGA1875(ダウ社製、エチレン-オクテン共重合体、MFR1250g/10分、DSC融点70℃)
(C4):エンゲージ8400(ダウ社製、エチレン-オクテン共重合体、MFR30g/10分、DSC融点65℃)
<動的粘弾性測定>
貯蔵弾性率及び損失正接の測定は、ユー・ビー・エム社製Rheosol-G3000を用い、JIS K7244-1に準拠した動的粘弾性測定法(アタッチメントモード:せん断モード、周波数:1Hz、温度:20℃~160℃、昇温速度:2℃/分)にて行った。
本発明でいうDSC融点とは、DSCにおける融解ピークの温度をいう。DSCの測定条件は以下の通り。
装置名:PERKIN ELMER社製、示差走査熱量測定機「Pyris1」
加熱速度:10℃/分
表1、2に示すように、比較例1~8では結果が不十分であるのに対し、特定の樹脂(A)~(C)を特定比率で含む実施例1~11は、易開封性、密封性、外観評価、耐ブロッキング性、塗工適性全てを両立していることが示された。

Claims (5)

  1. JIS.K7210に準ずる190℃、21.168Nにおけるメルトフローレートが3~15g/10分であり、23℃における貯蔵弾性率が5×10 Pa以上、5×10 Pa以下である、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(A)35~55質量% 、ポリブテン-1(B)20~40質量% 、JIS.K7210に準ずる190℃、21.168Nにおけるメルトフローレートが300~1500g/10分であるエチレン-オクテン共重合体(C)15~35質量%を含有する、接着性樹脂組成物。
  2. 基材上に、請求項1記載の接着性樹脂組成物の被膜が積層されたシート。
  3. 請求項2に記載の積層シートにより形成された蓋材。
  4. ポリエステル系樹脂製の容器本体もしくは内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体と、請求項3記載の蓋材とからなる、開封可能な密封容器用部材セット。
  5. ポリエステル系樹脂製の容器本体もしくは内面がポリエステル系樹脂で覆われた容器本体の開口部が、請求項3に記載の蓋材により密封された、開封可能な容器。

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