JP7040956B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
ラインマーカー等の筆記具におけるペン先は、一般に合成樹脂繊維等を棒状等に集束したものや、高分子の焼結体などの多孔質部材に毛細管作用を付与し、これにより筆記具本体となる軸体から供給されるインクをペン先に導出することにより筆記可能としたものである。
このタイプの筆記具のペン先は、筆記部を視認することができるため、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものである。このペン先の具体的な構成は、インクを誘導するインク誘導部と筆記部からなる焼結芯と、該焼結芯を保持する保持体、及び焼結芯と保持体とを固定する接着剤とから構成されている。
そのため、インク誘導部を太く設計する必要があるが、インク誘導部を太くすると、太くなったインク誘導部によって可視部が阻害され、ペン先全体に対する視認部の有効面積が低くなるという課題を生じるものである。
前記インク誘導部は筆記部の厚さより薄いことが好ましい。
前記インク誘導部は、保持体外周に配置されていることが好ましい。
前記インク誘導部の幅(m)は、保持体の視認部の幅(M)の90%未満であることが好ましい。
図1は本発明のツインタイプの筆記具の実施形態の一例を示す各図面であり、図2は図1の筆記具に用いるペン先の一例を示す各図面である。
本実施形態の筆記具Aは、図1(a)~(d)に示すように、筆記具本体10から供給されるインクを誘導し、かつ筆記方向を視認することができる視認部を有するペン先20を備えると共に、このペン先20の反対側にも棒状のペン先50を備えたツインタイプの筆記具となっている。また、筆記具本体10の両側には、着脱自在となるペン先20を保護するクリップ部60aを有するキャップ60と、ペン先50を保護するキャップ70とが取り付けられている。
筆記具本体10は、例えば、ポリプロピレン等からなる樹脂を使用して筒状に成形され、筆記具本体(軸体)として機能する。筆記具本体10は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。
これらのインクは、インク配合成分種、各配合量を調整することなどにより、インク粘度(25℃:コンプレート型粘度計)1~5mPa・s、表面張力30~60mN/m、ペン先20からのインク流出量Xを5~20mg/m、ペン先50からインク流出量Yを0.1~5mg/mとし、X>Yと設定することで筆跡の使い分けが容易となるので好ましい。インク流出量の測定は、自動筆記装置にペン体をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記力1N、速度7cm/sでのものである。
なお、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下の熱可塑性エラストマーをキャップ60の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易かつ低摩耗な摩擦体とすることができる。
インク誘導部25は、後述する保持体40に接着、溶着等により取り付けられるものである。
本発明において、「不織布」とは、一層以上の繊維の塊を製編織しないで布状構造としたものをいう。繊維の素材としては、合成繊維、天然繊維、獣毛繊維、無機繊維等が用いられる。用いる合成繊維の材料としては、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせなどが挙げられる。
布帛が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで調製することができる。
通液性発泡体である場合、例えば、溶融状態の樹脂を型に流し込み成型、発泡処理するなど、公知の方法で調製することができる。
本実施形態では、インク誘導部25は、ポリエチレン繊維を焼結してなる不織布から構成されたものである。
本実施形態では、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結体から構成されている。
また、前記インク誘導部25では厚さを最小にして流出性の最大化を図る点から、その気孔率を上記範囲としたが、この筆記部30では、好適な描線濃度となるように最適な気孔率が設定されている。
また、上記本体部41の後方側に、上記本体部41に連設される保持片45を有する三角形状の後方部46とを備えたものである。これらの部材から構成される保持体40の長手方向外周面全体には、視認部43の視認面積の最大化を図る点から、保持体40の外周に配置される構造、具体的には、保持体40の長手方向外周面全体には、上記インク誘導部25をコ字型状に嵌入保持する保持溝47が形成されている。更に、本体部41の幅方向外周面には、凹状の嵌合部41aが形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝41bと屈曲状の空気流通溝41cが形成されている。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
本実施形態では、視認部43の視認面積の最大化を図る点などから、上記インク誘導部25の厚さtは、筆記部30の厚さTより薄くなっており、また、インク誘導部の幅(m)が保持体40の視認部43の幅(M)の90%未満、更に好ましくは、50~80%であることが望ましい。
このペン先50は、多孔質部材から構成されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましいペン先50としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点から、繊維芯が望ましい。また、用いるペン先50の気孔率、大きさ、硬度などは、インク種、筆記具の種類等により、変動するものであり、例えば、気孔率では30~60%とすることが好ましい。また、本発明において、「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を筆記芯の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(ペン先50の見掛け体積)×100
この筆記具Aのペン先20は、図1、図2に示すように、筆記方向を視認することができる視認部(窓部)43を有するものであり、インク吸蔵体15のインクはインク誘導部25、25の毛細力により筆記部30に到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、視認部(窓部)43で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
また、この筆器具Aは、インク流出性が良好であるので、ペン先20の移動速度を速くして筆記しても、インクの供給は良好に追従し、筆跡のカスレ等を生じることがない筆記具が得られることなる。
図3は、本発明の筆記具におけるペン先20の実施形態の他例を示す各図面である。なお、上記実施形態の筆記具Aと同様の構成、機能を有する場合は、同一符号を付してその説明を省略する。
上記実施形態の筆記具Aでは、インク誘導部25を不織布などの布帛によりシート状の多孔体を構成したものであるが、本実施形態は、保持体40の保持溝47の保持溝面47aに繊維を束〔繊維束(紐部材)〕として直接巻き付け、または、繊維束を接着、溶着などにより固着したものである。
用いることができる繊維束(紐部材)は、好ましくは、2~5dtex(デシテックス)の繊維を用いて、保持溝面47aの周面に100~1000本に直接巻き付けたり、また、この繊維を予め上記本数となるように繊維束としたものを接着、溶着などに固着せしめることが望ましい。
また、本実施形態のシート状の多孔体の厚さtは、視認部45の視認部面積の最大化する点などから、上記実施形態Aと同様に、0.1~2.0mmであるのが好ましく、0.2~1.0mmであるのが最も好ましい。
この繊維束より構成されるインク誘導部25の厚さt、幅方向長さ、長手方向も長さも上記実施形態で詳述した各好ましい範囲内となることが望ましい。
本実施形態では、ペン先20のインク誘導部は、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部30の厚さよりも薄く、流出性のあるインク誘導部25で筆記部30まで誘導するものであり、また、このインク誘導部25は保持溝面47aの周面に100~1000本に直接巻き付けたり、また、この繊維を予め上記本数となるように繊維束としたものを接着、溶着などに固着せしめたものから構成されているので、繊維束はその表面積が大きいため、気孔率に対する毛管力の強さが大きく、しかも、その厚さは極めて薄くでき、従来の焼結芯でインク誘導部と筆記部とで一体構成したものよりも、インク流出性が良好であり、インク誘導部を太く設計する必要がないので、シート状の多孔体から構成されるインク誘導部によって視認部43が阻害されないので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部30で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性のインク誘導部25により筆記部30へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、視認部の有効面積の最大化とインク流出性を高度に両立できる筆記具が得られるものとなる。
また、本実施形態でも、インク流出性が良好であるので、ペン先20の移動速度を速くして筆記しても、インクの供給は良好に追従し、筆跡のカスレ等を生じることがない筆記具が得られることなる。
上記実施形態では、ツインタイプの筆記具を示したが、ペン先50を省略(軸体を有底筒状の軸体と)して、ペン先20を備えたシングルタイプの筆記具としてもよいものであり、また、ノック式によりペン先20が出没する筆記具であってもよいものである。
上記図1~図2、図3の各実施形態では、筆記具本体の軸体などの断面を円形軸に形成したが、三角形状、四角形以上の方形状などの異形形状、楕円形状にしてもよいものである。また、ペン先20全体を透明な部材で構成する場合を示したが、少なくとも視認部43が透明な部材で構成され、筆記具本体内の取り付けられる本体部41側を透明な部材以外の樹脂部材で二色成形品となったものを用いてペン先40を構成してもよいものである。
更に、上記各実施形態では、筆記具用のインク(水性インク、油性インク、熱変色性インク)で説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体としてもよいものである。
下記構成及び図1及び図2に準拠するペン先を有する筆記具、下記組成の筆記具用インクを使用した。ペン先の寸法等は下記に示す大きさ等を使用した。
アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
視認部(窓部)43(四角形)の大きさ:6mm×6mm×7mm×6mm
視認部の幅M:2.5mm
インク誘導部25の構成:長繊維繊度:3(dtex:デシテックス)、ポリエチレン製不織布、幅方向長さm:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さt:0.5mm
筆記部30:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、4×3×6mm、T=3mm、W=5.5mm
筆記具本体10、キャップ60、70:ポリプロピレン(PP)製
ペン先50:ポリエステル製繊維束芯、気孔率60%、φ2.0×40.0mm
筆記具用インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
保湿剤:トリメチルグリシン(グリシンベタイン) 7.5質量%
ペンタエリスリトール 4.5質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40.0質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
フッ素系界面活性剤:サーフロン8111N(AGCセイミケミカル社製) 0.2質量%
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 3.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 43.5質量%
粘度(25℃):3.0mPa・s(コンプレート型粘度計、TOKIMEC社製、TV-20)
表面張力(25℃):33mN/m(自動表面張力計、協和界面科学社製、DY-300)
下記構成、図1及び図3に準拠するペン先を有する筆記具、下記組成の筆記具用インクを使用した。ペン先の寸法等は下記に示す大きさ等を使用した。
インク誘導部25を下記構成とした点以外は、上記実施形態の筆器具と同様であるので、その説明を省略する。
筆記具本体10.インク吸蔵体15,筆記部30、保持体40、インク組成等:上記実施例1と同一。
インク誘導部25の構成:3.5(dtex:デシテックス)、PET製の繊維、巻回本数:600本、幅方向長さ:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さt:0.5mmとした。
また、本実施形態でも、インク流出性が良好であるので、ペン先20の移動速度を速くして筆記しても、インクの供給は良好に追従し、筆跡のカスレ等を生じることがない筆記具が得られることなる。
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/sで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、ペン先20のインク流量(15mg/m)も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することが判った。
20 ペン先
25 シート状の多孔体
30 筆記部
40 保持体
43 視認部
Claims (3)
- 筆記具本体から供給されるインクを誘導し、かつ筆記方向を視認することができる視認部を有するペン先を備えた筆記具であって、前記ペン先は、少なくとも筆記部と、視認部を有する保持体とにより構成され、該保持体には筆記部より流出性のあるシート状の多孔体からなるインク誘導部が形成されていると共に、インク誘導部は保持体外周に配置されかつ、保持体外周から突出していないことを特徴とする筆記具。
- インク誘導部が筆記部の厚さより薄いと共に、保持体の長手方向外周面には、インク誘導部を嵌入保持する保持溝が形成され、該保持溝にインク誘導部が固着されることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- インク誘導部の幅(m)は、保持体の視認部の幅(M)の90%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
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