JP7048242B2 - 制振材用樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の制振材用樹脂組成物は、複層構造のエマルション粒子を含むものであり、更に、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分を含む。以下では、まずスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分について説明し、次いで、複層構造のエマルション粒子について説明する。
本発明の制振材用樹脂組成物がスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分(以下、「スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分」を単に「該成分」とも言う。)を含むとは、(1)乳化重合時の乳化剤として該成分を用いることで、該組成物が該成分を含むものであってもよく、(2)乳化重合時の乳化剤として該成分の一部を用い、得られたエマルションに該成分の残部を添加することで、該組成物が該成分を含むものであってもよく、(3)乳化重合以外の方法で重合された重合体に該成分が乳化剤として作用してエマルションを形成することで、該組成物が該成分を含むものであってもよく、(4)他の乳化剤を用いた乳化重合によって形成されたエマルションに添加された該成分を該組成物が含むものであってもよい。中でも、本発明の効果をより充分に発揮する観点からは、上記(1)~(3)のように、該成分が乳化剤であることが好ましい。該成分が乳化剤であるとは、具体的には、該成分が、エマルション粒子の表面を覆い、該成分が有する親水性基(例えば酸(塩)基)が水系溶媒等の溶媒側(エマルション粒子の反対側)を向いており、該成分が有する疎水性基(例えば酸(塩)基以外の部分)がエマルション粒子側を向いていることを言う。該成分がエマルション粒子の表面を覆うとは、完全に覆っていなくてもよく、例えば、所々においてエマルション粒子が露出していてもよい。
本発明の制振材用樹脂組成物を用いて外観に優れる塗膜を得ることができる理由は、以下の理由が考えられる。先ず、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分が、加熱乾燥(焼き付け)による高温時に固化(ゲル化)作用を発現し、塗膜形成における熱ダレ抑制に効果があるためである。また、本発明の制振材用樹脂組成物は、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分を含むことでフクレが抑制された塗膜を得ることが出来る。これは、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分や脂肪酸(塩)骨格を有する成分が乳化作用とともに熱気泡性を有しており、乾燥初期より沸騰等による細かい気泡現象があり、加熱継続下でも水抜け性が維持されることから、フクレが抑制された塗膜が得られると推定される。
またスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分や脂肪酸(塩)骨格を有する成分は、入手が容易で安価であるため、本発明の制振材用樹脂組成物を調製するのに有利となる。
上記スルホコハク酸(塩)骨格とは、-CO-C-C-COOR(Rは、水素原子、アルキル基、金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩を表す。)で表される骨格中の-C-C-部分の炭素原子の少なくとも1つにスルホン酸(塩)基が結合した骨格を言う。
上記Rにおけるアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数2~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数5~10のアルキル基であることが更に好ましく、例えば2-エチルヘキシル基が特に好ましい。上記Rにおける金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子等が挙げられる。また、上記Rにおける有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩等が挙げられる。
上記Rは、水素原子、アルキル基、又は、金属原子であることが好ましく、アルキル基、又は、金属原子であることがより好ましく、金属原子であることが更に好ましい。金属原子としては、上記1価の金属原子が好ましく、ナトリウムがより好ましい。
上記金属塩を形成する金属原子、上記有機アミン塩としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
また該アルキル基は、第一級アルキル基又は第二級アルキル基であることが好ましい。
制振性及び機械安定性をバランス良く改善する観点からは、上記-A-は、-NH-を表すことが好ましい。
上記(R2O)n部位は、エチレン基だけから構成されることがより好ましい。
また上記-A-は、-NH-を表し、上記平均付加モル数nは、0であることもまた本発明の制振材用樹脂組成物における好ましい形態の1つである。
上記R3は、水素原子、アルキル基、金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩を表す。該R3は、アルキル基、又は、金属塩であることが好ましく、金属塩であることがより好ましい。該金属塩を構成する金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子が挙げられ、中でもナトリウムが特に好ましい。なお、上記R3におけるアルキル基、有機アミン塩は、上述したものと同様である。
上記脂肪酸(塩)骨格を有する成分とは、炭化水素にカルボン酸(塩)基が結合した骨格を有する化合物を言う。脂肪酸骨格を有する成分としては、飽和脂肪酸;一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、脂肪酸塩骨格を有する成分としては、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。該金属塩を形成する金属原子、該有機アミン塩としては、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分において上述したものと同様のものが挙げられる。なお、上記カルボン酸(塩)基は、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を意味する。
上記その他の1価の置換基としては、例えば、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシスルホニル基、スルホアルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド鎖含有基等が挙げられる。
R4COOM (3)
(式中、R4は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。Mは、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表されるものであることが好ましい。
上記R4における炭化水素基は、炭素鎖に単結合のみを有するものであってもよく、炭素鎖に二重結合、三重結合等の不飽和結合を有するものであってもよい。
上記R4における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記R4における炭化水素基は、カルボン酸基、カルボン酸塩基、上述したその他の1価の置換基等を置換基として有していてもよいが、置換基を有さないことが好ましい。
上記Mは、金属原子であることが好ましい。該金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、カリウムが更に好ましく、脂肪酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、ナトリウムが特に好ましい。
上記脂肪酸(塩)骨格を有する化合物の市販品としては、例えば、NSソープ、OSソープ(いずれも花王社製)等が挙げられる。
なお、本発明の制振材用樹脂組成物がスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分のいずれか一方のみを含む場合、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び該脂肪酸(塩)骨格を有する成分の合計含有量は、当該いずれかの一方の成分の含有量である。以下においても同様である。
また本発明の制振材用樹脂組成物は、本発明の効果をより優れたものとする観点から、少なくともスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分を含むことが特に好ましい。
上記組成物中のアニオン性界面活性剤とは、その使用目的に関わらず、該組成物中に含まれる、アニオン性界面活性剤として機能し得る剤のすべてを意味する。すなわち、上記組成物中のアニオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤として機能し得るものである限り、その他の機能を併せ持つものであってもよい。上記使用目的としては、例えば乳化剤(乳化重合用乳化剤等)、分散剤、湿潤浸透剤、発泡剤等としての使用目的が挙げられる。
なお、アニオン性界面活性剤を乳化重合用乳化剤として用いる場合、該アニオン性界面活性剤は、通常の乳化剤(エマルションを形成する重合体とは別の化合物)であってもよく、エマルションを形成する重合体の一部を構成する構成単位であり、かつ乳化剤であってもよい。
更に、本発明の制振材用樹脂組成物中のスルホコハク酸(塩)骨格を有する化合物及び脂肪酸(塩)骨格を有する化合物の好ましい合計含有量が、上述したスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び脂肪酸(塩)骨格を有する成分の合計含有量の範囲内であることもまた、本発明の制振材用樹脂組成物における好ましい形態の1つである。なお、この好ましい形態において、本発明の制振材用樹脂組成物中に、スルホコハク酸(塩)骨格を有する化合物及び脂肪酸(塩)骨格を有する化合物とは別に、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分や脂肪酸(塩)骨格を有する成分がエマルションを形成する重合体の構成単位として含まれていても構わない。
本発明の制振材用樹脂組成物中のスルホコハク酸(塩)骨格を有する化合物及び脂肪酸(塩)骨格を有する化合物の合計含有量は、加熱乾燥後の塗膜から抽出した成分を高速液体クロマトグラフで分析することにより求めることができる。なお、重合時に反応性の炭素-炭素不飽和結合をもつ、スルホコハク酸(塩)骨格を有する化合物や脂肪酸(塩)骨格を有する化合物を用いた場合も、エマルションを形成する重合体の構成単位となっていないものについては分析することが可能である。
本発明の制振材用樹脂組成物は、複層構造のエマルション粒子を含む。該エマルション粒子は、最外層及び最外層よりも内側にある内層を有し、内層を構成する樹脂のガラス転移温度は、-10~35℃であり、該最外層を構成する樹脂のガラス転移温度は、該内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高いものである。
なお、上記複層構造のエマルション粒子は、内層の表面が最外層によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々において内層が露出している形態であってもよい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例に記載の方法により算出することができる。また、エマルション粒子全体のガラス転移温度は、全ての段で用いた単量体組成から算出したTg(トータルTg)を意味する。
なお、内層が複数ある場合は、最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が、複数の内層のうち樹脂のガラス転移温度が最も低い層に係るガラス転移温度よりも上述した所定の温度以上高いものであればよいが、複数の内層のうち樹脂のガラス転移温度が最も高い層に係るガラス転移温度よりも上述した所定の温度以上高いものであることが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、GPCを用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
上記カルボン塩基をもつ単量体単位の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
例えば、(メタ)アクリル系重合体を得るための単量体成分が、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、その他の共重合可能な不飽和単量体を含んでなるものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸系単量体を含むことにより、本発明の制振材用樹脂組成物を含む塗料において、無機顔料等の分散性が向上し、得られる塗膜の機能がより優れたものとなる。また、その他の共重合可能な不飽和単量体を含むことにより、重合体の酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。
上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体とは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、カルボキシル基がエステルとなった形態の単量体又はそのような単量体の誘導体を言う。
すなわち、(メタ)アクリル系重合体が、スチレンを含む単量体成分から得られたスチレン(メタ)アクリル系重合体であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。このような形態によって、コストを削減しつつ本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
上記平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される塗膜外観、塗工性等の基本性能を充分なものとした上で、制振性をより優れたものとすることができる。エマルション粒子の平均粒子径は、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下である。また、平均粒子径は、好ましくは100nm以上である。
エマルション粒子の平均粒子径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
また本発明の制振材用樹脂組成物は、固形分の含有割合が40~80質量%であることが好ましく、50~70質量%であることがより好ましい。
なお、固形分とは、水系溶媒等の溶媒以外の成分を意味する。
本明細書中、pHは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本明細書中、粘度は、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
その他の成分を含む場合、本発明の制振材用樹脂組成物全体に対して、その他の成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。なお、ここでいうその他の成分とは、本発明の制振材用樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分(固形分)のことを意味し、水系溶媒等の揮発成分は含まれない。
上記溶媒の含有量は、本発明の制振材用樹脂組成物100質量%中、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、該溶媒の含有量は、97質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
本発明は、複層構造のエマルション粒子を含む制振材用樹脂組成物を製造する方法であって、該製造方法は、単量体成分を重合してガラス転移温度が-10~35℃である樹脂から構成される内層を形成する工程と、単量体成分を重合して内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高いガラス転移温度の樹脂から構成される最外層を形成する工程とを含み、該組成物がスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分を含む制振材用樹脂組成物の製造方法でもある。
本発明の製造方法は、内層を形成する工程を複数含んでいてもよく、その場合、内層を形成する工程の少なくとも1つが上述したガラス転移温度の条件を満たす内層を形成するものであればよいが、内層を形成する工程のそれぞれが上述したガラス転移温度の条件を満たす内層を形成するものであることが好ましい。
なお、本発明の製造方法において、複層構造のエマルション粒子とは、上記内層を形成する工程と、上記最外層を形成する工程とを行うことにより得られるものであればよい。
上記内層を形成する工程及び上記最外層を形成する工程における重合温度としては特に限定されず、例えば、0~100℃とすることが好ましく、30~80℃とすることがより好ましい。また、重合時間も特に限定されず、例えば、0.1~15時間とすることが好ましく、1~10時間とすることがより好ましい。
本発明はまた、本発明の制振材用樹脂組成物及び顔料を含む塗料でもある。
本発明の塗料が含む制振材用樹脂組成物の好ましいものは、上述した本発明の制振材用樹脂組成物の好ましいものと同様である。
本発明の塗料の固形分100質量%中、制振材用樹脂組成物の固形分は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、該制振材用樹脂組成物の固形分は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
上記顔料は、平均粒子径が1~50μmのものが好ましい。顔料の平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置により測定することができ、粒度分布からの重量50%径の値である。
上記顔料の配合量としては、本発明の塗料中の樹脂の固形分(エマルションの原料として用いられた全単量体成分)100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることが更に好ましく、300質量部以上であることが特に好ましい。また、該配合量は、900質量部以下であることが好ましく、800質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることが更に好ましい。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤、及び、ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記分散剤の配合量としては、本発明の塗料中の樹脂の固形分100質量部に対し、固形分で0.1~8質量部が好ましく、0.5~6質量部がより好ましく、1~3質量部が更に好ましい。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記増粘剤の配合量としては、本発明の塗料中の樹脂の固形分100質量部に対し、固形分で0.01~5質量部が好ましく、0.1~4質量部がより好ましく、0.3~2質量部が更に好ましい。
なお、上記顔料、分散剤、増粘剤、及び、他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、本発明に係るエマルション粒子や架橋剤等と混合され得る。
本発明の塗料は、発泡剤として機能するスルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分を含有するため、上記加熱膨張カプセル型発泡剤の含有量を2質量%以下としたり、より少なくしたりすることにより、発泡剤が過剰となって塗膜の形状維持が困難になることを充分に防止でき、塗膜外観をより優れたものとすることができる。
本発明の塗料は、後述する実施例の方法で算出した総損失係数が0.348以上であることが好ましく、0.410以上であることがより好ましく、0.450以上であることが更に好ましく、0.460以上であることが特に好ましい。
例えば、本発明の塗料の好ましい形態の1つは、エマルションの原料として用いられた全単量体成分100質量%に対して、顔料の含有量が10質量%以上であり、加熱膨張カプセル型発泡剤の含有量が2質量%以下であり、総損失係数が0.348以上である塗料が挙げられる。
上記総損失係数は、後述する実施例の方法により求められるものである。
本発明は更に、本発明の塗料を用いて得られる塗膜でもある。
本発明の塗膜を得るために用いられる塗料の好ましいものは、上述した本発明の塗料の好ましいものと同様である。
なお、本発明は、単量体成分を重合してなるエマルション、スルホコハク酸(塩)骨格を有する成分及び/又は脂肪酸(塩)骨格を有する成分、並びに、顔料を含む塗料を加熱することにより、該塗料を発泡させて塗膜を得る工程を含む塗膜の製造方法でもある。
以下では、本発明の塗膜の好ましい形態について説明する。
また、塗膜を上記温度にする時間は、1~300分であることが好ましい。より好ましくは、2~250分であり、特に好ましくは、10~150分である。
損失係数は、通常ηで表され、塗膜に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。
上記損失係数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<平均粒子径>
エマルション粒子の平均粒子径は動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社FPAR-1000)を用い測定した。
<不揮発分(N.V.)>
得られたエマルション約1gを秤量、熱風乾燥機で150℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F-23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製「VISCOMETER TUB-10」)を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC-8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK-GEL GMHXL-Lと、TSK-GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
重合体のTgは、各段で用いた単量体組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
上記計算式(1)により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):-70℃
ブチルアクリレート(BA):-56℃
アクリル酸(AA):95℃
ブチルメタクリレート(BMA):20℃
ポリオキシエチレンアルキルエーテル・スルホサクシネート・ジナトリウム塩は、下記式(i):
ポリオキシエチレンアルキルエーテル・スルホコハク酸半エステル塩は、下記式(iii):
式中、nは、平均付加モル数を表す。本明細書中、n=9の化合物は(iii)-<1>とも表される。
NSソープ(商品名、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん:花王社製)
ネオペレックスG-65(商品名、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:花王社製)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水286.8部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート447部、2-エチルヘキシルアクリレート135部、ブチルアクリレート260部、アクリル酸8.0部、重合連鎖移動剤であるt-ドデシルメルカプタン(t-DMとも言う)2.0部、予め20%水溶液に調整した(i)-<1>105.0部及び脱イオン水213.0部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を75℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの24.0部、重合開始剤(酸化剤)である5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。40分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を180分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液70部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液70部を180分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し複層構造のエマルション粒子の芯部を形成するガラス転移温度4℃のアクリル系共重合体の水性分散液を得た。
下記表1に記載のように仕込みを変更した以外は、実施例1と同様の操作でアクリル系エマルション(樹脂組成物2~7)を得た。
実施例1のエマルション粒子の芯部を形成するための単量体乳化物の仕込みにおいて、はじめに重合器に仕込む脱イオン水の量を286.8部から290.9部に変更し、メチルメタクリレート447部の代わりにスチレン447部を用い、予め20%水溶液に調整した(i)-<1>105.0部の代わりに予め20%水溶液に調整した(iii)-<1>30.0部及びネオペレックスG-65(花王社製)100.0部を用いた以外は、実施例1と同様に芯部を形成する操作を行い、ガラス転移温度3℃のアクリル系共重合体の水性分散液を得た。
次いで、実施例1のエマルション粒子の殻部を形成するための単量体乳化物の仕込みにおいて、メチルメタクリレート148部の代わりにスチレン148部を用い、予め20%水溶液に調整した(i)-<1>20.0部の代わりに予め20%水溶液に調整した(iii)-<1>20.0部を用いた以外は、実施例1と同様に殻部を形成する操作を行い、ガラス転移温度100℃の殻部を形成させた。その後、実施例1と同様の操作で不揮発分55.0%、pH8.6、粘度250mPa・s、平均粒子径170nm、重量平均分子量120000のアクリル系エマルション(樹脂組成物8)を得た。
下記表1に記載のように仕込みを変更した以外は、実施例1と同様の操作でアクリル系エマルション(樹脂組成物9~12)を得た。
実施例1~3、参考例1、実施例5~8の樹脂組成物1~8、及び、比較例1~4の樹脂組成物9~12をそれぞれ下記の通り配合し、塗料を作製し、以下のように各種特性(塗膜の外観評価及び制振性試験)を評価した。結果を表1に示す。
・樹脂組成物1~12 350部
・炭酸カルシウム NN#200*1 700部
・分散剤 アクアリックDL-40S*2 6部
・増粘剤 アクリセットWR-650*3 4部
*1:日東粉化工業株式会社製 充填剤
*2:株式会社日本触媒製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
*3:株式会社日本触媒製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
〔塗膜のフクレやクラック、はがれの抑制度評価〕
鋼板(商品名SPCC-SD・幅75mm×長さ150mm×厚み0.8mm、日本テストパネル社製)の上に、作製した塗料を塗布厚みが4mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、140℃で50分間乾燥し、得られた乾燥塗膜の表面状態を以下の基準で評価した。なお、熱風乾燥機を用いた加熱により塗料から発泡が生じた。
(評価基準)
◎:異常なし。
〇:軽微な塗膜のクラックが所々に見られる。
△:塗膜のフクレやクラックが所々に見られる。
×:塗膜全体にわたってフクレが生じ、はがれ、クラックが見られる。
関西ペイント社製カチオン電着塗料エレクロン「KG-400」を用いて電着塗装した0.8mm*70mm*150mmの鋼板(ED〔Electro Deposition〕鋼板)に、得られた塗料配合物をウェット膜厚4mmになるように塗布し、直ちに塗布面を垂直にして、130℃×30分間の焼き付けを行った。焼き付け終了後、試験板を取り出し、塗布部位の上端、下端の高さを測定した。下記式より熱軟化指数を算出し、以下の基準で評価する。
(熱軟化指数の算出式)
熱軟化指数=(下端高さ(mm))/(上端高さ(mm))
(評価基準)
◎:1.0以上、1.6以下
○:1.6より大きく、2以下
△:2より大きい
×:塗膜の一部又は全体が鋼板よりはがれ落ちている
上記塗料を冷間圧延鋼板(商品名SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm、日本テストパネル社製)の上に3.5mmの厚みで塗布して80℃で30分間予備乾燥後、150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0Kg/m2の制振材被膜を形成した。なお、予備乾燥、予備乾燥後の乾燥における加熱により塗料から発泡が生じた。
制振性の測定は、それぞれの温度(10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃)における損失係数を、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いて評価した。また、制振性の評価は、総損失係数(10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃での損失係数の和)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
Claims (8)
- 複層構造のエマルション粒子を含む制振材用樹脂組成物であって、
該エマルション粒子は、最外層及び最外層よりも内側にある内層を有し、内層を構成する樹脂のガラス転移温度は、-10~35℃であり、該最外層を構成する樹脂のガラス転移温度は、該内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高く、
反応性の炭素-炭素不飽和結合を有しない、スルホコハク酸(塩)骨格を有する界面活性剤を含むことを特徴とする制振材用樹脂組成物。 - 前記最外層を構成する樹脂のガラス転移温度と前記内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差は、15℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の制振材用樹脂組成物。
- 前記エマルション粒子100質量%中、最外層の質量割合は、0.1~30質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振材用樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物、及び、顔料を含むことを特徴とする塗料。
- 請求項5に記載の塗料を用いて得られることを特徴とする塗膜。
- 複層構造のエマルション粒子を含む制振材用樹脂組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、単量体成分を重合してガラス転移温度が-10~35℃である樹脂から構成される内層を形成する工程と、
単量体成分を重合して内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高いガラス転移温度の樹脂から構成される最外層を形成する工程とを含み、
該組成物が反応性の炭素-炭素不飽和結合を有しない、スルホコハク酸(塩)骨格を有する界面活性剤を含むことを特徴とする制振材用樹脂組成物の製造方法。 - 複層構造のエマルション粒子を含む制振材用樹脂組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、単量体成分を重合してガラス転移温度が-10~35℃である樹脂から構成される内層を形成する工程と、
単量体成分を重合して内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高いガラス転移温度の樹脂から構成される最外層を形成する工程とを含み、
該内層を形成する工程と、該最外層を形成する工程が、反応性の炭素-炭素不飽和結合を有しない、スルホコハク酸(塩)骨格を有する界面活性剤と単量体成分とを含む単量体乳化物を原料として乳化重合する工程を含むことを特徴とする制振材用樹脂組成物の製造方法。
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