JP7045033B2 - 毛髪用化粧料 - Google Patents

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本発明は毛髪用化粧料に関する。
毛髪は、死んだ細胞の集まりであるが、約4~6年も人体の一部として存在している。毛髪は、自己修復能力を持たないため、日々の生活の中でダメージが蓄積し、数年後には大きな損傷へ発展するリスクを抱えている。例えば、洗髪は、老若男女問わず日常的に行われ、頭皮や毛髪の汚れを除去し清潔さを保つ上で必要不可欠である。一般的に、シャンプーは、毛髪の汚れを除去するためのアニオン系界面活性剤を主剤としており、毛髪の毛先部分は、切断されない場合、生え変わるまでに1500回以上も界面活性剤に曝されることになる。その他に、毛髪は、熱、紫外線、整髪料・染毛剤等の化学物質、擦れ等の物理的接触等により損傷する。
毛髪をこれらによる損傷から保護するために、C3からC5単糖類から選択される少なくとも一つの糖を、毛髪に適用する方法が知られている(特許文献1)。
特開2005-343902号公報
毛髪のダメージによる劣化を抑制する毛髪用化粧料を提供することを課題とする。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.アリトール、タリトールのいずれか、または両方を含有することを特徴とする毛髪用化粧料。
2.前記アリトール、タリトールのいずれか、または両方を、0.01質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする1.に記載の毛髪用化粧料。
3.ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアミスト、整髪料のいずれかであることを特徴とする1.または2.に記載の毛髪用化粧料。
本発明の毛髪用化粧料は、毛髪の酸化、熱ダメージ等による劣化を抑制することができる。そのため、本発明の毛髪用化粧料を用いることにより、ツヤ、コシを有する美しい髪を保つことができる。
実施例1における毛髪のシステイン酸量を示す図。 実施例2における通常の毛髪からのタンパク質溶出量を示す図。 実施例2におけるブリーチした毛髪からのタンパク質溶出量を示す図。 実施例3における通常の毛髪からのタンパク質溶出量を示す図。
本発明は、アリトール、タリトールのいずれか、または両方を含有する毛髪用化粧料に関する。
アリトール(Allitol)、タリトール(Talitol)は、自然界にその存在量が少ない単糖(希少糖)の誘導体であり、希少糖糖アルコールの一種である。アリトールは、D体とL体とが同一化合物である。タリトールは、D体とL体が存在し、本発明においては、D-タリトール、L-タリトール、およびこれらの混合物であるDL-タリトールのいずれも用いることができる。本発明において、アリトール、タリトールは、市販の試薬を用いることができる。
本発明であるアリトール、タリトールのいずれか、または両方を含有する毛髪用化粧料は、毛髪の酸化劣化を抑制することができる。さらに、本発明であるアリトール、タリトールのいずれか、または両方を含有する毛髪用化粧料は、毛髪の熱ダメージによる劣化を抑制することができる。
本発明の毛髪用化粧料は、アリトール、タリトールのいずれか、または両方の配合量が0.01質量%以上20質量%以下が好ましい。アリトール、タリトールのいずれか、または両方の配合量が0.01質量%以上20質量%以下である毛髪用化粧料を用いることにより、毛髪のダメージ、特に熱によるダメージによる劣化を効果的に抑制することができる。アリトール、タリトールのいずれか、または両方の配合量は、0.1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
本発明の毛髪用化粧料には、アリトール、タリトールのいずれか、または両方のほかに、通常、毛髪用化粧料に配合される、水、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、油溶性高分子、多価アルコール、糖、保湿剤、無機紛体、有機紛体、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、防腐剤、色素、香料、薬効成分等を配合することができる。
本発明の毛髪用化粧料は、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアミスト、整髪料等とすることができる。
[システイン酸量の測定]
毛髪がダメージを受けて酸化されるとシステイン酸が生成する。そのため、毛髪中のシステイン酸量は、毛髪の酸化劣化の指標とすることができる。
(1)実験方法
試験溶液は、精製水(基準)、5%アリトール水溶液(実施例)、5%D-グルコース水溶液(比較例)の3種類を用意した。
市販の人毛黒髪(同一人)を三つの毛束に分け、下記a.~e.の操作を10回繰り返した。
a.試験溶液に毛束を30秒浸漬し、ドライヤーで熱風を当てて乾かした。
b.リングコームで20回くし通しをし、200℃のストレートアイロンで一定の速さで5回アイロンスルーした。
c.常温の1.5%ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSという)水溶液に5分浸漬した。
d.40℃の水道水に5分浸漬した。
e.流水で2分洗浄し、ドライヤーで熱風を当てて乾かした。
毛束から毛髪を1本とり、赤外分光光度計でATR法により赤外線吸光度を測定した。装置は、Universal ATR Sampling Accessoryを備えたPerkin Elmer Spectrum400 FTIR/FT-NIR Spectrometerを用いた。タンパク質量の基準となるアミドI(1650cm-1)の吸光度に対するシステイン酸による1040cm-1の吸光度の比率を求め、システイン酸の量に対応する数値(以下、システイン酸量とする)とした。システイン酸量は毛髪20本の測定値を平均して求めた。結果を図1に示す。
(2)結果
水(基準)で処理したときのシステイン酸量は0.143であるのに対して、アリトール(実施例)で処理したときのシステイン酸量は0.134となり、危険率p<0.01で有意にシステイン酸量が少なかった。すなわち、毛髪をアリトールで処理することにより、ドライヤーとくし通しによる損傷が抑制できた。一方、D-グルコース(比較例)で処理したときのシステイン酸量は0.147であり、水(基準)と有意差はなかった。
[タンパク質溶出量の測定]
毛髪が劣化するとタンパク質の溶出量が増加する。そのため、タンパク質の溶出量は、毛髪の劣化の指標とすることができる。
(1)実験方法
試験溶液は、精製水(基準)、5%アリトール水溶液(実施例)、5%D-タリトール水溶液(実施例)の3種類を用意した。
市販の人毛黒髪(同一人)を二つに分け、一方をブリーチ(脱色)した。なお、ブリーチは、6%の過酸化水素と0.5%のアンモニアを含有する常温の水溶液に毛束を20分間浸漬し、水洗し、ドライヤーで乾かす操作を3回繰り返して行った。
試験溶液に毛束を12時間浸漬し、その後、ドライヤーで熱風を当てて乾かした。乾燥後の毛束に200℃のストレートアイロンを150回アイロンスルーし、熱ダメージを与えた。
熱ダメージを与えた部分の毛髪を5~10mm程度の長さに刻み、遠沈チューブに100mg秤取した。この遠沈チューブに溶出液として、1.5%のSDSと50mMのTris-HClを含有する水溶液を1mL加え、37℃で2.5時間静置し、タンパク質を溶出させた。
静置後、遠心分離器で5000rpm、25℃、5minで毛髪を沈降させ、上清を採取し、上清中のタンパク質量をBCA法にて測定した。毛髪秤取-タンパク質溶出-BCA法によるタンパク質量の測定は3回行い、平均値を求めた。通常の毛髪、ブリーチした毛髪での結果を、それぞれ図2、3に示す。
(2)結果
[通常の毛髪]
熱ダメージを与えていない毛髪からのタンパク質の溶出量は29.6μg/mLであったのに対して、熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は101.7μg/mLであり、約3.4倍に増加した。一方、アリトールで処理したのちに熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は19.9μg/mL、D-タリトールで処理したのちに熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は19.4μg/mLであり、どちらも熱ダメージを与えていない毛髪からのタンパク質量と変わらず、劣化が全く生じていないことが確認できた。
[ブリーチした毛髪]
熱ダメージを与えていないブリーチをした毛髪からのタンパク質の溶出量は181.0μg/mLであったのに対して、熱ダメージを与えたブリーチした毛髪からのタンパク質の溶出量は351.1μg/mLであり、約1.9倍に増加した。一方、アリトールで処理したのちに熱ダメージを与えたブリーチをした毛髪からのタンパク質の溶出量は168.8μg/mLであり、熱ダメージを与えていないブリーチをした毛髪からのタンパク質溶出量と変わらず、劣化が全く生じていないことが確認できた。D-タリトールで処理したのちに熱ダメージを与えたブリーチをした毛髪からのタンパク質の溶出量は231.7μg/mLであり、熱ダメージを与えていないブリーチをした毛髪からのタンパク質の溶出量の約1.3倍であり、アリトールやD-タリトールで処理していない熱ダメージを与えた毛髪のタンパク質溶出量の増加比率である約1.9倍と比べて、顕著に増加比率が小さく、D-タリトール処理による熱劣化抑制効果が確認できた。
[タンパク質溶出量の測定]
実施例2と同条件で、使用する毛髪と試験溶液を変えて、通常毛について実験した。
(1)実験方法
試験溶液は、精製水(基準)、5%D-ソルビトール水溶液(比較例)、5%アリトール水溶液(実施例)、の3種類を用意した。
市販の人毛黒髪(実験例2と別人)を用いた。
実施例2と同様に、試験溶液に毛束を12時間浸漬し、その後、ドライヤーで熱風を当てて乾かした。乾燥後の毛束に200℃のストレートアイロンを150回アイロンスルーし、熱ダメージを与えた。
熱ダメージを与えた部分の毛髪を5~10mm程度の長さに刻み、遠沈チューブに100mg秤取した。この遠沈チューブに溶出液として、1.5%のSDSと50mMのTris-HClを含有する水溶液を1mL加え、37℃で2.5時間静置し、タンパク質を溶出させた。
静置後、遠心分離器で5000rpm、25℃、5minで毛髪を沈降させ、上清を採取し、上清中のタンパク質量をBCA法にて測定した。毛髪秤取-タンパク質溶出-BCA法によるタンパク質量の測定は3回行い、平均値を求めた。結果を、図4に示す。
(2)結果
熱ダメージを与えていない毛髪からのタンパク質の溶出量は15.0μg/mLであったのに対して、熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は32.9μg/mLであり、約2.2倍に増加した。D-ソルビトールで処理したのちに熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は29.5μg/mLであり、熱処理前と比べて約2.0倍に増加した。D-ソルビトールには、熱ダメージによる劣化の抑制効果が殆ど認められなかった。一方、アリトールで処理したのちに熱ダメージを与えた毛髪からのタンパク質の溶出量は15.6μg/mLであり、熱ダメージを与えていない毛髪からのタンパク質量と殆ど変わらず、劣化が生じていないことが確認できた。
処方例1
ヘアシャンプー
(配合成分) (質量%)
1.BG 6
2.ペンチレングリコール 2
3.アリトール 5
4.タリトール 5
5.ココイルグルタミン酸K 8
6.ココイルアラニンNa 5
7.ココアンホ酢酸Na 5
8.セテアレス-60ミリスチルグリコール 3
9.ポリクオタニウム-10 0.5
10.クエン酸 0.7
11.精製水 残余

(1)80℃に加熱混合した3~8,11に、先に混合した1,2,9を徐々に添加し80℃で均一撹拌する。
(2)(1)を30℃まで冷却し10を加えて均一混合しヘアシャンプーとした。
処方例2
ヘアトリートメント
(配合成分) (質量%)
1.水添ナタネ油アルコール 12
2.ベヘナミドプロピルジメチルアミン 3
3.ジメチコン 6
4.ステアリン酸イソセチル 3
5.BG 6
6.ペンチレングリコール 2
7.アリトール 3
8.タリトール 3
9.乳酸 0.8
10.精製水 残余

(1)80℃に加熱混合した5~10に、80℃に加熱混合した1~4を徐々に添加し均一撹拌する。
(2)(1)を撹拌しながら30℃まで冷却しヘアトリートメントとした。
処方例3
ヘアクリーム
(配合成分) (質量%)
1.エチルヘキサン酸セチル 3
2.ジメチコン 2
3.シア脂 1
4.ステアリン酸グリセリル(SE) 3
5.ステアリン酸ポリグリセリル-10 2
6.BG 6
7.ペンチレングリコール 2
8.アリトール 1
9.タリトール 1
10.カルボマー 0.2
11.精製水 残余
12.pH調整剤 適量

(1)80℃に加熱混合した6~11に、80℃に加熱混合した1~5を徐々に添加し均一撹拌する。
(2)(1)を撹拌しながら30℃まで冷却し12を加えてヘアクリームとした。
処方例4
ヘアミスト
(配合成分) (質量%)
1.BG 6
2.ペンチレングリコール 2
3.アリトール 0.05
4.タリトール 0.05
5.エタノール 6
6.PEG-11メチルエーテルジメチコン 3
7.精製水 残余

(1)1~7を均一混合し、ヘアミストとした。

Claims (3)

  1. アリトール、タリトールのいずれか、または両方を含有し、酸化及び熱ダメージによる劣化抑制用であることを特徴とする毛髪用化粧料。
  2. 前記アリトール、タリトールのいずれか、または両方を、0.01質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の毛髪用化粧料。
  3. ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアミスト、整髪料のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の毛髪用化粧料。
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