JP2021065856A - 油水分離濾過フィルター、油水分離濾過カートリッジ - Google Patents

油水分離濾過フィルター、油水分離濾過カートリッジ Download PDF

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幸生 佐藤
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博史 腰山
武志 神谷
Takeshi Kamiya
武志 神谷
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Abstract

【課題】簡易な構成で低コストに、水と油とを含む混合液体を水分と油分に分離して濾過可能な油水分離濾過フィルター、および油水分離濾過カートリッジの提供。【解決手段】水と油とを含む混合液体を通過させることによって、混合液体から油分を分離して水分を濾過する油水分離濾過フィルター12であって、水と油とを含む混合液体が流入する一面と、該一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔22を備えた水浸透性の多孔質基材21と、多孔質基材21のうち、少なくとも混合液体が流入する流入面側に形成された油水分離層23と、を備え、油水分離層23は、撥油性付与基および親水性付与基と、を有するフッ素系化合物を含む油水分離体を有し、フッ素系化合物は、式(1)又は(2)で示される構造の化合物のうち、一種又は二種以上を含むことを特徴とする油水分離濾過フィルター。【選択図】図2

Description

本発明は、水と油とを含む混合液体を水分と油分に分離する油水分離濾過フィルター、およびこれを用いた油水分離濾過カートリッジに関する。
従来から、一般家庭や営業用調理場、ビルの排水、公共事業体の汚水廃液処理施設への導管からの排水には、油・ラード類が混入しており、このような水と油が混合した混合液体である排水は、油分の固着による下水道管の詰まりや、油分の酸化による臭気などの原因となる。さらには、公共下水道施設の機能の著しい妨げとなるという問題や、大雨の後等に下水道施設からの油塊(白色固形物)が港湾に流出するという問題等もあった。このため、各地域では、飲食店事業者に対して、混合液体中の油脂類等を分離、回収する阻集器を設置させて、下水道への油・ラード類を流出させないという対策もとられている。
また、食品製造、繊維処理、機械加工、石油精製などの廃液処理、さらに事故などによる河川、海洋などへの油の流出による油回収作業として、油水混合液を油と水とに分離する処理が行われている。
その他にも、例えば、原油採掘の際に海水を地層の油層に注入して、非水溶性油分の圧力を高め、生産量を確保することが一般的に行われているが、このような原油採掘に使用された排水である「油田随伴水」は非水溶性油分を多く含むため、非水溶性油分の除去処理がなされた後に廃棄されている。しかしながら、近年、海洋・湖沼等の汚染を引き起こす要因となることから、排水中の非水溶性油分含有量の規制が強化されてきており、最も厳格な国や地域では5mg/L未満の非水溶性油分含有量とすることが要求されている。
ところで、従来の油水分離方法としては、凝集剤による分離、吸着分離、遠心分離、加圧浮上分離、電解浮上法、コアレッサーによる粗粒化分離(例えば、特許文献1を参照)、微生物分解による分離等が知られている。
しかしながら、凝集剤を用いる分離方法の場合には、経費が日常的に掛かるばかりか濾過した凝集物の処理も手間と費用が掛かるという課題があった。また、遠心分離器のような機械によるもの、加圧浮上分離によるものは、多量に且つ大型の施設においては有効かもしれないが、限られたスペースに備え付けるには困難であるという課題があった。また、電解浮上法では、安定な油水分離を行うために、処理液の電気伝導度と処理量に応じて印加電力を変えるなど、制御が煩雑であるという課題があった。コアレッサー法では、超極細繊維の網目構造を有するフィルターを用いるため、保守管理上、常に目詰まりが問題になるという課題があった。さらに、微生物を用いる分離方法では、時間が掛かるとともに管理が大変であるという課題があった。
一方で、従来から、多孔質膜を用いた濾過膜による水処理が行われている。そして、油水分離においても、逆浸透法、限外濾過法、精密濾過法(例えば、特許文献2を参照)等が知られている。
しかしながら、逆浸透法、限外濾過法、精密濾過法は、原水中に存在する油などの分離対象物質が濾過膜に付着して起こるファウリング(目詰り)のため、定期的に逆圧洗浄、エアスクラビング等の物理洗浄を行う必要があるという課題があった。したがって、多孔質膜を用いた濾過膜には、長期間継続して使用できるようにするために、油の吸着しにくさ(防汚性)や、吸着した油の除去し易さ(易洗浄性)の向上が望まれているのが実情であった。
一方、本願の出願人は、特許文献3において、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基とを分子中に含む、特定の含窒素フッ素系化合物が、優れた親水性及び撥油性を有することを見出し、その含窒素フッ素系化合物からなる新規な親水撥油剤およびその製造方法を開示している。また、出願人は、特許文献4において、前記親水撥油剤を、多数の気孔を備えた多孔質基材の表面に存在させた、油水分離多孔質体及び油水分離フィルターを開示している。
特許文献4において開示した技術は、簡易な構成で低コストに、水と油とを含む混合液体を水分と油分に分離でき、耐ファウリング性にも優れた従来にない新しい材料あったが、前記濾材の表面を被覆している前記親水撥油剤が次第に流出して油水分離性能が低下してしまう点でさらなる改良の余地があった。
特開2006−198483号公報 特開平05−137903号公報 国際公開第2016/017686号 特開2016−64405号公報
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で低コストに、水と油とを含む混合液体を水分と油分に分離して濾過することが可能な油水分離濾過フィルター、およびこれを用いた油水分離濾過カートリッジを提供することを目的とする。
すなわち、本発明の油水分離濾過フィルター、および油水分離濾過カートリッジは、以下の構成を有する。
[1]水と油とを含む混合液体を通過させることによって、該混合液体から油分を分離して水分を濾過する油水分離濾過フィルターであって、
水と油とを含む混合液体が流入する一面と、該一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔を備えた水浸透性の多孔質基材と、該基材のうち、少なくとも前記混合液体が流入する流入面側に形成された油水分離層と、を備え、
前記油水分離層は、撥油性付与基および親水性付与基と、を有するフッ素系化合物を含む油水分離体を有し、
前記フッ素系化合物は、下記式(1)又は(2)で示される構造の化合物のうち、一種又は二種以上を含むことを特徴とする。
Figure 2021065856
Figure 2021065856
前記式(1)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
前記式(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、置換基を有していてもよいイミノ基及び置換基を有していてもよいCF基のいずれかを表す。
また、前記式(1)及び(2)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基であり、Xは、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミンオキシド型及びホスホベタイン型のうち、いずれかの末端を有する両性型の親水性賦与基である。
このような構成の油水分離濾過フィルターによれば、基材に撥油性賦与基と親水性賦与基とを分子中に含むフッ素系化合物が存在する油水分離層を備えている。このため、水と油との混合液体を流した場合、油水分離された水分は基材を通過するのに対して、油分は基材を通過しない。したがって、本実施形態の油水分離濾過フィルターは、混合液体を水分と油分とに分離して、水分を更に濾過層で濾過可能であり、混合液体から油分や固形物を容易に、かつ低コストに取り除くことができる。
[2]前記油水分離層は、前記多孔質基材の前記一面に形成されていることを特徴とする。
[3]前記気孔は、前記一面から前記他面に向けて、開口径が段階的、または連続的に狭められることを特徴とする。
[4]前記多孔質基材は中空円筒形に形成され、前記一面は、中空円筒形の前記多孔質基材の内周面または外周面を成すことを特徴とする。
[5]前記油水分離体は、マイクロカプセルに内包されて前記多孔質基材に分散していることを特徴とする。
[6]前記マイクロカプセルは、前記油水分離体を含むコア体と、該コア体を被覆する耐水性の殻体と、からなることを特徴とする。
[7]前記マイクロカプセルは、有機結合剤又は無機結合剤によって前記多孔質基材に結合されていることを特徴とする。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の油水分離濾過フィルターと、該油水分離濾過フィルターを収容するフィルターケースとを備えた油水分離濾過カートリッジであって、
前記フィルターケースは、前記混合液体を前記流入面側に導入する流入口と、前記油水分離濾過フィルターを通過した液体を流出させる流出口とを備えたことを特徴とする。
本発明の油水分離濾過フィルター、油水分離濾過カートリッジによれば、水と油とを含む混合液体から、容易に、かつ低コストに油分を分離し、水分を濾過することが可能になる。
本発明の油水分離濾過フィルターを備えた油水分離濾過カートリッジの一例を示す断面図である。 本発明の油水分離濾過フィルターの一例を示す要部拡大模式図である。 第二実施形態の油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。 第三実施形態の油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。 第一実施形態の油水分離濾過フィルターを備えた油水分離濾過カートリッジの変形例を示す断面図である。 マイクロカプセルを含む油水分離層と、多孔質基材と、を有する油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。 油水分離体を内包するマイクロカプセルの断面図である。
以下、本発明を適用した一実施形態である油水分離濾過フィルター、およびこれを用いた油水分離濾過カートリッジについて図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
<第一実施形態>
図1は、本発明の油水分離濾過フィルターを備えた油水分離濾過カートリッジの一例を示す断面図である。
本実施形態の油水分離濾過カートリッジ10は、フィルターケース11と、このフィルターケース11の内部に収容された油水分離濾過フィルター12とを備えている。
油水分離濾過フィルター12は、例えば中空円筒形に形成されている。本実施形態においては、この中空円筒形の油水分離濾過フィルター12の外周面となる一面12a側から、水と油とを含む混合液体を流入させる。そして、油水分離濾過フィルター12の内周面となる他面12b側から、油水分離後の水を流出させる。
油水分離濾過フィルター12の中空部分、即ち、他面12bに接するように、中空管13が形成されている。この中空管13は、油水分離濾過フィルター12の他面12b側から流出する水分を中空管13の内部に導くための多数の開口13aが形成されている。
フィルターケース11には、混合液体を内部に流入させる流入口11a,油水分離濾過フィルター12によって分離された油分をオーバーフローによって流出させる排油口11b、および、中空管13に接続され、油水分離濾過フィルター12によって分離された水分を流出させる排水口12cがそれぞれ形成されている。
図2(a)は、本発明の油水分離濾過フィルターを示す外観斜視図である。図2(b)は、本発明の油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。
油水分離濾過フィルター12は、全体が水浸透性の多孔質材を中空円筒形に形成した多孔質基材21を備える。この多孔質基材21は、外周面21aと内周面21bとの間を貫通する多数の気孔22が形成されている。そして、外周面21a、内周面21b、および気孔22の表面(内側面)には、油水分離層23が形成されている。
なお、油水分離層23は、多孔質基材21に油水分離体を所定の厚み範囲で多数分散させてなる。即ち、本実施形態の油水分離濾過フィルター12は、多孔質基材21に油水分離体を分散配置させたものであり、実際には油水分離層23の形成部分と、それよりも内側の多孔質基材21との間に明瞭な界面が存在するわけではない。また、油水分離層23は、図6に示すように、殻体に油水分離体を内包させたマイクロカプセルを分散形成したものから構成されていてもよい。
多孔質基材21は、多数の気孔22を備えた材料からなり、例えば、繊維、多孔質樹脂、セラミックス等から構成され、気孔22は水分の流路とされている。こうした多孔質基材21は、個々の気孔22の開口径dが0.1μm以上、180μm以下のものを用いる。0.5〜75μmであることがより好ましく、1〜50μmであることがさらに好ましい。ここで、気孔22の開口径dが0.1μm未満であると、水の透過抵抗が大きくなり、大きな加圧が必要となる場合や、透過に時間が必要となる場合があるために好ましくない。一方、気孔22の開口径dが180μmを超えると、油が通過し始めるために好ましくない。これに対して、気孔22の開口径dが前記範囲内であると、油の透過が起こらず、実用上適した範囲の通水速度となるために好ましい。
このような構成の油水分離濾過フィルター12は、多孔質基材21に形成された油水分離層23の親水性および撥油性(以下、親水撥油性と称する)によって、水と油とを含む混合液体を水分Wと油分Gに分離する。
例えば、油水分離濾過カートリッジ10を、混合液体が排出される排出経路に配置し、流入口11aから混合液体を油水分離濾過フィルター12の一面12aに流入させると、混合液体は、油水分離層23の親水撥油性によって水分と油分に分離される。そして、水分Wが例えば液圧によって油水分離濾過フィルター12の一面12aから他面12bに向けて通過する。一方、油水分離層23によって油水分離された後の油分Gは、多孔質基材21の気孔22を通過することができず、油水分離濾過フィルター12の一面12aに留まり、水分Wとの比重差によってフィルターケース11の上部に浮上する。
なお、本実施形態のような油水分離濾過カートリッジ10を、直列に複数個配置して、多段式の油水分離濾過カートリッジとすることもできる。
前記油水分離体は、撥油性付与基および親水性付与基とを有するフッ素系化合物を含む材料から構成されている。撥油性付与基は、油水分離層23の表面に例えば40°以上の接触角で油滴を形成させる官能基である。また、親水性付与基は、油水分離層23の表面に例えば20°以下の接触角で水分に対する濡れ性を付与する官能基である。
なお、こうした接触角は、例えば、自動接触角計(協和界面科学社製、「Drop Master 701」)により測定することができる。
油水分離層23は、こうした撥油性付与基および親水性付与基とを有するフッ素系化合物の存在によって、親水撥油性を持つ。この油水分離層23に水と油とを含む混合液体が接触すると、油分は接触角の大きい油滴として凝集し、水分は接触角が小さい濡れ性を保ったままとなる。これによって、凝集して大きい油滴となった油分は油水分離濾過フィルター12の表面に留まり、あるいは水との比重差によって混合液体の表層に浮遊する。一方、濡れ性を保った水分は凝集することなく油水分離濾過フィルター12の気孔22を通過することができる。こうした作用によって、油水分離濾過フィルター12は、混合液体から油分を分離することができる。
図6は、本発明の特徴であるマイクロカプセルを含む油水分離層と、多孔質基材と、を有する油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。また、図7は、油水分離体を内包するマイクロカプセルの断面図である。
油水分離濾過フィルター12は、全体が水浸透性の多孔質材料からなる多孔質基材21と、この多孔質基材21の表面に形成された油水分離層62とを有する。
油水分離層62は、殻体72に油水分離体73を内包させたマイクロカプセル71が分散形成されている。マイクロカプセル71は、例えば、外形形状が微細な球形を成すように形成されている。このマイクロカプセル71のうち、少なくともその一部は、油水分離層62において、殻体72から油水分離体73が放出した状態にされている。即ち、油水分離層62は、油水分離体73が殻体72に覆われた状態のマイクロカプセル71と、油水分離体73が殻体72から放出した状態のものとが混在している。こうしたマイクロカプセル71の状態は経時変化し、マイクロカプセル71から油水分離体73が徐々に放出される徐放性によって、長期間にわたって油水分離層62が保持される。
マイクロカプセル71を構成する殻体72は、油水分離体73が徐々に放出可能な素材であれば有機高分子や無機材料のいずれでも使用可能である。有機高分子としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−メタクリレート重合体、スチレン−アクリレート重合体、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーポネート、ゼラチン、エチルセルロースなどが挙げられる。無機材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどが挙げられる。
マイクロカプセル71は多孔質基材21の気孔内に分散担持される。個々のマイクロカプセル71の粒径(直径)Dは、担持させる多孔質基材21の気孔の平均開口径に近いものを選択するのが好ましい。具体的には、0.1μm以上、180μm以下にすることが好ましい。マイクロカプセル71の粒径Dが0.1μm未満では、内部に適切な量の油水分離体73を封入することが困難である。また、マイクロカプセル71の粒径Dが180μmを超えると、多孔質基材21に対してマイクロカプセル71を分散させて油水分離層62を形成する際に、マイクロカプセル71を均一に分散させることや、多孔質基材21の気孔内に担持させることが困難となる。
前記殻体72の吸油量としては、10ml/100g以上が好ましい。前記吸油量が10ml/100g未満であると、油水分離体73を担持できる量が少なくなるために、持続性が不充分となることがある。ここで、前記吸油量は、JIS K5101により測定することができる。
油水分離体73を内包するマイクロカプセル71を多孔質基材21に分散定着させておき、水と油とを含む混合液体中の水分がマイクロカプセル71の外側から内部に侵入すると、水に溶解した油水分離体73がマイクロカプセル71の内部から放出されることにより多孔質基材21の表面に油水分離層62が形成される。
以下、油水分離体73を構成する親水撥油剤について、詳細に説明する。
(親水撥油剤)
油水分離層62を形成する油水分離体73を構成するフッ素系化合物としては、例えば、下記式(1)又は(2)で示されるフッ素系化合物のうち、少なくとも一種又は二種以上を含む。下記式(1)又は(2)で示されるフッ素系化合物は、分子中に撥油性賦与基と親水性賦与基とを含む親水撥油剤である。
以下、油水分離体73を構成する親水撥油剤について、詳細に説明する。
Figure 2021065856
Figure 2021065856
前記式(1)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
また、前記式(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、置換基を有していてもよいイミノ基及び置換基を有していてもよいCF基のいずれかを表す。イミノ基及びCF基の置換基の例としては、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基が挙げられる。
前記式(1)に示す、直鎖状又は分岐状のRfとRfさらにRfが含まれる含窒素ペルフルオロアルキル骨格、及び前記式(2)に示す、直鎖状又は分岐状のRf、Rf、Rfのペルフルオロアルキレン基、さらにはZが含まれる含窒素ペルフルオロアルキル骨格が、撥油性賦与基を構成する。また、前記式(1)又は(2)に示すフッ素系化合物では、前記撥油性賦与基であるRf〜Rf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
また、前記式(1)及び(2)中、Rは、2価の有機基である連結基である。2価の有機基の例としては、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、2価の炭化水素基とアミド基との組合せ、2価の炭化水素基とエステル基との組合せ、2価の炭化水素基とウレタン基(−NH−CO−O−)との組合せを挙げることができる。2価の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は鎖状炭化水素基であってもよいし、環状炭化水素基であってもよい。鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。炭化水素基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびこれらの組合せを挙げることができる。アミド基は、カルボン酸アミド基(−CO−NH−)およびスルホンアミド基(−SO−NH−)を含む。エステル基は、カルボン酸エステル基(−CO−O−)およびスルホン酸エステル基(−SO−O−)を含む。アミド基およびウレタン基の窒素原子に結合している水素原子は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。
さらに、前記式(1)及び(2)中、Xは、両性型の親水性賦与基である。Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N(CH)mCO 」、スルホベタイン型の「−N(CH)mSO 」、アミンオキシド型の「−N」又はホスホベタイン型の「−OP(O)(O)O(CH)mN」及び[−N−(CH)m−OP(O)(O)OR](mは1〜5の整数、R、R、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
前記式(1)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(3)〜(11)の構造のものが挙げられる。
Figure 2021065856
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前記式(2)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(12)〜(21)の構造のものが挙げられる。
Figure 2021065856
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なお、上述した本実施形態の親水撥油剤の構造の具体例は一例であって、本発明の技術範囲は前記具体例に限定されるものではない。すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、含窒素ペルフルオロアルキル骨格からなる撥油性賦与基と、両性型の親水性賦与基と、を分子中に少なくともそれぞれ1以上有していればよい。
(結合剤)
マイクロカプセル71は多孔質基材21の気孔内に担持されるが、マイクロカプセル71を気孔内に定着させるために、結合剤を用いても良い。また、前記結合剤は、油水分離体73がマイクロカプセル71の殻体72から放出した後、油水混合液体によって前記フッ素系化合物が流失しないために、多孔質基材21に当該フッ素系化合物を固着させる効果も期待できる。本実施形態における油水分離層62は、多孔質基材21の表面側に前記式(1)又は(2)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)が単独または結合剤と複合化され、油水分離層62を成すことが好ましい。
油水分離層62は、上述したフッ素系化合物(親水撥油剤)のみからなる場合と、結合剤を含む場合とがある。具体的には、油水分離層62は、気孔の表面を含む多孔質基材21の表面の一部又は全部が、前記式(1)又は(2)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)を含む塗膜(塗布膜)、あるいは前記式(1)又は(2)で示されるフッ素系化合物と結合剤とを成分とする塗膜(塗布膜)によって被覆されていてもよい。
結合剤を含む場合は、マイクロカプセル71と結合剤との質量組成比は、0.2対99.8〜99.8対0.2の範囲であることが好ましい。ここで、マイクロカプセル71の質量組成比が0.2未満であると、十分な親水撥油性が得られないために好ましくない。また、マイクロカプセル71の質量組成比が99.8を超えると、結合剤による固定効果が不十分となるため、経済的に好ましくない。
結合剤としては、具体的には、例えば、有機結合剤(樹脂)や無機結合剤(無機ガラス)が挙げられる。有機結合剤(樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等があり、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
無機結合剤(無機ガラス)としては、具体的には、例えば、化学式[R11Si(OR12]で示されるトリアルコキシシラン、化学式[Si(OR13](R11〜R13はそれぞれ独立した炭素数1〜6までのアルキル基)で示されるテトラアルコキシシラン等のシラン化合物や、水ガラス等が挙げられる。これらの中でも、水ガラスは、耐久性の向上効果が高いために好ましい。
(基材)
本実施形態の油水分離層62において、分離された水を主体的に通過させる気孔は、多孔質材料から成る多孔質基材21によって形成されている。多孔質基材21の材質としては、後述する平均開口径の気孔が形成された多孔質材料であれば特に限定されるものではなく、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。更には有機物と無機物との複合物であってもよい。したがって、本実施形態の多孔質基材21の態様としては、多孔質材料の一種である有機物の繊維質材料または無機物の繊維質材料が挙げられる。
ここで、基材として利用可能な有機物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、セルロース製のろ紙、ろ布(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等)、不織布フィルタ(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド等)、繊維フィルタ(樹脂、ガラス、セラミックス、金属)、焼結フィルタ(金属、セラミックス、プラスチック等の粉末や繊維を熱および圧力により直接接着したもの)、およびこれらの材料を複合化したものなどが挙げられる。
これら多孔質材料からなる多孔質基材21において、気孔の平均開口径(繊維質材料にあっては繊維どうしの間隔)は、0.1μm以上、180μm以下のものが選択される。気孔の平均開口径が0.1μm未満であると、水(水分)の透過抵抗が大きくなり、加圧が必要となる場合や、透過に時間が必要となる場合があるために好ましくない。
一方、気孔の平均開口径が180μmを超えると、油(油分)が通過し始めるために好ましくない。これに対して、気孔の平均開口径が前記範囲内であると、油の透過が起こらず、かつ、実用上適した範囲の通水速度となるために好ましい。なお、多孔質基材21に形成された気孔は、必ずしも油分を全く通過させない構成に限定されるものではなく、水分を主体的に通過させ、油分も一定割合(少量)通過可能な幅のものも含む。
基材の表面にマイクロカプセル71を分散担持させる方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、マイクロカプセルが分散された液中に基材を浸漬する浸漬法や、スプレー、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは密閉可能な容器に基材を入れて置き、この容器内にマイクロカプセルが分散された液を通液する方法などが挙げられる。
また、例えば、通液可能な多数の開口を備えた網状や籠状の中空円筒体をカートリッジコアとして用い、このカートリッジコアの周面にマイクロカプセル71を分散担持させたシートや繊維を巻き付けて固定することによって、油水分離濾過フィルター12を作製することも可能である。
油水分離体73は、親水撥油剤のほかに、流動性改善剤、界面活性剤、難燃剤、導電付与剤、防カビ剤等の親水撥油以外の機能を付与するために添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
また、油水分離体73がマイクマロカプセルから放出され易くなるように、水やアルコールなどの極性溶剤やフッ素系溶剤などを、予めマイクルカプセル内に含ませておいてもよい。
以上のような構成の油水分離濾過フィルター12を備えた油水分離濾過カートリッジ10の作用を説明する。
本実施形態の油水分離濾過カートリッジ10の流入口11aから、水と油とを含む混合液体を流入させると、油水分離濾過フィルター12を構成する多孔質基材21に形成された油水分離層62の親水撥油性によって、混合液体が水分と油分に分離される。
そして、分離された油分は、開口径が0.1μm〜180μmの範囲の気孔22を通過することができず、水分との比重差によってフィルターケース11の上部に浮上する。一方、水分は油水分離層62の親水性によってトラップされて液膜化され、気孔22を通過して中空管13の内部に達する。
そして、分離された油分は排油口11bからオーバーフローによって排出される。一方、水分はフィルターケース11の排水口(流出口)12cから排出される。
以上のように、水と油とが混合した混合溶液を本実施形態の油水分離濾過カートリッジ10に流入させるだけで、効率よく、かつ確実に混合溶液を油分と水分とに分離することが可能になる。
また、油水分離濾過フィルター12は、多孔質基材21に対して親水撥油性が付与されるため、有機分子や土泥類が付着し難く、優れた耐ファウリング性が得られる。また、逆洗浄する等の物理処理によって付着した汚れが除去され易く、易洗浄性にも優れる。
また、油水分離濾過フィルター12は、前記式(1)又は(2)に示すフッ素系化合物のみを含む場合には、連続して結合している炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有せず、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造でありながら、優れた親水撥油性を付与することが可能である。
<第一実施形態の変形例>
図5は、第一実施形態の油水分離濾過カートリッジの変形例を示す断面図である。
油水分離濾過カートリッジ50は、フィルターケース51と、このフィルターケース51の内部に収容された油水分離濾過フィルター12とを備えている。
油水分離濾過フィルター12は、例えば第一実施形態と同様に中空円筒形に形成されている。
本実施形態のフィルターケース51には、混合液体を内部に流入させる流入口51a,油水分離濾過フィルター12によって油分を分離させた後の水分を流出させる排水口51bがそれぞれ形成されている。
この実施形態では、上部から混合液体をフィルターケース51内に導入し、上部から水分を流出させる一般的なフィルターケース51に油水分離濾過フィルター12を適用している。この場合、油水分離濾過フィルター12で分離された油分はフィルターケース51内に蓄積される。そして、油水分離性能が低下するなど一定量の油水分離を行った後、混合液体の供給を停止させ、流入口51aから蓄積された油分を排出して、再び油水分離を行うといったバッチ式の使用形態を採る。このため、複数の油水分離濾過カートリッジ50を用意して適宜切り替えて使用するなどによって、効率的に油水分離を行うことができる。そして、排油口を持ちないフィルターケース51であっても、油水分離濾過フィルター12を用いて効率的に油水分離を行うことができる。
なお、上述した実施形態のような油水分離濾過カートリッジのフィルターケースに対して、更に頂部に空気抜き用バルブ51cを備えたものも用いることができる。こうした空気抜き用バルブから、油水分離によって分離されフィルターケース内に浮上した油分をフィルターケースの外部に取り出すことによって、連続して効率的に油水分離を行うことができる。
また、1つのフィルターケースに対して、複数の油水分離濾過フィルターを収容し、複数の油水分離濾過フィルターによって油水分離を行う構成にすれば、単位時間あたりの油水分離能力が向上し、より一層効率的に混合液体の油水分離を行うことが可能になる。
なお、上述した実施形態のような油水分離濾過カートリッジのフィルターケースにおいて、流入口や排水口の形成位置は特に限定されるものでは無く、フィルターケースの上部や下部など装置構成に応じて任意の位置に形成することができる。また、フィルターケースの形状は、上述した円筒形以外にも直方体形状や球形など、任意の形状にすることができる。
<第二実施形態>
図3は、第二実施形態における油水分離濾過フィルターを示す要部拡大模式図である。
本実施形態の油水分離濾過フィルター32は、多数の気孔33を有する多孔質基材34と、気孔33の表面を含む多孔質基材34の表面全体に形成した油水分離層35とを備えている。そして、本実施形態では、多孔質基材34の一面34aと他面34bとの間を貫通する気孔33は、その開口径が一面34aから他面34bに向かって連続的に狭められている。なお、本実施形態における油水分離層35も、図6に示すように、殻体に油水分離体を内包させたマイクロカプセルを分散形成したものから構成されているものを含む。
こうした多孔質基材34の気孔33の開口径を連続的に狭める方法としては、例えば、多孔質基材34を構成する繊維の形成密度を一面34aから他面34bに向かって連続的に変化させたり、一面34a側から薬品を浸漬させることによって、気孔33の開口径を連続的に広げていくなどが挙げられる。
また、糸巻カートリッジなどで中心から外側に向けて緩やかに巻き密度を変化させることでも、疑似的に気孔33の開口径を連続的に広げたような形態とすることができる。
このように、気孔33の開口径を多孔質基材34の一面34aから他面34bに向かって連続的に狭める構成とすることで、油分が気孔33を通過することを防止しつつ、水分の通過速度を速めて、より効率的に混合溶液の油水分離を行うことが可能になる。
<第三実施形態>
図4は、第三実施形態における油水分離濾過フィルター体を示す要部拡大模式図である。
本実施形態の油水分離濾過フィルター42は、多数の気孔43を有する多孔質基材44と、気孔43の表面を含む多孔質基材44の表面全体に形成した油水分離層45とを備えている。そして、本実施形態では、多孔質基材44の一面44aと他面44bとの間を貫通する気孔43は、その開口径が一面44aから他面44bに向かって段階的に狭められている。例えば、本実施形態では、気孔43の開口径が3段階に変化している。なお、施形態における油水分離層45も、図6に示すように、殻体に油水分離体を内包させたマイクロカプセルを分散形成したものから構成されているものを含む。
こうした多孔質基材44の気孔43の開口径を段階的に狭める方法としては、例えば、第一の開口径の気孔43aを持つ多孔質基材44Aと、第一の開口径より狭い第二の開口径の気孔43bを持つ多孔質基材44Bと、第二開口径より狭い第三の開口径の気孔43cを持つ多孔質基材44Cとを順に重ねて貼り合わせることが挙げられる。
このように、気孔43の開口径を多孔質基材44の一面44aから他面44bに向かって連続的に狭める構成とすることで、油分が気孔43を通過することを防止しつつ、水分の通過速度を速めて、より効率的に混合溶液の油水分離を行うことが可能になる。
以上、本発明の油水分離濾過フィルターを備えた油水分離濾過カートリッジの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、多孔質基材として中空円筒形に形成したものを用いているが、多孔質基材としてシート状(平板状)のものを用いて、このシート状の多孔質基材の気孔を含む表面に油水分離層を形成して油水分離濾過フィルターとすることもできる。
また、上述した実施形態では、中空円筒形の油水分離濾過フィルターの外周面を一面として混合液体を流入させ、内周面を他面として油水分離した水分を流出させているが、これとは逆に、中空円筒形の油水分離濾過フィルターの内周面を一面として混合液体を流入させ、外周面を他面として油水分離した水分を流出させる構成とすることもできる。
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
(調製例1)
「液中乾燥法による有機高分子マイクロカプセルの調製」
12.5質量%のソルビタントリオレアートを含むエチルセルロースの5質量%ジクロロメタン溶液250mL中に、WO2016/017686号合成例46に記載の製造方法により合成した式(17)の化合物を7質量%配合した水分散液60mLを撹拌しながら室温下で添加し、W/O型エマルションを作製した。このW/O型エマルション300mLを5%ゼラチン水溶液中にかき混ぜながら添加し、40℃で60分間撹拌を続けた。得られたW/O/W型複合エマルションを約50℃まで加熱し、撹拌を継続しながら約3時間かけてジクロロメタンを蒸発させた。次に、生成したマイクロカプセルを水洗してソルビタントリオレアートを除き、さらに40℃の温水で洗浄してゼラチンを除去した。このようにして式(17)の化合物を内包したエチルセルロースマイクロカプセルを調製した。走査型電子顕微鏡の視野内の粒子像を写真撮影後に目視計測して求めたマイクロカプセルの平均径は7μmであった。
(調製例2)
「無機材料マイクロカプセルの調製」
中空多孔質シリカ球形粒子(鈴木油脂工業(株)製のゴッドボールB−6C、粒子径範囲が2〜3μm、吸油量140〜160mL/100g)10gを250mLの三角フラスコに採取し、吸引ろ過鐘にセットして1時間真空脱気した後、WO2016/017686号合成例17に記載の製造方法により合成した式(5)の化合物20質量%のエタノール分散液100mLを注入して中空多孔質シリカ球形粒子に分散液を浸透させた。常圧に戻して24時間放置した後、ろ別、乾燥させて式(5)の化合物を内包したシリカマイクロカプセル体を得た。
本発明の油水分離濾過フィルターの効果を検証した。
(実施例1)
調製例1で得られたエチルセルロースマイクロカプセル10質量%、結合剤として、ポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製エスレックB BH−3)を4質量%、および分散媒として水を86質量%の割合で配合した分散液を作製した。
次いで、濾過フィルターとして、市販のポリプロピレン製フィルター(ADVANTECコンパクトカートリッジMCP−7−C10E:長さ48mm、有効濾過面積500cm、公称気孔径7μm)(図2に示す模式図を参照)を使用し、調製した分散液に浸漬して、フィルターを表面処理した。このフィルターを60℃で2時間乾燥した。表面処理前後の計量値から付着量は70g/mであった。その後、表面処理したフィルターをフィルターケース(ADVANTEC:MTAタイプ、内容量約250ml)に組み込んだ(図5を参照)。
20Lのポリエチレン製広口瓶に、n−ヘキサデカン濃度50μl/Lの水混合液約15Lを入れ、混合液を撹拌機で撹拌しながら、前記ハウジングの流入口から混合液を毎分0.3Lの速度で濾過カートリッジに通液した。ポリエチレン製広口瓶中の水とn−ヘキサデカンの混合液を補給しながら、濾過カートリッジから排出された水の外観を目視で観察した。通液を始めてから8時間が経過した時点でも、n−ヘキサデカン由来の油膜は認められなかった。
(実施例2)
マイクロカプセル体として調整例2にて合成したシリカマイクロカプセル10質量%、分散媒としてエタノール90質量%の割合で配合した分散液を作成した。
次いで、濾過フィルターとして、外層から内層になるほど孔径を小さくした6層(6段階)プリーツタイプ(図4に示す模式図を参照)のポリプロピレン製フィルター(ADVANTECコンパクトカートリッジMCP−010AM−C10E:長さ48mm、有効濾過面積190cm、公称気孔径1μm)を使用し、調製した分散液に浸漬して、フィルターを表面処理した。このフィルターを60℃で2時間乾燥した。表面処理前後の計量値から付着量は50g/mであった。その後、表面処理したフィルターをフィルターケース(ADVANTEC:MTAタイプ、内容量約250ml)に組み込んだ(図5を参照)。
実施例1と同様な方法により、n−ヘキサデカン濃度50μl/Lの水混合液を毎分0.1Lの速度で濾過カートリッジに通液した。通液を始めてから12時間が経過した時点でも、n−ヘキサデカン由来の油膜は認められなかった。
(比較例1)
濾過フィルターとして、実施例1と同じポリプロピレン製フィルター(ADVANTECコンパクトカートリッジMCP−7−C10E)を使用し、マイクロカプセル体の代わりに式(17)のフッ素系化合物2質量%、結合剤としてポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 エスレックBH−3)4質量%、および分散媒としてエタノール94質量%に調製した液(表面被覆材)に浸漬し、フッ素系化合物換算の付着量が実施例1と同じ値になるようにフィルターを表面処理した。このフィルターを60℃で2時間乾燥した。表面処理前後の計量値から付着量は30g/mであった。その後、表面処理したフィルターをフィルターケース(ADVANTEC:MTAタイプ、内容量約250ml)に組み込んだ(図5を参照)。
実施例1と同様な方法により、n−ヘキサデカン濃度50μl/Lの水混合液を濾過カートリッジに通液した。通液を始めてから約4時間経過した頃、排水中にn−ヘキサデカン由来の油膜が認められた。
(比較例2)
濾過フィルターとして、実施例2と同じポリプロピレン製フィルター(ADVANTECコンパクトカートリッジMCP−010AM−C10E)を使用し、マイクロカプセル体の代わりに式(5)のフッ素系化合物2質量%、分散媒としてエタノール98質量%に調製した液(表面被覆材)に浸漬し、フッ素系化合物換算の付着量が実施例2と同じ値になるようにフィルターを表面処理した。このフィルターを60℃で2時間乾燥した。表面処理前後の計量値が付着量は10g/mであった。その後、表面処理したフィルターをフィルターケース(ADVANTEC:MTAタイプ、内容量約250ml)に組み込んだ(図5を参照)。
実施例2と同様な方法により、n−ヘキサデカン濃度50μl/Lの水混合液を濾過カートリッジに通液した。通液を始めてから約6時間経過した頃、排水中にn−ヘキサデカン由来の油膜が認められた。
本発明の油水分離濾過フィルターを備えた油水分離濾過カートリッジは、油と水とが混合した油水混濁液から、容易に、かつ効率的に水と油とを分離して回収できるので、水と油とを分離してから回収する必要のある施設等に幅広く適用することが可能である。
10 油水分離濾過カートリッジ
11 フィルターケース
12 油水分離濾過フィルター
21 多孔質基材
22 気孔
23 油水分離層

Claims (8)

  1. 水と油とを含む混合液体を通過させることによって、該混合液体から油分を分離して水分を濾過する油水分離濾過フィルターであって、
    水と油とを含む混合液体が流入する一面と、該一面に対向する他面との間を貫通する多数の気孔を備えた水浸透性の多孔質基材と、該多孔質基材のうち、少なくとも前記混合液体が流入する流入面側に形成された油水分離層と、を備え、
    前記油水分離層は、撥油性付与基および親水性付与基と、を有するフッ素系化合物を含む油水分離体を有し、
    前記フッ素系化合物は、下記式(1)又は(2)で示される構造の化合物のうち、一種又は二種以上を含むことを特徴とする油水分離濾過フィルター。
    Figure 2021065856
    Figure 2021065856
    前記式(1)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
    前記式(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、置換基を有していてもよいイミノ基及び置換基を有していてもよいCF基のいずれかを表す。
    また、前記式(1)及び(2)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基であり、Xは、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミンオキシド型及びホスホベタイン型のうち、いずれかの末端を有する両性型の親水性賦与基である。
  2. 前記油水分離層は、前記多孔質基材の前記一面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の油水分離濾過フィルター。
  3. 前記気孔は、前記一面から前記他面に向けて、開口径が段階的、または連続的に狭められることを特徴とする請求項1又は2に記載の油水分離濾過フィルター。
  4. 前記多孔質基材は中空円筒形に形成され、前記一面は、中空円筒形の前記多孔質基材の内周面または外周面を成すことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の油水分離濾過フィルター。
  5. 前記油水分離体は、マイクロカプセルに内包されて前記多孔質基材に分散していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の油水分離濾過フィルター。
  6. 前記マイクロカプセルは、前記油水分離体を含むコア体と、該コア体を被覆する耐水性の殻体と、からなることを特徴とする請求項5に記載の油水分離濾過フィルター。
  7. 前記マイクロカプセルは、有機結合剤又は無機結合剤によって前記多孔質基材に結合されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の油水分離濾過フィルター。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の油水分離濾過フィルターと、該油水分離濾過フィルターを収容するフィルターケースとを備えた油水分離濾過カートリッジであって、
    前記フィルターケースは、前記混合液体を前記流入面側に導入する流入口と、前記油水分離濾過フィルターを通過した液体を流出させる流出口とを備えたことを特徴とする油水分離濾過カートリッジ。
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