JP7045138B2 - 油分混合水浄水システム - Google Patents

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Description

本発明は、油分混合水浄水システムに関する。
石油、石炭、ガス等の掘削において、主生産物とともに、塩の水溶液と油分との混合物である随伴水が産出される。
在来型の油田及びガス田では、採掘が進むにつれて油ガス田が老化して行くため、該老化に伴って概ね以下のような採掘態様を採る。
先ず、採掘初期においては、石油又はガスのみが地中圧によって自噴する。次いで、油ガス田の老化に伴って、油ガスとともに、地下水等が随伴水となって産出されるようになる。さらに老化して油ガスの自噴ができなくなると、油ガス田に水又は海水を注入して地中圧を増加させて油ガスを噴出させる方法が採られる。この最終段階においては、油ガス田の老化時以上に随伴水が産出されることになる。
近年のシェール油ガス田においては、油ガスを生産する時に、地盤を水圧破壊するためのフラッキング水を注入する。従って、油ガスの生産時には、この注入水が随伴水となって同時に産出される。
これらの随伴水は、油分、塩分等が多く含まれているため、油ガスの生産時に、これらの随伴水を例えば再利用又は廃棄するに際しては、効率よく高い精度で水相と油相とに分け、且つ水相から塩分を除去することが求められている。
随伴水は、先ず重力分離によって、油相と水相とに分けられる。油相は回収され、精製工程に組み入れられる。しかし、水相は、相当量の塩とともに少量の油分をさらに含むから、再利用又は廃棄するためにはさらなる精製を要する。特に、海上油田掘削のためのプラットホーム及び掘削船において、不要の水相を海中投棄する際には、厳しい環境基準が課せられている。また、精製水を飲料水・生活水として使用する場合には、極めて高度の精製が必要となる。
重力分離した後の水相を精製するには、先ず水相中に混入している油分を除去する油分分離工程と、油分が除去された水相からさらに溶解物(例えば無機塩)を除去する溶解物分離工程とからなる2段階の方法が採用されている。
前記油分分離工程においては、高分子凝集剤によって油分を捕捉する方法が採用されており、通常はさらに、コアレッサーによる精製が併用されている。高分子凝集剤によって捕捉された油分は、高分子凝集剤とともに廃棄される。この方法によると、回収油の利用が不可能となること、高分子凝集剤コスト及び廃棄コストが発生することの他、精製の程度が不十分であって精製水が有意量の油分を含有するとの問題がある。
前記溶解物分離工程においては、例えば逆浸透膜法等の方法が採用されている。これらの方法は、水に溶解した塩を除去するには極めて有効な方法である。
しかしながら、逆浸透膜法において、被処理水の塩濃度が高くなると精製処理に要する機械的な圧力が増大し、精製が困難になる。被処理水から精製水を得る際、非処理水は精製の進行に伴い濃縮されるため、逆浸透膜法による精製水の回収率には限りがある。
精製水の回収率を高めるために、前記溶解物分離工程においては、濃縮限界の高い蒸留法、膜蒸留法等がより有効である。これらの方法では、溶解物分離工程における処理速度は塩濃度に影響を受け難い。
一方で、蒸留法又は膜蒸留法において、被処理水として油分を含む水を供給すると、問題を生じることがある。特に膜蒸留法においては、油分を含む水が供給されると、膜蒸留法に用いられる疎水性多孔質膜へ油分が付着し、細孔内を通り水が精製水側へ漏液する原因となる。膜の耐久性が損なわれ、或いは精製性能が損なわれる等の問題が発生する場合がある。
上記の問題を生じさせないためには、油分分離工程後の水に少量混入した油分を除去したうえで、溶解物分離工程に供することが有効である。
従って、通常は、油水分離後、溶解物分離前に、残留油分を除去する前処理が行われる。この前処理は、フィルターの目詰まりを避ける目的で、以下のような多段階で行われることが多い。
油水分離後の処理水を、先ずはコアレッサー等で処理して、残留油分の大部分を除いた後、好ましくは中空糸状のMF(マイクロフィルター)及び好ましくは中空糸状のUF(ウルトラフィルター)をこの順に使用する処理が行われる。
このような多段階からなる前処理を、1段階で行うことができれば、プロセス上もコスト上も非常に有用である。また、これらの処理によって除去された油分を回収して再利用することは困難である。
そこで、随伴水を重力分離した後の水相から、残留油分を安価且つ効率的に除去することができ、願わくは除去した油分を回収・再利用できる手段が望まれている。特に、海上プラットホーム及び船上においては、使用可能なエネルギー資源が限られているから、稼働のために自然力以外のエネルギーを使用しないこと、或いは少なくとも極力省力化することが好ましい。
上記のような油水分離方法と、溶解物分離方法とを組み合わせた浄水方法があれば、随伴水等の油分混合水から有価物の回収、造水、廃水減容を一挙に行うことが可能になるため、極めて有用である。
特開2014-184398号公報 特開2013-185127号公報 国際公開第2016/006670号 特開2014-128764号公報
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものである。従って本発明の目的は、油分が混入した油分混合水から、安価且つ効率的に油分を分離除去してろ液を得たうえ、得られたろ液に溶解している油分及び塩をも高精度で除去することができ、好ましくは除去した油分を回収・再利用でき、溶解物が除去された精製水を製造する手段を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、以下に要約される技術により、上記目的が達成されることを見出した。
本発明は以下のとおりである。
(1) 少なくとも、
ぬれ張力25.4mN/cm以下の不織布を有する油水分離フィルターにより被処理液をろ過するろ過部と、
前記ろ過部で得られたろ液を蒸留する蒸留部と、
を有することを特徴とする、浄水装置。
(2) 前記不織布が親水化処理された不織布である、(1)に記載の浄水装置。
(3) 前記親水化処理が、
スルホン化処理、並びに
アクリル酸、メタクリル酸、ポリメチルピロリジノン、ポリアルキレングリコール、及びポリエーテルから成る群より選択される1種以上のモノマーによるグラフト化処理
より成る群から選択される1種以上の処理である、(2)に記載の浄水装置。
(4) 前記不織布を水含浸した後のヘキサデカン接触角が5°以上である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(5) 前記不織布の、
目付けが1~500g/mであり、
繊維の太さが0.1~50μmであり、
孔径が0.1~120μmであり、そして
厚みが0.1~5μmである、
(1)~(4)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(6) 前記ろ過部が、
被処理液とろ液とが前記油水分離フィルターを介して隣接し、
前記被処理液の液面を前記ろ液の液面よりも高く維持しつつ、前記被処理液をろ過する機能を有する、(1)~(5)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(7) 前記蒸留部が膜蒸留システムである、(1)~(6)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(8) 前記膜蒸留システムが、
ろ液が存在する液相部1と、気相部1とが疎水性多孔質膜を介して隣接するろ液蒸発部、
冷却水が流通する液相部2と、気相部2とが冷却体を介して隣接する回収部、及び
前記気相部1と前記気相部2とを連結する気相部3
を備える膜蒸留システムであり、
前記気相部1~3が、1kPa以上ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の圧力を有する、(7)に記載の浄水装置。
(9) 前記気相部1及び疎水性多孔質膜が、前記液相部1内に浸漬されている、(8)に記載の浄水装置。
(10) 前記疎水性多孔質膜と前記冷却体との最短距離が10mm以上である、(8)又は(9)に記載の浄水装置。
(11) 前記ろ液温度が50℃以上である、(8)~(10)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(12) 前記疎水性多孔質膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、(8)~(11)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(13) 前記疎水性多孔質膜が中空糸膜である、(8)~(12)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(14) 前記疎水性多孔質膜が、ろ液に接する膜表面の表面開孔率が20%以上であり、かつ、空気透過係数が7.0×10-7/m・sec・Pa以上である、(8)~(13)のいずれか一項に記載の浄水装置。
(15) 前記疎水性多孔質膜が、平均孔径0.15μm以上、かつ、空隙率60%以上である、(8)~(14)のいずれか一項に記載の浄水装置。
本発明によれば、油分及び塩を含有する油分混合水から、安価且つ効率的に油分及び塩を除去することができる。本発明の好ましい態様によると、除去した油分を回収・再利用することができ、さらに、油分を除去した精製水を、好ましくは長時間にわたって製造する手段が提供される。
本発明によると、油分混合水を直接膜蒸留システムによって精製する場合に比べ、膜蒸留システムの運転寿命を延ばすことができる。
膜蒸留法の方式を示す模式図である。図1(a)はDCMD法、(b)はAGMD法、(c)はVMD法、(d)はSGMD法を示す。 本発明における膜蒸留システムの一形態を説明するための模式図である。 本発明における膜蒸留システムの別の一形態を説明するための模式図である。 本発明における膜蒸留システムのさらに別の一形態を説明するための模式図である。 本発明における膜蒸留システムのさらに別の一形態を説明するための模式図である。 本発明における膜蒸留システムのさらに別の一形態を説明するための模式図である。 本発明におけるろ過部の一態様を説明するための概略断面図である。 実施例1及び比較例1において膜蒸留を行った際の、精製水の導電率の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の浄水システムは、少なくとも、油水分離フィルターにより被処理液をろ過するろ過部と、前記ろ過部で得られたろ液を蒸留する蒸留部と、を有する。これら以外に、例えば、砂、岩等を分離するための固相分離手段;磁性体を分離するためのマグネチック手段;等を、さらに有していてもよい。
<<被処理液>>
本実施形態のシステムに適用される被処理液は、油分を含有する油分混合水である。本発明の効果を最大限に発揮するためには、油分と塩とを含有する油水混合液であることが望ましい。油分混合水として具体的には、例えば、油分を含む産業排水、石油及び天然ガスの生産時に排出される随伴水等を挙げることができる。
本明細書における石油の概念には、従来の油田から採掘される石油等の在来型石油に加え、例えば、シェールオイル、オイルサンド、合成石油、派生合成石油、石炭液化物等に代表される非在来型石油も含まれる。本明細書における天然ガスの概念には、従来のガス田から得られるガス等の在来型ガスに加え、例えば、シェールガス、コールベッドメタン(別名:コールシームガス)、タイトサンドガス、メタンハイドレート等に代表される非在来型ガスも含まれる。
本実施形態のシステムに適用される被処理液における油分の含量は、飽和溶解量を超えていてよく、静置によって油水二層に分離する程度の高濃度であってよい。被処理液中の塩濃度は、飽和溶解量以下であって完全に溶解している状態でもよいし、飽和溶解量を超えて一部の析出している状態であってもよい。
本実施形態のシステムは、このように油分及び塩の少なくとも一方を極めて高濃度で含有する油分混合水の浄化にも好適に適用することができる利点を有する。
<<ろ過部>>
本実施形態の浄水装置におけるろ過部は、油水分離フィルターによって被処理液をろ過する機能を有する。
<油水分離フィルター>
油水分離フィルターは、ぬれ張力25.4mN/m以下の不織布から成る。この不織布は、水含浸した後のヘキサデカン接触角が5°以上であることが好ましい。
前記不織布の材質としては、例えば、アラミド、セルロース、ガラス、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリオレフィン、レーヨン、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート等を挙げることができる。これらのうち、本実施形態において好ましく行われる親水化処理によって、親水性(及び撥油性)の程度を任意にコントロールし得る観点から、ポリアミド、ポリエステル、及びポリオレフィンから選択される材料から成る不織布が好ましく、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びEVA(エチレン/酢酸ビニル共重合体)より成る群から選択される1種以上の材料から成る不織布がより好ましい。特に好ましい材料は、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレートである。
前記不織布は、親水化処理された親水化不織布であることが好ましい。親水化不織布は基体(A)を親水化処理することによって製造することができる。
[基体(A)]
基体(A)として用いられる不飾布は、親水化処理の容易性及び基材自体の親水性の観点から、ナイロン6、ナイロン66、PET、又はPBTからなる不飾布であることが好ましい。
基体(A)として用いられる不織布は、緻密な平均孔径及び低い流量抵抗を有することが好適である。そのため、該不織布は、高い空隙率を有しながら、小さな平均孔径のものが好ましい。
基体(A)の空隙率は、50%より小さくなると流量抵抗が大きくなり、閉塞し易くなって、寿命が短くなるため、好ましくない。一方でこの空隙率が90%より大きくなると、強度及び形状保持の面で問題がある他、平均孔径のばらつきが大きくなり、好ましくない。基体(A)の空隙率の特に好ましい範囲は60~85%である。基体(A)の好ましい平均孔径は50μm以下である。
好ましくは、平均繊維径0.1~10μm、目付10~500g/m、空隙率60~90%の不飾布を使用し、その厚み、通気度等を適宜に調整することにより、目的の平均孔径及び流量抵抗を有する基体(A)を得ることができる。不織布の平均孔径を緻密にする(小さくする)方法としては、例えば、「目付を大きくすること」、「空隙を小さくすること」、若しくは「構成される繊維径を小さくすること」、又はこれらのうちの2つ以上を組み合わせる方法等が挙げられる。
不織布の製造法は特に限定されない。しかしながら、繊維径10μm以下の短繊維を用いて、例えば、抄造法、エアーレイド法、カード法等によってウェブ化した後、柱状流法(スパンレース法)による水交絡、熱気体による交絡、熱及び圧力によるロール圧着法等によって、不織布を製造することができる。上記繊維径10μm以下の短繊維は、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法の割繊、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法等によって製造することができる他、市販品を使用してもよい。
基体(A)として使用される不織布は、メルトブロー法によって製造されたものが好ましい。メルトブロー法によって製造された不織布は、例えば以下:
(1)繊維径が細い、
(2)繊維間の最大平均孔径が小さい、
(3)不織布の平均孔径のばらつきが少ない、
(4)繊維表面積が大きい、
(5)ソフトでしんなり感(ドレープ性)がある
等の利点を有し、基体(A)として好適に用いることができる。該不飾布は、上記(1)~(3)の特性によって安定したろ過性能を発揮することができ、(4)の特定によって大きな処理面積を提供することができる。
メルトブロー法においては、ノズルから吐出された溶融樹脂が、紡糸ガス又は重力による牽引を受けて細繊化され、コレクターに設けられた吸引ファンによってコレクターネット上に集積された糸群をロール圧着することにより、不織布を形成することができる。
基体(A)は、単層の不織布から成っていてもよいし、多層の不織布から成っていてもよい。基体(A)が多層の不織布から成る場合には、基体(A)の強度を発揮するための補強層と、高い透水量を発揮するための分離層と、から成り、各層で機能を分担してもよい。前記補強層は、例えば、目付が低く、強度の高い樹脂から成る層であることができる。前記分離層の厚みは、0.1~5mmであることが好ましい。分離層として厚み0.1mm以上の不織布を使用することにより、効率的な油水分離が担保される。一方で、分離層の厚みを5mm以下とすることにより、単位時間あたりの透水量を多くすることができ、油水分離のプロセス時間が短縮される。分離層を構成する不織布の厚みは、好ましくは0.2~3mmであり、より好ましくは0.5~2mmである。分離層として、前記範囲よりも薄い不織布の2枚以上を重ねて使用し、前記範囲の厚みとした場合も、本発明における好ましい態様に包含される。
基体(A)として使用される不織布の目付けは、1~500g/mであることが好ましい。本明細書における「目付け」とは、不織布の単位面積あたりの質量をいう。この目付けが前記の範囲内であることにより、油水分離効率及び透水量の双方が高くなり、好ましい。目付けは、10~250g/mであることがより好ましく、50~150g/mであることがさらに好ましい。不織布の2枚以上を重ねて使用する場合には、この目付けとは、各層の目付の合計値を意味する。
基体(A)として使用される不織布は、繊維の太さが0.1~10μmであることが好ましい。該不織布を構成する繊維の太さが0.1μm以上であることにより、好ましくは親水化処理された不織布の繊維表面が、供給される油分混合水と接触する面積を有意に高く確保することができる。一方で、不織布の繊維の太さを10μm以下とすることにより、平均孔径を小さくしても、所望の透水量を得ることができる。従って、油水分離フィルターにおける基体(A)として上記範囲の太さの繊維から成る不織布を用いることにより、好適な油水分離能を発揮し得ることになる。不織布の繊維の太さは、より好ましくは0.1~7μmであり、さらに好ましくは0.2~5μmである。
基体(A)として使用される不織布は、平均孔径が0.1~20μmであることが好ましい。不織布における平均孔径が0.1μm以上であることにより、実質的な透水量を確保することができる。一方で、基体(A)として平均孔径が20μm以下である不織布を用いることにより、エマルジョン形態の油分をも透過させない性能が確実に付与されることとなる。不織布の平均孔径は、より好ましくは0.2~17μmであり、さらに好ましくは0.2~15μmである。
以上述べた理由により、基体(A)としては、
目付けが1~500g/mであり、
繊維の太さが0.1~10μmであり、そして
平均孔径が0.1~20μmである
不織布を使用することが、極めて好適である。
[親水化処理]
本実施形態の好ましい態様においては、上記のような基体(A)を親水化処理することにより、油水分離フィルターとして使用することができる。基体(A)を親水化処理することにより、材料の不織布に適当な親水性及び撥油性を付与することができる。
すなわち、親水化処理された不織布上に油分混合水が供給されたときに、水は該不織布に浸透して通過することができるが、油分は該不織布上に好ましくは油滴となって保持される。このような機構により、効率的な油水分離を行うことができることとなる。
本実施形態における親水化処理の方法としては、化学的処理及び物理的処理のどちらも行うことができる。
化学的処理としては、例えば、スルホン化処理、グラフト化処理、コーティング処理等を;物理的処理としては、例えば、表面粗化処理、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線処理、フレーム(火炎)処理等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、親水化の程度を所望の範囲に容易にコントロールし得ることから化学的処理が好ましい。
基体(A)の化学的親水化処理は、公知の方法によって行うことができる。例えば、スルホン化処理は、基体(A)を硫酸又はその水溶液中に浸漬する方法により、行うことができる。グラフト化処理は、基体(A)の不織布を構成するポリマーの主鎖に対して、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ポリメチルピロリジノン、ポリアルキレングリコール、及びポリエーテルより成る群から選択される1種以上のモノマー(又はマクロモノマー)のグラフト重合を行うことにより、実施することができる。このグラフト重合は、例えば、基体(A)を、所望のモノマー又はモノマー混合物と、適当な重合開始剤と、を含有するグラフト処理溶液中に浸漬し、必要に応じて、加熱、放射線(例えば紫外線、マイクロ波、電子線等)の照射等を施す方法によることができる。コーティングは、環境問題の観点から、基体(A)上に非フッ素系の親水組成物を塗工する方法によることが、簡易に機能付与することができる点で好ましい。
[非フッ素系親水組成物]
以下、本実施形態における好ましい親水化処理の方法として、非フッ素系親水組成物を塗布する方法について説明する。
本実施形態における非フッ素系親水組成物は、
非フッ素系親水材料(B)と、
加水分解性ケイ素化合物(C)と、
分散媒と、
を含むものであることが、得られる油水分離フィルターの耐久性の観点から好ましい。好ましくはさらに金属酸化物(D)を含有する。(D)成分の金属酸化物とは、珪素酸化物を含む概念である。
(非フッ素系親水材料(B))
本実施形態における非フッ素系親水材料(B)は、非フッ素系の高分子から成る粒子であることが好ましい。
本実施形態における特に好ましい非フッ素系親水材料(B)は、加水分解性珪素化合物又はその加水分解縮合物(b1成分)と、親水性官能基を含む高分子(b2成分)と、を含有する。b1成分の少なくとも一部は、b2成分中に共重合成分として取り込まれた形態で存在してもよい。このような材料は、b1成分の存在下にb2成分の合成を行うことにより、得ることができる。
b1成分:加水分解性珪素化合物
本実施形態におけるb1成分としては、下記式(i)で表される加水分解性珪素化合物(h1)、下記式(ii)で表される加水分解性珪素化合物(h2)、下記式(iii)で表される加水分解性珪素化合物(h3)、及びその他の加水分解性珪素化合物(h4)からなる群より選ばれる1種以上、並びにこれらの加水分解縮合物から選択されることができる。
SiX4-n ・・・(i)
式(i)中、Rは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基から選択されるいずれかを示し、ただし前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基は、それぞれ、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を有していてもよく;
Xは、加水分解性基を示し;そして
nは0~3の整数である。
Si-R -SiX ・・・(ii)
式(ii)中、Xは加水分解性基を示し;
は、炭素数1~6のアルキレン基、又はフェニレン基を示し;そして
nは0又は1である。
-(O-Si(OR-OR ・・・(iii)
式(iii)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基を示し;そして
nは2~8の整数である。
式(i)及び(ii)中の加水分解性基としては、加水分解により水酸基が生じる基であれば、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基等が挙げられる。
加水分解性珪素化合物(h1)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン等を挙げることができる。
加水分解性珪素化合物(h2)としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。
加水分解性珪素化合物(h3)としては、例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、コルコート社製の商品名「MSI51」、三菱化学社製の「MS51」、同「MS56」)、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(多摩化学工業社製の商品名「シリケート35」、同「シリケート45」、コルコート社製の商品名「ESI40」、同「ESI48」)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(多摩化学工業社製の商品名「FR-3」、コルコート社製の商品名「EMSi48」)等が挙げられる。
加水分解性珪素化合物(h4)としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。
上記の加水分解性珪素化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの加水分解性珪素化合物は、好ましくは加水分解縮合された状態で非フッ素系親水材料(B)に取り込まれることとなる。
b2成分:親水性官能基を含む高分子
本実施形態におけるb2成分は、好ましくは、ビニル単量体の重合体又は共重合体である。
このb2成分は、不飽和結合を有するビニル単量体成分を、ラジカル、カチオン、又はアニオン活性種によって重合することにより得られる、フッ素原子を含まないエマルジョン粒子である。該エマルジョン粒子は、少なくとも親水性官能基を含む高分子から成る。例えば、アクリルエマルジョン粒子、スチレンエマルジョン粒子、アクリルスチレンエマルジョン粒子、アクリルシリコンエマルジョン粒子、シリコンエマルジョン粒子、ウレタン樹脂エマルジョン粒子等が挙げられる。
このb2成分の合成を上記b1成分の共存下に行うことにより、本実施形態における非フッ素系親水材料(B)を得ることができる。
b2成分を合成するためのビニル単量体成分としては、例えば、
水酸基を有するビニル単量体、
カルボキシル基を有するビニル単量体、
アミノ基を有するビニル単量体、
エーテル基を有するビニル単量体、
アミド基を有するビニル単量体、
エポキシ基を有するビニル単量体、
スルホン酸基を有するビニル単量体、及び
上記の官能基のいずれも有さないビニル単量体
を例示することができる。このような単量体から合成されたb2成分を用いることにより、得られる非フッ素系親水材料(B)の親水性をより高めることができる。
水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;
2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類;
ポリエチレングリコールに代表される種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル;
上述の各種の水酸基含有単量体類とε-カプロラクトンに代表される種々のラクトン類との付加物;
グリシジル(メタ)アクリレートに代表される種々のエポキシ基含有不飽和単量体と酢酸に代表される種々の酸類との付加物;
(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸類と「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)に代表されるα-オレフィンのエポキシド以外の種々のモノエポキシ化合物との付加物;
等が挙げられる。
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ-n-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ-n-ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と飽和1価アルコール類とのモノエステル(ハーフエステル);
アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル等の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル;
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸のような各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と上述の各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;
上述の各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応して得られる単量体;
等が挙げられる。
アミノ基を有するビニル単量体としては、例えば、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン等の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン等の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体;
N-(2-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジ-n-プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-(4-ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド、N-[2-(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリン等の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド;
N-(2-ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(2-ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(2-ジ-n-プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(3-ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド、N-(4-ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミド等の3級アミノ基含有クロトン酸アミド;
2-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2-ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3-ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、4-ジメチルアミノブチルビニルエーテル等の3級アミノ基含有ビニルエーテル;
等が挙げられる。
エーテル基を有するビニル単量体としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体等の、ポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル、アリルエーテル、又は(メタ)アクリル酸エステルのビニル単量体;
等が挙げられる。エーテル基を有するビニル単量体としては、市販品を用いてもよい。エーテル基を有するビニル単量体の市販品としては、例えば、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(以上、日本油脂社製、商品名)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(以上、日本乳化剤社製、商品名)等が挙げられる。
ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位の数は2~30が好ましい。この数が2未満では、得られる油水分離フィルターの柔軟性が不十分になる傾向があり、30を超えると、油水分離フィルターが過度に軟らかくなり、耐ブロッキング性に劣る傾向にある。
アミド基を有するビニル単量体としては、例えば、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。具体的には、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等である。
エポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、グリシジル基含有ビニル単量体等が挙げられる。グリシジル基含有ビニル単量体の具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
スルホン酸基を有するビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸等を挙げることができる。
上記の官能基のいずれも有さないビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のメタアクリル酸アルキルエステル;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;
等を挙げることができる。
b2成分における各ビニル単量体の共重合割合の推奨範囲は、b2成分の全量を100質量%とした場合に、それぞれ、以下のとおりである。
水酸基を有するビニル単量体:好ましくは0.01質量%~50質量%、より好ましくは0.1質量%~20質量%
カルボキシル基を有するビニル単量体:好ましくは0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%
アミノ基を有するビニル単量体:好ましくは0.01質量%~50質量%、より好ましくは0.1質量%~20質量%
エーテル基を有するビニル単量体:好ましくは20質量%~70質量%、より好ましくは40質量%~60質量%
アミド基を有するビニル単量体:好ましくは30質量%~80質量%、より好ましくは45質量%~65質量%
エポキシ基を有するビニル単量体:好ましくは0.01質量%~50質量%、より好ましくは0.05質量%~20質量%
スルホン酸基を有するビニル単量体:好ましくは0.01質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%
上記の官能基のいずれも有さないビニル単量体:好ましくは20質量%~70質量%、より好ましくは40質量%~60質量%
本実施形態における好ましい非フッ素系親水材料(B)は、上記ビニル単量体の重合又は共重合を上記b1成分の共存下に行うことにより、得ることができる。この場合のb1成分の使用割合は、b2成分の合成に使用するビニル単量体の合計100質量部に対して、10質量部~100質量部とすることが好ましく、30質量部~80質量部とすることがより好ましく、さらに50質量部~60質量部とすることが好ましい。
ビニル単量体の重合又は共重合は、活性種としてラジカル、カチオン、又はアニオンを用いる公知の方法によって行うことができる。
本実施形態における非フッ素系親水組成物中の非フッ素系親水材料(B)としては、上記のようにして得られる重合体又は共重合体以外にも、例えば、
アニオン型ポリウレタン粒子として第一工業製薬社製のスーパーフレックス126、130、150、170、210、300、420、460、470、740、800、860等;及びDMS社製のNeoRez R-9660、R-972、R-9637、R-9679、R-989、R-2150、R-966、R-967、R-9603、R-940、R-9403等;
非イオン型ポリウレタン粒子として第一工業製薬社製のスーパーフレックス500M、E2000、E4800等;
カチオン型ポリウレタン粒子として第一工業製薬社製のスーパーフレックス620、650等
を使用してもよい。
本実施形態における非フッ素系親水組成物に含有される非フッ素系親水材料(B)は、粒子状であることが好ましく、該粒子の水分散状態における数平均粒子径は、10nm~800nmであることが好ましい。この数平均粒子径は、本実施形態における油水分離フィルターの耐久性向上の観点から、10nm~100nmであることがより好ましい。
(B)成分の数平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(加水分解性ケイ素化合物(C))
本実施形態における非フッ素系親水組成物に含有される加水分解性ケイ素化合物(C)としては、非フッ素系親水材料(B)に含まれるb1成分と同じものを使用することができる他、
信越化学社製の、商品名「KBE-402」、「KBM-803」、「KBM-802」、「KBE-403」、「KBM-303」、「KBM-1403」、「KBM-9659」、「KBM-585」、「KBM-846」、「KBM-9007」等の各種シランカップリング剤を使用してもよい。
加水分解性ケイ素化合物(C)は、その一部又は全部が、加水分解縮合された状態で、本実施形態における非フッ素系親水組成物に含有されてよい。
加水分解性ケイ素化合物(C)が加水分解縮合物として非フッ素系親水組成物に含有される場合、そのポリスチレン換算の重量平均分子量として、好ましくは5,000~85,000であり、より好ましくは8,000~80,000であり、さらに好ましくは10,000~50,000である。この重量平均分子量が5,000より小さいと、油水分離フィルターの親水性が劣る場合があり、85,000を超えると、油水分離フィルターにおける塗膜が脆くなり、剥離し易くなる場合がある。
上記重量分子量は、例えば、東ソー社製のGPC装置「HLC-8220GPC」を用いて、以下の条件で測定することができる。
カラム:TSKgel superAWM-H
溶離液:DMF(LiBr 5mmol/L)
試料量50μl(1mg/ml)
検出器:RI
検量線:標準ポリスチレン試料を用いて作成
(金属酸化物粒子(D))
本実施形態における非フッ素系親水組成物は、上記(B)成分及び(C)成分とともに、金属酸化物粒子(D)を含んでいてもよく、これを含むことが好ましい。本明細書における金属酸化物とは、珪素酸化物を包含する概念である。
(D)成分の数平均粒子径は、1nm~400nmであることが好ましく、より好ましくは1nm~100nm、さらに好ましくは3nm~80nm、特に好ましくは5nm~50nmである。この粒子径は、非フッ素系親水組成物中に含有される状態の粒子の数平均粒子径を意味し、得られた組成物についての測定値である。粒子は、一次粒子及び二次粒子の混合物である場合と、一次粒子及び二次粒子のいずれか一方のみの場合とがあり、これらのうちのどちらでもよい。(D)成分の数平均粒子径を上記範囲とすることにより、本実施形態の親水性と撥油性の両立に寄与し得る。
数平均粒子径(以下、単に「粒子径」と略記することがある。)は、透過型顕微鏡により測定できる。粒子が100個~200個写るように調整して透過型顕微鏡写真を撮影し、得られた画像中の粒子からランダムに選んだ10個~20個程度の粒子について長径及び短径を測定し、それら全部の平均値((長径の合計+短径の合計)/(測定粒子数×2))を数平均粒子径として採用する。
(D)成分を構成する金属酸化物は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。しかし、上述した(B)成分との相互作用をより高くする観点から、例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。これらの中でも、表面水酸基が多く、得られる油水分離フィルターの強度向上が望めるとの観点から、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、及び酸化アンチモン、並びにこれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
(D)成分の金属酸化物粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、粉体、分散液、ゾル等の存在形態で、非フッ素系親水組成物の調製に供されることが好ましい。
ここでいう「分散液」及び「ゾル」とは、(D)成分が、水、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒から成る分散媒中に、好ましくは0.01~80質量%、より好ましくは0.1~50質量%の濃度で、一次粒子及び二次粒子の少なくとも一方として分散された状態を意味する。
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、市販品として、例えば、日産化学工業社製のスノーテックス(商標)-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OL、ライトスター(商標);旭電化工業社製のアデライト(商標)AT-20Q;クラリアントジャパン社製のクレボゾール(商標)20H12、クレボゾール30CAL25等が挙げられる。
水を分散媒体とする塩基性のコロイダルシリカとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又はアミンの添加で安定化されたシリカ等が挙げられる。その市販品としては、例えば、日産化学工業社製のスノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-C、スノーテックス-C30、スノーテックス-CM40、スノーテックス-N、スノーテックス-N30、スノーテックス-K、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックス-ZL、スノーテックスPS-M、スノーテックスPS-L;旭電化工業社製のアデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50;ラリアントジャパン社製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50;デュポン社製のルドックス(商標)HS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスSM-30等が挙げられる。
親水性有機溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、市販品として、例えば、日産化学工業社製のMA-ST-M(数平均粒子径20nm~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(数平均粒子径10nm~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(数平均粒子径10nm~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG-ST-ZL(数平均粒子径70nm~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(数平均粒子径10nm~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)等が挙げられる。
上述した各種コロイダルシリカは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(非フッ素系親水組成物中の各成分の使用割合)
上述した(D)成分の使用割合は、該(D)成分の(B)成分に対する質量比((D)/(B))として、親水性と強度の観点から、好ましくは50/100~10,000/100であり、より好ましくは110/100~1,000/100であり、さらに好ましくは150/100~300/100である。(D)成分の使用割合を上記の範囲とすることにより、得られる油水分離フィルターの親水性、撥油性、及び強度をより向上することができる。
(D)成分の使用割合は、該(D)成分の(C)成分に対する質量比((D)/(C))としては、好ましくは10/100~10,000/100であり、より好ましくは50/100~1,000/100であり、さらに好ましくは80/100~250/100である。(D)成分の(C)成分に対する使用割合をこの範囲とすることにより、得られる油水分離フィルターの親水性及び撥油性が強固となり、流水流でも親水性及び撥油性を維持できることとなり、耐エロージョン性を向上することができる。
非フッ素系親水組成物の固形分濃度は、10質量%以上90質量%以下に調整することが好ましく、30質量%以上70質量%以下に調整することがより好ましい。
[油水分離フィルターの製造]
本実施形態における油水分離フィルターは、上述した基体(A)に、非フッ素系親水組成物を塗布した後、好ましくは養生(エイジング)することによって製造することができる。
塗布方法としては、ディップ塗工法(浸漬法)、スプレー塗工法、グラビア塗工法等の適宜の方法を採用してよい。これらのうち、基体(A)を構成する不飾布の内部にまで組成物を浸透させることが可能なディップ塗工法又はスプレー塗工法が好ましい。
養生温度は、好ましくは20℃~200℃であり、より好ましくは40℃~150℃であり、さらに好ましくは50~90℃である。養生温度が200℃を超えると、基体(A)の劣化を誘発するおそれがあり、生産工程的にもエネルギーロスが大きい。養生温度が20℃未満の場合、油水分離フィルターの生産性が劣り、得られるフィルターにおいて、耐久性等の性能の発現にバラツキが生じる場合がある。
養生時間は、好ましくは1分~60分であり、より好ましくは5分~30分である。
組成物の目付け(塗工量)は、基体(A)の単位面積当たりの養生後の質量として、0.1g/m~20g/m~とすることが好ましく、より好ましくは0.25g/m~10g/mである。
[油水分離フィルターの特性]
本実施形態におけるろ過部における油水分離フィルターは、上記のような不織布(好ましくは親水化処理された不織布)から成る。
前記油水分離フィルターのぬれ張力は25.4mN/m以下である。このぬれ張力は、油水分離フィルターの親水性を示す指標であり、この値が低いほど親水性が高いこととなる。前記、油水分離フィルターにおける25.4mN/m以下のぬれ張力は、該油水分離フィルターの親水性が極めて高いことを意味する。このことにより、該油水分離フィルターは、実際上の使用に好適な、十分に大きい透水量を示すことができるのである。
油水分離フィルターのぬれ張力は、ぬれ張力試験用混合液を用いて調べることができる。ぬれ張力試験用混合液には、それぞれ、特定のぬれ張力の値が明記されており、試験片上に、ある特定の混合液が均一に塗布できれば、該試験片はその混合液に明記された値以下のぬれ張力を有することが分かる。従って、本発明における油水分離フィルターは、ぬれ張力値が25.4mN/mと明記されたぬれ張力試験用混合液を均一に塗布することができる。ぬれ張力が25.4mN/m以下であるか否かを調べるためのぬれ張力試験用混合液としては、例えば和光純薬工業(株)製の「ぬれ張力試験用混合液 No.25.4」等を挙げることができる。
前記油水分離フィルターは、これを十分に水含浸した後のヘキサデカン接触角が5°以上であることが好ましい。このヘキサデカン接触角の値が大きいほど、撥油性が高いこととなる。ヘキサデカン接触角が5°以上の油水分離フィルターを用いることにより、該油水分離フィルター上に供給される油水混合液から高い効率で油分をトラップすることができ、さらには、水相が透過した後に油分を回収・再利用することも可能となるのである。前記油水分離フィルターを十分に水含浸した後のヘキサデカン接触角は、より好ましくは10°以上であり、さらに好ましくは15°以上である。
十分に水含浸した後のヘキサデカン接触角は、接触角計を用いて測定できる。例えば、十分に水含浸した油水分離フィルターの表面にヘキサデカンの滴(1.0μL)を乗せ、25℃で10秒間静置した後、協和界面科学製CA-X150型接触角形を用いて接触角を測定することができる。
後述するように、本実施形態の油水分離フィルターは、少なくともその一部が被処理液に水没した状態で稼働することが好ましい。そのため該フィルターは、稼働状態において安定して水没可能であることが好ましい。この観点から、油水分離フィルターの比重は1を超えることが好ましい。従って、油水分離フィルターを構成する不織布は、好ましくは、ポリエステル、ガラス、又はポリアミドから成る。不織布がこれらの樹脂から構成されている場合、熱による融着が可能であるたり、通常のシールバー等の加熱装置を用いて袋状に製袋することが容易である点においても好ましい。
<ろ過部の構成>
本実施形態における浄水装置のろ過部は、上記のような油水分離フィルターによって上記の被処理液をろ過してろ水を与える機能を有する。
上記の機能を発現可能である限り、ろ過部の構造及び構成は、特に限定されない。
例えば、被処理液入口となる開口部の少なくとも1つと、ろ液出口となる開口部の少なくとも1つと、を備え、流体が前記入口から流入して前記出口から排出される構造を有する適当なハウジング内に、前記油水分離フィルターが配置された構造であることができる。ここで、前記入口から流入した被処理液は、前記油水分離フィルターを通過したろ液として、前記出口から排出される。本実施形態におけるろ過部は、油水分離フィルターの面以外には流体が流通可能な経路を持たないことが、油水分離の効率性の観点から好ましい。
前記被処理液入口及びろ液出口は、それぞれ、1個のみであってもよく、複数個から成っていてもよい。例えば、平面に1個又は複数個の孔を穿った場合、メッシュ状の筺体を用いる場合等も、本実施形態の範囲に包含される。
ろ過部ハウジングの形状としては、例えば、円筒状、多面体状、円盤状、球状、楕球状、チューブ状、スパイラル状等、およそ内部を流体が流通し得る形状であれば、制限なく採用することができる。
油水分離フィルターの形状としては、例えば、平膜型、袋型、プリーツ型、中空管状等であることができ、これらの1種以上から成る油水分離フィルターの複数がパッケージ化したカートリッジ型であっても構わない。これら油水分離フィルターの複数が多段に配置された態様も、好ましく採用することができる。この場合、前記入口から流入した被処理液は、複数の油水分離フィルターを通過したろ液として、前記出口から排出されることになる。これらのうちの1種又は2種以上をパッケージ化した油水分離フィルターカートリッジも好ましく使用することができる。
本実施形態におけるろ過部が複数の油水分離フィルターを具備する場合、各フィルターは同一種であってもよいし、各フィルターの種類が相違していてもよい。
本実施形態におけるろ過部としてより具体的には、例えば、以下のような形状を例示することができる:
両端が開口している円筒形状ハウジングの軸方向中央部付近に、前記円筒の軸方向に垂直に平膜状の油水分離フィルターを配置したシステム;
両端が開口している円筒形状ハウジングの軸方向中央部付近に、前記円筒の軸方向に垂直にプリーツ状の油水分離フィルターを配置したシステム;
一端が開口し、他端が閉塞されている円筒形状の胴体部分に1個又は複数の孔を有し、前記円筒の内面を覆うように袋状の油水分離フィルターを配置したシステム;
リング状保持具によって平面状に固定された油水分離フィルターを配管内部に設置する場合;
等、及びこれらの組み合わせ等。
油水の分離方式としては、例えば、自然ろ過(重力ろ過)、加圧ろ過、減圧ろ過、遠心ろ過等の、任意のろ過方式、又はこれに準じた方式を採用することができる。
しかしながら、油水分離の効率性を重視すると、自然ろ過の形式により分離することが好ましい。特に好ましくは、ろ過部が、
被処理液とろ液とが前記油水分離フィルターを介して隣接し、
前記被処理液の液面を前記ろ液の液面よりも高く維持しつつ、前記被処理液をろ過する機能を有する場合である。この場合、油水分離フィルターは少なくともその一部が液中に没することとなり、該油水分離フィルターを介して隣接する被処理水の液面とろ液の液面との高低差によって生じる重力差を駆動力として、自然ろ過によって油水を分離するのである。
被処理液の液面を前記ろ液の液面よりも高く維持するには、例えば、両水面の高さをモニターしつつ、被処理水の導入水圧もしくは導入量またはこれらの双方を調節する方法、処理液溜めの容量を調節する方法、被処理液入口もしくはろ液出口またはこれらの双方に弁を設けて移動水量を制御する方法等によることができる。
本実施形態の浄水システムにおけるろ過部は、被処理水中の液相と固相を分離するだけでなく、液相中の非相溶物質をも分離する。
随伴水等の処理においては、液相中の油相は重力分離により水から分離され、固相はろ過によって分離される。しかし、従来技術においては、水相、油相、及び固相を1つの装置で一気に分離できる方法が少なかった。従来技術におけるフィルターを用いて被処理水の無理矢理にろ過分離を行うと、該フィルター表面に油相を取り込んだ固相が固着してしまい、フィルターの目詰まりを生じて透水能力の著しい低下を来たすことが既知である。特に固相の粒子径が小さい場合の目詰まりは甚大であり、フィルター交換頻度が多くなり、或いはろ過による分離自体を断念することになる。
しかしながら、本実施形態においては、親水性の高い油水分離フィルターを用い、その少なくとも一部を水没した状態で稼働する。このことにより、油相及び固相は、フィルター近傍の被処理液中に浮遊することになる。従って、これらの油相及び固相がフィルター表面に付着することはなく、水相のみを優先的にフィルターろ過することが可能となるのである。
特に、本実施形態の方法は、少なくとも2種類以上の非相溶の物質からなる水相と、油相と、比重5g/cm以下の固相と、を含有する被処理水の浄水に有効である。被処理水中の各物質の密度が、油相<水相<固相の順である場合が好ましい。油水分離フィルターの少なくとも一部が安定して水没した状態で稼働可能とする観点から、該油水分離フィルター及び被処理水中の各物質の密度が、油相<水相<油水分離フィルター<固相であることがより好ましい。さらに好ましくは、以下のとおりである。
油相の比重:1g/cm以下
水相の比重:1g/cm~1.25g/cm
油水分離フィルターの比重:1g/cm~2g/cm
固相の比重:1g/cm~6g/cm
油水分離フィルターの少なくとも一部が水没した状態で安定して稼働させるために、被処理水の導入水圧若しくは水量又はこれらの双方によって生ずる重力差を利用してもよいし、油水分離フィルターに適当な錘を装着して使用してもよい。
本実施態様の浄水装置において、ろ過部に対する被処理水の供給量としては、油水分離フィルターの単位面積当たり、単位時間あたり、10~10,000L/(m・分)とすることが好ましく、50~5,000L/(m・分)とすることがより好ましい。この範囲の供給量とすることにより、高い分離効率と高い透水量とを両立することができる。
本実施態様の浄水装置におけるろ過部は、供給された被処理水のうちの水相のみを選択的に透過させて、油分及び固相が除去されたろ液を出力する。このとき、油水分離フィルターの親水性が高いこと、及び該フィルターの少なくとも一部が水没していることにより、油相及び細かい固相がフィルター表面に堆積することなく、ろ水の出力を安定的に行うことができる。
被処理液中の油相は油水分離フィルターにトラップされ、該フィルターを通過しない。フィルターにトラップされた油相は、油水分離フィルターの撥油性によって該フィルターには付着せず、被処理液側の面上に油滴となって捕捉される。この油滴は、被処水の分離処理量の増加に伴って、集合して油層を形成するから、これを回収・再利用することができる。このことは、本発明の有利な特徴の1つである。
図4に、本実施態様の浄水装置におけるろ過部の構成の一例を示した(断面図)。
図4のろ過部は、被処理液入口及びろ液出口を備え、矩形の断面形状を有するハウシングから成る槽中に、開口部と有する袋状に製袋された油分分離フィルターが設置された構成を有する。槽の内部は設置された袋状の油水分離フィルターによって、袋内部と袋外部とに2分される。
随伴水等の被処理液は、被処理液入口を通って、袋状の油水分離フィルターの開口部に供給され、フィルター袋の内部に被処理液溜めを形成する。被処理液溜め中の被処理液のうちの水相は、油水分離フィルターを通過したろ液となり、フィルター袋の外部の槽内にろ液溜めを形成する。ろ液出口の高さに至ったろ液が該出口から出力される。
このとき、被処理液溜めの液面の高さがろ液溜めの高さよりも高くなるように制御することによって、重力差による自然ろ過が可能となる。
運転開始前に、被処理液溜め及びろ液溜めの双方に、所望の液高さまで水を入れたうえで被処理液の供給を開始することも、本実施形態の好ましい態様の1つである。
本実施形態の浄水装置は、例えば、石油、石炭、ガス等の掘削において算出される随伴水の精製に好適に適用することができ、より好ましくは該随伴水に含有される油分の回収・再利用にも好適に適用される。
ここで、被処理水として供給される随伴水は、例えば、重力分離型式、コアレッサー型式等の公知の油分分離装置を用いて事前処理した後に、本実施形態におけるろ過部に供給することが、効率的な油水分離の観点から好ましい。この好ましい態様によると、例えば油分を40質量%程度含有する随伴水の場合であっても、油分量を100ppm程度に減ずることができる。
<<蒸留部>>
本実施形態におけるろ過部から出力されるろ液は、上記のとおり、油分量が可及的に低減されたものである。しかしながら、供給される被処理液が水溶性の塩を含有する場合、前記ろ過部はこの塩を有効に除去する能力を有するものではない。そして、前記随伴水は、通常、水溶性塩を含有する。
従って、(好ましくは公知の油分分離装置による事前処理の後に)前記ろ過部によって油分を除去されたろ液はさらに精製されることが好ましい。
本発明は、そこで、上記に説明したろ過部と蒸留部とを接続して成る浄水装置を提供するものである。この蒸留部は、ろ過部によって生成されたろ液を蒸留し、該ろ液から溶質を除去するため機能を有する。
本実施形態の浄水装置における蒸留部は、蒸留システム又は膜蒸留システムからなることが好ましい。蒸留システム及び膜蒸留システムとしては、それぞれ、公知の態様を採用することができる。
これらのうち、装置の単純性、及び精製水の純度が高いことから、膜蒸留システムを採用することが、特に好ましい。
<膜蒸留システム>
本実施態様における蒸留部としての膜蒸留システムは、少なくともろ液蒸発部と回収部とを備える。ろ液蒸発部は、高温に加熱されたろ液を気化して、該ろ液に含有される油分と分離された浄水の水蒸気を発生する機能を有し;回収部は、ろ液蒸発部において発生した水蒸気を回収する機能を有する。そして、前記ろ液蒸発部と回収部との間は、少なくとも1つの膜によって隔離され、回収された浄水と、油分を含むろ液との再接触を回避する。
本実施形態における膜蒸留システムの構成の例を、必要に応じて図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態に適用できる膜蒸留システムの方式を説明するための模式図を図1(a)~(d)に示した。
図1(a)の膜蒸留システムは、DCMD法(Direct Contact Membrane Distillation)である。DCMD法においては、
図左側の蒸発部において、処理液(本実施形態ではろ液、膜蒸留システムの説明において以下同じ)を高温に加熱して発生した水蒸気を、
疎水性多孔質膜1を通して図右側の回収部に移動させ、
該回収部において、低温水(冷却水)と接触させて液化し、該低温水中に取り込んで回収する。
図1(b)の膜蒸留システムは、AGMD法(Air Gap Membrane Distillation)である。AGMD法においては、疎水性多孔質膜1の他に冷却体2を備え、両者の間に気相部(気相部3)を設けた構造を有する。この方式の膜蒸留システムにおいては、
図左側の蒸発部において、処理液を高温に加熱して発生した水蒸気を、
疎水性多孔質膜1を通して図中央の気相部3に移動させ、
図右側の回収部において、低温水によって冷却された冷却体2の面上に該水蒸気を凝縮させて液化した浄水を回収する。ここで、冷却体2は、熱伝導率が高く、水蒸気を通さない材料から成ることが好ましい。冷却体2として、例えば金属性の冷却板を例示することができ、好ましくはアルミニウム板又はステンレス板である。
図1(c)の膜蒸留システムは、VMD法(Vacuum Membrane Distillation)である。VMD法においては、
図右側の蒸発部において、処理液を高温に加熱して発生した水蒸気を、
疎水性多孔質膜1を通して図右側の回収部に移動させ、
該回収部に真空または減圧を印加することにより、移動した水蒸気を液化させずにシステム外部に取り出したうえで、浄水として回収する。
図1(d)の膜蒸留システムは、SGMD法(Sweeping Gas Membrane Distillation)である。SGMD法は、図1(c)に示したVMD法において、回収部に真空または減圧を印加する代わりにスイーピングガスを流すことにより、該回収部に移動した水蒸気を液化させずにシステム外部に取り出したうえで、浄水として回収する方式である。スイーピングガスとしては、水に対して不活性で、沸点が水より低いガスが好適であり、具体的には例えば、乾燥空気、窒素等を使用することが好ましい。
膜蒸留システムにおける蒸留回収手段としては、浄水の要求水質、要求造水量に応じて、DCMD法、AGMD法、VMD法、及びSGMD法のいずれかを使用することが望ましい。
本実施形態の浄水装置において好ましく採用される蒸留部の具体的な仕様について、蒸留回収手段としてVMD法を用いる場合を例として以下に説明する。
本実施形態の浄水装置における蒸留部は、少なくとも、
ろ液が存在する液相部1、及び該液相部1と接する疎水性多孔質膜から成るろ液蒸発部と、
冷却水が流通する液相部2、及び該液相部2と隣接する冷却体から成る回収部と、
前記ろ液蒸発部と前記回収部とを連結する気相部3と、
を備える膜蒸留システムであることが好ましい。
より好ましくは、
上記ろ液蒸発部において、疎水性多孔質膜の液相部1とは反対側に気相部1をさらに有し、
上記回収部において、冷却体の液相部2とは反対側に気相部2をさらに有し、そして
前記気相部1と前記気相部2とが気相部3によって連結されている場合である。この後者の態様は、換言すると、
ろ液が存在する液相部1と、気相部1とが疎水性多孔質膜を介して隣接するろ液蒸発部、
冷却水が流通する液相部2と、気相部2とが冷却体を介して隣接する回収部、及び
前記気相部1と前記気相部2とを連結する気相部3
を備える膜蒸留システム、と表現することが可能である。
[疎水性多孔質膜]
本実施形態の蒸留部に使用される疎水性多孔質膜としては、従来公知の方法により製造され、疎水性高分子を主なる構成成分として成る多孔質膜であれば、特に限定されない。疎水性高分子を主たる構成成分とするとは、疎水性多孔質膜を構成する材料の全質量に対して、疎水性高分子を90質量%以上含むことをいう。疎水性多孔質膜を構成する材料の全質量に対する疎水性高分子の含有割合は、膜の強度を高くするとの観点から、95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
疎水性高分子としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
疎水性多孔質膜の形状は、例えば、平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型等が挙げられる。膜モジュールをコンパクトにする観点で、単位体積当たりの膜面積を大きくとれる中空糸膜が好ましい。
本実施形態の疎水性多孔質膜は、ろ液と接する膜表面の表面開孔率が20%以上であることが好ましい。該膜は、被処理水と接する膜表面の空気透過係数が、7.0×10-7/m・sec・Pa以上であることが好ましい。
前記ろ液と接する膜表面の表面開孔率及び空気透過係数が上記の範囲の膜を用いることにより、蒸発効率及び水蒸気透過速度の双方を高めることができ、Fluxを著しく増大することができる。ろ液と接する膜表面の表面開孔率が高いことによって蒸発効率が高くなると考えられる。空気透過係数が高い膜を使用することにより、水蒸気透過速度が高くなると考えられる。
本実施形態において、疎水性多孔質膜の前記ろ液と接する膜表面の表面開孔率は、電子顕微鏡の画像を画像解析処理ソフトで解析することにより測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法によることができる。
膜の水蒸気透過速度を高めるためには、膜構造が全体的に疎で均質な構造であることが好適であると考えられる。ろ液と接する膜表面とは反対側の膜表面(反対面)の表面開孔率が、ろ液と接する膜表面の表面開孔率に近似していると、膜構造全体が均質な構造であると考えられる。従って、ろ液と接する膜表面の表面開孔率が上記の範囲であるとともに、反対面の表面開孔率が高いことは、水蒸気透過速度をより高くするとの観点から好適である。
具体的には、本実施形態における疎水性多孔質膜は、ろ液と接する膜表面の表面開孔率が20%以上であることに加えて、反対面の表面開孔率は20%以上であることが好ましい。膜の機械的強度を高くする観点、及び減圧下使用の際の漏水防止の観点から、反対面の表面開孔率は、70%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。この反対面の表面開孔率は、20%以上70%以下であることが好適である。反対面の表面開孔率は、上記ろ液と接する面の表面開口率と同様にして測定することができる。
本実施形態における膜蒸留の際の透水性能を良好とする観点から、疎水性多孔質膜の空気透過係数は、7.0×10-7/m・sec・Pa以上であることが好ましい。膜の機械的強度を高くする観点、及び減圧下使用の際の漏水防止の観点からは、疎水性多孔質膜の空気透過係数は、1.0×10-5/m・sec・Pa以下であることが好ましく、3.2×10-6/m・sec・Pa以下であることがより好ましい。
本実施形態において、疎水性多孔質膜の空気透過係数は、疎水性多孔質膜の反対面に一定圧力の空気を加圧し、ろ液と接する膜表面から透過した空気透過量を、石鹸膜流量計を用いて測定することにより、知ることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法を参照して行うことができる。
本実施形態における疎水性多孔質膜は、膜蒸留の際の透水性能を良好とする観点から、平均孔径が0.15μm以上であることが好ましい。本実施形態において、膜表面の撥水性低下に起因して水が膜内に侵入する「ウェッティング現象」を抑制する観点からは、疎水性多孔質膜の平均孔径は10μm以下であることが好ましい。疎水性多孔質膜の平均孔径は、実施例に記載の方法を参照して、ASTM F316-86に記載されている平均孔径の測定方法により測定することができる。
本実施形態において、膜蒸留の際の透水性能を良好とする観点から、疎水性多孔質膜の空隙率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。膜の機械的強度を維持する観点、及び減圧下使用の際の漏水防止の観点からは、疎水性多孔質膜の空隙率は90%以下であることが好ましい。疎水性多孔質膜の空隙率は、実施例に記載の方法を参照して測定することができる。
本実施形態において、膜蒸留の際の透水性能を良好とし、膜の機械的強度を高くする観点から、疎水性多孔質膜の膜厚は、10μm~500μmであることが好ましく、15μm~300μmであることがより好ましい。膜厚が500μm以下であることにより、使用の継続に伴う透水性能の低下を抑制することができる。膜厚が10μm以上であることにより、減圧下使用の際に、膜の変形、及び流路の閉塞を防止することができる。
疎水性多孔質膜の膜厚は、実施例に記載の方法を参照して、断面の顕微鏡写真により測定することができる。
蒸発部内に設けられる疎水性多孔質膜は、例えば、平膜状であってもよいし、中空糸状であってもよい。
中空糸状の疎水性多孔質膜は、例えば、その外径が、300μm以上5,000μm以下、好ましくは350μm以上4,000μm以下であり、内径が、200μm以上4,000μm以下、好ましくは250μm以上3,000μm以下のサイズであることができる。複数の疎水性多孔質中空糸膜を束ねて円筒状の容器に収納し、中空糸の端部において、中空糸同士の隙間及び中空糸と容器の隙間を固定用樹脂(ポッティング樹脂)で充填して成る中空糸パッケージとして使用してもよい。容器の材質は、例えば樹脂、金属等を用いることができる。
上記のパッケージにおいて中空糸膜の端部は開口しており、容器の上下両端には通水口を有するヘッド部が装着されていてもよい。容器の側面には、回収部と連結するための連結口を備えていてもよい。連結口の数は特に限定されず、単独でも複数でもよい。
[膜蒸留システムの具体的態様]
本実施形態の浄水装置におけるろ液蒸発部は、少なくとも、ろ液が通液される液相部1、及び該液相部1と接する疎水性多孔質膜から成るろ液蒸発部と、
冷却水が流通する液相部2、及び該液相部2と隣接する冷却体から成る回収部と、
前記ろ液蒸発部と前記回収部とを連結する気相部3と、
を備える膜蒸留システムであることが好ましい。
以下、本実施形態の好ましい態様として、疎水性多孔質膜として平膜を用いる場合と中空糸膜を用いる場合とを例として、より具体的に設埋する。
図2Aは、平膜状の疎水性多孔質膜を用いる一体型の膜蒸留システムの場合を例示した概念図である。
図2Aの膜蒸留システムは、ろ液が流通する液相部1、及び該液相部1と接する疎水性多孔質膜から成るろ液蒸発部と、
冷却水が流通する液相部2、及び該液相部2と隣接する冷却体から成る回収部と、
前記ろ液蒸発部と前記回収部とを連結する気相部3(エアギャップ)と、
圧力調整器を介して減圧装置に接続された採水容器と、
を備える。上記採水容器は、上記気相部3と接続されている。
図2Aの膜蒸留システムにおいては、好ましくは高温に加熱されたろ液が液相部1を通り過ぎるときに、その一部が水蒸気となって疎水性多孔質膜を通過して、気相部3に移動する。このとき、不揮発性の溶質(例えば塩等)は、該中空糸膜の膜壁を通過することができないから、これにより分離される。
気相部3の圧力は、減圧装置により、好ましくは1kPa以上、ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の範囲に調整されている。気相部3のより好ましい圧力は後述する。従って、気相部3に移動した水蒸気は、回収部における冷却体上で凝縮して液体の浄水となり、採水容器に回収される。
図2Bは、疎水性多孔質膜中空糸を用いる一体型の膜蒸留システムの場合を例示した概念図である。
図2Bの膜蒸留システムは、
ろ液が存在する液相部1と、気相部1とが疎水性多孔質膜を介して隣接するろ液蒸発部、
冷却水が流通する液相部2と、気相部2とが冷却体を介して隣接する回収部、
前記気相部1と前記気相部2とを連結する気相部3、及び
圧力調整器を介して減圧装置に接続された採水容器、
を備える。上記採水容器は、上記気相部2と接続されている。このシステムにおける冷却体は冷却管である。
図2Bの膜蒸留システムにおいて、ろ液は疎水性多孔質膜中空糸の内部空間を流通するから、該中空糸の中空内孔内がこのシステムにおける液相部1となり;
該中空糸の外側が気相部1となる。
冷却水は冷却管内を流通するから、該冷却管の内部がこのシステムにおける液相部2となり;
該冷却管の外側が気相部2となる。この冷却管は、冷却水が該管の外部へ漏れない材質から成ることが好ましく、例えば、非多孔質の金属製、樹脂製等であることができる。
そして、上記気相部1と前記気相部2との間には気相部3が配置され、両者の間を連結している。
疎水性多孔質中空糸膜の中空内腔内に通液されたろ液は、その一部が水蒸気となって該中空糸膜の膜壁を通過して、気相部1へと移動する。このとき、不揮発性の溶質(例えば塩等)は、該中空糸膜の膜壁を通過することができないから、これにより分離される。
気相部1へ移動した水蒸気は、気相部3を介して気相部2へと移動する。
そして、図2Bのシステムにおける気相部1~3の圧力は、減圧装置により、好ましくは1kPa以上、ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の範囲に調整されているから、気相部2に移動した水蒸気は、回収部における冷却体上で凝縮して液体の浄水となり、採水容器に回収される。(気相部1~3のより好ましい圧力は後述する。)
本実施形態の膜蒸留システムにおける回収部は、例えば、複数の冷却管を、円筒状の容器に収納し、冷却管の端部において冷却管同士の隙間及び冷却管と容器との隙間を固定用樹脂(ポッティング樹脂)で充填し、冷却管を容器に固定して形成された冷却管パッケージが使用されている。容器の材質は、例えば樹脂、金属等を用いることができる。
冷却管の端部は開口しており、容器の上下両端には通水口を有するヘッド部が装着されていてもよい。容器の側面には蒸発部と連結するための連結口を備えていてもよい。連結口の数は特に限定されず、単独でも複数でもよい。
図2Bのシステムにおいては、冷却体として中空状の冷却管を使用している。しかしながらこの冷却管に代えて、平板上の冷却体を使用してもよい。
気相部3は、気相部1と気相部2とを連結する機能を有する気相部である。気相部3の容積は、水蒸気透過の観点から大きいほうが好ましい。気相部3の数は特に限定されず、単独でも複数でもよい。その形状は円筒状でも多角柱状でもよい。該気相部3を規定する筺体の部材は特に限定されず、例えば、樹脂、や金属等を利用することができる。しかしながら、該気相部3で水蒸気が凝縮しないよう、高断熱性の材料を利用してもよく、必要に応じてこれに断熱加工を施してもよい。
気相部3は、蒸発部における疎水性多孔質膜と、回収部における冷却体との間の最短距離が10mm以上となるように設けることが好適である。ここで、疎水性多孔質膜と冷却体との間の最短距離とは、該疎水性多孔質膜及び該冷却体それぞれの最近接部間の最短の直線距離を意味する。
本実施形態においては、気相部の圧力を所定範囲内とすることにより、膜蒸留システムにおける蒸発部と回収部との配置距離の制限が緩和され、気相部3のサイズを上記のような小さいサイズとすることが可能になったものである。この距離の緩和により、疎水性多孔質膜を用いた膜蒸留モジュールの設計の自由度が増し、浄水供給システムの省スペース化、コンパクト化が可能になる。
上記の最短距離を10mm以上とすることにより、蒸発部と回収部の設計を容易にすることができる。この最短距離は、30mm以上であってもよい。
本実施形態においては、最短距離を10mm以上、好ましくは3m以下とすることにより、蒸発部及び回収部の設計の自由度を増し、同時に気相部1~3の上記の公的範囲に制御して膜蒸留を行うことにより、高真空又はスイープガスを必要とせずに、コンパクトであるにも関わらず高Fluxの膜蒸留システムを使用するものである。
図3A~図3Cは、疎水性多孔質膜中空糸を使用する別の態様の例である。これらのシステムにおいては、図2Bのシステムと同様の疎水性多孔質中空糸膜パッケージを使用する。しかしながら、ろ液は、疎水性多孔質膜中空糸の外側に存在するから、該中空糸の外側がこのシステムにおける液相部1となり;
該中空糸の中空内孔内が気相部1となる。
図3Aのシステムにおいては、疎水性多孔質中空糸膜パッケージの全体が、ろ液タンク中のろ液(液相部1)内に浸漬されており、これらによってろ液蒸発部が構成されている。回収部は、図2Bのシステムと略同様であり、冷却管のパッケージが縦置きに配置されている。そして、上記ろ液蒸発部の気相部1と、上記回収部の気相部2とが、配管内に形成された気相部3によって接続されている。気相部3を構成する配管は、上記中空糸膜パッケージの両端から2本伸びており、これらの両者ともが本システムにおける気相部3である。
この場合、好ましくは高温に加熱されているろ液の一部は水蒸気となって、中空糸膜の膜壁を通過し、該中空糸膜の内孔内に形成された気相部1へと移動する。このとき、不揮発性の溶質(例えば塩等)は、該中空糸膜の膜壁を通過することができないから、これにより分離される。
気相部1へ移動した水蒸気は、配管内の気相部3を介して気相部2へと移動する。
そして、図3Aのシステムにおける気相部1~3の圧力は、減圧装置により、好ましくは1kPa以上、ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の範囲に調整されているから、気相部2に移動した水蒸気は、回収部における冷却体上で凝縮して液体の浄水となり、採水容器に回収される。(気相部1~3のより好ましい圧力は後述する。)
ここで、ろ液タンクとは、ろ液が存在している場所を意味し、例えば、ピットのような貯水槽でもよいし、ろ液の流路の一部であっても構わない。
ろ液タンクが貯水槽である場合、ろ過部で得られたろ液を該貯水槽に溜めておけばよいので、浄水装置の設置スペースをコンパクトにすることができる。さらに、該貯水槽の水位を一定になるように制御しておけば、一定の条件で膜蒸留処理を行えるため、安定した浄水効率を得ることが可能となる。
一方、ろ液タンクがろ液流路の一部である場合には、膜状流条件を一定に保つことは容易であるが、ろ液の量が多く必要となる。
以上のことから、前記ろ液タンクの形態としては、貯水槽型で、且つ水位を一定に保つ制御装置を備えたものがこのましい。
液相部1内は、撹拌してもよいし、しなくてもよい。ろ液が水蒸気となる際の気化熱によるろ液温度の低下、及びこれに起因する蒸留速度の低下を防ぐため、液相部1を撹拌することが好ましい。撹拌方法も、プロペラ式撹拌、循環式撹拌等の既存の撹拌方法を利用できる。
図3Bの膜蒸留システムは、上記図3Aのシステムにおいて、回収部としての冷却管のパッケージが横置きに配置されている態様である。その余の態様は、図3Aの場合と略同様である。
図3Cの膜蒸留システムは、上記図3Aのシステムにおいて、気相部3を構成する配管が中空糸膜パッケージの片端から1本だけ伸びている態様である。その余の態様は、図3Aの場合と略同様である。
上記いずれのシステムにおいても、ろ液は、例えば、熱交換器、ヒーター等の熱源によって加熱され、高温のろ液としてろ液タンクに貯蔵されたうえで、液相部1に供給されてよい。ろ液の温度を、太陽熱の利用、又は産業プロセス等からの排熱を活用して制御することは、加熱に要する熱エネルギーコストが不要となるか又は低減できるためより好ましい。
液相部1に供給されるろ液の温度は、透水性能の観点から、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
本実施形態において、冷却水は、液相部2を流れ、水蒸気を冷却することができる液体であれば特に限定されない。例えば、水道水、工業用水、河川水、井水、湖沼水、海水、産業廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、製薬工場、清掃工場等の工場からの廃水)、石油又は天然ガス生産時に排出される随伴水等が挙げられる。
本実施形態においては、ろ液自体を冷却水として用いてもよい。
冷却水は、回収効率の観点から、その水温が30℃以下であることが好ましい。
冷却水の水温は、熱交換器やヒーター等の熱源の活用により制御してもよい。
図2Aのシステムにおける気相部3、並びに図2B及び図3A~Cのシステムにおける気相部1~3の圧力は、上記のとおり、1kPa以上、ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の間に制御されることが好ましい。気相部1~3の圧力が処理水温度における水の飽和蒸気圧以下であるとは、液相部1に供給されるろ水の水温において、気相部1~3の圧力を、水の飽和蒸気圧(理論値)以下の圧力に制御することを意味する。
図2Aのシステムにおける気相部3、並びに図2B及び図3A~Cのシステムにおける気相部1~3の圧力を1kPa以上とすることにより、減圧装置の減圧に要する過度のエネルギー消費を抑えることができる。この圧力をろ液温度における水の飽和蒸気圧以下とすることにより、高い透水性能を実現することができる。消費エネルギーの観点から、該圧力は、1kPa以上であることが好ましく、10kPa以上であることがより好ましい。透水性能の観点から、該圧力は、ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下であることが好ましく、ろ液温度における水の飽和蒸気圧より5kPa低い圧力以下であることがより好ましく、ろ液温度の水の飽和蒸気圧より10kPa低い圧力以下であることがさらに好ましい。
図2Aのシステムにおける気相部3、並びに図2B及び図3A~Cのシステムにおける気相部1~3の圧力を、上記の圧力範囲に調整するための、
減圧装置としては、例えば、ダイアフラム真空ポンプ、ドライポンプ、油回転真空ポンプ、エジェクタ、アスピレーター等が;
圧力制御方法としては、例えば、真空レギュレーターを用いる方法、リークバルブを用いる方法、電子式真空コントローラーと電磁弁とを用いる方法等が挙げられる。
上記の圧力は、圧力計によりモニタリングしつつ、調整を行うことが好ましい。圧力は、気相部1~3、採水容器、圧力調整器、その間をつなぐ配管トータルの圧力としてモニタリングしてもよい。
本実施形態の浄水装置における膜蒸留システムによってさらに精製された浄水は、その水溶性塩濃度が極めて低減されたものである。従って、前記ろ過部と、膜蒸留システムとを併用することにより、極めて実質的な浄水システムが得られるのである。
以下、本発明の構成及び効果を具体的に示す実施例等について説明する、しかしながら本発明は以下の実施例等により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
1.非フッ素系親水材料の合成
還流冷却器、滴下槽、温度計、及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1,600g及びドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で80℃に加温した。
ここに、ジメチルジメトキシシラン185g及びフェニルトリメトキシシラン117gから成る混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で2時間かけて滴下した後、80℃の温度を維持して1時間撹拌した。
次に、アクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン30g、フェニルトリメトキシシラン145g、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gから成る混合液と、ジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、旭電化社製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1,900gから成る混合液とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で2時間かけて同時に滴下した。続いて、反応容器中の温度を80℃に維持した状態で4時間撹拌を行った。
その後、室温まで冷却し、400メッシュの金網で濾過することにより、数平均粒子径131nmの重合体エマルジョン粒子(B-1)を14質量%含有する水分散体を得た。
2.コーティング組成物の調整
上記1.で合成した(B-1)を含有する水分散体と、金属酸化物(D)として平均粒子径5nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスOXS」、日産化学工業(株)製、固形分10質量%)と、加水分解性珪素化合物(C)として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-403)と、を混合し、20質量%エタノール水を添加して固形分濃度を6質量%に調整することにより、コーティング組成物を得た。
上記コーティング組成物の組成比は、固形分換算の質量比として、(D)/(B)/(C)=100/100/10であった。加水分解性珪素化合物(C)は、このコーティング組成物中に重量平均分子量39,500の加水分解縮合物として含有されていた。この(C)成分の質量としてはSiO換算値を用いて上記組成比を計算した。
3.油水分離フィルターの製作(親水化処理及び製袋)
不織布基体として旭化成せんい社製N3007(ナイロン製、目付30g/m、厚み0.1mm、繊維径0.7μm、平均孔径6μm)を、上記で調製したコーティング液に室温において5秒間浸漬して引き揚げた後に、80℃で15分乾燥することにより、親水化不織布を得た。乾燥後のコーティング量は1g/mであった。
上記で製作した親水化不織布を2つ折りにして、側辺及び底辺をヒートシールにより封止して50cm×50cmの袋状に製袋し、これを油水分離フィルターとして使用した。
使用した不織布基体はナイロンから構成され、ヒートシールによって簡単に製袋することができた。
4.測定
(1)平均繊維径
油水分離フィルターの平均繊維径は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡(SEM)、型式「JSM-6510」を用いて測定した。
上記3.で得られた親水化不織布(製袋していないもの)を10cm×10cmにカットし、白金を蒸着し、これをSEM観察試料とした。
SEM観察は、加速電圧15kV、ワーキングディスタンス21mmの条件にて行い、ランダムに繊維100本以上を撮影した。撮影したすべての繊維の繊維径を測定し、その平均繊維径を求めた。このとき、複数の繊維が糸長方向で融着している場合には、測定から省いた。
(2)平均孔径
油水分離フィルターの平均孔径は、Porous Materials, Inc.社製の多孔質材料自動細平均孔径分布測定システム、型式「Automated Perm Porometer」)を用いて測定した。
上記3.で得られた親水化不織布(製袋していないもの)を、打ち抜き刃でφ25mmにカットし、室温のGALWICK試液に30分間浸漬した後、1時間脱気して、測定試料を調製した。
上記の測定試料を装置にセットして、エア圧を印加した。そして、GALWICK試液が毛細管内の液体表面張力に打ち勝って押し出されるときのエア圧力を測定し、Washburnの式から細孔直径を求め、この値を平均孔径とした。
(3)ぬれ張力の測定(JIS K6768)
本試験は、環境温度23℃の恒温下で行った。
上記3.で得られた親水化不織布(製袋していないもの)を、実験机上に平坦に静置して、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業(株)製、No.25.4)を数滴滴下した後、直ちに綿棒を用いて滴下液を不織布の全面に広げて塗膜を形成した。その2秒後に塗膜の中央部を目視観察した。
その結果、塗膜は破れを生じず、元の状態を保持していたことから、該親水化不織布のぬれ張力が25.4mN/m以下であることを確認した。
5.分離性能テスト
図4に示した装置を用いて、上記3.で得られた油水分離フィルター(製袋したもの。面積0.5m)の分離性能テストを行った。
槽内の「ろ液溜め」の部分を水道水で満たし、製袋した油水分離フィルターをセットして、該油水分離フィルターの袋内部も水道水で満たした。そして、処理液として、ヘキサデカン10質量%、10質量%の食塩水85質量%、及び砂5質量%から成る混合液を、温度25℃、導入速度5L/minにて導入した。
本実施例における油水分離フィルターの比重は1.13であり、水相中に安定して存在することができた。製袋した油水分離フィルター袋の上面から導入した被処理液溜めの水面は、ろ液溜め中の水面より高位に維持することができ、これにより、処理液を安定して連続的に分離することができた。被処理液溜めの液高さとろ液溜めの液高さとの高低差は、運転中0.5cm~3cmの範囲に維持された。
該被処理液は、液面にヘキサデカン層を視認できるほどの油量を含有していた。しかしながら、油水分離フィルターを透過したろ液相にヘキサデカン相は確認されなかった。油水分離フィルター袋の液面にはヘキサデカンの油相が形成されており、これをスポイトで回収することが可能であった。油水分離フィルター袋の底部には砂の堆積が認められた。
6.油田随伴水油水分離
図4に示した装置を用いて、上記3.で得られた油水分離フィルター(製袋したもの、面積0.01m)を用い、油田随伴水の油水分離性能を調べた。
槽内の「ろ液溜め」の部分、及び油水分離フィルターの袋内部を計50mLの蒸留水で満たした。そして、被処理液として、油田随伴水(有機炭素約1.5g/L、塩約20g/Lを含む油分混合水)を温度25℃、導入速度500mL/minにて導入した。
本試験においても、上記5.と同様に安定して油水を分離することができ、12分間で6Lのろ液を得た。被処理液溜めの液高さとろ液溜めの液高さとの高低差は、運転中0.5cm~3cmの範囲に維持された。
得られたろ液の導電率を電気導電率計(堀場製作所社製、導電率測定器卓上型、形式「DS-52」)を用いて測定したところ、27.3mS/cmであった。
7.ろ液の膜蒸留
(1)疎水性多孔質中空糸膜の各種物性の測定
以下、本実施例に用いた疎水性多孔質中空糸膜の各種物性の測定方法を記載する。以下各該測定方法を参照することにより、任意の疎水性多孔質膜の各種物性を測定することが可能となる。
(外径及び内径、並びに膜厚)
疎水性多孔質中空糸膜の外径及び内径は、該中空糸膜を長手方向に垂直な向きにカミソリを用いて薄く切ったものを試料とし、顕微鏡観察によって測定した。膜厚は、外径と内径との差として求めた。
(空隙率)
疎水性多孔質中空糸膜を所定の長さ(本実施例では40cm)にカミソリで切ったものを試料とし、電子天秤を用いて該試料の質量を測定した。ここで得られた値等を用いて、下記数式により空隙率を算出した。
Figure 0007045138000001
(平均孔径)
疎水性多孔質中空糸膜の平均孔径は、ASTM F316-86に記載されている平均孔径の測定方法(別称:ハーフドライ法)に準拠して測定した。
測定は、疎水性多孔質中空糸膜を約10cm長に切断したものを試料とし、液体としてエタノールを用いて、25℃、昇圧速度0.01atm/秒の標準測定条件で行った。
平均孔径は、下記数式:
平均孔径[μm]=2,860×(使用液体の表面張力[dyne/cm])/(ハーフドライ空気圧力[Pa])
使用液体(エタノール)の表面張力(25℃)=21.97dyne/cm
により求めた。
(表面開口率)
疎水性多孔質中空糸膜の表面開口率は、膜の内表面及び外表面の各電子顕微鏡写真から求めた。
測定対象の中空糸膜の内表面及び外表面を、それぞれ、走査型電子顕微鏡(日立社製S-4700)を用いて、加速電圧1.0kV、二次電子検出条件にて、倍率5,000~50,000倍で撮影した。そして、中空糸膜の内表面及び外表面の表面開孔率を、得られた顕微鏡像を画像解析処理ソフト「ImageJ」(フリーソフト)で処理することにより、それぞれ求めた。測定範囲境界上の孔は、計算から除外しない。
表面開口率は下記数式:
表面開口率[%]=100×(内表面及び外表面における孔面積の総和)/(測定範囲の面積の総和)
荷よりもとめた。
(空気透過係数)
疎水性多孔質中空糸膜の空気透過係数は以下の方法によって求めた。
疎水性多孔質中空糸膜1本を樹脂製の容器に固定し、中空糸外側に空気によって所定圧力(本実施例では0.03MPa)を印加し、中空糸内側に透過した空気の体積が90mLとなるのに要した時間を、石鹸膜流量計により測定し、1秒あたりの空気透過量を算出したうえで、下記数式:
Figure 0007045138000002
を用いて空気透過係数を求めた。
本実施例に用いた疎水性多孔質中空糸膜は、ポリエチレンから成り、上記測定方法によると、外径1.25mm、内径0.68mm、膜厚285μm、空隙率81%、平均孔径0.19μm、内表面開孔率21%、外表面開孔率21%、及び空気透過係数7.1×10-7/(m・sec・Pa)であった。
(2)膜蒸留の実施
上記疎水性多孔質中空糸膜33本を内径20mmのポリスルホン製のケースに収納した蒸発モジュール(蒸発部)、及び内径1mm、外径2mmのステンレス管20本を蒸発部で用いたものと同じ形式のケースに収納した回収モジュール(回収部)を、図2Bに示すように連結した。このとき、蒸発部内の疎水性多孔質中空糸膜の外表面と、回収部内のステンレス管の外表面との最短距離は、30mmに設定した。
回収部の出口は配管によって採水容器に連結しており、該採水容器の気相部を圧力調整器を介して減圧装置と連結して、系内の圧力調整を行った。
蒸発部の疎水性多孔質中空糸膜の中空内腔に、65℃に温度調整された上記6.で得られた油田随伴水ろ液を600mL/minの流量で循環させた。回収部のステンレス管の内腔には30℃の冷却水を1,000mL/minの流量で循環させた。そして、モジュール系内の圧力を10kPaに調整して、膜蒸留を行った。
(3)測定
(精製水の導電率)
膜蒸留によって得られた精製水の導電率を、堀場製作所社製の導電率測定器卓上型、形式「DS-52」を用いて測定した。
(漏液)
上記の導電率が油田随伴水ろ液の3%(0.81mS/cm)を超えたことをもって漏液とし、膜蒸留開始から漏液までの時間を漏液時間とした。
(造水量)
採水容器に収容された膜蒸留水の採水量を電子天秤により測定し、膜蒸留の開始から漏液までの採水量を造水量とした。
(4)結果
本実施例における精製水の導電率の経時変化を図5に示す。
膜蒸留開始後、44時間の間の精製水の導電率は、およそ0.14~0.40mS/cmの範囲で推移した。44時間経過後に導電率が1.12mS/cmにまで増加し、漏液が確認された。漏液時間は44時間であり、造水量は4.5kgであった。
(比較例1)
上記実施例1において、油水分離フィルターの代わりに、メッシュ数150のステンレス網で構成されたフィルターを使用した以外は実施例1と同様の方法により膜蒸留を行った。得られた精製水の導電率の経時変化を図5に示す。
膜蒸留開始後、16時間の間の精製水の導電率は、およそ0.08~0.15mS/cmの範囲で推移した。16時間経過後に導電率が2.41mS/cmにまで増加し、漏液が確認された。漏液時間は16時間であり、造水量は1.5kgであった。
(参考例1)
上記実施例1と同じ疎水性多孔質中空糸膜66本を内径20mmのポリスルホン製のケースに収納した蒸発モジュールを用いた他は、実施例1と同様にして、図2Bに示す構成の膜蒸留装置により、表1に示した組成の模擬コールベッドメタン廃水の膜蒸留を行った。
膜蒸留開始後、170時間の間の精製水の導電率は、およそ0.8~2.0μS/cmの範囲で推移した。漏液は確認されず、170時間の造水量は37.0kgであった。
Figure 0007045138000003
本システムは、例えば、海上の油田及びガス田における排水処理;在来型油田及びガス田の老化に伴って生成する随伴水の処理;非在来型石油(例えば、シェールオイル、オイルサンド等)及び非在来型ガス(例えば、シェールガス、コールベッドメタン等)の採掘の際のプロセス水確保及び随伴水処理;工場排水の処理;油の精製等の用途に、好適に使用することができる。
1 疎水性多孔質膜
2 冷却体

Claims (8)

  1. 少なくとも、
    油水分離フィルターにより被処理液をろ過するろ過部と、
    前記ろ過部で得られたろ液を蒸留する蒸留部と、
    を有する、浄水装置であって、
    前記油水分離フィルターは、不織布から成り、かつ、
    目付けが1~500g/m であり、繊維の太さが0.1~50μmであり、孔径が0.1~120μmであり、厚みが0.1~5mmの不織布である分離層を有する基体が、
    非フッ素系親水材料(B)と、加水分解性ケイ素化合物(C)と、分散媒と、珪素酸化物を含む金属酸化物粒子(D)とを、(D)成分の(B)成分に対する質量比((D)/(B))が50/100~10、(D)成分の(C)成分に対する質量比((D)/(C))が10/100~10,000/100の範囲で含む非フッ素系親水組成物によってコーティング処理されて成り、
    前記油水分離フィルターを平坦に静置して、ぬれ張力試験用混合液(No.25.4)を滴下して塗膜を形成したとき、塗膜形成の2秒後に塗膜の中央部に破れを生じず、
    前記蒸留部は、
    ろ液が存在する液相部1と、気相部1とが疎水性多孔質膜を介して隣接するろ液蒸発部、
    冷却水が流通する液相部2と、気相部2とが冷却体を介して隣接する回収部、及び
    前記気相部1と前記気相部2とを連結する気相部3
    を備え、
    前記気相部1~3が、1kPa以上ろ液温度における水の飽和蒸気圧以下の圧力を有する、
    膜蒸留システムであり、
    前記疎水性多孔質膜は、
    ろ液に接する膜表面の表面開孔率が20%以上であり、
    空気透過係数が7.0×10 -7 /m ・sec・Pa以上であり、
    平均孔径が0.15μm以上であり、かつ、
    空隙率が60%以上
    の疎水性多孔質膜であり、そして
    前記浄水装置は、油田随伴水油水分離に用いられる
    浄水装置。
  2. 前記不織布を水含浸した後のヘキサデカン接触角が5°以上である、請求項に記載の浄水装置。
  3. 前記ろ過部が、
    被処理液とろ液とが前記油水分離フィルターを介して隣接し、
    前記被処理液の液面を前記ろ液の液面よりも高く維持しつつ、前記被処理液をろ過する機能を有する、請求項1又は2に記載の浄水装置。
  4. 前記気相部1及び疎水性多孔質膜が、前記液相部1内に浸漬されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の浄水装置。
  5. 前記疎水性多孔質膜と前記冷却体との最短距離が10mm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の浄水装置。
  6. 前記ろ液温度が50℃以上である、請求項のいずれか一項に記載の浄水装置。
  7. 前記疎水性多孔質膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項のいずれか一項に記載の浄水装置。
  8. 前記疎水性多孔質膜が中空糸膜である、請求項のいずれか一項に記載の浄水装置。
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