以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、
(i)一般式(1)で示される構造を有する重合体を含む、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(ii)少なくとも2個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマー、
(iii)光重合開始剤、および
(iv)分散質、
を必須成分として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物に関する。
一般式(1)中、R5~R8は、炭素数4~12の炭化水素基を示し、R5~R8の2個以上が同一であってもよい。R9は水素原子またはメチル基を示す。Xは4価のカルボン酸残基を示す。Yは下記一般式(2)で表される置換基又は水素原子を示す。mは平均値が1~20の数である。
一般式(2)中、Mは2または3価のカルボン酸残基を示し、pは1または2である。*は式(1)中の酸素原子との結合部位を示す。
一般式(1)で示される構造を有する重合体を含む、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、一般式(3)で示される構造を有するエポキシ化合物と、アクリル酸又はメタクリル酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物、および(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて、製造することができる。
一般式(3)中、R1~R8は、炭素数4~12の炭化水素基を示し、R1~R8の2個以上が同一であってもよく、nは平均値が0~3の数を表し、Gはグリシジル基を示す。
上記一般式(3)で示される構造を有するエポキシ化合物は、一般式(4)に示すダイマージオール化合物を、エピハロヒドリンと反応(エポキシ化)させて、合成することができる。
一般式(4)中、R1~R4は、炭素数4~12の炭化水素基を表し、R1~R8の2個以上が同一であってもよい。
上記ダイマージオール化合物は、重合脂肪酸(ダイマー酸)のカルボキシル基を水酸基にまで還元したものから、合成することができる。なお、上記重合脂肪酸は、2個またはそれ以上の不飽和脂肪酸(リノール酸、オレイン酸等)の分子間反応により得られる化合物であり、主成分が炭素数36個の二塩基酸であるものである。ダイマー酸骨格は、6員環およびR1~R4に対応する炭化水素基に幾つか不飽和二重結合を含んでいるが、カルボキシル基を還元する際にほとんどが水素添加されて不飽和二重結合から飽和炭素―炭素単結合となる。この際、不飽和二重結合が少量残存していても、すなわち不飽和二重結合を含むダイマージオール化合物を用いてエポキシ化した場合も、主たる骨格は一般式(1)のエポキシ化合物となるので、本願発明の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の原料として用いることができる。
上記ダイマージオール化合物を含む市販品の例には、クローダ社製Pripol2030、2033などが含まれる。
上記ダイマージオール化合物とエピハロヒドリンとは、エポキシ化として公知の方法により反応させることができる。たとえば、上記ダイマージオール化合物を過剰のエピハロヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の存在下で、40~120℃で1~10時間反応させることで、上記エポキシ化が可能である。なお、加水分解性ハロゲンを低減する観点からは、上記反応は50~70℃で行うことが好ましい。
上記アルカリ金属水酸化物の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムならびにこれらの混合物等が含まれる。これらのアルカリ金属水酸化物は、水溶液または固体状態で用いるのが好ましい。
上記アルカリ金属水酸化物の使用量は、ダイマージオール化合物中の水酸基1モルに対して、0.8モル以上15.0モル以下であることが好ましく、0.9モル以上2.0モル以下であることがより好ましい。上記アルカリ金属水酸化物の使用量をダイマージオール化合物中の水酸基1モルに対して0.8モル以上とすることで、残存加水分解性ハロゲンの量を低減させることができる。また、上記アルカリ金属水酸化物の使用量をダイマージオール化合物中の水酸基1モルに対して15.0モル以下とすることで、エポキシ化合物合成の際のゲルの生成量を低減して、水洗時にエマルジョンを生成しにくくし、収率を高めることができる。
このとき、反応を促進させる観点から、相間移動触媒を併用しても良い。相間移動触媒の例には、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムおよび塩化メチルトリオクチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩などが含まれる。これらのアンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。相間移動触媒の使用量は、ダイマージオール化合物100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。
上記エピハロヒドリンの例には、エピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、エピブロモヒドリン、などが含まれる。これらのうち、エピクロロヒドリンが好ましい。
上記エピハロヒドリンの使用量は、ダイマージオール化合物中の水酸基の合計量1モルに対して、1.5モル以上30モル以下であることが好ましく、2モル以上15モル以下であることがより好ましく、2.5モル以上10モル以下であることがさらに好ましい。上記エピハロヒドリンの使用量をダイマージオール化合物中の水酸基1モルに対して1.5モル以上とすることで、粘度が過剰に高くならない程度にエポキシ化合物の分子量を調整することができる。上記エピハロヒドリンの使用量をダイマージオール化合物中の水酸基1モルに対して30モル以下とすることで、生産性をより高めることができる。
上記ダイマージオール化合物とエピハロヒドリンとの反応(エポキシ化)は、エポキシ基とは反応しない溶媒中で行うことが好ましい。上記溶媒の例には、トルエン、キシレンおよびベンゼンなどを含む芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびアセトンなどを含むケトン、プロパノールおよびブタノールなどを含むアルコール類、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルおよびジプロピレングリコールメチルエーテルなどを含むグリコールエーテル類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルおよびエチルプロピルエーテルなどを含む脂肪族エーテル類、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなどを含む脂環式エーテル類、ならびにジメチルスルホキシドなどが含まれる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記溶媒の使用量は、エピハロヒドリン100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、5質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
反応終了後に、過剰のエピハロヒドリンを留去し、溶剤への溶解、濾過、水洗による無機塩の除去、および溶剤を留去して、上記エポキシ化合物を得ることができる。
なお、このとき、加水分解性ハロゲン量が多すぎる場合は、加水分解性ハロゲン量を低減させるための精製を行ってもよい。上記精製は、残存する加水分解性ハロゲン量に対して1~30倍量のアルカリ金属水酸化物を得られたエポキシ化合物に加え、60~90℃の温度で10分~2時間精製反応を行なった後、中和、水洗などして過剰のアルカリ金属水酸化物や副生塩を除去し、さらに溶媒を減圧留去することにより、行うことができる。
上記エポキシ化合物は、(メタ)アクリル酸と反応させて、重合性不飽和基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物とする。
上記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とは、公知の方法により反応させることができる。例えば、上記エポキシ化合物基1モルに対し、2モルの(メタ)アクリル酸を使用するが、すべてのエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させるため、エポキシ基とカルボキシル基の等モルよりも若干過剰に(メタ)アクリル酸を使用してもよい。この反応により、一般式(3)において、Gの部分を一般式(5)に置き換えたエポキシ(メタ)アクリレート化合物が得られる。
一般式(5)中、R9は水素原子又はメチル基を示す。*は式(3)中の酸素原子との結合部位を示す。
このとき使用する溶媒および触媒や、その他の反応条件は特に制限されない。たとえば、溶媒としては、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒の例には、エチルセロソルブアセテートおよびブチルセロソルブアセテートなどを含むセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを含む高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノンおよびジイソブチルケトンなどを含むケトン系溶媒などが含まれる。上記触媒の例には、テトラエチルアンモニウムブロマイドおよびトリエチルベンジルアンモニウムクロライドなどを含むアンモニウム塩、ならびに、トリフェニルホスフィンおよびトリス(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどを含むホスフィン類などの公知の触媒が含まれる。
さらに、上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物に、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物、および(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
上記(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物の例には、飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物、飽和環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物、不飽和炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物などが含まれる。なお、これらのジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物の各炭化水素残基(カルボキシル基を除いた構造)は、さらにアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基などの置換基により置換されていてもよい。
飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸などが含まれる。飽和環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、およびヘキサヒドロトリメリット酸などが含まれる。不飽和ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、およびクロレンド酸などが含まれる。芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸およびトリメリット酸などが含まれる。これらのジカルボン酸またはトリカルボン酸化合物の酸一無水物も使用することができる。これらのうちで、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸およびトリメリット酸またはこれらの無一水物が好ましく、コハク酸、イタコン酸およびテトラヒドロフタル酸またはこれらの酸一無水物がより好ましい。
上記(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、および芳香族多価カルボン酸又はその酸ニ無水物などが含まれる。なお、これらのテトラカルボン酸またはその酸二無水物の各炭化水素残基(カルボキシル基を除いた構造)は、さらにアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基などの置換基により置換されていてもよい。
具体的なテトラカルボン酸としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例にはブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、およびヘキサンテトラカルボン酸などが含まれる。脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸などが含まれる。芳香族多価カルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、およびビフェニルエーテルテトラカルボン酸などが含まれる。これらのテトラカルボン酸化合物の酸二無水物も使用することができる。
上記反応に使用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01~0.5であり、好ましくは0.02以上0.1未満であるのがよい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がある。
上記の重合性不飽和基を含有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物(c)とカルボン酸成分(a)および(b)とを反応させる比率については、好ましくは、化合物の末端がカルボキシル基となるように、各成分のモル比が(c):(a):(b)=1:0.2~1.0:0.01~1.0となるように定量的に反応させることが望ましい。この場合、エポキシ(メタ)アクリレート化合物に対する酸成分の総量のモル比(c)/〔(a)/2+(b)〕=0.5~1.0となるように定量的に反応させることが望ましい。このモル比が0.5未満の場合は、アルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物となり、また、未反応酸二無水物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が1.0を超える場合は、未反応の重合性不飽和基を含有するヒドロキシル基含有化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。(a)、(b)及び(c)の各成分のモル比はアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、上述の範囲で任意に変更できる。
上記(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物、および(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物との反応は、たとえば、トリエチルアミン、臭化テトラエチルアンモニウムおよびトリフェニルホスフィンなどの触媒の存在下、90~130℃で加熱して、撹拌して反応させることができる。
上述した製造方法で製造される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、酸価が30~200mgKOH/gであることが好ましく、50~150mgKOH/gであることがより好ましい。上記酸化が30mgKOH/gより小さいとアルカリ現像時に残渣が残りやすくなり、200mgKOH/gを超えるとアルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎ、剥離現像が起きることがある。
上述した製造方法においては、製造される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の粘度を低くする観点から、一般式(3)において、n=0のもの(n=0体)の含有率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
また、上述した製造方法で製造される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、加水分解性ハロゲン含有量0.2質量%以下であることが好ましい。加水分解性ハロゲン含有量が0.2質量%以下だと、加水分解性ハロゲンによる硬化反応の阻害が生じにくく、硬化物の物性、特に絶縁信頼性が低下しにくいため、電気・電子分野での用途に好ましい。加水分解性ハロゲン含有量は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
上述した製造方法で製造される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂には、一般式(3)においてn=0であるエポキシ化合物の反応生成物である、一般式(1)で示される構造を有する上述した重合体が含まれる。
上記重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の粘度を低くする観点から、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、一般式(1)で示される構造を有する重合体の含有率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
(ii)少なくとも2個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含む(メタ)アクリル酸エステル類、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどを含む多価アルコール類、フェノールノボラックなどの多価フェノール類のビニルベンジルエーテル化合物、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物類の付加重合体などが含まれる。重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士の架橋構造を形成する必要性がある場合には、3個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを用いることがより好ましい。これらの光重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、(ii)少なくとも2個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
(ii)成分の配合割合は、(i)成分100質量部に対して5~400質量部であるのがよく、好ましくは10~150質量部であるのがよい。(ii)成分の配合割合が(i)成分100質量部に対して400質量部より多いと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じる。一方、(ii)成分の配合割合が(i)成分100質量部に対して5質量部よりも少ないと、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価が高いために、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じる恐れがある。
(iii)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、およびp-tert-ブチルアセトフェノンなどを含むアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、およびp,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどを含むベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、および2,4,5-トリアリールビイミダゾールなどを含むビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、および2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾールなどを含むハロメチルジアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、および2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどを含むハロメチル-s-トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]-,O-アセチルオキシム、メタノン,(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-,アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、およびエタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-,1-O-アセチルオキシムなどを含むO-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、および2-イソプロピルチオキサンソンなどを含むイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、およびクメンパーオキシドなどを含む有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、および2-メルカプトベンゾチアゾールなどを含むチオール化合物などが含まれる。この中でも、分散質を高濃度で含ませるような場合のように遮光度の大きい硬化膜パターンを形成する場合に、高感度の感光性樹脂組成物を得る観点からは、O-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
また、(iii)光重合開始剤として、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンおよびトリエチルアミンなどの第3級アミンなどが含まれる。
(iii)成分の配合割合は、(i)成分と(ii)成分の合計100質量部を基準として0.1~30質量部であるのがよく、好ましくは1~25質量部であるのがよい。(iii)成分の配合割合が0.1質量部未満の場合には、光重合の速度が遅くなって、感度が低下し、一方、30質量部を超える場合には、感度が強すぎて、パターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又は、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じる恐れがある。
本発明で使用できる(iv)分散質としては、1~1000nmの平均粒径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒径)で分散されたものであれば、従来感光性樹脂組成物に用いられている公知の分散質を特に制限なく使用することができる。(iv)分散質の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、およびチオインジゴ顔料などを含む有機顔料、酸化チタン顔料および複合酸化物顔料などを含む無機顔料、ならびにカーボンブラック顔料などを含む顔料(実質的に媒質に溶解しない着色剤)などが含まれる。また、(iv)分散質の例には、アクリル系ポリマー粒子およびウレタン系ポリマー粒子などを含む有機フィラー、ならびに、シリカ、タルク、マイカ、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、および硫酸バリウムなどを含む無機フィラーなどの顔料以外の化合物なども含まれる。さらに、(iv)分散質の他の例には、金属または金属酸化物のナノ粒子なども含まれる。
これらの(iv)分散質は目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて単独で又は複数組み合わせて用いられ、例えばカラーフィルターのブラックマトリクスの製造に用いられる遮光レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、および黒色有機顔料などを用いることができ、カラーフィルターの画素の製造に用いられる着色レジストとしては、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、および紫色の有機顔料などを用いることができ、プリント配線板の絶縁膜の製造に用いられるソルダーレジストとしては、有機顔料、無機顔料、および無機フィラーなどを用いることができ、タッチパネルの前面ガラスの意匠に用いられる加飾レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料、および白色顔料などを用いることができ、高硬度、高屈折率、高耐久性の透明レジストとしてはシリカおよびチタニア等の透明フィラーを用いることができ、それぞれ適宜選定して使用することができる。
また、(iv)分散質は、遮光材である場合には、黒色有機顔料、混色有機顔料、黒色無機顔料などをすることができ、用途によるが、絶縁性、耐熱性、耐光性および耐溶剤性に優れたものであることが好ましい。ここで用いられる黒色有機顔料の例には、ペリレンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、およびラクタムブラックなどが含まれる。ここで用いられる混色有機顔料の例には、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、およびマゼンタなどから選ばれる2種以上の顔料を混合して擬似黒色化された混合顔料が含まれる。ここで用いられる黒色無機顔料の例には、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、およびチタンブラックなどが含まれる。これらの(iv)分散質は、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
なお、(iv)成分として使用可能な有機顔料としては、カラーインデックス名で以下のナンバーのものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279など
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81など
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214など
ピグメント・グリーン7、36、58など
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80など
ピグメント・バイオレット19、23、37など
その他の分散質として、耐衝撃性、加工時のメッキ金属との密着性等の改良のために公知のゴム成分を添加することもできる。ゴム成分の中でも、現像性を確保するためにはカルボキシル基を有する架橋弾性重合体が好ましく、具体的には、カルボキシル基を有する架橋アクリルゴム、カルボキシル基を有する架橋NBR、カルボキシル基を有する架橋MBS等が挙げることができる。ゴム成分を使用する場合には一次粒子径が0.1μm以下の平均粒子径を有するものを樹脂成分100質量部に対して3~10質量部の範囲で添加することが好ましい。
また、(iv)分散質を分散させる溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、およびジアセトンアルコールなどを含むアルコール類、α-またはβ-テルピネオールなどを含むテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびN-メチル-2-ピロリドンなどを含むケトン類、トルエン、キシレン、およびテトラメチルベンゼンなどを含む芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、およびトリエチレングリコールモノエチルエーテルなどを含むグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを含むエステル類等が含まれる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、塗布性などの特性を充足させるために2種以上を併用してもよい。
(iv)分散質は、好ましくは、予め溶剤に分散剤とともに分散させて分散質分散液としたうえで、感光性樹脂組成物として配合することが好ましい。分散質分散液を形成する分散質の配合割合については、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して1~95質量%添加して用いることができる。なお、当該固形分とは、組成物のうち溶媒を除いた成分を意味する。当該固形分には、光硬化後に固形分となる(ii)成分も含まれる。分散質の1~95質量%の幅広い添加量範囲は、例えばアクリル樹脂粒子、ゴム粒子等の有機質の比重の小さい分散質を用いる場合から、例えば金属粒子や金属酸化粒子といった比重の大きな分散質を用いる場合があるためである。例えば、着色のような目的で分散質を添加する場合は、5~80質量%であることが好ましい。固形分中5質量%より少ない場合、所望の着色ができなくなるか、または所望の着色性(色目)を付与できなくなる等の分散質が付与するべき機能を付与することができなくなる。固形分中80質量%を越える場合、本来バインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少するため、現像特性を損なうと共に膜形成能が損なわれる。したがって、固形分中の(iv)成分は、着色剤(遮光材を含む)の場合には10~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましい。
また、分散液には、分散質を安定的に分散させるために分散剤を使用するが、この目的には各種高分子分散剤等の公知の分散剤を使用することができる。分散剤の例としては、従来顔料分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)を特に制限なく使用することができるが、例えば、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)等を挙げることができる。特に、顔料への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1~100mgKOH/g、数平均分子量が1千~10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤は好適である。この分散剤の配合量は、分散質に対して1~35質量%、好ましくは2~25質量%であることが好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は一般に分散を安定させる作用をも有するが、分散促進能を有しないものは分散剤とは扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
(i)一般式(1)で示される構造を有する重合体を含む、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(ii)光重合性モノマーと、(iii)光重合開始剤と、(iv)分散質とを必須成分として含む感光性樹脂組成物は、通常溶剤に溶解させ、さらに各種添加剤を配合して用いることができる。このときに使用する溶剤としては、(iv)分散質の分散するために用いる溶剤として例示したものなどを、1種又は2種以上組合せて使用することができる。
また、上記感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。硬化促進剤としては、例えばエポキシ化合物に通常適用される硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を利用でき、三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類、ジアザビシクロ系化合物等が含まれる。熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物、リン系熱安定剤などが含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、およびリン酸トリクレジルなどが含まれる。レベリング剤および消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、およびアクリル系の化合物などが含まれる。カップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤などが含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤等などが含まれる。
上記感光性樹脂組成物は、(v)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物をさらに含んでもよい。(v)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]に代表される脂環式エポキシ化合物、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば「EHPE3150」、株式会社ダイセル製)、フェニルグリシジルエーテル、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、エポキシ化ポリブタジエン(例えば「NISSO-PB・JP-100」、日本曹達株式会社製)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物が含まれる。これらの成分は、エポキシ当量が100~300g/eqであり、かつ、数平均分子量が100~5000の化合物であることが好ましい。(v)成分は1種類の化合物のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルカリ可溶性樹脂の架橋密度を上げる必要性がある場合は、エポキシ基を少なくとも2個以上を有する化合物が好ましい。
(v)のエポキシ化合物を使用する場合の添加量は、(i)成分と(ii)成分の合計100質量部に対して10~40質量部であることが好ましい。ここで、エポキシ化合物を添加する1つの目的としては、硬化膜の信頼性を高めるためにパターンニング後硬化膜を形成した際に残存するカルボキシル基の量を少なくすることがあり、この目的の場合はエポキシ化合物の添加量が10質量部より少ないと、例えば絶縁膜として使用する際の耐湿信頼性が確保できないおそれがある。また、エポキシ化合物の配合量が40質量部より多い場合は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分における感光性基の量が減少して、パターニングするための感度が十分に得られなくなるおそれがある。
上記感光性樹脂組成物は、上記(i)~(iv)成分を主成分として、また任意成分として(v)を含有する。上記固形分中に、(i)~(v)成分が合計で70質量%、好ましくは80質量%以上含まれることが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物中に60~90質量%の範囲で含まれるようにするのがよい。
[硬化物]
上記感光性樹脂組成物は、たとえば、基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射(露光)し、これを硬化させることにより、硬化物(塗膜)とすることができる。このとき、フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの硬化物(塗膜)が得られる。
具体的には、感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。
これらの方法によって、感光性樹脂組成物を所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークは、オーブンおよびホットプレートなどによる加熱、真空乾燥、ならびにこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80~120℃の温度で1~10分間行われる。
露光に使用される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれるが、波長が250~450nmの範囲にある放射線が好ましい。
アルカリ現像は、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの水溶液を現像液として用いて行うことができる。これらの現像液は樹脂層の特性に合わせて選択されるが、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像は、20~35℃の温度で行うことが好ましい。市販の現像機や超音波洗浄機等を用いることで、微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。
このようにして現像した後、180~250℃の温度及び20~100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。ポストベークは、プレベークと同様に、オーブンおよびホットプレートなどにより加熱することによって行われる。
その後、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある) を完結させて、絶縁膜等の硬化膜を得ることができる。このときの硬化温度は160~250℃の範囲が好ましい。
上記硬化物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層などのレジスト層、多層プリント配線板などの層間絶縁層、ガスバリア用のフィルム、レンズおよび発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子用の封止材、塗料やインキのトップコート、プラスチック類のハードコート、金属類の防錆膜等にも用いることができる。また、コーティング剤としてだけではなく、熱硬化性組成物そのものを成形してフィルム、基板、プラスチック部品、光学レンズ等の作製にも応用できることから極めて有用である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、一般式(1)で表される構造を含む重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
[固形分濃度]
合成例(及び比較合成例)中で得られた樹脂溶液、感光性樹脂組成物等の1gをガラスフィルター〔質量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の質量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置(平沼産業(株)製COM-1600)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要となったKOHの量を酸価とした。
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)(東ソー(株)製)、温度: 40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー(株)製PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
また、合成例及び比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
DDOEA:ダイマージオール化合物(クローダ社製Pripol2033、水酸基当量270g/eq)とクロロメチルオキシランとの反応物(一般式(1)の骨格 を有する)とアクリル酸との反応物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[合成例1]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にDDOEAの50%PGMEA溶液を351.0g、BPDAを30.2g、THPAを15.6g、TEABを0.43g、PGMEAを8.5g仕込み、120~125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)-1を得た。得られた樹脂の固形分濃度は54.6wt%、酸価(固形分換算)は84.1mgKOH/g、及び分子量(Mw)は3400であった。
次に、着色感光性樹脂組成物の製造に係る実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以降の実施例及び比較例の着色感光性樹脂組成物の製造で用いた原料及び略号は以下の通りである。
(i)-1:上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)-2:クレゾールノボラック型酸変性エポキシアクリレート樹脂の68.9%PGMEA溶液(CCR-1172、日本化薬製)
(ii):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製OXE02)
(iv):カーボンブラック20.0質量%、高分子分散剤5.0質量%のPGMEA分散液(固形分25.0%、カーボンブラックの平均二次粒径162nm)
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
上記の配合成分を表1に示す割合で配合して、実施例1及び比較例1の感光性着色樹脂組成物を調製した。尚、表1中の数値はすべて質量部を表す。
[実施例1及び比較例1の感光性着色樹脂組成物の評価]
表1に示した感光性着色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が1.4μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークして塗布板を作成した。その後、パターン形成用のフォトマスクを通して500W/cm2の高圧水銀ランプで波長365nmの照度が30mW/cm2の紫外線を露光量100mJ/cm2照射し、露光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.15wt%炭酸ナトリウム水溶液、23℃のシャワー現像にてパターンが現われ始めた時間からさらに30秒間の現像を行い、さらにスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行って、実施例1及び比較例1に係る硬化膜を得た。
上記の条件で得られた硬化膜について次に示す評価を行った。なお、膜厚試験用の硬化膜の作成時にはフォトマスクを通さない全面露光後、現像、水洗、加熱硬化処理を行った。
(膜厚)
塗布した膜の一部を削り、触針式段差形状測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製 商品名P-10)を用いて測定した。
(解像性)
パターン形成用フォトマスクを使用して露光、現像したとき、パターン形成能を光学顕微鏡にて測定した。
○:パターン形成可能(5μm~30μmのライン&スペースパターンが残る)
×:現像液に溶解せずもしくはパターン剥離
(しわ耐性)
表1に示した感光性着色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が1.4μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークして塗布板を作成した。その後、フォトマスクを通さずに500W/cm2の高圧水銀ランプで波長365nmの照度が30mW/cm2の紫外線を表2に示した露光量照射し、全面の光硬化反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行って、実施例1及び比較例1に係る硬化膜を得た。
加熱硬化処理後の硬化膜表面のしわの有無を目視によって評価した。
○:しわが確認されない
×:しわが発生
表2から、本願発明の着色感光性樹脂組成物を用いた場合は、露光量を大きくして行ってもパターンの表面にシワが寄ることなく、表面が平滑なパターンを得ることができる。このため、比較例1の感光性樹脂組成物を用いた時と比較して、膜厚の厚いパターン形成が必要な場合等に露光量を増やしてパターニングする必要性があるときにも表面にシワがない硬化膜パターンを得ることができる等により、多様なユーザーの要求特性に応えることが可能になる。