以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、本体部とピン部とを有する電子部品を複数集合させた状態で直方体状のケースに収納して梱包する際の梱包仕様を決定するための、電子部品の梱包仕様決定方法として、種々の用途に広く適用することができるものである。また、本発明は、本体部とピン部とを有する電子部品を複数集合させた状態で収納して梱包するための、電子部品の梱包容器として、種々の用途に広く適用することができるものである。
以下の説明においては、まず、本発明の一実施の形態に係る電子部品の梱包容器について説明し、次いで、本発明の一実施の形態に係る電子部品の梱包仕様決定方法について説明する。
(梱包容器)
[梱包容器の概略]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子部品の梱包容器1(以下、電子部品の梱包容器1について、単に、梱包容器1とも称する)を示す図である。そして、図1(A)は、梱包容器1の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のX1-X1線矢視位置から視た梱包容器1の断面図であり、図1(C)は、図1(A)のX2-X2線矢視位置から視た梱包容器1の断面図である。尚、図1では、電子部品が収納されていない状態の梱包容器1が図示されている。図2は、梱包容器1の断面図であって、梱包容器1に電子部品100が複数集合した状態で収納されて梱包された状態を示す断面図である。尚、図2の断面図は、図1(A)のX2-X2矢視位置から視た断面に対応している。図3は、梱包容器1を分解した状態で示す斜視図である。尚、図3に示す梱包容器1の分解斜視図では、梱包容器1とともに、電子部品100を収納した袋13も図示している。
図1乃至図3に示す梱包容器1は、電子部品100を複数集合させた状態で複数の電子部品100を収納して梱包するための梱包容器として構成されている。そして、梱包容器1において複数集合した状態で収納されて梱包される電子部品100は、例えば、電気コネクタとして構成され、本体部101とピン部102とを有している。
電子部品100の本体部101は、絶縁性の樹脂材料で構成され、筐体状の基本外形を有している。ピン部102は、導電性の金属材料で構成され、円柱状或いは角柱状の基本外形を有し、本体部101に保持され、本体部101から外部に突出するように設けられている。また、電子部品100において、ピン部102は、複数設けられており、複数のピン部102は、本体部101から互いに平行に突出している。尚、梱包容器1に収納されて梱包される電子部品として図2において示した電子部品100は、例示である。梱包容器1に梱包される電子部品は、電子部品100に限定されず、本体部とピン部とを有する電子部品であればよい。
図1乃至図3に示すように、梱包容器1は、直方体状のケース11と、ケース11の内面に配置される緩衝材12と、を備えて構成されている。そして、梱包容器1は、内面に緩衝材12が配置されたケース11の内部に、複数集合した状態の電子部品100を収納して梱包するように構成されている。尚、本実施形態では、図2に示すように、複数の電子部品100が、袋13の内部に収納されて纏められた状態で、梱包容器1において梱包された形態を例示している。尚、袋13は、例えば、ビニール製の袋として、或いは、紙製の袋として構成されている。
[ケース]
梱包容器1のケース11は、例えば、直方体状の形状に形成された紙製の箱として構成されている。尚、ケース11は、樹脂製の箱として構成されていてもよい。また、本実施形態では、ケース11は、箱本体21と蓋体22とを有して構成されている。
箱本体21は、底面以外の5面(上面、正面、背面、右側面、左側面)を有し、底面が開放され状態で構成されている。蓋体22は、上面以外の5面(正面、背面、右側面、左側面、底面)を有して上面が開放された状態で構成されている。そして、ケース11は、箱本体21と蓋体22とが組み合わされることで、6面を有する直方体状の箱体として構成されている。尚、ケース11は、箱本体21と蓋体22とを有する形態に限られなくてもよく、直方体状のケースであればよい。例えば、ケース11は、1枚の展開図から組み立てられることで構成される箱として構成されてもよい。
また、ケース11は、直方体状のケース11における面積の異なる3種類の面として、最大面(23a、23b)と、最小面(24a、24b)と、中間面(25a、25b)とを有している。
最大面(23a、23b)は、直方体状のケース11における面積の異なる3種類の面のうち、最も面積の大きい面として構成されている。そして、最大面(23a、23b)は、ケース11において互いに平行に配置された一対の面として設けられ、本実施形態では、ケース11における上面及び底面として構成されている。
最小面(24a、24b)は、直方体状のケース11における面積の異なる3種類の面のうち、最も面積の小さい面として構成されている。そして、最小面(24a、24b)は、ケース11において互いに平行に配置された一対の面として設けられ、本実施形態では、ケース11における正面及び背面として構成されている。
中間面(25a、25b)は、直方体状のケース11における面積の異なる3種類の面のうち、最大面(23a、23b)よりも面積が小さく最小面(24a、24b)よりも面積の大きい面として構成されている。即ち、中間面(25a、25b)は、直方体状のケース11における面積の異なる3種類の面のうち、面積が中間の大きさの面として構成されている。そして、中間面(25a、25b)は、ケース11において互いに平行に配置された一対の面として設けられ、本実施形態では、ケース11における右側面及び左側面として構成されている。
[緩衝材]
緩衝材12は、弾性を有するシート状の素材であって外部から入力された衝撃を緩和するための素材であるシート素材を含んで構成されている。本実施形態では、緩衝材12は、シート素材がケース11の内面の形状に合わせて加工されることで、形成されている。緩衝材12は、ケース11を通じて外部から伝達される衝撃を緩和するためにケース11の内面に配置されている。
梱包容器1においては、緩衝材12として、第1緩衝材26と第2緩衝材27とが設けられている。第1緩衝材26及び第2緩衝材27は、いずれも、シート素材で形成されており、例えば、シート状に形成された気泡緩衝材で構成されている。尚、第1及び第2緩衝材(26、27)を構成する気泡緩衝材としては、例えば、複数枚のポリエチレンシートが一体化されるとともに、ポリエチレンシートの間に規則的に分散させて空気を閉じ込めたクッション状のシート素材を用いることができる。
第1緩衝材26は、長方形の1枚のシート素材が、長手方向と垂直な方向に沿って3箇所で折り曲げられることで、形成されている。第1緩衝材26には、3箇所で折り曲げられていることで、第1壁部26a、第2壁部26b、第3壁部26c、第4壁部26dが設けられている。このため、第1壁部26a、第2壁部26b、第3壁部26c、第4壁部26dは、1層のシート素材で構成されている。そして、第1緩衝材26は、第1壁部26aがケース11の最小面24aの内面に配置され、第2壁部26bがケース11の最大面23bの内面に配置され、第3壁部26cがケース11の最小面24bの内面に配置され、第4壁部26dがケース11の最大面23aの内面に配置された状態で、ケース11の内側に配置されている。
第2緩衝材27は、長方形の1枚のシート素材が、長手方向に沿った折り目にて等分に2つ折りされて細長く2層に重なった状態に形成され、更に、細長く伸びる方向と垂直な方向に沿って3箇所で折り曲げられることで、形成されている。このため、第2緩衝材27は、折り曲げられて重ねられて2層となったシート素材が長方形の外形の枠体を構成するように折り曲げられた形状に形成されている。これにより、第2緩衝材27には、2層のシート素材で構成された第1壁部27a、第2壁部27b、第3壁部27c、第4壁部27dが設けられている。そして、第2緩衝材27は、第1壁部27aがケース11の中間面25bの内面に配置され、第2壁部27bがケース11の最小面24aの内面に配置され、第3壁部27cがケース11の中間面25aの内面に配置され、第4壁部27dがケース11の最小面24bの内面に配置された状態で、ケース11の内側に配置されている。
梱包容器1においては、上記のように、1層のシート素材で構成された第1~第4壁部(26a~d)を有する第1緩衝材26と、2層のシート素材で構成された第1~第4壁部(27a~d)を有する第2緩衝材27とが、ケース11の内面に配置されている。そして、第1及び第2緩衝材(26、27)の各壁部(26a~d、27a~d)は、ケース11の各面(23a、23b、24a、24b、25a、25b)の内面に対して、上述の対応関係で配置されている。
上記により、ケース11の最大面23aの内面には、第1緩衝材26の第4壁部26dが配置され、ケース11の最大面23aの内面に配置されるシート素材の層数は、1層に設定されている。そして、ケース11の最大面23bの内面には、第1緩衝材26の第2壁部26bが配置され、ケース11の最大面23bの内面に配置されるシート素材の層数は、1層に設定されている。
また、ケース11の最小面24aの内面には、第1緩衝材26の第1壁部26aと第2緩衝材27の第2壁部27bとが配置され、ケース11の最小面24aの内面に配置されるシート素材の層数は、3層に設定されている。そして、ケース11の最小面24bの内面には、第1緩衝材26の第3壁部26cと第2緩衝材27の第4壁部27dとが配置され、ケース11の最小面24bの内面に配置されるシート素材の層数は、3層に設定されている。
また、ケース11の中間面25aの内面には、第2緩衝材27の第3壁部27cが配置され、ケース11の中間面25aの内面に配置されるシート素材の層数は、2層に設定されている。そして、ケース11の中間面25bの内面には、第2緩衝材27の第1壁部27aが配置され、ケース11の中間面25bの内面に配置されるシート素材の層数は、2層に設定されている。
上記のように、梱包容器1においては、ケース11の最大面(23a、23b)の内面にシート素材が1層配置され、ケース11の最小面(24a、24b)の内面にシート素材が3層配置され、ケース11の中間面(25a、25b)の内面にシート素材が2層配置されている。これにより、梱包容器1は、最大面(23a、23b)の内面に配置される緩衝材12におけるシート素材の層数よりも中間面(25a、25b)の内面に配置される緩衝材12におけるシート素材の層数の方が多くなるように、構成されている。更に、梱包容器1は、中間面(25a、25b)の内面に配置される緩衝材12におけるシート素材の層数よりも最小面(24a、24b)の内面に配置される緩衝材12におけるシート素材の層数の方が多くなるように、構成されている。
[梱包容器による電子部品の梱包]
上述した梱包容器1に電子部品100が梱包される際には、まず、ケース11の箱本体21の内側に、第1緩衝材26が配置される。このとき、第1緩衝材26は、第3壁部26cと第4壁部26dとが略同じ方向に延びた状態で、箱本体21の内側に配置される。次いで、第1緩衝材26が配置された箱本体21の更に内側において、第2緩衝材27が配置される。第2緩衝材27は、箱本体21の内側において、第1緩衝材26における第1壁部26aと第3壁部26cとの間に配置される。
上記の状態で、複数の電子部品100が集合した状態で収納された袋13が、箱本体21の内側において、第2緩衝材27の内側に配置される。次いで、第1緩衝材26が、第3壁部26cと第4壁部26dとの間で折り曲げられる。そして、箱本体21が蓋体22で閉じられ、箱本体21と蓋体22とが直方体状の形状となるように組み合わされる。これにより、梱包容器1による電子部品100の梱包が終了することになる。
[梱包容器の実施形態の作用効果]
上記の実施形態によると、梱包容器1は、本体部101とピン部102とを有する電子部品100を複数集合させた状態でケース11内に収納して梱包するように構成されている。そして、この梱包容器1の落下等によって梱包容器1のケース11に衝撃荷重が付加されると、ケース11内の個々の電子部品100に対しては、ケース11の内部に配置された緩衝材12によって緩和された衝撃が伝達されることになる。このとき、ケース11において衝撃荷重が入力される面の内側に配置された緩衝材12の面積に応じて、衝撃が分散されることになる。そして、梱包容器1は、最大面(23a、23b)の内面の緩衝材12におけるシート素材の層数よりも中間面(25a、25b)の内面のシート素材の層数の方が多く設定されるように、構成される。更に、梱包容器1は、中間面(25a、25b)の内面のシート素材の層数よりも最小面(24a、24b)の内面のシート素材の層数の方が多いように、構成される。
よって、上記の実施形態によると、衝撃荷重が入力された場合に、面積が最も大きくて単位面積当たりの衝撃が最も小さくなる最大面(23a、23b)において、シート素材の層数が最も少なくなるように、梱包容器1が構成される。そして、衝撃荷重が入力された場合に、面積が最も小さくて単位面積当たりの衝撃が最も大きくなる最小面(24a、24b)において、シート素材の層数が最も多くなるように、梱包容器1が構成される。更に、衝撃荷重が入力された場合に、ケース11の面のうち面積が中間の大きさであって単位面積当たりの衝撃が中間の状態となる中間面(25a、25b)において、シート素材の層数が、最大面(23a、23b)よりも多く最小面(24a、24b)よりも少なくなるように、梱包容器1が構成される。このため、ケース11のそれぞれの面の内面において、単位面積当たりの衝撃に応じた適切な層数のシート素材を配置することができる。これにより、梱包容器1において、ピン部102の破損を効率よく抑制できるとともに、過剰な層数のシート素材の使用を避けて緩衝材12の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを抑制することができる。
従って、上記の実施形態によると、本体部101とピン部102とを有する電子部品100を複数集合させた状態で収納して梱包するための梱包容器に関し、ピン部102の破損を効率よく抑制できるとともに緩衝材12の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを効率よく抑制できる、電子部品の梱包容器1を提供することができる。
(電子部品の梱包仕様決定方法)
次に、本発明の一実施の形態に係る電子部品の梱包仕様決定方法(以下、電子部品の梱包仕様決定方法について、単に、梱包仕様決定方法とも称する)について説明する。尚、本実施形態の梱包仕様決定方法の説明においては、前述した梱包容器1の実施形態において説明した要素と同様に構成される要素については、同一の符号を引用して説明することで、重複する説明を省略する。
[梱包仕様決定方法の概略]
図4は、本実施形態の梱包仕様決定方法の工程を説明するためのフローチャートである。図5は、本実施形態の梱包仕様決定方法によって梱包仕様が決定される梱包対象である電子部品110の一例を示す図であって、図5(A)は、電子部品110の側面図であり、図5(B)は、電子部品110の平面図である。
図4に示す本実施形態の梱包仕様決定方法は、電子部品110を複数集合させた状態で直方体状のケース11に複数の電子部品110を収納して梱包する際の梱包仕様を決定するための梱包仕様決定方法として構成されている。そして、本実施形態の梱包仕様決定方法によって梱包仕様が決定される梱包対象の電子部品110は、例えば、電気コネクタとして構成され、本体部111とピン部112とを有している。尚、本実施形態では、図4に示す梱包仕様決定方法によって、電子部品110を複数集合させた状態で直方体状のケース11に複数の電子部品110を収納して梱包する際の梱包仕様として、梱包容器1の梱包仕様が決定される形態を例にとって説明する。
電子部品110の本体部111は、絶縁性の樹脂材料で構成され、筐体状の基本外形を有している。ピン部112は、導電性の金属材料で構成され、円柱状或いは角柱状の基本外形を有し、本体部111に保持され、本体部111から外部に突出するように設けられている。また、電子部品110において、ピン部112は、複数設けられており、複数のピン部112は、本体部111から互いに平行に突出している。尚、本実施形態の梱包仕様決定方法によって梱包仕様が決定される梱包対象の電子部品として図5において示した電子部品110は、例示である。本実施形態の梱包仕様決定方法によって梱包仕様が決定される梱包対象の電子部品は、電子部品110に限定されず、本体部とピン部とを有する電子部品であればよい。
図4に示すように、本実施形態の梱包仕様決定方法は、強度特性値決定ステップS101と、緩衝特性導出ステップS102と、緩衝材仕様決定ステップS103と、を備えて構成されている。また、本実施形態の梱包仕様決定方法によると、強度特性値決定ステップS101と、緩衝特性導出ステップS102と、緩衝材仕様決定ステップS103とが実行されることで、梱包仕様として、梱包容器1の梱包仕様が決定される。
[強度特性値決定ステップ]
強度特性値決定ステップS101は、電子部品110のピン部112の強度特性を指標する強度特性値を決定するステップとして構成されている。そして、強度特性値決定ステップS101においては、まず、ピン部112の先端側の部分を本体部111に対して相対変位させるようにピン部112に荷重を付加してピン部112を降伏させる降伏試験が行われる。次いで、強度特性値決定ステップS101においては、その降伏試験の結果に基づいて、ピン部112の強度特性を指標する強度特性値が決定される。
図6は、強度特性値決定ステップS101において行われる降伏試験について説明するための図である。強度特性値決定ステップS101の降伏試験においては、図6に示す降伏試験機30が用いられる。降伏試験機30は、治具31と荷重付加機構32とを備えて構成されている。
治具31は、電子部品110の本体部111を当該治具31に対して固定した状態で保持する機構として設けられている。治具31は、上型31aと下型31bとを含んで構成され、上型31aと下型31bとの間で電子部品110の本体部111を挟み込むことで、本体部111を固定するように構成されている。
荷重付加機構32は、電子部品110のピン部112を押圧してピン部112に荷重を付加する押し軸32a、押し軸32aを支持する押し軸支持部32b、押し軸支持部32bを直線方向に沿って相対変位自在に支持する本体ハウジング(図示省略)、本体ハウジングに対して押し軸支持部32bを相対変位させるように駆動する駆動部(図示省略)、等を備えて構成されている。押し軸32aは、押し軸支持部32bに支持されており、駆動部の作動によって押し軸支持部32bが本体ハウジングに対して変位することで、押し軸32aが、ピン部112に向かって接近して当接するように駆動される。尚、本体ハウジングに対して押し軸支持部32bを相対変位させるように駆動する駆動部の機構として、電動モータを含むラックアンドピニオン機構、電動モータを含むボールネジ機構、サーボ式油圧シリンダ機構、等の種々の構成を例示できる。
また、押し軸32aが駆動されてピン部112に当接する際に、押し軸32aの先端部が、治具31に固定された電子部品110のピン部112の先端部に対して当接するように、治具31における電子部品110の位置が固定される。そして、降伏試験機30を用いた降伏試験においては、本体ハウジングに対して押し軸支持部32bが押し軸32aとともに変位し、押し軸32aが、治具31に固定された電子部品110のピン部112の先端部を押圧することで、ピン部112に荷重が付加される。これにより、ピン部112の先端側の部分を本体部111に対して相対変位させるようにピン部112に荷重が付加される。
また、降伏試験機30を用いた降伏試験においては、押し軸32aがピン部112に当接して荷重が発生して以降においても、少なくともピン部112が降伏するまで、押し軸32aがピン部112を押圧しながら変位するように駆動され、ピン部112に荷重が付加される。即ち、押し軸32aから荷重が付加された当初に弾性変形をしていたピン部112が、降伏して塑性変形を開始するまでは、少なくとも、押し軸32aがピン部112を押圧しながら変位するように押し軸32aの駆動が継続され、ピン部112への荷重の付加が継続される。
また、降伏試験機30においては、本体ハウジングに対する押し軸32a及び押し軸支持部32bの変位量を計測する変位計(図示省略)が設けられている。更に、押し軸支持部32bには、押し軸32aがピン部112を押圧しているときに押し軸32aとピン部112との間で生じる荷重を計測する荷重計(図示省略)が設けられている。そして、降伏試験機30を用いた降伏試験が行われ、押し軸32aからピン部112に荷重が付加されている間においては、上記の変位計によって押し軸32aの変位が計測され、上記の荷重計によって押し軸32aからピン部112に付加されている荷重が計測される。
図7は、強度特性値決定ステップS101において降伏試験機30を用いて行われる降伏試験の結果について説明するための図である。降伏試験機30は、押し軸32aからピン部112に荷重を付加している間、上記の変位計によって計測された押し軸32aの変位量と、上記の荷重計によって計測された荷重とを、降伏試験の結果として記録する。図7においては、降伏試験機30において記録された押し軸32aの変位量と荷重との関係について、横軸に変位量をとり、縦軸に荷重をとって、チャート図で示した降伏試験の結果の一例が示されている。
図7に示すように、押し軸32aがピン部112に当接して荷重が発生すると、押し軸32aの変位量の増大とともに発生する荷重の大きさも比例して増大する。しかし、ピン部112が降伏し、ピン部112の塑性変形が始まると、変位量に対して荷重が比例して増加しなくなり、変位量に対する荷重の増加が鈍化する。そして、更に押し軸32aが変位してピン部112の押圧が継続されると、ピン部112に生じる荷重の変化が少なくなり、略一定の荷重が生じた状態で、ピン部112の塑性変形が継続されることになる。強度特性値決定ステップS101においては、押し軸32aの変位量が増大してもピン部112に生じる荷重が比例して増大しなくなったことが確認された時点で、押し軸32aの駆動が停止され、降伏試験が停止される。
そして、強度特性値決定ステップS101においては、降伏試験が終了すると、降伏試験の結果に基づいて、ピン部112の強度特性を指標する強度特性値が決定される(ピン部112の強度特性を指標する強度特性値については、以下、強度特性値Acと称する)。強度特性値Acは、ピン部112が降伏した際にピン部112に付加していた荷重をピン部112の質量で除した値として決定される。このため、強度特性値Acの単位は、m/s2となる。
ピン部112が降伏した際にピン部112に付加していた荷重、即ち、ピン部112の降伏時の荷重は、降伏試験の結果に基づいて求められる。具体的には、ピン部112の降伏時の荷重は、降伏試験において、ピン部112が降伏してピン部112の塑性変形が始まり、押し軸32aの変位量に対して荷重が比例して増加しなくなった時点でピン部112に付加していた荷重として、求められる。ピン部112の降伏時の荷重が、図7に示す降伏試験結果に基づいて特定される場合であれば、ピン部112の降伏時の荷重は、押し軸32aの変位量に対して荷重が比例して増加しなくなった時点の荷重Wyとして求められる。
また、強度特性値決定ステップS101においては、ピン部112の質量も計測され、例えば、ピン部112の質量として、質量Mが計測される。ピン部112の降伏時の荷重Wyが求められ、ピン部112の質量Mが計測されると、これらの値に基づいて、強度特性値Acが決定される。強度特性値Acは、ピン部112の降伏時の荷重Wyをピン部112の質量Mで除した値として決定される。即ち、Ac=Wy/Mとして、強度特性値Acの値が決定される。
[緩衝特性導出ステップ]
緩衝特性導出ステップS102は、緩衝材12の緩衝特性を導出するステップとして構成されている。そして、緩衝特性導出ステップS102においては、まず、ケース11の内面に緩衝材12として配置されるシート素材に対して複数のシート素材条件の下で錘を落下させて衝撃荷重を付加する衝撃試験が行われる。次いで、緩衝特性導出ステップS102においては、その衝撃試験の結果に基づいて、錘の重さをシート素材の面積で除して求めた静的応力と、錘のシート素材への落下時に測定されてシート素材に入力される衝撃の特性を指標する入力衝撃特性値との関係が、緩衝材12の緩衝特性として導出される。
図8は、緩衝特性導出ステップS102において行われる衝撃試験について説明するための図である。緩衝特性導出ステップS102の衝撃試験においては、図8に示す衝撃試験機40が用いられる。衝撃試験機40は、基台41、受け台42、一対のガイド軸(43a、43b)、錘44、加速度計45、等を備えて構成されている。
衝撃試験機40においては、基台41に対して、受け台42が設置されているとともに、一対のガイド軸(43a、43b)が支持されている。一対のガイド軸(43a、43B9は、基台41に対して、上下方向に沿って延びた状態で、即ち、鉛直方向に沿って延びた状態で、支持されている。
錘44は、一対のガイド軸(43a、43b)に対して、一対のガイド軸(43a、43b)の軸方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。即ち、錘44は、一対のガイド軸(43a、43b)に対して、鉛直方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。また、錘44は、一対のガイド軸(43a、43b)に対して、着脱自在に設置されるように構成されている。また、錘44は、種々の重さに変更できるように構成されている。例えば、衝撃試験機40においては、複数水準の重さに設定された複数の錘44が備えられ、衝撃試験の際に、適宜、所望の重さの錘44が選択され、その選択された錘44が、一対のガイド軸(43a、43b)に対して設置される。
また、衝撃試験機40は、一対のガイド軸(43a、43b)に設置された錘44を、一対のガイド軸(43a、43b)に対して、所望の高さ位置で固定可能に構成されている。そして、衝撃試験機40は、所望の高さ位置で固定された錘44の一対のガイド軸(43a、43b)への固定状態を解除し、錘44を一対のガイド軸(43a、43b)の軸方向に沿って(即ち、鉛直方向に沿って)、所望の落下位置から自由落下させることができるように、構成されている。
受け台42は、平坦な表面を有し、基台41の上面に設置されている。受け台42は、その平坦な表面が水平方向に広がった状態で、基台41の上面に設置されている。そして、受け台42の表面には、緩衝材12としてケース11の内面に配置されるシート素材と同じ素材のシート素材であって衝撃試験の試験対象となるシート素材であるシート素材46が広げられた状態で配置される。そして、衝撃試験機40においては、受け台42にシート材46が配置された状態で、錘44を自由落下させる衝撃試験が行われる。
加速度計45は、錘44に設置され、錘44に生じる加速度を測定して記録する加速度計として構成されている。加速度計45では、錘44が自由落下を開始してから、受け台42に配置されたシート素材46に錘44bが衝突し、錘44の変位が略停止するまでに、錘44に生じた加速度が、測定され、記録される。
衝撃試験機40を用いた衝撃試験においては、まず、シート素材46が、受け台42に配置される。そして、錘44が、錘44の落下距離の目標値に対応する所定の高さ位置において、一対のガイド軸(43a、43b)に固定される。尚、錘44の落下距離の目標値としては、複数の電子部品110を収納した状態のケース11が落下した場合であってもピン部112の破損を抑制することが所望される高さの水準以上の所定の高さが目標値として設定される。
錘44が、その落下距離の目標値に対応する所定の高さ位置において、一対のガイド軸(43a、43b)に固定されると、次いで、錘44の固定状態が解除される。これにより、錘44が一対のガイド軸(43a、43b)に沿って自由落下し、受け台42に配置されたシート素材46に対して衝突する。錘44を自由落下させてシート素材46に衝突させることで、錘44からシート素材46に対して衝撃荷重を付加する衝撃試験が行われる。また、衝撃試験の際には、加速度計45によって、錘44の加速度が測定されて記録される。
図9は、緩衝特性導出ステップS102において行われる衝撃試験の結果について説明するための図である。具体的には、図9は、衝撃試験の際に加速度計45によって錘44の加速度が計測されて記録された結果を示す図である。図9においては、衝撃試験機40の加速度計45において記録された錘44の加速度の時間に対する変化について、横軸に時間をとり、縦軸に加速度をとって、チャート図で示した衝撃試験の結果の一例が示されている。
図9に示すように、錘44が落下してシート素材46に衝突すると、衝撃荷重がシート素材46に付加され、錘44の加速度が急激に上昇する。そして、錘44の加速度が急激に上昇した際に、加速度計45において、錘44に生じる加速度の最大値である最大加速度Amaxが測定される。錘44がシート素材46へ衝突して錘44の加速度が最大値に達すると、その後、錘44に生じる加速度は、ゼロ程度になるまで急激に低下する。そして、錘44には、シート素材46への衝突によって振動が生じ、徐々に、錘44の振動が収まることになる。このとき、錘44の加速度は、ゼロ近傍で振動するように生じ、徐々に、ゼロへと収束していく。
そして、緩衝特性導出ステップS102においては、衝撃試験機40を用いた上記の衝撃試験の結果に基づいて、錘44のシート素材46への落下時に測定されてシート素材46に入力される衝撃の特性を指標する入力衝撃特性値が設定される(以下、錘44の落下時に測定されてシート素材46に入力される衝撃の特性を指標する入力衝撃特性値については、入力衝撃特性値Ainと称する)。この入力衝撃特性値Ainは、錘44がシート素材46に落下した際に錘44に生じる最大加速度Amaxの測定値として設定される。即ち、Ain=Amaxとして、入力衝撃特性値Ainの値が決定される。このため、入力衝撃特性値Ainの単位は、m/s2となる。
また、緩衝特性導出ステップS102においては、シート素材条件が異なる複数の種類のシート素材46に対して、衝撃試験が行われる。即ち、シート素材条件が異なる複数の種類のシート素材46のそれぞれに対して、個別に衝撃試験が行われる。これにより、緩衝特性導出ステップS102においては、複数のシート素材条件の下で錘44を落下させて衝撃荷重を付加する衝撃試験が行われることになる。
また、緩衝特性導出ステップS102においては、複数のシート素材条件として、錘44が落下するシート素材の層数を変更することで設定される複数の条件が選択される。即ち、シート素材の層数が異なる複数の種類のシート素材46のそれぞれに対して、個別に衝撃試験が行われる。例えば、シート素材の層数が1層のシート素材46、シート素材の層数が2層のシート素材46、及び、シート素材の層数が3層のシート素材46のそれぞれに対して、個別に衝撃試験が行われる。
また、緩衝特性導出ステップS102においては、各シート素材条件ごとに、錘44の重さを変更して複数回の衝撃試験が行われる。即ち、各シート素材条件ごとに、複数水準の重さの錘44を落下させる衝撃試験が行われる。例えば、シート素材の層数が1層のシート素材46に対して、錘44の重さを変更して複数回の衝撃試験が行われる。そして、シート素材の層数が2層のシート素材46に対しても、錘44の重さを変更して複数回の衝撃試験が行われる。更に、シート素材の層数が3層のシート素材46に対しても、錘44の重さを変更して複数回の衝撃試験が行われる。
また、緩衝特性導出ステップS102においては、錘44の重さをシート素材46の面積で除して求めた静的応力(以下、静的応力Ssと称する)も求められる。即ち、衝撃試験で落下させた錘44の重さを、衝撃試験で衝撃荷重が付加されたシート素材46の面積で除すことで、静的応力Ssが求められる。このため、静的応力Ssの単位は、N/m2となる。
そして、緩衝特性導出ステップS102においては、複数のシート素材条件の下で錘44を落下させてシート素材46に衝撃荷重を付加する衝撃試験の結果に基づいて、静的応力Ssと、入力衝撃特性値Ainとの関係を、緩衝材12の緩衝特性として導出する。
図10は、緩衝特性導出ステップS102において導出される緩衝材12の緩衝特性について説明するための図である。図10に示す緩衝材12の緩衝特性は、シート素材の層数を1層、2層、3層と変更するシート素材条件の下での衝撃試験の結果に基づいて導出されている。また、図10に示す緩衝材12の緩衝特性は、それぞれのシート素材条件において錘44の重さを複数水準に変更して行った衝撃試験の結果に基づいて導出されている。そして、図10に示す緩衝材12の緩衝特性は、上記の衝撃試験結果に基づいて、静的応力Ssと入力衝撃特性値Ainとの関係が、横軸に静的応力Ssをとるとともに縦軸に入力衝撃特性値Ainをとって表されることで、導出されている。
[緩衝材仕様決定ステップ]
緩衝材仕様決定ステップS103は、緩衝特性導出ステップS102において導出された緩衝特性に基づいて、ケース11の最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様を決定するステップとして構成されている。そして、緩衝材仕様決定ステップS103においては、上記の緩衝特性に基づいて、ケース11の最大面(23a、23b)と最小面(24a、24b)と中間面(25a、25b)とのいずれにおいても、錘44の重さの目標値及び錘44の落下距離の目標値において、ピン部112へ伝達される衝撃の特性を指標する伝達衝撃特性値が、強度特性値決定ステップS101で決定された強度特性値Ac以下となるように、最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。
尚、錘44の重さの目標値としては、複数の電子部品110を収納した状態のケース11の重さ以上の所定の重さが目標値として設定される。また、錘44の落下距離の目標値としては、複数の電子部品11を収納した状態のケース11が落下した場合であってもピン部112の破損を抑制することが所望される高さの水準以上の所定の高さが目標値として設定される。尚、緩衝特性導出ステップS102において緩衝特性が導出される際に行われる衝撃試験においては、錘44の落下距離の目標値に対応する所定の高さ位置から錘44を落下させることで、衝撃試験が行われている。このため、緩衝特性導出ステップS102において導出された緩衝特性に基づいて緩衝材12の仕様が決定されることで、錘44の落下距離の目標値の条件が反映された緩衝材12の仕様の決定となる。
また、ピン部112へ伝達される衝撃の特性を指標する伝達衝撃特性値(以下、伝達衝撃特性値Aoutと称する)は、入力衝撃特性値Ainに対して所定の倍率を乗じることで設定される。ここで、上記の所定の倍率としては、例えば、2倍を選択することができる。尚、緩衝材12に入力された衝撃が電子部品110のピン部112に伝達される際には、ピン部112は弾性変形するため、ピン部112に伝達される衝撃は、ピン部112に衝撃が作用している時間の間において変化することになる。そして、ピン部112に伝達される衝撃は、ピン部112に生じる弾性変形時の加速度に応じて、緩衝材12に入力された衝撃を中心として、衝撃がゼロの状態と衝撃が最大の状態との間で変動することになる。このため、入力衝撃特性値Ainに対して2倍の倍率を乗じて伝達衝撃特性値Aoutを設定することで、即ち、Aout=Ain×2としてAoutを設定することで、ピン部112に伝達される衝撃が最大となる状態を反映させた伝達衝撃特性値Aoutに設定することができる。
また、緩衝材仕様決定ステップS103においては、ケース11の最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様として、最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のそれぞれの内面に配置されるシート素材の層数が決定される。具体的には、ケース11の最大面(23a、23b)の内面に配置されるシート素材の層数は、1層に決定され、ケース11の最小面(24a、24b)の内面に配置されるシート素材の層数は、3層に決定され、ケース11の中間面(25a、25b)の内面に配置されるシート素材の層数は、2層に決定される。
ここで、緩衝材仕様決定ステップS103における緩衝材12の仕様の決定について、図10に示す緩衝材12の緩衝特性を参照しつつ、具体例に基づいて説明する。
複数の電子部品110が収納されるケース11が、高さ:幅:奥行きが1:2.5:4である場合を例にとって説明する。この場合、最大面(23a、23b)、中間面(25a、25b)、及び最小面(24a、24b)の面積比は、最大面の面積:中間面の面積:最小面の面積=2.5×4:1×4:1×2.5=10:4:2.5となる。尚、以下の説明においては、最大面(23a、23b)について単に最大面とも称し、中間面(25a、25b)について単に中間面とも称し、最小面(24a、24b)について単に最小面とも称する。上記の面積比のため、錘44の重さの目標値が設定されると、錘44の重さの目標値を、最大面、中間面、及び最小面のそれぞれの面積で除して求めた各面の静的応力Ssの大きさの比は、最大面の静的応力Ss:中間面の静的応力Ss:最小面の静的応力Ss=1:2.5:4となる。
ここで、最大面の静的応力Ss:中間面の静的応力Ss:最小面の静的応力Ss=1:2.5:4である場合の具体例として、最大面の静的応力Ssが200N/m2、中間面の静的応力Ssが500N/m2、最小面の静的応力Ssが、800N/m2である場合を例にとって説明する。また、強度特性値決定ステップS101において決定されたピン部112の強度特性値Acが、6000m/s2である場合を例にとって説明する。
上記の例の場合、最大面、中間面、及び最小面のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様を決定する際には、最大面、中間面、及び最小面のそれぞれの静的応力Ssに対応する伝達衝撃特性値Aoutが、ピン部112の強度特性値Ac以下となるように、最大面、中間面、及び最小面のそれぞれの内面の緩衝材12の仕様が決定される。
具体的には、最大面の内面に配置される緩衝材12の仕様を決定する際には、まず、最大面の静的応力Ssが200N/m2であるため、図10に示す緩衝特性に基づいて、静的応力Ssが200N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainが求められる。そして、求められた入力衝撃特性値Ainに基づいて、伝達衝撃特性値Aoutが求められる。静的応力Ssが200N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainは、シート素材の層数が1層の場合は2800m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は2000m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は1800m/s2である。伝達衝撃特性値Aoutは、入力衝撃特性値Ainの2倍の値に設定される。このため、伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1層の場合は5600m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は4000m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は3600m/s2である。
上記のようにして最大面に対応する伝達衝撃特性値Aoutが求められると、その伝達衝撃特性値Aoutが、ピン部112の強度特性値Ac以下となるように、最大面の内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。強度特性値Acは、6000m/s2であり、最大面に対応する伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1~3層のいずれの場合であっても、6000m/s2以下である。このため、シート素材の層数が1層であっても、ピン部112の破損を抑制することができる。よって、緩衝材の過度な仕様による過剰な梱包仕様となってしまうことを抑制するため、最大面の内面に配置される緩衝材12の仕様が、シート素材の層数が1層である仕様に決定される。
次に、中間面の内面に配置される緩衝材12の仕様を決定する際には、まず、中間面の静的応力Ssが500N/m2であるため、図10に示す緩衝特性に基づいて、静的応力Ssが500N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainが求められる。そして、求められた入力衝撃特性値Ainに基づいて、伝達衝撃特性値Aoutが求められる。静的応力Ssが500N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainは、シート素材の層数が1層の場合は4300m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は2700m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は2100m/s2である。伝達衝撃特性値Aoutは、入力衝撃特性値Ainの2倍の値に設定される。このため、伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1層の場合は8600m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は5400m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は4200m/s2である。
上記のようにして中間面に対応する伝達衝撃特性値Aoutが求められると、その伝達衝撃特性値Aoutが、ピン部112の強度特性値Ac以下となるように、中間面の内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。強度特性値Acは、6000m/s2であり、中間面に対応する伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1層の場合は6000m/s2を超えており、シート素材の層数が2層及び3層の場合は6000m/s2以下である。このため、シート素材の層数が2層であっても、ピン部112の破損を抑制することができる。よって、緩衝材の過度な仕様による過剰な梱包仕様となってしまうことを抑制するため、中間面の内面に配置される緩衝材12の仕様が、シート素材の層数が2層である仕様に決定される。
次に、最小面の内面に配置される緩衝材12の仕様を決定する際には、まず、最小面の静的応力Ssが800N/m2であるため、図10に示す緩衝特性に基づいて、静的応力Ssが800N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainが求められる。そして、求められた入力衝撃特性値Ainに基づいて、伝達衝撃特性値Aoutが求められる。静的応力Ssが800N/m2である場合に対応する入力衝撃特性値Ainは、シート素材の層数が1層の場合は5100m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は3100m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は2300m/s2である。伝達衝撃特性値Aoutは、入力衝撃特性値Ainの2倍の値に設定される。このため、伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1層の場合は10200m/s2であり、シート素材の層数が2層の場合は6200m/s2であり、シート素材の層数が3層の場合は4600m/s2である。
上記のようにして最小面に対応する伝達衝撃特性値Aoutが求められると、その伝達衝撃特性値Aoutが、ピン部112の強度特性値Ac以下となるように、最小面の内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。強度特性値Acは、6000m/s2であり、最小面に対応する伝達衝撃特性値Aoutは、シート素材の層数が1層及び2層の場合は6000m/s2を超えており、シート素材の層数が3層の場合は6000m/s2以下である。このため、シート素材の層数が3層に設定されることで、ピン部112の破損を抑制することができる。よって、シート素材の層数を4層以上に設定して緩衝材の過度な仕様による過剰な梱包仕様となってしまうことを抑制するため、最小面の内面に配置される緩衝材12の仕様が、シート素材の層数が3層である仕様に決定される。
上述のように、図4に示す梱包仕様決定方法によって、電子部品110を複数集合させた状態で直方体状のケース11に複数の電子部品110を収納して梱包する際の梱包仕様として、梱包容器1の梱包仕様が決定される。即ち、図4に示す梱包仕様決定方法によって、ケース11に複数の電子部品110を収納して梱包する際の梱包仕様として、ケース11の最大面の内面に配置されるシート素材の層数が1層であり、ケース11の中間面の内面に配置されるシート素材の層数が2層であり、ケース11の最小面の内面に配置されるシート素材の層数が3層である梱包仕様が、決定される。
[梱包仕様決定方法の実施形態の作用及び効果]
本実施形態によると、強度特性値決定ステップS101にて、梱包対象となる電子部品110のピン部112の強度特性値Acが決定される。また、このステップS101では、強度特性値Acは、ピン部112の先端側の部分を本体部111に対して相対変位させるようにピン部112に荷重を付加してピン部112を降伏させる降伏試験の結果に基づいて、決定される。そして、このように決定された強度特性値Acが、緩衝材12の仕様を決定する緩衝材仕様決定ステップS103にて用いられる。よって、電子部品110の梱包仕様の決定にあたり、梱包対象となる電子部品110のピン部112の強度特性値Acに基づいて、ピン部112の破損を抑制するように、緩衝材12の仕様を決定することができる。
尚、ケース11の落下等によってケース11に衝撃荷重が付加されると、ケース11の内部に配置された緩衝材12によって緩和された衝撃は、ケース11内の個々の電子部品110に対して、互いに隣接した電子部品110から伝達されることになる。このとき、衝撃が伝達される電子部品110においては、本体部111の変位が他の隣接した電子部品110に対して拘束された状態で、ピン部112に対して、更に他の電子部品110からの衝撃が伝達される状態となり易い。このため、複数集合して梱包された状態の電子部品110の個々に対して衝撃が加わる際におけるピン部112の破損を評価するためのピン部112の強度特性を把握するに際しては、本体部111に対してピン部112が相対変位するように衝撃が付加された場合のピン部112の降伏条件に基づく把握を行うことで、ピン部112の強度特性を正確に把握することができる。本実施形態によると、強度特性値決定ステップS101では、ピン部112の強度特性値Acは、ピン部112の先端側の部分を本体部111に対して相対変位させるようにピン部112に荷重を付加してピン部112を降伏させる降伏試験の結果に基づいて、決定される。このため、本実施形態によると、複数集合して梱包された状態の電子部品110の個々に対して衝撃が加わる際におけるピン部112の破損を評価するためのピン部112の強度特性をより正確に把握することができる。
また、本実施形態によると、緩衝特性導出ステップS102にて、緩衝材12となるシート素材46に対して錘44を落下させる衝撃試験が行われる。そして、このステップS102では、その衝撃試験の結果に基づいて、錘44の重さ及びシート素材面積に基づく静的応力Ssと錘44の落下時のシート素材46への入力衝撃特性値Ainとの関係としての緩衝材12の緩衝特性が導出される。よって、電子部品110の梱包仕様の決定にあたり、緩衝材12の緩衝特性に基づいて、ピン部112の破損を抑制するために必要となる緩衝材12の条件を確保できるように、緩衝材12の仕様を決定することができる。
尚、ケース11に付加される衝撃荷重としては、ケース11の落下時に生じる衝撃荷重が最も大きく、最も問題となる。この場合、複数の電子部品110を収納した状態のケース11の重さに応じて、ケース11に付加される衝撃荷重が大きくなる。また、ケース11が落下した際に床面等に衝突するケース11の面の内側に配置された緩衝材12の面積に応じて、衝撃が分散されることになる。また、ケース11の落下時の条件によって、ケース11の落下時に緩衝材12に入力される衝撃の特性も変化することになる。よって、緩衝材12の緩衝特性を把握するに際しては、複数の電子部品110を収納した状態のケース11の重さとの関係と、緩衝材12の面積との関係と、ケース11の落下時に緩衝材12に入力される衝撃の特性との関係とが把握されることで、緩衝材12の緩衝特性を正確に把握することができる。本実施形態によると、緩衝特性導出ステップS102では、緩衝材12となるシート素材46に対して錘44を落下させる衝撃試験が行われ、その衝撃試験の結果に基づいて、錘44の重さ及びシート素材面積に基づく静的応力Ssと錘44の落下時のシート素材への入力衝撃特性値Ainとの関係としての緩衝材12の緩衝特性が導出される。このため、本実施形態によると、最も問題となるケース11の落下時の衝撃の影響をより正確に反映した衝撃試験結果に基づいて、緩衝材12の緩衝特性を正確に把握することができる。
また、本実施形態によると、緩衝材仕様決定ステップS103が行われる。緩衝材仕様決定ステップS103では、入力衝撃特性値Ainに基づいて設定されてピン部112へ伝達される衝撃の特性を指標する伝達衝撃特性値Aoutが設定される。そして、このステップS103では、直方体状のケース11の最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のいずれにおいても、錘44の重さの目標値及び錘44の落下距離の目標値において、伝達衝撃特性値Aoutが強度特性値Ac以下となるように、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。よって、目標値として設定された錘44の重さ及び落下距離の条件に応じた衝撃荷重がケース11に付加された場合であっても、電子部品110のピン部112に伝達される衝撃が、ピン部112の強度を超えることが無いように、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置される緩衝材12の仕様が決定される。このため、目標値として設定された錘44の重さ及び落下距離の条件に応じた衝撃荷重がケース11に付加された場合であっても、ピン部112の破損が抑制されるように、緩衝材12の仕様が決定されることになる。そして、面積の異なる最大面、最小面、及び中間面のいずれから衝撃が付加された場合であっても、ピン部112の破損が抑制されるように、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれに対応した緩衝材12の仕様が決定される。このため、最大面、最小面、及び中間面のいずれの面においても、緩衝材12が過度に使用された過剰な緩衝材12の仕様となることが抑制される。よって、ピン部112の破損を効率よく抑制できるとともに緩衝材の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを効率よく抑制できる。
尚、緩衝材12に入力された衝撃が電子部品110のピン部112に伝達される際には、ピン部112は弾性変形するため、ピン部112に伝達される衝撃は、ピン部112に衝撃が作用している時間の間において変化することになる。そして、ピン部112に伝達される衝撃は、ピン部112に生じる弾性変形時の加速度に応じて、緩衝材12に入力された衝撃を中心として変動することになる。このため、ピン部112の破損を評価するためには、ピン部112に伝達される衝撃が最大となる状態を反映する必要がある。本実施形態によると、入力衝撃特性値Ainに基づいて設定されてピン部112へ伝達される衝撃の特性を指標する伝達衝撃特性値Aoutが、入力衝撃特性値Ainに対して所定の倍率を乗じることで設定される。このため、ピン部112に伝達される衝撃が最大となる状態を反映させて伝達衝撃特性値Aoutを設定することができる。
従って、本実施形態によると、本体部111とピン部112とを有する電子部品110を複数集合させた状態で収納して梱包する場合の梱包仕様に関し、ピン部112の破損を効率よく抑制できるとともに緩衝材12の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを効率よく抑制できる適切な梱包仕様を決定することができる、電子部品の梱包仕様決定方法を提供することができる。
また、本実施形態によると、ピン部112の強度特性値Acが、ピン部112が降伏した際にピン部112に付加した荷重Wyをピン部112の質量Mで除した値として決定されるため、降伏試験結果に基づくピン部112の強度特性値Acを容易に決定することができる。尚、電子部品110のピン部112に伝達された衝撃の大きさが所定の大きさを超えると、ピン部112が降伏して破損することになる。そして、電子部品110のピン部112に伝達された衝撃によってピン部112が降伏して破損する際には、ピン部112には、伝達された衝撃の大きさに対応した加速度が作用することになる。このため、ピン部112の降伏時にピン部112に作用する加速度を評価することで、ピン部112の破損を評価するためのピン部112の強度特性を把握することができる。本実施形態によると、ピン部112の強度特性値Acが、ピン部112が降伏した際にピン部112に付加した荷重Wyをピン部112の質量Mで除した値として決定されるため、ピン部112の降伏時にピン部112に作用する加速度を容易に評価してピン部112の強度特性値Acを容易に決定することができる。
また、本実施形態によると、入力衝撃特性値Ainが、錘44がシート素材46に落下した際に錘44に生じる最大加速度Amaxの測定値として設定されるため(即ち、Ain=Amaxとして設定されるため)、衝撃試験の結果に基づく錘44のシート素材46への落下時の入力衝撃特性値Ainを容易に設定することができる。尚、錘44がシート素材46へ落下してシート素材46に衝撃が入力される際には、シート素材46には、錘44のシート素材46への落下時の最大加速度Amaxに応じた衝撃が入力されることになる。このため、錘44のシート素材46への落下時の最大加速度Amaxを測定することで、錘44のシート素材46への落下時の入力衝撃特性値Ainを把握することができる。本実施形態によると、入力衝撃特性値Ainが、錘44のシート素材46への落下時の最大加速度Amaxの測定値として設定されるため、錘44のシート素材46への落下時の入力衝撃特性値Ainを容易に決定することができる。
また、本実施形態によると、緩衝材12の仕様として、ケース11の最大面(23a、23b)、最小面(24a、24b)、及び中間面(25a、25b)のそれぞれの内面に配置されるシート素材の層数が決定される。よって、面積の異なる最大面、最小面、及び中間面のいずれから衝撃が付加された場合であっても、ピン部112の破損が抑制されるように、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれに対応した緩衝材12としてのシート素材の層数が決定される。このため、最大面、最小面、及び中間面のいずれの面においても、緩衝材12が過度に使用された過剰な緩衝材12の仕様となることを容易に抑制することができる。よって、ピン部112の破損を効率よく抑制できるとともに緩衝材12の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを効率よく抑制できる適切な梱包仕様を容易に決定することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の梱包容器の実施形態では、ケースの最大面、中間面、及び最小面の全ての内面に緩衝材が配置された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ケースの最大面の内面には緩衝材が配置されず、ケースの中間面及び最小面の内面に緩衝材が配置された梱包容器の形態が実施されてもよい。この場合、梱包容器は、ケースの中間面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数よりも最小面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数の方が多くなるように、構成されていればよい。この構成によっても、前述の梱包容器の実施形態と同様に、ピン部の破損を効率よく抑制できるとともに緩衝材の過度な使用による過剰な梱包仕様となってしまうことを効率よく抑制できる、電子部品の梱包容器を提供することができる。
(2)前述の梱包容器の実施形態では、ケースの最大面の内面にシート素材が1層配置され、ケースの中間面の内面にシート素材が2層配置され、ケースの最小面の内面にシート素材が3層配置された形態を例にとって説明したが、シート素材の層数については、この通りでなくてもよい。梱包容器は、ケースの最大面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数よりもケースの中間面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数の方が多くなり、ケースの中間面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数よりもケースの最小面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数の方が多くなるように、構成されていればよい。
(3)前述の梱包仕様決定方法の実施形態では、ケースの最大面の内面にシート素材が1層配置され、ケースの中間面の内面にシート素材が2層配置され、ケースの最小面の内面にシート素材が3層配置されるように、緩衝材の仕様が決定される形態を例にとって説明したが、緩衝材の仕様として決定されるシート素材の層数については、この通りでなくてもよい。前述の実施形態で例示したシート素材の層数に限らず、ケースの最大面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数よりもケースの中間面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数の方が多くなり、ケースの中間面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数よりもケースの最小面の内面に配置される緩衝材におけるシート素材の層数の方が多くなるように、緩衝材の仕様が決定されればよい。
(4)前述の梱包仕様決定方法の実施形態では、ケースの最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置される緩衝材の仕様として、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置されるシート素材の層数が決定される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ケースの最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置される緩衝材の仕様として、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面に配置されるシート素材の種類の違い或いは構造の違いなどが決定される形態が実施されてもよい。例えば、決定された緩衝材の仕様により、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面において、互いに厚み寸法の異なるシート素材が配置される形態が実施されてもよい。また、決定された緩衝材の仕様により、最大面、最小面、及び中間面のそれぞれの内面において、互いに気泡分散構造が異なる気泡緩衝材として構成されたシート素材が配置される形態が実施されてもよい。