JP7053210B2 - 人工毛髪用繊維、人工毛髪、頭髪製品 - Google Patents
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(1)樹脂組成物で構成された人工毛髪用繊維であって、前記樹脂組成物は、ベース樹脂にポリアミドを含み、前記ポリアミドは、11-アミノウンデカン酸、セバシン酸、及び1,10-デカンジアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する第1構造単位を有する第1ポリアミドを含み、前記人工毛髪用繊維は、数式(1)で規定される熱収縮率が0.0~5.0%である、人工毛髪用繊維。
熱収縮率(%)={(熱処理前の長さ)-(155℃×5分熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)×100・・・(1)
(2)第1構造単位は、11-アミノウンデカン酸に由来する構造単位を有する、(1)に記載の人工毛髪用繊維。
(3)第1構造単位は、セバシン酸に由来する構造単位を有する、(1)又は(2)に記載の人工毛髪用繊維。
(4)第1構造単位は、1,10-デカンジアミンに由来する構造単位を有する、(1)~(3)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(5)第1ポリアミドは、ナイロン11、ナイロン1010、ナイロン1012、及びナイロン610から選択される少なくとも1種である、(1)~(4)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(6)第1ポリアミドは、炭素数が6以下である、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン、及びラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する第2構造単位を有する、(1)~(5)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(7)第1ポリアミドは、脂肪族ポリアミドである、(1)~(6)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(8)前記ポリアミドは、第2ポリアミドを含み、第2ポリアミドは、融点が200℃以上であるポリアミドである、(1)~(7)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(9)第2ポリアミドは、脂肪族ポリアミドである、(8)に記載の人工毛髪用繊維。
(10)第2ポリアミドは、ナイロン66である、(8)又は(9)に記載の人工毛髪用繊維。
(11)第1ポリアミドと第2ポリアミドの質量比が10:90~90:10である、(8)~(10)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(12)前記樹脂組成物は、臭素系難燃剤を含む、(1)~(11)の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
(13)前記臭素系難燃剤の添加量が、前記ベース樹脂100質量部に対して、3~30質量部である、(12)に記載の人工毛髪用繊維。
(14)(1)~(13)に記載の人工毛髪用繊維を含む、人工毛髪。
(15)(14)に記載の人工毛髪を含む、頭髪製品。
1.人工毛髪用繊維
本発明の一実施形態の人工毛髪用繊維は、樹脂組成物で構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
本実施形態の人工毛髪用繊維を構成する樹脂組成物は、ベース樹脂にポリアミドを含み、難燃剤等の添加剤を任意的に含む。
本実施形態の樹脂組成物のベース樹脂は、ポリアミドを含む。ポリアミドは、吸湿性が高いので、ポリアミドを含むことによって、吸湿によって人工毛髪用繊維の曲げ剛性が低下してスタイリング性が向上する。本実施形態のベース樹脂にはポリアミド以外の樹脂が含まれていてもよいが、ポリアミドが主成分であることが好ましい。ベース樹脂中のポリアミドの割合は、50~100質量%が好ましい。この割合は、60,70,80,90,又は95質量%以上がさらに好ましい。
-NH-(CH2)10-CO- (1)
-CO-(CH2)8-CO- (2)
-NH-(CH2)10-NH- (3)
本発明の人工毛髪用繊維は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤は、臭素系難燃剤が好ましい。難燃剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して3~30質量部が好ましく、より好ましくは5~25質量部であり、より好ましくは5~15質量部である。このような場合に、人工毛髪用繊維の外観、スタイリング性、及び難燃性が特に良好になるからである。
本実施形態で用いられる樹脂組成物には、必要に応じて添加剤、例えば、難燃助剤、微粒子、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、染料、可塑剤、潤滑剤等を含有させることができる。
本実施形態の人工毛髪用繊維は、数式(1)で規定される熱収縮率が0.0~5.0%である。
熱収縮率(%)={(熱処理前の長さ)-(155℃×5分熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)×100・・・(1)
従来のポリアミド系人工毛髪用繊維は、155℃といった高温にさらされると収縮する性質を有しているために、繊維が縮れることを防ぐために、捲縮加工は120℃程度の比較的低い温度で行わざるを得なかった。そして、このような低温の捲縮加工は、捲縮加工の保持性が低かったので、捲縮加工によって付与した波形状が消失しやすかった。一方、本実施形態の人工毛髪用繊維は、155℃×5分という熱処理による熱収縮率が小さいので、比較的高温での捲縮加工が可能であり、その場合、人工毛髪用繊維を吸湿させて繰り返しスタイリングを行っても、繊維の波形状が維持されやすい。この熱収縮率は、3%以下がさらに好ましい。
本実施形態の人工毛髪用繊維の単繊度は、20~100デシテックスが好ましく、より好ましくは35~80デシテックスである。単繊度が適度に大きければ、適度な硬さを有し、繊維の波形状の形状保持性が上がり、品質が向上する傾向にある。一方で、単繊度が適度に小さい方が、曲げ剛性が大きくなりすぎず適度な曲げ剛性になるため、柔らかい自然な触感となり編み込み性が良くなる傾向にある。
以下に、人工毛髪用繊維の製造工程の一例を説明する。
本発明の一実施形態の人工毛髪用繊維の製造方法は、溶融紡糸工程と、延伸工程と、熱処理工程を備える。また、必要に応じて捲縮加工工程を行ってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
溶融紡糸工程では、上記の樹脂組成物を溶融紡糸することによって未延伸糸を製造する。具体的には、まず、上述した樹脂組成物を溶融混練する。溶融混練するための装置としては、種々の一般的な混練機を用いることができる。溶融混練としては、たとえば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。人工毛髪用繊維は、ポリアミドの種類により適正な温度条件のもと、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
延伸工程では、得られた未延伸糸を150~500%延伸して延伸糸を製造する。このような延伸によって、100デシテックス以下の細繊度の延伸糸を得ることができ、かつ繊維の引張強度を向上させることができる。延伸処理は、未延伸糸を一旦ボビンに巻き取ってから溶融紡糸工程とは別の工程にて延伸する2工程法や、ボビンに巻き取ることなく溶融紡糸工程から連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。また、延伸処理は、1度で目的の延伸倍率まで延伸する1段延伸法、又は2回以上の延伸によって目的の延伸倍率まで延伸する多段延伸法で行なわれる。熱延伸処理を行なう場合における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。延伸倍率は、200~400%が好ましい。延伸倍率は、適度に大きい方が繊維の強度発現が適度に起こる傾向にあり、適度に小さい方が延伸処理時に糸切れを発生し難くなる傾向にあるためである。
熱処理工程では、延伸糸に対して155℃以上の熱処理温度で熱処理を行う。この熱処理によって、延伸糸の熱収縮率を低下させることができる。熱処理は、延伸処理の後に連続して行っても、一旦巻き取った後に時間を開けて行うこともできる。熱処理温度を155℃以上としているのは、140℃以上という高い温度で捲縮加工を行った場合の延伸糸の熱収縮を抑制するためである。熱処理温度は、好ましくは160℃以上である。熱処理温度の上限は、特に規定されないが、例えば、180℃である。
捲縮加工工程では、熱処理後の延伸糸に対して捲縮加工を行う。捲縮加工は、140℃以上であって且つ熱処理温度よりも低い温度で行われる。140℃以上で捲縮加工を行うことによって消失しにくい波形状を人工毛髪用繊維に付与することができる。また、熱処理温度よりも低い温度で捲縮加工を行うことによって、捲縮加工の際の延伸糸の熱収縮を抑制することができる。捲縮加工の温度は、150℃以上が好ましく、155℃以上がさらに好ましい。捲縮加工の温度は、熱処理温度よりも5℃以上低い好ましく、10℃以上低いことがさらに好ましく、15℃以上低いことがさらに好ましい。
人工毛髪繊維は、単独で頭髪製品(頭飾製品)に用いてもよいが、人毛や他の人工毛髪を混合して用いてもよい。頭髪製品は、ウィッグ(かつら)、ヘアピース、ブレード、エクステンンョンヘアー、人形の頭髪等であり、人工毛髪繊維の用途は特に限定されない。また、頭髪製品以外にも付け髭、付け睫毛、付け眉毛等に用いることもできる。
表1に示す樹脂組成物を構成する各成分をブレンドし、ブレンドした材料は、φ30mm二軸押出機を用いて混練し、紡糸用の樹脂組成物ペレットを得た。
PA11:アルケマ社製、BMN O TLD
PA610:アルケマ社製、SMVO
PA1010:アルケマ社製、TMNO
PA1012:アルケマ社製、400NN
PA66:デュポン社製、Zytel 42A
PET:三井化学社製、J125S
PVC:大洋塩ビ社製、TH-500
臭素系難燃剤:阪本薬品工業株式会社製、臭素化エポキシ樹脂 SRT-20000
以下に示す方法で、各種特性・物性の測定及び評価を行った。
熱収縮率は、捲縮加工前の長さ100mmの繊維を155℃のギアオーブン中で5分間熱処理し、熱処理前後の繊維長を測定し、上述した数式(1)に従って算出した。
アイロンカール保持性は、人工毛髪繊維を長さ300mm、重量2.0gに束ねた繊維束サンプルを使用し、26mmφのカールヘアアイロンを用いて、150℃で10秒間加熱し、加熱後カールヘアアイロンから繊維束を取り外し、10秒間室温で放置させた。その後、一方の端を固定して、温度23℃湿度50%の状態で6時間吊るし、6時間後の吊り下げた先端の移動距離で評価した。この移動距離が短いほど、アイロンカール保持性が良好である。
◎:移動距離が10mm未満である。
○:移動距離が10mm以上20mm未満である。
△:移動距離が20mm以上40mm未満である。
×:移動距離が40mm以上である。
スタイリング性は、以下の方法で評価した。長さ200mmの繊維を束ねた繊維束1gを、18mmφのアルミ製筒に巻き付けて両端を固定し、常温の水に10秒浸漬させる。次いで、アルミ筒(繊維を巻き付けたままで)を温度23℃、相対湿度50%の恒温室に6時間放置した。その後、アルミ筒から繊維束を取り外し、一方の端を固定して吊り下げた。その根元から先端までの長さを、カール前の全長(200mm)で割った値で評価した。値が小さいほどカールがかかっている。
◎:0.6未満
〇:0.6以上0.75未満
△:0.75以上0.85未満
×:0.85以上
耐熱性は、人工毛髪繊維を長さ300mm、重量2.0gに束ねた繊維束サンプルを使用し、ヘアアイロンで繊維束サンプルの先端を10秒間加熱した時に、先端の縮れを目視により確認することで、評価した。この縮れが生じるヘアアイロンの温度により判定し、次のとおり評価した。
◎:ヘアアイロン180℃の条件で縮れが生じない。
○:ヘアアイロン160℃の条件まで縮れが生じないが、180℃で縮れが生じた。
×:ヘアアイロン160℃の条件で縮れが生じた。
難燃性は、人工毛髪用繊維を30cmの長さに裁断し、かつ2gになる様な本数に取りわけた繊維束サンプルを使用し、この繊維束の一端を固定して垂直にたらし、その下端に長さ20mmの炎を5秒間接触させた後、離した後の延焼時間を測定して、下記の判定を行った。結果は、3回測定した結果の平均値を使用した。
◎:延焼時間が1秒未満
○:延焼時間が1秒以上5秒未満
△:延焼時間が5秒以上10秒未満
×:延焼時間が10秒以上20秒未満
××:延焼時間が20秒以上
全ての実施例では、全ての評価項目において良好な結果が得られた。
比較例1では、比較的低い温度(150℃)で熱処理を行ったために、熱収縮率が大きくなり、耐熱性が悪かった。
比較例2では、ポリアミドが第1構造単位を含まないために、アイロンカール保持性が悪かった。
比較例3では、ベース樹脂がPETであるために、スタイリング性が悪かった。
比較例4では、ベース樹脂がPVCであるために、アイロンカール保持性、スタイリング性、耐熱性が悪かった。
Claims (13)
- 樹脂組成物で構成された人工毛髪用繊維であって、
前記樹脂組成物は、ベース樹脂にポリアミドを含み、
前記ベース樹脂中の前記ポリアミドの割合は、50~100質量%であり、
前記ポリアミドは、11-アミノウンデカン酸、セバシン酸、及び1,10-デカンジアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する第1構造単位を有する第1ポリアミドを含み、
前記人工毛髪用繊維は、数式(1)で規定される熱収縮率が0.0~5.0%であり、
前記ポリアミドは、第2ポリアミドを含み、
前記第2ポリアミドは、融点が200℃以上であるポリアミドであり、
前記第1ポリアミドと前記第2ポリアミドの質量比が10:90~90:10である、
人工毛髪用繊維。
熱収縮率(%)={(熱処理前の長さ)-(155℃×5分熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)×100 ・・・(1) - 第1構造単位は、11-アミノウンデカン酸に由来する構造単位を有する、請求項1に記載の人工毛髪用繊維。
- 第1構造単位は、セバシン酸に由来する構造単位を有する、請求項1又は請求項2に記載の人工毛髪用繊維。
- 第1構造単位は、1,10-デカンジアミンに由来する構造単位を有する、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 第1ポリアミドは、ナイロン11、ナイロン1010、ナイロン1012、及びナイロン610から選択される少なくとも1種である、請求項1~請求項4の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 第1ポリアミドは、炭素数が6以下である、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン、及びラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する第2構造単位を有する、請求項1~請求項5の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 第1ポリアミドは、脂肪族ポリアミドである、請求項1~請求項6の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 前記第2ポリアミドは、脂肪族ポリアミドである、請求項1~請求項7の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 前記第2ポリアミドは、ナイロン66である、請求項1~請求項8の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 前記樹脂組成物は、臭素系難燃剤を含む、請求項1~請求項9の何れか1つに記載の人工毛髪用繊維。
- 前記臭素系難燃剤の添加量が、前記ベース樹脂100質量部に対して、3~30質量部である、請求項10に記載の人工毛髪用繊維。
- 請求項1~請求項11に記載の人工毛髪用繊維を含む、人工毛髪。
- 請求項12に記載の人工毛髪を含む、頭髪製品。
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