JP7051358B2 - プレキャスト合成スラブ、拡幅用プレート、及びプレキャスト合成スラブを用いた床構造、並びに建物 - Google Patents
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その理由の1つして考えられるのは、前記合成スラブ用デッキプレートは、山部と谷部とが傾斜部を介して交互に連なる波形鋼板からなる形状的特性故に、スラブが等厚にならないほか、山部と谷部のトップ(平面部)の幅寸が115~125mm程度と狭く、集合住宅等のスラブ(床)に要求される設備配管用の貫通孔(縦孔)を適正に設けることができない点が挙げられる。
(1)先ず、設備配管用の孔径には、φ125~150mm程度が要求され、これを満たす貫通孔を穿設するには、どうしても、山部と谷部との間の傾斜部も含めて穿設する必要があり、施工に手間がかかり、非常に煩雑であった。
(2)仮に、貫通孔を穿設できたとしても、貫通孔を通すスラブ厚は耐火性能の観点から通常100mm以上必要とされ、デッキの山部のスラブ厚が薄くなる部分(通常50~80mm程度)を貫通させると、配管を塩ビ管から不燃材に変更しなければならない等、配管仕様の変更または配管サイズの限定等、大幅な仕様変更となり実用的でなく、不経済であった。
前記合成スラブ用デッキプレートに連設された状態で表面にコンクリートが打設されて、前記穿設された孔を通るコンクリート貫通孔が形成されて成るプレキャスト合成スラブが構築されることを特徴とする。
請求項7に記載した発明に係る床構造は、請求項1~5のいずれかに記載のプレキャスト合成スラブを用いて成ることを特徴とする。
請求項8に記載した発明に係る建物は、請求項7に記載の床構造を用いて構築されることを特徴とする。
[発明の効果]
(1)合成スラブ用デッキプレート自体を一切損傷等することなく、その両端部に付設(敷設)した拡幅用プレートに簡単かつ確実に設備配管用の貫通孔を形成することができる。よって、施工性、経済性、および品質性に優れたプレキャスト合成スラブを構築することができる。また、設備配管等の耐火仕様は従来から実用化されているプレキャストスラブ(鉄筋コンクリート板やALCパネル)と同様の仕様で済むので経済的、かつ合理的である。
(2)拡幅用プレートの水平部の幅寸を調整することで、合成スラブ用デッキプレート、ひいてはプレキャスト合成スラブの幅調整も簡易に柔軟に行うことができる。よって、自在性、融通性に富むスラブの構造設計を実現することができる。
(3)拡幅用プレートは、型枠の役割を果たすほか、運搬時等のプレキャスト合成スラブを保護する役割も果たす。
なお、図示の便宜上省略しているが、前記コンクリート3の内部には、ひび割れ防止のため、コンクリート3の上面からかぶり厚さ30mm程度の部位に溶接金網、異径鉄筋等のひび割れ拡大防止筋が配設されている。
要するに、本発明に係るプレキャスト合成スラブ10は、前記合成スラブ用デッキプレート1と、前記拡幅用プレート2と、前記コンクリート3と、前記ひび割れ拡大防止筋で構築される。
この合成スラブ用デッキプレート1は、山部と谷部とが傾斜部を介して交互に連なり波形断面をなす鋼板で形成され、さらに谷部に鍵溝を、傾斜部に段部を備えた構成で実施されている。この合成スラブ用デッキプレート1の寸法は、一例として、幅が600mm程度(2山タイプ)、高さ(山高)が50mm程度、山部と谷部のトップ(平面部)の幅寸が115~125mm程度、板厚が1.0~1.6mm程度、全長(スパン長)が1.8~3.6m程度で実施されている。
なお、前記合成スラブ用デッキプレート1の形態(形状、寸法)はこの限りではなく、設置面積、支持梁の設置間隔、構造上必要な強度等の構造設計に応じて適宜設計変更される。例えば、図1Bでは、一側(右側)に、幅が300mm程度の1山タイプの合成スラブ用デッキプレート1が用いられている。図5A、Bでは、高さ(山高)が75mm程度の合成スラブ用デッキプレート11が用いられている。
上記説明した合成スラブ用デッキプレート1を、単体で、或いは必要に応じ、図示例のように継手部を利用して幅方向に連結した複合体で、図3Aに概略的に示したような、平面方向からみて矩形状の合成スラブ用デッキプレート1を構成する。
ちなみに、図1Aでは、幅方向に2体の合成スラブ用デッキプレート1を連結した複合体の合成スラブ用デッキプレート1(幅1.2m程度、スパン2~3m程度)を構成している。
以下、合成スラブ用デッキプレート1と言う場合は、単体で構成した場合と複合体で構成した場合の双方を指す。
この拡幅用プレート2は金属製であり、上記したように、前記水平部2aと前記立ち上がり部2bとから成る断面略L字形に形成され、前記合成スラブ用デッキプレート1の全長(スパン長)と略等しい長さで実施される。
図示例に係る拡幅用プレート2の水平部2aの幅寸は150mm程度で実施され、立ち上がり部2bの高さは100mm程度で実施される。なお、当該寸法はこの限りではなく、前者は150mm以上であればよく、後者は60mm以上であればよい。ちなみに板厚は、使用する合成スラブ用デッキプレート1の板厚と略同厚とされる。
なお、本実施例では、合成スラブ用デッキプレート1の左右に設ける拡幅用プレート2、2(掛け留め部5、5)を、作業性のほか、荷扱い性、製造コストの観点から、一対(同形同大)の、いわゆる方向性を問わない形態で実施しているがこの限りではない。
また、前記掛け留め部5の形状は、鍵状の限りではなく、合成スラブ用デッキプレート1の継手部に掛け留め可能な形態であれば適宜設計変更可能である。
なお、前記掛け留め部5の位置決めのために点付け溶接する等の作業上の工夫は適宜行われるところである。
すなわち、拡幅用プレート2が存在しない合成スラブ用デッキプレート1であれば、設備配管通し用の貫通孔4の孔径に、φ125~150mm程度が要求され、これを満たす貫通孔4を穿設するには、どうしても、山部と谷部との間の傾斜部も含めて穿設する必要があり、施工に手間がかかり、非常に煩雑であった。また、なにより、このような煩雑な施工により構築したプレキャスト合成スラブは、当該デッキプレート1自体に比較的大きい貫通孔4を複数穿設したことによる断面欠損等を考慮すると、品質に悪影響を及ぼす虞があった。この点、本発明では、前記合成スラブ用デッキプレート1に付設した拡幅用プレート2の水平部2aの幅寸を150mm以上に設定しているので、当該水平部2aに前記設備配管通し用の貫通孔4を簡単かつ良好に設けることができる。
具体的には、拡幅用プレート2の所定の水平部2aに設備配管通し用の通し孔2cを穿設しておき、当該通し孔2cに予め、形成する貫通孔4を象(かたど)った所定の高さ(前記立ち上がり部2bの高さ以上)のボイド管や発泡スチロール等の脱着可能な詰め部材を装着して(立て込んで)コンクリート3を打設し、コンクリート3養生後に前記詰め部材を引き抜くと、当該部位にコンクリート貫通孔4を簡単に形成することができる。
なお、前記設備配管通し用の貫通孔4の数量及び設置間隔は、もちろん図示例の限りでなく、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
すなわち、図1に係る合成スラブ用デッキプレート1に用いる拡幅用プレート2の立ち上がり部2bは、少なくとも100mm程度は必要となり、図5に係るプレキャスト合成スラブ20の合成スラブ用デッキプレート11に用いる拡幅用プレート12の立ち上がり部12bは、少なくとも125mm程度は必要となる。前記60mmと設定したのは、プレキャスト合成スラブ10がいわゆるハーフ型のプレキャスト合成スラブの場合を考慮したことによる(図6参照)。
次に、前記合成スラブ用デッキプレート1の幅方向両端部に一対の拡幅用プレート2、2を当該合成スラブ用デッキプレート1の全長(スパン長)にわたって配置し、その掛け留め部5を当該デッキプレート1の継手部に掛け留めて連結(接続)する。その際に、前記拡幅用プレート2の水平部2aに穿設した孔(通し孔)2cに前記詰め部材を装着しておく。
次に、溶接金網等のひび割れ拡大防止筋を適宜配設した後、当該デッキプレート1の長手方向両端部に型枠を配設した上でコンクリート3を打設する。拡幅用プレート2における前記掛け留め部5を除いた水平部2aと前記合成スラブ用デッキプレート1の谷部の平面部とは略面一状態にあるので、安定した状態でコンクリートの打設作業を行うことができる。また、前記デッキプレート1の幅方向両端部は拡幅用プレート2、2の立ち上がり部2b、2bが型枠の役割を果たすので、良好なコンクリート打設作業を行うことができる。
次に、コンクリート養生後に前記型枠を取り外し(脱型し)、前記詰め部材を引き抜く。そうすると、幅方向両端部の所要の部位に設備配管通し用のコンクリート貫通孔4が穿設されたプレキャスト合成スラブ10が構築される。
梁部材との接合は、プレキャスト合成スラブ内にインサートを埋め込むことで、梁とボルト接合とすることにより、現場でのコンクリート打設作業を不要にできる。
この実施例2に係るプレキャスト合成スラブは、上記実施例1に係るプレキャスト合成スラブ10と比し、その拡幅用プレート2の立ち上がり部2bが、ストレート形状ではなく、隣接する他の拡幅用プレートの立ち上がり部と噛み合い可能な凹凸形状に形成されている点が相違する。
すなわち、図4に示した拡幅用プレート21a~23aは、隣接する拡幅用プレート21b~23bと互いに噛み合い可能な凹凸形状で実施しているので、拡幅用プレート21a~23aを用いて構築したプレキャスト合成スラブ10は、隣接する拡幅用プレート21b~23bを用いて構築したプレキャスト合成スラブ10と、適宜接着剤を用いて互いに噛み合うように配設できる。よって、上記実施例1の作用効果(前記段落[0025]参照)に加え、隣接するプレキャスト合成スラブ10に作用する鉛直方向の荷重に効果的に抵抗できる等、より強度・剛性に優れた床構造、ひいては建物を実現できる。
例えば、図6に示したように、合成スラブ用デッキプレート1の谷部に定着鉄筋9を配設し、図1等に示した拡幅用プレート2等の高さを低く(例えば、60mm程度に)設定した拡幅用プレート24を用いることで、簡単に、ハーフ型のプレキャスト合成スラブを構築することもできる。
2 拡幅用プレート
2a 水平部
2b 立ち上がり部
2c 孔(通し孔)
3 コンクリート
4 コンクリート貫通孔(貫通孔)
5 掛け留め部
9 定着鉄筋
10 プレキャスト合成スラブ
11 合成スラブ用デッキプレート
12 拡幅用プレート
12a 水平部
12b 立ち上がり部
20 プレキャスト合成スラブ
21a 拡幅用プレート
21b 拡幅用プレート
22a 拡幅用プレート
22b 拡幅用プレート
23a 拡幅用プレート
23b 拡幅用プレート
24 拡幅用プレート
Claims (8)
- 山部と谷部とが傾斜部を介して交互に連なり波形断面をなす合成スラブ用デッキプレートの幅方向両端部の谷部に、設備配管通し用の孔が穿設された水平部と前記山部よりも高い高さ寸法を有する立ち上がり部とから成る断面略L字形の拡幅用プレートが、前記水平部を前記谷部に掛け留めることにより、当該合成スラブ用デッキプレートの全長にわたって設けられ、前記合成スラブ用デッキプレート及び前記拡幅用プレートの表面にコンクリートが打設されると共に、前記穿設された孔を通るコンクリート貫通孔が形成されていることを特徴とする、プレキャスト合成スラブ。
- 前記拡幅用プレートの水平部の幅方向端縁部には、前記合成スラブ用デッキプレートの継手部に掛け留めて幅方向へのずり動きを防止する掛け留め部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載したプレキャスト合成スラブ。
- 前記拡幅用プレートの立ち上がり部は、隣接する他の拡幅用プレートの立ち上がり部と噛み合い可能な凹凸形状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したプレキャスト合成スラブ。
- 前記拡幅用プレートの水平部の幅寸は、150mm以上に設定されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載したプレキャスト合成スラブ。
- 前記拡幅用プレートの立ち上がり部の高さは、60mm以上に設定されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載したプレキャスト合成スラブ。
- 山部と谷部とが傾斜部を介して交互に連なり波形断面をなす合成スラブ用デッキプレートの幅方向へ連設可能で、かつ設備配管通し用の孔が穿設された水平部と、当該水平部の一端部から立ち上がる前記山部よりも高い高さ寸法を有する立ち上がり部とで断面略L字形に形成され、当該合成スラブ用デッキプレートの全長と略等しい長さを備えており、
前記合成スラブ用デッキプレートに連設された状態で表面にコンクリートが打設されて、前記穿設された孔を通るコンクリート貫通孔が形成されて成るプレキャスト合成スラブが構築されることを特徴とする、拡幅用プレート。 - 請求項1~5のいずれかに記載のプレキャスト合成スラブを用いて成ることを特徴とする、床構造。
- 請求項7に記載の床構造を用いて構築されることを特徴とする、建物。
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