JP7039642B2 - リニア・スケールを有するエンコーダ - Google Patents

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Description

本発明は、光学スケールを有するエンコーダ及びその原点決定方法に係り、特に光学スケールが直線状または円弧状である時に好適な、リニア・スケールを有するエンコーダ及びその原点決定方法に関する。
被測定物の長さ、厚さ、内外径などの形状や、回転角度または移動量などの変位量を高精度に測定するために、光学スケールとこの光学スケールに相対的に移動可能なリーディング・ヘッドを備えた光学式エンコーダが使用されている。光学式エンコーダには、光学スケールを透過した透過光を検出する透過式と、光学スケールで反射した反射光を検出する反射式があり、最近は、小型化可能な利点を有するため反射式が多く使用されている。
光学式エンコーダは、光学スケール上に反射部と透過部とを交互に形成したパターンを読み取って、光学スケールとリーディング・ヘッドの相対的な移動量を測定する。その際、インクレメンタルに構成した光学式エンコーダでは、光学スケールの相対的な変位だけが計測され、絶対位置は測定されない。一方、光学式エンコーダを有する装置に何らかの衝撃や光学スケールの汚れ、電源の停止等の事象が生じると、その時の計測に誤計測を生じる恐れがある。このような事象が生じた場合には、原点を有するエンコーダにおいては、原点復帰動作により再計測を開始できる。しかしながら、エンコーダが原点を有しない場合には、装置全体を再設定せざるを得ず、インクレメンタルな光学式エンコーダにおいても、簡単な装置を付加するだけで原点を決定できることが、望まれている。
特許文献1では、2つの光学スケールを利用し、簡単な演算回路で高精度の原点検出を可能とするため、第1の光学スケールでは、透過部と反射部を規則正しく配置している。そして、第1のスケールに近接して第2の光学スケールを設け、第2の光学スケールの一部の透過部と反射部の配置が、規則性を破っている。また、第1、第2のスケールの反射光を検出する第1、第2の受光センサを各スケールに対応して配置し、第1の光学スケールを検出する第1の受光センサで光学スケールの移動量を検出し、第2の光学スケールを検出する第2の受光センサで規則性を破った位置を原点として検出している。
また、特許文献2には、光学式エンコーダにおいて、正確な原点信号が得られるよう、計測対象に固定されたスケールに、原点計測用スリットを含む原点トラックを形成している。そして、光源から射出するビームのスポットを、原点トラック上でスケールの移動方向と垂直な方向まで延在させて、原点検出用スリットまで照射可能にし、スケールの移動方向を検出する受光素子が、原点計測用スリットを透過した光も集光している。
さらに、特許文献3では、操作方向の依存性が小さく、A相またはB相信号に同期した原点検出を安定して行うことができるエンコーダを得るため、エンコーダが、発光部から出射された光をスケールに投影し、その反射光の回折パターンを検出する検出部と、検出部の信号をエンコーダ信号として処理する信号処理回路を備えている。そして、原点位置を検出するZ相信号を形成するZ相スケールに、光反射領域と光透過領域の2領域からなるベタパターンを用い、このパターンを検出してデジタル化したパルス状信号のZ相信号を得、Z相信号とスケールとの相対移動量から、対象物の変位を検出している。
特開2015-161595号公報 特開2007-127539号公報 特開2012-103230号公報
上記特許文献1~3のいずれも、インクレメンタルな光学式エンコーダにおいて、変位量計測手段の外に、原点決定手段を設けることにより、正確な測定を繰り返し可能にしている。特に、特許文献1においては、ほぼ同様の2つの光学スケールを並べて配置し、一方の光学スケールの透過部及び反射部が、一部で規則的配置を破っているだけであるから、光学スケールの作製や受光センサの作製等においては、特殊な方法を用いる必要がなく、移動量検出に使用する一般的な回路に、簡単な演算回路を付加するだけとなり、高精度に原点検出できる、という利点を有している。
しかしながら、微小部分等の計測や加工に用いる場合において顕著であるが、計測器や加工部全体の小型化の要求に伴い、エンコーダにおいても小型化が求められている。例えば微小加工用センサに用いるリニア・エンコーダにおいては、センサ部分の大きさが、加工用スピンドルの押し込み量に対応した大きさであることが求められている。そのため、移動量または変位量測定用の光学スケールと、原点検出用の光学スケールの、2本のスケールを平行配置することは、光学スケール部の大型化を招き、改善が求められている。
特許文献2に記載の光学式エンコーダでは、測距用のスケールと平行にZ相用のスリットを設けているので、スケールの長さを同一にしても、スケールの幅がほぼ2倍になっている。その結果、スケール全体として専有面積が増大し、スケールの大型化を招いている。また、光源からのビームをZ相用スリットまで広げる必要があり、レンズ系が大型化する恐れがある。また、特許文献3でも、A相、B相検出用のスケールの外に、Z相検出用のスケールを設けているので、スケールの大型化とそれに伴う受光センサのための空間の増大を招く恐れがある。
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、インクレメンタル方式の光学式リニア・エンコーダにおいて、光学スケールを大型化することなく、簡単な構成を付加するだけで、原点を決定できるようにすることにある。本発明の他の目的は、上記に加え、円弧型の光学スケールを用いる場合に、測長用と原点決定用のリーディング・ヘッドの速度特性を同じくし得る光学式エンコーダを実現することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、透過部と反射部の対のパターンが規則的に多数配列されたリニア・スケールと、このリニア・スケールに光を出射する光源と、この光源から出射された光の透過光または反射光のいずれかを検出する受光センサを有し、前記リニア・スケールのパターン配列方向にリニア・スケールに対し相対的に移動するリーディング・ヘッドを備えた、リニア・スケールを有するインクレメンタル方式のエンコーダにおいて、前記リニア・スケールの端部近傍に、前記透過部または前記反射部の幅が他の部分と異なる幅の周期変化部を設け、前記リーディング・ヘッドは実質的に同一の前記受光センサを2個有し、これら2個の前記受光センサを前記リニア・スケールのパターン配列方向に並べて配置し、2個の前記受光センサの一方が、前記周期変化部を検出しないよう、前記リニア・スケールまたは一方の前記受光センサの移動を制限するストッパを設けている。
そしてこの特徴において、前記リニア・スケールは円弧状に形成されており、前記周期変化部を検出不能な一方の受光センサと、前記周期変化部を検出可能な他方の受光センサを同一円弧上であって前記パターンの配列位置に配置してもよい。
また、上記特徴において、前記2個の受光センサは、いずれもA相、B相、A相、B相を検出する1組のフォト・ダイオードを、複数組だけ組み合わせて形成されていてもよく、前記リニア・スケールを絶対空間で移動側に、前記リーディング・ヘッドを絶対空間で固定側に設けるようにしてもよい。ここで、「絶対空間で移動側に」とは、相対的にではなく、実際に移動する側にという意味であり、「絶対空間で固定側に」とは、実際に移動しない固定側にという意味である。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、透過部と反射部の対のパターンが規則的に多数配列されたリニア・スケールに光源から出射し、光源から出射された光の透過光または反射光のいずれかを、前記リニア・スケールに相対的に移動する受光センサを有するリーディング・ヘッドが検出し、前記受光センサの出力に基づいて前記リニア・スケールの原点を決定するリニア・スケールを有するエンコーダの原点決定方法において、前記受光センサは、前記パターン配列方向に並んで配置された実質的に同一な2個の受光センサであり、前記リニア・スケールの端部近傍に設けた、前記透過部または前記反射部の幅が他の部分と異なる幅の周期変化部を超えず、前記周期変化部を検出不能な一方の受光センサと、前記周期変化部を越えて移動可能で、前記周期変化部を検出可能な他方の受光センサであり、これら2つの受光センサの出力の差を予め定めた閾値と比較して、前記リニア・スケールの原点とすることにある。
そしてこの特徴において、前記2つの受光センサの出力差が予め定めた閾値を超えたカウント数が、所定カウントだけ経過したら、この所定カウント経過後から所定カウント分だけ遡った前記他方の受光センサが検出した位置を原点とするのがよく、前記周期変化部を形成する前記透過部または前記反射部の幅は、他のパターンの幅の約1.3~1.5倍であることが望ましい。
本発明によれば、インクレメンタル方式の光学式リニア・エンコーダにおいて、リニア・スケールの一部に間隔が他と異なる反射部または透過部を設け、リニア・スケールに対向し、リニア・スケールがそれに相対的に移動可能な、実質的に同一の受光センサを設けて、それぞれ測距用及び原点決定用として用いているので、光学式リニア・エンコーダの光学スケールを大型化することなく、簡単な構成を付加するだけで、原点を決定できる。また、光学スケールが円弧型の光学スケールであっても、測長用と原点決定用のリーディング・ヘッドの速度特性を同じくすることができる。
本発明に係る光学式エンコーダの一実施例の模式図で、(a)は正面図、(b)は上面図である。 図1に示した光学式エンコーダの動作範囲を説明する図である。 受光センサの構成を説明する図である。 受光センサとリニア・スケールの関係を説明する図であり、(a)は測距位置、(b)はシフト境界位置を示す。 受光センサのゲインを説明する図である。 原点検出の原理を説明するグラフである。 原点検出のシミュレーション結果である。 円弧型スケールの例を示す模式図である。 原点位置の設定を説明する図である。
本発明に係る光学式リニア・エンコーダのいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、光学スケールが直線状のもののみならず、円弧状のものであって無限回転するものを除いたものも、リニア・エンコーダと称する。また、以下の説明では、光学スケールが移動する場合について記載しているが、光学スケールが静止し、リーディング・ヘッドが移動する場合も、同様である。すなわち、光学スケールとリーディング・ヘッドが相対的に移動できればよい。
図1は、本発明に係る光学式リニア・エンコーダ100の主要部を示す図であり、同図(a)はその正面図、同図(b)は上面図である。透明なガラス等で構成されたスケール基板1の長手方向に、所定長さだけ、光を反射する反射部2aと透過部2bの対で反射パターン2が、ピッチp2で繰り返し規則的に形成されている。スケール基板1上に形成される反射パターン2は、詳細を後述するように、その一部に、周期変化部2cを有している。スケール基板1の上部には、センサ基板10が配置されており、センサ基板10の下面には、2個のリーディング・ヘッド41a、41bが近接して、または間隔を置いて、同一軸上に配置されている。なお、理解を容易にするため、図1(b)では、リーディング・ヘッド41a、41bを一点鎖線で示している。
上述したように本実施例では、リーディング・ヘッド41a、41bは、リニア・エンコーダ100の使用中には静止しており、スケール基板1が、図1で矢印51に示した方向に往復移動する。そのため、2つのリーディング・ヘッド41a、41bは、スケール基板1の移動方向51に合わせた同一軸上に設けている。リーディング・ヘッド41a、41bは全く同一仕様であり、各々LEDの光源11a、11bと受光部14a、14bを有している。なお、小型化のために、光源を独立的に設け、リーディング・ヘッド41a、41bは受光部14a、14bだけ有するようにしてもよい。
図2に、図1の関係にある光学式リニア・エンコーダ100を用いた装置の具体例を、模式的に上面図で示す。測長器80の場合であり、リニア・エンコーダ100の部分は、円弧状に形成されている。スケール基板1が、円弧状に形成されており、その外周近傍に、反射パターン2が円弧に垂直に形成されている。繰り返される反射パターン2の一方側端部、図では右側端部近傍に、反射パターン2の周期が異なる周期変化部2cが形成されている。この周期変化部2cは、原点用スケール・シフト・ポイントまたはシフト境界部とも呼ばれる。円弧状のスケール基板1の中央部には、円弧の内側に半径方向に延びるスケール回動軸22aがあり、スケール回動軸22aの長手方向中間には、回動中心21が設けられている。スケール回動軸22aの他端部にはプローブ軸22bがあり、その先端部にはプローブ22が取り付けられている。
スケール回動軸22aの両側面であって、回動中心21とスケール基板1との間には、ストッパ17a、17bが設けられており、このストッパ17a、17bに対応して、図示しないケーシングに取り付けたストッパ18a、18bが配置されている。一方、ケーシングには、リーディング・ヘッド41a、41bも設けられており、それらはスケール基板1上の反射パターン2が形成する円弧上に位置している。なおこの図2では、リーディング・ヘッド41a、41bは、両ストッパ18a、18bを結ぶ線の中間点に垂直な線近傍に配置している。
このように構成した測長器80では、プローブ22の移動に伴い、スケール基板1の検出位置とリーディング・ヘッド41a、41bの相対位置が変化する。すなわち、プローブ22が最も押し込まれると、スケール基板1が回動中心21を中心にして回動(1a)して、スケール基板1のストッパ17bがハウジング側のストッパ18bに当接する。その時、2つのリーディング・ヘッド41a、41bは、スケール基板1の左端付近の反射パターン2を検出する。
一方、プローブ22の押し込み量が最も少なくなった場合には、スケール基板1は回動中心21を中心に上記とは逆に回転(1b)し、スケール基板1のストッパ17aがハウジング側のストッパ18aに当接する。この状態では、2つのリーディング・ヘッド41a、41bは、スケール基板1の右端付近の反射パターン2を検出する。しかし、右側のリーディング・ヘッド41bは、このスケール基板1の移動において、周期変化部2cを移動途中に検出するが、左側のリーディング・ヘッド41aはこの周期変化部2cまで到達できない。これにより、左側のリーディング・ヘッド41aを、測距(移動距離測定)用に、右側のリーディング・ヘッド41bを原点測定用に使用することができる。以下に、この詳細を、原理とともに説明する。
図3に、受光部14a、14bの構成の一例を示す。図示のように、同じ幅の4個のセンサ部PS1~PS4が、センサ部ピッチspで反射パターン2の配列軸方向に形成され、これら4個のセンサ部PS1~PS4を1組として、複数組配列して受光部14a、14bを構成する。本実施例では、このセンサ部の組Grは13組あり、センサ部は合計52個設けられている。センサ部PS1~PS4は、例えばフォト・ダイオードで形成され、独立した受光素子として動作する。13組のセンサ部PS1~PS4の組は、それぞれ同じセンサ部同士、たとえばPS1同士の出力が共通に接続される。PS1同士を接続したものがA相信号に、PS2同士を接続したものが、A相とは90°位相の異なるB相信号に、PS3同士を接続したものがA相とは逆相のA相信号に、PS4同士を接続したものがB相の逆相となるB相信号として、出力される。
ここで、光源11a、11bからの光は、反射部2aで反射され受光部14a、14bに入射するが、各受光部14a、14bは上述した通り、13組のセンサ部PS1~PS4の組を有しており、各センサ部PS1~PS4の幅を10μmとしているので、L=13×40=520μm必要とする。なお、このセンサ部PS1の長さについては、本出願人の先願公報(特開2015-161595号)に開示されている。
図4に、受光部14a、14bとスケール基板1の関係を正面図で示す。同図(a)は測距範囲における関係であり、同図(b)は、周期変化部2cを含む位置での関係を示す。なお、周期変化部2cの開始位置を、シフト境界2dと称する。測距範囲では、反射部2aと透過部2bの反射パターン2が規則的であるから、受光部14a、14bを構成する各組Gr1~Gr13の同一相のセンサ部PS1(PS2、PS3、PS4)の出力はほぼ同じになる。これに対して、周期変化部2cを含む位置では、13組Gr1~Gr13のセンサ部中の同相のセンサ部においても、出力差が生じる。
この様子を、図5に示す。図5の縦軸は、受光部14a、14bで検出する各相、例えばA相の正規化した出力であり、横軸はスケール基板1の移動距離Xを示す。図5に実線で示すように、各相(A相、B相、A相、B相)の出力信号は、スケール基板1の反射パターン2が規則的な測距範囲を検出する限り、20μmを周期とする正弦波状の信号であり、図示は省略したが、各相は90°ずつ位相がずれたものになっている。しかしながら、スケール基板1のシフト境界2dがリーディング・ヘッド41bを通過する場合には、図中破線で示したように、出力の低下とともに、20μmの周期もわずかに増大している。この周期と出力の変化は、スケール基板1のシフト境界2dが完全にリーディング・ヘッド41bを超えると、元に戻っている。
2個のリーディング・ヘッド41a、41bは実質的に同一のものであるから、リーディング・ヘッド41a、41bが、スケール基板1上に反射パターン2が規則的に配置された測距範囲を検出する限り、図5の検出信号に基づく、2個のリーディング・ヘッド41a、41b間の反射パターン2のカウント数の変化は生ぜず、初期状態と同じになるはずである。これに対して、リーディング・ヘッドの一方41aがスケール基板1上の測距範囲を検出中に、リーディング・ヘッドの他方41bがスケール基板1上の周期変化部2cを検出すると、センサ部PS1~PS4の出力の低下と周期の変化が生じる。なおこの周期の変化は、周期変化部2cが完全にリーディング・ヘッド41bの検出範囲外に移動すると無くなるので、以後の検出においては2つのリーディング・ヘッド41a、41bの周期に変化はない。
この状態を、模式的に図6に示す。2つのリーディング・ヘッド41a、41bがともに測距範囲にある場合を想定し、周期変化部2cがリーディング・ヘッドに近づくように、スケール基板1を動かし始める場合を考える。各リーディング・ヘッドの受光部14a、14bは、スケール基板1に形成された反射パターン2に基づいて、カウントを開始する。図6では、2つの受光部14a、14bが検出するカウント数の差Δを、スケール基板1の移動開始時の差を基準にして示しており、したがって、移動開始時のΔはΔ=0である。横軸は、スケール基板1の移動距離Xである。この図6では、一方のリーディング・ヘッド41bを周期変化部2cが通過するときだけカウント数が変化するように記載したが、実際は、受光部が13×4個のセンサ部PS1~PS4で構成されているので、より長い時間カウント数が変化し、その後一定となる。
したがって、カウント数の変化から、スケール基板1上の反射パターン2の変化する位置、すなわち、シフト境界2dを原点とすることにより、インクレメンタルなエンコーダにおいても、原点検出専用トラックを設けることなく、1トラックだけで、簡単に原点を検出できる。その際、2つの実質的に同一のリーディング・ヘッド41a、41bを使用し、スケール基板1の一部に、周期の異なる周期変化部2cを有するパターン2を設けるだけでよく、装置の大型化を防止して、簡単な構造で、原点を検出できる。
また、2つの実質的に同じリーディング・ヘッド41a、41b、より正確には2つの実質的に同じ受光部14a、14bは、スケール基板1の移動方向に同軸にする必要はあるが、上述したように、スケール基板1に形成された反射パターン2とは、必ずしも位相を合致させる必要はなく、2個配置するにもかかわらず、リーディング・ヘッド41a、41bや受光部14a、14bの組立等における工数の増加を回避できる。
上記構成の光学式リニア・エンコーダを用いた測距システムのシミュレーション結果を、図7に示す。エンコーダは、パターンのピッチが20μmであり、内挿ビット数が4096のものを使用している。周期変化部2cの幅は14μmであり、パターン・ピッチp2mは24μmである。原点検出側のリーディング・ヘッド41bは、周期変化部2cを往復させている。
この図7から、周期変化部2cの他の部分との幅の違い、すなわち、パターン・ピッチp2mとパターン・ピッチp2の差が4μmとなる点を、明確に原点と定めることができることが分かる。このシミュレーション結果では、スケール基板1の移動距離Xが約800μmから1100μmの間で、周期幅4μmの差があるように判定されているので、この変化の開始点である800μmを原点に定める。または、変化が収まった1100μmから所定カウント数だけ遡った点を原点に定める、ことにより、簡単にかつ再現性良く、原点を定めることができる。
なお、この図7の例では、周期変化部2cの長さを14μmとしているが、これは元の反射パターン2のピッチが20μmで、反射部2a(または透過部2b)のピッチがp2/2が10μmであることを考慮して定めている。周期変化部2cの長さをたとえば、20μmとすれば、図7におけるΔの傾きが急峻となり、より原点位置を確実に決定できると考えられるが、その場合には、A相とB相の区別がつきにくく、測定が困難になる。一方、周期変化部2cの長さをより短くすると、図7から分かるように、差Δの変化が周期の変化によるものなのか、外乱等の他の要因によるものなのかの区別がつきにくく、また傾きが緩やかになるので、臨界点を見つけにくくなる。したがって、本実施例の場合には、周期変化のない反射部2a(または透過部2b)より3~5μm程度長くするのが好ましい。これを反射部2a(または透過部2b)のピッチp2/2で除すると、1.3~1.5倍程度が最適になる。
次に、図8に図2に示したと同様の円弧型の光学式リニア・エンコーダ100の例を示す。半円弧型のスケール基板1の一方端側に、周期変化部2cを設けることにより、ほぼ半円周に亘る測距を高精度に実施できる。この場合にも、一方のリーディング・ヘッド41aを、周期変化部2cが超えさせないで、スケール基板1を動かすようにする。従来は、原点用のトラックをスケール基板1の内側に設ける必要があったが、本実施例によれば、1本のトラックのみでよく、スケール基板1を小型化できる。
図9に、本発明の変形例を示す。2個の実質的に同一のリーディング・ヘッド41a、41bを用いることは、上記各実施例と同じであるが、スケール基板1の両端側に周期変化部2c、2fを設ける点で、上記各実施例と相違している。加工具23を取り付けたスピンドル23b等への応用を想定したものである。周期変化部2c、2fをスケール基板1の両端側に設けるため、スケール基板1の有効長さはリーディング・ヘッド41a、41bの長さ程度短くなるが、2つのリーディング・ヘッド41a、41bのいずれをも原点検出用に使用でき、装置の適性に合わせて使用することができ、操作の裕度が増す。例えば、同図(b)では同図(a)との組み合わせで、スピンドル解放端を原点検出用に用い、同図(c)では同図(a)とは逆のリーディング・ヘッドの配置で、スピンドル押し込み端を原点検出用に用いる。他方の周期変化部2fは、検出限界等の安全装置に用いればよい。なお、スケール基板1の両端側に周期変化部2c、2fを設けることは、スピンドルに限るものではなく、測長器等でもよいことは言うまでもない。
上記実施例および各変形例によれば、光学式リニア・エンコーダが実質的に同一の2個の受光部を有しているので、測距データにエラーが生じた場合、スケール基板側にエラーがあるのか、リーディング・ヘッド側に異常があるのかを、2個のリーディング・ヘッドのデータを比較することにより、容易に判定できる、という効果もある。
1、1a、1b…スケール基板、2…反射パターン、2a…反射部、2b…透過部、2c…周期変化部、2d…シフト境界、2f…周期変化部、10…センサ基板、11a、11b…光源、14a、14b…受光部、17a、17b…(スケール基板側)ストッパ、18a、18b…(ハウジング側)ストッパ、21…回動中心、22…プローブ、22a…スケール回動軸、22b…プローブ軸、23…加工具、23b…スピンドル、41a…(測距用)リーディング・ヘッド、41b…(原点検出用)リーディング・ヘッド、51…移動方向、80…測長器、100…(光学式リニア・)エンコーダ、A、B、A、B…(検出)相、Gr~Gr13…(フォトセンサの)組み、p2…パターン・ピッチ、p2m…(周期変化部)パターン・ピッチ、p3…(フォトセンサ組)ピッチ、PS1~PS4…センサ部(フォトセンサ)、sp…(センサ部)ピッチ、X…距離、Δ…差

Claims (4)

  1. 透過部と反射部の対のパターンが規則的に多数配列されたリニア・スケールと、このリニア・スケールに光を出射する光源と、この光源から出射された光の透過光または反射光のいずれかを検出する受光センサを有し、前記リニア・スケールのパターン配列方向にリニア・スケールに対し相対的に移動するリーディング・ヘッドを備えた、リニア・スケールを有するインクレメンタル方式のエンコーダにおいて、
    前記リニア・スケールの端部近傍に、前記透過部または前記反射部の幅が他の部分と異なる幅の周期変化部を設け、
    前記リーディング・ヘッドは実質的に同一の前記受光センサを2個有し、
    これら2個の前記受光センサを前記リニア・スケールのパターン配列方向に並べて配置し、
    2個の前記受光センサの一方が、前記周期変化部を検出しないよう、前記リニア・スケールまたは一方の前記受光センサの移動を制限するストッパを設け、
    2個の前記受光センサの他方が前記周期変化部を検出可能として、該他方の受光センサは、前記他方の受光センサが前記周期変化部を検出することにより生ずる2個の前記受光センサの出力差により原点を検出する原点検出用センサとしても使用されることを特徴とするリニア・スケールを有するエンコーダ。
  2. 前記リニア・スケールは円弧状に形成されており、前記周期変化部を検出不能な一方の前記受光センサと、前記周期変化部を検出可能な他方の前記受光センサを同一円弧上であって前記パターンの配列位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のリニア・スケールを有するエンコーダ。
  3. 2個の前記受光センサは、いずれもA相、B相、A-相、B-相を検出する1組のフォト・ダイオードを、複数組だけ組み合わせて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリニア・スケールを有するエンコーダ。
  4. 前記リニア・スケールを絶対空間で移動側に、前記リーディング・ヘッドを絶対空間で固定側に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリニア・スケールを有するエンコーダ。
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