JP7054136B2 - 構造物の製造方法及び3dプリンタ - Google Patents
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近年、機械物性に優れたハイドロゲルとして、架橋網目構造を有するポリマー同士、または架橋網目構造を有するポリマーと直鎖ポリマーとが互いに絡み合った構造を有するハイドロゲルが提案されており、ハイドロゲルの応用分野のさらなる向上が期待される。
ハイドロゲルは、主成分が水であるため、比較的安価である。また、ハイドロゲルは、実際の臓器に近い水分量があるため、ハイドロゲルを使用して臓器モデルを作製することにより、より現実感のある手術練習を可能とする臓器モデルの実現が期待される。
特に、3D(3次元)プリンタによる印刷技術を利用し、患者一人一人の臓器の3Dデータを基に造形を行うことにより、より精密な人工血管や臓器モデルを作製することが可能であると考えられる。
単にUV光を可視光に変更した場合、同等の積算光量を得るために照射時間を長くする必要がある。照射時間を長くすると、得られる構造物の精度、特に光の照射方向における精度が低下する。
〔1〕第1のポリマーと、
可視光領域に吸収波長を有する光重合開始剤と、
前記光重合開始剤の作用により重合して第2のポリマーを形成するモノマーと、
を含み、
前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとがゲルを構成することを特徴とする、3Dプリンタ用ゲル材料。
〔2〕前記第1のポリマーが網目構造を有し、
前記ゲルが、前記第1のポリマーの前記網目構造に前記第2のポリマーが侵入する構造を有する〔1〕の3Dプリンタ用ゲル材料。
〔3〕前記第2のポリマーが網目構造を有し、
前記ゲルが、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとが相互に侵入する網目構造を有する〔1〕または〔2〕の3Dプリンタ用ゲル材料。
〔4〕前記第1のポリマーが粒子状である〔1〕~〔3〕のいずれかの3Dプリンタ用ゲル材料。
〔5〕架橋剤をさらに含む〔1〕~〔4〕のいずれかの3Dプリンタ用ゲル材料。
〔6〕前記架橋剤がジビニル化合物である〔1〕~〔5〕のいずれかの3Dプリンタ用ゲル材料。
〔7〕前記光重合開始剤の可視光の吸光係数が0.01~10,000mL/(g・cm)である、〔1〕~〔6〕のいずれかの3Dプリンタ用ゲル材料。
〔8〕界面活性剤をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれかの3Dプリンタ用ゲル材料。
〔9〕可視光を照射する光照射部を備える光造形方式の3Dプリンタを用い、
焦点距離fが10~18mm、X走査速度が1~10mm/秒、Y走査速度が1~10mm/秒、積算光量が10~40000mJ/cm2、走査回数が1~20回の条件にて、請求項1~8のいずれか一項に記載のゲル材料を硬化させる、構造物の製造方法。
〔10〕前記ゲル材料を硬化させて生成した構造物を、漂白剤で処理する、〔9〕の構造物の製造方法。
〔11〕〔9〕又は〔10〕の構造物の製造方法に用いられる3Dプリンタであって、
光照射部と、造形ステージと、前記光照射部をX方向又はX方向と直交するY方向に駆動するXY駆動部と、前記造形ステージをX方向及びY方向と直交するZ方向に駆動するZ駆動部と、制御部とを備え、
前記光照射部は、可視光を出射する光源と、前記光照射部の先端に設けられた集光レンズと、前記光源と前記集光レンズとの間に設けられたコリメーターレンズとを備え、前記光照射部の先端から焦点までの焦点距離は、10~18mmとされており、
前記制御部は、前記光照射部のX走査速度を1~10mm/秒、Y走査速度を1~10mm/秒、積算光量を10~40000mJ/cm2、走査回数を1~20回に制御するように構成されている、3Dプリンタ。
本明細書において、「可視光」とは、波長380nm~750nmの範囲内の光を意味する。
本明細書において、「3Dプリンタ」は、可視光を照射する光照射部を備える光造形方式の3Dプリンタを意味する。
本明細書において、「ゲル」とは、ポリマー鎖同士が物理的もしくは化学的に結合することで網目構造を形成し、形成した網目構造に液状媒体を取り込んで膨潤した構造体を意味する。
本明細書において、「ハイドロゲル」とは、水を主成分とする液状媒体を、ポリマーで構成された網目構造中に取り込んでいる構造体を意味する。ハイドロゲルに含まれる液状媒体の量は、特に限定されない。液状媒体は、ハイドロゲルの物性に影響が出ない範囲で、水に溶解する有機溶剤や水と混和する有機溶剤を含んでいてもよい。
本ゲル材料は、必要に応じて、架橋剤、可視光領域に吸収波長を有する光吸収剤、界面活性剤、液状媒体、その他の成分をさらに含んでいてもよい。
第1のポリマーを形成するモノマー(以下、「第1のモノマー」とも記す。)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびその塩、スチレンスルホン酸(SS)およびその塩、アクリル酸(AA)およびその塩、メタクリル酸およびその塩、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ジメチルシロキサン、スチレン(St)、アクリルアミド(AAm)、モノ(又はジ)アルキルアクリルアミド(例えば、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm))、ヒドロキシエチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、ラウリルアクリレート(LA)、ステアリルアクリレート(SA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFE)、2,2,2-トリフルオロエチルメチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、3-(ペルフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、およびフッ化ビニリデン等。塩としては、例えばナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛等の金属塩等が挙げられる。
さらに、ジェラン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キチン、アルギン酸等の多糖類;あるいはゼラチンやコラーゲン等のタンパク質を使用することもできる。
第1のモノマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち、第1のポリマーは、ホモポリマーであってもよくコポリマーであってもよい。
第1のポリマーが網目構造を有すると、第1のポリマーと第2のポリマーとによって構成されるゲルは、第1のポリマーの網目構造に第2のポリマーが侵入する構造を有するものとなり、機械的強度に優れる。
特に、第1のポリマーおよび第2のポリマーが共に網目構造を有する場合は、第1のポリマーと第2のポリマーとによって構成されるゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが相互に侵入する網目構造を有するものとなり、機械的強度がより優れる。
第1のポリマーが粒子状である場合、その平均粒子径は、乾燥状態で、0.1~10000μmが好ましく、0.1~1000μmがより好ましく、0.1~100μmが特に好ましい。
平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により絶乾状態での粒子100個を観察し、各粒子の最大径を求め、それらの平均値を算出することにより求める。
第1のポリマーが粒子状である場合、粒子を構成する第1のポリマーは、1種のポリマーからなっていてもよく、2種以上のポリマーの混合物からなっていてもよい。
重合方法は、特に限定されず、必要に応じて熱重合や光重合といった公知の重合方法を用いることができる。
重合開始剤としては、特に限定されず、モノマーの種類および重合方法に応じて公知の重合開始剤を適宜用いることができる。例えば、第1のモノマーを光重合する場合は、光重合開始剤が用いられる。
第1のモノマーの重合に光重合開始剤を用いる場合、この光重合開始剤は、光重合開始剤Iであってもよく、他の光重合開始剤であってもよい。
第1のモノマーの重合に用いられる光重合開始剤としては、アルキルフェノン系開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤が好ましい。かかる光重合開始剤を用いると、形成されるゲルの機械的強度が良好である。
重合開始剤の使用量は、例えば、第1のモノマー(100mоl%)に対して0.0001~20mоl%であってよい。
架橋剤の使用量は、第1のモノマー(100mоl%)に対して0~20mоl%が好ましく、0.0001~10mоl%がより好ましく、0.001~10mоl%が特に好ましい。
第1のモノマーに対する架橋剤の割合(mol%)は、第1のポリマーの架橋密度に相当する。第1のポリマーの架橋密度が前記範囲の下限値以上であると、形成されるゲルの機械的強度がより優れる。第1のポリマーの架橋密度が前記範囲の上限値以下であると、形成されるゲルの柔軟性がより優れる。
この例の製造方法では、まず、網目構造を有する第1のポリマーと液状媒体とを含む第1のゲルを調製する(第1のゲル調製工程)。
第1のゲルの調製方法としては、液状媒体中で、第1のモノマーを重合開始剤および架橋剤の存在下に重合させてゲルを得る方法が好ましい。具体的には、第1のモノマー、重合開始剤、架橋剤および液状媒体を含有する溶液(以下、第1の溶液ということもある。)を調製し、この第1の溶液中で第1のモノマーを重合させる。これにより第1のゲルが得られる。
液状媒体は特に限定されない。例えば水が好ましい。
第1の溶液における架橋剤の含有量は、第1のモノマーの量に対して多すぎると第1のゲルが変形に対して脆くなりやすく、少なすぎると荷重に対して弱くなりやすい。したがって第1の溶液中の第1のモノマーの含有量に対して1~20mol%が好ましく、2~10mol%がより好ましい。なお、本明細書において「架橋密度」は、モノマーの仕込みモル濃度に対する架橋剤のモル濃度の比をパーセントで表した値を意味する。
第1の溶液における開始剤の含有量は、第1のモノマーの量に対して多すぎると分子量が小さくなるため第1のゲルが弱くなりやすく、少なすぎるとゲル化しないおそれがある。したがって第1の溶液中の第1のモノマーの含有量に対して0.001~5mol%が好ましく、0.01~1mol%がより好ましい。
なお、蒲池ら(蒲池幹治、遠藤剛監修、「ラジカル重合ハンドブック」、1999年、エヌ・ティー・エス発行)に記載されるような、粒子状のポリマーを製造する一般的な方法である乳化重合法、懸濁重合法または分散重合法等によって第1のモノマーを重合させ、粒状の第1のポリマーと液体を含むゲルを調製してもよい。
乾燥方法としては、特に限定されず、例えば熱風乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で行うことができる。乾燥は、含水率10質量%以下になるまで行うことが好ましい。乾燥条件は、例えば20~130℃であってよい。
乾燥後の第1のゲルの粉砕方法は特に限定されず、公知の方法で物理的に粉砕すればよい。例えば乳鉢と乳棒を用いて砕く方法でもよい。
第2のポリマーを形成する第2のモノマーとしては、光重合開始剤Iを用いて重合可能なものであればよく、例えば上述の第1のモノマーと同様のものが挙げられる。
第2のモノマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち、第2のポリマーは、ホモポリマーであってもよくコポリマーであってもよい。
電気的に中性である不飽和モノマーとしては、例えば、ジメチルシロキサン、スチレン(St)、アクリルアミド(AAm)、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチル-アクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメククリレート(MMA)、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート(TFE))、ヒドロキシエチルアクリレート、および酢酸ビニルが挙げられる。
第2のポリマーが直鎖状ポリマーである場合は、本ゲル材料に架橋剤を含有させないことが好ましい。この場合、第2のモノマーが光重合開始剤Iの存在下、かつ架橋剤の不在下に重合し、直鎖状ポリマーが生成する。
光重合開始剤Iは、可視光領域に吸収波長を有する。これにより、3Dプリンタの光源から可視光が本ゲル材料に照射されたときに、照射部分において、光重合開始剤Iの作用によって第2のモノマーの重合が開始し、第2のポリマーが生成してゲル(構造物)が形成される。
光重合開始剤Iは、可視光領域以外の波長に吸収を有していてもよい。
吸光係数(単位:mL/(g・cm))は、メタノールあるいはアセトニトリルに光重合開始剤を溶解させた溶液の吸光度を、紫外可視分光光度計を用いて測定し、その測定値から算出する。
なお、可視光の吸光係数が0.01~10,000mL/(g・cm)であるとは、可視光領域のいずれかの波長における吸光係数の値が0.01~10,000mL/(g・cm)であればよく、可視光領域に吸光係数のピークが存在する必要はない。
光ラジカル重合開始剤は、光が照射されたときに、重合反応の起点となるラジカルを発生して重合を開始させる。
可視光領域に吸収を有する光ラジカル重合開始剤としては、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ),2-(o-ベンゾイルオキシム))、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、カンファーキノン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤としては、特に限定されず、モノマーの種類に応じて公知のものを適宜用いることができる。
架橋剤としては、例えば、ラジカル重合性の不飽和基を2個以上有する多官能ビニル化合物が挙げられる。多官能ビニル化合物としては、形成されるゲルの機械的強度の点で、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N,N’-ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)等のジビニル化合物が好ましい。
光吸収剤とは、光を吸収して熱エネルギーに変換する物質を示す。
本ゲル材料が可視光領域に吸収波長を有する光吸収剤を含むと、本ゲル材料に3Dプリンタを適用して形成されるゲル(構造物)の造形精度がより優れる。
可視光領域に吸収波長を有する光吸収剤としては、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造、トリアジン構造、ベンゾエート構造、オキサルアニリド構造、サリシレート構造及びシアノアクリレート構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有するものが好ましい。中でも、可視光の吸収性の観点から、ベンゾトリアゾール構造、トリアジン構造及びベンゾフェノン構造からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有するものが好ましい。これらの光吸収剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤Iは可視光領域に吸収波長を有するため、形成されるゲル中に、光重合開始剤Iに由来して、白点が見られ、ゲル全体が白く見えることがある。本ゲル材料が光吸収剤を含む場合には、光吸収剤に由来する白点も見られ、白化しやすい。本ゲル材料が界面活性剤を含むと、界面活性剤によって光重合開始剤I等が良好に分散し、ゲル中の光重合開始剤I等に由来する白点が目立ちにくくなり、ゲルの外観が向上する。
界面活性剤としては、公知の一般的な界面活性剤を使用することができ、特に限定されないが、周知のアニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液状媒体は、第1のポリマーおよび第2のポリマーによって構成される三次元的な網目構造の内部に保持されてゲルを構成する。
液状媒体としては、水、有機溶剤、または水と有機溶剤との混合物が挙げられる。液状媒体が水を主成分として含む場合、形成されるゲルはハイドロゲルとなる。液状媒体が有機溶剤を主成分として含む場合、形成されるゲルはオルガノゲルとなる。本ゲル材料から形成されるゲルは、入手の容易さや環境調和性の点で、ハイドロゲルが好ましい。したがって、液状媒体は水主成分として含むことが好ましい。液状媒体の「主成分」とは、液状媒体の総質量に対して50質量%以上を占める成分を示す。
他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、重合禁止剤、レベリング剤等が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本ゲル材料中、第1のポリマーの第2のモノマーに対する質量比(第1のポリマー/第2のモノマー)は、0.1/99.9~70/30が好ましく、1/99~60/40がより好ましく、5/95~50/50が特に好ましい。第1のポリマー/第2のモノマーは、形成されるゲルにおける第1のポリマーの第2のポリマーに対する質量比とみなすことができる。第1のポリマー/第2のモノマーが前記範囲内であると、形成されるゲルの機械的強度がより優れる。
第2のモノマーに対する架橋剤の割合(mol%)は、第2のポリマーの架橋密度に相当する。第2のポリマーの架橋密度が前記範囲の下限値以上であると、形成されるゲルの機械的強度がより優れる。第2のポリマーの架橋密度が前記範囲の上限値以下であると、形成されるゲルの柔軟性がより優れる。
又は光吸収剤の含有量は、光重合開始剤(100質量%)に対して40~800質量%が好ましく、75~600質量%がより好ましく、100~500質量%が特に好ましい。
光吸収剤の含有量の含有量が前記範囲の下限値以上であると、造形精度がより優れる。光吸収剤の含有量が前記範囲の上限値以下であると、形成されるゲルの機械的強度がより優れる。
本ゲル材料は、第1のポリマー、光重合開始剤I、第2のモノマー、必要に応じて架橋剤、光吸収剤、液状媒体、他の成分を混合することにより製造できる。
本ゲル材料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば次のような方法を採用することができる。
すなわち、まず、前述のようにして、第1のポリマーの粒子を作製する。次いで、第2のモノマーと、光重合開始剤と、液状媒体と、必要に応じて架橋剤とを混合し、第2のポリマーを形成するための溶液(以下、「第2の溶液」とも記す。)を作製する。次いで、作製した第2の溶液と第1のポリマーの粒子とを混合して、本ゲル材料を得る。
本ゲル材料は、3Dプリンタを用いた構造物の製造において、造形材料として用いられる。
例えば、本ゲル材料を容器にいれ、本ゲル材料に対し、光源から可視光を照射し、レンズを介して結像する。本ゲル材料中の焦点となる部分(場合によってはその近傍を含む部分)において、第2のモノマーが重合し、第2のポリマーが生成し、ゲル材料がゲル化する。焦点位置を相対的に上方または下方にずらして上記工程を繰り返す。その結果、本ゲル材料中に、立体的な形状を有するゲル(構造物)が生成する。その後、本ゲル材料中からゲルを取り出し、必要に応じて洗浄、滅菌、加工等処理を行うことで、3D構造を持つ構造物が得られる。
図1は、本実施形態で用いられる3Dプリンタ1の概略構成を示す斜視図である。図2は、3Dプリンタ1の光照射部の概略構成を示す断面図である。図3は、3Dプリンタ1のXY駆動部の概略構成を示す斜視図である。図4は、3Dプリンタ1の造形ステージ及びZ駆動部の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態においては、高さ方向をZ方向という。また、Z方向と直行する平面をXY平面ともいい、XY平面内の直行する2方向をそれぞれX方向及びY方向という。
フレーム2は、直方体の外形を有し、内側に空間が設けられている。フレーム2の内側の空間に、光照射部3、造形ステージ4、XY駆動部5及びZ駆動部6が配置されている。
LED素子31は、波長405nmの可視光(青色)を出射する。第三筒部35は、コリメーターレンズ33と集光36との間の距離を調整する。
コリメーターレンズ33及び集光レンズ36はそれぞれ、第一の面が凸面、その反対側の第二の面が平面である非球面(平凸)レンズであり、第一の面側をLED素子31側に向けて配置されている。
コリメーターレンズ33は、取り込むことのできる光量の点から、開口数の大きいレンズが好ましい。集光レンズ36は、スポット径の点から、開口数の大きいレンズが好ましい。
開口数とは、レンズの分解能を求めるための指標である。レンズの有効開口と焦点を結ぶ直線と光軸のなす角度θ、レンズと焦点の間の媒質の屈折率をnとすると、開口数NAはNA=n×sinθで定義される。ここでは、媒質として屈折率が1の空気を想定するため、レンズの開口数は0~1の範囲である。
コリメーターレンズ33の開口数は、0.2~0.95が好ましく、0.52~0.8が特に好ましい。集光レンズ36の開口数は、0.2~0.95が好ましく、0.52~0.8が特に好ましい。
焦点距離、つまり光照射部3の先端から焦点までの距離は、10~18mmが好ましく、12~16mmがより好ましい。焦点距離が前記下限値以上であると、光照射部3へのゲル溶液の付着を抑制できる。焦点距離が前記上限値以下であると、Z軸の可動範囲を確保しやすい。
焦点距離は、コリメーターレンズレンズ33及び集光レンズ36の組み合わせ、各レンズ間の距離によって調整できる。例えば、レンズ間の距離を長くすると、焦点距離が短くなる。
焦点付近でのビームウェスト半径は、0.2~1.0mmが好ましく、0.4~0.8mmがより好ましい。ビームウェスト半径が前記下限値以上であると、構造物の製造効率に優れる。ビームウェスト半径が前記上限値以下であると、造形解像度に優れる。ビームウェスト半径は、ガウシャンビームの収束計算により求められる。ビームウェスト半径は、焦点距離と集光レンズ36への入射光半径によって調整できる。
ゲル化距離は、0.1~1.0mmが好ましく、0.1~0.5mmがより好ましい。ゲル化距離が前記下限値以上であると、構造物の製造効率に優れる。ゲル化距離が前記上限値以下であると、造形解像度に優れる。ゲル化距離は、後述する実施例に記載の方法により求められる。ゲル化距離は、レンズの開口数によって調整できる。
X方向ステッピングモータ52は、X方向ガイドレール51の一端に設けられている。
X方向タイミングベルト53は、X方向ステッピングモータ52に取り付けられた張架部材(図示略)、及びX方向ガイドレール51の他端に設けられた張架部材59に張架されている。
2本のY方向ガイドレール54は、Y方向に沿って配置されている。2本のY方向ガイドレール54それぞれの両端はフレーム2の上部に取り付けられている。
Y方向ステッピングモータ55は、フレーム2の上部の、2本のY方向ガイドレール54それぞれの一端の間に取り付けられている。
Y方向タイミングベルト56は、Y方向ステッピングモータ55に取り付けられた張架部材58、及び2本のY方向ガイドレール54それぞれの他端の間に設けられた張架部材(図示略)に張架されている。
X方向ガイドレール51は、2本のY方向ガイドレール54及びY方向タイミングベルト56に取り付けられており、Y方向ステッピングモータ55を駆動させたときに、Y方向タイミングベルト56によってX方向ガイドレール51がY方向に移動するようになっている。
したがって、3Dプリンタ1においては、X方向ステッピングモータ52を駆動させたときに、光照射部3がX方向に移動し、Y方向ステッピングモータ55を駆動させたときに、光照射部3がY方向に移動するようになっている。
Z方向ガイドレール61は、Z方向に沿って配置されている。
Z方向ステッピングモータ62は、Z方向ガイドレール61の下方に配置されている。
ボールねじ63は、下端がZ方向ステッピングモータ62に取り付けられている。
昇降テーブル64は、ボールねじ63に取り付けられており、昇降テーブル64には、造形ステージ4が取り付けられている。Z方向ステッピングモータ52を駆動させたときに、ボールねじ63によって昇降テーブル64が昇降し、昇降テーブル64とともに造形ステージ4が昇降するようになっている。
制御部は、構造物を製造する際に、光照射部3のX走査速度を1~10mm/秒(好ましくは2.5~5.5mm/秒)、Y走査速度を1~10mm/秒(好ましくは2.5~5.5mm/秒)、積算光量を10~40000mJ/cm2、走査回数を1~20回(好ましくは3~6回)に制御するように構成されている。
また、制御部は、構造物を製造する際に、光照射部3の先端から、造形ステージ4上の本ゲル材料を硬化させる領域までの距離を、(焦点距離+1.0mm)以上(焦点距離-1.0mm)以下(好ましくは(焦点距離+0.1mm)以上(焦点距離-0.1mm)以下)に制御するように構成されている。
ここで、X走査速度は、光照射部3のX方向の移動速度を示す。Y走査速度は、光照射部3のY方向の移動速度を示す。構造物を製造する際、光照射部3をX方向、Y方向に走査させる。この際、同じ経路を走査させる回数を走査回数と示す。
X走査速度、Y走査速度及び積算光量が前記範囲の下限値以上であると、造形速度に優れる。X走査速度、Y走査速度及び積算光量が前記上限値以下であると、造形精度に優れる。走査回数が前記範囲の下限値以上であると、造形精度に優れる。走査回数が前記上限値以下であると、造形速度に優れる。
本実施形態の3Dプリンタは、安価で安全性、使いやすさに優れたものである。
なお、本発明における3Dプリンタは上記実施形態に限定されない。
例えば光源として、LED素子31を1個ではなく複数個使用できる形態にしてもよい。光源としてLED素子31ではなく波長405nmのレーザーポインタを用いてもよい。405nm以外の波長の可視光(波長400nm、波長700nm等)を出射する光源を用いてもよい。光重合開始剤Iの吸収波長ピークに合うという点で、波長405nmの光量の大きい可視光が好ましい。
X方向Y方向のステッピングモータの駆動を光照射部3の移動に変換する機構はタイミングベルトを使用するものでなくボールねじを使用するものでもよい。
上述の実施形態の3Dプリンタを用いた構造物の製造は、例えば以下の手順で実施できる。
本ゲル材料をバスタブ型の容器に入れ、フレーム2内に配置する。また、本ゲル材料中の、本ゲル材料に光照射部3から可視光が照射されたときに焦点となる位置よりも下方に造形ステージ4を配置する。CADソフトウェアを用いて、製造したい構造物の形状をモデリングし、STL形式で出力し、スライサーソフトを用いて、Gコードに変換する。Gコードをコントローラーフトウェアに読み込ませ、造形を開始する。
造形においては、本ゲル材料に、光照射部3から可視光を照射するとともに、構造物の断面形状に応じて、光照射部3をX方向及びY方向に移動させ、前記断面形状に対応する第一の構造物を得る。次いで、造形ステージ4を下方に移動させる(焦点位置を相対的に上方にずらす)。このとき、造形ステージ4上の第一の構造物の上に本ゲル材料が流入する。第一の構造物の上の本ゲル材料に、前記と同様にして可視光を照射し、第二の構造物を得る。必要に応じて上記工程を繰り返す。結果、造形ステージ4上に、目的の構造物が生成する。その後、本ゲル材料中から構造物を取り出し、必要に応じて、漂白剤による処理(脱色処理)、洗浄、滅菌、加工等処理を行って、構造物を得る。得られた構造物は、3D構造を有する。
生成した構造物中に光重合開始剤Iや光吸収剤に由来する白点が見られる場合、得られた構造物に対して漂白剤による処理を行うことで、構造物の透明性が向上する。
漂白剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤が挙げられる。塩素系漂白剤には、界面活性剤、アルカリ剤等が含まれていてもよい。塩素系漂白剤は、市販品を用いてもよい。市販の塩素系漂白剤としては、例えばカネヨ石鹸株式会社製キッチンブリーチが挙げられる。
可視光を光源とする3Dプリンタの光源から光が照射されていることは目視で確認できる。しかし、可視光はUV光よりもエネルギー量が少ない。単にUV光を可視光に変更した場合、同等の積算光量を得るために照射時間を長くする必要があり、照射時間を長くすると、得られる構造物の精度、特に光の照射方向における精度が低下する。
本発明にあっては、焦点距離を制御可能な3Dプリンタと、可視光領域に吸収波長を有する光重合開始剤(必要に応じて光吸収剤)を含むゲル材料を組み合わせることで、可視光を光源とする3Dプリンタを用いても、優れた造形精度で構造物を製造できる。
<第1のポリマーの作製>
第1のモノマーとして2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩(NaAMPS)の1.9mol/Lと、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)の0.078mol/L(NaAMPSに対して4mol%)と、光重合開始剤としてα-ケトグルタル酸の0.0020mol/L(NaAMPSに対して0.11mol%)と、溶媒として水と、を含む第1の溶液を100mL調製した。
この第1の溶液全体に、UVランプを用いて、積算光量が18000~36000mJ/cm2になるようにUV光(波長365nm)を照射して重合を行い、第1のポリマーを生成させた。これにより、ゲル状の重合生成物(第1のゲル)を得た。この第1のゲルを熱風乾燥機に入れ、質量変化が見られなくなるまで乾燥させた後、乳鉢に入れて粉砕し、粒子径が100μm以下の第1のポリマーの粒子を得た。
第2のモノマーとしてN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)の3.5mol/Lと、架橋剤としてMBAAmの0.017mol/L(DMAAmに対して0.49mol%)と、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BAPO)(波長405nmの吸光係数:8.990×102mL/(g・cm))の0.004mol/L(DMAAmに対して0.11モル%)と、BAPOの分散剤としてIRGACURE(登録商標)1173(BASF社製、商品名、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)0.35mol/L(DMAAmに対して10モル%)と、光吸収剤としてKayaperAS150(日本化薬株式会社製)の0.0035mol/Lと、溶媒として水と、を含む第2の溶液を50mL調製した。
上記のように作製した第2の溶液に、第1のポリマーの粒子を投入し、ゲル材料を得た。第1のポリマーの微粒子の投入量は、第1のポリマーの第2のモノマーに対する質量比(第1のポリマー/第2のモノマー)が1/30になる量とした。
上部が開口した円筒形状のバスタブ型の容器(内径4.0cm、高さ1.7cm)に上記ゲル材料を入れた。
図1~4に示す実施形態の3Dプリンタ1において、LED素子31としてLEDランプOSV5YL5111A(OptoSupply社製、商品名5mm Violet LED、波長405nm)、コリメーターレンズ33としてコリメーターレンズ(EDMUND社製、商品名 モールド非球面コンデンサレンズMGF2、開口数0.76)、集光レンズ36として集光レンズ(EDMUND社製、商品名:モールド非球面コンデンサレンズMGF2、開口数0.76)を組み合わせた光照射部3をホルダ57に取り付けた。光照射部3の先端(照射光先端)と焦点との距離である焦点距離fは、13.6mmであった。
上記ゲル材料を入れた容器を、3Dプリンタ1のフレーム2の内側に配置した。
次いで、図5に示すように、容器11内のゲル材料Gに対し、光照射部3から可視光(波長405nm)を、積算光量が6370~38220mJ/cm2になるように10秒~60秒照射して第2のモノマーを重合させた。これにより、ゲル材料G中に、直径Dが約2.0mmの円柱形状のハイドロゲル12(構造物)が形成された。
なお、本実施例では、照射光先端と、容器11に収容されたゲル材料Gの液面(溶液界面)との距離を、焦点距離fと一致させた。また、光照射部3を移動させず、造形ステージ4を使用しなかった。
上記ハイドロゲルの作製において、円柱形状のハイドロゲル12の長さを測定し、その測定値をゲル化距離Lとした。
また、焦点距離f付近でのビームウェスト半径w[mm]から、下記式(1)によりレイリー範囲Zを求めた。レイリー範囲Zはビームウェスト半径が最小値の21/2倍より小さくなる範囲であり、レーザー切削加工においてこの範囲を同一径として切削範囲の基準値として用いられる。ゲル化距離Lが、レイリー範囲Zの半分の値に近いほど、造形精度に優れる。
Z=2πw0 2/λM2 ・・・(1)
式中、w0は最小ビームウェスト半径を示し、M2はM2因子を示す。
M2は、焦点付近4カ所のビームウェスト半径を、感光紙を使用して測定し、ガウシャンビームの収束計算から算出した。
コリメーターレンズ33をコリメーターレンズ(THORLAB社製、商品名:非球面コンデンサレンズACL2018U-A、開口数0.52)に変更し、集光レンズ36を集光レンズ(THORLAB社製、商品名:平凸レンズLA1859-A、開口数0.40)に変更した以外は、実施例1と同様にハイドロゲルの作製を行った。
このときの焦点距離fは10mm、液面から溶液内へのゲル化距離Lは6.0mmであった。この値はレイリー範囲Zの半分の値4.5mmと近似していた。
LED素子31をレーザーポインタ(波長405nm)に変更し、コリメーターレンズ33をコリメーターレンズ(THORLAB社製、商品名:非球面コンデンサレンズACL2018U-A、開口数0.52)に変更し、集光レンズ36を集光レンズ(THORLAB社製、商品名:平凸レンズLA1859-A、開口数0.40)に変更した以外は、実施例1と同様にハイドロゲルの作製を行った。
このときの焦点距離fは10mm、液面から溶液内へのゲル化距離Lは15mmであった。この値はレイリー範囲Zの半分の値0.5mmと近似していなかった。造形精度は実施例1~2より劣るが円柱形状のハイドロゲルを作製することができた。
ゲル溶液は実施例1と同じ方法で作製した。3Dプリンタは実施例1と同じものを使用した。図6に示すように、ガラス板101(100mm×100mm)と、第1のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム102(100mm×100mm)と、枠状のシリコーンゴム103(厚さ1mm、外径70mm×70mm、内径50mm×50mm)とがこの順に積層してなる容器を用意し、この容器のシリコーンゴム103の枠内にゲル溶液を入れ、第2のPETフィルム104(100mm×100mm)で蓋をしてサンプル100とした。サンプル100に対し、LED照射部3を図6に示す矢印のように走査させた。LED照射部3と第2のPETフィルムとの距離は、焦点距離13.6mmと一致させた。走査回数を4回に設定した。X走査速度及びY走査速度を5.5mm/秒に設定した。積算光量を327mJ/cm2に設定した。これにより、サンプル100内のゲル材料をゲル化させ、板状のハイドロゲルを得た。この方法で造形された板状のハイドロゲルを純水に12時間以上浸して、膨潤させた。
上記の方法で作製された板状のハイドロゲルを、レーザーカッターを使用して、8mm×50mmの長方形状に切り出した。そのサンプルについて、島津製作所社製UV-VIS Spectro photometer UV-2550を使用して波長550nmの光の透過率を測定した。その結果、透過率は29.82%であり、サンプルは透明であった。
上記の方法で作製された板状のハイドロゲルを、レーザーカッターを使用して、JIS K6251に規定される8号ダンベル形状に切り出した。そのサンプルについて、A&D社製の卓上型材料試験機STA-1150を使用し、最大許容500[N]のロードセルを用いて引張強度試験を行った。引張速度は0.83mm/秒で行った。歪み0~0.05の応力ひずみ曲線を線形近似して、その傾きをヤング率とした。ヤング率が大きいほど構造物の強度が高い。結果を表1に示す。
上記の方法で作製された板状のハイドロゲルを、カッターを使用して、質量0.1g以上の長方形状に切り出した。そのサンプルについて、A&D社製の加熱乾燥式水分計Moisture Analyzers MS-70を使用し、含水率を測定した。結果を表1に示す。
上記の方法で作製された板状のハイドロゲルについて、指でなぞることで試料表面の粗さを評価した。その結果、ハイドロゲル表面は、凹凸が多くざらざらしていた。
走査回数を5回に設定した。それ以外は、実施例4と同様にハイドロゲルの作製、並びに透過率、強度、含水率及び表面粗さの評価を行った。結果を表1に示す。
ハイドロゲルは、透過率が8.4%であり、不透明であった。ハイドロゲルの表面を指でなぞったところ、ハイドロゲル表面は、凹凸が多くざらざらしていた。
表面粗さの別の評価方法として、オリンパス社製生物顕微鏡BX50を使用し、ハイドロゲルの表面を観察した。結果を図7に示す。
表面粗さの別の評価方法として、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000を使用し、JIS B 0601-0994に従って、最大高さ粗さRz、算術平均粗さRaを測定した。その結果、最大高さ粗さRzは20.0μm、算術平均粗さRaは3.05μmであった。
実施例5と同様にハイドロゲルの作製を行った。その後、塩素系漂白剤(カネヨ石鹸株式会社製キッチンブリーチ)を純水で100倍に希釈した溶液に22℃にて12時間以上浸して脱色処理を行った。脱色処理後のハイドロゲルについて、実施例4と同様の方法で、透過率及び表面粗さの評価を行った。
脱色処理後のハイドロゲルは、透過率が13.58%であり、透明であった。脱色処理後のハイドロゲルの表面を指でなぞったところ、その表面は、凹凸が多くざらざらしていた。
第2の溶液の作製時に、低分子界面活性剤ノイゲンEA-197Dを質量濃度0.2質量%となるように添加した。それ以外は、実施例5と同様の方法でハイドロゲルの作製、並びに透過率及び表面粗さの評価を行った。
ハイドロゲルは、透過率が4.65%であり、不透明であった。ハイドロゲルの表面を指でなぞったところ、ハイドロゲル表面は、凹凸が少なくつるつるしていた。
ハイドロゲルを生物顕微鏡BX50で観察した結果を図8に示す。
ハイドロゲル表面の最大高さ粗さRzは12.9μm、算術平均粗さRaは1.74μmと実施例5よりも低い値を示し、表面が平滑であることが分かる。
Claims (10)
- 第1のポリマーと、可視光領域に吸収波長を有する光重合開始剤と、前記光重合開始剤の作用により重合して第2のポリマーを形成するモノマーと、を含み、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとがゲルを構成する3Dプリンタ用ゲル材料を、
可視光を照射する光照射部を備える光造形方式の3Dプリンタを用い、
焦点距離fが10~18mm、X走査速度が1~10mm/秒、Y走査速度が1~10mm/秒、積算光量が10~40000mJ/cm2、走査回数が1~20回の条件にて硬化させる、構造物の製造方法。 - 前記第1のポリマーが網目構造を有し、
前記ゲルが、前記第1のポリマーの前記網目構造に前記第2のポリマーが侵入する構造を有する、請求項1に記載の構造物の製造方法。 - 前記第2のポリマーが網目構造を有し、
前記ゲルが、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとが相互に侵入する網目構造を有する請求項2に記載の構造物の製造方法。 - 前記第1のポリマーが粒子状である請求項1~3のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
- 前記光重合開始剤の可視光の吸光係数が0.01~10,000mL/(g・cm)である請求項1~4のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
- 前記3Dプリンタ用ゲル材料が架橋剤をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
- 前記架橋剤がジビニル化合物である請求項6に記載の構造物の製造方法。
- 前記3Dプリンタ用ゲル材料が界面活性剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
- 前記3Dプリンタ用ゲル材料を硬化させて生成した構造物を、漂白剤で処理する、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の構造物の製造方法に用いられる3Dプリンタであって、
光照射部と、造形ステージと、前記光照射部をX方向又はX方向と直交するY方向に駆動するXY駆動部と、前記造形ステージをX方向及びY方向と直交するZ方向に駆動するZ駆動部と、制御部とを備え、
前記光照射部は、可視光を出射する光源と、前記光照射部の先端に設けられた集光レンズと、前記光源と前記集光レンズとの間に設けられたコリメーターレンズとを備え、前記光照射部の先端から焦点までの焦点距離は、10~18mmとされており、
前記制御部は、前記光照射部のX走査速度を1~10mm/秒、Y走査速度を1~10mm/秒、積算光量を10~40000mJ/cm2、走査回数を1~20回に制御するように構成されている、3Dプリンタ。
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