JP6640521B2 - 制振材用樹脂組成物 - Google Patents

制振材用樹脂組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6640521B2
JP6640521B2 JP2015201322A JP2015201322A JP6640521B2 JP 6640521 B2 JP6640521 B2 JP 6640521B2 JP 2015201322 A JP2015201322 A JP 2015201322A JP 2015201322 A JP2015201322 A JP 2015201322A JP 6640521 B2 JP6640521 B2 JP 6640521B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
salt
group
emulsion
vibration damping
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015201322A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017071737A (ja
Inventor
冬子 波元
冬子 波元
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2015201322A priority Critical patent/JP6640521B2/ja
Publication of JP2017071737A publication Critical patent/JP2017071737A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6640521B2 publication Critical patent/JP6640521B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Description

本発明は、制振材用樹脂組成物に関し、より詳しくは、制振性が要求される各種構造体に好適に用いることができる制振材用樹脂組成物、該制振材用樹脂組成物を含む塗料、及び、該塗料を用いて得られる塗膜に関する。
制振材は、各種構造体の振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されている。制振材としては、従来、振動吸収性能及び吸音性能を有する材料を素材とする板状又はシート状の成形加工品が使用されているが、その代替品として、塗膜を形成することにより振動吸収効果及び吸音効果を得ることが可能な塗料が種々提案されている。当該塗料として、モノマー成分を乳化重合してなるエマルションを用いるものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、エマルションに乾燥促進剤を配合することが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2008−133357号公報 特許第5030780号公報 特開2010−275547号公報
上記のように、塗料として種々のものが提案されているが、外観に優れ、幅広い温度領域で優れた制振性を発揮できる塗膜を得ることができる塗料はいまだ見出されていない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、外観に優れ、幅広い温度領域で優れた制振性を発揮できる塗膜を得ることができる塗料を提供することを目的とする。
本発明者は、外観と、幅広い温度領域での優れた制振性とを両立できる塗膜を形成できる、機械安定性が良好な材料について種々検討したところ、エマルションポリマーと、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む新規な制振材用樹脂組成物に想到した。本発明者は、この制振材用樹脂組成物を用いて、外観に優れ、幅広い温度領域で顕著に優れた制振性を発揮できる塗膜を得ることができることを見出し、上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、エマルションポリマーと、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む制振材用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明の制振材用樹脂組成物>
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーを含むものであり、更に、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、本発明に係る化合物とも言う。)を含む。
本発明の制振材用樹脂組成物が本発明に係る化合物を含むとは、エマルションポリマーが乳化重合により得られるものであって、該乳化重合時の乳化剤(アニオン性乳化剤)として本発明に係る化合物を用いることで、該組成物が本発明に係る化合物を含むものであってもよく、他の乳化剤を用いた乳化重合によって形成されたエマルションに添加された本発明に係る化合物を該組成物が含むものであってもよく、該乳化重合時の乳化剤として本発明に係る化合物の一部を用い、得られたエマルションポリマーに本発明に係る化合物の残部を添加することで、該組成物が本発明に係る化合物を含むものであってもよく、乳化重合以外の方法で重合された重合体に本発明に係る化合物が乳化剤として作用してエマルションを形成することで、該組成物が本発明に係る化合物を含むものであってもよい。中でも、本発明の効果をより充分に発揮する観点からは、本発明の制振材用樹脂組成物が、エマルションポリマーが乳化重合により得られるものであって、該乳化重合時の乳化剤として本発明に係る化合物を用いることで、該組成物が本発明に係る化合物を含むものであることが好ましい。
本発明の制振材用樹脂組成物を用いて、外観に優れ、幅広い温度領域で顕著に優れた制振性を発揮できる塗膜を好適に得ることができる。
本発明の制振材用樹脂組成物を用いて外観に優れる塗膜を得ることができる理由は、以下のように考えられる。従来、制振材用塗料には炭酸カルシウム等の顔料、増粘剤、分散剤、加熱膨張カプセル型発泡剤等の発泡剤を混合していて、加熱乾燥(焼き付け)によりエマルション中の水等の揮発成分を蒸発させるが、該発泡剤を一定量添加しないと塗膜にフクレが生じる。これは、塗膜内部から揮発成分が全て蒸発する前に塗膜表面から揮発成分が蒸発し乾燥膜を形成することで塗膜内部の揮発成分の蒸発経路が塞がれ、塗膜内部に残った揮発成分の蒸気により該乾燥膜が持ち上げられるためであると考えられる。該発泡剤は熱膨張して揮発成分の蒸発経路を形成することで蒸気を抜けやすくし、フクレを防止する。
本発明の制振材用樹脂組成物は、本発明に係る化合物を含むことで、加熱膨張カプセル型発泡剤を減量又はゼロにしてもフクレが抑制された外観良好な塗膜を得ることが出来る。これは、本発明に係る化合物が熱起泡性を有しており、乾燥初期より沸騰等による細かい起泡現象があり、加熱継続下でも水抜け性が維持されることから、良好な塗膜外観が得られると推定される。
なお、後述するように、本発明に係る化合物は、炭素数4以上の炭化水素基を有することが好ましい。これにより、本発明に係る化合物の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとすることができる。
本発明に係る化合物は、それぞれ、入手が容易で安価であるため、本発明の制振材用樹脂組成物を調製するのに有利となる。
なお、本明細書中、「制振材用樹脂組成物」は、「制振材(damping material)」と言い換えることができる。本発明は、言い換えれば、エマルションポリマーと、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む制振材でもある。
以下では、先ず本発明に係る化合物についてより詳しく説明し、次いで、エマルションポリマーについてより詳しく説明する。
(α−オレフィンスルホン酸(塩))
上記α−オレフィンスルホン酸(塩)とは、α−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩を意味し、α−オレフィンをスルホン化して得られる構造を有する化合物を言う。なお、α−オレフィンは、末端に二重結合があるアルケンであるが、α−オレフィンをスルホン化すると二重結合の位置がシフトしたり、二重結合が消失したりするため、α−オレフィンスルホン酸(塩)は、末端以外の箇所に二重結合があってもよく、二重結合を有さなくてもよい。該α−オレフィンスルホン酸塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記α−オレフィンスルホン酸(塩)は、例えば、下記一般式(1):
−A−CHSO (1)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。−A−は、−CH=CH−、又は、−CH(OH)CH−を表す。Mは、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表されるα−オレフィンスルホン酸塩であることが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。α−オレフィンスルホン酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、該炭素数は、4以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。また、該炭素数は、25以下であることがより好ましく、18以下であることが更に好ましく、13以下であることが特に好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、スルホン酸基、スルホン酸塩基、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシスルホニル基、スルホアルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド鎖含有基等を置換基として有していてもよいが、置換基を有さないことが好ましい。
上記Mにおける金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子等が挙げられる。また、上記Mにおける有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基が挙げられる。
上記Mは、金属原子であることがより好ましい。該金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムが更に好ましく、α−オレフィンスルホン酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、ナトリウムが特に好ましい。
上記α−オレフィンスルホン酸(塩)は、従来公知の方法を用いて得ることができ、例えば、パラフィンワックスを熱分解したり、エチレンの重合等で得られるα−オレフィンを無水硫酸でスルホン化したりすることで得ることができる。また、該α−オレフィンスルホン酸(塩)として市販品を用いることも可能である。
上記α−オレフィンスルホン酸(塩)としては、例えば、2−ドデセン−1−スルホン酸、2−ドデセン−1−スルホン酸ナトリウム、3−ヒドロキシ−1−ドデカンスルホン酸、3−ヒドロキシ−1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、2−テトラデセン−1−スルホン酸、2−テトラデセン−1−スルホン酸ナトリウム、3−ヒドロキシ−1−テトラデカンスルホン酸、3−ヒドロキシ−1−テトラデカンスルホン酸ナトリウム、2−ヘキサデセン−1−スルホン酸、2−ヘキサデセン−1−スルホン酸ナトリウム、3−ヒドロキシ−1−ヘキサデカンスルホン酸、3−ヒドロキシ−1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記α−オレフィンスルホン酸(塩)の市販品としては、例えば、ネオゲンAO−90(第一工業製薬社製)、リポランPJ−400CJ(ライオン社製)等が挙げられる。
(アルカンスルホン酸(塩))
上記アルカンスルホン酸(塩)とは、アルカンスルホン酸及び/又はその塩を意味し、アルカンにスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基が結合した構造を有する化合物を言う。該アルカンスルホン酸塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記アルカンスルホン酸(塩)は、アルキル基、スルホン酸基、スルホン酸塩基以外のその他の1価の置換基を更に有していてもよい。なお、該アルカンスルホン酸(塩)は、反応性の炭素−炭素不飽和結合を有さず、エマルションポリマーの構成単位とはならないものであることが好ましい。
上記その他の1価の置換基としては、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシスルホニル基、スルホアルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド鎖含有基等が挙げられる。
上記アルカンスルホン酸(塩)は、例えば、下記一般式(2):
SO (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Mは、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表されるアルカンスルホン酸塩であることが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。アルカンスルホン酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、該炭素数は、4以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましく、9以上であることが一層好ましく、13以上であることが特に好ましい。また該炭素数は、26以下であることがより好ましく、22以下であることが更に好ましく、18以下であることが特に好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、第一級アルキル基であってもよく、第二級アルキル基であってもよく、第三級アルキル基であってもよいが、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第二級アルキル基であることがより好ましい。
上記第二級アルキル基は、−SOと直接結合する炭素原子に2つのn−アルキル基が結合した構造を有することが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、スルホン酸基、スルホン酸塩基、上述したその他の1価の置換基等を置換基として有していてもよいが、置換基を有さないことが好ましい。
上記Mにおける金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子等が挙げられる。また、上記Mにおける有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基が挙げられる。
上記Mは、金属原子であることがより好ましい。該金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムが更に好ましく、アルカンスルホン酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、ナトリウムが特に好ましい。
上記アルカンスルホン酸(塩)は、従来公知の方法を用いて得ることができる。例えば、アルカンと、二酸化硫黄及び酸素とを、紫外線やガンマ線の照射下で反応させることで得ることができる。また、該アルカンスルホン酸(塩)として市販品を用いることも可能である。
上記アルカンスルホン酸(塩)としては、例えば、1−テトラデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸ナトリウム、1−ヘキサデカンスルホン酸、1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、1−オクタデカンスルホン酸、1−オクタデカンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記アルカンスルホン酸(塩)の市販品としては、例えば、ラテムルPS(花王社製)等が挙げられる。
(アルキルリン酸エステル(塩))
上記アルキルリン酸エステル(塩)とは、アルキルリン酸エステル及び/又はその塩を言い、アルカンにリン酸エステル基及び/又はリン酸エステル塩基が結合した構造を有する化合物を言う。なお、該アルキルリン酸エステル(塩)は、モノアルキルリン酸エステル(塩)であってもよく、ジアルキルリン酸エステル(塩)であってもよく、トリアルキルリン酸エステルであってもよい。該アルキルリン酸エステル塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記アルキルリン酸エステル(塩)は、アルキル基、リン酸エステル基、リン酸エステル塩基以外のその他の1価の置換基を更に有していてもよい。なお、該アルキルリン酸エステル(塩)は、反応性の炭素−炭素不飽和結合を有さず、エマルションポリマーの構成単位とはならないものであることが好ましい。
上記その他の1価の置換基としては、上述したものと同様である。
上記アルキルリン酸エステル(塩)は、例えば、下記一般式(3):
Figure 0006640521
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Dは、水素原子、金属原子、又は、アルキル基を表す。Mは、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表されるアルキルリン酸エステル塩であることが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。アルキルリン酸エステル(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、該炭素数は、2以上であることがより好ましく、4以上であることが更に好ましく、9以上であることが特に好ましい。また該炭素数は、14以下であることがより好ましく、13以下であることが更に好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記Rにおけるアルキル基は、リン酸エステル基、リン酸エステル塩基、上述したその他の1価の置換基等を置換基として有していてもよいが、置換基を有さないことが好ましい。
上記Dにおける金属原子は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子が好ましく、中でも、ナトリウムがより好ましい。
上記Dにおけるアルキル基は、炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。アルキルリン酸エステル(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、該炭素数は、2以上であることがより好ましく、4以上であることが更に好ましい。また該炭素数は、14以下であることがより好ましく、13以下であることが更に好ましい。
上記Dにおけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記Mにおける金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子等が挙げられる。また、上記Mにおける有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基が挙げられる。
上記Mは、金属原子であることがより好ましい。該金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムが更に好ましく、アルキルリン酸エステル(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、ナトリウムが特に好ましい。
上記アルキルリン酸エステル(塩)は、従来公知の方法を用いて得ることができる。例えば、アルコールをリン酸化することで得ることができる。また、該アルキルリン酸エステル(塩)として市販品を用いることも可能である。
上記アルキルリン酸エステル(塩)としては、例えば、ジブチルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステルナトリウム、ジブチルリン酸エステルカリウム、ジブチルリン酸エステルカルシウム、ラウリルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記アルキルリン酸エステル(塩)の市販品としては、例えば、NIKKOL SLP−N(日光ケミカルズ社製)、プライサーフDBS(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
(脂肪酸(塩))
上記脂肪酸(塩)とは、脂肪酸及び/又はその塩を意味し、炭化水素にカルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基が結合した構造を有する化合物を言う。該脂肪酸としては、飽和脂肪酸;一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。なお、該脂肪酸塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、これらの混合塩等が挙げられる。
上記脂肪酸(塩)は、アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸塩基以外のその他の1価の置換基を更に有していてもよい。なお、該脂肪酸(塩)は、反応性の炭素−炭素不飽和結合を有さず、エマルションポリマーの構成単位とはならないものであることが好ましい。
上記その他の1価の置換基としては、例えば、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシスルホニル基、スルホアルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド鎖含有基等が挙げられる。
上記脂肪酸(塩)は、例えば、下記一般式(4):
COOM (4)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。Mは、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表される脂肪酸塩であることが好ましい。
上記Rにおける炭化水素基は、炭素数1〜30の炭化水素であることが好ましい。脂肪酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、該炭素数は、4以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましく、12以上であることが特に好ましい。また該炭素数は、26以下であることがより好ましく、22以下であることが更に好ましく、18以下であることが特に好ましい。
上記Rにおける炭化水素基は、炭素鎖に単結合のみを有するものであってもよく、炭素鎖に二重結合、三重結合等の不飽和結合を有するものであってもよい。
上記Rにおける炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記Rにおける炭化水素基は、カルボン酸基、カルボン酸塩基、上述したその他の1価の置換基等を置換基として有していてもよいが、置換基を有さないことが好ましい。
上記Mにおける金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子等が挙げられる。また、上記Mにおける有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基が挙げられる。
上記Mは、金属原子であることがより好ましい。該金属原子としては、得られる塗膜の機能をより充分に発揮する観点から、ナトリウム、カリウムが更に好ましく、脂肪酸(塩)の熱気泡性をより充分に発現して得られる塗膜の外観をより優れたものとする観点からは、ナトリウムが特に好ましい。
上記脂肪酸(塩)は、従来公知の方法を用いて得ることができる。例えば、油脂を、アルカリ溶液で鹸化し、副生するグリセリンを除く鹸化法で得ることができる。また、該脂肪酸(塩)として市販品を用いることも可能である。
上記脂肪酸(塩)としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸エタノールアミン、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム、オレイン酸エタノールアミン等が挙げられる。
上記脂肪酸(塩)の市販品としては、例えば、OSソープ(花王社製)等が挙げられる。
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対して、上記α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の合計含有量が1〜10質量%であることが好ましい。該合計含有量は、本発明の効果をより充分に発揮する観点から、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。該合計含有量は、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが一層好ましく、6質量%以下であることが特に好ましい。
なお、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分とは、本発明の制振材用樹脂組成物中、エマルションポリマーを構成するモノマー単位、並びに、エマルションポリマーの原料として用いられたモノマー及び該モノマー由来のオリゴマーを意味する。上記エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分は、樹脂成分と言い換えてもよい。また、本発明の制振材用樹脂組成物が、上記α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)のいずれか1種のみを含有する場合は、上記合計含有量は、当該1種の化合物の含有量である。
本発明の制振材用樹脂組成物は、更に、上記α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物以外のその他の乳化剤を含んでいてもよい。その他の乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・硫酸ナトリウムが挙げられる。
本発明の制振材用樹脂組成物に含まれるアニオン性乳化剤100質量%中、上記α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の合計含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以上であることが最も好ましい。
(エマルションポリマー)
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーを含む。エマルションポリマーは、モノマー成分を重合してなるポリマーであればよいが、モノマー成分を乳化重合してなるポリマーであることが好ましい。
上記エマルションポリマーとしては種々のものを使用できるが、例えば、上記エマルションポリマーがカルボン酸(塩)基をもつモノマー単位を有するポリマーを含むことが好ましい。上記カルボン酸(塩)基とは、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を意味する。
上記カルボン酸塩基の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が好ましいものとして挙げられる。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子がより好ましい。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩がより好ましい。
上記エマルションポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。該(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸系モノマー由来の構造単位を含む。
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基の少なくとも1つの基を有し、かつ、該基中のカルボニル基をもつカルボン酸基(−COOH基)又はその酸無水物基(−C(=O)−O−C(=O)−基)を有するモノマーである。
例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを得るためのモノマー成分が、(メタ)アクリル酸系モノマー、及び、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーを含んでなるものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーを含むことにより、本発明の制振材用樹脂組成物を含む塗料において、顔料等の分散性が向上し、得られる塗膜の機能がより優れたものとなる。また、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーを含むことにより、ポリマーの酸価、ガラス転移温度(Tg)やその他の物性等を調整しやすくなる。上記不飽和結合含有モノマーの不飽和結合は、炭素−炭素二重結合であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマー0.1〜5質量%、及び、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマー95〜99.9質量%から構成されるモノマー成分を共重合して得られるものであることが好ましい。上記モノマー成分において、(メタ)アクリル酸系モノマーが0.3質量%以上、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが99.7質量%以下であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸系モノマーが0.5質量%以上、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが99.5質量%以下であることが更に好ましく、(メタ)アクリル酸系モノマーが0.7質量%以上、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが99.3質量%以下であることが特に好ましい。また、上記モノマー成分において、(メタ)アクリル酸系モノマーが4質量%以下、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが96質量%以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸系モノマーが3質量%以下、その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーが97質量%以上であることが更に好ましい。このような範囲内とすることにより、モノマー成分が安定に共重合する。
上記(メタ)アクリル酸系モノマーは、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
上記その他の共重合可能な不飽和結合含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマー、芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマー等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、カルボン酸基がエステルとなった形態若しくは塩となった形態のモノマー又はそのようなモノマーの誘導体を言う。
上記(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等;これら以外の(メタ)アクリル酸系モノマーの塩やエステル化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが好適である。
上記(メタ)アクリル酸系モノマーの塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩、有機アミン塩については、カルボン酸塩基をもつモノマー単位の塩として上述したものと同様のものを挙げることができる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となるモノマー成分としては、上記(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーを、全モノマー成分100質量%に対して、20質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することが更に好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸系モノマー以外の(メタ)アクリル系モノマーを、全モノマー成分100質量%に対して、99.9質量%以下含有することが好ましく、99.5質量%以下含有することがより好ましい。
上記芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーが、スチレンを含むモノマー成分から得られたスチレン(メタ)アクリル系ポリマーであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。このような形態によって、コストを削減しつつ本発明の効果を充分に発揮することができる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となるモノマー成分は、上記芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを含む場合は、全モノマー成分100質量%中、1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことが更に好ましく、20質量%以上含むことが一層好ましく、40質量%以上含むことが特に好ましい。また、該モノマー成分は、該芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを、全モノマー成分100質量%中、80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましく、60質量%以下含むことが更に好ましい。なお、上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となるモノマー成分として、芳香環及び共重合可能な不飽和結合を含有するモノマーを用いなくてもよい。
上述した以外の共重合可能な不飽和結合含有モノマーとして、例えばアクリロニトリルや、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等の多官能性不飽和結合含有モノマー等を用いてもよい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、水系溶媒を含み、上記エマルションポリマーは、水系溶媒中に分散していることが好ましい。本明細書中、水系溶媒中に分散しているとは、水系溶媒中に溶解することなく分散していることを意味する。本明細書中、水系溶媒は、水を含む限りその他の有機溶媒を含んでいてもよいが、溶媒として水のみを含むことが好ましい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーを1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。本発明の制振材用樹脂組成物が、エマルションポリマーを2種以上含む場合、2種以上の本発明に係るエマルションポリマーを混合(ブレンド)して得られる混合物であってもよく、一連の製造工程の中で2種以上のポリマー鎖を含むものを製造(例えば、多段重合等)して得られる、2種以上のポリマー鎖が複合化したものであってもよい。一連の製造工程の中で2種以上のポリマー鎖が複合したものを得るためには、モノマー滴下条件等の製造条件を適宜設定すればよい。上記2種以上のポリマー鎖が複合化したものとは、例えば、後述するコア部とシェル部とを有する形態が挙げられる。本発明に係るエマルションポリマーが、コア部とシェル部とを有する形態としては、例えば、本発明に係るエマルションポリマーが2種類のポリマー鎖からなり、該2種類のポリマー鎖の一方がコア部、他方がシェル部を形成しているものが挙げられる。なお、2種以上のポリマー鎖が複合化したエマルションポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーであるとは、(メタ)アクリル酸系モノマー由来のモノマー単位が、2種以上のポリマー鎖の少なくとも1つに含まれていることを言う。
本発明の制振材用樹脂組成物において、上記エマルションポリマーのうち少なくとも1種が、2種以上のポリマー鎖が複合化したエマルションポリマーであることが好ましい。
上記エマルションポリマーのうち少なくとも1種が2種以上のポリマー鎖が複合化したエマルションポリマーであると、実用温度範囲内の幅広い範囲における制振性に優れる。特に高温域においても、他の形態の制振材用樹脂組成物と比較して優れた制振性を発揮し、その結果、実用温度範囲内において、常温から高温域まで幅広い範囲に渡って制振性能を発揮することができる。
上記エマルションポリマーが、2種以上のポリマー鎖が複合化した形態である場合、一方のポリマー鎖と他方のポリマー鎖とが完全に相溶し、これらを区別できない均質構造のものであってもよく、これらが完全には相溶せずに不均質に形成されるもの(例えば、コア・シェル複合構造やミクロドメイン構造)であってもよい。これらの構造の中でも、エマルションポリマーの特性を充分に引き出し、安定なエマルションを作製するためには、例えばコア・シェル複合構造であることが好ましい。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
本発明に係るエマルションポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が−20〜40℃であることが好ましい。本発明に係るエマルションポリマーとして、このようなTgを有するものを用いると、塗膜の実用温度域での制振性能を効果的に発現することができることとなる。本発明に係るエマルションポリマーのTgは、より好ましくは−15〜35℃であり、更に好ましくは−10〜30℃である。
なお、Tgは、後述する実施例に記載の方法により算出することができる。また、本発明に係るエマルションポリマーの少なくとも1種が多段重合して得られるものである場合(例えば、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合)は、上記ガラス転移温度は、全ての段で用いたモノマー組成から算出したTg(トータルTg)を意味する。
上記エマルションポリマーが、2種以上のポリマー鎖が複合化した形態である場合、一方のポリマー鎖(例えば、コア部のポリマー鎖)のガラス転移温度は、0〜60℃であることが好ましい。より好ましくは、10〜50℃である。
また他方のポリマー鎖(例えば、シェル部のポリマー鎖)のガラス転移温度は、−30〜30℃であることが好ましい。より好ましくは、−20〜20℃である。
また一方のポリマー鎖と他方のポリマー鎖とのガラス転移温度の差は、5〜60℃であることが好ましい。このようにガラス転移温度に差を設けることにより、例えば、制振材用途に適用したときに、幅広い温度領域下でより高い制振性を発現させることが可能となり、特に実用的範囲である20〜60℃域での制振性がより向上されることとなる。ガラス転移温度の差は、より好ましくは10〜50℃であり、更に好ましくは20〜40℃である。
本発明に係るエマルションポリマーは、重量平均分子量が2万〜80万であることが好ましい。制振性を発揮するためには、ポリマーに加えられた振動のエネルギーを摩擦による熱エネルギーに変えることが好適であり、ポリマーに振動が加えられたときに運動することのできるポリマーであることが必要となる。本発明に係るエマルションポリマーがこのような重量平均分子量を有するものであると、振動が加えられたときにポリマーが充分に運動することができ、高い制振性を発揮することができる。本発明に係るエマルションポリマーの重量平均分子量は、より好ましくは3万〜40万である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、GPCを用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
本発明に係るエマルションポリマーから構成される、エマルション粒子の平均粒子径は80〜450nmであることが好ましい。
上記平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される塗工性等の基本性能を充分なものとした上で、制振性をより優れたものとすることができる。エマルション粒子の平均粒子径は、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下である。また、平均粒子径は、好ましくは100nm以上である。
エマルション粒子の平均粒子径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記エマルションのpHとしては特に限定されないが、2〜10であることが好ましく、3〜9.5であることがより好ましく、7〜9であることが更に好ましい。上記エマルションのpHは、当該樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
本明細書中、pHは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記エマルションの粘度としては特に限定されないが、1〜10000mPa・sであることが好ましく、5〜4000mPa・sであることがより好ましく、10〜2000mPa・sであることが更に好ましく、30〜1000mPa・sであることが一層好ましく、80〜500mPa・sであることが特に好ましい。
本明細書中、粘度は、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
上記エマルション(ポリマー)の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2011−231184号公報に記載の制振材用エマルションの製造方法と同様の方法により製造することができる。また、該エマルションの製造方法は、乳化重合以外の方法、例えば、懸濁重合で重合された重合体に本発明に係る化合物が乳化剤として作用してエマルションを形成するものであってもよい。
上記エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分の合計量は、本発明の制振材用樹脂組成物の固形分100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、該含有量は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
なお、固形分とは、水系溶媒等の溶媒以外の成分を意味する。
本発明の制振材用樹脂組成物は、本発明に係る化合物と、モノマー成分とを含むモノマー乳化物において該モノマー成分を乳化重合して得られるエマルションとすることができる。ここで、使用する本発明に係る化合物の一部又は全部を、モノマー乳化物中に予め配合する代わりに、乳化重合して得られるエマルションに添加してもよい。例えば、本発明に係る化合物の一部をモノマー乳化物中に予め配合し、その後乳化重合して得られるエマルションに本発明に係る化合物の残部を添加してもよい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、モノマー成分を乳化重合してなるエマルションポリマーと、本発明に係る化合物とを含むものである限り、その他の成分を含んでもよい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、例えば、その他の成分として本発明に係る化合物以外の乳化剤を含んでもよい。本発明に係る化合物以外の乳化剤としては、例えば特開2014−52024号公報に記載の乳化剤を使用できる。また、本発明の制振材用樹脂組成物は、その他の成分として後述する塗料に配合する分散剤、増粘剤等の全部又は一部を含んでいてもよい。
その他の成分を含む場合、本発明の制振材用樹脂組成物の固形分100質量%中、その他の成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。なお、ここでいうその他の成分とは、本発明の制振材用樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分(固形分)のことを意味し、溶媒等の揮発成分は含まれない。
本発明の制振材用樹脂組成物は、上述したように、水系溶媒等の溶媒を含むことが好ましい。
上記溶媒の含有量は、本発明の制振材用樹脂組成物全体100質量%中、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、該溶媒の含有量は、97質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の制振材用樹脂組成物は、これ自体を塗布して制振被膜を形成するのに用いることができるが、通常、後述する本発明の塗料を得るために用いられる。
<本発明の塗料>
本発明はまた、本発明の制振材用樹脂組成物及び顔料を含む塗料でもある。
本発明の塗料が含む制振材用樹脂組成物の好ましいものは、上述した本発明の制振材用樹脂組成物の好ましいものと同様である。
本発明の塗料の固形分100質量%中、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分、及び、本発明に係る化合物の合計固形分は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分、及び、本発明に係る化合物の合計固形分は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
上記顔料は、例えば、無機着色剤、有機着色剤、防錆顔料、充填材等の1種又は2種以上を使用することができる。該無機着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等が挙げられる。該有機着色剤としては、染料、天然色素等が挙げられる。該防錆顔料としては、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。該充填材としては、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、珪藻土、クレー等の無機質充填材;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填材;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填材等が挙げられる。
上記顔料は、平均粒子径が1〜50μmのものが好ましい。顔料の平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置により測定することができ、粒度分布からの重量50%径の値である。
上記顔料の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、10〜900質量%とすることが好ましく、より好ましくは200〜800質量%であり、更に好ましくは300〜500質量%である。
本発明の塗料は、更に分散剤を含んでいてもよい。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の無機質分散剤、及び、ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記分散剤の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、固形分で0.1〜8質量%が好ましく、0.5〜6質量%がより好ましく、1〜3質量%が更に好ましい。
本発明の塗料は、更に増粘剤を含んでいてもよい。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記増粘剤の配合量としては、エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、固形分で0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.3〜2質量%が更に好ましい。
本発明の加熱乾燥用塗料は、更にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、発泡剤;溶媒;ゲル化剤;消泡剤;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
なお、上記顔料、分散剤、増粘剤、及び、他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、本発明に係るポリマーエマルションやアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び/又はアルキル硫酸エステル(塩)、感熱ゲル化剤等と混合され得る。
上記溶媒としては、例えば、水;エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等の有機溶媒が挙げられる。溶媒の配合量としては、本発明の塗料の固形分濃度を調整するために適宜設定すればよい。
本発明の塗料を用いて塗膜を得ること、特に本発明の塗料を加熱乾燥して塗膜を得ることにより、塗料の乾燥と同時に該塗料を発泡させることで、水等の溶媒の蒸発経路を形成することができる。その結果、塗膜のフクレを抑制することができ、外観が非常に良好な塗膜を得ることができる。また、本発明に係る化合物が発泡剤として機能することから、従来用いられていた高価な発泡剤(例えば、加熱膨張カプセル型発泡剤)の使用量を削減することができる。例えば、エマルションの原料として用いられた全モノマー成分100質量%に対し、加熱膨張カプセル型発泡剤の含有量が2質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましく、0質量%とすることが最も好ましい。
本発明の塗料は、発泡剤として機能する本発明に係る化合物を含有するため、上記加熱膨張カプセル型発泡剤の含有量を2質量%以下としたり、より少なくしたりすることにより、発泡剤が過剰となって塗膜の形状維持が困難になることを充分に防止でき、塗膜外観をより優れたものとすることができる。
<本発明の塗膜>
本発明は更に、本発明の塗料を用いて得られる塗膜でもある。
本発明の塗膜を得るために用いられる塗料の好ましいものは、上述した本発明の塗料の好ましいものと同様である。
本発明の塗膜は、厚みが2〜8mmであることが好ましい。より充分な制振性を発揮することと、塗膜のはがれ、クラック等の発生を防ぎ、良好な塗膜を形成する点を考慮すると、このような厚みが好ましい。塗膜の厚みは、より好ましくは、2〜6mmであり、更に好ましくは、2〜5mmである。
本発明の塗膜を形成する基材は、塗膜を形成することができる限り特に制限されず、鋼板等の金属材料、プラスチック材料等いずれのものであってもよい。中でも、鋼板の表面に塗膜を形成することは、本発明の制振性塗膜の好ましい使用形態の1つである。
本発明の塗膜は、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて本発明の塗料を塗布することより得ることができる。
本発明の塗膜は、塗布した本発明の塗料を加熱乾燥して得られるものであることが好ましい。加熱乾燥においては、上記塗料を基材上に塗布して形成した塗膜を40〜200℃にすることが好ましい。より好ましくは、90〜180℃であり、更に好ましくは、100〜160℃である。加熱乾燥の前により低温で予備乾燥を行っても構わない。
また、塗膜を上記温度にする時間は、1〜300分であることが好ましい。より好ましくは、2〜250分であり、特に好ましくは、10〜150分である。
本発明の塗膜の制振性は、膜の損失係数を測定することにより評価することができる。
損失係数は、通常ηで表され、塗膜に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。
上記損失係数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の塗膜は、外観に優れ、幅広い温度領域で顕著に優れた制振性を発揮でき、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の輸送機関や電気機器、建築構造物、建設機器等に好適に用いることができる。
本発明の制振材用樹脂組成物は、エマルションポリマーとともに、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことにより、該組成物を用いて、外観に優れ、幅広い温度領域で顕著に優れた制振性を発揮できる塗膜を得ることができる。
以下に発明を実施するための形態を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの発明を実施するための形態のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の製造例において、各種物性等は以下のように評価した。
<平均粒子径>
エマルション粒子の平均粒子径は動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社FPAR−1000)を用い測定した。
<不揮発分(N.V.)>
得られたエマルション約1gを秤量、熱風乾燥機で150℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製「VISCOMETER TUB−10」)を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
<重量平均分子量>
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
<ポリマーのガラス転移温度(Tg)>
ポリマーのTgは、各段で用いたモノマー組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
Figure 0006640521
式中、Tg′は、ポリマーのTg(絶対温度)である。W′、W′、・・・Wn′は、全モノマー成分に対する各モノマーの質量分率である。T、T、・・・Tnは、各モノマー成分からなるホモポリマー(単独ポリマー)のガラス転移温度(絶対温度)である。
なお、全ての段で用いたモノマー組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
上記計算式(1)により重合性モノマー成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
アクリル酸(AA):95℃
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管、及び、滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水344.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート520部、2−エチルヘキシルアクリレート130.0部、ブチルアクリレート340部、アクリル酸10.0部、t−ドデシルメルカプタン2.0部、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部及び脱イオン水156.0部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を75℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの27.0部、5%過硫酸カリウム水溶液5部、及び、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。40分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を210分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液95部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液90部を210分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持し、重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却後、この反応液に2−ジメチルエタノールアミン16.7部を添加し、不揮発分55.1%、pH8.2、粘度450mPa・s、粒子径190nm(粒度分布23%)、重量平均分子量101000のアクリル系エマルション(エマルション1)を得た。
(製造例2)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したリポランPJ−400CJ〔ライオン社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.9%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度370mPa・s、平均粒子径220nm、重量平均分子量108000のアクリル系エマルション(エマルション2)を得た。
(製造例3)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルカンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したラテムルPS〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.0、粘度350mPa・s、平均粒子径210nm、重量平均分子量105000のアクリル系エマルション(エマルション3)を得た。
(製造例4)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキルリン酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したNIKKOL SLP−N〔日光ケミカルズ社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.2、粘度480mPa・s、平均粒子径180nm、重量平均分子量99000のアクリル系エマルション(エマルション4)を得た。
(製造例5)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキルリン酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したプライサーフDBS〔第一工業製薬社製〕)180.0部及び予め20%水溶液に調整したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(予め20%水溶液に調整したレベノールWX〔花王社製〕)100.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.9%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.2、粘度300mPa・s、平均粒子径250nm、重量平均分子量107000のアクリル系エマルション(エマルション5)を得た。
(製造例6)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整した脂肪酸(塩)(予め20%水溶液に調整したOSソープ〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度500mPa・s、平均粒子径175nm、重量平均分子量110000のアクリル系エマルション(エマルション6)を得た。
(製造例7)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、メチルメタクリレート520部の代わりに、スチレン520部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、不揮発分54.8%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.2、粘度420mPa・s、平均粒子径210nm、重量平均分子量99000のアクリル系エマルション(エマルション7)を得た。
(製造例8)
製造例7の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したリポランPJ−400CJ〔ライオン社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度360mPa・s、平均粒子径230nm、重量平均分子量98000のアクリル系エマルション(エマルション8)を得た。
(製造例9)
製造例7の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルカンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したラテムルPS〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、不揮発分54.9%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.0、粘度350mPa・s、平均粒子径220nm、重量平均分子量100000のアクリル系エマルション(エマルション9)を得た。
(製造例10)
製造例7の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキルリン酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したNIKKOL SLP−N〔日光ケミカルズ社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、不揮発分55.2%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.0、粘度410mPa・s、平均粒子径200nm、重量平均分子量107000のアクリル系エマルション(エマルション10)を得た。
(製造例11)
製造例7の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したアルキルリン酸エステル(塩)(予め20%水溶液に調整したプライサーフDBS〔第一工業製薬社製〕)180.0部及び予め20%水溶液に調整した乳化剤(商品名:レベノールWX、花王社製)100.0部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度350mPa・s、平均粒子径260nm、重量平均分子量105000のアクリル系エマルション(エマルション11)を得た。
(製造例12)
製造例7の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整した脂肪酸(塩)(予め20%水溶液に調整したOSソープ〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例7と同様の操作を行い、不揮発分55.0%、ガラス転移温度4.0℃、pH8.1、粘度400mPa・s、平均粒子径205nm、重量平均分子量112000のアクリル系エマルション(エマルション12)を得た。
(製造例13)
製造例1の単量体乳化物の仕込みにおいて、予め20%水溶液に調整したα−オレフィンスルホン酸(塩)(予め20%水溶液に調整したネオゲンAO−90〔第一工業製薬社製〕)180.0部の代わりに予め20%水溶液に調整したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(予め20%水溶液に調整したレベノールWX〔花王社製〕)180.0部を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、ガラス転移温度4.0℃、pH8.3、粘度520mPa・s、平均粒子径190nm、重量平均分子量104000のアクリル系エマルション(エマルション13)を得た。
続いて、上記で得られたエマルションを下記の通り配合して塗料を調製し、この塗料を用いて塗膜外観、耐塗膜崩壊性、及び、制振性を評価した。結果を表1に示す。
・エマルション1〜13の原料モノマー 固形分で1000部*1
・炭酸カルシウムNN#200*2 3137部
・分散剤 アクアリックDL−40S*3 30部
・増粘剤 アクリセットWR−650*4 20部
・消泡剤 ノプコ8034L*5 5部
・発泡剤 F−30*6 表1に記載
*1:エマルションポリマーの原料として用いられた全モノマー成分が固形分で1000部となるようにエマルションを配合した。
*2:日東粉化工業株式会社製 充填剤
*3:株式会社日本触媒製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
*4:株式会社日本触媒製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
*5:サンノプコ株式会社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
*6:松本油脂社製 加熱膨張カプセル型発泡剤
各種特性の評価方法を以下に示す。
<塗膜の外観評価>
鋼板(商品名SPCC−SD・幅75mm×長さ150mm×厚み0.8mm、日本テストパネル社製)の上に、作製した塗料を塗布厚みが3mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、150℃で50分間乾燥し、得られた乾燥塗膜の表面状態を以下の基準で評価した。なお、熱風乾燥機を用いた加熱により塗料から発泡が生じた。
○:軽微な塗膜のクラックがわずかに見られる。
〇△:軽微な塗膜のフクレやクラックが所々に見られる。
△:塗膜のフクレやクラックが所々に見られる。
×:塗膜全体にわたってフクレが生じ、はがれ、クラックが見られる。
<制振性試験>
上記塗料を冷間圧延鋼板(商品名SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm、日本テストパネル社製)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0kg/mの制振材被膜を形成した。なお、乾燥における加熱により塗料から発泡が生じた。制振性は、それぞれの温度(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃)における損失係数を、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いて測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃での損失係数の和)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
Figure 0006640521
上述した実施例及び比較例から、制振材用樹脂組成物が、エマルションポリマーとともに、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことにより、塗膜の外観、及び、幅広い温度領域での制振性が向上されることが示されている。なお、当該制振材用樹脂組成物は、機械安定性にも優れる。
重合器に仕込んだ乳化剤の種類以外の条件が共通する実施例1〜4、6と比較例1とを比較すると、実施例1では乳化剤としてα−オレフィンスルホン酸(塩)であるネオゲンAO−90(第一工業製薬社製)を用いることにより、実施例2では乳化剤としてα−オレフィンスルホン酸(塩)であるリポランPJ−400CJ(ライオン社製)を用いることにより、実施例3ではアルカンスルホン酸(塩)であるラテムルPS(花王社製)を用いることにより、実施例4では乳化剤としてアルキルリン酸エステル(塩)であるNIKKOL SLP−N(日光ケミカルズ社製)を用いることにより、実施例6では乳化剤として脂肪酸(塩)であるOSソープ(花王社製)を用いることにより、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル・硫酸ナトリウムであるレベノールWX(花王社製)のみを用いる比較例1と比較して、それぞれ制振性及び外観がより優れることが実証されている。
なお、実施例5では乳化剤としてアルキルリン酸エステル(塩)であるプライサーフDBS(第一工業製薬社製)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムであるレベノールWX(花王社製)を併用しており、制振性及び外観が優れるが、乳化剤がα−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、及び、脂肪酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物のみからなる実施例1〜4、6においては、外観及び制振性が顕著に優れる。
また実施例7〜12は、単量体乳化物の仕込みにおいて、メチルメタクリレート520部の代わりにスチレン520部を用いた以外は実施例1〜6と同様である。実施例7〜12も、それぞれ、制振性及び外観が優れることが実証されている。
比較例2は、比較例1で得られたエマルションに対して高価な発泡剤を添加している以外は比較例1と同様である。比較例2は、安価な構成で制振性と外観とを両立することができるものではなかった。

Claims (6)

  1. エマルションポリマーと、α−オレフィンスルホン酸(塩)、アルカンスルホン酸(塩)、アルキルリン酸エステル、及び、脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含み、
    該アルカンスルホン酸(塩)は、第二級アルキル基又は第三級アルキル基を有し、
    該アルキルリン酸エステル塩は、一般式(3):
    Figure 0006640521
    (式中、R は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Dは、水素原子、金属原子、又は、アルキル基を表す。M は、金属原子、アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表されるアルキルリン酸エステル塩であり、
    該脂肪酸塩は、一般式(4):
    COOM (4)
    (式中、R は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。M は、金属原子を表す。)で表される脂肪酸塩である
    ことを特徴とする制振材用樹脂組成物。
  2. 前記化合物は、炭素数4以上の炭化水素基を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の制振材用樹脂組成物。
  3. 前記エマルションポリマーは、カルボン酸(塩)基をもつモノマー単位を有するポリマーを含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制振材用樹脂組成物。
  4. 前記エマルションポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の制振材用樹脂組成物、及び、顔料を含む
    ことを特徴とする塗料。
  6. 請求項5に記載の塗料を用いて得られる
    ことを特徴とする塗膜。
JP2015201322A 2015-10-09 2015-10-09 制振材用樹脂組成物 Active JP6640521B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015201322A JP6640521B2 (ja) 2015-10-09 2015-10-09 制振材用樹脂組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015201322A JP6640521B2 (ja) 2015-10-09 2015-10-09 制振材用樹脂組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017071737A JP2017071737A (ja) 2017-04-13
JP6640521B2 true JP6640521B2 (ja) 2020-02-05

Family

ID=58539657

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015201322A Active JP6640521B2 (ja) 2015-10-09 2015-10-09 制振材用樹脂組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6640521B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017071737A (ja) 2017-04-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6461312B2 (ja) 制振性付与剤及び水性制振塗料用樹脂組成物
JP6784768B2 (ja) 制振塗料用樹脂組成物及びその製造方法
JP5685001B2 (ja) 制振材用エマルション及び制振材配合物
JP5815233B2 (ja) 制振材用エマルション樹脂組成物及び制振材
JP5284914B2 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP6640521B2 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP6662540B2 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP2009270064A (ja) 制振材用エマルション組成物
JP7153728B2 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP7048242B2 (ja) 制振材用樹脂組成物及びその製造方法
JP6695196B2 (ja) 加熱発泡性エマルション組成物
JP6666103B2 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP6754556B2 (ja) 制振材用水性塗料
WO2024058241A1 (ja) 制振材用樹脂組成物
JP6243206B2 (ja) 振動減衰材用樹脂組成物
JP5420939B2 (ja) エマルション樹脂組成物及びそれを用いた制振材配合物
JP2015196118A (ja) 制振性塗膜及びその製造方法
JP6749130B2 (ja) 加熱発泡性エマルション組成物
JP2015063651A (ja) 制振材用エマルション組成物
JP5937350B2 (ja) 制振材用樹脂
JP6164833B2 (ja) 制振材用樹脂、制振材用組成物及び塗膜
JP2023111304A (ja) 吸音材用組成物
JP2015196740A (ja) 加熱乾燥用エマルション組成物、加熱乾燥用塗料及び塗膜

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180705

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190528

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190726

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191226

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6640521

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150