本発明の第1の実施の形態による電動工具の一例であるハンマドリル1について、図1乃至図11を参照しながら説明する。ハンマドリル1は、被加工材(例えば、コンクリート、鉄鋼、木材等)に穿孔穴を形成したり、打撃力を加えることによって破砕したりするための電動式の電動工具である。ハンマドリル1は、動作モードとして、先端工具Pが回転し被加工材に穿孔し、且つ、被加工材を打撃する「回転・打撃モード」と、先端工具Pが被加工材を打撃する「打撃モード」とを備えている。
以下の説明においては、図1に示されている「上」を上方向、「下」を下方向、「前」を前方向、「後」を後方向と定義する。また、ハンマドリル1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。本明細書において寸法、数値等について言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく、略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」、「一定」等についても同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」、「略一定」等を含むものとする。
図1に示されているように、ハンマドリル1は、ハウジング2と、モータ3と、インバータ回路基板部4と、制御部5と、動力伝達部6と、出力部7と、加速度センサ8と、動作モード切替部9とを主に有している。
図1に示されているように、ハウジング2は、モータハウジング21と、ギヤハウジング22と、バックカバー23と、電池パックQを着脱可能なハンドルハウジング24と、加速度センサ支持部25とを有している。ハウジング2は、本発明における「ハウジング」の一例である。
モータハウジング21は、上下方向に延びる略円筒形状をなしており、モータ3と、インバータ回路基板部4とを収容している。
モータ3は、DCブラシレスモータであり、回転軸31、ロータ32、ステータ33及びファン34を有している。モータ3は、本発明における「モータ」の一例である。
回転軸31は、上下方向に延び、ハウジング2に複数のベアリングを介して回転可能に支承されている。回転軸31の上端部には、回転軸31と一体に回転するピニオン31Aが固定されている。ピニオン31Aには、ギヤ歯が形成されている。回転軸31は、本発明における「回転軸」の一例である。
ロータ32は、図示せぬ永久磁石を有する回転子であり、回転軸31と一体回転可能に回転軸31に設けられている。
ステータ33は、ステータ巻線33A(図8)を有する固定子である。ステータ33は、モータハウジング21の内周面に固定されている。また、ステータ巻線33Aは、スター結線された3相のコイルU、V、Wを有している。
ファン34は、ピニオン31Aの下方において、回転軸31と一体回転可能に回転軸31に固定されている。ファン34の下部には、磁石34Aが固定されている。
インバータ回路基板部4は、モータ3のステータ33の上方に設けられている。インバータ回路基板部4は、基板40を有している。基板40には、電池パックQの電力をモータ3に供給するとともにモータ3の回転を制御するためのスイッチング回路41、ファン34の磁石34Aの磁場を検出可能な磁気センサ部42等が実装されている(図8参照)。
ギヤハウジング22は、金属製であり、モータハウジング21の上部に接続されており、前後方向に延びている。ギヤハウジング22は、その内部に、動力伝達部6と、出力部7と、動作モード切替部9の一部とを収容している。また、ギヤハウジング22には、作業者が把持するサイドハンドル2Aが取付けられている。
動力伝達部6は、モータ3と出力部7との間に介在している。動力伝達部6は、動力伝達部6は、動力変換機構61と、上下方向に延びる略円柱状をなし上端部にベベルギヤが形成された回転力伝達機構62とを有しており、モータ3の回転軸31の回転運動を前後方向への往復動に変換し出力部7が先端工具Pを打撃することで先端工具Pに前後方向への打撃力を生じさせることが可能、且つ、回転軸31の回転運動を出力部7に伝達することにより、先端工具Pに軸線Aを中心とする回転方向に回転力を生じさせることが可能に構成されている。また、動力伝達部6は、動力伝達状態を切替えることで先端工具Pの駆動状態を変更可能に構成されている。具体的には、動力伝達部6は、先端工具Pに打撃力が伝達される一方回転力は伝達されない「打撃モード」と、先端工具Pに打撃力及び回転力が伝達される「回転・打撃モード」との間で動力伝達状態を切替可能に構成されている。なお、先端工具に打撃力が伝達される一方回転力は伝達されない「打撃モード」と、先端工具に回転力が伝達される一方打撃力は伝達されない「回転モード」との間で動力伝達状態を切替可能に構成されていても良い。なお、以下の説明においては、「軸線Aを中心とする回転方向」のことを単に「回転方向」と呼ぶ。また、図3に示されているように、回転力伝達機構62には、その外周面から径方向内方に略矩形状に窪み上下方向に延びる溝が形成されている。動力伝達部6は、本発明における「動力伝達部」の一例である。前後方向は、本発明における「第1方向」の一例であり、回転方向は、本発明における「第1方向と交差する第2方向」の一例である。打撃モードは、本発明における「第1動力伝達状態」の一例であり、回転打撃モードは、本発明における「第2動力伝達状態」の一例である。
また、図1乃至図3に示されているように、動力伝達部6は、クラッチ機構63を有している。クラッチ機構63は、モータ3と出力部7との間に介在している。詳細には、クラッチ機構63は、回転力伝達機構62に設けられている。言い換えると、クラッチ機構63は、モータ3の回転軸の回転力の伝達経路上に設けられている。クラッチ機構63は、モータ3の駆動力を出力部7に伝達可能であり、且つ、モータ3の駆動力の出力部7への伝達を遮断可能に構成されている。クラッチ機構63は、本発明における「クラッチ機構」の一例である。
図3に示されているように、クラッチ機構63は、外輪部63Aと、内輪部63Bと、複数のスプリング63Cと、複数のボール63Dと、キー部材63Eとを有している。
外輪部63Aは、上下方向に延びる略円筒形状をなし、その外周には、モータ3の回転軸31に設けられたピニオン31Aのギヤ歯と噛合するギヤ歯が形成されている。外輪部63Aは、複数の係合部63Fを有している。
複数の係合部63Fは、外輪部63Aの周方向において、略36度おきに設けられている。つまり、本実施の形態においては、係合部63Fは、10個設けられている。複数の係合部63Fのそれぞれには、外輪部63Aの回転方向(図3の矢印B方向)の下流側から上流側へ進むにつれて外輪部63Aの径方向外方へ窪む面が規定されている。また、各係合部63Fの矢印B方向における上流側端部には、外輪部63Aの内周から径方向内方に突出する突起が設けられている。各係合部63Fの突起は、各ボール63Dと係合可能に構成されている。
内輪部63Bは、その中央に穴が形成された略円板状に形成され、外輪部63Aの径方向内方に位置している。内輪部63Bには、その周方向において、略36度おきに、平面視において放射状に延びるように複数の溝63aが形成されている。つまり、本実施の形態においては、溝63aは、36度おきに10箇所に形成されている。各溝63aには、一組のスプリング63C及びボール63Dが配置されている。内輪部63Bは、円筒部63Gを有している。なお、溝63aに代えて、貫通孔としてもよい。
円筒部63Gは、上下方向に延びる略円筒形状に形成されている。円筒部63Gには、回転力伝達機構62の外径と同径の挿通孔63bが上下方向に延びるように形成されている。また、円筒部63Gには、その内周面から径方向外方に略矩形状に窪み上下方向に延びる溝が形成されている。
キー部材63Eは、上下方向に延びる角柱状に形成された部材である。本実施の形態においては、円筒部63Gに形成された溝と回転力伝達機構62に形成された溝とによって規定された空間にキー部材63Eが配置されることにより、内輪部63Bは、回転力伝達機構62に対して相対回転不能に構成されている。言い換えると、内輪部63Bと回転力伝達機構62とは、一体に回転可能である。
複数のスプリング63Cのそれぞれは、平面視において放射状に延びるように、内輪部63Bの複数の溝63aのそれぞれに配置されている。つまり、本実施の形態においては、スプリング63Cは、10個設けられている。また、各スプリング63Cは、内輪部63Bの周方向に移動不能である。各スプリング63Cの内輪部63Bの径方向内方に位置する端部は、円筒部63Gの外周面と着座している。
複数のボール63Dのそれぞれは、内輪部63Bの複数の溝63aのそれぞれに配置されている。つまり、本実施の形態においては、複数のボール63Dは、10個設けられている。また、各ボール63Dは、内輪部63Bに対して内輪部63Bの周方向に移動不能である。各ボール63Dは、各スプリング63Cの径方向外方の端部と当接している。本実施の形態においては、各ボール63Dが各スプリング63Cから径方向外方へ向かう付勢力を受けることにより、各ボール63Dが外輪部63Aの各係合部63Fの突起と係合している状態が保持されるように構成されている。
また、クラッチ機構63が作動するのに十分な負荷トルク(先端工具Pに係る負荷トルク、又は、先端工具Pを介してモータ3にかかる負荷トルク)がかかった場合に、クラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断するのにかかる時間は、クラッチ機構63の特性に基づいて定められ、本実施の形態においては50~70[ms]である(図10参照)。なお、本明細書中において「クラッチ機構が作動する」とは、「クラッチ機構が駆動力(又は回転力)の伝達を遮断するように動作する」と同義である。
図1に示されているように、出力部7は、ギヤハウジング22内において回転力伝達機構62の上方に配置され、モータ3によって駆動される。出力部7は、打撃子71とシリンダ72と、先端工具Pを着脱可能な装着部73とを有している。
打撃子71は、動力変換機構61により往復動可能に構成されている。具体的には、打撃子71の前端は、装着部73に装着される先端工具Pの後端に当接可能に構成され、打撃子71が前後方向に往復動することに伴い、先端工具Pに打撃力が伝達される。
シリンダ72は、回転力伝達機構62を介してモータ3の回転力を受けることによって軸線Aを中心に(回転方向に)回転可能に構成されている。また、シリンダ72が回転することによって装着部73が回転し、装着部73に装着された先端工具Pが軸線Aを中心に(回転方向に)回転可能に構成されている。
図1及び図4に示されているように、動作モード切替部9は、ギヤハウジング22の後部の上部に位置し、動力伝達部6の動力伝達状態を機械的に切替可能に構成されている。より詳細には、動作モード切替部9は、回転力伝達機構62を介して回転運動を出力部7に伝達する状態と、回転力伝達機構62を介した回転運動の出力部7への伝達を遮断する状態とを切替えることにより、打撃モードと回転・打撃モードとを切替可能に構成されている。また、本実施の形態においては、作業時における、動力変換機構61を介した先端工具Pへの打撃力の伝達は、遮断不能に構成されている。図1に示されているように、動作モード切替部9は、操作部91と、スリーブ92とを有している。動作モード切替部9は、本発明における「切替操作部」の一例である。
操作部91は、動作モードを切替える際に作業者が操作する部分であり、図4に示されているように、上面視略円形状をなしている。操作部91は、図4の時計回り方向及び反時計回り方向に、回転操作可能に構成されている。
図1に示されているように、スリーブ92は、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。スリーブ92の前端部には、回転力伝達機構62のベベルギヤと噛合可能なベベルギヤが形成されている。スリーブ92の内径は、シリンダ72の外径よりも僅かに大きく構成されている。スリーブ92には、シリンダ72が挿通されている。スリーブ92は、操作部91に対する操作(操作部91の図4の時計回り方向の回転、又は、反時計回り方向の回転)に応じ、シリンダ72に対して前後方向に相対移動可能に構成されている。また、スリーブ92は、シリンダ72と一体回転可能に構成されている。
バックカバー23は、上下方向に延び、モータハウジング21及びギヤハウジング22の後部を覆うように配置されている。バックカバー23には、被挿通部23A及び接続部23Bが設けられている。また、バックカバー23の下部は、加速度センサ8を覆っている。
被挿通部23Aは、バックカバー23の下部において後方に突出している。被挿通部23Aには、左右方向に貫通する貫通孔が形成されている。
接続部23Bは、バックカバー23の上端部において、前後方向に延びている。
また、バックカバー23内には、制御部5が固定されている。制御部5は、ハンマドリル1の各種制御を行うように構成されている。制御部5は、平板状の基板51を有しており、当該基板にハンマドリル1を制御する各種回路等が実装されている(図8参照)。
図1に示されているように、ハンドルハウジング24は、側面視略コ字状をなしており、バックカバー23の後方に位置している。ハンドルハウジング24は、把持部24A、第1接続部24B及び第2接続部24Cを有している。
把持部24Aは、作業時に作業者によって把持される部分であり、上下方向に延びている。把持部24Aの前部上部には、モータ3の始動及び停止を制御するための手動操作可能なトリガ24Dが設けられている。なお、把持部24Aの内部には、制御部5に接続されている図示せぬスイッチ機構が設けられている。スイッチ機構は、トリガ24Dが引操作すなわち始動操作された場合(例えば、作業者の指によってハンドルハウジング24内に向けて押込まれた場合)、モータ3を始動するための工具始動信号を制御部5に出力し、トリガ24Dに対する引操作が解除、すなわち、停止操作された場合(例えば、作業者がトリガ24Dから指を離して引操作を解除した場合)工具始動信号の出力を停止するように構成されている。
第1接続部24Bは、把持部24Aの下端部から前方に延出している。第1接続部24Bの前部の内部には、左右方向に延びるシャフト24Eが設けられている。シャフト24Eは、被挿通部23Aの貫通孔に挿通されている。ハンドルハウジング24は、シャフト24Eを支点として回動可能に構成されている。また、第1接続部24Bの下部には、電池パックQを装着可能な電池装着部24Fが設けられている。ハンマドリル1は、電池装着部24Fに装着された電池パックQからの電力供給によって駆動可能に構成されている。
第2接続部24Cは、把持部24Aの上端部から前方に延出している。第2接続部24Cには、図示せぬ弾性体を有する振動低減機構2Bが設けられ、第2接続部24Cは、振動低減機構2Bを介してバックカバー23の接続部23Bと接続されている。出力部7に前後方向の振動が発生した場合においても、ハンドルハウジング24がシャフト24Eを中心に回動し、振動低減機構2Bの図示せぬ弾性体が伸縮されることにより前後方向の振動が吸収され、把持部24Aを把持する作業者に前後方向の振動が伝わることが抑制される。
加速度センサ支持部25は、モータハウジング21の後壁部の下部に設けられ、加速度センサ8を支持している。図6及び図7に示されているように、加速度センサ支持部25は、左右対称に構成されている。図5乃至図7に示されているように、加速度センサ支持部25は、収容壁部251と、弾性体252と、ネジを有する押圧部253とを有している。
図6に示されているように、収容壁部251は、後面視において略U字状をなし、図5に示されているように、モータハウジング21の後壁部から後方に突出している。
図5に示されているように、弾性体252は、収容壁部251内に収容されている。弾性体252のバネ定数は、収容壁部251の左右側壁よりも小さく構成されている。
加速度センサ8は、加速度センサ支持部25の収容壁部251内に配置され、ハウジング2の複数の方向におけるそれぞれの加速度を検出可能に構成されている。図1に示されているように、加速度センサ8は、導線8Aを介して制御部5と電気的に接続されており、検出したハウジング2の加速度の方向及び大きさに応じた加速度信号を制御部5に出力可能に構成されている。本実施の形態において、加速度センサ8は、少なくともハウジング2の前後方向及び回転方向(左右方向)の加速度を独立して検出可能に構成されている。また、加速度センサ8は、先端工具Pの軸線Aから離間した位置に位置している。より詳細には、加速度センサ8は、上下方向における位置が電池パックQと重なるように設けられている。これにより、ハウジング2に生じる回転方向(左右方向)の加速度を適切に検出することが可能となる。加速度センサ8は、基板81と、ケース82とを有している。加速度センサ8は、本発明における「検出部」の一例である。
ケース82は、樹脂製であり、図5に示されているように、前後対称、図6に示されているように、左右対称に構成されている。基板81は、ケース82内に配置されている。基板81は、上下方向及び左右方向に延びる平板状をなしている。基板81の後面には、ハウジング2の加速度を検出するための各種素子が実装されている。
図5に示されているように、ケース82は、その前後側面が弾性体252と当接した状態で、押圧部253によってハウジング2に固定されている。また、図6に示されているように、ケース82の左右側面は、収容壁部251の左右側壁と直接当接している。
ここで、弾性体252のバネ定数が収容壁部251の左右側壁よりも小さく構成されているため、加速度センサ8は、加速度センサ8のハウジング2に対する前後方向の移動許容量が加速度センサ8のハウジング2に対する回転方向の移動許容量よりも大きくなるように加速度センサ支持部25に支持されている。これにより、先端工具Pの打撃方向におけるハウジング2の振動を検知してしまうことを抑制しつつ適切に回転方向におけるハウジング2の加速度を検出することが可能となる。
次に、図8を参照しながら、ハンマドリル1、電池パックQの電気的構成について説明する。
図8に示されているように、電池パックQは、モータ3、制御部5等の電源となる複数の電池を収容している。
電池パックQは、プラス端子及びマイナス端子を有している。電池パックQがハンドルハウジング24の電池装着部24Fに装着されると、電池パックQのプラス端子及びマイナス端子は、それぞれハンマドリル1本体側の所定の端子に接続され、電池パックQの電圧が当該所定の端子間に印加されるように構成されている。
スイッチング回路41は、電池パックQの電力をモータ3に供給するとともにモータ3の回転を制御するためのインバータ回路であり、電池パックQとモータとの間に接続されている。スイッチング回路41を構成する6個のスイッチング部材は、3相ブリッジ形式に接続されており、各ゲートは制御部5に接続され、各ドレイン又は各ソースは、モータ3のステータ巻線33AのコイルU、V、Wに接続されている。6個のスイッチング部材は、制御部5から出力される駆動信号(ゲート信号)に基づいて、ロータ32を所定の回転方向に回転させるスイッチング動作を行う。
磁気センサ部42は、3個の磁気センサを有している。3個の磁気センサは、例えばホール素子である。3個の磁気センサのそれぞれは、ファン34に固定された磁石34Aの磁場を検出可能に構成されている。また、磁石34Aの磁場を検出した場合、3個の磁気センサのそれぞれは、制御部5に信号を出力する。磁気センサ部42は、本発明における「検出部」の一例である。
加速度センサ8は、加速度検出回路80を有している。加速度検出回路80は、検出されたハウジング2の前後方向及び回転方向の加速度の値(大きさ)を示す信号(加速度信号)を制御部5に出力する回路である。
制御部5の基板51には、コントローラ51A、制御信号出力回路51B、回転子位置検出回路51C、温度検出回路51D、電池電圧検出回路51E、電流検出回路51F、降圧回路51G、制御系電源回路51H、通信回路51I、電池温度検出回路51J及び過放電検出回路51Kが搭載されている。
コントローラ51Aは、モータ3の制御に用いる処理プログラム及び各種データに基づいて演算を行う中央処理装置(CPU)を有する図示せぬ演算部と、当該処理プログラム、各種データ、各種閾値等を記憶するための図示せぬROMと、データを一時記憶するための図示せぬRAMを有する制御部とを備えている。コントローラ51Aは、処理プログラムに従って、モータ3の制御を行う。
また、コントローラ51Aは、モータ3に対する基本的な制御として回転駆動制御を行う。回転駆動制御は、モータ3のロータ32を所定の回転方向に回転駆動させる制御であり、制御信号出力回路51Bに制御信号を出力することで行う。より詳細には、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力された回転位置信号に基づいて、スイッチング部材のうちの導通させるスイッチング部材を交互に切り換えるための制御信号を形成し、当該制御信号を制御信号出力回路51Bに出力する。当該回転駆動制御において、コントローラ51Aは、スイッチング部材を駆動するための制御信号をパルス幅変調信号(PWM)信号として出力する。コントローラ51Aは、本発明における「制御部」の一例である。
また、本実施の形態においては、モータ3の回転軸31の単位時間当たりの回転数[rpm](以下の説明においては、単に「回転数」と呼ぶ。)が各動作モードに応じた目標回転数となるようにフィードバック制御を行いながら回転駆動制御を行う。より詳細には、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力される回転位置信号に基づいて回転軸31の回転数を算出し、算出した回転数と目標回転数とを比較し、当該比較結果に基づいて、回転軸31の回転数が目標回転数となるようにPWM信号のデューティ比を変更する処理を高速で繰り返し実行することによって、定回転数制御を行う。
また、本実施の形態においては、モータ3の回転軸31の回転数は、トリガ24Dの押圧量によらない。モータ3の回転軸31の回転数がトリガ24Dの押圧量によらずに制御部5によって制御されるため、好適に動作モードに応じた作業を行うことが可能となる。
制御信号出力回路51Bは、6個のスイッチング部材のそれぞれのゲート及びコントローラ51Aに接続されている。制御信号出力回路51Bは、コントローラ51Aから出力された制御信号に基づいて6個のスイッチング部材の各ゲートに駆動信号を出力する回路である。
回転子位置検出回路51Cは、磁気センサ部42から出力された信号に基づいてロータ32の回転位置を検出し、検出した回転位置を示す信号(回転位置信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。本実施の形態においては、回転軸31と一体に回転するファン34に取付けられた磁石34Aの磁場を検出することで回転軸31の回転位置を検出するように構成されているが、回転軸31の回転位置を直接検出するように構成されていても良い。
温度検出回路51Dは、スイッチング回路41の温度検出のための回路であり、スイッチング回路41の近傍に設けられた図示せぬサーミスタ等の感温素子を含んで構成されている。温度検出回路51Dは、検出した温度の値を示す信号(回路温度信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
電池電圧検出回路51Eは、電池パックQの電池電圧を検出し、検出した電圧の値を示す信号(電池電圧信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
電流検出回路51Fは、スイッチング回路41と、電池パックQとの間に設けられたシャント抵抗50の電圧降下値を用いて、モータ3に流れる電流(モータ電流)を検出し、検出したモータ電流の値を示す信号(電流値信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
降圧回路51Gは、電池パックQの電池から入力された電圧(例えば14.4V)を降圧(例えば5V)して制御系電源回路51Hに出力する回路である。
制御系電源回路51Hは、コントローラ51Aに電源電圧を供給するための定電圧回路である。制御系電源回路51Hは、降圧回路51Gから入力された電圧(降圧後の電圧)を安定化してコントローラ51Aに供給する。
通信回路51Iは、電池識別情報や工具識別情報をコントローラ51Aと電池パックQ内に設けられるマイコンとの間で入出力する回路である。
電池温度検出回路51Jは、電池パックQの電池の温度を検出し、検出した温度の値を示す信号(電池温度信号)をコントローラ51Aに出力する回路である。
過放電検出回路51Kは、電池パックQの過放電を検出可能であり、過放電を検出した場合には、過放電を示す信号をコントローラ51Aに出力する回路である。
次に、図1及び図4を参照しながら、ハンマドリル1の動作モード切替作業について、説明する。本実施の形態においては、図4に示されているように、操作部91に形成された三角マーク91Aが略後方を向いているときには回転打撃モードが選択された状態となる。一方で、操作部91に形成された三角マーク91Aが略前方を向いているときには打撃モードが選択された状態となる。
具体的には、図4に示されているように、操作部91に形成された三角マーク91Aが略後方を向いている場合には、図1に示されているスリーブ92がシリンダ72に対して前方に移動し、スリーブ92のベベルギヤが回転力伝達機構62のベベルギヤと噛合することにより、回転力伝達機構62を介して出力部7(打撃子71)を回転運動させ先端工具Pに回転力を伝達可能な状態となる。本実施の形態においては、これと同時に、動力変換機構61を介して出力部7(打撃子71)を往復動させ先端工具Pへ打撃力を伝達可能である。つまり、打撃力及び回転力を先端工具Pに伝達可能な回転打撃モードとなる。
また、操作部91に形成された三角マーク91Aが略前方を向いている場合には、スリーブ92がシリンダ72に対して後方に移動し、スリーブ92のベベルギヤと回転力伝達機構62のベベルギヤとの噛合が解除されることにより回転力伝達機構62を介した出力部7(シリンダ72)への回転力の伝達が遮断される。このときに、動力変換機構61を介して出力部7を往復動させ先端工具Pへ打撃力のみが伝達可能な打撃モードとなる。
次に、図9に示すフローチャートに沿って、制御部5のコントローラ51Aによるモータ3の駆動制御について、詳細に説明する。なお、図10に示すグラフを適宜参照する。
作業者が、電池パックQをハンドルハウジング24の電池装着部24Fに装着すると、コントローラ51A(制御部5)に電力が供給され、これを契機に図9のフローチャートに示される処理が開始される。
ステップS101において、コントローラ51Aは、トリガ24Dに対して引操作が行われているか否かを判断する。当該判断は、図示せぬスイッチ機構から工具始動信号が出力されているか否かで判断する。
ステップS101において、トリガ24Dに対して引操作が行われていないと判断した場合(ステップS101:NO)、コントローラ51Aは、ステップS101の判断処理を繰り返し行う。なお、作業開始時(トリガ24Dに引操作を行った直後)においては、モータ3は駆動していないため、ステップS107の処理は、実行されない。一方、ステップS101において、トリガ24Dに対して引操作が行われていると判断した場合(ステップS101:YES)、コントローラ51Aは、ステップS102でモータの駆動制御(定速度制御)を開始する。
具体的には、ステップS102において、制御部5の制御信号出力回路51Bは、コントローラ51Aから出力された信号に基づいてスイッチング回路41の各スイッチング部材の各ゲートに駆動信号を出力する。スイッチング部材は、制御信号出力回路51Bから出力される駆動信号に基づいてロータ32を所定の回転方向に回転させるスイッチング動作を開始する。これによりモータ3が駆動し、モータ3の駆動力は動力伝達部6を介して出力部に伝達され、作業者が選択した動作モードに応じて先端工具Pが回転・打撃を開始する。
次に、コントローラ51Aは、モータ3の駆動開始時からの経過時間が「所定時間」を超えたか否かを判断する(ステップS103)。本実施の形態においては、当該所定時間は、90[ms]である(図10のグラフにおいて、時間T[ms]で示される)。本実施の形態において、90[ms]は、作業者がハンマドリル1を被加工部材に押し付ける時間等を考慮して決定され、所定のトルクがかかった場合において、クラッチ機構63がモータ3の回転力を遮断する(作動する)のに十分な時間である。所定時間は、本発明における「所定時間」の一例である。なお、本実施の形態において、所定時間は90msであったが、クラッチ機構等の特性に基づいて50ms~200ms(50ms以上200ms未満)の間で定められていてもよい。
ステップS103において、モータ3の駆動開始時から90[ms]経過していないと判断する場合(ステップS103:NO)、コントローラ51Aは、トリガ24Dに引操作が行われているか否かを判断する(ステップS104)。当該判断は、上述のステップS101と同様に、図示せぬスイッチ機構から工具始動信号が出力されているか否かで判断する。
ステップS104において、トリガ24Dに引操作が行われていると判断する場合(ステップS104:YES)、コントローラ51Aは、ステップS103の判断処理を繰り返し行う。一方、ステップS104において、トリガ24Dに引操作が行われていないと判断する場合(ステップS104:NO)、コントローラ51Aは、ステップS107において、モータ3の駆動を停止させる。以降、コントローラ51Aは、モータ3の駆動開始から90[ms]を経過するまでは、トリガ24Dに引操作がされている限り、ステップS101~ステップS104の処理を繰り返し実行する。つまり、本実施の形態においては、モータ3の駆動開始から90[ms]経過するまでの間において、トリガ24Dに引操作がされている限りは、モータ3を停止させる制御(振り回し防止制御)を行わない。ステップS101~ステップS104の処理を繰り返し実行する制御は、本発明における「第2制御」の一例である。
ステップS103において、モータ3の駆動開始時から90[ms]を経過していると判断する場合(ステップS103:YES)、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力される回転位置信号に基づいて算出されるモータ3の回転軸31の回転数と、「第1閾値」とを比較する(ステップS105)。本実施の形態において、第1閾値は、5000[rpm]であり、図10(a)において、X[rpm]で示されている。第1閾値は、本発明における「第1閾値」の一例である。
ステップS105において、回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも大きいと判断する場合(ステップS105:NO)、コントローラ51Aは、モータ3の定速度制御を継続し、以降、モータ3が停止するまでは、ステップS101~ステップS106の処理を繰り返し実行する。ステップS101~ステップS106の処理を繰り返し実行する制御は、本発明における「第1制御」の一例である。
ステップS105において、回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも小さいと判断する場合(ステップS105:YES)、コントローラ51Aは、キックバックが発生していると判断し、モータを停止する(ステップS107)。「回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも小さい」ことは、本発明における「第1条件」の一例である。
次に、本実施形態にかかるハンマドリル1の効果について、図10(a)及び図11を参照しながら、詳細に説明する。なお、図10中の(i)は、キックバックが発生しない場合における回転軸31の回転数及びハウジング2に発生する回転方向の加速度とモータ3の駆動開始時からの経過時間との関係を示している。また、(ii)は、モータ3の駆動開始時にキックバックが発生した場合において、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付けが十分である場合における回転軸31の回転数及びハウジング2に発生する回転方向の加速度とモータ3の駆動開始時からの経過時間との関係を示している。(iii)は、モータ3の駆動開始時にキックバックが発生した場合において、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付けが不十分である場合における回転軸31の回転数及びハウジング2に発生する回転方向の加速度とモータ3の駆動開始時からの経過時間との関係を示している。
図10(a)の実線(i)に示されているように、キックバックが発生しない場合には、モータ3の回転軸31の回転数は、目標回転数(本実施の形態においては、20000[rpm])まで直線的に増加する。詳細には、図11(a)に示されているように、モータ3の回転軸31に設けられたピニオン31Aと噛合するクラッチ機構63の外輪部63Aが矢印B方向に回転することに伴い、複数の係合部63Fと複数のボール63Dとの係合を介して、クラッチ機構63と回転力伝達機構62とが一体に回転し、回転力が伝達される。
一方で、モータ3の駆動開始時において、キックバックが発生した場合、つまり、先端工具P(出力部7)に所定値以上の負荷がかかった場合(言い換えると、前記モータ3に所定値以上の負荷がかかった場合)、図11(b)に示されているように、先端工具Pがロックされることに伴い、回転力伝達機構62及び内輪部63Bの回転が規制される。この状態において、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付けが十分でありクラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断することが可能な所定のトルクがクラッチ機構63にかかる場合には、外輪部63Aの複数の係合部63Fの突起部分が複数のボール63Dを複数のスプリング63Cの付勢力に抗して内輪部63Bの径方向内方に押し込み、外輪部63Aは、内輪部63Bに対して相対的に矢印B方向に回転する。つまり、クラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断する。本実施の形態においては、図10(b)の点線(ii)に示されているように、50[ms]から70[ms]の間でクラッチが作動し、モータ3の回転力の伝達を遮断するように構成されている。
上述のように、本実施の形態においては、モータ3の駆動開始から90[ms]経過するまでの間において、トリガ24Dに引操作がされている限りは、モータ3を停止させる制御(振り回し防止制御)を行わない。これにより、負荷トルクの大きい作業を行っている際にキックバックが発生した場合に、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付け力が充分でありクラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断可能な所定のトルクがクラッチ機構63にかかる場合には、所定時間(90[ms])の間にクラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断することにより、モータ3を停止させることなく作業を継続することが可能となる。これにより、作業性を向上させることが可能となる。
また、これに対して、キックバックが発生した場合において、つまり、先端工具P(出力部7)に所定値以上の負荷がかかった場合(言い換えると、前記モータ3に所定値以上の負荷がかかった場合)、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付けが十分でなくクラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断可能な所定のトルクがクラッチ機構63にかからない場合には、モータの駆動開始から90[ms]を経過した後に、実際の回転軸31の回転数と回転数閾値X[rpm](本実施の形態においては、5000[rpm])とを比較する。そして、図10(a)の(iii)に示されているように、実際の回転数が5000[rpm]よりも小さい場合には、キックバックが発生しているものと判断して、モータ3の駆動を停止させる。
このように、本実施の形態においては、ハンマドリル1本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工材への押し付けが不十分であり、所定のトルクがクラッチ機構63にかからない場合において、所定時間(90[ms])経過後に制御部の制御が第2制御(ステップS101~ステップS104を繰り返す制御)から第1制御(ステップS101~ステップS106を繰り返す制御)に切り替わり、モータ3の駆動を停止させることができる。これにより、作業性を向上させることが可能となる。
また、本実施の形態において、コントローラ51Aは、90[ms]経過後においては、回転軸31の回転数が5000[rpm]を下回るか否かによって、キックバックの発生を判別している。このように、先端工具Pに回転力が伝達される回転・打撃モードによる穴あけ作業時におけるキックバック発生時に大きく変化する回転軸31の回転数(回転速度)に応じて回転軸31の回転を停止させるため、先端工具に打撃力のみが伝達され穴あけ作業時と比較して回転軸31の回転数の変化の小さい打撃モードによるハツリ(破砕)作業時において、作業者のハンマドリル1本体の振り回し動作等に起因する予期せぬモータ3の駆動停止が抑制され、作業性を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、回転軸31の回転数が5000[rpm]を下回るか否かによってキックバックの発生を判別しているが、回転軸31の回転数の減少率が回転数に関する所定の閾値を超えるか否かによってキックバックの発生を判別するように構成されていても良い。
また、本実施の形態においては、回転軸31の回転数に関して閾値X(5000[rpm])を設定したが、回転方向の加速度に関する閾値(例えば、2[G])を設定し、実際にハウジング2に発生する回転方向の加速度と当該閾値を比較して、実際の加速度が閾値を超えた場合にキックバックが発生したと判断するように構成されていても良い。
次に、図12を参照しながら、本発明の第2の実施の形態による電動工具の一例であるハンマドリルについて説明する。第2の実施の形態によるハンマドリルは、第1の実施の形態によるハンマドリル1と同一の構成を有しており、図12のフローチャートに示されているように、モータ3の駆動制御方法のみが第1の実施の形態によるハンマドリル1と異なり、その他の点においては、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。したがって、以下の説明において、構成を言及する場合には、第1の実施の形態における参照符号と同一の参照符号を用いて説明を行う。なお、図10に示すグラフを適宜参照する。
以下、図12に示すフローチャートに沿って、制御部5のコントローラ51Aによるモータ3の駆動制御について、詳細に説明する。なお、ステップS201~ステップS204までの処理は、第1の実施の形態によるハンマドリル1におけるステップS101~ステップS104までの処理と同様のため、説明を省略し、ステップS205以降の処理について主に説明する。なお、ステップS201~ステップS204までの処理を繰り返す制御は、本発明における「第2制御」に相当する。
ステップS205において、コントローラ51Aは、ハウジング2に発生している回転方向の加速度の大きさが「第2閾値」を超えるか否かを判断する。本実施の形態において、第2閾値は、2[G]であり、図10(b)において、Y[G]で示されている。なお、前記第2閾値は、キックバックの発生を判別するために適切な範囲にあればよく、例えば、2[G]よりも大きい値や小さい値とすることも可能である。第2閾値は、本発明における「第2閾値」の一例である。
ステップS205において、ハウジング2に発生している加速度の大きさが2[G]よりも小さいと判断する場合(ステップS205:NO)、コントローラ51Aは、モータ3の定速度制御を継続する。
ステップS205において、ハウジング2に発生している加速度の大きさが2[G]よりも大きいと判断する場合(ステップS205:YES)、コントローラ51Aは、続けてステップS206の処理を実行する。「ハウジング2に発生している加速度の大きさが2[G]よりも大きい」ことは、本発明における「第2条件」の一例である。
ステップS206において、コントローラ51Aは、回転子位置検出回路51Cから出力される回転位置信号に基づいて算出されるモータ3の回転軸31の回転数と、「第1閾値」とを比較する(ステップS206)。本実施の形態において、第1閾値は、5000[rpm]であり、図10(a)において、X[rpm]で示されている。第1閾値は、本発明における「第1閾値」の一例である。
ステップS206において、回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも大きいと判断する場合(ステップS206:No)、コントローラ51Aは、モータ3の定速度制御を継続し、以降、モータ3が停止するまでは、ステップS201~ステップS207の処理を繰り返し実行する。ステップS201~ステップS207の処理を繰り返し実行する制御は、本発明における「第1制御」の一例である。
ステップS206において、回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも小さいと判断する場合(ステップS105:YES)、コントローラ51Aは、キックバックが発生していると判断し、モータを停止する(ステップS208)。「回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも小さい」ことは、本発明における「第1条件」の一例である。
上述のように、第2の実施の形態においては、コントローラ51Aは、第1制御(ステップS201~ステップS207の処理を繰り返す制御)開始時からモータ3の駆動停止時まで継続してハウジング2に発生する回転方向の加速度が「ハウジング2に発生している加速度の大きさが2[G]よりも大きい」か否かを判断する。キックバックの発生時には、一般に、ハウジングに発生する回転方向の加速度が増大するのに遅れてモータの回転軸の回転数が減少するところ、このような構成によれば、加速度の変化を第1制御開始時から常に監視するため、好適にキックバックを検出しモータ3を停止させることができる。これにより、作業性を向上させることが可能となる。ステップS205は、本発明における「第1処理」に相当する。
また、コントローラ51Aは、ステップS205の実行を開始した後に、モータ3の駆動停止時まで継続して回転軸31の回転数が「回転軸31の回転数が5000[rpm]よりも小さい」か否かを判断する(ステップS206)。上述のように、キックバック発生時には、一般に、加速度が増大するのに遅れて回転数が減少するところ、このような構成によれば、ハウジング2に発生する回転方向の加速度に関する条件を満たすか否かを先に判断するため、制御部5の有するRAM等のデータ記憶領域を有効に活用することが可能となる。ステップS206は、本発明における「第2処理」に相当する。
次に、本実施形態にかかるハンマドリルの効果について、図10を参照しながら、説明する。
上述のように、本実施の形態では、キックバックが発生した場合において、つまり、先端工具P(出力部7)に所定値以上の負荷がかかった場合(言い換えると、前記モータ3に所定値以上の負荷がかかった場合)、ハンマドリル本体を把持する作業者の先端工具Pの被加工部材への押し付けが十分でなくクラッチ機構63がモータ3の回転力の伝達を遮断可能な所定のトルクがクラッチ機構63にかからない場合には、モータの駆動開始から90[ms]を経過した後に、実際にハウジング2に発生する回転方向の加速度と加速度閾値Y[G](本実施の形態においては、2[G])とを比較する。図10(b)の(iii)に示されているように実際の加速度が2[G]よりも大きい場合には、実際の回転軸31の回転数と回転数閾値X[rpm](本実施の形態においては、5000[rpm])とを比較する。そして、図10(a)の(iii)に示されているように、実際の回転数が5000[rpm]よりも小さい場合には、キックバックが発生しているものと判断して、モータ3の駆動を停止させる。
このように、本実施の形態においては、回転軸31の回転数に関する条件を満たすのと同時に、ハウジング2に発生する回転方向の加速度に関する条件を満たした場合にモータ3の駆動を停止させるように構成されているため、より精度よく、穴あけ作業時に発生するキックバックを検出し、モータ3の駆動を停止させることができる。これにより、作業性を向上させることが可能となる。
また、回転数と加速度のそれぞれの条件を満たしたかどうかを示す回転数フラグ及び加速度フラグを用いることで、回転数フラグ及び加速度フラグのいずれもに、所定の値(例えば「1」)がセットされた場合に、モータを停止させるように構成されていてもよい。
本明細書においては、上記実施の形態を例に説明したが、本発明は上記実施の形態の各構成要素や各処理プロセスにおいて請求項に記載の範囲で種々の変更が可能であることは、当業者に理解されるところである。