JP7042144B2 - 電極活物質スラリーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は電極活物質スラリーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は電池における反応抵抗を低減させるための技術に関する。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。そのため、これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。
モータ駆動用二次電池としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極、負極、及びこれらの間に位置する電解質が、電池外装体に収納された構成を有する。なお、電極(正極、負極)は、電極活物質(正極活物質、負極活物質)を含む電極活物質スラリー(正極活物質スラリー、負極活物質スラリー)を集電体上に塗布することによって形成される。
集電体上への電極活物質スラリーの塗工性、電池容量、充放電の安定性を向上させるために、特許文献1では電極活物質スラリーの室温での動的粘弾性測定における貯蔵弾性率及び損失正接を所定の範囲に制御する技術を開示している。具体的には、(1)貯蔵弾性率(G’)が、周波数10rad/秒において10~185dyne/cmの範囲、かつ、100rad/秒において70~460dyne/cmの範囲を通過する曲線であり;(2)損失正接(tanδ)が周波数10rad/秒において1.5~4.0の範囲、かつ、100rad/秒において3.5~6.0の範囲を通過する曲線となるようにスラリーの粘弾性を制御することを開示している。
特許第4357857号公報
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載の電極活物質スラリーを用いて電極を作製し、当該電極を用いて電池を構成したところ、反応抵抗が高く、所望のレート特性が得られないという新たな問題が生じることが判明した。
そこで本発明は、電池における反応抵抗を低減させる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電極活物質スラリーのうち、一部の成分を除いて調製した分散液の損失弾性率が所定の範囲となるように、分散工程を行うことにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態は、活物質、導電助剤、バインダ及び分散媒を含む電極活物質スラリーの製造方法に関し、分散媒に、導電助剤、バインダ及び活物質を分散させる分散工程を有する。この際、以下に定義される損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすように分散工程を行うことを特徴とする;
A:前記分散媒に前記バインダ及び前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液の損失弾性率;
B:前記分散媒に前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液の損失弾性率;
C:前記分散工程で得られた分散液の損失弾性率。
本発明の製造方法によると、電極活物質スラリーに含まれる導電助剤及びバインダが良好に分散され、導電助剤及びバインダからなる複合構造体(「導電助剤-バインダ複合構造体」とも称する)が活物質粒子間に介在したスラリーが得られると考えられる。導電助剤-バインダ複合構造体が存在することにより電極製造時の乾燥工程において、活物質粒子間に空隙が形成されうる。その結果、活物質層のイオン伝導性が向上し、電池における反応抵抗が低減される。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作及び物性等の測定は室温20~25℃/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
本明細書において「電極活物質スラリー」を単に「スラリー」とも称する。また、「電極」との用語は、「正極」若しくは「負極」のいずれか一方、又は、「正極」及び「負極」の両方を意味する。
<電極活物質スラリーの製造方法>
本発明の一形態は、活物質、導電助剤、バインダ及び分散媒を含む電極活物質スラリーの製造方法に関する。当該製造方法は、分散媒に、導電助剤、バインダ及び活物質を分散させる分散工程を有する。この際、以下に定義される損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすように分散工程を行うことを特徴とする;
A:前記分散媒に前記バインダ及び前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液(以下、単に「分散液a」とも称する)の損失弾性率;
B:前記分散媒に前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液(以下、単に「分散液b」とも称する)の損失弾性率;
C:前記分散工程で得られた分散液(以下、単に「分散液c」とも称する)の損失弾性率。
以下では、まず、本形態に係る電極活物質スラリーに含まれる各構成成分について説明し、次いで、本形態の製造方法の工程について説明する。
[活物質]
本形態に係る電極活物質スラリーは、活物質を含む。電極活物質スラリーが正極活物質スラリーである場合は、当該スラリーは正極活物質を含み、電極活物質スラリーが負極活物質スラリーである場合は、当該スラリーは負極活物質を含む。
(正極活物質)
正極活物質は、充電時にイオンを放出し、放電時にイオンを吸蔵できる機能を有する。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)O及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、Ni及びCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)は、材料の純度向上及び電子伝導性向上という観点から、容量及び出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、c及びdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などと比較して、単位重量あたりの容量が大きい。これにより、エネルギー密度の向上が可能となり、コンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しているため、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi0.8Co0.1Al0.1がより有利であるが、寿命特性に難がある。これに対し、LiNi0.5Mn0.3Co0.2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3並みに優れた寿命特性を有しているのである。
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。なお、本明細書において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径(D50)を採用するものとする。
正極活物質スラリーに含まれる正極活物質の割合は、固形分の総質量に対して60~99質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがより好ましく、80~85質量%であることがさらに好ましい。正極活物質の割合が上記範囲であると、所望の損失弾性率を有する正極活物質スラリーを得ることが容易となる。
(負極活物質)
負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる機能を有する。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、活性炭、コークス、ソフトカーボン、若しくはハードカーボンなどの炭素系負極活物質、SiやSnなどの純金属やこれらの合金系活物質、あるいはTiO、Ti、TiO、若しくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3若しくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li-Pb系合金、Li-Al系合金、Liなどが挙げられる。なかでも、高いエネルギー密度を達成する観点から、ケイ素(Si)を含むケイ素系負極活物質を用いることが好ましい。
ケイ素系負極活物質としては、特に制限はないが、Si単体、SiO、及びSiOなどのケイ素酸化物、ケイ素含有合金などが挙げられる。なかでも高いサイクル耐久性の実現が可能なことから、下記化学式(1)の組成を有するケイ素含有合金を含むことが好ましい。
Figure 0007042144000001
式中、Aは、不可避不純物であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素であり、x、y、z、及びaは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0<y<100、0<z<100、及び0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。
なお、本明細書において、「不可避不純物」とは、ケイ素含有合金において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするものを意味する。当該不可避不純物は、本来は不要なものであるが、微量であり、ケイ素含有合金の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物である。
上記化学式(1)で表されるケイ素含有合金は、Si、Sn及びM(遷移金属)の少なくとも三元系である。このように、Si、Sn及びMの少なくとも三元系であることにより、優れたサイクル耐久性が発揮されうる。
なかでも、添加元素(遷移金属元素M)としてTiを選択することで、Li合金化の際に、より一層アモルファス-結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質(例えば、炭素系負極活物質)よりも高容量のものとなる。したがって、本発明の好ましい実施形態によると、上記化学式(1)で表される組成において、Mがチタン(Ti)であることが好ましい。
ここで、Li合金化の際にアモルファス-結晶の相転移を抑制することが好ましいのは、以下の理由による。Si材料は、充電時にSiとLiとが合金化する際、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化(約4倍)を起こすため、活物質粒子自体が壊れてしまい、活物質としての機能が失われる。そのため、アモルファス-結晶の相転移を抑制することで、粒子自体の崩壊を抑制し、活物質としての機能(高容量)を保持することができ、その結果、サイクル寿命を向上させることが可能となるためである。かかる添加元素(遷移金属元素M)を選定することにより、高容量でサイクル特性に優れたケイ素含有合金とすることができる。
上記化学式(1)の組成において、遷移金属元素M(特にTi)の組成比zは、7<z<100であることが好ましく、10<z<100であることがより好ましく、15<z<100であることがさらに好ましく、20≦z<100であることが特に好ましい。遷移金属元素M(特にTi)の組成比zをこのような範囲とすることにより、サイクル特性をより一層向上させることができる。
より好ましくは、化学式(1)における、前記x、y、及びzは、下記数式(1)又は(2):
Figure 0007042144000002
を満たすことが好ましい。各成分含有量が上記範囲内にあると、1000Ah/gを超える初期放電容量を得ることができ、サイクル寿命についても90%(50サイクル)を超えうる。
なお、当該負極活物質の上記特性のさらなる向上を図る観点からは、遷移金属元素M(特にTi)の含有量は7質量%超の範囲とすることが望ましい。すなわち、前記x、y、及びzが、下記数式(3)又は(4):
Figure 0007042144000003
を満たすことが好ましい。これにより、サイクル特性をより一層向上させることが可能となる。
そして、より良好なサイクル耐久性を確保する観点から、前記x、y、及びzが、下記数式(5)又は(6):
Figure 0007042144000004
を満たすことが好ましい。
そして、初期放電容量及びサイクル耐久性の観点から、前記x、y、及びzが、下記数式(7):
Figure 0007042144000005
を満たすことが好ましい。
Aは前述のように、原料や製法に由来する上記3成分以外の不純物(不可避不純物)である。前記a(すなわち、残部)は、0≦a<0.5であり、0≦a<0.1であることが好ましい。
なお、負極活物質(ケイ素含有合金)が上記化学式(1)の組成を有するか否かは、蛍光X線分析(XRF)による定性分析、及び誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法による定量分析により確認することが可能である。
ケイ素系負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.2~10μmである。このような範囲であれば、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、ケイ素系負極活物質が二次粒子である場合には当該二次粒子を構成する一次粒子の平均粒子径が10nm~100μmの範囲であるのが望ましい。一次粒子の平均粒子径が10nm以上であると、負極活物質中の導電パスが良好に形成され、抵抗の上昇を抑えることができる。また、一次粒子の平均粒子径が100μm以下であると、過電圧による電池容量の低下を防ぐことができる。ただし、製造方法にもよるが、ケイ素系負極活物質が凝集、塊状などにより二次粒子化したものでなくてもよいことはいうまでもない。
ケイ素系負極活物質の形状は、その種類や製造方法などによって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
負極活物質スラリーに含まれる負極活物質の割合は、固形分の総質量に対して60~99質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがより好ましく、80~85質量%であることがさらに好ましい。負極活物質の割合が上記範囲であると、所望の損失弾性率を有する負極活物質スラリーを得ることが容易となる。
[導電助剤]
電極活物質スラリーは、導電助剤を含む。導電助剤を含むことで、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性が向上しうる。
導電助剤としては、特に制限されないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。
導電助剤の平均粒子径(一次粒子径)は、特に制限されないが、好ましくは10~500nm、より好ましくは10~100nmであり、さらに好ましくは15~75nmであり、特に好ましくは20~60nmである。
電極活物質スラリーに含まれる導電助剤の割合は、固形分の総質量に対して0.1~15質量%であることが好ましく、2~12質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の割合が上記範囲であると、所望の損失弾性率を有する電極活物質スラリーを得ることが容易となる。
[バインダ]
電極活物質スラリーは、バインダを含む。バインダは、活物質同士又は活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する機能を有する。
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料又はこれらのプレポリマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、及びエポキシ樹脂、ならびにこれらのプレポリマー等が挙げられる。なかでも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド及びポリアミドイミド並びにこれらのプレポリマーが好ましく、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド並びにこれらのプレポリマーがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定である。これらのバインダは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電極活物質スラリーに含まれるバインダの割合は、固形分の総質量に対して0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~18質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。バインダの割合が上記範囲であると、所望の損失弾性率を有する電極活物質スラリーを得ることが容易となる。
[分散媒]
電極活物質スラリーは、分散媒を含む。溶媒としては、本技術分野で使用されうる分散媒を制限なく使用することができる。一例を挙げると、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが挙げられる。
電極活物質スラリーに含まれる分散媒の割合は、スラリーの総質量に対して30~70質量%であることが好ましく、35~60質量%であることがより好ましい。換言するとスラリーに含まれる固形分の総質量の割合は、スラリーの総質量に対して30~70質量%であることが好ましく、40~65質量%であることがより好ましい。分散媒の割合が上記範囲であると、所望の損失弾性率を有する電極活物質スラリーを得ることが容易となる。
[イオン伝導性ポリマー]
電極活物質スラリーは、必要に応じてイオン導電性ポリマーを含む。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系及びポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
[リチウム塩]
電極活物質スラリーは、必要に応じてリチウム塩を含む。リチウム塩(支持塩)としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsFLiClO、Li[(FSON](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩(イオン液体)等が挙げられる。なかでも、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、LiPFやLi[(FSON](LiFSI)が好ましい。
次に、本形態の電極活物質スラリーの製造方法について説明する。本形態の製造方法は、分散媒に、導電助剤、バインダ及び活物質を分散させる分散工程を有する。この際、以下に定義される損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすように分散工程を行うことを特徴とする;
A:前記分散媒に前記バインダ及び前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液(分散液a)の損失弾性率;
B:前記分散媒に前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液(分散液b)の損失弾性率;
C:前記分散工程で得られた分散液(分散液c)の損失弾性率。
なお、本明細書において、損失弾性率A~Cは、後述の実施例に記載の方法及び条件にて測定された値を採用する。
本形態の製造方法によると、電池における反応抵抗を低減できる。このような効果が奏されるメカニズムは定かではないが、本発明者らは以下のように推察している。なお、本発明の技術的範囲は、下記メカニズムにより制限されるものではない。
損失弾性率は粘性を表す指標であり、この値が大きいほど粘度が高い(流動性が低い)ことを意味する。損失弾性率は、スラリー中の各成分の分散状態によって変化する。例えば、高い損失弾性率は、スラリー中の活物質間に強い相互作用が存在することを示す。活物質間の相互作用は、活物質表面の物性や分散媒の他に、活物質以外の成分、例えば導電助剤やバインダの分散状態にも影響を受ける。
導電助剤は、分散媒中でネットワーク構造を形成し、スラリーの損失弾性率を上昇させる(流動性を低下させる)方向に働く。よって、損失弾性率Aが最も高い値であるということは、導電助剤が十分なネットワーク構造を形成していることを意味する。
一方、バインダは、導電助剤の表面に選択的に付着し、導電助剤の表面を覆うことにより、スラリーの損失弾性率を低下させる(流動性を上昇させる)方向に働く。よって、損失弾性率Bが最も低い値であるということは、導電助剤の表面がバインダによって十分に被覆されていることを意味する。
スラリー中で、導電助剤及びバインダは、上記のようにネットワーク構造を形成した導電助剤の表面にバインダが被覆した複合構造体として存在しうる。したがって、活物質は、スラリー中でその粒子間に導電助剤-バインダ複合構造体が介在した状態で分散していると考えられる。このような分散状態を有するスラリーを用いて電極を製造すると、乾燥工程においてスラリー中の分散媒が除去されても、活物質粒子間に空隙が維持されうる。活物質粒子間の空隙は、充放電反応時にイオンの通り道となるため、この空隙の存在により活物質層のイオン伝導性が向上し、結果的に、電池における反応抵抗が低減されると推察される。
なお、本発明者らは、従来の電極活物質スラリーの製造方法では、分散工程において攪拌エネルギーが小さい等の理由から、導電助剤及びバインダが十分に分散されず、導電助剤-バインダ複合構造体が十分に形成されていない状態であったと推察している。そのため、活物質粒子間の空隙が形成されにくく、結果的に、製造された電池は反応抵抗が高く、所望のレート特性が得られないものであったと考えている。
本形態の製造方法では、損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすように分散工程を行うことを特徴とする。損失弾性率A~Cが上記関係を満たすか否かは、以下の方法により確認できる(以下、単に「確認工程」とも称する)。
すなわち、電極活物質スラリーを製造するにあたって暫定的に決定した分散工程の条件及び各成分の含有量に基づいて、各分散液を調製し、損失弾性率A~Cを測定する。ここで、各成分の含有量とは、電極活物質スラリーに含まれる各成分の含有量である。すなわち、電極活物質スラリーに含まれる各成分の含有量と同じ量(同じスケール)で、各分散液を調製する。同じスケールで分散液を調製することにより、スケールが異なることによって損失弾性率が変化する可能性を排除することができる。
分散工程の条件としては、使用する混合装置(分散装置)の種類、回転数、分散時間等が挙げられる。また、各成分の添加条件も、分散工程の条件に含まれる。例えば、以下のように、各成分を逐次添加し、攪拌する分散工程を考える;
(1)分散媒に導電助剤の全量を添加した後、条件Aで1分間攪拌する;
(2)次いで、バインダの半量を添加して、条件Bで1分間攪拌する;
(3)次いで、バインダの残りの半量を添加して、条件Cで1分間攪拌する;
(4)次いで、活物質を加えて、条件Dで1分間攪拌する。
この場合、分散液a~cは以下のように調製される;
分散液a:上記(1)を行った後、条件Bで1分間攪拌し、条件Cで1分間攪拌し、条件Dで1分間攪拌する;
分散液b:上記(1)~(3)を行った後、条件Dで1分間攪拌する;
分散液c:上記(1)~(4)を行う。
このように、本発明の製造方法は、複雑な分散工程を有する製造方法にも適用可能である。
なお、損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすか否かの確認工程そのものは、本形態の電極活物質スラリーの製造方法における必須の工程ではない。すなわち、本形態の製造方法とは別に、予め確認工程を行ってもよいし、本形態の製造方法を行った後に事後的に確認工程を行ってもよい。前者の場合、当該確認工程により決定した分散工程の条件及び各成分の含有量にしたがって、本形態の製造方法を行えばよい。この際、本形態の製造方法で得られる電極活物質スラリーの損失弾性率は、確認工程における分散液cの損失弾性率Cと同じであると擬制されるため、確認不要である。一方、後者の場合、本形態の製造方法にしたがって調製された分散液a~cの損失弾性率A~Cの関係を確認することになる。この際、本形態の製造方法で得られた電極活物質スラリーを分散液cとして、損失弾性率Cを測定してもよい。
さらには、本形態の製造方法における分散工程が損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすような条件で行われたものである限り、確認工程は必ずしも行う必要はない。つまり、全く確認工程を行わない場合であっても、事実として損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすような条件で分散工程が行われていれば、本発明の技術的範囲に属するのである。つまり、確認工程は、対象となる実施形態が、本発明の技術的範囲に含まれるか否かの判定手段に過ぎず、本発明の課題を解決するための手段ではない。
分散工程には、混合装置を用いることが好ましい。混合装置としては、例えば、攪拌脱泡機、プラネタリミキサ、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、リボン型混合機、単軸ロッド又はピン付ローター型混合機、複軸パドル型混合機(パグミル)、円錐型スクリュー混合機、高速流動型混合機、回転円板型混合機、マラー型混合機、双腕型ねっか機、インターナルミキサー、連続式マラーねっか機、コニーダー、ボテーター型ねっか機、セルフクリーニング型ねっか機、ボールミル、ポニーミキサー等を使用することができる。また、混合手段としては、デスクタービン、ファンタービン、わん曲羽根ファンタービン、矢羽根タービン、ファウドラー型攪拌翼、ブルマージン型攪拌翼、角度付羽根ファンタービン、プロペラ、多段翼、アンカー型攪拌翼、ゲート型攪拌翼、二重リボン、スクリューなどの攪拌翼などが挙げられる。混合装置は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、攪拌脱泡機を用いて導電助剤及び分散媒を分散させた後、さらにボールミル又はプラネタリミキサを用いて分散させることが好ましい。特に、2段階目の分散では、より大きなエネルギーを付与できるボールミルを用いて分散させることが好ましい。このように2段階で分散させることにより、導電助剤をより均一に分散させることができる。
損失弾性率A~Cのうち、損失弾性率Aは最も高いことを必須とする。損失弾性率Aの値は特に限定されないが、電池特性やスラリー物性の観点から、好ましくは30~70Paであり、より好ましくは40~60Paであり、さらに好ましくは45~55Paである。損失弾性率Aを上昇させるためには、分散でより大きな攪拌力を付与する、攪拌時間を長くすることが有効である。これにより導電助剤の凝集をほぐすことができる。また、導電助剤の量を多くすることでも損失弾性率Aを上昇させることができる。
損失弾性率A~Cのうち、損失弾性率Bは最も低いことを必須とする。損失弾性率Bの値は特に限定されないが、電池特性やスラリー物性の観点から、好ましくは0.1~10Paであり、より好ましくは0.25~7.5Paであり、さらに好ましくは0.5~5Paである。損失弾性率Bを低下させるためには、分散でより大きな攪拌力を付与する、攪拌時間を長くすることが有効である。これによりバインダが十分に分散し、導電助剤の表面が隈なく被覆されることにより、導電助剤-バインダ複合構造体が良好に形成される。また、バインダの量を多くする、或いは、導電助剤の量を少なくすることでも損失弾性率Bを低下させることができる。
損失弾性率Cは、損失弾性率Aよりも低く、損失弾性率Bよりも高いことを必須とする。損失弾性率Cの値は特に限定されないが、電池特性やスラリー物性の観点から、好ましくは0.2~20Paであり、より好ましくは0.5~10Paであり、さらに好ましくは1~7.5Paである。導電助剤-バインダ複合構造体の形成が十分でない場合、損失弾性率Cが損失弾性率Bよりも低くなりうる(C<B)。このような場合は、前述のように損失弾性率Bが低くなるように、分散工程の条件又は各成分の含有量を制御することで、損失弾性率Cを所定の範囲内とすることができる。
さらに、本形態では、損失弾性率Aに対する電極活物質スラリーの損失弾性率Cの割合が5%以上50%以下であることが好ましい。当該割合は、好ましくは5%以上20%以下であり、より好ましくは6%以上10%以下である。当該割合が5%以上であるとスラリー中で活物質が良好な分散状態を形成し、導電助剤の極度の凝集を避けることができる。また、当該割合が50%以下であると活物質間に導電助剤によるネットワーク構造が良好に形成されうる。
さらに、本形態では、損失弾性率Bに対する損失弾性率Cの割合が150%以上であることが好ましい。当該割合は、好ましくは170%以上であり、より好ましくは180%以上である。当該割合が150%以上であると導電助剤とバインダが相分離せず、導電助剤のネットワーク構造が良好に形成されうる。なお、当該割合の上限値は特に制限されないが、導電助剤が凝集せずに、バインダによって良好な分散状態を形成する観点から、通常300%以下である。
上記製造方法により得られる電極活物質スラリーを集電体上に塗布し、乾燥することにより、集電体上に活物質層が形成された電極が得られる。電極活物質スラリーが正極活物質スラリーである場合には正極が得られ、負極活物質である場合には負極が得られる。また、集電体の一方の面に正極活物質スラリーを、他方の面に負極活物質スラリーを塗布し、乾燥することによって、集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層を有する双極型の電極としてもよい。
本形態の電極活物質スラリーを用いて製造された電極は、導電助剤-バインダ複合構造体が活物質粒子間に存在することにより、活物質粒子間に空隙を有する。当該空隙は、充放電反応時にイオンの通り道となるため、この空隙の存在により活物質層のイオン伝導性が向上しうる。その結果、当該電極を用いて電池を構成することにより、電池における反応抵抗を低減することが可能となる。
なお、電池の反応抵抗が低減することにより、高レートでの出力特性が向上しうる。よって、本形態に係る電極を有する電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、高出力が求められるモータ駆動用二次電池として好適に使用されうる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、負極活物質スラリーの調製から電池の作製までの工程はグローブボックス内で行った。
<損失弾性率の測定>
損失弾性率A~Cは、以下の方法及び条件にて測定した。
装置:レオメータ(アントンパール社製、MCR302)
方法:コーンプレート法、プレート径50mm
条件(周波数分散):ひずみ0.1%、周波数1Hz
温度:25℃。
<負極活物質スラリーの調製>
[実施例1]
分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック(一次粒子径:23nm、BET比表面積:133m/g、以下同じ)5質量部を加え、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、ARE-310、自転200rpm、公転400rpmにて2分間、実施例1において以下同じ)を用いて分散させた。その後、さらにボールミル(ドイツ フリッチュ社製、遊星ボールミル装置P-5、ボール:ジルコニアφ15mm、回転数160rpmにて15分間、実施例1において以下同じ)を用いて分散させて、導電助剤分散液(分散液a)を調製した。この導電助剤分散液の損失弾性率Aは49.2Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダとしてポリアミック酸(宇部興産株式会社製、ユピア(登録商標)、以下同じ)15質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにボールミルを用いて上記と同条件で分散させて、導電助剤-バインダ分散液(分散液b)を調製した。この導電助剤-バインダ分散液の損失弾性率Bは1.7Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダとしてポリアミック酸15質量部、負極活物質としてケイ素含有合金(Si60Sn20Ti20、平均粒子径(D50):0.3μm、以下同じ)80質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにボールミルを用いて上記と同条件で分散させて、負極活物質スラリー(分散液c)を調製した。得られた負極活物質スラリーの一部を分取し、損失弾性率を測定したところ、損失弾性率Cは3.0Paであった。
以上の結果より、損失弾性率A~Cの関係が、B(1.7Pa)<C(3.0Pa)<A(49.2Pa)であることを確認した。
[実施例2]
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック10質量部を加え、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、ARE-310、自転200rpm、公転400rpmにて2分間、実施例2において以下同じ)を用いて分散させた。その後、さらにプラネタリミキサ(プライミクス社製、ハイビスミックス(登録商標)2P-03型、回転数100rpmにて60分間、実施例2において以下同じ)を用いて混合して、導電助剤分散液(分散液a)を調製した。この導電助剤分散液の損失弾性率Aは51.2Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック10質量部、バインダとしてポリアミック酸10質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、導電助剤-バインダ分散液(分散液b)を調製した。この導電助剤-バインダ分散液の損失弾性率Bは1.9Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック10質量部、バインダとしてポリアミック酸10質量部、負極活物質としてケイ素含有合金80質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、負極活物質スラリー(分散液c)を調製した。得られた負極活物質スラリーの一部を分取し、損失弾性率を測定したところ、損失弾性率Cは6.5Paであった。
以上の結果より、損失弾性率A~Cの関係が、B(1.9Pa)<C(6.5Pa)<A(51.2Pa)であることを確認した。
[実施例3]
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部を加え、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、ARE-310、自転200rpm、公転400rpmにて2分間、実施例3において以下同じ)を用いて分散させた。その後、さらにプラネタリミキサ(プライミクス社製、ハイビスミックス(登録商標)2P-03型、回転数100rpmにて60分間、実施例3において以下同じ)を用いて混合して、導電助剤分散液(分散液a)を調製した。この導電助剤分散液の損失弾性率Aは49.2Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダとしてポリアミック酸15質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、導電助剤-バインダ分散液(分散液b)を調製した。この導電助剤-バインダ分散液の損失弾性率Bは1.7Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダとしてポリアミック酸15質量部、負極活物質としてケイ素含有合金80質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、負極活物質スラリー(分散液c)を調製した。得られた負極活物質スラリーの一部を分取し、損失弾性率を測定したところ、損失弾性率Cは1.9Paであった。
以上の結果より、損失弾性率A~Cの関係が、B(1.7Pa)<C(1.9Pa)<A(49.2Pa)であることを確認した。
[比較例1]
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック4質量部を加え、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、ARE-310、自転200rpm、公転400rpmにて2分間、比較例1において以下同じ)を用いて分散させた。その後、さらにプラネタリミキサ(プライミクス社製、ハイビスミックス(登録商標)2P-03型、回転数100rpmにて60分間、比較例1において以下同じ)を用いて混合して、導電助剤分散液(分散液a)を調製した。この導電助剤分散液の損失弾性率Aは51.2Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック4質量部、バインダとしてポリアミック酸7質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、導電助剤-バインダ分散液(分散液b)を調製した。この導電助剤-バインダ分散液の損失弾性率Bは1.9Paであった。
分散媒としてのNMP113質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック4質量部、バインダとしてポリアミック酸7質量部、負極活物質としてケイ素含有合金89質量部を加え、攪拌脱泡機を用いて上記と同条件で分散させた。その後、さらにプラネタリミキサを用いて上記と同条件で分散させて、負極活物質スラリー(分散液c)を調製した。得られた負極活物質スラリーの一部を分取し、損失弾性率を測定したところ、損失弾性率Cは1.4Paであった。
以上の結果より、損失弾性率A~Cの関係が、C(1.4Pa)<B(1.9Pa)<A(51.2Pa)であることを確認した。
<負極の製造>
負極活物質スラリーを、負極集電体としての銅箔(厚さ:12μm)の片面に、熱処理後の負極活物質層の厚さがそれぞれ30μmとなるように均一に塗布し、300℃の真空中で15時間熱処理を行うことで、負極を得た。
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(体積比)の割合で混合した有機溶媒に、リチウム塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/Lの濃度で溶解させることで、電解液を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
負極と対極Liとを対向させ、この間にセパレータ(ポリオレフィン、厚さ:20μm)を配置した。次いで、負極、セパレータ、及び対極Liの積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。さらに、電極同士の絶縁性を保つためガスケットを装着し、電解液をシリンジにより注入し、スプリング及びスペーサを積層し、コインセルの上部側を重ねあわせ、かしめることにより密閉して、リチウムイオン二次電池を得た。
<反応抵抗の評価>
上記で作製したリチウムイオン二次電池を、25℃で定電流方式(CC、電流:0.2C)にて4.2Vまで充電した。次に、10分間休止させた後、定電流(CC、電流:0.2C)で2.5Vまで放電し、放電後再度10分間休止させた。この状態を「初期」とした。
次に「初期」状態の電池を、定電流方式で、25℃で定電流方式(CC、電流:0.2C)により3.9Vまで充電した。次に10分間休止させた後、インピーダンスアナライザー(ソーラートロン社製)に接続し、交流インピーダンス測定を行った。周波数は0.1Hz~1000000Hzとした。負極の円弧の大きさから、負極の反応抵抗を算出した。
結果を下記表1に示す。
Figure 0007042144000006
表1の結果より、本発明に係る負極活物質スラリーを用いることにより、リチウムイオン二次電池において反応抵抗が低減することが示された。
また、実施例1と実施例3とを対比すると、導電助剤分散液の損失弾性率Aに対する電極活物質スラリーの損失弾性率Cの割合が5%以上である実施例1の方が、反応抵抗の低減効果がより高いことが示された。

Claims (4)

  1. 活物質、導電助剤、バインダ及び分散媒を含む電極活物質スラリーの製造方法であって、
    前記分散媒に、前記導電助剤、前記バインダ及び前記活物質を分散させる分散工程を有し、
    この際、以下に定義される損失弾性率A~Cの関係がB<C<Aを満たすように前記分散工程を行うことを特徴とする、製造方法:
    A:前記分散媒に前記バインダ及び前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液の損失弾性率;
    B:前記分散媒に前記活物質以外の成分を前記分散工程と同じ条件で分散させた分散液の損失弾性率;
    C:前記分散工程で得た分散液の損失弾性率。
  2. 前記損失弾性率Aに対する前記損失弾性率Cの割合が5%以上50%以下である、請求項1に記載の電極活物質スラリーの製造方法。
  3. 前記損失弾性率Bに対する前記損失弾性率Cの割合が150%以上である、請求項1又は2に記載の電極活物質スラリーの製造方法。
  4. 前記活物質は、ケイ素を含む負極活物質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極活物質スラリーの製造方法。
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