以下、本発明に係るワーククランプトレイの実施形態として第1および第2実施形態を例に挙げ、これらについて各図を参照しながら詳述する。但し本発明の内容は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明においてx、y、およびzの直交座標軸は、図1(第1実施形態の場合)および図7(第2実施形態の場合)に示す通りである。また、特に断りの無い限り、「平面方向」はxy平面の方向(各プレート部材の平面が広がる方向)であり、「積層方向」はz方向(各プレート部材が積層される方向)であるとする。
[第1実施形態]
まず第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係るワーククランプトレイ1(以下、「クランプトレイ1」と記すことがある)の斜視図を示す。図1に示すようにクランプトレイ1は、ベースプレート11、枠プレート13、およびカバープレート12の各プレート部材が、この順に積層配置された構成となっている。
また、クランプトレイ1の内部には、可動プレート14(図3を参照)が配置されているとともに、複数個(図1の例では4個)の柱部15が平面方向に離隔配置されている。なお、ベースプレート11と枠プレート13の間、および枠プレート13とカバープレート12の間の少なくとも一方には、可動プレート14の移動を円滑にするため、所定厚さのスペーサープレートが介装されても良い。
次に各プレート部材の構成について、図2~図4を参照しながら以下に説明する。図2は、ベースプレート11の平面図である。本図に示すようにベースプレート11は、四角形の1つ角部を切り取った形状となっている。なお、図2に点線で示す部分は、ベースプレート11における柱部15の取り付け部分を示している。また図2に示すベースプレート11には右上角部を除く3つの角部に、各プレートを重ね合わせて位置決めした状態で貼り合わせる際に使用する貼り合わせ用穴8aが形成されている。そしてまた、ベースプレート11の右上角部及び左下角部には移動用穴6a,7aが形成されている。この移動用穴6a,7aは可動プレート14を移動させる際に用いられる。詳細は後述する。
図3は、枠プレート13および可動プレート14の平面図である。枠プレート13は、ベースプレート11と同じ外形で、内側に中央空間を有している。そして、切り取られた角部(図3の右上角部)には中央空間と連通する切り欠き部13bが形成されている。また図3に示す枠プレート13には右上角部を除く3つの角部に、各プレートを重ね合わせて位置決めした状態で貼り合わせる際に使用する貼り合わせ用穴8bが形成されている。可動プレート14は、枠プレート13の中央空間に所定方向(図3に着色矢印で示す方向)へ移動可能に配置されており、複数個(図3の例では16個)の位置決め穴14aが形成されている。
また、四角形状の可動プレート14は、対向する角部から外方に突出する第1突出部14dと第2突出部14eとを有する。第1突出部14dは枠プレート13の切り欠き部13bから外方に突出し、第2突出部14eは枠プレート13の切り欠き部13cに係入している。また、第1突出部14d及び第2突出部14eには移動用穴6b,7bが形成されている。
また、図3の位置決め穴14aの拡大図に示すように、可動プレート14に形成された各位置決め穴14aは、内壁面141,142,143,144から構成される平面視において四角形状を有する。位置決め穴14aの内壁面141にはワークをx方向に付勢する略U字状の第1板ばね(弾性部材)14bが形成され、内壁面142にはy方向に付勢する略U字状の第2板ばね(弾性部材)14cが形成されている。
また、隣り合う内壁面143と内壁面144とが接続する角部、すなわち、第1板ばね14b及び第2板ばね14cの形成位置と対向する位置には、位置決め穴14aの内方に向かって突出する押し出し部(強制移動手段)145が形成されている。
なお、押し出し部145の、内壁面143と内壁面144との仮想接続点Oからの可動プレート14の移動方向の長さLは、可動プレート14が固定位置にあるとき、固定されたワークと接触せず(図6(a)を参照)、可動プレート14が固定位置から非固定位置に移動する途中においてワークと当接し、ワークを可動プレート14の移動方向に移動させる長さに設定される。ここで、押し出し部145によるワークの移動量は、収容穴の内壁面とワークとの当接状態が解消される移動量で足りる。換言すれば、可動プレート14が非固定位置とされたときに、押し出し部145と収容穴12aの内壁面とでワークWが挟持されないようにする必要がある。
位置決め穴14aの各々に設けられる押し出し部145は複数であってもよく、例えば位置決め穴14aの内壁面143と内壁面144の各々に設けてもよい。
なお、第1板ばね14b、第2板ばね14c、押し出し部145は、可動プレート14と別体に作製し、可動プレート14に取り付けても構わないが、部品数の増加を抑えてクランプトレイ1の組み立て作業を容易化する観点などから、第1板ばね14b、第2板ばね14c、押し出し部145は可動プレート14と一体に形成するのが望ましい。第1板ばね14b、第2板ばね14c、押し出し部145および可動プレート14を一体形成する際には、従来公知の形成方法を用いることができ、中でもフォトエッチング加工が好適に使用できる。
また、図3に示すように、枠プレート13の各内壁面には、可動プレート14の移動可能方向へ可動プレート14を付勢するバネ部材(付勢部材)13aが、枠プレート13および可動プレート14と一体に形成されている。枠プレート13、バネ部材13a、および可動プレート14を一体形成する際には、前述のフォトエッチング加工が好適に使用できる。
図4は、カバープレート12の平面図である。カバープレート12はベースプレート11と同じ外形を有しており、ワーク(チップ等でも良い)を収容する複数個の収容穴12aが、各位置決め穴14aに合わせた位置に形成されている。収容穴12aの平面形状は内壁面121,122,123,124から構成される平面視において四角形状を有し、収容穴12aの4つの角部には四分の三半円形の穴形状の逃げ部が形成されている。なお、図4に点線で示す部分は、カバープレート12における柱部15の取り付け部分を示している。また、収容穴12aの平面形状は矩形状に限定されるものではなく、収容し固定するワークの形状に合わせて適宜決定すればよい。図4に示すカバープレート12には右上角部を除く3つの角部に、各プレートを重ね合わせて位置決めした状態で貼り合わせる際に使用する貼り合わせ用穴8cが形成されている。そしてまた、カバープレート12の右上角部及び左下角部には移動用穴6c,7cが形成されている。この移動用穴6c,7cは可動プレート14を移動させる際に用いられる。
ベースプレート11と枠プレート13の接合、および枠プレート13とカバープレート12の接合には、例えばスポット溶接やネジによる締結など、従来公知の接合方法を用いることができる。また、ベースプレート11、カバープレート12、および枠プレート13を磁性体材料で構成した場合には、磁石によってそれらを接合するようにしてもよい。このようにすれば、クランプトレイ1の組立・分解作業が容易となり、枠プレート13や可動プレート14が使用により劣化した場合には新しいものと交換できるようになる。なお、ベースプレート11と枠プレート13及び枠プレート13とカバープレート12を接合する場合には、各々のプレートをz方向に重ね合わせると共に、各々のプレートの貼り合わせ用穴8a,8b,8cを貫くようにピン(不図示)を通して3枚のプレートの位置合わせを行う。
また、図3に示すように、可動プレート14には、柱部15を貫通させる貫通穴14fが、柱部15それぞれに合わせた位置に形成されている。なお、図3に点線で示す部分は、柱部15が貫通する部分を示している。柱部15は、ベースプレート11とカバープレート12とが所定間隔となるように支持する支持柱であり、主に、カバープレート12(或いはベースプレート11)の撓みを抑える役割を果たす。
すなわち、ベースプレート11とカバープレート12は、外縁付近では枠プレート13によって積層方向へ支持されているが、中央付近では枠プレート13によって支持されていない。そのため、特にクランプトレイ1の平面形状が大きい場合には、カバープレート12(或いはベースプレート11)が撓んで可動プレート14に接触し、可動プレート14が円滑に移動できなくなる等の不具合が生じ得る。そこで、枠プレート13内におけるベースプレート11とカバープレート12の間に柱部15が配置され、このような不具合を防止している。なお、貫通穴14fの内壁と柱部15の外周との隙間は、可動プレート14の移動量よりも広く設定されている。すなわち、貫通穴14fの大きさは、可動プレート14が移動する際に可動プレート14と柱部15との干渉が生じない大きさに設定されている。そのため、柱部15が可動プレート14の移動を妨げることはない。また、ベースプレート11とカバープレート12を磁性体材料で構成した場合に、柱部15を磁石で構成しても良い。これにより、クランプトレイの組立・分解が容易になる。
上述した構成のクランプトレイ1において、可動プレート14は通常、バネ部材13aの付勢力によって、枠プレート13と当接するまで図3での右上方向に移動している。これにより、第1突出部14dの位置は、枠プレート13から外方に突出した位置となっている。このとき、図5(a)に示すように、カバープレート12の収容穴12aから第1板ばね14b及び第2板ばね14cが露出し、押し出し部145は収容穴12aから見えない位置となっている。
クランプトレイ1にワークWを位置決め固定する場合には、まず第1突出部14dに力を加え、これをバネ部材13aの付勢力に抗して図3での左下方向に押し入れる。これにより、可動プレート14はその方向に移動し、図5(b)に示すように、第1板ばね14b及び第2板ばね14cはカバープレート12の収容穴12aから見えない位置に移動し、押し出し部145は収容穴12aの角部から若干見える位置となる。なお、押し出し部145の露出によって収容穴12aのワーク収納可能領域は減少するが、収容穴12aの平面領域は、押し出し部145が露出している領域以外の領域でワークの収納が十分可能となるよう設定されている。
次いで、図5(c)に示すように、収容穴12aおよび位置決め穴14aにワークWが収容される。収容穴12aは、ワークWの大きさのバラツキを考慮し標準的なワークWの外形よりも大きく形成されている。そのためこの段階では、収容されたワークWは位置決め固定されていない。
次に、可動プレート14の第1突出部14dに加えていた力を外すと、バネ部材13aの付勢力によって可動プレート14は第1突出部14dが外方に突出する位置に移動する。このとき、図6(a)に示すように、第1板ばね14bと第2板ばね14cがワークWに当接してワークWは右上方向へ移動されることになる。そして、第1板ばね14bと収容穴12aの内壁面123と、第2板ばね14cと内壁面124とによって、ワークWは位置決めされるとともに挟持され固定される。このとき可動プレート14は、収容されたワークWを押し付けて固定する固定位置にある。
位置決め固定されたワークWを収容穴12aから取り出す場合は、第1突出部14dを枠プレート13の中央方向(図3での左下方向)に押せば良い。これにより、図6(b)に示すように、可動プレート14が同じ方向へ移動し、第1板ばね14bと収容穴12aの内壁面123、及び第2板ばね14cと内壁面124とによるワークWの挟持が解除される。
また同時に、可動プレート14の移動によって押し出し部145が収容穴12aの内方に移動してワークWに当接し、ワークWを可動プレート14の移動方向に移動させる。これにより、収容穴12aの内壁面123及び内壁面124と、ワークWとの当接状態が解消されてクランプトレイ1からワークWは確実に取り出すことが可能となる。
(その他の使用方法)
以上説明した第1実施形態のクランプトレイ1ではクランプトレイ1の側面から外方に突出している第1突出部14dをクランプトレイ1の内方へ押し入れることによって可動プレート14を固定位置から非固定位置に移動させていたが、移動用穴6a,6b,6c及び移動用穴7a,7b,7cにピンを挿し入れることによって可動プレート14を固定位置から非固定位置に移動させてもよい。なお、第1実施形態のクランプトレイ1では移動用穴が2つ設けられているのはバネ部材13aの付勢力が強い場合にピンに係る力を分散させるためなどからであり、移動用穴は1つであっても構わない。
移動用穴6a,6b,6cと移動用穴7a,7b,7cとは同じ構造を有しているので、代表して移動用穴6a,6b,6cについて説明すると、移動用穴6a,6b,6cは同一形状であり、移動用穴6a,6cはxy平面において同じ位置に設けられており完全に重なっている。一方、移動用穴6bは移動用穴6a,6cの形成位置よりも図3において右上方向にずれた位置に形成され、移動用穴6a,6cの内周壁から移動用穴6bの周縁部の一部が露出した状態となっている。このような状態において、不図示のピンが移動用穴6a,6b,6cに挿入されると、ピンの外周壁が可動プレート14の移動用穴6bの内周壁に当接し、可動プレート14は図1の左方向、すなわち固定位置から非固定位置に移動する。その後、移動用穴6a,6b,6cからピンが抜かれると、バネ部材13aの付勢力によって可動プレート14は非固定位置から固定位置に移動する。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分については説明を省略することがある。
図7に、本実施形態に係るワーククランプトレイ2(以下、「クランプトレイ2」と記すことがある)の斜視図を示す。本実施形態のクランプトレイ2は、第1ワークW1上の所定位置に第1ワークW1よりも平面面積の小さい第2ワークW2を固定処理するために用いるものであり、7枚のプレートが積層配置された構成となっている。より詳細には、クランプトレイ2は、ベースプレート21、第1中間プレート23、第1枠プレート24、第2中間プレート26、第3中間プレート27、第2枠プレート28、カバープレート22の各プレートがこの順に積層配置された構成となっている。そして、第1枠プレート24及び第2枠プレート28の内部にはxy平面において移動可能に第1可動プレート25及び第2可動プレート29が配置されている。なお、前記の7枚のプレート間に必要により所定厚さのスペーサープレートをさらに積層配置しても構わない。
図8に図7のA-A線断面図を示す。ベースプレート21を除く6枚の各プレートの積層方向の対応する位置には、第1ワークW1及び第2ワークW2を収容し位置決めするための収容穴5b,5d,5e,5g及び位置決め穴5c,5fが形成されている。そして、各プレートの収容穴5b,5d,5e,5g及び位置決め穴5c,5fが積層方向に重合して収容穴5が構成されている。収容穴5には、図8の点線で示すように、第1ワークW1と第1ワークW1よりも平面面積の小さい第2ワークW2とが位置決め固定される。第1ワークW1と第2ワークW2との間には未硬化の接着層Adが形成される。そして、第1ワークW1及び第2ワークW2がクランプトレイ2で位置決め固定された状態で接着層Adに対して加熱処理あるいは光照射などの硬化処理が行われて接着層Adが硬化し第1ワークW1と第2ワークW2とが接着される。勿論、クランプトレイ2は第1ワークW1と第2ワークW2との接着の他、第1ワークW1と第2ワークW2とを位置決め固定した状態で種々の処理を行う際に用いることが可能である。
図9に図7のB-B線断面図を示す。7枚の各プレートの積層方向の対応する位置には、第1可動プレート25及び第2可動プレート29を移動させるための第1移動用穴3a~3gと第2移動用穴4a~4gとがそれぞれ形成されている。そして、各プレートの第1移動用穴3a~3g及び第2移動用穴4a~4gが積層方向に重合して第1移動用穴3及び第2移動用穴4が構成されている。第1移動用穴3の平面形状は各プレート共にピンP1の水平断面と同一形状であるが、第1可動プレート25及び第2可動プレート29における第1移動用穴3c,3fの形成位置が他のプレートの第1移動用穴3a,3b,3d,3e,3gの形成位置よりも図9において右方向にずれて形成されている。また第2移動用穴4の平面形状は、第1可動プレート25の第2移動用穴4cを除き、各プレート共にピンP2の水平断面と同一形状であるが、第2可動プレート29の第2移動用穴4fの形成位置が他のプレートの第2移動用穴4a,4b,4d,4e,4gの形成位置よりも図9において右方向にずれて形成されている。なお、第1可動プレート25の第2移動用穴4cは第1可動プレート25の移動方向に長い長穴で、ピンP2が第2移動用穴に挿通されても接触しない大きさに設定されている。
図8及び図9に示す、クランプトレイ2による第1ワークW1と第2ワークW2との固定状態においてピンP1が第1移動用穴3に挿入されると、ピン1の外周壁が第1可動プレート25及び第2可動プレート29の第1移動用穴3c及び第1移動用穴3fの内周壁に当接し、第1可動プレート25及び第2可動プレート29は図9の左方向に移動する。これによって第1ワークW1及び第2ワークW2は非固定状態となる。すなわち第1ワークW1及び第2ワークW2のクランプトレイ2への収納及びクランプトレイ2からの取り出しが可能となる。一方、ピンP2が第2移動用穴4に挿入されると、ピン2の外周壁が第2可動プレート29の第2移動用穴4fの内周壁に当接し、第2可動プレート29のみが図9の左方向に移動する。これによって第1ワークW1は非固定状態となる。すなわち、第2ワークW2のみのクランプトレイ2への収納及びクランプトレイ2からの取り出しが可能となる。
以下、各プレート部材の構成について、図10~図15を参照しながら以下に説明する。
図10は、ベースプレート21の平面図である。ベースプレート21は、所定の厚さを有し、平面形状が四角形の1つ角部を切り取った形状となっている。図10に示すベースプレート21の右上角部を除く3つの角部には、各プレートを重ね合わせて位置決めした状態で貼り合わせる際に使用する貼り合わせ用穴21aが形成されている。また、ベースプレート21の右上角部には、後述の第1可動プレート25及び第2可動プレート29の移動方向(図12の着色矢印で示す方向)に長い長穴が形成され、左下角部には前記移動方向に所定間隔を隔てて第1移動用穴3a及び第2移動用穴4aが形成されている。
図11は、第1中間プレート23の平面図である。第1中間プレート23は、ベースプレート21と同じ平面外形を有し、ベースプレート21と同じ平面位置に、貼り合わせ用穴23a、長穴23b、第1移動用穴3b及び第2移動用穴4bを有する。そして、第1ワークW1を収容可能な16個の収容穴5bがマトリックス状に形成されている。なお、図11において点線で示す部分は、第1中間プレート23における柱部20の取り付け部分を示している。
図12は、第1枠プレート24および第1可動プレート25の平面図である。第1枠プレート24は、ベースプレート21と同じ平面外形で、内側に中央空間を有する枠形状であり、1つの角部(図12の右上角部)が切り取られて中央空間と連通する切り欠き部24cが形成されている。第1可動プレート25は、第1枠プレート24の中央空間に所定方向(図12に着色矢印で示す方向)へ移動可能に配置されており、複数個(図12の例では16個)の位置決め穴5cが形成されている。
また、第1可動プレート25は平面形状が四角形状で、対向する角部(図12の右上角部と左下角部)から外方に突出する第1突出部25cと第2突出部25dとを有する。第1突出部25cは第1枠プレート24の切り欠き部24cから外方に突出し、第2突出部25dは第1枠プレート24の切り欠き部24dに係入している。第1突出部25cには、第1可動プレート25の移動方向に長い長穴25bが形成され、第2突出部25dには前記移動方向に所定間隔を隔てて第1移動用穴4bと第2移動用穴4cとが形成されている。第1移動用穴4bは丸穴であり、第2移動用穴4cは前記移動方向に長い長穴である。また、柱部20を挿通させる貫通穴25fが、4つの柱部20のそれぞれに対応する位置に形成されている(図12の点線で示す部分が柱部)。柱部20は中間プレート23と中間プレート26との間の撓みを抑え所定間隔を保持する役割を果たす。なお、貫通穴25fは第1可動プレート25が移動しても第1可動プレート25と柱部20とが干渉しない大きさ及び形状とされている。
また、位置決め穴5cは、第1実施形態における位置決め穴14a(図3の拡大図)と同様の構成を有し、y方向に付勢する略U字状の第1板ばね(弾性部材)251と、x方向に付勢する略U字状の第2板ばね(弾性部材)252と、そして第1板ばね251及び第2板ばね252の形成位置と対向する位置に形成された、位置決め穴5cの内方に向かって突出する押し出し部253とを有する。第1板ばね251と、第2板ばね252と、押し出し部253とは第1可動プレート25と一体に形成されている。第1板ばね251、第2板ばね252、押し出し部253および可動プレート25を一体形成する際には、従来公知の形成方法を用いることができ、中でもフォトエッチング加工が好適に使用できる。
また、図12に示すように、第1枠プレート24の各内壁面には、第1可動プレート25を第1突出部25cが第1枠プレート24の切り欠き部24cから外方向に突出する方向に付勢するバネ部材(付勢部材)25eが、第1枠プレート24および第1可動プレート25と一体に形成されている。第1枠プレート24、第1可動プレート25、およびバネ部材25dを一体形成する際には、前述のフォトエッチング加工が好適に使用できる。
図13は、第2中間プレート26の平面図である。第2中間プレート26は、ベースプレート21と同じ平面外形を有し、ベースプレート21と同じ平面位置に、貼り合わせ用穴26a、長穴26b、及び第1移動用穴3d及び第2移動用穴4dを有する。そして、第1ワークW1を収容可能な16個の収容穴5dが、第1可動プレート25の位置決め穴5cに対応する位置に形成されている。収容穴5dの構成は、図4に示した第1実施形態の収容穴12aの構成と同じである。なお、図13において点線で示す部分は、第2中間プレート26における柱部20の取り付け部分を示している。
以上説明したベースプレート21、第1中間プレート23、第1可動プレート25、第2中間プレート26が積層された構成によって第1ワークW1の位置決め固定がなされる。
図14は、第3中間プレート27及びカバープレート22の平面図である。第3中間プレート27及びカバープレート22は同一の形状及び構造を有する。以下、代表してカバープレート22ついて説明する。なお、図14では第3中間プレートにおける各部分の符号をカッコで並記している。カバープレート22はベースプレート21と同じ外形を有し、ベースプレート21と同じ平面位置に、貼り合わせ用穴22a(27a)、長穴22b(27b)、第1移動用穴3g(3e)及び第2移動用穴4g(4e)を有する。そして、第1ワークW1及び第2ワークW2を収容可能な16個の収容穴5g(5e)が、第2可動プレート29の位置決め穴5fに対応する位置に形成されている。収容穴5g(5e)の構成は、図4に示した第1実施形態の収容穴12aの構成と同じである。収容穴5g(5e)の大きさ及び形成位置は、第2ワークW2の大きさ及び取付位置に対応して設定される。なお、図14において点線で示す部分は、カバープレート22及び第3中間プレート27における柱部20の取り付け部分を示している。
図15は、第2枠プレート28および第2可動プレート29の平面図である。第2枠プレート28は、ベースプレート21と同じ平面外形で、内側に中央空間を有する枠形状であり、1つの角部(図15の右上角部)が切り取られて中央空間と連通する切り欠き部28cが形成されている。第2可動プレート29は、第2枠プレート28の中央空間に所定方向(図15に着色矢印で示す方向)へ移動可能に配置されており、複数個(図15の例では16個)の位置決め穴5fが形成されている。
また、第2可動プレート29は平面形状が四角形状で、対向する角部(図15の右上角部と左下角部)から外方に突出する第1突出部29cと第2突出部29dとを有する。第1突出部29cは第2枠プレート28の切り欠き部28cから外方に突出し、第2突出部29dは第2枠プレート28の切り欠き部28dに係入している。第1突出部29cには、第2可動プレート29の移動方向に長い長穴29bが形成され、第2突出部29dには前記移動方向に所定間隔を隔てて第1移動用穴3fと第2移動用穴4fが形成されている。第1移動用穴3f及び第2移動用穴4fはいずれも丸穴である。また、柱部20を挿通させる貫通穴29fが、4つの柱部20のそれぞれに対応する位置に形成されている(図15の点線で示す部分が柱部)。柱部20はカバープレート22と第2中間プレート26との間の撓みを抑え所定間隔を保持する役割を果たす。なお、貫通穴29fは第2可動プレート29が移動しても第2可動プレート29と柱部20とが干渉しない大きさ及び形状とされている。
また、位置決め穴5fは、第1実施形態における位置決め穴14a(図3の拡大図)と同様の構成を有し、y方向に付勢する略U字状の第1板ばね(弾性部材)291と、x方向に付勢する略U字状の第2板ばね(弾性部材)292とを有する。第1板ばね291と、第2板ばね292とは第2可動プレート29と一体に形成されている。第1板ばね291、第2板ばね292および第2可動プレート29を一体形成する際には、従来公知の形成方法を用いることができ、中でもフォトエッチング加工が好適に使用できる。なお、第1可動プレート25の位置決め穴5c(図12に図示)と同様に、位置決め穴5fの第1板ばね291及び第2板ばね292の形成位置と対向する位置に、位置決め穴5fの内方に向かって突出する押し出し部を形成してもよい。この場合、クランプトレイ2が非固定位置になると、押し出し部は第2ワークW2を位置決め穴の内周壁から離れる方向に押し出す。
また、図15に示すように、第2枠プレート28の各内壁面には、第2可動プレート29の第1突出部29cが第2枠プレート28の切り欠き部28cから外方向に突出する方向に付勢するバネ部材(付勢部材)29eが、第2枠プレート28および第2可動プレート29と一体に形成されている。第2枠プレート28、第2可動プレート29、およびバネ部材29eを一体形成する際には、前述のフォトエッチング加工が好適に使用できる。
以上説明した第3中間プレート27、第2可動プレート29、カバープレート22が積層された構成によって第2ワークW2の位置決め固定がなされる。
次に、このような構成のクランプトレイ2による第1ワークW1と第2ワークW2の固定及び固定解除の手順を図16~図18を用いて以下説明する。なお、図16及び図17における左側が図7のB-B線断面図、右側がA-A線断面図である。
図16(a)は、第1移動用穴3及び第2移動用穴4にピンP1,P2が挿入されていない状態である。この状態では第1可動プレート25及び第2可動プレート29の第1板ばね251,291及び第2板ばね252,292が収容穴5から露出した状態となっており、第1ワークW1は収容穴5に収納不能である。
次に、図16(b)に示すように、第1移動用穴3にピンP1が挿入される。すると、ピン1の外周壁が第1可動プレート25及び第2可動プレート29の第1移動用穴3c,3fの内周壁に当接し、第1可動プレート25及び第2可動プレート29は図16の左方向に移動する。これによって第1板ばね251,291及び第2板ばね252,292が収容穴5から非露出位置に移動して、第1ワークW1が収容穴5に収納可能となる。そして、図16(c)に示すように、第1ワークW1は収容穴5内に収納され第1ワークW1の下面がベースプレート21に接触するよう配置される。
その後、図16(d)に示すように、第1移動用穴3からピンP1が抜かれる。すると、第1可動プレート25及び第2可動プレート29が、ばね部材25e及びばね部材29eの付勢力によって図16の右方向に移動する。これによって、第1可動プレート25の第1板ばね251及び第2板ばね252が第1ワークW1に当接して、第1ワークW1は第2中間プレート26の収容穴5dの内壁面に当接するまで移動して位置決めされるとともに、第1板ばね251及び第2板ばね252と第2中間プレート26の収容穴5dの内壁面との間で挟持され固定される。このとき、第1ワークW1の上面の第2ワークW2の位置決め予定位置によっては、第1ワークW1の一部がカバープレート22の収容穴5gからカバープレート22の下側に入り込んだ位置となる。図16(d)では第1ワークW1の一部がカバープレート22の収容穴5gからカバープレート22の下側に長さLだけ入り込んだ状態となっている。
その後、クランプトレイ2の収容穴5に固定された第1ワークW1の表面に従来公知の手段によって接着層Adが塗布される。
次いで、図17(a)に示すように、第2移動用穴4にピンP2が挿入される。すると、ピンP2の外周壁が第2可動プレート29の第2移動用穴4fの内周壁に当接し、第2可動プレート29のみが図17の左方向に移動する。これにより、第1ワークW1がクランプトレイ2に固定保持された状態で、第2ワークW2が収容穴5に収納可能となる。そして、図17(b)に示すように、第2ワークW2が収容穴5内に収容された第1ワークW1の上面に接着層Adを介して載置される。
その後、図17(c)に示すように、第2移動用穴4からピンP2が抜かれる。すると、第2可動プレート29がばね部材29eの付勢力によって図17の右方向に移動する。これによって、第2可動プレート29の第1板ばね291及び第2板ばね292が第2ワークW2に当接して、第2ワークW2は第3中間プレート27及びカバープレート22の収容穴の内壁面に当接するまで移動して位置決めされるとともに、第1板ばね及び第2板ばねと、第3中間プレート27及びカバープレート22の収容穴5e,5gの内壁面との間で挟持され固定される。すなわち、第2ワークW2は第1ワークW1の上面の所定位置に位置決めされた状態で固定される。
第1ワークW1と第2ワークW2とがクランプトレイ2で固定された状態で、加熱処理や光照射などの接着層Adが硬化する所定処理がなされ、第1ワークW1と第2ワークW2が接着層Adで固定される。なお、接着層Adの硬化処理の手段は接着層Adの種類によって適宜決定される。
その後、図17(d)に示すように、第1移動用穴3にピンP1が再び挿入される。すると前述のように、第1可動プレート25及び第2可動プレート29は図17の左方向に移動し、第1板ばね251,291及び第2板ばね252,292が収容穴5から非露出位置に移動する。これによって、第1ワークW1及び第2ワークW2のクランプトレイ2による固定が解除される。
また同時に、第1可動プレート25の左方向への移動によって、位置決め穴5cに形成されている押し出し部253が第1ワークW1に当接して第1ワークW1と第2ワークW2との接続体を図17において左方向に押し出し、平面視において第1ワークW1の全体が収容穴5から露出する位置とする。
図18に、第1ワークW1と第2ワークW2との接続体の移動状態を説明する収容穴5の拡大平面図を示す。なお、図18では第1可動プレート25の移動が理解しやすいように、第2可動プレート29及び各中間プレートは略している。図18(a)は第1可動プレート25が移動前の状態図であり、同図(b)が移動後の状態図である。図18(a)に示すように、第1可動プレート25の移動前は、第1ワークW1の上辺部及び右辺部がカバープレート22の下側に入り込んだ状態となっている。そして、ピンP1が第1移動用穴3に挿入されると、第1可動プレート25が図18の左下方向に移動し、第1可動プレート25の第1板ばね251及び第2板ばね252が収容穴5から非露出位置となるとともに、押し出し部253が第1ワークW1に当接して第1ワークW1と第2ワークW2との接続体を図18において左下方向に押し出し、第1ワークW1は全体が収容穴5から露出する。これにより図17(d)に示すように、第1ワークW1と第2ワークW2との接続体はクランプトレイ2から取り外すことが可能となる。
(その他の使用方法)
以上説明した第2実施形態のクランプトレイ2では第1移動用穴3及び第2移動用穴4にピンP1及びピンP2を抜き挿しすることによって第1可動プレート25及び第2可動プレート29を固定位置と非固定位置とに移動させていたが、クランプトレイ2の側面から外方に突出している第1突出部25c及び第1突出部29cをクランプトレイ2の内方へ押し入れることによって第1可動プレート25及び第2可動プレート29を移動させてもよい。
(その他の実施形態)
以上説明した第1実施形態及び第2実施形態では可動プレートの位置決め穴に、第1板ばね及び第2板ばねと共に押し出し部を形成し、可動プレートが固定位置から非固定位置に移動する際に、押し出し部がワークに当接して、固定されていた位置からワークを強制的に移動させる構成としていたが、位置決め穴に第1板ばね及び第2板ばねが形成された可動プレートとは別に、押し出し部が形成された可動プレートを設けてもよい。このような構成によれば、ワークの位置決め及び解除の動作とは関係なく押し出し部の移動が可能となり、所望のタイミングで押し出し部を移動させることができる。例えば可動プレートが固定位置から非固定位置に移動した後に、押し出し部を移動させて、固定されていた位置からワークを強制的に移動させることも可能となる。