JP7048697B1 - 多孔質炭素材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定の比表面積の多孔質炭素材料を得ることができる多孔質炭素材料の製造方法を提供する。【解決手段】カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液、またはアルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液と、亜鉛イオンを含む化合物を有機溶媒に溶解してなる亜鉛イオン溶液と、の合成反応により、前駆体を調製し、その後、当該前駆体を焼成して多孔質にする多孔質炭素材料の製造方法であって、EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率が所望の数値となるように、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を選択して合成するとともに、当該前駆体を焼成する際、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛のピークの半値幅が所望の数値となるように焼成する多孔質炭素材料の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、所望の比表面積値を得ることができる多孔質炭素材料の製造方法に関するものである。
一般に、電気二重層キャパシタの分極性電極として、表面積が大きく導電性に優れている点から活性炭等の多孔質材料が用いられている。しかし、活性炭は、細孔が複雑に入り組んだ構造であるため、当該活性炭に吸着される電解質イオンの量が少なくなり、容量が有効に発現しなくなる。また、高出力領域において電解質イオンのスムーズな出し入れが困難になるため、高出力領域における容量が不足する。
そこで、従来より、このような活性炭に変わるものとして、本発明者等は、三次元網目構造に構成された金属錯体を合成した後、それを焼成することによって、電解質イオンの吸脱着を容易に行うことをできるようにした多孔性金属錯体の焼成体を提案している(例えば、特許文献1参照)。
特開2017-135196号公報
しかし、上記従来の多孔性金属錯体の焼成体の場合、活性炭に替わる電極材料として有効な性能を発揮するものの、本来の性能を発揮させるために幾つかの工夫をすることで、さらに高性能となることの知見を得て、本発明者等は新たな発明を完成するに至った。
本発明は、所定の比表面積の多孔質炭素材料を得ることができる多孔質炭素材料の製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するための本発明に係る多孔質炭素材料の製造方法は、カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液、またはアルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液と、亜鉛イオンを含む化合物を有機溶媒に溶解してなる亜鉛イオン溶液と、の合成反応により、前駆体を調製し、その後、当該前駆体を焼成して多孔質にする多孔質炭素材料の製造方法であって、EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を、0.04<Zn/C<0.2となるように、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を選択して前駆体を合成するとともに、
当該前駆体を焼成する際、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛の回折ピーク(2θ)の31.7°、34.3°、36.2°(何れのピークも誤差±0.3)の全ての焼成後の半値幅が0.2以下となるまで焼成するものである。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を、0.1<Zn/C<0.2とするものであってもよい。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物としてテレフタル酸を用い、亜鉛イオンを含む化合物として酢酸亜鉛を用い、有機溶媒としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いた有機リガンド液および亜鉛イオン溶液により前駆体を調製するものであってもよい。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物としては、単数または複数のベンゼン環に、単数または複数のカルボキシル基が設けられたものを使用することができる。単数のベンゼン環に、単数または複数のカルボキシル基が設けられた芳香族炭化水素化合物としては、例えば、安息香酸、または、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、または、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、または、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸等を使用することができる。前駆体の合成や、合成された前駆体の元素比率を考慮すると、ベンゼンジカルボン酸を使用することが好ましく、テレフタル酸を使用することがより好ましい。複数のベンゼン環に、単数または複数のカルボキシル基が設けられた芳香族炭化水素化合物としては、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ビスフェニルジカルボン酸、4,4-スチルベンジカルボン酸を使用することができる。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、アルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物としては、単数または複数のベンゼン環に、単数または複数のアルデヒド基が設けられたものを使用することができる。単数のベンゼン環に、単数または複数のアルデヒド基が設けられた芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンズアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、1,3,5-ベンゼントリカルボアルデヒド、1,2,4-ベンゼントリカルボアルデヒドを使用することができる。複数のベンゼン環に、単数または複数のアルデヒド基が設けられた芳香族炭化水素化合物としては、例えば、2,6-ナフタレンジカルボアルデヒドを使用することができる。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物またはアルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物を溶解する有機溶媒としては、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、メタノール、エタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド:C2H6SO)、DMF(ジメチルホルムアミド:C3H7NO)、DMA(ジメチルアセトアミド:C4H9NO)、DEF(N,N-ジエチルホルムアミド)などを用いることができる。これらは、単独溶媒であってもよいし、複数種類を混合した混合溶媒であってもよい。この有機溶媒5~500mlに、上記したカルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物またはアルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物0.05~0.5gを溶解することで、有機リガンド液が調製される。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、亜鉛イオンを含む化合物としては、上記有機リガンド液のカルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物、または、アルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物、と配位結合して合成可能な化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、硝酸亜鉛六水和物などを使用することができる。
上記多孔質炭素材料の製造方法において、亜鉛イオンを含む化合物を溶解する溶媒としては、上記有機リガンド液に使用されているものと同じものが使用される。この有機溶媒10~200mlに、上記した亜鉛イオンを含む化合物0.1~0.8gを溶解することで、亜鉛イオン溶液が調製される。
上記有機リガンド液と上記亜鉛イオン溶液との合成反応により、前駆体が調製される。この際、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を構成する各材料の構造から、得られる前駆体のEDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率が所望の数値となるように、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を選択して合成する。これにより、前駆体に含まれる亜鉛元素/炭素元素の比率を制御する。この数値が高い程、すなわち、前駆体の炭素元素に対して亜鉛元素を多く含む程、後の焼成工程で焼成体中の酸化亜鉛の結晶性が高くなり、当該酸化亜鉛が消失する際に炭素元素を多く消耗することとなり、その跡に空隙が多く形成されて多孔質になる。すなわち、比表面積が大きくなる。
この際、亜鉛元素/炭素元素の比率は、Zn/C≦0.04だと酸化亜鉛の結晶性が低くなり過ぎてしまうので後に焼成しても比表面積の大きい多孔質炭素材料を得られなくなってしまう。また、Zn/C≧0.2だと焼成時に生じる酸化亜鉛の結晶性が高すぎて、周囲の炭素に還元され難くなるため、焼成温度をより高温にする必要がある、または、焼成に時間をかける必要があるといったことになってしまう。したがって、亜鉛元素/炭素元素の比率は、0.04<Zn/C<0.2の範囲が好ましい。
上記前駆体は、焼成することによって焼成体、すなわち、多孔質炭素材料とされる。この際、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛のピークの半値幅が所望の数値となるように焼成する。すなわち、前駆体中の亜鉛元素/炭素元素の比率が大きいと、焼成した際にX線回折によって測定される焼成体中の酸化亜鉛のピークは結晶性が高い先鋭でナローなピークとなり、ピークの半値幅は小さくなる。しかし、前駆体中の亜鉛元素/炭素元素の比率が小さいと、焼成した際にX線回折によって測定される焼成体中の酸化亜鉛のピークは結晶性が低く先鋭では無いなだらかな丘のようなワイドなピークとなり、ピークの半値幅は大きくなる。したがって、この時点で、前駆体の亜鉛元素/炭素元素の比率が大きい方が、当該前駆体を焼成した際の焼成体の結晶性が高く酸化亜鉛が多く含まれていることとなるが、このピークの半値幅が所定の数値となるように、前駆体に含まれる亜鉛元素/炭素元素の比率を調整して焼成すれば、酸化亜鉛が消失する際に消耗される炭素元素の量を制御して消失跡に形成される空隙によって増加する比表面積を制御することができ、所望の比表面積の焼成体すなわち多孔質炭素材料を得ることができる。
ZnO+C→Zn(気)+CO
Zn(固)→Zn(気)(昇華)
上記焼成時、前駆体は、焼成初期の段階で酸化亜鉛が生成されるが、焼成が進むにしたがって、生成された酸化亜鉛の結晶性が高くなり、同時に、この酸化亜鉛が周囲の炭素によって還元され、その炭素や、亜鉛および酸化亜鉛が抜けた跡に空隙が形成されて比表面積が増加することとなる(上記式)。この際、亜鉛元素/炭素元素の比率が高いと、焼成途中で生じる酸化亜鉛の結晶性が高くなり、それを還元する炭素の消費も、焼成の高温域まで、または長時間の焼成まで、続くこととなる。つまり、前駆体の亜鉛元素/炭素元素の比率が高いと、焼成時に生じる酸化亜鉛の結晶性が高くなり、当該焼成体の比表面積も高くなる傾向にある。ただし、前駆体によっては、酸化亜鉛を生成する温度域が異なり、その酸化亜鉛を還元する温度域も異なる。例えば、後述する図4に示すように、前駆体1は、700℃付近から高温域において、X線回折による酸化亜鉛のピークの半値幅が小さくなり、結晶性が高くなるが、前駆体2は、500℃付近から既にX線回折による酸化亜鉛のピークの半値幅が小さくなり、結晶性が高くなっている。しかし、何れの温度域においても、前駆体1よりも亜鉛元素/炭素元素の比率が高い前駆体2は、X線回折による酸化亜鉛のピークの半値幅が小さく、すなわち、酸化亜鉛の結晶性が高くなり、後述する図5および図6に示すように、比表面積も大きくなることが確認できている。このように、酸化亜鉛が生成され易くなる温度域の違いは出てくるが、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛のピークの半値幅が所望の数値となるように、前駆体のEDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を調整することで、酸化亜鉛が消失する際に消耗される炭素元素の量を制御して消失跡に形成される空隙によって増加する比表面積を制御することができ、所望の比表面積の焼成体すなわち多孔質炭素材料を得ることができる。
したがって、例えば、単純に高比表面積の多孔質炭素材料を得る場合、前駆体のEDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を高くし、その後、焼成時のX線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛のピークの半値幅が小さくなる、具体的には0.2以下、または、完全に測定されなくなるまで焼成すればよい。
焼成は、不活性ガス雰囲気(窒素ガスもしくはアルゴンガス雰囲気)にて行うものであってもよい。この際、不活性ガス雰囲気は、0.1~1.0リットル/分のガス流量で焼成雰囲気を置換しながら行うものであってもよい。また、焼成時に所定の温度から5~10℃/分程度の昇温速度で昇温して所定温度にして焼成を行うものであってもよい。さらに、焼成は、減圧雰囲気下で行うものであってもよい。焼成する炉は、炉心管タイプ、ボックス炉、ロータリーキルン炉など用いることができる。
このようにして行われる多孔質炭素材料の製造方法によると、前駆体の段階では、EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を所望の数値にすることで、その後、焼成する際の焼成体中の酸化亜鉛の結晶性を制御することができ、焼成時には、酸化亜鉛のピークの半値幅を管理することで、酸化亜鉛の還元時に消耗される炭素元素の量を制御して消失跡に形成される空隙によって増加する比表面積を制御することができることとなる。
以上述べたように、本発明によると、EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率が、0.04<Zn/C<0.2となるように、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を選択して前駆体を合成することで、当該前駆体の焼成体中の酸化亜鉛の結晶性を制御することができ、かつ、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛の回折ピーク(2θ)の31.7°、34.3°、36.2°(何れのピークも誤差±0.3)の全ての焼成後の半値幅が0.2以下となるまで焼成することで、酸化亜鉛が消失する際に消耗される炭素元素の量を制御して消失跡に形成される空隙によって増加する比表面積を制御することができ、所望の比表面積の焼成体すなわち多孔質炭素材料を得ることができる。
(a)は本発明に係る多孔質炭素材料の製造方法に使用する前駆体1の炭素、酸素、亜鉛のEDS分析による元素分布を示す電子顕微鏡写真、(b)は同前駆体2の炭素、酸素、亜鉛のEDS分析による元素分布を示す電子顕微鏡写真である。 本発明に係る多孔質炭素材料の製造方法において、前駆体1および前駆体2を、各温度で焼成した際の酸化亜鉛の粉末X線回折の回折データを示すグラフである。 本発明に係る多孔質炭素材料の製造方法において、前駆体2を1000℃で焼成した際の酸化亜鉛の粉末X線回折の回折データを示すグラフである。 (a)ないし(c)は、図2における前駆体を各温度で焼成した際の酸化亜鉛の各ピークの半値幅の変化を示すグラフである。 (a)は前駆体1を各温度で1時間焼成して得られる多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線を示すグラフ、(b)は同前駆体1を各温度で5時間焼成して得られる多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線を示すグラフである。 (a)は前駆体2を各温度で1時間焼成して得られる多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線を示すグラフ、(b)は同前駆体2を各温度で5時間焼成して得られる多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
[実施例1-6]
(前駆体1の調製)
酢酸亜鉛・二水和物0.2gに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を50ml加えて溶解させたものを亜鉛イオン溶液として調製した。
4,4-スチルベンジカルボン酸1gに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を500ml加えて溶解させたものを有機リガンド液として調製した。
上記亜鉛イオン溶液と、上記有機リガンド液とを混合し、合成反応により前駆体1を得た。
(前駆体2の調製)
酢酸亜鉛・二水和物0.18gに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を30ml加えて溶解させたものを亜鉛イオン溶液として調製した。
テレフタル酸0.5gに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を40ml加えて溶解させたものを有機リガンド液として調製した。
上記亜鉛イオン溶液と、上記有機リガンド液とを混合し、合成反応により前駆体2を得た。
(前駆体のZn/Cの元素比率)
上記で得られた前駆体1、前駆体2は、下記装置によりEDS分析を行い、それぞれのZn/Cの元素比率を求めた。結果を図1および表1に示す。
測定機種:JEM-2100F(日本電子株式会社製)
測定条件:加速電圧200kV
Figure 0007048697000002
(前駆体の焼成)
上記の方法で調製した前駆体1、前駆体2のそれぞれを焼成して多孔質炭素材料を得た。
この際、前駆体1、前駆体2は、焼成中に昇温しながらX線回折を行い、各温度における酸化亜鉛のピークの半値幅の経時的変化を求めた。また、1000℃に昇温後、そこから60分間、炉内温度を維持した。結果を図2、図3、図4に示す。
測定機種:X線回折装置SmartLab SE(株式会社リガク社製)
測定条件:測定角度の範囲は2θ=30°~38°
スキャンスピード10°/min
測定温度:炉内温度50℃から50℃ごとに1000℃まで(50℃、100℃、150℃…、1000℃)、回折パータンを記録する
昇温条件:10℃/min
ガス雰囲気:窒素200mL/min
以上の結果から、前駆体1を焼成して得られる多孔質炭素材料よりも、前駆体2を焼成して得られる多孔質炭素材料の方が、何れの温度域で焼成したものを比較しても酸化亜鉛の結晶性が高い、すなわち、酸化亜鉛のピークの半値幅が小さいことが確認できた。
また、温度が高くなる程、酸化亜鉛の結晶性が高くなる、すなわち、酸化亜鉛のピークの半値幅が小さくなることが確認できた。ただし、亜鉛の沸点である907℃より手前の850℃付近からは、方位によっては、還元される酸化亜鉛の影響で数値が乱れた。また、沸点である907℃を超えて1000℃に到達してからは、30分経過すると完全に亜鉛が昇華して測定されなくなった。
したがって、前駆体を焼成して得られる多孔質炭素材料は、亜鉛の沸点である907℃より手前の850℃付近までは、どの温度域においても、EDS分析による前駆体の亜鉛元素/炭素元素の比率が高くなると、多孔質炭素材料中の酸化亜鉛の結晶性も高くなることが確認できた。
(窒素吸脱着測定(比表面積/細孔分布測定))
上記で得られた前駆体1および前駆体2を用意し、結晶性の異なる3つの温度で焼成して多孔質炭素材料を得た。焼成温度は、700℃、850℃、1000℃とし、焼成時間は、1時間と5時間とした。このようにして得られた各多孔質炭素材料は、それぞれを200℃で24時間減圧乾燥させ、室温雰囲気中で前駆体および多孔質炭素材料に吸着した水分を脱着させた後、当該前駆体および多孔質炭素材料のそれぞれの粉末0.02gをサンプル管に入れ、液体窒素雰囲気下で比表面積/細孔分布測定装置(BELLSORP-miniII:マイクロトラックベル株式会社製)によって窒素吸脱着等温線を測定した。また、同装置の解析プログラム(I型(ISO9277)BET自動解析)により比表面積を算出した。結果を表2および図5、図6に示す。
Figure 0007048697000003
以上の結果から、前駆体1を焼成して得られる多孔質炭素材料よりも、前駆体2を焼成して得られる多孔質炭素材料の方が、何れの温度域で焼成したものを比較しても比表面積が大きくなることが確認できた。
また、前駆体2を焼成した多孔質炭素材料は、前駆体1を焼成した多孔質炭素材料よりも、多孔質炭素材料中の酸化亜鉛の結晶性が高いことから、多孔質炭素材料は、酸化亜鉛の結晶性の高さと比表面積とが比例関係にあることが確認でき、酸化亜鉛が不安定になる850℃や、亜鉛が昇華して酸化亜鉛が消失する1000℃においても、同じ傾向にあることが確認できた。
したがって、多孔質炭素材料中の酸化亜鉛の結晶性が所望の数値となるように前駆体を焼成することで、所望の比表面積の多孔質炭素材料を得ることができることが確認できた。
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。

Claims (3)

  1. カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液、またはアルデヒド基を有する芳香族炭化水素化合物を有機溶媒に溶解してなる有機リガンド液と、
    亜鉛イオンを含む化合物を有機溶媒に溶解してなる亜鉛イオン溶液と、
    の合成反応により、前駆体を調製し、
    その後、当該前駆体を焼成して多孔質にする多孔質炭素材料の製造方法であって、
    EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率が、0.04<Zn/C<0.2となるように、有機リガンド液および亜鉛イオン溶液を選択して前駆体を合成するとともに、
    当該前駆体を焼成する際、X線回折によって測定される焼成体の酸化亜鉛の回折ピーク(2θ)の31.7°、34.3°、36.2°(何れのピークも誤差±0.3)の全ての焼成後の半値幅が0.2以下となるまで焼成することを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
  2. EDS分析による亜鉛元素/炭素元素の比率を0.1<Zn/C<0.2とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  3. カルボキシル基を有する芳香族炭化水素化合物としてテレフタル酸を用い、亜鉛イオンを含む化合物として酢酸亜鉛を用い、有機溶媒としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いた有機リガンド液および亜鉛イオン溶液により前駆体を調製する請求項2に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
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