以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態に係るミスト入浴器を右斜め前方上方側から見た斜視図であり、図2は、右斜め後方上方側から見た斜視図である。図3は、図1および図2に示すミスト入浴器の入浴器本体の平面図である。また、図4および図5は、それぞれ図3に示す入浴器本体のIV-IV線およびV-V線に沿った断面図である。まず、これら図1ないし図5を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の概略的な構成について説明する。
図1および図2に示すように、ミスト入浴器1は、全体として略直方体形状を有しており、入浴器本体2と、蓋体3と、覆いとしてのカーテン4とを主として備えている。入浴器本体2は、外殻としての筐体10を有しており、当該筐体10は、入浴器本体2の外側壁面を形成する外側シェル10Aと、入浴器本体2の内側壁面を形成する内側シェル10Bとを含んでいる。
筐体10は、前壁11、後壁12、右側壁13、左側壁14および床15を有しており、上面に開放部16が設けられた箱形状を有している。また、入浴器本体2の右側壁13の前側部分には、出入り口13aが設けられており、当該出入り口13aは、床15近傍から開放部16に達するように位置している。
蓋体3は、前蓋50と後蓋60とを含んでおり、これら前蓋50および後蓋60は、筐体10の開放部16を覆うことができるように筐体10の上面に取付けられている。また、カーテン4は、筐体10の出入り口13aを覆うことができるように当該出入り口13a近傍の筐体10の右側壁13の内側壁面に取付けられている。なお、蓋体3およびカーテン4の着脱態様および蓋体3の開閉動作については、後において詳述することとする。
ここで、ミスト入浴器1は、介護施設や医療機関に限られず、家庭等の居室や浴室等においても設置が可能になるように構成されたものであり、その外形寸法は、前後方向の奥行がたとえば90cm以上180cm以下に構成され、左右方向の幅がたとえば40cm以上100cm以下に構成され、上下方向の高さがたとえば50cm以上120cm以下に構成されるものである。
図1ないし図5に示すように、筐体10の前部内側には、入浴者が出入りするための通路部17が設けられている(特に図3ないし図5参照)。通路部17は、前壁11、左側壁14および床15によって主として規定された空間にて構成されており、上述した出入り口13aに面している。換言すれば、出入り口13aは、筐体10の前部内側に設けられた通路部17と筐体10の外側の空間とを左右方向において結ぶように、右側壁13の前側部分に設けられている。
一方、図1、図3および図5に示すように、筐体10の後部内側には、入浴者が前壁11側を向いた状態で着座することが可能な座部18が設けられている(図7参照)。座部18は、その座面が床15から所定の高さを有するように内側シェル10Bに段差部を設けることで構成されており、これにより座部18は、通路部17に面して配設されている。
ここで、筐体10は、上述したように、入浴器本体2の外側壁面を形成する外側シェル10Aと、入浴器本体2の内側壁面を形成する内側シェル10Bとを含んでいる。そのため、入浴器本体2は、外側シェル10Aと内側シェル10Bとの間に位置することでこれら外側シェル10Aおよび内側シェル10Bによって規定される略矩形枠状の空間からなる中空部S(図4および図5参照)と、内側シェル10Bの内側に位置することで内側シェル10Bによって規定される略直方体形状の空間とを主として有している。
このうち、前者の空間である中空部Sは、後者の空間と筐体10の外側の空間との間の断熱性を確保するための断熱層として機能する。一方、後者の空間は、上述した通路部17と上述した座部18の上方に位置する空間とを含むことにより、入浴者が出入り可能な空間として構成される。詳細については後述するが、前者の空間である中空部Sには、後述する給水側配管系の一部が収容されており、後者の空間には、後述する給水側配管系の一部であるシャワー設備5等が配置されている。
なお、床15および座部18を形成する部分の内側シェル10Bの下方の位置には、外側シェル10Aは位置していない。詳細については後述するが、床15および座部18を形成する部分の内側シェル10Bの下方の空間には、後述するベースブロック41やベースポール42、給水側配管系の一部、排水側配管系等が配置されている。この床15および座部18の下方の空間は、上述した後者の空間とミスト入浴器1が設置される設置面との間の断熱性を確保するための断熱層としても機能する。
筐体10を構成する外側シェル10Aおよび内側シェル10Bは、軽量化や断熱性の確保のために好ましくは樹脂製の部材にて構成される。ここで、外側シェル10Aおよび内側シェル10Bは、たとえばポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはこれらを用いた複合材等によって形成されていることが好ましい。
図2ないし図4に示すように、前壁11の内側壁面には、前側ミスト噴出部としての前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22および前側下段ミスト噴出部23が設けられている。これら前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22および前側下段ミスト噴出部23は、いずれも座部18に着座した入浴者に対して通路部17を介してミスト噴出を行なうためのものである(図14および図15参照)。
前側上段ミスト噴出部21は、前壁11の内側壁部の最上部に位置しており、互いに左右方向において離間して配置された合計で3つのノズルを有している。前側中段ミスト噴出部22は、前壁11の内側壁部の上下方向の中央部よりもやや上方に位置しており、互いに左右方向において離間して配置された合計で2つのノズルを有している。前側下段ミスト噴出部23は、前壁11の内側壁部の上下方向の略中央部に位置しており、互いに左右方向において離間して配置された合計で2つのノズルを有している。
これら前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22および前側下段ミスト噴出部23に含まれるノズルは、その噴出軸が所定方向を向くように適切に調節されることにより、当該ノズルから噴出されたミストが、座部18に着座した入浴者の頭部を除く身体の主として前側部分に対して万遍なく噴き付けられるように構成されている。なお、その詳細については、後において詳述することとする。
図1、図3および図5に示すように、後壁12の内側壁面には、後側ミスト噴出部24が設けられている。この後側ミスト噴出部24は、座部18に着座した入浴者に対してミスト噴出を行なうためのものである(図14および図15参照)。
後側ミスト噴出部24は、後壁12の内側壁部の最上部に位置しており、互いに左右方向において離間して配置された合計で3つのノズルを有している。
これら後側ミスト噴出部24に含まれるノズルは、その噴出軸が所定方向を向くように適切に調節されることにより、当該ノズルから噴出されたミストが、座部18に着座した入浴者の頭部を除く身体の主として後側部分に対して万遍なく噴き付けられるように構成されている。なお、その詳細については、後において詳述することとする。
図1、図3および図5に示すように、座部18には、股下ミスト噴出部25が設けられている。この股下ミスト噴出部25は、座部18に着座した入浴者に対してミスト噴出を行なうためのものである(図14および図15参照)。
股下ミスト噴出部25は、座部18の前側中央に設けられた凹部18a内に位置するように配設されており、当該凹部18a内に設けられた1つのノズルを有している。
この股下ミスト噴出部25に含まれるノズルは、その噴出軸が所定方向を向くように適切に調節されることにより、当該ノズルから噴出されたミストが、座部18に着座した入浴者の腹部および下腹部に対して噴き付けられるように構成されている。なお、その詳細については、後において詳述することとする。
ここで、股下ミスト噴出部25を座部18に設けた凹部18a内に配置することにより、入浴者が座部18に着座する際ならびに座部18から立ち上がる際に、股下ミスト噴出部25が邪魔になることがないばかりでなく、座部18に着座した入浴者の腹部および下腹部と股下ミスト噴出部25との間の距離を適切に確保することができるため、入浴者に噴き付けられるミストの噴き付け圧が必要以上に高くなってしまうことが防止できる。
図1ないし図4に示すように、通路部17に面する部分の左側壁14の内側壁面には、シャワー設備5が設けられている。シャワー設備5は、後述する給水側配管系に設置されるものであり、シャワー混合栓31と、シャワーホース32と、シャワーノズル33とを含んでいる。このシャワー設備5は、もっぱら入浴者が洗髪を行なう際や頭部を除く身体の特定部位を局所的に洗浄する際に使用されるものであり、さらにはメンテナンスのためにミスト入浴器1の清掃を行なう際にも利用されるものである。
図1および図3ないし図5に示すように、床15には、排水口15aが設けられている。ここで、床15は、その上面である床面が傾斜した形状を有するように構成されており、当該床面は、床15の後側中央に向かうにつれてこれが低所に位置するように緩やかに傾斜している。排水口15aは、この床面の最も低所の位置である床15の後側中央に設けられており、後述する排水側配管系に接続されている。排水口15aは、床15に落下した水を排水側配管系を介してミスト入浴器1の外部に排出するためのものであり、好ましくは、毛髪等の異物を捕捉するキャッチを有している。
図1ないし図5に示すように、右側壁13に設けられた出入り口13aには、敷居13a1が設けられている。敷居13a1は、床15の床面から所定の高さを有するように構成されており、これにより排水口15aに異物が詰まること等によって排水が阻害された場合にも、床15に落下した水が直ちにミスト入浴器1の外部に溢れ出すことが防止されている。
ここで、図4および図5を参照して、設置面(すなわち居室や浴室等のフロア)に対する入浴器本体2の被設置面から出入り口13aの敷居13a1の上面までの高さHは、15cm以下に設定されていることが好ましく、また、当該敷居13a1の跨ぎ方向の幅Wは、5cm以下に設定されていることが好ましい。このように構成することにより、入浴器本体2に対する入浴者の出入りがより容易に行なえることになる。
また、図2ないし図4に示すように、前壁11と床15との境界部には、センサ設置部80が設けられており、当該センサ設置部80の内部には、水位センサ81(図14参照)が設置されている。水位センサ81は、床15に溜まった水の水位が所定レベルに達したことを検知するものである。この水位センサ81を設けることにより、上述したミスト入浴器1の外部への水の溢れ出しがさらに確実に防止できることになるが、この点については後述することとする。
図2ないし図4に示すように、前側上段ミスト噴出部21と前側中段ミスト噴出部22との間には、左右方向に延在するように手摺11aが設けられている。当該手摺11aは、入浴者が入浴器本体2に出入りする際や、入浴者が座部18に着座したり座部18から立ち上がったりする際の利便性を考慮して設けられたものである。
図3および図4に示すように、前壁11の内側壁面の最上部の左右の位置には、一対の取付け用凹部11bが設けられている。当該一対の取付け用凹部11bは、前蓋50を筐体10に取付けるための部位であるが、その詳細については後述することとする。
図3ないし図5に示すように、前壁11の内側壁面および右側壁13の内側壁面の所定位置には、複数のフック90が設けられている。当該複数のフック90は、カーテン4を筐体10に取付けるためのものであり、これら複数のフック90に対して選択的にカーテン4を付け替えることにより、カーテン4によって出入り口13aの開閉が行なえることになる。
図4および図5に示すように、床15を形成する部分の内側シェル10Bの下方の位置には、複数のベースブロック41が配置されており、座部18を形成する部分の内側シェル10Bの下方の位置には、複数のベースポール42が配置されている。これらベースブロック41およびベースポール42は、内側シェル10Bを支持することによって入浴器本体2を設置面(すなわち居室や浴室等のフロア)に設置するものであり、ミスト入浴器1の設置状態においては、これらベースブロック41およびベースポール42の下面が設置面に接触することになる。
なお、図1および図2に示すように、前蓋50は、通路部17の上方に配置されることにより、蓋体3の開状態において通路部17の上方に位置する部分の開放部16を開放するとともに、蓋体3の閉状態において通路部17の上方に位置する部分の開放部16を閉塞することが可能となるように構成されている。また、後蓋60は、座部18の上方に配置されることにより、蓋体3の開状態および閉状態のいずれにおいても座部18の上方に位置する部分の開放部16を閉塞するように構成されている(蓋体3の閉状態については、図7等参照)。
ここで、蓋体3を構成する前蓋50および後蓋60は、軽量化や断熱性の確保のために好ましくは樹脂製の部材にて構成される。特に、ブロー成形を利用してこれら前蓋50および後蓋60を製作することとすれば、高い断熱性と大幅な軽量化とが実現できることになる。前蓋50および後蓋60の材質としては、たとえばポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはこれらを用いた複合材等が挙げられる。
図6は、本実施の形態に係るミスト入浴器の給水側配管系および排水側配管系の構成図である。次に、この図6を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の給水側配管系および排水側配管系の構成について詳説する。
図6に示すように、ミスト入浴器1は、上述したミスト噴出部としての前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25と、シャワー設備5に含まれるシャワー混合栓31、シャワーホース32およびシャワーノズル33と、水位センサ81と、排水口15aとに加え、緊急遮断弁72a,72bと、配管ラインL1~L4とをさらに有している。
配管ラインL1,L2は、それぞれ介護施設や医療機関、家庭等の建物に敷設された水道水栓および湯栓に接続される接続部71a,71bを一端に有しており、他端がシャワー混合栓31に接続されている。配管ラインL1,L2の接続部71a,71bが設けられた上述した一端側の部分は、それぞれミスト入浴器1の外部に引き出されている。
配管ラインL1,L2には、それぞれ緊急遮断弁72a,72bが設けられている。緊急遮断弁72a,72bの各々は、開状態において、水道水栓および湯栓から圧送される冷水および温水の流通を許容し、閉状態において、これら冷水および温水の流通を遮断する。
配管ラインL3は、シャワー混合栓31と、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25とを接続するものである。配管ラインL3は、所定位置において分岐するように構成されており、配管ラインL3の分岐後の部分が、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25に個別に接続されている。
配管ラインL4は、一端が排水口15aに接続されており、他端がミスト入浴器1の外部に引き出されている。
このように構成することにより、ミスト入浴器1は、配管ラインL1~L3、緊急遮断弁72a,72bおよびシャワー混合栓31によって構成される給水側配管系と、配管ラインL4によって構成される排水側配管系とを備えることになる。
ここで、配管ラインL1~L4は、樹脂製または金属製のパイプやチューブ等によって構成されている。配管ラインL1~L4の大部分は、上述した外側シェル10Aと内側シェル10Bとの間に位置する中空部S、ならびに、床15および座部18を形成する部分の内側シェル10Bの下方の空間において配索されており、また、配管ラインL1,L2,L4の一部は、筐体10の後壁12の外側壁面に設けられた挿通口12a(図2等参照)を介してミスト入浴器1の外部に引き出されている(図7参照)。
上述した構成の給水側配管系を具備することにより、ミスト入浴器1は、シャワー混合栓31に設けられた切替操作部31a(図3参照)を、ミスト噴出部としての前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25からのミスト噴霧の有無を操作するための操作部として有することになる。
そのため、シャワー混合栓31が筐体10の左側壁14の内側壁面に設けられることにより、ミスト噴霧の有無を操作するための操作部(すなわち切替操作部31a)が筐体10の内側の位置に配置されることになり、入浴者自らが入浴器本体2の座部18に着座した状態でミスト噴霧の有無を操作することが可能になる。なお、当該切替操作部31aを操作することにより、水道水栓および湯栓からの給水の停止と、ミスト噴出部からのミスト噴霧と、シャワー設備5によるシャワーの吐出とが切替え可能になる。
なお、シャワー混合栓31は、上述した切替操作部31aに加え、温度調節のための温調操作部31b(図3参照)をさらに有している。この温調操作部31bを操作することにより、ミスト噴出部から噴霧されるミストおよびシャワー設備5から吐出されるシャワーの温度調節を入浴者自らが入浴器本体2の座部18に着座した状態で行なうことができる。
一方、水位センサ81としては、たとえばレベルスイッチが利用され、低コスト化の観点から好ましくはフロート式のレベルスイッチが利用される。水位センサ81は、緊急遮断弁72a,72bにそれぞれ電気的に接続されており、床15に溜まった水の水位が所定レベルに達したことを検知した場合に、所定の信号を緊急遮断弁72a,72bに送出する。
緊急遮断弁72a,72bは、水位センサから送出される上記信号を受けとった場合に開状態から閉状態へと移行し、これによりシャワー混合栓31、ひいては前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25、ならびに、シャワーノズル33への給水が停止される。
このように構成することにより、上述したように、排水口15aに異物が詰まること等によって排水が阻害された場合にも、床15に落下した水が出入り口13aを越えてミスト入浴器1の外部に溢れ出すことが確実に防止できることになる。なお、当然ながら、水位センサ81によって検知される水位のレベルは、床15から出入り口13aの敷居13a1までの高さよりも低く設定される。
ここで、上述した水位センサ81および緊急遮断弁72a,72bは、いずれも電池駆動式(より好適には乾電池式)とされることが好ましい。このように構成することにより、商用電源等を利用する場合に比べ、万が一漏電が生じた場合にも、入浴者へ影響が及ぶことを確実に回避することができる。
図7は、本実施の形態に係るミスト入浴器の使用状態を示す側面図である。次に、図7を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の使用方法ならびに使用状態について説明する。なお、以下に示す使用方法は、温水を用いたミスト入浴を行なう場合の一例である。
図7を参照して、ミスト入浴器1は、上述したように入浴器本体2の右側部前方に出入り口13aを有しているため、入浴者100は、当該出入り口13aを介して入浴器本体2の内側に設けられた通路部17へと進入し、通路部17において身体102の向きを変え、前壁11側を向いた姿勢となるように座部18に着座する。
その際、上述したように、居室や浴室等のフロア1000から出入り口13aの敷居13a1の上面までの高さH(図3および図4参照)を15cm以下に設定するとともに、敷居13a1の跨ぎ方向の幅W(図3および図4参照)を5cm以下に設定することにより、入浴者100が高齢者や身体的に障がいがある人等である場合であっても、より容易に通路部17への進入が行なえることになる。
また、その際、必要に応じて手摺11aを利用することにより、入浴者100が高齢者や身体的に障がいがある人等である場合であっても、通路部17への進入、通路部17における身体102の向きの変更、および、座部18への着座が、より容易に行なえることになる。
次に、入浴者100は、座部18に着座した状態のままカーテン4を操作することで出入り口13aをカーテン4によって覆う。これによりミスト入浴器1は、その上面のみが開放された状態となる。
次に、入浴者100は、左側壁14に掛けられた状態にあるシャワーノズル33を手に持ち、シャワー設備5の切替操作部31aおよび温調操作部31bを操作してシャワーノズル33から吐出される温水の温度を適切に調節する。温度調節が完了した後には、入浴者100は、シャワー設備5の切替操作部31aを操作することによって給水を一旦停止させ、その後シャワーノズル33を元の位置に戻す。
次に、入浴者100は、前蓋50を操作することで前蓋50および後蓋60を含む蓋体3を閉状態とする。その際、後述するように、蓋体3には、閉状態において窓部WPが所定位置に形成されるように構成されているため、これにより入浴者100の頭部101のみがミスト入浴器1の外側の空間に露出させられ、頭部101の除く身体102が、ミスト入浴器1の内部に納まることになる。
次に、入浴者100は、ミスト噴出部としての前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23、後側ミスト噴出部24および股下ミスト噴出部25からミスト噴霧が行なわれるように、シャワー設備5の切替操作部31aを操作する。
これにより、ミスト噴出部から噴出されるミストが入浴者100の頭部101の除く身体102に噴き付けられることになり、入浴者100は、ミスト入浴を行なうことができる。ここで、上述した温水を利用してのミスト入浴を所定時間にわたって行なうことにより、入浴者100は、通常の浴槽を用いての入浴と同等程度の温浴効果を得ることができる。
ミスト入浴を終了する際には、入浴者100は、シャワー設備5の切替操作部31aを操作することによって給水を停止させる。その後、前蓋50操作することで蓋体3を開状態にするとともに、カーテン4を操作することで出入り口13aを開放する。さらにその後、入浴者100は、必要に応じて手摺11aを利用しつつ座部18から立ち上がり、通路部17において身体102の向きを変え、その後出入り口13aを介して入浴器本体2の外側へと出る。以上により、ミスト入浴が完了することになる。
なお、上述したミスト入浴に前後してあるいはミスト入浴の最中に、前蓋50を操作することで蓋体3を開状態にするとともに、シャワーノズル33を手に持ってシャワー設備5の切替操作部31aを操作してシャワーノズル33からシャワーが吐出されるようにすることにより、頭部101を除く身体102の特定部位を局所的に洗浄することも可能であるし、さらには上半身を前傾させることで洗髪を行なうことも可能である。
このように、本実施の形態に係るミスト入浴器1を利用することにより、健常者は勿論、自立歩行が可能なものの通常の浴槽での入浴が困難な人であっても補助者の手を借りずに無理なく自ら入浴することが可能になる。
ここで、図1ないし図5および図7に示すように、本実施の形態に係るミスト入浴器1においては、前壁11の上面が、後壁12の上面よりも下方に位置しているとともに、座部18の左右に位置する部分の右側壁13および左側壁14の各々の上面が、後壁12の上面と略同一高さに位置している。また、通路部17の左右に位置する部分の右側壁13および左側壁14の各々の上面は、座部18の左右に位置する部分の右側壁13および左側壁14の各々の上面と前壁11の上面とをなだらかに繋ぐように、前方側に向かうにつれて低くなる傾斜面にて構成されている。
一方、蓋体3の閉状態において、前蓋50は、通路部17の左右に位置する部分の右側壁13および左側壁14の各々の上面によって支持されるように構成されている。これにより、使用状態においては、前蓋50も、図示するように前方側に向かうにつれて低くなる傾斜姿勢にて配置されることになり、窓部WPを介して頭部101をミスト入浴器1の外側の空間に露出させた入浴者100の視界の下側部分が、ミスト入浴器1によって遮られることが軽減できる。したがって、このように構成することにより、使用状態において入浴者100が圧迫感を感じてしまうことが緩和できることになる。
図8は、本実施の形態に係るミスト入浴器の蓋体およびカーテンの入浴器本体に対する着脱態様を示す分解斜視図である。次に、この図8を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の蓋体3およびカーテン4の入浴器本体2に対する着脱態様について詳説する。
図8に示すように、蓋体3およびカーテン4は、入浴器本体2に対して着脱自在に取付けられる。具体的には、蓋体3のうち、前蓋50は、入浴器本体2の前壁11の上部に対して後述するローレットネジ59b(図11参照)等を用いて着脱自在に取付けられ、後蓋60は、入浴器本体2の後壁12、右側壁13および左側壁14の上部に対して後述する磁石M2(図3、図10および図12参照)等を用いて着脱自在に取付けられる。一方、カーテン4は、上述したように入浴器本体2の前壁11および右側壁13の内側壁面に設けられたフック90を用いて着脱自在に取付けられる。
ここで、前蓋50は、入浴器本体2の前部上面を覆うことが可能となるように入浴器本体2に取付けられ、後蓋60は、入浴器本体2の後部上面を覆うように入浴器本体2に取付けられる。すなわち、前蓋50は、入浴器本体2に取付けられた状態において、通路部17の上方に位置する部分の開放部16を閉塞することが可能となるように構成されており、後蓋60は、入浴器本体2に取付けられた状態において、座部18の上方に位置する部分の開放部16を閉塞するように構成されている。
図9および図10は、本実施の形態に係るミスト入浴器の蓋体の構成を示す図である。ここで、図9(A)は、蓋体の平面図であり、図9(B)は、蓋体の右側面図であり、図9(C)は、図9(A)の要部の拡大図であり、図9(D)は、図9(B)の要部の拡大図である。また、図10(A)は、蓋体の底面図であり、図10(B)は、蓋体の右側面図であり、図10(C)は、図10(A)の要部の拡大図であり、図10(D)は、図10(B)の要部の拡大図である。次に、これら図9および図10を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の蓋体3の構成について詳説する。
図9および図10に示すように、蓋体3は、折り畳み可能に構成された前蓋50と、折り畳み不能に構成された後蓋60とを含んでいる。前蓋50は、展開した状態において平面視矩形状でかつ略板状の形状を有している。後蓋60は、平面視略U字状でかつ略板状の形状を有している。
前蓋50は、入浴器本体2の前壁11の上部に取付けられる被取付け部51と、被取付け部51から連続して延びるカバー部52とを有しており、カバー部52は、前側板状部52Aと後側板状部52Bとを含んでいる。さらに、前蓋50は、被取付け部51と前側板状部52Aとを連結する前側連結部53Aと、前側板状部52Aと後側連結部53Bとを連結する後側連結部53Bとを有している。
前側連結部53Aおよび後側連結部53Bは、被取付け部51、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bよりも薄肉に構成されたいわゆるインテグラルヒンジによって構成されており、被取付け部51、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bは、これら前側連結部53Aおよび後側連結部53Bを基点として相互に回動可能に構成されている。これにより、前蓋50は、上述のとおり折り畳み可能に構成されている。
図9(A)および10(A)に示すように、前側連結部53Aは、左右方向に沿って互いに離間するように合計で4つ設けられており、図10(C)に示すように、これら4つの前側連結部53Aの間には、合計で3つの隙間G1が位置している。図10(B)および図10(D)に示すように、4つの前側連結部53Aは、前蓋50を展開させた状態において側面視湾曲形状を有するように構成されており、いずれも前蓋50の上面側において被取付け部51と前側板状部52Aとを橋渡しするように位置している。
また、図10(A)、図10(C)および図10(D)に示すように、3つの隙間G1に対応した部分の被取付け部51の端面ならびに前側板状部52Aの端面の各々には、前蓋50を展開させた状態において互いに対向するように合計で3組の一対の突起P1が設けられている。これら3組の一対の突起P1は、前側連結部53Aにおける前蓋50の回動方向を規制するものである。
より詳細には、これら一対の突起P1が相互に突き当たることにより、平面視した場合に前側連結部53Aを境いに被取付け部51と前側板状部52Aとが谷折りとなるようにこれらが相対的に回動することが許容される反面、平面視した場合に前側連結部53Aを境いに被取付け部51と前側板状部52Aとが山折りとなるようにこれらが相対的に回動することが制限されている。これにより、上述した前側連結部53Aにおける前蓋50の回動方向の規制が可能になるとともに、被取付け部51と前側板状部52Aとの間において手指を詰めてしまうことが防止可能になる。
図9(A)および10(A)に示すように、後側連結部53Bは、左右方向に沿って互いに離間するように合計で4つ設けられており、図9(C)に示すように、これら4つの後側連結部53Bの間には、合計で3つの隙間G2が位置している。図9(B)および図9(D)に示すように、4つの後側連結部53Bは、前蓋50を展開させた状態において側面視湾曲形状を有するように構成されており、いずれも前蓋50の下面側において前側板状部52Aと後側板状部52Bとを橋渡しするように位置している。
また、図9(A)、図9(C)および図9(D)に示すように、3つの隙間G2に対応した部分の前側板状部52Aの端面ならびに後側板状部52Bの端面の各々には、前蓋50を展開させた状態において互いに対向するように合計で3組の一対の突起P2が設けられている。これら3組の一対の突起P2は、後側連結部53Bにおける前蓋50の回動方向を規制するものである。
より詳細には、これら一対の突起P2が相互に突き当たることにより、平面視した場合に後側連結部53Bを境いに前側板状部52Aと後側板状部52Bとが山折りとなるようにこれらが相対的に回動することが許容される反面、平面視した場合に後側連結部53Bを境いに前側板状部52Aと後側板状部52Bとが谷折りとなるようにこれらが相対的に回動することが制限されている。これにより、上述した後側連結部53Bにおける前蓋50の回動方向の規制が可能になるとともに、前側板状部52Aと後側板状部52Bとの間において手指を詰めてしまうことが防止可能になる。
図9および図10に示すように、被取付け部51の上面には、膨出形状の支持部54が設けられている。支持部54は、前蓋50が入浴器本体2に取付けられるとともに前蓋50が折り畳まれた状態において前側板状部52Aを受け止めるための部位であり、当該支持部54を設けることにより、前蓋50が回動されて折り畳まれた状態(すなわち、閉状態から開状態に蓋体3のカバー部52が回動された後の状態)においてカバー部52が起立した状態が維持できることになる(図12参照)。
また、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bの各々の左右の端部には、段差部55が設けられている。段差部55は、前蓋50が入浴器本体2に取付けられるとともに前蓋50が展開されて入浴器本体2の開放部16が閉塞された状態において、入浴器本体2の右側壁13および左側壁14の上部を受け入れるための部位であり、当該段差部55を設けることにより、使用状態において前蓋50が入浴器本体2に対して左右方向に向けて位置ずれすることが防止できることになる。
さらに、後側板状部52Bの後端部には、平面視湾曲状の切り欠き部56と、爪形状を有する一対の係合部57とが設けられている。切り欠き部56は、蓋体3が閉状態とされた場合に、上述した窓部WPを後蓋60との間で形成するための部位である。一方、係合部57は、蓋体3が入浴器本体2に取付けられるとともに前蓋50が展開されて入浴器本体2の開放部16が閉塞された状態において、後述する後蓋60に設けられた一対の被係合部67に係合することにより、使用状態において前蓋50が後蓋60に対して位置ずれすることを防止するための部位である。
加えて、被取付け部51の下面の所定位置には、一対の取付け用凹部58が設けられている。当該一対の取付け用凹部58は、それぞれ後述する取付け金具59が固定される部位である。
ここで、図10(A)に示すように、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bには、磁石M1が埋設されている。より詳細には、磁石M1は、前側板状部52Aの前端部寄りの左右の位置に合計で2個設けられているとともに、後側板状部52Bの後端部寄りの左右の位置に合計で2個設けられている。
これら磁石M1が設けられた位置は、カバー部52が折り畳まれた状態において互いに対向する位置であり(図12参照)、当該磁石M1の磁気吸引力により、カバー部52が折り畳まれた状態が保持されることになる。そのため、前蓋50が入浴器本体2に取付けられるとともに前蓋50が折り畳まれることでカバー部52が起立した状態(図12参照)において、カバー部52がコンパクトに折り畳まれた状態が維持できることになり、入浴者が入浴器本体2に出入りする際に当該カバー部52が邪魔になることが防止できる。
図9および図10に示すように、後蓋60の左右の端部および後端部には、段差部65が設けられている。段差部65は、後蓋60が入浴器本体2に取付けられた状態において、入浴器本体2の後壁12、右側壁13および左側壁14の上部を受け入れるための部位であり、当該段差部65を設けることにより、使用状態において後蓋60が入浴器本体2に対して左右方向および後方向に向けて位置ずれすることが防止できることになる。
また、後蓋60の前端部には、平面視湾曲状の切り欠き部66と、凹形状を有する一対の被係合部67とが設けられている。切り欠き部66は、蓋体3が閉状態とされた場合に、上述した窓部WPを前蓋50との間で形成するための部位である。一方、被係合部67は、蓋体3が入浴器本体2に取付けられるとともに前蓋50が展開されて入浴器本体2の開放部16が閉塞された状態において、前述の前蓋50に設けられた一対の係合部57に係合することにより、使用状態において前蓋50が後蓋60に対して位置ずれすることを防止するための部位である。
ここで、図10(A)に示すように、後蓋60には、磁石M2が埋設されている。また、図3に示すように、入浴器本体2にも、磁石M2が埋設されている。より詳細には、磁石M2は、後蓋60の後端部寄りの中央と前端部寄りの左右の位置に合計で3個設けられているとともに、入浴器本体2の後壁12の上面中央と右側壁13および左側壁14の上面中央やや後方の位置に合計で3個設けられている。
これら磁石M2が設けられた位置は、後蓋60が入浴器本体2に取付けられた状態において互いに対向する位置であり(図12参照)、当該磁石M2の磁気吸引力により、後蓋60が入浴器本体2に取付けられた状態が保持されることになる。そのため、当該磁石M2を設けることにより、使用状態において後蓋60が入浴器本体2に対して前方向に向けて位置ずれすることが防止できることになる。
図11は、本実施の形態に係るミスト入浴器の前蓋の入浴器本体への組付構造を示す分解斜視図である。次に、この図11を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の前蓋50の入浴器本体2への組付構造について詳説する。
図11に示すように、前蓋50の被取付け部51は、取付け金具59、ネジ59aおよびローレットネジ59bを用いて入浴器本体2の前壁11の上部に取付けられる。取付け金具59は、左右に一対配置され、その各々が2個のネジ59aによって前蓋50の被取付け部51に固定される。当該取付け金具59は、常時は前蓋50の被取付け部51に組付けられており、前蓋50の入浴器本体2に対する着脱に際しては、一対の取付け金具59に対応して設けられた一対のローレットネジ59bが回転操作されることによって行なわれる。
具体的には、取付け金具59は、細長の金属板を折り曲げることで側面視L字状の形状を有するように構成されている。取付け金具59に設けられた一対の平板部のうちの一方は、前蓋50の被取付け部51の下面に設けられた取付け用凹部58に挿入され、2個のネジ59aを用いて当該取付け用凹部58に固定される。これにより、前蓋50の被取付け部51には、一対の取付け金具59が常時組付けられた状態となり、一対の取付け金具59の各々の他方の平板部が、被取付け部51から下方に向けて突出して位置することになる。
前蓋50を入浴器本体2に取付けるに際しては、一対の取付け金具59の各々の上述した他方の平板部がそれぞれ入浴器本体2の前壁11の最上部に設けられた取付け用凹部11bに挿入され、この状態においてローレットネジ59bを捩じ込み方向に回転操作することによって行なわれる。また、前蓋50を入浴器本体2から取り外すに際しては、ローレットネジ59bを捩じ込み方向とは逆方向に回転操作することによって行なわれる。
このように構成することにより、工具等を用いることなく前蓋50を入浴器本体2に着脱できることになるため、前蓋50の着脱作業を容易化することができる。
図12は、本実施の形態に係るミスト入浴器の前蓋の回動動作を示す模式右側面図である。次に、この図12を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の前蓋50の回動動作について詳説する。なお、ここでは、蓋体3を開状態から閉状態に移行させる場合の前蓋50の回動動作について説明するが、蓋体3を閉状態から開状態に移行させる場合の前蓋50の回動動作は、その逆となる。
図12に示すように、蓋体3が開状態にある場合には、前蓋50は、折り畳まれた状態にあり、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bは、それらの下面同士が接触した状態にある。この状態においては、上述したように、前蓋50に埋設された磁石M1の磁気吸引力によって前側板状部52Aと後側板状部52Bとが重なった状態が保持され、また、前側板状部52Aが被取付け部51に設けられた支持部54によって支持された状態にあるため、カバー部52は、入浴器本体2の前壁11の上方において起立した状態で位置している(この状態を図中において実線で示している)。
当該状態から、座部18に着座した入浴者がカバー部52を手前に引く(すなわち、ミスト入浴器1の後方側に向けて後側板状部52Bを引っ張る)ことにより、磁石M1の磁気吸引力に抗して後側板状部52Bの後端部が前側板状部52Aの前端部から遠ざかる方向に向けて移動することになり、これによりカバー部52の折り畳まれた状態が解消されることになる。
このとき、前側板状部52Aおよび後側板状部52Bが、それぞれ前側連結部53Aおよび後側連結部53Bを基点に回動することにより、カバー部52が開く方向に前側板状部52Aおよび後側板状部52Bが移動することになり、前蓋50が展開を始める(前蓋50がある程度展開した状態を図中において破線で示している)。
さらに、座部18に着座した入浴者がカバー部52を手前に引くことにより、前蓋50の展開が完了することになり、これによってカバー部52によって通路部17の上方に位置する部分の開放部16が閉塞されることとなって蓋体3が閉状態に移行する(この状態を図中において二点鎖線で示している)。なお、その際、前蓋50に設けられた係合部57は、後蓋60に設けられた被係合部67に係合することになる。
図13は、本実施の形態に係るミスト入浴器の前側上段ミスト噴出部の入浴器本体への組付構造を示す分解斜視図である。次に、この図13を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の前側上段ミスト噴出部21の入浴器本体2への組付構造について詳説する。なお、ここではその説明は省略するが、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23および後側ミスト噴出部24についても、基本的に前側上段ミスト噴出部21の組付構造と同様の組付構造にて入浴器本体2へと組付けられる。
図13に示すように、前側上段ミスト噴出部21は、ベース部材27および3つのノズル28からなる噴霧ユニット26によって構成されており、当該噴霧ユニット26が組み立てられた状態で、これが内側シェル10Bの内側壁面19に組付けられることにより、前側上段ミスト噴出部21が筐体10の前壁11の内側壁面に設けられている。
より詳細には、ベース部材27は、組付け後において入浴器本体2の内側を向く凹面27aと、当該凹面27aの周囲に位置する枠状部とを備えた箱形状の部材からなる。凹面27aには、3つの貫通孔が設けられており、これら3つの貫通孔を挿通するようにそれぞれノズル28がベース部材27に固定されている。これにより、3つのノズルは、互いに左右方向において離間するようにベース部材27の凹面27aに配設されている。
ベース部材27の枠状部の外周端には、段差部27bが設けられている。当該段差部27bは、内側シェル10Bの内側壁面に設けられた開口部19aに対応した形状および大きさを有している。そのため、ベース部材27の段差部27bが開口部19aに挿入されるように、予め組立てられた噴霧ユニット26が内側シェル10Bの内側壁面に組付けられることにより、前側上段ミスト噴出部21が筐体10の前壁11の内側壁面に設けられることになる。
なお、ベース部材27と内側シェル10Bとの当接部には、シール処理が施される。当該シール処理は、シール剤の塗布やOリングの設置等で行なうことができる。
このような組付構造を採用することにより、ノズル28の噴出軸28a(図14および図15参照)を容易にかつ高精度に位置決めしつつ、内側シェル10Bの内側壁面にミスト噴出部を設けることが可能になる。
ここで、ベース部材27として、凹面27aの傾斜角が異なるものや、凹面27aに設けられる貫通孔の数および位置が異なるもの等を複数種類準備しておくこととすれば、共通のノズル28を利用しつつ、ノズル28の噴出軸28aの向きが異なる複数種類の噴霧ユニット26を容易に製作することができる。さらには、ノズル28として仕様の異なるものを準備しておけば、その組み合わせによってさらに様々な噴出ユニットを容易に製作することもできる。
一方で、前側上端ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23および後側ミスト噴出部24の各々を上述した噴霧ユニット26にて構成することなく、これに代えていわゆるインサート成形を利用することにより、ミスト噴出部21~24に含まれる複数のノズル28を内側シェル10Bの成形の際に当該内側シェルと一体化することも可能である。
このようにインサート成形を利用した場合には、上述したベース部材27を設ける必要がなくなるため、装置構成が簡素化するとともに部品点数の削減が可能になり、さらには噴霧ユニット26を内側シェル10Bに組付ける必要がなくなるとともにこれに加えて上述したシール処理も不要になるため、組付作業を大幅に簡素化することができる。したがって、このように構成した場合には、製造コストを飛躍的に削減することが可能になる。
図14および図15は、それぞれ本実施の形態に係るミスト入浴器のミスト噴出部によるミストの噴霧エリアを示す模式断面図および模式平面図である。次に、これら図14および図15を参照して、本形態に係るミスト入浴器1のミスト噴出部21~25によるミストの噴霧エリアについて詳説する。なお、図14および図15において一点鎖線で示す噴霧エリアは、いずれも噴霧されるミストの方向性を模式的に示したものに過ぎず、実際にミストが到達する領域は、図示する噴霧エリアに限られるものではない。
図14に示すように、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23および後側ミスト噴出部24に含まれるノズル28の噴出軸28aは、いずれもミストの噴霧方向に沿って当該ノズル28から遠ざかるにつれて下方に向かうように傾斜して配置されている。
すなわち、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22、前側下段ミスト噴出部23および後側ミスト噴出部24に含まれる各ノズル28の設置角度が調節されることにより、前側上段ミスト噴出部21に含まれる3つのノズル28の噴出軸28aの各々と水平面HPとが成す角度のうち、小さい方の角度である角度a1が、俯角となるように構成され、前側中段ミスト噴出部22に含まれる2つのノズル28の噴出軸28aの各々と水平面HPとが成す角度のうち、小さい方の角度である角度a2が、俯角となるように構成され、前側下段ミスト噴出部23に含まれる2つのノズル28の噴出軸28aの各々と水平面HPとが成す角度のうち、小さい方の角度である角度a3が、俯角となるように構成され、後側ミスト噴出部24に含まれる3つのノズル28の噴出軸28aの各々と水平面HPとが成す角度のうち、小さい方の角度である角度a4が、俯角となるように構成されている。
このように構成することにより、万が一、入浴者がミストの噴霧中において前蓋50を折り畳んで蓋体3を開状態に移行させてしまった場合にも、入浴器本体2の外部にミストが漏れ出してしまうことが大幅に抑制できることになる。
ここで、図示するように、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22および前側下段ミスト噴出部23の各々の噴霧エリア同士が通路部17中において互いに重なるように設定することにより、入浴者の身体の前側部分へ万遍なくミストの噴き付けが行なえることになるため、入浴者の快適性が向上することになる。
また、図示するように、後側ミスト噴出部24の噴霧エリアが適切に下方を向くように設定することにより、入浴者の身体の後側部分へ万遍なくミストの噴き付けが行なえることになるため、入浴者の快適性が向上することになる。
さらに、前側上段ミスト噴出部21に含まれる3つのノズル28の噴出軸28aの俯角(すなわち角度a1)は、後側ミスト噴出部24に含まれる3つのノズル28の噴出軸28aの俯角(すなわち角度a4)よりも小さいことが好ましい。これは、前側上段ミスト噴出部21が、後側ミスト噴出部24よりも座部18に着座した入浴者から離れて位置しているとともに、前側上段ミスト噴出部21が、後側ミスト噴出部24よりも下方に位置しているためであり、このように構成することにより、入浴者の身体の前側部分の上部(すなわち頸部、胸部および肩等)にまで、より確実にミストを噴き付けることが可能になるためである。
一方、股下ミスト噴出部25に含まれるノズル28の噴出軸28aは、ミストの噴霧方向に沿って当該ノズル28から遠ざかるにつれて上方に向かうように傾斜して配置されている。
すなわち、股下ミスト噴出部25に含まれる1つのノズル28の設置角度が調節されることにより、当該ノズル28の噴出軸28aと水平面HPとが成す角度のうち、小さい方の角度である角度a5が、仰角となるように構成されている。
このように構成することにより、座部18の凹部18aに設けられた股下ミスト噴出部25から入浴者の腹部および下腹部に向けてミストを噴き付けることが可能になる。
なお、ミスト噴出部から噴出されるミスト粒子の大きさは、特に制限されるものではないが、50μm以上5000μm以下であることが好ましい。
図15に示すように、前側上段ミスト噴出部21、前側中段ミスト噴出部22および前側下段ミスト噴出部23の各々の噴霧エリアを上方から見た場合(図15においては、前側上段ミスト噴出部21の噴霧エリアのみを図示している)には、これらミスト噴出部21~23の各々に含まれる複数のノズル28の噴霧エリア同士が通路部17中において互いに重なるように設定されている。このように構成することにより、入浴者の身体の前側部分へ万遍なくミストの噴き付けが行なえることになるため、入浴者の快適性が向上することになる。
また、後側ミスト噴出部24の噴霧エリアを上方から見た場合には、当該後側ミスト噴出部24に含まれる3つのノズル28の噴霧エリア同士が座部18上において互いに重なるように設定されている。このように構成することにより、入浴者の身体の後側部分へ万遍なくミストの噴き付けが行なえることになるため、入浴者の快適性が向上することになる。
図16は、本実施の形態に係るミスト入浴器の筐体の構成を示す分解斜視図である。次に、この図16を参照して、本実施の形態に係るミスト入浴器1の筐体10の構成について詳説する。
上述したように、入浴器本体2の外殻を構成する筐体10は、入浴器本体2の外側壁面を形成する外側シェル10Aと、入浴器本体2の内側壁面を形成する内側シェル10Bとを含んでいる(図1ないし図5等参照)。
図16に示すように、このうちの外側シェル10Aは、右外側シェル10A1および左外側シェル10A2からなる半割り形状の2つの分割体にて構成されており、これら右外側シェル10A1および左外側シェル10A2によって内側シェル10Bが挟み込まれるように構成されている。すなわち、右外側シェル10A1は、入浴器本体2の前壁11の右半分の外側壁面、後壁12の右半分の外側壁面、右側壁13の外側壁面を含むように構成されており、左外側シェル10A2は、入浴器本体2の前壁11の左半分の外側壁面、後壁12の左半分の外側壁面、左側壁14の外側壁面を含むように構成されている。
ここで、上述したように、床15および座部18を形成する部分の内側シェル10Bの下方の位置には、外側シェル10Aは位置しておらず、そのため、右外側シェル10A1および左外側シェル10A2の下端は、いずれも開放されている。そのため、入浴器本体2が設置される居室や浴室等のフロアの設置面に対して内側シェル10Bが自立して設置された状態のまま、外側シェル10Aのみを当該内側シェル10Bから取り外したり当該内側シェル10Bに取付けたりすることができる。
このように構成することにより、メンテナンス時の分解および組立てが非常に容易に行なえることになり、その作業性が大幅に向上することになる。すなわち、上記構成を採用せずに、外側シェル10Aに底を設けて入浴器本体2の被設置面を当該底にて構成した場合には、重量物である入浴器本体2をメンテナンス時等において持ち上げる必要が生じてしまい、作業性が大幅に悪化してしまうが、上記のとおりに構成することにより、このような問題の発生を未然に防止することができる。
以上において説明した本実施の形態に係るミスト入浴器1においては、上述したように座部18の前方に通路部17が設けられるとともに、当該通路部17に面するように入浴器本体2の右側部前方に出入り口13aが設けられた構成であるため、座部18に着座した入浴者の前方の位置にミスト噴出部が設けられてなる前壁11を配置することができる。そのため、ミスト入浴の際に入浴者の身体の前側部分へ万遍なくミストの噴き付けが行なえることになるため、入浴者の快適性の向上を図ることができる。
また、本実施の形態に係るミスト入浴器1においては、入浴器本体2の上面に設けられた開放部16が蓋体3にて覆われるように構成するとともに、入浴器本体2の右側壁13に設けられた出入り口13aがカーテン4にて覆われるように構成しているため、シャッタ等の開閉機構を用いる場合に比べ、装置をより安価に構成できるばかりでなく、ミスト入浴器1自体の清掃の際の利便性も向上することになる。そのため、メンテナンス性が向上するばかりでなく、衛生面においてもカビの発生等が大幅に抑制できることになる。
このように、本実施の形態に係るミスト入浴器1とすることにより、健常者は勿論、自立歩行が可能なものの通常の浴槽での入浴が困難な人であっても補助者の手を借りずに無理なく自ら入浴することが可能な使い勝手のよいミスト入浴器とすることができる。
なお、本実施の形態に係るミスト入浴器1においては、ミスト噴出部に含まれるノズルの開口径が適切に絞られることにより、水道水圧にてミスト噴霧が実現できるように構成されている。そのため、別途ポンプや貯湯タンク等を給水側配管系に設ける必要がないため、この点においても装置の小型化や軽量化、低コスト化が実現可能である。したがって、上述したように、本実施の形態に係るミスト入浴器1は、従来公知のミスト入浴器とは異なり、介護施設や医療機関に限られず、家庭等の居室や浴室等においても設置が可能なものとなる。
ここで、上述した実施の形態においては、出入り口を覆う覆いとしてカーテンを用いた場合を例示して説明を行なったが、当該覆いとしては、これに代えて扉や蛇腹板等を利用することも可能である。
また、上述した実施の形態においては、シャワー設備を入浴器本体に設けた場合を例示して説明を行なったが、当該シャワー設備はあくまでも付加的なものであり、これを設ける必要性は必ずしもない。
また、上述した実施の形態においては、ミスト噴出部を入浴器本体の前壁、後壁および座部に設けた場合を例示して説明を行なったが、このうちの座部にミスト噴出部を設ける必要性は必ずしもなく、前壁および後壁のみにミスト噴出部を設けてもよい。また、入浴器本体の前壁および後壁に加えて、右側壁および/または左側壁にミスト噴出部を設けることとしてもよい。さらには、ノズルの設置数や設置位置、設置角度等も種々変更することが当然に可能である。
さらには、上述した実施の形態においては、外側シェルを左右の半割り形状とした場合を例示して説明を行なったが、前後の半割り形状としてもよく、また、3つ以上に外側シェルを分割することとしてもよい。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。