従来より金属化フィルムを巻回して形成したコンデンサ素子の集合体をデルタ結線等することにより、使用目的に応じた電圧、容量のコンデンサを作製する技術が知られている(特許文献1参照)。
近年ではコンデンサ素子の集合体を容器に収納することなく、外装樹脂で被覆(樹脂モールド)して金属化フィルムコンデンサ(ユニット)の軽量化を図ることが行われている。このような樹脂モールドされた従来の交流Δ結線構造を有する金属化フィルムコンデンサについて、図12~図19を用いて説明する。
図14に示すように、横寝かせ状態の2つのコンデンサ素子21,21を横方向に並列配置して1つのコンデンサ素子ユニットC21が構成されている。コンデンサ素子ユニットC21は全体として横長横寝かせ型となっている。図14(b)のように背面側において、一方のコンデンサ素子21における金属電極と他方のコンデンサ素子21における金属電極とが両者間に跨って架設される水平方向に横長の結線用電極板22を介して電気的かつ機械的に接続されている。この接続はコンデンサ素子どうしの直列接続である。図14(a)のように表面側では、縦姿勢の引き出し導電板25a1 にアングル状の繋ぎ用導電板25a2 が一体化接合されてなる複合型引き出し導電板25が用意され、この複合型引き出し導電板25がコンデンサ素子21における引き出し用の金属電極(メタリコン)に電気的かつ機械的に接続されている。
この複合型引き出し導電板25は、図13(a),(b)に示すように、縦姿勢の引き出し導電板25a1 の上端部を直角に折り曲げて形成した水平接続部p1 に対して、アングル状の繋ぎ用導電板25a2 の下端部を直角に折り曲げて形成した水平接続部p2 を上下方向で当接させ、スポット溶接(下向き矢印参照)などで一体化接合したものである。p3 はアングル状の繋ぎ用導電板25a2 における縦板部、p4 は上端載置支持板部である。
すなわち、図14に示すように、コンデンサ素子ユニットC21を構成する一対のコンデンサ素子21,21において、横長の結線用電極板22が存在する背面側に対して外方対向する表面側の金属電極P極、N極それぞれに複合型引き出し導電板25が接続されている。
図15は、図14のようにして作製したコンデンサ素子ユニットを3つ並べて構成した素子ユニット集合体29を表している。これ以降、3つのコンデンサ素子ユニットを区別するために、第1のコンデンサ素子ユニットC21、第2のコンデンサ素子ユニットC22、第3のコンデンサ素子ユニットC23とする。
図16は、図15に示す素子ユニット集合体29を金型のキャビティに収容し、溶融樹脂を注入充填硬化してモールド成形した中間半製品を示す。28が素子ユニット集合体29のほぼ全体を被覆保護する外装樹脂である。外装樹脂28の表面から外方に複合型引き出し導電板25におけるアングル状の繋ぎ用導電板25a2 の上端側が突出している。すなわち、縦板部p3 の上半部と上端載置支持板部p4 とが露出している。
次に、図17に示すように、外装樹脂28の表面外方において、2つのアングル状の繋ぎ用導電板25a2 ,25a2 の上端載置支持板部p4 ,p4 間にわたって中継用電極板25c1 ~25c3 を掛け渡す。この中継用電極板25c1 ~25c3 による掛け渡しの様子は次のとおりとなっている。
3列目左側の上端載置支持板部p4 と2列目左側の上端載置支持板部p4 との間に第1の中継用電極板25c1 が架け渡されている。2列目右側の上端載置支持板部p4 と1列目右側の上端載置支持板部p4 との間に第2の中継用電極板25c2 が架け渡されている。3列目右側の上端載置支持板部p4 と1列目左側の上端載置支持板部p4 との間に第3の中継用電極板25c3 が架け渡されている。
第1の中継用電極板25c1 と第2の中継用電極板25c2 とは直線状で短尺な形状を呈しているのに対して、第3の中継用電極板25c3 はクランク状で長尺な形状を呈している。図12に示すように製造の最終的な形態において、各中継用電極板25c1 ,25c2 ,25c3 の中央部にはそれぞれ円柱状の外部接続端子25d1 ,25d2 ,25d3 が電気的かつ機械的に接続されている。これらの外部接続端子はそれぞれΔ結線におけるW相、U相、V相を形成する。
図18は配線系統を回路図として分かりやすく示したものである。第1の中継用電極板25c1 は、第3のコンデンサ素子ユニットC23における左側のコンデンサ素子21L23 と第2のコンデンサ素子ユニットC22における左側のコンデンサ素子21L22 とにわたって架け渡され、W相の引き出しの基点となっている。第2の中継用電極板25c2 は、第2のコンデンサ素子ユニットC22における右側のコンデンサ素子21R22 と第1のコンデンサ素子ユニットC21における右側のコンデンサ素子21R21 とにわたって架け渡され、V相の引き出しの基点となっている。第3の中継用電極板25c3 は、第1のコンデンサ素子ユニットC21における左側のコンデンサ素子21L21 と第3のコンデンサ素子ユニットC23における右側のコンデンサ素子21R23 とにわたって架け渡され、U相の引き出しの基点となっている。
上記従来の交流Δ結線構造を有する金属化フィルムコンデンサにおいて、第3の中継用電極板25c3 は第2のコンデンサ素子ユニットC22を間に挟んで離間距離が長くなっている第1のコンデンサ素子ユニットC21と第2のコンデンサ素子ユニットC22とを、それも左側のコンデンサ素子21L21 と右側のコンデンサ素子21R23 とを接続する必要がある。そのために第3の中継用電極板25c3 はクランク状で長尺な形状を呈するものとせざるを得なくなっている。
ほぼ完成品状態を表す図12および要部拡大を表す図19に示すように、アングル状の繋ぎ用導電板25a2 の上端載置支持板部p4 と中継用電極板25cとの接続固定を確実にするためにボルト26とナット27が用いられる。アングル状の繋ぎ用導電板25a2 における上端載置支持板部p4 と各中継用電極板25cにはボルト挿通孔が位置合わせ状態で形成されており、そのボルト挿通孔にボルト26を挿通する。ナット27は上端載置支持板部p4 の下面に当接され、そのナット27にボルト26が螺合緊締される。
このような構造をとっているため、アングル状の繋ぎ用導電板25a2 の上端載置支持板部p4 の下面と外装樹脂28の上面との間にナット27を配置するための空間が必要となっている。
そもそもこの従来例にあっては、外装樹脂28の外方で3相(U相・V相・W相)のΔ(デルタ)結線を構築することを前提としているので、引き出し用の導電板と中継用電極板との電気的接続を伴う固定連結を機械的強度の大きなものにしておく必要がある。逆に言うと、Δ結線構造における強度メンバーとして外装樹脂の能力を利用することができないので、ボルト26とナット27とを用いる必要があり、そのために、引き出し導電板25a1 以外にアングル状の繋ぎ用導電板25a2を必要とし、さらにこの両者をスポット溶接などしておく必要が生じている。このように従来は、Δ結線するために構造が大型化・複雑化するという問題があった。
さらに、従来の交流Δ結線構造を有する金属化フィルムコンデンサにおいては、引き出しのための結線長さが長く、また不均等であるため、引き出しユニットのインピーダンス自体が大きく、Δ結線における各相のインピーダンス差が大きくなっていた。その結果、発熱や過熱の問題が生じていた。
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低インピーダンスかつ各相のインピーダンス差が小さく、小型かつ簡素な構造でΔ結線をすることができる金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
本発明による金属化フィルムコンデンサは、
素子軸方向を互いに実質的に平行にする同一姿勢状態の少なくとも2つのコンデンサ素子が並設され、それぞれにおける一方の金属電極どうしが直列または直並列に接続されてなるコンデンサ素子ユニットとして第1、第2、第3の3つのコンデンサ素子ユニットを備え、
前記第1のコンデンサ素子ユニットと前記第2のコンデンサ素子ユニットとはそれぞれの前記素子軸方向を実質的に同軸状として近接状態で対向して並列配置され、
前記第3のコンデンサ素子ユニットはそれの前記素子軸方向を前記並列配置された前記第1のコンデンサ素子ユニットおよび第2のコンデンサ素子ユニットの同軸状の前記素子軸方向に対して実質的に直交する姿勢で前記第1のコンデンサ素子ユニットおよび第2のコンデンサ素子ユニットに近接状態で対向して配置され、
両端部に前記コンデンサ素子の金属電極と電気的に接続される接合部を有し、中間部に外部接続端子を有してなる引き出しユニットとして第1、第2、第3の3つの引き出しユニットを備え、
前記第1のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と前記第3のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1および第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して前記第1の引き出しユニットにおける両端の接合部がそれぞれ架け渡し状態で結線され、
前記第3のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1および第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と前記第2のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して前記第2の引き出しユニットにおける両端の接合部がそれぞれ架け渡し状態で結線され、
前記第2のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と前記第1のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して前記第3の引き出しユニットにおける両端の接合部がそれぞれ架け渡し状態で結線され、
前記第1、第2、第3の引き出しユニットそれぞれにおける前記外部接続端子を外部に露出させる状態で、前記第1、第2、第3のコンデンサ素子ユニットおよび前記第1、第2、第3の引き出しユニットが外装樹脂によって被覆されている。
上記構成の本発明の金属化フィルムコンデンサは次のような作用を発揮する。
コンデンサ素子ユニットとして第1、第2、第3の3つのユニットを備えるが、これらのコンデンサ素子ユニットはいずれも、少なくとも2つのコンデンサ素子が並設されてなるものである。コンデンサ素子ユニットを構成する各コンデンサ素子は、それぞれの素子軸方向を互いに実質的に平行にする同一姿勢状態で並設されている。
コンデンサ素子ユニットを構成する少なくとも2つのコンデンサ素子は、それぞれにおける一方の金属電極どうしが直列または直並列に接続されている。すなわち、一方のコンデンサ素子における金属電極と他方のコンデンサ素子における金属電極とが直列に接続され、前記一方のコンデンサ素子における残りの金属電極と前記他方のコンデンサ素子における残りの金属電極とは、後述するようにそれぞれ別のコンデンサ素子ユニットに対して接続される。
引き出しユニットは隣接するコンデンサ素子ユニットどうしを接続するもので、その両端部にはコンデンサ素子の金属電極と電気的に接続される接合部を有し、中間部に外部接続端子を有している。この引き出しユニットとして第1、第2、第3の3つの引き出しユニットを備える。
第1の引き出しユニットは第1のコンデンサ素子ユニットと第3のコンデンサ素子ユニットとを接続し、第2の引き出しユニットは第3のコンデンサ素子ユニットと第2のコンデンサ素子ユニットとを接続し、第3の引き出しユニットは第2のコンデンサ素子ユニットと第1のコンデンサ素子ユニットとを接続する。詳しくは次のとおりである。
第1の引き出しユニットにおける両端部の接合部がそれぞれ第1のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と第3のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1および第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して架け渡し状態で結線される。
第2の引き出しユニットにおける両端部の接合部がそれぞれ第3のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1および第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と第2のコンデンサ素子ユニットにおける一方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して架け渡し状態で結線される。
第3の引き出しユニットにおける両端部の接合部がそれぞれ第2のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第1のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極と第1のコンデンサ素子ユニットにおける他方のコンデンサ素子の両金属電極のうち前記第2のコンデンサ素子ユニットと対向していない側の外側金属電極とに対して架け渡し状態で結線される。
引き出しユニットにおける第1、第2、第3の相対的な配置関係は、コンデンサ素子ユニットにおける第1、第2、第3の相対的な配置関係に対して対称的となっている。具体的には、例えば、第1のコンデンサ素子ユニットが手前左側に配置され、第2のコンデンサ素子ユニットが奥左側に配置され、これら左側に位置する第1および第2のコンデンサ素子ユニットの両者に対してそれらの右側に第3のコンデンサ素子ユニットが配置されているとする。この配置形態を基準として、第1、第2、第3の引き出しユニットは次のように配置される。すなわち、第1の引き出しユニットが手前右側に配置され、第2の引き出しユニットが奥右側に配置され、これら右側に位置する第1および第2の引き出しユニットの両者に対してそれらの左側に第3の引き出しユニットが配置される。
言い換えると、第1のコンデンサ素子ユニットと第2のコンデンサ素子ユニットとは互いに平行関係にあり、かつ、第3のコンデンサ素子ユニットは互いに平行な第1および第2のコンデンサ素子ユニットに対して直交の関係にある。つまり、〔平行・直交配列〕となっている。一方、第1の引き出しユニットと第2の引き出しユニットとは互いに平行関係にあり、かつ、第3の引き出しユニットは互いに平行な第1および第2の引き出しユニットに対して直交の関係にある。これも、〔平行・直交配列〕となっている。そして、コンデンサ素子ユニットの〔平行・直交配列〕と引き出しユニットの〔平行・直交配列〕とは対称的となっている。より分かりやすくは、3つのコンデンサ素子ユニットはコの字状(あるいは逆コの字状)を呈する配列となっており、3つの引き出しユニットは逆コの字状(あるいはコの字状)を呈する配列となっている。
このように第1、第2、第3の引き出しユニットの配置関係が第1、第2、第3のコンデンサ素子ユニットの配置関係に対して対称的となっているので、引き出しユニットによる架け渡し結線の構造を単純化することが可能となる。そしてその結果として、引き出しユニットの一端部での接合部の金属電極に対する結線ポイントと当該引き出しユニットの他端部での接合部の金属電極に対する結線ポイントとの相対関係が、互いに隣り合っていて離間距離が短いコンデンサ素子ユニットどうし間の配置関係となる。つまり、離間距離が短い隣接ユニット間の結線であるため、従来例との比較において、第1、第2、第3の3つの引き出しユニットによる結線長さを短縮化することが可能になるとともに、それらの結線長さをほぼ同等の関係に近づけることが可能となる(結線長さの同等化)。第1、第2、第3の3つの引き出しユニットの形状についてもほぼ似通ったものにすることが可能となる。
引き出しユニットの結線長さを短縮化することは、引き出しユニットのインピーダンスを低減化することに寄与する。3つの引き出しユニットの結線長さをほぼ同等にすることは、コンデンサ素子ユニットどうし間のインピーダンス差を低減化することに寄与する。その結果として、金属化フィルムコンデンサの発熱特性を改善することが可能となる。
また、上記したように引き出しユニットによる架け渡し結線の構造を単純化することで、小型かつ簡素な構造でΔ結線をすることが可能となる。
本発明によれば、低インピーダンスかつ各相のインピーダンス差が小さく、小型かつ簡素な構造でΔ結線をすることができる金属化フィルムコンデンサを提供することができる。
以下、上記構成の本発明の金属化フィルムコンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
図1は本発明の実施例における交流Δ結線構造を有する金属化フィルムコンデンサにおいて、金属化ポリプロピレン(PP)フィルムを用いた3つのコンデンサ素子ユニットと3つの引き出しユニットからなるコンデンサ主部(アッセンブリとしての構成部品)の構成を示す斜視図、図2は図1に示すコンデンサ主部を樹脂モールドした状態の金属化フィルムコンデンサを示す透視斜視図である。また、図3は3つのコンデンサ素子ユニットの配列の方向性の相関関係を示す斜視図、図4は1つのコンデンサ素子ユニットの概略構造を示す斜視図、図5は図3に示す3つのコンデンサ素子ユニットを集約した素子ユニット集合体を示す斜視図、図6(a),(b)はそれぞれ図3の状態との相関関係、図5の状態との相関関係を模式化して示す斜視図である。図7は3つの引き出しユニット配列の方向性の相関関係を示す斜視図、図8は図2の状態に対応する状態で外観を表した金属化フィルムコンデンサの斜視図、図9は3つのコンデンサ素子ユニットと3つの引き出しユニットとの接続状態を表す模式図である。
これらの図において、X,Y,Zは空間での3次元方向を示し、Xは水平軸である第1軸方向、Yは第1軸方向Xに対して垂直な水平軸としての第2軸方向、Zは鉛直軸としての第3軸方向である。第2軸方向Yと第3軸方向Zとは互いに垂直に交差し、かついずれも第1軸方向Xに対しても垂直であり、第1軸方向X、第2軸方向Y、第3軸方向Zは互いに直交する3次元方向となっている。第3軸方向Zは鉛直方向であり、第1軸方向Xと第2軸方向Yは互いに直交する水平方向である。
C1は第1のコンデンサ素子ユニット、C2は第2のコンデンサ素子ユニット、C3は第3のコンデンサ素子ユニット(特に図5、図3、図1参照)、VHは第1の引き出しユニット、WHは第2の引き出しユニット、UHは第3の引き出しユニット(特に図7、図1参照)である。1はコンデンサ素子であり、図4における2は結線用電極板、3はハンダ、4はスペーサである。図4の状態は、図1、図2、図3、図5において手前側で左側に配列した第1のコンデンサ素子ユニットC1を基準にして、そのコンデンサ素子ユニットを方向Zに沿う第3軸周りに180°回転させたもの、つまり第2のコンデンサ素子ユニットC2に対応している。図1、図2、図7における5a,5bは第1、第2の引き出し導電板、5cは中継用電極板、5dは外部接続端子、6は絶縁体(薄厚の絶縁紙)、図1、図2における7はコンデンサ主部、図2、図8における8は外装樹脂、9は素子ユニット集合体、10は引き出しユニット集合体である。
まず、図3~図6に基づいて、第1、第2、第3の3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3について説明する。
第1、第2、第3の3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3はそれぞれ、2つのコンデンサ素子1,1が並設された基本的構造を有している。いずれのコンデンサ素子ユニットも、2つのコンデンサ素子1,1は、それぞれの素子軸方向を互いに平行にする同一姿勢状態で並設されている(図3、図5参照)。
コンデンサ素子1においては、素子軸方向の他に素子軸方向に対して直交しかつ互いにも直交する他の2次元方向の軸方向が2つあるが、複数のコンデンサ素子について前記の同一姿勢状態とは、素子軸方向以外のコンデンサ素子における他の第1の軸方向を互いに実質的に平行にするとともに、他の第2の軸方向も互いに実質的に平行にする姿勢状態である。つまり、コンデンサ素子1において引き出し用の金属電極(メタリコン)が形成されている端面は小判形を呈していて、その小判形には長径と短径とがあるが、一対のコンデンサ素子1,1の長径方向どうしが互いに平行で、短径方向どうしも互いに平行となっている。
3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3のそれぞれにおいて、水平方向(空間内の第2軸方向Yまたは第1軸方向X)に沿って並ぶ2つのコンデンサ素子1,1のうち一方のコンデンサ素子1における片側の金属電極と他方のコンデンサ素子1における片側の金属電極とは両者間に跨って架設される水平方向に横長の結線用電極板2を介して電気的かつ機械的に接続されている(図4参照)。この電気的かつ機械的な接続はハンダ3によって行われている。結線用電極板2は一対のコンデンサ素子1,1を直列に接続している。横長の結線用電極板2を伴わない残りの一方のコンデンサ素子1における金属電極と他方のコンデンサ素子1における金属電極は引き出しユニットを用いて別のコンデンサ素子ユニットへと接続される(詳しくは後述する)。
図3、図5に示すように、第1のコンデンサ素子ユニットC1の場合、2つのコンデンサ素子1,1が第2軸方向Yに沿って並ぶとともに、結線用電極板2が第1軸方向Xの下手側(紙面奥側)の端面に位置するように配列される。第2軸方向Yの上手側(左側)のコンデンサ素子1は、その第1軸方向Xの端面(紙面手前側の端面)がU相に接続される金属電極(UC1)となっており、第2軸方向Yの下手側(右側)のコンデンサ素子1は、その第1軸方向Xの端面(紙面手前側の端面)がV相に接続される金属電極(VC1)となっている。第1のコンデンサ素子ユニットC1にあっては、結線用電極板2は奥側(第1軸方向Xの下手側)に位置している。
第2のコンデンサ素子ユニットC2の場合、2つのコンデンサ素子1,1が第2軸方向Yに沿って並ぶとともに、結線用電極板2が第1軸方向Xの上手側(紙面手前側)の端面に位置するように配列される。第2軸方向Yの下手側(右側)のコンデンサ素子1は、その第1軸方向Xの端面(紙面奥側の端面)がW相に接続される金属電極(WC2)となっており、第2軸方向Yの上手側(左側)のコンデンサ素子1は、その第1軸方向Xの端面(紙面奥側の端面)がU相に接続される金属電極(UC2)となっている。第2のコンデンサ素子ユニットC2にあっては、結線用電極板2は手前側(第1軸方向Xの上手側)に位置している。
第2のコンデンサ素子ユニットC2は、第1のコンデンサ素子ユニットC1を方向Zに沿う第3軸周りに180°回転させたものに相当する。第1のコンデンサ素子ユニットC1における結線用電極板2と第2のコンデンサ素子ユニットC2における結線用電極板2とは背中合わせの近接状態で対向している。
第3のコンデンサ素子ユニットC3の場合、2つのコンデンサ素子1,1が第1軸方向Xに沿って並ぶとともに、結線用電極板2が第2軸方向Yの上手側(左側)の端面に位置するように配列される。第1軸方向Xの上手側(紙面手前側)のコンデンサ素子1は、その第2軸方向Yの下手側(右側)の端面がV相に接続される金属電極(VC3)となっており、第1軸方向Xの下手側(紙面奥側)のコンデンサ素子1は、その第2軸方向Yの下手側(右側)の端面がW相に接続される金属電極(WC3)となっている。第3のコンデンサ素子ユニットC3にあっては、結線用電極板2は左側(第2軸方向Yの上手側)に位置している。
第3のコンデンサ素子ユニットC3は、第1のコンデンサ素子ユニットC1を方向Zに沿う第3軸周りで反時計方向に90°回転させたものに相当する。第2のコンデンサ素子ユニットC2は、第3のコンデンサ素子ユニットC3を第3軸周りで反時計方向に90°回転させたものに相当し、第1のコンデンサ素子ユニットC1は、第2のコンデンサ素子ユニットC2を第3軸周りで180°回転させたものに相当している。
3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3それぞれにおける結線用電極板2,2,2は図1、図5に示すアッセンブリとして集約配列された構成部品の内方側(外表面にはでない領域)に位置している。
第2のコンデンサ素子ユニットC2を表した図4において、結線用電極板2に対して、その両側位置で2つのコンデンサ素子1,1のほぼ中央部にPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂製などのスペーサ4,4が接着されている。このスペーサ4,4は第2のコンデンサ素子ユニットC2に代えて第1のコンデンサ素子ユニットC1にも設けてもよい。また、スペーサ4,4どうしが接触しないように第1のコンデンサ素子ユニットC1と第2のコンデンサ素子ユニットC2とにそれぞれ1つずつ設けてもよい。これにより、第1のコンデンサ素子ユニットC1と第2のコンデンサ素子ユニットC2との間隔規制を行う。
なお、第1および第2のコンデンサ素子ユニットC1,C2と対向配置される第3のコンデンサ素子ユニットC3の結線用電極板2には、所定の間隔を確保するためスペーサ4が設けられる。
3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3のそれぞれにおける一対のコンデンサ素子1,1どうしは近接状態で並列配置されているが、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3どうしも互いに近接状態で対向して配置されている。この場合に、第1のコンデンサ素子ユニットC1における結線用電極板2と第2のコンデンサ素子ユニットC2における結線用電極板2とは内方において背中合わせ状態で近接している。第1、第2のコンデンサ素子ユニットC1および/またはC2の内方部に設けたスペーサ4,4は両コンデンサ素子ユニットどうし間の間隔規制を行い、第3のコンデンサ素子ユニットC3の内方部に設けたスペーサ4,4は第1のコンデンサ素子ユニットC1および第2のコンデンサ素子ユニットC2との間隔規制を行う。
3つのコンデンサ素子ユニットC1、C2、C3の配列の相関関係を分かりやすくするために、図6(a),(b)を用いて補足する。図6(a)は図3における3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3それぞれの占有空間モデルM1,M2,M3を表し、図6(b)は図5における3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3それぞれの占有空間モデルM1,M2,M3を表している。
図6(a)では第1の占有空間モデルM1と第2の占有空間モデルM2とが互いに平行で離れている。第3の占有空間モデルM3は第1の占有空間モデルM1および第2の占有空間モデルM2に対して直交し、かつ両者から離れている。この状態は図3の3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3の配置関係に対応している。
図6(b)では第1の占有空間モデルM1と第2の占有空間モデルM2とが互いに平行を保った状態で接近している。第3の占有空間モデルM3は姿勢(方向性)を保ったまま第1の占有空間モデルM1および第2の占有空間モデルM2に対して接近している。この状態は図5に示す素子ユニット集合体9における3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3の配置関係に対応している。3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3の配列状態について、上方から見た形でコの字状を呈する配列となっている。
次に、第1、第2、第3の3つの引き出しユニットVH,WH,UHについて説明する。
図7は図5に示す3つの素子ユニット集合体9に位置対応させて描いた引き出しユニット集合体10つまり3つの引き出しユニットVH,WH,UHを示している。そして、図1は3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3に対して3つの引き出しユニットVH,WH,UHを結合した構成のコンデンサ主部7を表し、図2の透視斜視図はそのコンデンサ主部7を外装樹脂8によって被覆した完成品としての金属化フィルムコンデンサを示している。図8の斜視図は図2の状態に対応した外観を表している。
第1の引き出しユニットVHは第1のコンデンサ素子ユニットC1と第3のコンデンサ素子ユニットC3とにわたる状態で配置され、第2の引き出しユニットWHは第3のコンデンサ素子ユニットC3と第2のコンデンサ素子ユニットC2とにわたる状態で配置され、第3の引き出しユニットUHは第2のコンデンサ素子ユニットC2と第1のコンデンサ素子ユニットC1とにわたる状態で配置されている。
第1、第2、第3の3つの引き出しユニットVH,WH,UHはそれぞれ、ユニット結線用電極板5と絶縁体(薄厚の絶縁紙)6を有している。ユニット結線用電極板5は、一方の接合部を構成する第1の引き出し導電板5a、他方の接合部を構成する第2の引き出し導電板5b、中継用電極板5c、外部接続端子5dを備えている。第1の引き出し導電板5a、第2の引き出し導電板5bはほぼ縦長姿勢であり、中継用電極板5cは水平姿勢であり、外部接続端子5dはその軸方向が鉛直方向となっている。
第1の引き出し導電板5aと第2の引き出し導電板5bとはほぼ同形同大で、その縦長主部の上端部を直角に折り曲げて水平接続部を構成している。中継用電極板5cの長手方向の両端部に対して第1の引き出し導電板5aの水平接続部と第2の引き出し導電板5bの水平接続部がスポット溶接などにより電気的かつ機械的に接続されている。第1の引き出し導電板5aと第2の引き出し導電板5bとは、上方から見て、第1の引き出しユニットVHと第2の引き出しユニットWHでは互いに直交姿勢となっており、第3の引き出しユニットUHでは互いに向かい合わせの平行姿勢となっている。
第1の引き出しユニットVHの場合には、一方の接合部(VH1)を構成する第1の引き出し導電板5aは中継用電極板5cの左端手前部に接続され、他方の接合部(VH2)を構成する第2の引き出し導電板5bは中継用電極板5cの右端側辺部でやや奥側に偏位した部位に接続されている。第2の引き出しユニットWHの場合には、一方の接合部(WH1)を構成する第1の引き出し導電板5aは中継用電極板5cの右端側辺部でやや手前側に偏位した部位に接続され、他方の接合部(WH2)を構成する第2の引き出し導電板5bは中継用電極板5cの左端奥部に接続されている。第3の引き出しユニットUHの場合には、一方の接合部(UH1)を構成する第1の引き出し導電板5aは中継用電極板5cの奥側の側辺部に接続され、他方の接合部(UH2)を構成する第2の引き出し導電板5bは中継用電極板5cの手前側の側辺部に接続されている。
そして、3つの引き出しユニットVH,WH,UHのいずれにおいても、その中継用電極板5cの中央部に円柱状の外部接続端子5dが電気的かつ機械的に接続されている。3つの引き出しユニットVH,WH,UHの外部接続端子5dがそれぞれ、V相接続端子、W相接続端子、U相接続端子に相当する。また、いずれの中継用電極板5cもその下面部位で外部接続端子5dの直下位置に薄厚の絶縁紙などの絶縁体6を配置してもよい。絶縁体6としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製などであってもよい。
図1に示すように、第1の引き出しユニットVHは、第1のコンデンサ素子ユニットC1における右側のコンデンサ素子1の金属電極(VC1)と第3のコンデンサ素子ユニットC3における手前側のコンデンサ素子1の金属電極(VC3)とにわたって架け渡し状態で結線されている。すなわち、第1の引き出しユニットVHの左側の接合部(VH1)を構成する第1の引き出し導電板5aが第1のコンデンサ素子ユニットC1の一方のコンデンサ素子1の金属電極(VC1)に電気的に接続され、第1の引き出しユニットVHの右側の接合部(VH2)を構成する第2の引き出し導電板5bが第3のコンデンサ素子ユニットC3の一方のコンデンサ素子1の金属電極(VC3)に電気的に接続されている。図9の模式図で表したように、記号を用いて模式的に表現すると、
-(VC1)・(VH1)=(VH2)・(VC3)-
となる(領域A1参照)。ここで、「・」はコンデンサ素子1の金属電極と第1または第2の引き出し導電板との接続を示し、「=」は中継用電極板を介した第1の引き出し導電板と第2の引き出し電極板との接続を示し、「-」はコンデンサ素子ユニット内のコンデンサ素子1間の結線用電極板2によるシリーズ接続を示す(以下、同様)。
第2の引き出しユニットWHは、第3のコンデンサ素子ユニットC3における奥側のコンデンサ素子1の金属電極(WC3)と第2のコンデンサ素子ユニットC2における右側のコンデンサ素子1の金属電極(WC2)とにわたって架け渡し状態で結線されている。すなわち、第2の引き出しユニットWHの右側の接合部(WH1)を構成する第1の引き出し導電板5aが第3のコンデンサ素子ユニットC3の他方のコンデンサ素子1の金属電極(WC3)に電気的に接続され、第2の引き出しユニットWHの左側の接合部(WH2)を構成する第2の引き出し導電板5bが第2のコンデンサ素子ユニットC2の一方のコンデンサ素子1の金属電極(WC2)に電気的に接続されている。記号を用いて模式的に表現すると、
-(WC3)・(WH1)=(WH2)・(WC2)-
となる(領域A2参照)。
第3の引き出しユニットUHは、第2のコンデンサ素子ユニットC2における左側のコンデンサ素子1の金属電極(UC2)と第1のコンデンサ素子ユニットC1における左側のコンデンサ素子1の金属電極(UC1)とにわたって架け渡し状態で結線されている。すなわち、第3の引き出しユニットUHの奥側の接合部(UH1)を構成する第1の引き出し導電板5aが第2のコンデンサ素子ユニットC2の他方のコンデンサ素子1の金属電極(UC2)に電気的に接続され、第3の引き出しユニットUHの手前側の接合部(UH2)を構成する第2の引き出し導電板5bが第1のコンデンサ素子ユニットC1の他方のコンデンサ素子1の金属電極(UC1)に電気的に接続されている。記号を用いて模式的に表現すると、
-(UC2)・(UH1)=(UH2)・(UC1)-
となる(領域A3参照)。
上記3つの模式的表記をまとめると、
-(VC1)・(VH1)=(VH2)・(VC3)-(WC3)・(WH1)=(WH2)・(WC2)-(UC2)・(UH1)=(UH2)・(UC1)-(VC1)
となる。これはサイクリックな規則性をもっていることが分かる。
図5に示す3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3の素子ユニット集合体9に対して図7に示す3つの引き出しユニットVH,WH,UHを上方からかぶせて、図1に示すようなコンデンサ主部7を構成する。この場合に、互いに異なるコンデンサ素子ユニットにおける金属電極どうしに対して引き出しユニットにおける第1の引き出し導電板5a、第2の引き出し導電板5bをハンダ(図示省略)を用いて接続する。このとき、引き出しユニットにおける絶縁体6を隣接するコンデンサ素子ユニットどうしのコンデンサ素子1,1の境界部付近の上部位置に配置することが好ましい。
スペーサ4は第1の引き出し導電板5a、第2の引き出し導電板5bの外表面にも接着される(図示省略)。これらのスペーサ4はインサート成形用の金型のキャビティ内周面との間でコンデンサ主部7の位置規制(間隔規制)を行うことで、外装樹脂8の厚みを所定の厚みに調整する。
なお、図1において二点鎖線で示すように、縦長の絶縁体(薄厚の絶縁紙)11,11,11を隣接する第1のコンデンサ素子ユニットC1と第3のコンデンサ素子ユニットC3との境界部、第3のコンデンサ素子ユニットC3と第2のコンデンサ素子ユニットC2との境界部、第2のコンデンサ素子ユニットC2と第1のコンデンサ素子ユニットC1との境界部に介在させておくことが好ましい。
金型のキャビティにコンデンサ主部7をセットし、エポキシ樹脂など電気絶縁性で熱硬化性を有する溶融樹脂を注入充填し、固化をまって離型する。このインサート成形において、図8に示すように、3つの引き出しユニットVH,WH,UHそれぞれにおける外部接続端子5d‥を外部に露出させる状態で樹脂成形を行い、コンデンサ主部7を外装樹脂8で被覆保護した完成品としての金属化フィルムコンデンサを得る。
なお、金属化フィルムコンデンサを電気自動車や産業用電気機器などのフレーム等の固定部に取り付け固定する際に用いる締結部材としてのボルトを螺合するための被締結具としてのPPS樹脂・黄銅製などのナットユニット12(図8参照)を外装樹脂8内にインサートした状態で樹脂成形することが好ましい。なお、ナットユニット12は図8において外装樹脂8の一側面に2つ設けられているが、外方対向する反対側の側面にも同様に(対称的に)設けられている。
本実施例においては、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3はコの字状を呈する配列となっている(端的には図6(b)参照)。第1のコンデンサ素子ユニットC1と第2のコンデンサ素子ユニットC2とは互いに平行関係にある。また、第3のコンデンサ素子ユニットC3は互いに平行な第1および第2のコンデンサ素子ユニットC1,C2に対してその右側に隣接して位置した直交の関係にある。この関係を〔平行・直交配列〕と称することとする。
一方、3つの引き出しユニットVH,WH,UHは逆コの字状を呈する配列となっている(図1、図7参照)。第1の引き出しユニットVHと第2の引き出しユニットWHとは互いに平行関係にある。また、第3の引き出しユニットUHは互いに平行な第1および第2の引き出しユニットVH,WHに対してその左側に隣接して位置した直交の関係にある。これも、〔平行・直交配列〕となっている。
このように、コンデンサ素子ユニットの〔平行・直交配列〕と引き出しユニットの〔平行・直交配列〕とは対称的となっている。すなわち、3つの引き出しユニットVH,WH,UHによる架け渡し結線の構造が従来例に比べて単純化されている。各引き出しユニットにおいて、その一端接合部と一のコンデンサ素子ユニット内におけるコンデンサ素子1の金属電極に対する結線ポイントと、他端接合部と他のコンデンサ素子ユニット内におけるコンデンサ素子1の金属電極に対する結線ポイントとの相対関係が、互いに隣り合っていて離間距離が短いコンデンサ素子ユニットどうし間の配置関係となる。つまり、離間距離が短い隣接ユニット間の結線であるため、従来例との比較において、第1、第2、第3の3つの引き出しユニットVH,WH,UHによる結線長さを短縮化することが可能となっている。その結果、引き出しユニットVH,WH,UHのインピーダンスを低減化することができる。
併せて、3つの引き出しユニットVH,WH,UHによる結線長さをほぼ同等の関係に近づけることが可能となっている(結線長さの同等化)。その結果、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3どうし間のインピーダンス差を低減化することができる。
図8に示すように、外装樹脂8の表面から外方に出ているのはU相・V相・W相3つの外部接続端子5d‥のみである。ユニット結線用電極板5において比較的大きな占有体積をもつ第1の引き出し導電板5a、第2の引き出し導電板5b、中継用電極板5cはその全体が外装樹脂8によって被覆保護されている。外装樹脂8は絶縁性能に優れた材料でできているので、感電防止上の安全性が高いものとなっている。加えて、外装樹脂8は強固に固まる接着剤の機能をもっているので、第1の引き出し導電板5aと中継用電極板5cとの電気的・機械的接続、第2の引き出し導電板5bと中継用電極板5cとの電気的・機械的接続、中継用電極板5cと外部接続端子5dの基部との電気的・機械的接続を優れたものにすることができる。
以上の相乗として、金属化フィルムコンデンサの発熱特性を改善することができるとともに、引き出しユニットによる架け渡し結線の構造単純化を通じて、小型かつ簡素な構造でΔ結線をすることができる。
上記の実施例においては、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3について図3~図5で示したように、それぞれ2つのコンデンサ素子1,1の組み合わせでコンデンサ素子ユニットを構成すると説明していたが、これは一例であり、また代表的なモデル例でもあるが、もちろん本発明はこの構成に限るものではない。例えば図10に示すように、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3のそれぞれを横方向m列、縦方向n行(mは2以上の自然数、nは任意の自然数)のマトリックス配列のコンデンサ素子1‥群の集合体で構成してもよい。すなわち、第1の引き出し導電板5aと第2の引き出し導電板5bとによって共通に接続されるコンデンサ素子1の個数を(m/2)×n個とする。なお、m=2、n=1の場合は上記の実施例に相当する。
図10の例では、3つのコンデンサ素子ユニットC1,C2,C3のそれぞれは横方向に4列(2列×2)、縦方向に3列のコンデンサ素子が並設され、横方向左側の2列、縦方向3列の計6個のコンデンサ素子が並列に接続されるとともに、横方向右側の2列、縦方向3列の計6個のコンデンサ素子が並列に接続され、横方向左側の6個のコンデンサ素子における一方の金属電極と、横方向右側の6個のコンデンサ素子のコンデンサ素子における一方の金属電極とが直列に接続される。
また、上記の実施例においては、絶縁体(絶縁紙)6を使用しているが、絶縁体6の使用は必須ではない。すなわち、外装樹脂8を介在させることで所望の絶縁状態を確保することができる場合には、絶縁体6を不要とすることができる。
また、引き出しユニットVH,WH,UHの構成は一例であり、上記の実施例に限らず、第1の引き出し導電板5a、第2の引き出し導電板5bの中継用電極板5cとの接続位置、中継用電極板5cの形状や外部接続端子5dの位置等は任意である。
例えば、図11に示すように、V相接続端子、W相接続端子、U相接続端子に相当するVH,WH,UHの外部接続端子5d,5d,5dが一列に横並びとなるように、中継用電極板5cの形状および外部接続端子5dの位置を変更してもよい。図11の場合、V相およびW相接続端子が引き出される中継用電極板5cの一部(端子引き出し部分)を互いに中央よりに突出させることで、VH,WH,UHの外部接続端子5d,5d,5dを一列に横並びに配置させることができる。