ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態の自動運転システムの構成:
(2)第1実施形態の自動運転処理:
(3)第2実施形態:
(4)他の実施形態:
(1)第1実施形態の自動運転システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる自動運転システム10のブロック図である。自動運転システム10は車両50に搭載されている。自動運転システム10は、無線通信を介して障害物監視サーバ100と通信可能となっている。図示しないが、多数の車両50のそれぞれに自動運転システム10が搭載されており、自動運転システム10のそれぞれが障害物監視サーバ100と通信可能となっている。
車両50は、障害物感知部51と運転I/F部52と外部通信部53と車両ECU(Electronic Control Unit)54と加減速部55aと操舵部55bと位置センサ56と乗員監視部57とを備える。運転I/F部52は、運転に関する操作を入力したり運転に関する情報を出力したりする装置であり、ステアリングホイールやペダルやシフトレバー等の各種操作部やディスプレイやスピーカ等の各種出力部を含む。
障害物感知部51は、車両の前方(正面前方からの角度が障害物感知角α内)に存在する障害物を感知するためのセンサを含み、当該センサはレーダーであってもよいし、車両の前方風景を撮像するカメラであってもよい。障害物感知部51は、レーダーの反射波の信号処理や前方風景の画像認識処理を行うことにより、障害物を感知する。障害物感知部51は、障害物の位置を計測可能である。
障害物感知部51は、障害物を感知すると、障害物が存在することを示すプローブ情報Pを生成し、障害物監視サーバ100に送信する。障害物が存在することを示すプローブ情報Pは、少なくとも障害物の感知時刻と、当該感知時刻における車両50の現在地と、障害物の位置と、を示す。
車両50から障害物が存在することを示すプローブ情報Pを受信した障害物監視サーバ100は、プローブ情報Pに基づいて障害物情報Oを生成し、障害物情報Oを各車両50に送信する。障害物情報Oは、少なくとも障害物が存在する位置と、障害物の感知時刻とを示す。
外部通信部53は、自動運転システム10と無線通信を行うための通信回路である。車両ECU54は、加減速部55aと操舵部55bとを制御するためのコンピュータである。なお、手動運転中において、車両ECU54は、運転I/F部52に対する操作に応じて加減速部55aと操舵部55bとを制御する。一方、自動運転中において、車両ECU54は、自動運転システム10からの指令に基づいて加減速部55aと操舵部55bとを制御する。加減速部55aは、車両50を加速または減速させる各種アクチュエータであり、エンジンのスロットルバルブやモータや摩擦ブレーキやトランスミッション等である。操舵部55bは、車両50を操舵させる各種アクチュエータであり、ステアリングギアボックスや操舵輪等である。
位置センサ56は、車両50の位置を検出するためのセンサであり、GNSS受信部や車速センサやジャイロセンサや外部カメラ等である。GNSS受信部や車速センサやジャイロセンサの出力信号に基づいて車両50の現在地を特定できる。さらに、自動運転システム10は、外部カメラによって撮像された車両50の前方風景や後方風景を画像認識処理することによって、車両50の高精度の現在地を得る。以下、現在地とは、高精度の現在地を意味することとする。自動運転システム10は、現在地に基づいて自動運転を行う。むろん、制御部20は、現在地に基づいて、車両50が現在位置しているレーンである走行レーンを特定可能である。
乗員監視部57は、運転席に着座する乗員を撮像するカメラと、撮像した運転者の画像を画像認識処理することにより運転者の環境状態(注意地点Cにおける障害物の有無)に対する集中度を算出する画像認識部(コンピュータ)とを含む。
具体的に、画像認識部は、運転者の顔と眼球の方向とを認識することにより、運転者の視線方向を導出する。そして、画像認識部は、評価期間のうち、運転者の視線方向が車両50の正面前方に留まっている期間の割合である前方注視率に基づいて集中度を判定する。車両50の正面前方とは、車両50の正面前方に向かうベクトルの方向に対する誤差角が一定値(例えば25度)以下となる方向であってもよい。画像認識部は、前方注視率が第1閾値(例えば90%)以上であれば集中度が高であると判定する。画像認識部は、前方注視率が第1閾値未満かつ第2閾値(例えば50%)以上であれば集中度が中であると判定する。さらに、画像認識部は、前方注視率が第2閾値未満であれば集中度が低であると判定する。
自動運転システム10は、制御部20と記録媒体30と通信部40とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶された自動運転プログラム21を実行する。通信部40は、車両50の各部51~57と通信をするための有線通信回路である。通信部40は、無線通信回路であってもよい。
記録媒体30は、地図情報30aと自動運転計画30bとを記録している。地図情報30aは、ノードデータとリンクデータと案内データとを含む。ノードデータは、おもに交差点についての情報を示す。具体的に、ノードデータは、交差点に対応するノードの座標や交差点の形状や交差点における交通整理(信号機,交通誘導員等)の有無を示す。また、交差点には、駐車場等の施設の出口が道路区間に接続する施設接続点が含まれる。リンクデータは、道路区間に対応するリンクについて区間長や旅行時間や制限速度等の各種情報を示す。道路区間は、長さ方向に連続する交差点で区切った道路の単位であり、リンクの両端にはノードが存在する。なお、3個以上のリンクが接続しているノードが交差点に対応する。リンクデータには、道路区間上に存在する信号機の位置と、当該信号機の停止線が設けられた停止地点を示す情報が含まれている。
さらに、地図情報30aは、レーン構造データやレーン形状データや路面ペイントデータ等を含む。レーン構造データは、道路区間ごとにレーン数や交差点付近におけるレーンの増設状況などを規定したデータである。レーン形状データは、レーンの幅やレーンの長さなどを規定したデータである。路面ペイントデータは、路面上に形成されたペイントの位置と内容とを示すデータである。レーン構造データや路面ペイントデータは、画像認識処理によって現在地を得る際に利用される。自動運転計画30bは、道路上に設定された時系列の目標位置と、各目標位置における目標速度と目標加減速度と目標操舵角とを示す。
自動運転プログラム21は、環境検知モジュール21aと運転制御モジュール21bとを含む。環境検知モジュール21aと運転制御モジュール21bとは、それぞれコンピュータとしての制御部20を環境検知部と運転制御部として機能させるプログラムモジュールである。
環境検知モジュール21aの機能により制御部20は、車両の環境状態として、注意地点における障害物の有無を検知する。ここで、注意地点とは、車両50の進路上に障害物としての他車両等が進入する可能性がある地点である。具体的に、注意地点とは、交通整理がされていない交差点であり、施設接続点が含まれる。交通整理がされていないとは、信号機や交通誘導員が存在しないことを意味する。なお、注意地点は、歩行者が進入する可能性がある横断歩道の周辺地点であってもよい。
図2は、注意地点Cを説明する道路の模式図である。同図に示すように、注意地点Cは、車両50が走行している道路区間である走行区間B1に対して、別の道路区間である接続区間B2が接続している交差点に設定されている。注意地点Cは、地図情報30aのノードデータに基づいて取得できる。具体的に、走行区間B1の幅方向の境界線Q1からの距離が0~基準距離Hとなる接続区間B2内の領域を注意地点Cとする。基準距離Hは、予め決められた距離であり、例えば2mであってもよい。
本環境検知モジュール21aの機能により制御部20は、障害物監視サーバ100から受信した障害物情報Oに基づいて注意地点Cにおける障害物の有無を検知する。障害物情報Oは、注意地点C付近を走行する車両50(他車両)や路側感知器Yから送信されたプローブ情報Pに基づいて生成される。路側感知器Yは、レーダーやカメラによって障害物としての他車両等を感知する装置であり、障害物の感知時刻と位置とを示すプローブ情報Pを障害物監視サーバ100に送信する。以下の説明において、車両50と表記した場合、特に示さない限り自車両を意味することとする。
制御部20は、車両50が注意地点Cのすぐ手前の接近区間Mの始点を通過する際に、現在、注意地点Cに障害物が存在するか否かを検知する。すなわち、制御部20は、注意地点Cのすぐ手前の接近区間Mの始点において、注意地点Cにおける障害物の有無を障害物監視サーバ100に問い合わせ、その応答として障害物情報Oを受信する。制御部20は、注意地点Cにおいて感知時刻が現在時刻から一定期間(例えば5秒)以内となっている障害物が存在することを示す障害物情報Oを受信した場合に、障害物が存在することを検知する。
一方、制御部20は、注意地点Cにおいて感知時刻が現在時刻から一定期間以内となっている障害物が存在することを示す障害物情報Oを受信しなかった場合に、障害物が存在しないことを検知する。従って、障害物情報Oを受信する検知地点Dは、接近区間Mの始点と一致すると見なすことができる。なお、車両50の制御部20が障害物の有無を特定することを検知と表記し、車両50の乗員が障害物の有無を知ることを認知と表記し、車両50(他車両)の障害物感知部51が障害物の有無を特定することを感知と表記する。
接近区間Mとは、走行区間B1に対して接続区間B2が接続している地点を車両50が通過する直前(例えば5秒間)に走行する区間であり、車両50が注意地点Cを通過(最接近)する直前に走行する区間である。なお、接近区間Mは、走行区間B1に対して接続区間B2が接続している地点までの残距離が予め決められた距離以下となる区間であってもよい。
運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、環境検知部(制御部20)が検知した環境状態が第1状態である場合に第1制御目標で運転制御を行い、環境検知部が検知した環境状態が第2状態である場合に第2制御目標で運転制御を行う。ここで、第1制御目標は、第1目標速度であり、第2制御目標は、第1目標速度よりも大きい速度である第2目標速度であり、第1状態は、注意地点Cに障害物が存在することであり、第2状態は、注意地点Cに障害物が存在しないことである。
制御部20は、接近区間Mの始点において、注意地点Cに障害物が存在することが検知された場合に、接近区間Mを走行する直前の評価期間(例えば20秒)間における乗員の集中度を乗員監視部57から取得する。そして、乗員の集中度が高であった場合、制御部20は、接近区間Mの終点(注意地点C)の速度が徐行速度VL(例えば4km/時)となる速度を第1目標速度として設定する。これにより、車両50が注意地点Cにおいて障害物と衝突する可能性を低減できる。第1目標速度を設定した場合、徐行速度以下で接近区間Mに進入した場合を除いて、接近区間Mで減速が行われることとなる。
図3は、接近区間における目標速度を説明するグラフである。例えば、制御部20は、接近区間Mにおける加速度が一定値となるように、接近区間M内の各目標位置について第1目標速度(一点鎖線)を設定してもよい。接近区間Mにおける加速度は一定であってもよいし、変化してもよい。
なお、自動運転計画30bは、注意地点Cに障害物が存在しないことを前提に作成されており、もともと接近区間Mにおける目標速度として第2目標速度(破線)が設定されている。そのため、制御部20は、接近区間Mの始点において、注意地点Cに障害物が存在することが検知された場合に、自動運転計画30bに規定されている第2目標速度ではなく、第1目標速度で運転制御を行う。
一方、制御部20は、接近区間Mの始点において、注意地点Cに障害物が存在しないことが検知された場合に、制限速度VHで走行するための速度を第2目標速度として設定する。制限速度VHで走行するための速度とは、接近区間Mの始点における初速VDが制限速度VHよりも小さければ制限速度VHに向けて加速する速度を意味し、接近区間Mの始点における初速VDが制限速度VHであれば初速VDを維持することを意味する。自動運転計画30bにおいては、もともと接近区間Mにおける目標速度として第2目標速度が設定されている。そのため、障害物が存在しないことを環境検知部が検知した場合、制御部20は、自動運転計画30bに規定されている第2目標速度で運転制御を行う。なお、加速の目標は制限速度VHに限らず、乗員が設定した巡航速度であってもよい。
注意地点Cの直前の接近区間Mにおいては、原則として、以上のような目標速度が設定される。ただし、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、環境検知部(制御部20)が環境状態を検知でき、かつ、車両の乗員が環境状態を認知できない緩衝区間における制御目標である緩衝制御目標を、集中度が高いほど、第2制御目標から第1制御目標に大きく近づくように修正した制御目標に設定する。ここで、緩衝区間Wは、乗員の死角に注意地点Cが存在する区間である。乗員の死角に注意地点Cが存在する区間においては、乗員は注意地点Cが存在するか否かを認知できない。
まず、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、乗員の死角に注意地点Cが存在する区間を緩衝区間Wとして取得する。具体的に、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、車両50が注意地点Cに接近する際に、乗員の死角に注意地点Cが存在するか否かを判定する。制御部20は、接近区間Mの始点において、乗員の死角に注意地点Cが存在するか否かを判定する処理を行う。
制御部20は、接近区間Mの始点において、乗員の死角に注意地点Cが存在すると判定した場合、接近区間Mの始点を緩衝区間Wの始点として取得する。接近区間Mの走行中において、制御部20は、乗員の死角に注意地点Cが存在するか否かを判定する処理を繰り返して行い、乗員の死角に注意地点Cが存在しなくなった地点を認知地点Aとして取得する。この認知地点Aは、緩衝区間Wの終点を意味する。従って、接近区間Mのうち、接近区間Mの始点から認知地点Aまでの区間が緩衝区間Wとなる。
本実施形態において、障害物感知部51は車両50の前方風景を撮像した画像を画像認識処理することにより障害物を感知する。障害物感知部51は、前方風景を撮像した画像において判定地点Fが建物Zによって遮蔽されていない場合に、乗員の死角に注意地点Cが存在しないと判定する。
具体的に、制御部20は、判定地点Fと車両50の現在地と障害物感知部51の光学系の仕様に基づいて、判定地点Fに対応する画像上の対応位置を特定し、当該対応位置に建物Zの像が存在しない場合に、乗員の死角に注意地点Cが存在しないと判定する。判定地点Fは、接続区間B2の幅方向の中央線上において、走行区間B1の幅方向の境界線Q1からの距離が基準距離Hとなる地点である。
運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、接近区間Mの始点を通過する際に、注意地点Cに障害物が存在しないこと(第2状態)が検知された場合であっても、乗員の死角に注意地点Cが存在すると判定した場合には、第2目標速度ではなく、緩衝目標速度で運転制御を行う。さらに、制御部20は、乗員の集中度が高いほど、第2目標速度から第1目標速度に大きく近づくように修正した緩衝目標速度を設定する。
制御部20は、緩衝制御目標を、乗員の集中度が高いほど、接近区間Mの終点にて徐行速度VLに近い速度となる目標速度を設定する。この集中度は、接近区間Mを走行する直前(例えば直前20秒間)の評価期間について判定された集中度である。図3Bは、本実施形態における緩衝目標速度を示すグラフである。
図3に示すように、集中度が高である場合、制御部20は、接近区間Mの終点にて徐行速度VLの2倍の速度VL2となる目標速度を緩衝目標速度として設定する。集中度が中である場合、制御部20は、接近区間Mの終点にて徐行速度の3倍の速度VL3となる目標速度を緩衝目標速度として設定する。さらに、集中度が中である場合、制御部20は、接近区間Mの終点にて徐行速度の4倍の速度VL4となる目標速度を緩衝目標速度として設定する。速度VL2~VL4は、制限速度VHよりも小さいため、緩衝目標速度は、第2目標速度から第1目標速度に近づくように修正した速度となる。また、集中度が高いほど、緩衝目標速度は、第1目標速度としての徐行速度VLに大きく近づいた目標速度となっている。
制御部20は、接近区間M(緩衝区間W)の走行中において、乗員の死角に注意地点Cが存在するか否かを判定し、乗員の死角に注意地点Cが存在しなくなった場合に、緩衝区間Wの走行が終了したとして、緩衝目標速度での運転制御を終了する。例えば、制御部20は、制限速度VHとなるように一定の加速度で加速する目標速度(二点鎖線)で運転制御を行う。乗員の死角に注意地点Cが存在しなくなった地点とは、乗員が注意地点Cに障害物が存在しないことを認知可能となる認知地点Aとなる。認知地点Aを終点とする緩衝区間Wにおいて、第2目標速度から第1目標速度に近づくように修正した緩衝目標速度で運転制御が行われることとなる。その結果、乗員が注意地点Cに障害物が存在しないことを認知可能となる認知地点Aに到達するまで、制限速度VHに向けて加速することを保留することができる。
運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、自動運転計画30bが示す時系列の目標位置における目標速度と目標加減速度と目標操舵角を実現するように、加減速部55aと操舵部55bをフィードバック制御する。
前記のように構成した本実施形態においては、環境検知部(制御部20)が環境状態を検知できても乗員が環境状態を認知できない緩衝区間において、第1制御目標と第2制御目標のいずれかで運転制御が行われると、第1状態と第2状態のいずれであるかを認知できない乗員は違和感を覚えることとなる。第1制御目標または第2制御目標で運転制御が行われている要因を乗員が認知できないからである。ここで、環境検知部(制御部)が第2状態を検知している場合には、原則通り、第2制御目標で運転制御を行うことが望ましい。しかし、環境状態が第1状態であるかも知れないと考える乗員が違和感を覚える可能性があるため、第2制御目標から第1制御目標に近づくように修正した緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を低減できる。
ここで、注意地点Cに障害物が存在する第1状態において、第2目標速度よりも小さい第1目標速度で運転制御を行うことにより、障害物と衝突する可能性を低減できる。また、注意地点Cに障害物が存在しない第2状態において、第1目標速度よりも大きい第2目標速度で運転制御を行うことができる。しかし、注意地点Cが乗員の死角に存在する場合には、乗員が注意地点Cに障害物が存在しない第2状態を認知できない。このような場合に、第2目標速度で運転制御が行われると、速度が大きすぎであると乗員が不安感を覚えることとなる。
以上のような違和感や不安感は、環境状態を認知しようとしても認知できない乗員において生じる可能性が高い。すなわち、以上のような違和感は、環境状態に集中している乗員において生じやすい。そのため、環境状態に対する乗員の集中度に応じて、緩衝区間における制御目標である緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を効果的に低減できる。具体的に、集中度が高いほど第1目標速度に大きく近づくように修正した緩衝制御目標を設定することにより、速度が大きすぎであると不安に感じる乗員の不安感を効果的に低減できる。
(2)第1実施形態の自動運転処理:
図4は、自動運転処理のフローチャートである。自動運転システム10は予め作成された自動運転計画30bに基づいて自動運転の運転制御を行っている期間において、注意地点Cに接近するごとに実行される処理である。まず、環境検知モジュール21aの機能により制御部20は、接近区間Mの始点に到達したか否かを判定する(ステップS200)。すなわち、制御部20は、車両50が注意地点Cを通過(最接近)する直前(例えば5秒間)となっているか否かを判定する。
接近区間Mの始点であると判定しなかった場合(ステップS200:N)、制御部20は、ステップS200に戻り、接近区間Mの始点に到達するまで待機する。一方、接近区間Mの始点であると判定した場合(ステップS200:Y)、環境検知モジュール21aの機能により制御部20は、障害物情報Oを受信する(ステップS210)。すなわち、制御部20は、注意地点Cにおける障害物の有無を示す障害物情報Oを受信する。
次に、環境検知モジュール21aの機能により制御部20は、注意地点Cに障害物が存在するか否かを判定する(ステップS220)。すなわち、制御部20は、注意地点Cに障害物が存在することを示す障害物情報Oが受信されたか否かを判定する。
注意地点Cに障害物が存在すると判定した場合(ステップS220:Y)、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、第1目標速度を設定する(ステップS230)。すなわち、制御部20は、接近区間Mにおいて徐行速度まで減速するために、第1目標速度で運転制御を行う。
注意地点Cに障害物が存在すると判定しなかった場合(ステップS220:N)、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、乗員の死角に注意地点Cが存在するか否かを判定する(ステップS240)。すなわち、制御部20は、接近区間Mの始点において、乗員が注意地点Cにおける障害物の有無を認知できるか否かを判定する。
乗員の死角に注意地点Cが存在すると判定しなかった場合(ステップS240:N)、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、第2目標速度を設定する(ステップS250)。すなわち、制御部20は、すでに乗員が注意地点Cに障害物が存在しないことを認知できる場合には、制限速度VHで走行するための第2目標速度を設定する。
一方、乗員の死角に注意地点Cが存在すると判定した場合(ステップS240:Y)、運転制御モジュール21bの機能により制御部20は、乗員の集中度が高いほど第1目標速度に近い緩衝目標速度を設定する(ステップS260)。すなわち、制御部20は、乗員が注意地点Cに障害物が存在しないことを認知できない緩衝区間Wを走行しているとして、第2目標速度から第1目標速度に近づくように修正した緩衝目標速度を設定する。さらに、制御部20は、緩衝区間Wを走行する直前の評価期間における乗員の集中度が高いほど、注意地点Cまでに徐行速度VLに近い速度まで減速する緩衝目標速度を設定する(図3)。
(3)第2実施形態:
図5は、本発明の第2実施形態にかかる自動運転システム110のブロック図である。自動運転システム110は車両150に搭載されている。自動運転システム110は、無線通信を介して信号情報提供サーバ200と通信可能となっている。図示しないが、多数の車両150のそれぞれに自動運転システム110が搭載されており、自動運転システム110のそれぞれが信号情報提供サーバ200と通信可能となっている。
車両150は、障害物感知部51の代わりに風景撮像部151を備えている点で第1実施形態と相違する。風景撮像部151は、車両150の前方風景を撮像する前方カメラを備える。前方カメラは、車両の正面前方を中央光軸とする画角を有する。風景撮像部151は、予め決められた時間周期(例えば0.5秒)で前方風景を撮像し、撮像した風景画像を示す風景画像データを制御部120に出力する。風景画像データは、制御部120における画像認識処理に用いられる。また、風景撮像部151は、風景画像データと、当該風景画像データを撮像した撮像地点を示す情報と、を含むプローブ情報Pを信号情報提供サーバ200に送信する。
図6は、プローブ情報Pに含まれる風景画像データが示す風景画像Iを示す。信号情報提供サーバ200は、プローブ情報Pを受信すると、当該プローブ情報Pに含まれる風景画像データの画像認識処理を行う。具体的に、信号情報提供サーバ200は、風景画像Iにおいて信号機像IGを抽出し、当該信号機像IGのサイズSIGを取得する。信号機像IGのサイズSIGは、信号機像IGの縦方向の長さであってもよいし、横方向の長さであってもよいし、面積であってもよい。信号機像IGは、公知のテンプレートマッチング等によって抽出することができる。
図7Aは、信号機Gに接近する車両150が撮像した風景画像における信号機像IGのサイズSIGを示すグラフである。同図の横軸は信号機Gの停止線が設けられた停止地点Q2までの残距離Kを示し、縦軸は信号機像IGのサイズSIGを示す。時間周期ごとに風景画像が撮像され、プローブ情報Pが蓄積されるため、信号情報提供サーバ200は、各残距離Kにおける信号機像IGのサイズSIGを得ることができる。信号機像IGのサイズSIGは残距離Kが大きいほど小さくなる。信号情報提供サーバ200は、信号機像IGのサイズSIGが認知閾値THAと等しくなる地点を認知地点Aとして取得し、信号機像IGのサイズSIGが検知閾値THDと等しくなる地点を検知地点Dとして取得する。
認知閾値THAは、検知閾値THDよりも小さい。認知閾値THAは、車両150の乗員が信号機Gの現示を認知できる下限の信号機像IGのサイズSIGに対応している。従って、認知地点Aよりも残距離Kが大きくなる地点からは信号機Gの現示を認知できないと考えることができる。認知閾値THAは、平均的な視力を有する観察者が信号機Gの現示を認知できる限界の地点から撮像した風景画像における信号機像IGのサイズSIGを調査することにより得ることができる。検知閾値THDの詳細については後述する。信号情報提供サーバ200は、信号機Gごとに、認知地点Aと検知地点Dとを対応付けて信号地点DB(Database)130に記録しておく。なお、車両50の制御部20が信号機Gの現示を特定することを検知と表記し、車両50の乗員が信号機Gの現示を知ることを認知と表記する。
また、認知地点Aを始点とし、検知地点Dを終点とする区間を緩衝区間Wと表記する。この緩衝区間Wは、信号機Gごとに異なり得る。例えば、信号機Gの手前の道路区間が直線道路である場合、図7Aのように認知地点Aと検知地点Dとの間に距離が生じ、緩衝区間Wが形成されやすくなる。一方、カーブや勾配変化点が存在する場合、信号機Gのすぐ手前において、前方カメラの画角に信号機Gが進入することがあり得る。このような場合、図7Bに示すように、風景画像にはじめて出現した信号機像IGのサイズSIGが認知閾値THA,検知閾値THDの双方より大きくなり得る。この場合、緩衝区間Wが形成されないこととなる。
本実施形態において、環境検知モジュール121aの機能により制御部120は、環境状態として、車両150の前方の信号機Gの現示を検知する。具体的に、制御部120は、風景撮像部151が予め決められた時間周期で撮像した風景画像の画像認識処理を行うことにより、風景画像において信号機像IGを認識する。そして、制御部120は、認識した信号機像IGのサイズSIGが上述した検知閾値THD以上である場合に、信号機像IGにおいて信号機Gの現示を検知する。例えば、制御部120は、信号機像IGにおいて明度が他の部分よりも大きい領域を認識し、当該領域の位置に基づいて信号機Gの現示を検知してもよい。むろん、制御部20は、明度の大きい画素の色彩に基づいて信号機Gの現示を検知してもよい。
なお、制御部120は、認識した信号機像IGのサイズSIGが検知閾値THD未満である場合には、信号機像IGにおいて信号機Gの現示を検知しない。信号機像IGのサイズSIGが検知閾値THD未満である場合には、十分な信頼度で信号機Gの現示を検知できないからである。制御部120は、信号機Gの現示を検知した時刻における車両150の現在地を検知地点Dとして取得する。この検知地点Dは、信号情報提供サーバ200の信号地点DB230に規定されている検知地点Dと理想的には一致する。なお、認知閾値THAと検知閾値THDは天候や時間帯や明るさ等の観察条件に応じて切り替えられてもよく、これらの観察条件ごとに信号地点DB130が用意されてもよい。
運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、環境検知部(制御部120)が検知した環境状態が第1状態である場合に第1制御目標で運転制御を行い、環境検知部が検知した環境状態が第2状態である場合に第2制御目標で運転制御を行う。ここで、第1状態は前方の信号機Gが青現示であることであり、第1状態は前方の信号機Gが赤現示または黄現示であることである。また、制御目標とは、目標速度である。第1制御目標は道路区間の制限速度で走行するための目標速度であり、第2制御目標は前方の信号機Gの停止地点Q2にて停止するための目標速度である。
本実施形態において、制御部120は、車両150の現在地から前方に一定の先読距離(例えば1km)だけ進んだ地点までの区間である先読区間についての自動運転計画30bを作成し、当該自動運転計画30bに基づいて運転制御を行う。なお、車両150が自動運転によって走行する走行予定経路が予め設定されており、走行予定経路上における現在地の前方の区間が先読区間となる。制御部120は、信号機Gの手前の検知地点Dにて信号機Gの現示を検知したことをトリガーとして自動運転計画30bにおける目標速度を切り替える。
図7Cは、第1目標速度と第2目標速度とを説明するグラフである。図7Cの横軸は車両150の現在地を示し、縦軸は目標速度を示す。図7Cにおいては、走行中の道路区間の制限速度VHに向けて加速する目標速度である第2目標速度(破線)が規定された自動運転計画30bが作成されていることとする。そして、検知地点Dにて検知した信号機Gの現示が第2状態としての青現示であった場合、制御部120は、自動運転計画30bに規定されている第2目標速度で、検知地点Dの通過後における運転制御を行う。なお、加速の目標は制限速度VHに限らず、乗員が設定した巡航速度であってもよい。
一方、検知地点Dにて検知した信号機Gの現示が第1状態としての赤現示であった場合、制御部120は、検知地点Dの通過後における目標速度を停止地点Q2にて停止するための第1目標速度(一点鎖線)で更新し、当該第1目標速度で検知地点Dの通過後における運転制御を行う。
ここまで、検知地点Dにて信号機Gの現示の検知したことをトリガーとして自動運転計画30bにおける目標速度を切り替えることを説明した。しかし、信号機Gの手前に緩衝区間Wが規定されている場合には、制御部120は、信号機Gの現示が検知できる検知地点Dの手前の区間である緩衝区間Wについて以下のように目標速度を設定する。
運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、環境検知部(制御部120)が環境状態を検知できず、かつ、乗員が環境状態を認知できる緩衝区間Wにおける緩衝制御目標を、乗員の集中度が高いほど、第1制御目標と第2制御目標との間の中間の制御目標に近い制御目標に設定する。すなわち、制御部120は、車両150の乗員が信号機Gの現示を認知でき、環境検知部が信号機Gの現示を検知できない緩衝区間Wにおける制御目標である緩衝目標速度を、第1目標速度と第2目標速度との間の目標速度に設定する。
そのために、運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、信号機Gが前方の先読区間内に存在することとなった場合に、当該信号機Gについての緩衝区間Wを取得する。具体的に、制御部120は、信号機Gが前方の先読区間内に存在することとなった場合に、信号情報提供サーバ200に緩衝区間W(認知地点A,検知地点D)を示す信号機情報Bを要求するための要求データを送信する。この要求データには、先読区間内に存在する信号機Gの識別情報が含まれる。要求データを受信した信号情報提供サーバ200は、要求データが示す識別情報に対応する信号機Gの緩衝区間Wを示す信号機情報Bを生成し、車両150に送信する。以上により、制御部120は、緩衝区間Wを取得できる。
また、信号機Gが前方の先読区間内に存在することとなった場合に、制御部20は、乗員の集中度を乗員監視部57から取得する。乗員の集中度の評価期間(例えば20秒)は、緩衝区間Wを走行する期間に近いほど望ましく、緩衝区間Wの走行を開始する予想時刻から一定の期間(例えば10秒)だけ遡った時刻を終期とする期間であってもよい。
運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、乗員の集中度が高である場合、緩衝区間Wにおける車両150の初速VAを緩衝区間Wにおいて維持する目標速度を緩衝制御目標として設定する。制御部120は、緩衝区間Wの始点である認知地点Aにおける車両150の速度を初速VAとして取得し、緩衝区間W内の各目標位置における目標速度として一律に初速VAを設定する。
図8は、緩衝目標速度(実線)を示すグラフである。同図に示すように、緩衝区間Wにおける緩衝目標速度は初速VAのまま一定となっている。仮に、認知地点Aにて制御部120が青現示を検知したとすると、破線で示すように制限速度VHに向けて初速VAから加速する目標速度である第2目標速度が設定されることとなる。また、仮に、認知地点Aにて制御部120が赤現示を検知したとすると、一点鎖線で示すように停止地点Q2にて停止するために、初速VAから減速する目標速度である第1目標速度が設定されることとなる。
従って、加速も減速も行わず初速VAを維持する緩衝目標速度は、第1目標速度と第2目標速度との間の目標速度であると言える。すなわち、制御部20は、乗員の集中度が高である場合、第1制御目標と第2制御目標との中間の制御目標を緩衝制御目標として設定することとなる。なお、制御部120は、緩衝区間Wに到達する前に、認知地点Aにおける既存の目標速度を初速VAとして取得して、事前に緩衝目標速度を設定してもよい。また、制御部120は、緩衝区間Wの始点における実際の車速を初速VAとして取得して、緩衝区間Wの始点にて緩衝目標速度を設定してもよい。
運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、乗員の集中度が低である場合、停止可能速度VUまで加速する目標速度を緩衝制御目標として設定する。制御部120は、緩衝区間Wの終点である検知地点Dと停止地点Q2との間を、限界減速度で速度0まで減速した場合における検知地点Dにおける速度を停止可能速度VUとして取得する。限界減速度は、例えば乗員に不安感を与えない限界の減速度であってもよく、例えば0.5~0.8Gであってもよい。
制御部120は、等加速度運動によって認知地点Aと検知地点Dとの間を移動した場合に、停止可能速度VUから初速VAだけ減算した速度差分だけ加速できる一定の加速度を算出する。そして、制御部120は、緩衝区間Wの全体において、算出した加速度を維持して加速する場合の目標速度を緩衝目標速度として設定する。図8の例において、緩衝区間Wの手前においては、制限速度VHに向けて加速する目標速度である第2目標速度が設定されている。乗員の集中度が低である場合、制御部20は、緩衝区間Wの手前において設定されている第2目標速度を、第1制御目標と第2制御目標との中間の制御目標(初速VAを維持)に近づくように修正した目標速度を緩衝目標速度として設定していることとなる。
以上のようにして、緩衝区間Wにおける緩衝目標速度が設定された自動運転計画30bを生成すると、運転制御モジュール121bの機能により制御部120は、緩衝区間Wにおいて、自動運転計画30bが示す時系列の目標位置における目標速度と目標操舵角を実現するように、加減速部55aと操舵部55bをフィードバック制御する。緩衝区間Wの終点である検知地点Dにおいて、制御部120は、信号機Gの現示を検知することとなるため、検知した現示に応じて、制限速度VHまで加速するか停止地点Q2にて停止するかを切り替えればよい。
前記のように構成した第2実施形態においては、環境検知部(制御部20)が環境状態を検知できない緩衝区間Wでは、乗員が認知している環境状態に対応する制御目標が設定できない。このような緩衝区間Wでは、第1制御目標と第2制御目標との間の中間に近い緩衝制御目標を設定することにより、乗員が第1状態と第2状態のいずれを認知していても違和感を低減できる。この違和感も乗員の集中度が高いほど強くなるため、集中度が高いほど第1制御目標と第2制御目標との間の中間に近くなる緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を効果的に低減できる。
(4)他の実施形態:
本発明において、環境状態は障害物の有無や信号機の現示に限られない。環境状態は、車両の制御目標を切り替える要因となる事象であればよく、信号機や踏切等の交通規制の動的な変化であってもよい。例えば、信号機や踏切の状態に応じて、減速または加速を行う第2制御目標が設定される構成において、制御部20は、減速または加速の度合いを第2制御目標よりも軽減させたり、減速または加速の開始タイミングを第2制御目標よりも遅らせたりするように修正した緩衝目標経路を設定してもよい。
さらに、制御目標は、目標速度に限られず、目標経路であってもよい。例えば、第1実施形態において、レーン内または道路区間内において注意地点Cから離れるような進路を取る目標経路が第1制御目標として設定され、レーンの中央を維持する目標経路が第2制御目標として設定されてもよい。そして、乗員の死角に存在する注意地点Cに障害物が存在しないことが検知された場合、レーンの中央を維持するのではなく、注意地点Cから離れるような進路を取るようにしてもよい。これにより、障害物が存在するかも知れないと考えている乗員の不安感を低減できる。さらに、制御部20は、乗員の集中度が低いほど、レーンの中央を維持する経路に近い目標経路を設定することにより、効果的に乗員の不安感を軽減できる。
なお、乗員の集中度は視線方向が前方に留まっていることに限定されるものではない。例えば、第1実施形態において、乗員の視線方向が注意地点Cの方向に向いている期間が長いほど乗員の集中度が高いと判定されてもよい。同様に、第2実施形態において、乗員の視線方向が信号機Gの方向に向いている期間が長いほど乗員の集中度が高いと判定されてもよい。すなわち、乗員の集中度として、環境状態に対する集中度を取得することがより好ましい。
本発明の自動運転システムは、車両に備えられてもよいし、車両と通信可能なサーバ等であってもよい。環境検知部は、センサによるセンシングの結果や他の装置から送信された情報に基づいて環境状態を検知してもよい。環境状態とは、車両に影響を与える事象であればよく、特に限定されない。例えば、車両を取り巻く空気の状態や車両が走行する道路の状態や車両の周辺に存在する障害物の状態や車両の内部の状態であってもよい。環境状態は、車両の現在地に応じて変化するものであってもよいし、時刻に応じて変化するものであってもよい。乗員とは、車両の乗員であればよく、運転席に着座する乗員であってもよいし、運転席以外の座席に着座する乗員であってもよい。
第1状態と第2状態とは互いに異なる環境状態であればよい。緩衝区間は、第2状態を乗員が認知する認知地点と、第2状態を環境検知部が検知する検知地点との間にずれが生じる場合に、当該認知地点と検知地点との間に形成される区間である。認知地点と検知地点との間にずれが生じる要因として、人間の感覚の感度よりも、環境検知部の感度が良いことが挙げられる。この場合、車両が環境状態の発生地点に接近している場合において、環境検知部が環境状態を検知する方が、乗員が環境状態を認知するよりも早くなる。認知地点と検知地点との間にずれが生じる要因として、環境検知部の設置位置と、乗員の位置との差が挙げられる。
運転制御部は、環境状態に応じて既存の自動運転計画を修正してもよいし、環境状態に応じて自動運転計画を生成してもよい。緩衝区間は、予め地図情報を参照することにより取得されていてもよいし、車両におけるセンシングによって取得されてもよい。緩衝区間が変化し得る場合、後者の手法で緩衝区間を取得するのが望ましい。緩衝制御目標は、第1制御目標そのものであってもよいし、第1制御目標と第2制御目標との間の制御目標であってもよいし、第2制御目標そのものであってもよい。また、緩衝制御目標は、第1制御目標よりも第2制御目標に近い制御目標であってもよいし、第2制御目標よりも第1制御目標に近い制御目標であってもよい。制御目標は、車両の挙動に関する目標であればよく、位置や速度や角速度や加速度や角加速度や力やトルクに関する目標であってもよい。
乗員の集中度は、乗員を撮像した画像の画像認識処理によって取得されてもよいし、各種生体センサによって取得されてもよいし、車両の座席センサ等によって取得されてもよい。例えば、乗員の集中度は、車両が備える各種操作部に対する操作に基づいて取得されてもよい。一般的に、運転操作に関する操作部が操作されている場合、運転操作とは無関係の操作部が操作されている場合よりも、集中度が高いと言える。さらに、集中度とは、厳密に環境状態に集中している度合いであってもよいし、車両の挙動に対する集中度であってもよい。乗員が車両の挙動に無関心であれば、制御目標に起因する違和感が生じにくくなるからである。
また、運転制御部は、環境検知部が第2状態を検知し、かつ、車両の乗員が環境状態を認知できない緩衝区間における緩衝制御目標を、集中度が高いほど、第2制御目標から第1制御目標に大きく近づくように修正した制御目標に設定してもよい。ここで、環境検知部が第2状態を検知している場合には、原則通り、第2制御目標で運転制御を行うことが望ましい。しかし、環境状態が第1状態であるかも知れないと考える乗員が違和感を覚える可能性があるため、第2制御目標から第1制御目標に近づくように修正した緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を低減できる。この違和感も乗員の集中度が高いほど強くなるため、集中度が高いほど第1制御目標に大きく近づくように修正した緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を効果的に低減できる。
さらに、第1制御目標は、第1目標速度であり、第2制御目標は、第1目標速度よりも大きい速度である第2目標速度であり、第1状態は、注意地点に障害物が存在することであり、第2状態は、注意地点に障害物が存在しないことであり、緩衝区間は、乗員の死角に注意地点が存在する区間であってもよい。
このように、注意地点に障害物が存在する第1状態において、第2目標速度よりも小さい第1目標速度で運転制御を行うことにより、障害物と衝突する可能性を低減できる。また、注意地点に障害物が存在しない第2状態において、第1目標速度よりも大きい第2目標速度で運転制御を行うことができる。しかし、注意地点が乗員の死角に存在する場合には、乗員が注意地点に障害物が存在しない第2状態を認知できない。このような場合に、第2目標速度で運転制御が行われると、速度が大きすぎであると乗員が不安感を覚えることとなる。この不安感も乗員の集中度が高いほど強くなるため、集中度が高いほど第1目標速度に大きく近づくように修正した緩衝制御目標を設定することにより、乗員の不安感を効果的に低減できる。
さらに、運転制御部は、環境検知部が環境状態を検知できず、かつ、乗員が環境状態を認知できる緩衝区間における緩衝制御目標を、集中度が高いほど、第1制御目標と第2制御目標との間の中間の制御目標に近い制御目標に設定してもよい。ここで、環境検知部が環境状態を検知できない緩衝区間では、乗員が認知している環境状態に対応する制御目標が設定できない。このような緩衝区間では、第1制御目標と第2制御目標との間の中間に近い緩衝制御目標を設定することにより、乗員が第1状態と第2状態のいずれを認知していても違和感を低減できる。この違和感も乗員の集中度が高いほど強くなるため、集中度が高いほど第1制御目標と第2制御目標との間の中間に近くなる緩衝制御目標を設定することにより、乗員の違和感を効果的に低減できる。
さらに、本発明のように、運転者の認知を考慮した制御目標で自動運転を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステム、自動運転システムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。