JP6666103B2 - 制振材用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
本発明はまた、本発明の制振材用樹脂組成物及び顔料を含む塗料でもある。
本発明は更に、本発明の塗料を用いて得られる塗膜でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーを含むものであり、更に、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)と、感熱ゲル化剤とを含む。本発明の制振材用樹脂組成物を含む塗料は、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)と、感熱ゲル化剤との組み合わせにより、塗布時の耐タレ性、及び、該塗料を用いて得られる塗膜の幅広い温度領域での制振性を相乗的に向上させることができる。
アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)と、感熱ゲル化剤は、入手が容易で安価であるため、本発明の制振材用樹脂組成物を調製するのに有利となる。エマルションポリマーは、モノマー成分を乳化重合してなるポリマーである。アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)は、エマルションポリマーから構成されるエマルション粒子中に含まれていてもよく、該エマルション粒子の外に存在していてもよい。感熱ゲル化剤も同様であり、該エマルション粒子中に含まれていてもよく、該エマルション粒子の外に存在していてもよい。
本発明の制振材用樹脂組成物を用いて外観に優れる塗膜を得ることができる理由は、以下のように考えられる。従来、制振材用塗料には炭酸カルシウム等の顔料、増粘剤、分散剤、加熱膨張カプセル型発泡剤等の発泡剤を混合していて、加熱乾燥(焼き付け)によりエマルション中の水等の揮発成分を蒸発させるが、該発泡剤を一定量添加しないと塗膜にフクレが生じる。これは、塗膜内部から揮発成分が全て蒸発する前に塗膜表面から揮発成分が蒸発し乾燥膜を形成することで塗膜内部の揮発成分の蒸発経路が塞がれ、塗膜内部に残った揮発成分の蒸気により該乾燥膜が持ち上げられるためであると考えられる。該発泡剤は熱膨張して揮発成分の蒸発経路を形成することで蒸気を抜けやすくし、フクレを防止する。
本発明の制振材用樹脂組成物は、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)を含むことで、加熱膨張カプセル型発泡剤を減量又はゼロにしてもフクレが抑制された外観良好な塗膜を得ることが出来る。これは、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)が熱起泡性を有しており、乾燥初期より沸騰等による細かい起泡現象があり、加熱継続下でも水抜け性が維持されることから、良好な塗膜外観が得られると推定される。このような効果は、本発明の制振材用樹脂組成物が感熱ゲル化剤を含むことにより、顕著に優れたものとなる。
上記アルキルベンゼンスルホン酸(塩)とは、アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はアルキルベンゼンスルホン酸塩を意味し、ベンゼン環にアルキル基と、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基とが結合した構造を有する化合物を言う。該スルホン酸塩基としては、スルホン酸基の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記R1におけるアルキル基は、第一級アルキル基であってもよく、第二級アルキル基であってもよく、第三級アルキル基であってもよいが、第一級アルキル基であることがより好ましい。
上記Xは、金属塩であることがより好ましい。該金属塩を形成する金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムが更に好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
上記アルキルベンゼンスルホン酸(塩)の市販品としては、例えば、ネオペレックスG−15(花王社製)等が挙げられる。
上記アルキル硫酸エステル(塩)とは、ジアルキル硫酸エステル、アルキル水素硫酸エステル、及び、アルキル硫酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも1種を意味し、−OSO3−結合に少なくとも1つのアルキル基が結合した構造を有する。該アルキル硫酸エステル塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記その他の1価の置換基としては、上述したものと同様である。
R2OSO3Y (2)
(式中、R2は、アルキル基を表す。Yは、金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩を表す。)で表されるアルキル硫酸エステル塩であることが好ましい。
上記R2におけるアルキル基は、炭素数1〜24のアルキル基であることが好ましく、炭素数6〜20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数9〜15のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数11〜13のアルキル基であることが特に好ましい。
上記R2におけるアルキル基は、第一級アルキル基であってもよく、第二級アルキル基であってもよく、第三級アルキル基であってもよいが、第一級アルキル基であることが好ましい。
上記Yは、金属塩であることがより好ましい。該金属塩を形成する金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムが更に好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
上記アルキル硫酸エステル(塩)の市販品としては、例えば、エマール2FG(花王社製)等が挙げられる。
なお、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分とは、本発明の制振材用樹脂組成物中、エマルションポリマーを構成するモノマー単位、並びに、エマルションポリマーの原料として用いられたモノマー及び該モノマー由来のオリゴマーを意味する。上記エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分は、樹脂成分と言い換えてもよい。また、本発明の制振材用樹脂組成物が、上記アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び上記アルキル硫酸エステル(塩)のいずれか一方のみを含有する場合は、上記アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び上記アルキル硫酸エステル(塩)の合計含有量は、当該一方の含有量である。
本発明の制振材用樹脂組成物は、感熱ゲル化剤を含む。
上記感熱ゲル化剤は、加温により本発明の制振材用樹脂組成物のゲル化が促進される感熱ゲル化性を有し、そのことに起因して、加熱乾燥性を向上できるものである。上記加温とは、後述するゲル化温度以上となるように加温することを意味する。
上記感熱ゲル化剤は、従来公知の方法を適宜用いて得ることができる。また、市販品を用いることも可能である。
感熱ゲル化剤が金属酸化物である場合は、上記含有量は、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。また、該含有量は、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが更に好ましい。
感熱ゲル化剤が多糖類である場合は、上記含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、4質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーを含む。エマルションポリマーは、通常、モノマー成分を乳化重合してなるポリマーである。
上記エマルションポリマーとしては種々のものを使用できるが、例えば、上記エマルションポリマーがカルボン酸(塩)基をもつモノマー単位を有するポリマーを含むことが好ましい。上記カルボン酸(塩)基とは、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を意味する。
上記カルボン酸塩基の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が好ましいものとして挙げられる。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子がより好ましい。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩がより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基の少なくとも1つの基を有し、かつ、該基中のカルボニル基をもつカルボキシル基(−COOH基)又はその酸無水物基(−C(=O)−O−C(=O)−基)を有するモノマーである。
上記その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー、芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマー等が挙げられる。
すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーが、スチレンを含むモノマー成分から得られたスチレン(メタ)アクリル系ポリマーであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。このような形態によって、コストを削減しつつ本発明の効果を充分に発揮することができる。
上記エマルションポリマーのうち少なくとも1種が2種以上のポリマー鎖が複合化したエマルションポリマーであると、実用温度範囲内の幅広い範囲における制振性に優れる。特に高温域においても、他の形態の制振材用樹脂組成物と比較して優れた制振性を発揮し、その結果、実用温度範囲内において、常温から高温域まで幅広い範囲に渡って制振性能を発揮することができる。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
なお、Tgは、後述する実施例に記載の方法により算出することができる。また、本発明に係るエマルションポリマーの少なくとも1種が多段重合して得られるものである場合(例えば、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合)は、上記ガラス転移温度は、全ての段で用いたモノマー組成から算出したTg(トータルTg)を意味する。
また他方のポリマー鎖(例えば、シェル部のポリマー鎖)のガラス転移温度は、−30〜30℃であることが好ましい。より好ましくは、−20〜20℃である。
また一方のポリマー鎖と他方のポリマー鎖とのガラス転移温度の差は、5〜60℃であることが好ましい。このようにガラス転移温度に差を設けることにより、例えば、制振材用途に適用したときに、幅広い温度領域下でより高い制振性を発現させることが可能となり、特に実用的範囲である20〜60℃域での制振性がより向上されることとなる。ガラス転移温度の差は、より好ましくは10〜50℃であり、更に好ましくは20〜40℃である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、GPCを用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
上記平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される塗工性等の基本性能を充分なものとした上で、制振性をより優れたものとすることができる。エマルション粒子の平均粒子径は、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下である。また、平均粒子径は、好ましくは100nm以上である。
エマルション粒子の平均粒子径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本明細書中、pHは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本明細書中、粘度は、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
なお、固形分とは、水系溶媒等の溶媒以外の成分を意味する。
本発明の制振材用樹脂組成物は、例えば、その他の成分としてアルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルキル硫酸エステル(塩)以外の乳化剤を含んでもよい。該アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルキル硫酸エステル(塩)以外の乳化剤としては、例えば特開2014−52024号公報に記載の乳化剤を使用できる。また、本発明の制振材用樹脂組成物は、その他の成分として後述する塗料に配合する分散剤、増粘剤等の全部又は一部を含んでいてもよい。
その他の成分を含む場合、本発明の制振材用樹脂組成物の固形分100質量%中、その他の成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。なお、ここでいうその他の成分とは、本発明の制振材用樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分(固形分)のことを意味し、溶媒等の揮発成分は含まれない。
上記溶媒の含有量は、本発明の制振材用樹脂組成物全体100質量%中、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、該溶媒の含有量は、97質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
本発明はまた、本発明の制振材用樹脂組成物及び顔料を含む塗料でもある。
本発明の塗料は、本発明の制振材用樹脂組成物を含むことにより、塗布時の耐タレ性が相乗的に向上されたものである。
本発明の塗料が含む制振材用樹脂組成物の好ましいものは、上述した本発明の制振材用樹脂組成物の好ましいものと同様である。
本発明の塗料の固形分100質量%中、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルキル硫酸エステル(塩)、及び、感熱ゲル化剤の合計量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルキル硫酸エステル(塩)、及び、感熱ゲル化剤の固形分は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
上記顔料は、平均粒子径が1〜50μmのものが好ましい。顔料の平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置により測定することができ、粒度分布からの重量50%径の値である。
上記顔料の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、10〜900質量%とすることが好ましく、より好ましくは200〜800質量%であり、更に好ましくは300〜500質量%である。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の無機質分散剤、及び、ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記分散剤の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、固形分で0.1〜8質量%が好ましく、0.5〜6質量%がより好ましく、1〜3質量%が更に好ましい。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記増粘剤の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、固形分で0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.3〜2質量%が更に好ましい。
なお、上記顔料、分散剤、増粘剤、及び、他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、本発明に係るポリマーエマルションやアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)、感熱ゲル化剤等と混合され得る。
本発明の塗料は、発泡剤として機能するアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)を含有するため、上記加熱膨張カプセル型発泡剤の含有量を2質量%以下としたり、より少なくしたりすることにより、発泡剤が過剰となって塗膜の形状維持が困難になることを充分に防止でき、塗膜外観をより優れたものとすることができる。
本発明は更に、本発明の塗料を用いて得られる塗膜でもある。
本発明の塗膜を得るために用いられる塗料の好ましいものは、上述した本発明の塗料の好ましいものと同様である。
また、塗膜を上記温度にする時間は、1〜300分であることが好ましい。より好ましくは、2〜250分であり、特に好ましくは、10〜150分である。
損失係数は、通常ηで表され、塗膜に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。
上記損失係数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<平均粒子径>
エマルション粒子の平均粒子径は動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社FPAR−1000)を用い測定した。
<不揮発分(N.V.)>
得られたエマルション約1gを秤量、熱風乾燥機で150℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製「VISCOMETER TUB−10」)を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
ポリマーのTgは、用いたモノマー組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
上記計算式(1)により重合性モノマー成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
アクリル酸(AA):95℃
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水344.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート520部、2−エチルヘキシルアクリレート130.0部、ブチルアクリレート340部、アクリル酸10.0部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15(花王社製))180.0部及び脱イオン水156.0部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を75℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの27.0部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。40分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を210分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液95部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液90部を210分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し、重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却後、この反応液に2−ジメチルエタノールアミン16.7部を添加し、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度300mPa・s、平均粒子径220nm(粒度分布21%)、重量平均分子量99000のアクリル系エマルション(エマルション1)を得た。
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、メチルメタクリレート520部の代わりにスチレン520部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.9%、ガラス転移温度3.0℃、pH8.0、粘度260mPa・s、平均粒子径230nm、重量平均分子量104000のアクリル系エマルション(エマルション2)を得た。
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15〔花王社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキル硫酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したエマール2FG〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分55.1%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.2、粘度350mPa・s、平均粒子径210nm、重量平均分子量107000のアクリル系エマルション(エマルション3)を得た。
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、メチルメタクリレート520部の代わりにスチレン520部を用い、予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15〔花王社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキル硫酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したエマール2FG〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.8%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.0、粘度340mPa・s、平均粒子径200nm、重量平均分子量101000のアクリル系エマルション(エマルション4)を得た。
製造例1と同様の重合製法にて得られたエマルションに、予め20%水溶液に調整したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(予め20%水溶液に調整したレベノールWX〔花王社製〕)100.0部を混合し、不揮発分55.2質量%、pH8.3、粘度400mPa・s、平均粒子径230nm、重量平均分子量100000のアクリル系エマルション(エマルション5)を得た。
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15〔花王社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15〔花王社製〕)90.0部及び予め20%水溶液に調整したアルキル硫酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したエマール2FG〔花王社製〕)90.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度310mPa・s、平均粒子径205nm、重量平均分子量102000のアクリル系エマルション(エマルション6)を得た。
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したアルキルベンゼンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオペレックスG−15〔花王社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(予め20%水溶液に調整したレベノールWX〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.9%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.0、粘度410mPa・s、平均粒子径190nm、重量平均分子量100500のアクリル系エマルション(エマルション7)を得た。
・エマルション1〜7の原料モノマー 固形分で1000部*1
・炭酸カルシウムNN#200*2 3137部
・分散剤 アクアリックDL−40S*3 30部
・増粘剤 アクリセットWR−650*4 20部
・消泡剤 ノプコ8034L*5 5部
・感熱ゲル化剤 多糖類*6 表1に記載
・感熱ゲル化剤 金属酸化物*7 表1に記載
・発泡剤 F−30*8 表1に記載
*1:エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分が固形分で1000部となるようにエマルションを配合した。
*2:日東粉化工業株式会社製 充填剤
*3:株式会社日本触媒製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
*4:株式会社日本触媒製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
*5:サンノプコ株式会社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
*6:デン粉
*7:株式会社日本触媒製 酸化亜鉛水分散体 アクリセットEMN−AZO−50(有効成分50%)
*8:松本油脂社製 加熱膨張カプセル型発泡剤
鋼板(商品名SPCC−SD・幅75mm×長さ150mm×厚み0.8mm、日本テストパネル社製)の上に、作製した塗料を塗布厚みが5mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、150℃で50分間乾燥し、得られた乾燥塗膜の表面状態を以下の基準で評価した。なお、熱風乾燥機を用いた加熱により塗料から発泡が生じた。
○:軽微な塗膜のクラックがわずかに見られる。
〇△:軽微な塗膜のフクレやクラックが所々に見られる。
△:塗膜のフクレやクラックが所々に見られる。
×:塗膜全体にわたってフクレが生じ、はがれ、クラックが見られる。
関西ペイント社製カチオン電着塗料エレクロン「KG−400」を用いて電着塗装した0.8mm×70mm×150mmの寸法の鋼板(ED鋼板)に、上記により得られた塗料配合物をウェット膜厚5mmになるように塗布し、直ちに塗布面を垂直にして、120℃×30分間の焼き付けを行って、得られた塗膜を目視により観察して、塗布面上端から塗料が崩壊した長さ(mm)を測定した。塗膜崩壊性の評価は、塗布面上端から塗料が崩壊した長さ(mm)を以下の基準に当てはめることにより行った。
◎:0mm以上、1mm未満
○:1mm以上、3mm未満
△:3mm以上、7mm未満
×:7mm以上
上記塗料を冷間圧延鋼板(商品名SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm、日本テストパネル社製)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0kg/m2の制振材被膜を形成した。なお、乾燥における加熱により塗料から発泡が生じた。制振性は、それぞれの温度(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃)における損失係数を、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いて測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃での損失係数の和)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
重合器に仕込んだ乳化剤の種類、及び、感熱ゲル化剤の使用の有無以外の条件が共通する実施例1、並びに、比較例1、3及び4を比較する。
例えば、重合器に仕込んだ乳化剤の種類、及び、感熱ゲル化剤の使用の有無以外の条件が共通する実施例7、並びに、比較例1、3及び5を比較する。
なお、実施例15に示されるように、制振材用樹脂組成物がアルキルベンゼンスルホン酸(塩)であるネオペレックスG−15(花王社製)とアルキル硫酸エステル(塩)であるエマール2FG(花王社製)とを両方含む場合も、更に感熱ゲル化剤を含むことで本発明の効果を発揮できる。
Claims (7)
- エマルションポリマーと、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)と、感熱ゲル化剤とを含み、
該エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対して、該感熱ゲル化剤の含有量が1〜10質量%である
ことを特徴とする制振材用樹脂組成物。 - 前記制振材用樹脂組成物は、前記エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対して、前記アルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び前記アルキル硫酸エステル(塩)の合計含有量が1〜10質量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材用樹脂組成物。 - 前記感熱ゲル化剤は、多糖類及び/又は金属酸化物である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制振材用樹脂組成物。 - 前記エマルションポリマーは、カルボン酸(塩)基をもつモノマー単位を有するポリマーを含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。 - 前記エマルションポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを含む
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。 - エマルションポリマー、アルキル硫酸エステル(塩)、感熱ゲル化剤、及び、顔料を含み、
該エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対して、該感熱ゲル化剤の含有量が1〜10質量%である
ことを特徴とする制振材用塗料。 - 請求項6に記載の制振材用塗料を用いて得られる
ことを特徴とする塗膜。
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