JP7055907B2 - 硫化物系無機固体電解質材料の評価方法 - Google Patents
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Description
すなわち、Yxy表色系で規定される色度(y)という尺度が、リチウムイオン伝導性および製膜性に優れた硫化物系無機固体電解質材料を実現するための設計指針として有効であることを見出し、本発明に到達した。
リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、P、およびSを含む粉末状の硫化物系無機固体電解質材料の、Yxy表色系で規定される色度(y)が0.480以上0.500以下であるか否かを評価する、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法
が提供される。
はじめに、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料について説明する。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、P、およびSを含む粉末状の硫化物系無機固体電解質材料である。
そして、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料のYxy表色系で規定される色度(y)は0.470以上、好ましくは0.475以上、より好ましくは0.480以上、特に好ましくは0.483以上である。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料のYxy表色系で規定される色度(y)は0.510未満、好ましくは0.500以下、より好ましくは0.495以下である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料において、上記色度(y)を上記範囲内とすることにより、粉末同士の結着性が良好となり、固体電解質膜をより薄く、より広く、かつより緻密に形成することができ、クラックの発生が抑制された固体電解質膜を安定的に得ることが可能となる。
まず、粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を30mLのガラス容器に充填する。次いで、微小面測定用のクローズアップレンズを取り付けた色彩色差計の焦点をガラス容器越しにガラス容器の底面に合わせる。そして、ガラス容器に充填された硫化物系無機固体電解質材料の色度(x)および色度(y)を色彩色差計により計測する。
ここで、色彩色差計および微小面測定用のクローズアップレンズとしては、例えば、コニカミノルタ社製CS-100およびNo.110をそれぞれ使用することができる。
ガラス容器としては、例えば、アクリルガラス製の容器を用いることができる。
そこで、本発明者らはリチウムイオン伝導性および製膜性に優れた硫化物系無機固体電解質材料を実現するための設計指針について鋭意検討した。その結果、Yxy表色系で規定される色度(y)が上記範囲内である硫化物系無機固体電解質材料が粉末同士の結着性に優れ、クラックの発生が抑制された固体電解質膜を安定的に得ることができることを見出した。
色度(x)および色度(y)は色相・彩度の情報に対応する。色度(x)が大きくなるほど赤みの比率が増し、色度(x)が小さくなるほど青みの比率が増す。一方、色度(y)が大きくなるほど緑みの比率が増し、色度(y)が小さくなるほど青みの比率が増す。
本発明者らは特定の色を呈する硫化物系無機固体電解質材料が粉末同士の結着性に優れ、クラックの発生が抑制された固体電解質膜を安定的に得ることができることを見出した。そして、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は上記特定の色を色度(y)により表現したものである。
安息角を上記下限値以上とすることにより、硫化物系無機固体電解質材料の粉末同士の結着性がより良好となり、クラックの発生が抑制された固体電解質膜をより安定的に得ることが可能となる。
また、安息角を上記上限値以下とすることにより、硫化物系無機固体電解質材料のハンドリング性をより向上させることができる。
安息角は、例えば、粉末流動計(古河機械金属社製、JIS Z2502準拠)を用いて測定することができる。
IB/IAを上記上限値以下とすることにより、硫化物系無機固体電解質材のリチウムイオン伝導性をより向上させることができる。さらに、このような硫化物系無機固体電解質材料を用いると、入出力特性により一層優れた全固体型リチウムイオン電池を得ることができる。
したがって、IB/IAは、硫化物系無機固体電解質材中の硫化リチウムの含有量の指標を表している。IB/IAが小さいほど、硫化物系無機固体電解質材に含まれる硫化リチウムの量が少ないことを意味する。
硫化リチウムはリチウムイオン伝導性が低いため、硫化リチウムの含有量が少ないほど硫化物系無機固体電解質材のリチウムイオン伝導性は向上するものと考えられる。
また、IB/IAは小さければ小さいほど好ましいため下限値は特に限定されないが、例えば0.01以上である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が上記下限値以上であると、より一層電池特性に優れた全固体型リチウムイオン電池を得ることができる。
また、Pの含有量に対するSの含有量のモル比(S/P)が好ましくは1.0以上10.0以下であり、より好ましくは2.5以上6.0以下であり、さらに好ましくは3.0以上5.0以下であり、さらにより好ましくは3.5以上4.8以下であり、特に好ましくは3.7以上4.5以下である。
ここで、本実施形態の固体電解質材料中のLi、P、およびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上40μm以下であり、より好ましくは2μm以上30μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下である。
硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、得られる固体電解質膜のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層されたものが挙げられる。この場合、固体電解質層が硫化物系無機固体電解質材料により構成されたものである。
次に、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法は、従来の硫化物系無機固体電解質材料の製造方法とは異なるものである。色度(x)および色度(y)が上記範囲内にある本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率や、原料である無機組成物を結晶化してからガラス化すること等の製造条件を高度に制御することが重要である。
より具体的には、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、以下の(A)~(C)の工程を含む製造方法により得ることができる。また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法は、以下の(D)の工程をさらに含んでもよい。
工程(B):準備した無機組成物を加熱することにより無機組成物を結晶化する工程
工程(C):結晶化した無機組成物を機械的処理することにより、原料である無機化合物同士を化学反応させながら無機組成物をガラス化する工程
工程(D):得られた硫化物系無機固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程
まず、ガラス状態の無機組成物は準安定状態である。一方、結晶状態の無機組成物は安定状態にある。また、2種以上の無機化合物を含む無機組成物を加熱すると活性化エネルギー以上のエネルギーを簡単に与えることができるので、エネルギーの放出とともに低いエネルギー状態である結晶状態の無機組成物が短時間で得られる。そして、安定状態の自由エネルギーと準安定状態の自由エネルギーは近いため、より小さなエネルギーで安定状態の結晶状態から準安定状態のガラス状態にすることができる。
以上の理由から、無機組成物をガラス化する工程(C)の前に、無機組成物を結晶化する工程(B)をおこない、あらかじめ無機組成物を安定状態である結晶状態とすることにより、より小さなエネルギーで準安定状態のガラス状態にすることができ、従来の製造方法に比べて、無機組成物をガラス化する工程を大幅に短縮することができると考えられる。
そして、より小さなエネルギーで準安定状態のガラス状態にすることができるため、色度(x)および色度(y)が上記範囲内にある本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料が得られると考えられる。
はじめに、原料である2種以上の無機化合物を含む無機組成物を準備する。
無機化合物としては機械的処理により互いに化学反応して、構成元素としてLi、P、およびSを含む硫化物系無機固体電解質材料を生成する化合物を2種以上用いる。これらの無機化合物は、生成させる硫化物系無機固体電解質材料に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化リチウム、硫化リン、窒化リチウム等を用いることができる。
2種以上の無機化合物を混合する方法としては各無機化合物を均一に混合できる混合方法であれば特に限定されないが、例えば、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、打撃粉砕装置、ミキサー(パグミキサー、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ドラムミキサー、V型混合器等)、気流粉砕機等を用いて混合することができる。
各無機化合物を混合するときの攪拌速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度等の混合条件は、混合物の処理量によって適宜決定することができる。
ここで、本実施形態において、硫化リチウムには多硫化リチウムも含まれる。
本実施形態の窒化リチウムとしては特に限定されず、市販されている窒化リチウム(例えば、Li3N等)を使用してもよいし、例えば、金属リチウム(例えば、Li箔)と窒素ガスとの反応により得られる窒化リチウムを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ない窒化リチウムを使用することが好ましい。
つづいて、準備した無機組成物を加熱することにより無機組成物を結晶化する。
無機組成物を加熱する際の温度としては特に限定されないが、200℃以上400℃以下の範囲内であることが好ましく、220℃以上320℃以下の範囲内であることがより好ましい。
つづいて、結晶化した無機組成物を機械的処理することにより、原料である無機化合物同士を化学反応させながら無機組成物をガラス化する。
ここで、機械的処理は、原料である2種以上の無機化合物を機械的に衝突させることにより、化学反応させながら無機組成物をガラス化させることができるものであり、例えば、メカノケミカル処理等が挙げられる。
また、非活性雰囲気下とは、真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下のことである。上記非活性雰囲気下では、水分の接触を避けるために露点が-50℃以下であることが好ましく、-60℃以下であることがより好ましい。上記不活性ガス雰囲気下とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下のことである。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法等が挙げられる。
通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、結晶化した無機組成物の回折ピークが消失または低下していたら、無機組成物はガラス化され、所望の硫化物系無機固体電解質材料が得られていると判断することができる。
IB/IAを上記上限値以下とすることにより、硫化物系無機固体電解質材のリチウムイオン伝導性をより向上させることができる。さらに、このような硫化物系無機固体電解質材料を用いると、入出力特性により一層優れた全固体型リチウムイオン電池を得ることができる。
ここで、回折角2θ=15.7±0.3°の位置における最大回折強度は、基準の回折強度であり、回折角2θ=26.9±0.9°の位置に存在する回折ピークは硫化リチウム由来の回折ピークである。
したがって、IB/IAは、硫化物系無機固体電解質材中の硫化リチウムの含有量の指標を表している。IB/IAが小さいほど、硫化物系無機固体電解質材に含まれる硫化リチウムの量が少ないことを意味する。
硫化リチウムはリチウムイオン伝導性が低いため、硫化リチウムの含有量が少ないほど硫化物系無機固体電解質材のリチウムイオン伝導性は向上するものと考えられる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法では、必要に応じて、得られた硫化物系無機固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程をさらにおこなってもよい。例えば、粉砕により微粒子化し、その後、分級操作や造粒操作によって粒子径を調整することにより、所望の粒子径を有する硫化物系無機固体電解質材料を得ることができる。上記粉砕方法としては特に限定されず、ミキサー、気流粉砕、乳鉢、回転ミル、コーヒーミル等公知の粉砕方法を用いることができる。また、上記分級方法としては特に限定されず、篩等公知の方法を用いることができる。
これらの粉砕または分級は、空気中の水分との接触を防ぐことができる点から、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。
次に、本実施形態に係る固体電解質膜について説明する。
本実施形態に係る固体電解質膜は、前述した本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質膜である。
本実施形態に係る固体電解質膜を適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層されたものが挙げられる。この場合、固体電解質層が固体電解質膜により構成されたものである。
加圧成形体とすることにより、無機固体電解質材料同士の結合が起こり、得られる固体電解質膜の強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料の欠落や、無機固体電解質材料表面のクラックの発生をより一層抑制できる。
これにより、固体電解質材料間の接触性が改善され、固体電解質膜の界面接触抵抗を低下させることができる。その結果、固体電解質膜のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。そして、このようなリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質膜を用いることにより、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
なお、「バインダー樹脂を実質的に含まない」とは、本実施形態の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。また、固体電解質層と正極層または負極層との間に粘着性樹脂層を設ける場合、固体電解質層と粘着性樹脂層との界面近傍に存在する粘着性樹脂層由来の粘着性樹脂は、「固体電解質膜中のバインダー樹脂」から除かれる。
上記硫化物系無機固体電解質材料を加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型のキャビティ表面上に粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を堆積させた場合は金型と押し型によるプレス、粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を基材表面上に堆積させた場合は金型と押し型によるプレスやロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
硫化物系無機固体電解質材料を加圧する圧力は、例えば、10MPa以上500MPa以下である。
硫化物系無機固体電解質材料を加熱する温度は、例えば、40℃以上500℃以下である。
つぎに、本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の全固体型リチウムイオン電池200の構造の一例を模式的に示した断面図である。本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200はリチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン一次電池であってもよい。
また、実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とにより構成される単位セルを2つ以上積層させることにより、バイポーラ型リチウムイオン電池とすることもできる。
全固体型リチウムイオン電池200の形状は特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状が挙げられる。
正極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
正極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極層に使用可能な一般的に公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、固溶体酸化物(Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Ni等))、リチウム-マンガン-ニッケル酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li2S、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS2、FeS、MoS2、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物等の硫化物系正極活物質;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉等の硫黄を活物質とした材料;等を用いることができる。これらの正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、硫化物系正極活物質が好ましく、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物から選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、Li-Ti-S化合物は構成元素としてLi、Ti、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるチタン硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
Li-V-S化合物は構成元素としてLi、V、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるバナジウム硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
正極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
負極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
負極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極層に使用可能な一般的に公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした金属系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、P、およびSを含む粉末状の硫化物系無機固体電解質材料であって、
下記の方法で測定される前記硫化物系無機固体電解質材料のYxy表色系で規定される色度(y)が0.470以上0.510未満である硫化物系無機固体電解質材料。
(方法)
粉末状の前記硫化物系無機固体電解質材料を30mLのガラス容器に充填し、微小面測定用のクローズアップレンズを取り付けた色彩色差計の焦点を前記ガラス容器越しに前記ガラス容器の底面に合わせ、前記ガラス容器に充填された前記硫化物系無機固体電解質材料の色度(x)および色度(y)を前記色彩色差計により計測する。
2.
1.に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
前記硫化物系無機固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が1.0以上10.0以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が1.0以上10.0以下である硫化物系無機固体電解質材料。
3.
1.または2.に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
前記色度(x)が0.350以上0.400以下である硫化物系無機固体電解質材料。
4.
1.乃至3.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
25℃、アルゴン雰囲気下で測定される安息角が57°以上70°以下である硫化物系無機固体電解質材料。
5.
1.乃至4.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、前記硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d 50 が1μm以上40μm以下である硫化物系無機固体電解質材料。
6.
1.乃至5.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
全固体型リチウムイオン電池を構成する固体電解質層に用いられる硫化物系無機固体電解質材料。
7.
1.乃至6.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=15.7±0.3°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度I A とし、回折角2θ=26.9±0.9°の位置に存在する回折ピークの回折強度をI B としたとき、I B /I A の値が20.0以下である硫化物系無機固体電解質材料。
8.
1.乃至7.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法による、前記硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が1.0×10 -4 S・cm -1 以上である硫化物系無機固体電解質材料。
9.
1.乃至8.のいずれか一つに記載の硫化物系無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質膜。
10.
正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池であって、
前記固体電解質層が9.に記載の固体電解質膜により構成されたものである全固体型リチウムイオン電池。
はじめに、以下の実施例および比較例における評価方法を説明する。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、各硫化物系無機固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)をそれぞれ求めた。
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それに基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
X線回折装置(リガク社製、RINT2000)を用いて、X線回折分析法により、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料の回折スペクトルをそれぞれ求めた。なお、線源としてCuKα線を用いた。ここで、回折角2θ=15.7±0.3°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=26.9±0.9°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIBとし、IB/IAを求めた。
実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度の測定をおこなった。
リチウムイオン伝導度の測定は、北斗電工社製のポテンショスタット/ガルバノスタットSP-300を用いた。試料の大きさはφ9.5mm、厚さ1.3mm、測定条件は、印加電圧10mV、測定温度27.0℃、測定周波数域0.1Hz~7MHz、電極はLi箔とした。
ここで、リチウムイオン伝導度測定用の試料としては、プレス装置を用いて、実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を270MPa、10分間プレスして得られる厚さ1.3mmの板状の硫化物系無機固体電解質材料を用いた。
まず、実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を30mLのアクリルガラス製容器に充填した。次いで、アルゴングローブボックスの中に硫化物系無機固体電解質材料を充填したアクリルガラス製容器を設置し、アルゴングローブボックスの外から微小面測定用のクローズアップレンズNo.110を取り付けた色彩色差計(コニカミノルタ社製CS-100)の焦点をアクリルガラス製容器越しにアクリルガラス製容器の底面(φ25mm)に合わせた。そして、アクリルガラス製容器に充填された硫化物系無機固体電解質材料の色度(x)および色度(y)を色彩色差計により計測した。同じ場所の計測を5回行い、平均値を硫化物系無機固体電解質材料の色度(x)および色度(y)とした。
安息角の測定は粉体流動計(古河機械金属社製、JIS Z2502準拠)を用いて注入法で行った。実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料5gを秤量し、漏斗(傾斜角60°)底部のφ2.63mm(排出孔径)のオリフィスから硫化物系無機固体電解質材料をφ14mmの円板に円錐状に堆積させ、その円錐の母線と底面とがなす角(安息角)αを計測した。ここで、漏斗の排出孔から円板までの距離は25mmとした。
tan α=円錐の高さ/(0.5×円板の直径)
実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料10mgを、270MPaでφ14mm×0.4mmにプレス成型して固体電解質膜を作製した。次いで、得られた固体電解質膜の表面を電子顕微鏡(SEM)で観察し、硫化物系無機固体電解質材料の製膜性を以下の基準で評価した。
〇:硫化物系無機固体電解質材料の粉末同士の結着性が良好で、かつ、硫化物系無機固体電解質材料の粉末同士が結着して硫化物系無機固体電解質材料が緻密化している
×:硫化物系無機固体電解質材料の粉末同士の結着性が不良で、かつ、固体電解質膜表面に細かいクラックが発生し、硫化物系無機固体電解質材料が緻密化していない
構成元素としてLi、PおよびSを含む粉末状の硫化物系無機固体電解質材料を以下の手順で作製した。
原料には、Li2S(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P2S5(関東化学製試薬)を使用した。Li3Nは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製純度99.8%、厚さ0.5mm)にステンレス製の剣山を使用し、φ1mm以下の穴を多数開けた。Li箔は穴の部分から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLi3Nに変化した。Li3Nは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、75μm以下の粉末を回収し硫化物系無機固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLi2S:P2S5:Li3N=67.5:22.5:10.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合し、無機組成物を得た。次いで、無機組成物5gを秤量し、アルミナルツボ中で300℃、1時間加熱処理し、無機組成物を結晶化した。次いで、結晶化した無機組成物2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、125rpmで6時間混合粉砕することで硫化物系無機固体電解質材料を得た。
得られた硫化物系無機固体電解質材料について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
Li/PおよびS/Pが表1に示す値になるように各原料の比率を変更した以外は実施例1と同様にして硫化物系無機固体電解質材料をそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
原料には、Li2S(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P2S5(関東化学製試薬)を使用した。つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLi2S:P2S5=80.0:20.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を10分間メノウ乳鉢で混合し、無機組成物を得た。次いで、無機組成物5gを秤量し、アルミナルツボ中で220℃で1時間加熱処理し、無機組成物を結晶化した。結晶化した無機組成物2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、125rpmで6時間混合粉砕することで硫化物系無機固体電解質材料を得た。
得られた硫化物系無機固体電解質材料について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を240℃に変更した以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を260℃に変更した以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を280℃に変更した以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を300℃に変更した以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を280℃に変更し、かつ、各原料の割合をLi2S:P2S5=70.0:30.0(モル%)とした以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機組成物の加熱処理温度を280℃に変更し、かつ、各原料の割合をLi2S:P2S5=75.0:25.0(モル%)とした以外は実施例5と同様にして硫化物系無機固体電解質材料をそれぞれ作製し、各評価をおこなった。
得られた結果を表1に示す。
原料には、Li2S(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P2S5(関東化学製試薬)を使用した。つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLi2S:P2S5=80.0:20.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合し、無機組成物を得た。次いで、無機組成物2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、 125rpmで200時間混合粉砕することで硫化物系無機固体電解質材料を得た。
得られた硫化物系無機固体電解質材料について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
210 正極層
220 固体電解質層
230 負極層
Claims (8)
- リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、P、およびSを含む粉末状の硫化物系無機固体電解質材料の、Yxy表色系で規定される色度(y)が0.480以上0.500以下であるか否かを評価する、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。
- 請求項1に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
さらに、前記硫化物系無機固体電解質材料の、Yxy表色系で規定される色度(x)を評価する、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項2に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
前記色度(x)が0.350以上0.400以下であるか否かを評価する、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
前記硫化物系無機固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が1.0以上10.0以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が1.0以上10.0以下である、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
前記前記硫化物系無機固体電解質材料の、25℃、アルゴン雰囲気下で測定される安息角が57°以上70°以下である、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、前記硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d50が1μm以上40μm以下である、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
前記硫化物系無機固体電解質材料の、線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=15.7±0.3°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=26.9±0.9°の位置に存在する回折ピークの回折強度をIBとしたとき、IB/IAの値が20.0以下である、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載の硫化物系無機固体電解質材料の評価方法であって、
27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法による、前記硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が1.0×10-4S・cm-1以上である、硫化物系無機固体電解質材料の評価方法。
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