本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[電子部品]
図1に示すように、本実施形態の成膜対象となるワークは、電子部品10である。電子部品10は、素子11を封止したパッケージ12を有する。素子11は、半導体チップ、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、SAWフィルタ等の表面実装部品である。以下の説明では、半導体チップを素子11とした例で説明する。ここでいう半導体チップは、複数の電子素子を集積化した集積回路として構成されたものである。
素子11は、基板14の表面に搭載されている。基板14は、セラミック、ガラス、エポキシ樹脂等からなる板の表面に、回路パターンが形成されている。素子11と回路パターンとは、はんだにより接続されている。
基板14の素子11が実装された表面は、素子11を覆うように、合成樹脂によって封止することにより、パッケージ12が構成されている。パッケージ12の形状は略直方体形状である。
本実施形態は、上記のような電子部品10の天面12a及び側面12bに、電磁波シールド膜13を形成する。つまり、天面12a及び側面12bが、成膜される表面である。電磁波シールド膜13は、導電性の材料により形成された電磁波を遮蔽する膜である。シールド効果を得るためには、電磁波シールド膜13は、少なくともパッケージ12の天面12aに形成されていればよい。側面12bの電磁波シールド膜13は接地のためである。なお、パッケージ12の天面12aとは、製品に実装される面と反対側の外表面である。
天面12aは、水平に載置された場合には、最も高い位置にある上面となるが、実装された場合に上方を向く場合も、上方を向かない場合もある。側面12bは、天面12aに対して異なる角度で形成された外周面である。天面12aと側面12bとの間は角を形成していても、曲面により連続していてもよい。
さらに、パッケージ12の天面12aと反対側の底面は、素子11が外部との電気的な接続を行う電極11aを有する電極形成面12cとなっている。本実施形態の電極11aは、BGA等の球状又は半球状である。なお、電極形成面12cは、電極11aの表面も含む。
[異なる方向の容易軸方向の強磁性体層とすることが有効な理由]
電磁波のシールド効果は、容易軸方向に交差する方向の電磁波に対して有効となる。このシールド効果は、容易軸方向に直交する方向の電磁波に対して最大となり、容易軸方向に平行な方向の電磁波に対してはほとんど働かない。電磁波の方向は、電子部品10の基板14上の信号線の方向によって決まる。信号線の方向は種々異なるため、電磁波の方向も様々である。すると、容易軸方向が直交する層を重ねることにより、いずれかの層の容易軸方向が、電磁波に交差することになる。これにより、あらゆる方向の電磁波に対してシールド効果が得られるので、全体としてのシールド性能を向上させることができる。
[成膜面における容易軸方向を均一に揃えることが難しい理由]
以上のことから、各層の容易軸方向を均一に揃えるとともに、複数の層の容易軸方向が互いに直交していることが好ましい。しかし、このような製品が存在しないということは、電磁波シールド膜の容易軸方向を制御することには、何等かの困難性があると考えられる。その理由について、発明者は、スパッタリングによる成膜において、電磁波シールド膜の容易軸方向が定着する際の磁束密度は、成膜材料によって異なり、成膜対象となる面における磁界のすべての方向が同じ方向でない場合には、容易軸方向が揃う箇所と揃わない箇所が生じてしまうためと推察した。
[本実施形態による成膜方法]
発明者は、容易軸方向が均一となる成膜方法を、鋭意検討した。まず、容易軸方向を同一面内で一定方向に揃えるという課題からは、成膜中の成膜対象は、一定方向の磁界が与えられた成膜領域に置き続けることが技術常識である。成膜領域とは、成膜材料が堆積して膜を形成する領域である。非成膜領域とは、成膜材料が膜を形成する程度に堆積しない領域である。成膜中に、成膜対象を磁界や成膜領域から離脱させる、つまり非成膜領域に移動させるような手法は、成膜対象に対する磁界の方向や磁束密度の変化が大きくなり、一定の均一な容易軸方向とすることが困難になると考えられるためである。例えば、特許文献1には、容易軸方向を直交させる方法として、容易軸方向へと磁界を印加しながらスパッタリングを行うことにより第1の強磁性体層を成膜すること、その後、磁界の方向を異なる方向にするためにワークを90度回転させて第2の強磁性体層を成膜することが記載されている。つまり、各層を成膜している間は、成膜面に対する磁界の方向は一定である。
しかし、発明者は、このような技術常識に反して、成膜領域と非成膜領域を繰り返し通過させながらスパッタリングにより電磁波シールド膜を成膜することを試みた。また、磁界によってプラズマを制御するマグネトロンスパッタリングにおいて、スパッタ源は、磁性体である磁石を備える。この磁石による漏洩磁界と容易軸を揃えるための磁場印加装置による磁界との干渉を考慮しつつ、成膜面全体において磁界の方向を全て同じ方向とすることは難しい。そこで、発明者は、電磁波シールド膜の磁化と磁界との関係を調べるため、成膜領域に印加される磁界を1つとした。つまり、磁場印加装置を設けずに、漏洩磁界のみを与えることで容易軸方向を揃えることを試みた。なお、漏洩磁界とは、装置に搭載された磁気回路によって生じる磁界のうち、本来の目的とする箇所以外に及んだ磁界をいう。本実施形態においては、マグネトロンスパッタ用の磁石によって生じる磁界のうち、マグネトロンスパッタの放電領域以外に及んだものを、漏洩磁界と呼ぶ。
そして、鋭意検討した結果、磁束密度がある値以上となる磁束を通過して、成膜領域を脱した時に、その磁束の手前に当該磁束よりも磁束密度の高い磁束が存在していたとしても、堆積した成膜材料の容易軸方向が、当該磁束における磁界の方向に揃うことを発見した。すなわち、成膜領域に形成されている磁束のうち、電子部品10が最後に通過したある値以上の磁束密度の磁束によって、電子部品10に堆積した成膜材料の容易軸方向が支配されることを発見した。言い換えれば、成膜領域中に存在する磁束における磁界の方向や磁束密度がどうであれ、電子部品10のスパッタ源と向き合う面が成膜領域を脱する前の最後に通過するある値以上の磁束密度の磁束における磁界の方向さえ所望の方向を向くようしておけば、成膜領域と非成膜領域を繰り返し通過する毎に、堆積する成膜材料の容易軸方向が揃うので、成膜される層の全体が、同じ磁束の磁束密度とその方向によって、同じ容易軸方向となることを見出した。ここでいう「ある値以上の磁束密度」とは、成膜材料の容易軸方向を揃えることのできる大きさの磁束密度のことをいう。
例えば、電子部品10の側面方向から見た図2及び平面方向から見た図3に示すように、スパッタリングによる電子部品10への成膜材料mの堆積中の成膜領域Cに磁界Fを生じさせて、成膜対象である電子部品10を、黒塗りの矢印で示す搬送方向に通過させる。磁界F中のL1~Ltの矢印は、等磁束密度の各磁束を示した仮想の線である。磁束L1~Ltのうち、磁束Ltは、成膜材料mの容易軸方向を一方向に揃える大きさの磁束密度の磁束のうち、成膜領域Cを脱する前の最後に通過する磁束である。例えば、NiFeの場合、その磁束密度の大きさは約1mTである。この磁束Ltを通過して成膜領域Cを脱した後は、磁化方向は変化せずに定着する。以下の説明では、このLtを、定着磁束と呼ぶ。
なお、「磁界」は磁石によって生じる磁場である。「磁束」は磁界中に生じる磁力線の束である。「磁界」は、「磁束」が3次元に広がって生じている。本実施形態において利用している「磁界」は、上記のように「漏洩磁界」である。但し、「漏洩磁界」において3次元に広がって生じている「磁束」のうち、容易軸方向を揃える機能を発揮する磁束は、成膜材料mに磁気異方性を付与することができる磁束密度を有し、成膜材料mに磁気異方性を付与できる位置に存在する磁束である。膜が形成される面の近くにあっても、成膜材料mに磁気異方性を付与できない磁束密度の磁束は、容易軸方向を揃える機能を発揮できない。また、成膜材料mに磁気異方性を付与できる磁束密度を有していても、成膜材料mの磁気異方性を付与できないほど、成膜領域Cを脱する前の最後に通過する位置から離れた位置にある磁束は、容易軸方向を揃える機能を発揮できない。容易軸方向を揃える機能を発揮する磁束のうち、電子部品10が成膜領域Cを脱する前の最後に通過する磁束が上述の定着磁束Ltである。
図3において、白塗りの矢印は成膜材料の容易軸方向を示す。図2(A)に示すように、スパッタリング中の電子部品10が磁界中を通過している間は、図3(A)に示すように、一表面に堆積した成膜材料の容易軸方向は定まらない。そして、図2(B)及び図3(B)に示すように、磁界F端の定着磁束Ltを通過して、成膜領域Cを脱した時点で、定着磁束Ltによって揃った方向に磁化される。つまり、電子部品10が成膜領域Cから非成膜領域Dを通過する毎に、定着磁束Ltによって、一表面に堆積した成膜材料の容易軸方向が均一に揃うことになる。これを繰り返し行うことにより、容易軸方向が揃ったシールド層が形成される。
さらに、上記と異なる方向の磁界の成膜領域Cと非成膜領域Dとを繰り返し通過させることにより、同様の原理によって、先の成膜の容易軸方向と異なる方向のシールド層を形成することができる。以下、この技術を実現するための成膜装置を説明する。
[成膜装置]
本実施形態の成膜装置1を、図4~図13を参照して説明する。本実施形態の成膜装置1は、各電子部品10のパッケージ12の外表面に、スパッタリングにより電磁波シールド膜13を形成する装置である。成膜装置1は、図5及び図6に示すように、後述の回転テーブル31が回転すると、保持部33に保持されたトレイ34上の電子部品10が、円周の軌跡で移動して、スパッタ源4に対向する位置を通過するときに、ターゲット41からスパッタされた粒子を付着させて成膜する装置である。
成膜装置1は、図4~図6に示すように、チャンバ20、搬送部30、成膜処理部40A~40D、表面処理部50、ロードロック部60、制御装置70を有する。
[チャンバ]
チャンバ20は、反応ガスGが導入される容器である。反応ガスGは、スパッタ用のスパッタガスG1、各種処理用のプロセスガスG2を含む(図6参照)。以下の説明では、スパッタガスG1、プロセスガスG2を区別しない場合には、反応ガスGと呼ぶ場合がある。スパッタガスG1は、電力の印加により生じるプラズマにより、発生するイオン等をターゲット41に衝突させて、電子部品10のパッケージ12にスパッタリングを実施するためのガスである。例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを、スパッタガスG1として用いることができる。
プロセスガスG2は、エッチングやアッシングによる表面処理を行うためのガスである。以下、このような表面処理を、逆スパッタと呼ぶ場合がある。プロセスガスG2は、処理の目的によって適宜変更可能である。例えば、エッチングを行う場合は、エッチングガスとしてアルゴンガス等の不活性ガスを用いることができる。本実施形態においては、アルゴンガスによって、電子部品10の表面の洗浄と、粗面化処理を行う。例えば、表面を洗浄およびナノオーダーで粗面化処理を行うことにより、膜の密着力を高めることができる。
チャンバ20の内部の空間は真空室21を形成している。この真空室21は、気密性があり、減圧により真空とすることができる空間である。例えば、図4及び図6に示すように、真空室21は、チャンバ20の内部の天井20a、内底面20b及び内周面20cによって形成される円柱形状の密閉空間である。
チャンバ20は、図6に示すように、排気口22、導入口24を有する。排気口22は、真空室21と外部との間で気体の流通を確保して、排気Eを行うための開口である。この排気口22は、例えば、チャンバ20の底部に形成されている。排気口22には、排気部23が接続されている。排気部23は、配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。この排気部23による排気処理により、真空室21内は減圧される。
導入口24は、真空室21のターゲット41の近傍に、スパッタガスG1を導入するための開口である。この導入口24には、ガス供給部25が接続されている。ガス供給部25は、各ターゲット41に対して1つずつ設けられている。また、ガス供給部25は、配管の他、図示しない反応ガスGのガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。このガス供給部25によって、導入口24から真空室21内にスパッタガスG1が導入される。なお、チャンバ20の上部には、後述するように、表面処理部50が挿入される開口21aが設けられている。
[搬送部]
搬送部30は、チャンバ20内に設けられ、電子部品10を円周の軌跡で循環搬送する装置である。循環搬送は、電子部品10を搭載したトレイ34を円周の軌跡で周回移動させることをいう。搬送部30によってトレイ34が移動する軌跡を、搬送経路Pと呼ぶ。搬送部30は、回転テーブル31、モータ32、保持部33を有する。また、保持部33には、後述する載置部35を搭載したトレイ34が保持される。
回転テーブル31は、円形の板である。モータ32は、回転テーブル31に駆動力を与え、円の中心を軸として回転させる駆動源である。保持部33は、搬送部30により搬送されるトレイ34を保持する構成部である。回転テーブル31の天面には、複数の保持部33が円周等配位置に配設されている。例えば、各保持部33がトレイ34を保持する領域は、回転テーブル31の周方向の円の接線に平行な向きで形成され、かつ、周方向において等間隔に設けられている。より具体的には、保持部33は、トレイ34を保持する溝、穴、突起、治具、ホルダ等である。メカチャック、粘着チャックによって構成することができる。
トレイ34は、図7に示すように、載置部35を載置して、チャンバ20内の搬送部30によって搬送される部材である。トレイ34は、載置部35が載置される平坦な載置面34aを有する。載置面34aは、方形状の平板の一方の平面である。載置面34aの周縁部には、周壁部34bが形成されている。周壁部34bは、載置面34aを囲う方形状に隆起した枠である。トレイ34の材質としては、熱伝導性の高い材質、例えば、金属とすることが好ましい。本実施形態では、トレイ34の材質をSUSとする。なお、トレイ34の材質は、例えば、熱伝導性の良いセラミクスや樹脂、または、それらの複合材としてもよい。
載置部35は、図8に示すように、支持部材351、フレーム352を有する。支持部材351は、図8(A)に示すように、平坦なシートであり、一方の面に粘着性を有する粘着面351aを有する。粘着面351aは、支持部材351の一方の面の全体に亘る。粘着面351aは、電子部品10を貼り付けるための貼付領域Sを有する。本実施形態では、支持部材351は方形であり、貼付領域Sは支持部材351の外縁よりも小さな方形状の領域である。但し、貼付領域Sを支持部材351の全面とすることもできる。
支持部材351の材質としては、耐熱性のある合成樹脂とすることができる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などを用いることができるが、これらには限定されない。
粘着面351aは、支持部材351の表面に対して接着剤を適用するか、表面に接着性を生じさせた接着面とすることができる。接着剤又は接着面の材質となる粘着材としては、例えば、シリコーン系、アクリル系の樹脂、その他、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂など、粘着性のある種々の材料を使用できる。支持部材351の他方の面は、粘着性を有しない非粘着面351bである。非粘着面351bは、例えば、円滑性のある面とすることができる。
フレーム352は、図8(B)に示すように、支持部材351の粘着面351aに貼り付けられ、貼付領域Sの外縁の一部又は全部を画する部材である。フレーム352の材質としては、熱伝導性の高い材質、例えば、金属とすることが好ましい。本実施形態では、フレーム352の材質をSUSとする。なお、トレイ34と同様に、フレーム352の材質を、例えば、熱伝導性の良いセラミクスや樹脂、または、それらの複合材としてもよい。フレーム352の材質は、トレイ34の材質と一致していても、相違していてもよい。本実施形態のフレーム352は、貼付領域Sを囲み、貼付領域Sの外縁の全部を規定する。フレーム352は、方形状の板状部材であり、中央に方形状の貫通孔352aが形成されている。この貫通孔352aの内縁が、貼付領域Sの外縁に一致する。フレーム352の外形は、支持部材351の外形と一致する。
支持部材351の粘着面351aは、フレーム352の底面に、互いの外形が一致して、貫通孔352aの底面側を塞ぐように貼り付けられている。このため、フレーム352の天面側の貫通孔352aからは、粘着面351aの貼付領域Sが露出している。
複数の電子部品10は、図8に示すように、フレーム352内の露出した貼付領域Sの上に貼り付けられる。複数の電子部品10は、天面12aのみならず、側面12bにも膜が形成されるように、間隔を空けてマトリクス状に整列配置される。
つまり、複数の電子部品10は、載置部35の粘着面351aの貼付領域S内に、電極形成面12cがマトリクス状に貼り付けられる。このような載置部35を複数用意して、後述するトレイ34の載置面34aに載置する(図7参照)。但し、載置部35は、単一でトレイ34に載置されていてもよい。
載置部35をトレイ34に載置して、成膜装置1内でスパッタリングによる成膜を行うことにより、図1(B)に示すように、電極形成面12c以外の電子部品10のパッケージ12、つまり天面12a及び側面12bに、電磁波シールド膜13を形成することができる。つまり、電子部品10の電極形成面12cは、支持部材351の粘着面351aに覆われているため、外部に露出していない。このため、成膜材料が、電子部品10の電極形成面12cに回り込んで付着することを防止できる。
このように、保持部33に保持されるトレイ34、載置部35によって、電子部品10が回転テーブル31上に位置決めされる。なお、本実施形態では、保持部33は6つ設けられているため、回転テーブル31上には60°間隔で6つのトレイ34が保持される(図4及び図5参照)。但し、保持部33は、一つであっても、複数であってもよい。
[成膜処理部]
成膜処理部40A、40B、40C、40Dは、搬送部30により搬送される電子部品10に成膜を行う処理部である。以下、複数の成膜処理部40A~40Dを区別しない場合には、成膜処理部40として説明する。成膜処理部40は、図6に示すように、スパッタ源4、区切部44、電源部45を有する。
(スパッタ源)
スパッタ源4は、電子部品10にスパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜する成膜材料の供給源である。スパッタ源4は、ターゲット41、バッキングプレート42、電極43を有する。ターゲット41は、電子部品10に堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送経路Pに離隔して対向する位置に設けられている。本実施形態のターゲット41は、図5に示すように、2つのターゲット41A、41Bが搬送経路Pに直交する方向、つまり回転テーブル31の回転の半径方向に並んでいる。以下、ターゲット41A、41Bを区別しない場合には、ターゲット41とする。ターゲット41の底面側は、搬送部30により移動する電子部品10に、離隔して対向する。なお、回転テーブル31の径方向におけるトレイ34の大きさよりも、2つのターゲット41A、41Bによって、成膜材料を付着させることができる実行領域である処理領域の方が大きい。
成膜材料は、例えば、NiFe、Cu、SUSなどを使用することができる。但し、スパッタリングにより成膜される材料であれば、種々の材料を適用可能である。また、ターゲット41は、例えば、円柱形状である。但し、長円柱形状、角柱形状等、他の形状であってもよい。
バッキングプレート42は、ターゲット41を保持する部材である。電極43は、チャンバ20の外部からターゲット41に電力を印加するための導電性の部材である。なお、スパッタ源4には、必要に応じて冷却機構などが適宜具備されている。
さらに、スパッタ源4には、図9~図11に示すように、磁性部100が設けられている。磁性部100は、成膜対象の一表面に略平行な第1の方向の磁束を含む磁界を形成する部材である。ここでいう一表面は、成膜領域Cを通過する成膜対象の成膜処理部40と向き合う面である。成膜対象の一表面に略平行な磁束とは、磁界中、当該一表面に平行又は平行に近似した成分の磁束である。本実施形態では、当該一表面は、電子部品10の天面12aである。磁性部100は、ターゲット41A、41Bに対応した磁性部材110A、110Bを有する。以下、磁性部材110A、110Bを区別しない場合には、磁性部材110とする。
磁性部材110は、図10に示すように、磁石111、112によって構成されている。磁石111、112は、リング状の永久磁石である。磁石111の径よりも、磁石112の径は小さい。磁石111、112は、支持板113の下面に同軸に且つ、互いの磁極が逆となるように固定されている。支持板113は、磁石111と略同径の円板状の非磁性材料からなる部材である。
支持板113の上面には、磁石111、112の軸から偏心した位置に、駆動部であるモータ120A、120Bの回転軸が接続されている。これにより、磁性部材110A、110Bは、ターゲット41A、41Bの平面と平行な平面を偏心回転する。
このような偏心回転する磁性部100によって、バッキングプレート42及びターゲット41を介して、後述する成膜領域C(図6参照)に、漏洩磁界が形成される。漏洩磁界は、電子部品10の天面12aと略平行な磁束を含む磁界Fである(図10、図2参照)。この磁界Fによって、スパッタリングにより堆積する成膜材料が磁化される。
(区切部)
区切部44は、スパッタ源4により電子部品10が成膜される成膜ポジションM1~M4、表面処理を行う処理ポジションM5を仕切る部材である。以下、成膜ポジションM1~M4を区別しない場合には、成膜ポジションMとして説明する。区切部44は、図5に示すように、搬送経路Pの円周の中心、つまり搬送部30の回転テーブル31の回転中心から、放射状に配設された方形の壁板44a、44bを有する。壁板44a、44bは、例えば、真空室21の天井に、ターゲット41を挟む位置に設けられている。区切部44の下端は、電子部品10が通過する隙間を空けて、回転テーブル31に対向している。この区切部44があることによって、反応ガスG及び成膜材料が真空室21に拡散することを抑制できる。
成膜ポジションMは、スパッタ源4のターゲット41を含み、区切部44で区切られた空間である。より具体的には、図5に示すように、成膜ポジションM1~M4、処理ポジションM5は、平面方向から見て、区切部44の壁板44a、44bと、チャンバ20の内周面20c、内周壁の外面27によって扇形に囲まれた空間である。成膜ポジションM1~M4、処理ポジションM5の水平方向の範囲は、一対の壁板44a、44bによって区切られた領域となる。なお、成膜ポジションMにおけるターゲット41に対向する位置を通過する電子部品10に、成膜材料が膜として堆積する。この成膜ポジションMは、成膜の大半が行われる領域であるが、成膜ポジションMから外れる領域であっても、成膜ポジションMからの成膜材料の漏れはあるため、全く膜の堆積がないわけではない。つまり、図6に示すように、各成膜処理部40において成膜が行われる成膜領域Cは、壁板44a、44bで画される成膜ポジションMよりもやや広い領域となる。
(電源部)
電源部45は、ターゲット41に電力を印加する構成部である。この電源部45によってターゲット41に電力を印加することにより、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料を、電子部品10に堆積させることができる。本実施形態においては、電源部45は、例えば、高電圧を印加するDC電源である。なお、高周波スパッタを行う装置の場合には、RF電源とすることもできる。回転テーブル31は、接地されたチャンバ20と同電位であり、ターゲット41側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。
複数の成膜処理部40は、成膜材料を選択的に堆積させることにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成する。特に、本実施形態では、異なる種類の成膜材料に対応するスパッタ源4を含み、成膜材料を1種ずつ選択的に堆積させることにより、複数種類の成膜材料の層から成る膜を形成する。異なる種類の成膜材料に対応するスパッタ源4を含むとは、全ての成膜処理部40の成膜材料が異なる場合も、複数の成膜処理部40が共通の成膜材料であるが、他がこれと異なる場合も含む。成膜材料を1種ずつ選択的に堆積させるとは、いずれか1種の成膜材料の成膜処理部40が成膜を行う間、他の成膜材料の成膜処理部40は成膜を行わないことをいう。また、成膜中の成膜処理部40または成膜ポジションMとは、成膜処理部40のターゲット41に電力が印加され、電子部品10に成膜が行える状態にある成膜処理部40または成膜ポジションMのことをいう。
本実施形態では、図5に示すように、搬送経路Pの搬送方向に、4つの成膜処理部40A~40Dが配設されている。4つの成膜処理部40A~40Dに、成膜ポジションM1~M4が対応している。これらの成膜処理部40A~40Dのうち、2つの成膜処理部40A、40Cは、成膜材料が強磁性体である。つまり、成膜処理部40A、40Cのスパッタ源4は、強磁性体から成るターゲット41を備えている。強磁性体としては、例えば、NiFeを用いる。
成膜処理部40Bは、成膜材料がSUSである。つまり、成膜処理部40Bのスパッタ源4は、SUSから成るターゲット41を備えている。成膜処理部40Dは、成膜材料がCuである。つまり、成膜処理部40Dのスパッタ源4は、Cuから成るターゲット41を備えている。本実施形態では、成膜処理部40A~40Dのいずれかが成膜処理を行っている間は、他のいずれかの成膜処理部40A~40Dは成膜処理を行わない。
さらに、成膜処理部40A~40Dのうちの一つの成膜処理部40Aは、磁性部材110A、110Bが、電子部品10の天面12aに沿う第1の方向の磁束を含む磁界Fを形成する。そして、他の一つの成膜処理部40Cは、磁性部材110A、110Bが、電子部品10の天面12aに、第1の方向に交差する第2の方向の磁束を含む磁界Fを形成する。本実施形態では、天面12aに形成される第1の方向の磁束と第2の方向の磁束とは略直交する。略直交とは、直交及び直交に近似した角度を含む。図11に、成膜処理部40A、40Cの磁性部100によって形成される磁束の方向として、定着磁束Lt1、Lt2を示す。定着磁束Lt1、Lt2は、成膜処理部40A、40Cの磁性部100によって形成される磁束のうち、上記の定着磁束Ltに対応する磁束である。なお、本実施形態では、成膜処理部40Aの磁性部100を磁性部100A(第1の磁性部)とし、成膜処理部40Cの磁性部100を磁性部100C(第2の磁性部)とする。
このような定着磁束Lt1、Lt2を形成するために、本実施形態では、成膜処理部40Aの磁性部100Aの磁性部材110Aと磁性部材110Bは、第1の方向に並んでいる。成膜処理部40Cの磁性部100Cの磁性部材110Aと磁性部材110Bは、第2の方向に並んでいる。磁性部材110Aと磁性部材110Bの並び方向は、両者の共通接線又は両者の径の中心を結ぶ直線の方向である。
なお、図11に示すように、搬送経路Pが直線状の場合には、成膜処理部40Aの磁性部材110A、110Bの並び方向と、成膜処理部40Cの磁性部材110A、110Bの並び方向とが略直交する方向であれば、両者の定着磁束Lt1、Lt2は略直交する方向になる。しかし、本実施形態では、搬送経路Pが円環状であるため、成膜処理部40Aの磁性部材110A、110Bの並び方向と、成膜処理部40Cの磁性部材110A、110Bの並び方向とは直交する方向とはならない(図16参照)。つまり、成膜される一表面である天面12aにおいては、第1の方向、第2の方向は略直交する方向となるが、第1の方向と第2の方向のみを比較した場合に必ずしも直交するわけではない。
また、本実施形態の磁性部100の構成では、成膜対象、つまり電子部品10の天面12aに平行な漏洩磁界F中において、等磁束密度の磁束を線で示した等磁界線に含まれる磁束Ln(図2、図3における磁束L1~Ltに相当する)は、図12(A)、(B)に示すように、一対の略円環形状の線が繋がることにより中央が縊れた瓢箪状となる。全体的には、第1の方向である定着磁束Lt1の方向と、第2の方向である定着磁束Lt2の方向とは、一対の略円環形状の円周に接する共通の接線とほぼ同一となる。
但し、等磁界線における各磁束は曲線状であるため、局所的、微視的に見ると、定着磁束Lt1、Lt2の方向は、磁界Fの周縁中の各位置によって異なる。しかし、多数ある電子部品10のうちの一つの電子部品10の天面12aが通過する経路に着目すると、この経路における成膜処理部40Aの定着磁束Lt1と成膜処理部40Bの定着磁束Lt2を局所的、微視的に見れば、上記の略直交する関係が成立しているといえる。
なお、搬送経路Pは円環状であるので、電子部品10の天面12aは、成膜領域Cを円弧状の軌跡で通過する。このため、天面12aは、定着磁束Ltに対する角度を僅かに変化させながら移動する。このような場合であっても、天面12aの電磁波シールド膜13の磁化方向は略平行とする。さらに、上記の各電子部品10における同一箇所の磁束は同様の傾向を示すので、磁化方向に略直交する関係が成立するといえる。
また、図13に示すように、成膜処理部40Aの磁性部材110A、110Bの並び方向と、成膜処理部40Cの磁性部材110A、110Bの並び方向は、一方を搬送経路Pに対して直交する方向として、他方を搬送経路Pに平行にすれば、互いに直交する方向となる。しかし、このように磁性部材110A、110Bを配置した場合、定着磁束Lt2が搬送経路Pに平行となるため、成膜領域Cから非成膜領域Dを通過することにより、通過する面の全体の成膜材料の磁化方向を、一定の方向に定着させる機能を発揮できない。また、磁性部材110A、110Bは、ターゲット41A、41Bの配置に対応している。このため、搬送経路Pに直交する方向に磁性部材110A、110Bを配置する場合、ターゲット41A、41Bも、搬送経路Pに直交する方向となり、成膜領域Cの幅Wlは長くなる。しかし、搬送経路Pに平行な方向に磁性部材110A、110Bを配置する場合、ターゲット41A、41Bも、搬送経路Pに平行な方向となり、成膜領域Cの幅Wsは短くなってしまう。
したがって、本実施形態では、図11(A)に示すように、第1の方向及び第2の方向の搬送経路Pに対する角度αが、略45°となるように構成されている。つまり、搬送経路Pに対する定着磁束Lt1と定着磁束Lt2の角度αが略45°となるように、磁性部材110A、110Bの並び方向の角度が、搬送経路Pに対して略45°となっている。これにより、成膜領域Cの幅Wmとして、上記のWlよりも短いが、Wsよりも長くすることができ、成膜領域Cの狭小化を回避している。略45°とは、厳密な45°に限定されず、45°に近似した値であればよい。また、本実施形態のように、搬送経路Pが円環状である場合には、搬送経路Pの接線方向に対して45°であればよい。なお、天面12a、つまり同一の成膜対象面上で第1の方向及び第2の方向が略直交するように、第1の方向の搬送経路Pに対する角度、第2の方向の搬送経路Pに対する角度は設定されていればよい。このため、この角度αは45°には限定されない。第1の方向の搬送経路Pに対する角度、第2の方向の搬送経路Pに対する角度が異なっていてもよい。例えば、45°に対して±15°、つまり30°~60°であってもよいが、この角度には限定されない。但し、成膜処理部40A、40Cの成膜領域Cの幅Wmを共通にしつつ、可能なかぎり広く確保するという観点からは、略45°とすることが好ましい。
さらに、図14に示すように、偏心回転する磁性部材110A、110Bの位相が揃っていない場合には、搬送経路Pに対する定着磁束Lt1、Lt2の角度が変化してしまう。すると、電磁波シールド膜中に様々な磁化方向の粒子が存在してしまうことになり、その結果、電磁波シールド膜中の容易軸方向を揃えることができなくなる。これに対処するため、本実施形態では、図11(A)、(B)、(C)に示すように、各定着磁束Lt1、Lt2について同一角度を維持させるべく、磁性部材110A、110Bの回転の位相が揃うように設定されている。これは、例えば、モータ120A、120Bの回転軸により偏心回転する磁性部材110A、110Bの平面方向の角度を揃えて、モータ120A、120Bの動作タイミング及び回転速度が同期するように制御することにより実現できる。
[表面処理部]
表面処理部50は、搬送部30により搬送される電子部品10に表面処理、つまり逆スパッタを行う処理部である。この表面処理部50は、区切部44により仕切られた、処理ポジションM5に設けられている。表面処理部50は、処理ユニット5を有する。この処理ユニット5の構成例を図5及び図6を参照して説明する。
処理ユニット5は、チャンバ20の上部から内部にかけて設けられた筒形電極51を備えている。筒形電極51は、角筒状であり、一端に開口部51aを有し、他端は閉塞されている。筒形電極51は、開口部51aを有する一端が回転テーブル31に向かうように、チャンバ20の天面に設けられた開口21aに絶縁部材52を介して取り付けられている。筒形電極51の側壁はチャンバ20の内部に延在している。
筒形電極51の、開口部51aと反対端には、外方へ張り出すフランジ51bが設けられている。絶縁部材52が、フランジ51bとチャンバ20の開口21aの周縁との間に固定されることで、チャンバ20の内部を気密に保っている。絶縁部材52は絶縁性があればよく、特定の材料に限定されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料から構成することができる。
筒形電極51の開口部51aは、回転テーブル31の搬送経路Pと向かい合う位置に配置される。回転テーブル31は、搬送部として、電子部品10を搭載したトレイ34を搬送して開口部51aに対向する位置を通過させる。なお、回転テーブル31の径方向におけるトレイ34の大きさよりも、筒形電極51の開口部51aの方が大きい。
図5に示すように、筒形電極51は平面方向から見ると回転テーブル31の半径方向における中心側から外側に向けて拡径する扇形になっている。ここでいう扇形とは、扇子の扇面の部分の形を意味する。筒形電極51の開口部51aも、同様に扇形である。回転テーブル31上のトレイ34が開口部51aに対向する位置を通過する速度は、回転テーブル31の半径方向において中心側に向かうほど遅くなり、外側へ向かうほど速くなる。そのため、開口部51aが単なる長方形又は正方形であると、半径方向における中心側と外側とで電子部品10が開口部51aに対向する位置を通過する時間に差が生じる。開口部51aを半径方向における中心側から外側に向けて拡径させることで、開口部51aを通過する時間を一定とすることができ、後述するプラズマ処理を均等にできる。ただし、通過する時間の差が製品上問題にならない程度であれば、長方形又は正方形でもよい。
上述したように、筒形電極51はチャンバ20の開口21aを貫通し、一部がチャンバ20の外部に露出している。この筒形電極51におけるチャンバ20の外部に露出した部分は、図6に示すように、ハウジング53に覆われている。ハウジング53によって筒形電極51から発生する電磁波を遮蔽することができる。筒形電極51のチャンバ20の内部に位置する部分、すなわち側壁の周囲は、シールド54によって覆われている。
シールド54は、筒形電極51と同軸の扇形の角筒であり、筒形電極51よりも大きい。シールド54はチャンバ20に接続されている。具体的には、シールド54はチャンバ20の開口21aの縁から立設し、チャンバ20の内部に向かって延びた端部は、筒形電極51の開口部51aと同じ高さに位置する。シールド54は、チャンバ20と同様にカソードとして作用するので、電気抵抗の少ない導電性の金属部材で構成すると良い。シールド54はチャンバ20と一体的に成型しても良く、あるいはチャンバ20に固定金具等を用いて取り付けても良い。
シールド54は筒形電極51内でプラズマを安定して発生させるために設けられている。シールド54の各側壁は、筒形電極51の各側壁と所定の隙間を介して略平行に延びるように設けられる。なお、図6は、シールド54及び筒形電極51の半径方向に延びる2つの側壁面しか図示していないが、シールド54及び筒形電極51の周方向に延びる2つの側壁面の間も、半径方向の側壁面と同じ大きさの隙間が設けられている。
また、筒形電極51にはプロセスガス導入部55が接続されている。プロセスガス導入部55は、配管の他、図示しないプロセスガスG2のガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。このプロセスガス導入部55によって、筒形電極51内にプロセスガスG2が導入される。プロセスガスG2は、上記のように、処理の目的によって適宜変更可能である。
筒形電極51には、高周波電圧を印加するためのRF電源56が接続されている。RF電源56の出力側には整合回路であるマッチングボックス57が直列に接続されている。RF電源56はチャンバ20にも接続されている。RF電源56から電圧を印加すると、筒形電極51がアノードとして作用し、チャンバ20、シールド54及び回転テーブル31がカソードとして作用する。マッチングボックス57は、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。なお、チャンバ20や回転テーブル31は接地されている。チャンバ20に接続されるシールド54も接地される。RF電源56及びプロセスガス導入部55はともに、ハウジング53に設けられた貫通孔を介して筒形電極51に接続する。
プロセスガス導入部55から筒形電極51内にプロセスガスG2であるアルゴンガスを導入し、RF電源56から筒形電極51に高周波電圧を印加すると、アルゴンガスがプラズマ化され、電子、イオン及びラジカル等が発生する。
(ロードロック部)
ロードロック部60は、真空室21の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理の電子部品10を載置部35を介して搭載したトレイ34を、真空室21に搬入し、処理済みの電子部品10を載置部35を介して搭載したトレイ34を真空室21の外部へ搬出する装置である。このロードロック部60は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
[制御装置]
制御装置70は、成膜装置の各部を制御する装置である。この制御装置70は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、真空室21へのスパッタガスG1およびプロセスガスG2の導入および排気に関する制御、スパッタ源4の電源及びモータの制御、回転テーブル31の回転の制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどのプロセッサと呼ばれる処理装置により実行されるものであり、多種多様な成膜仕様に対応可能である。
具体的に制御される内容としては、成膜装置1の初期排気圧力、スパッタ源4の選択、ターゲット41への印加電力、モータ120A、120Bの動作タイミング及び回転速度の同期、反応ガスGの流量、種類、導入時間及び排気時間、成膜時間、などが挙げられる。
上記のように各部の動作を実行させるための制御装置70の構成を、機能ブロック図である図15を参照して説明する。すなわち、制御装置70は、機構制御部71、電源制御部72、記憶部73、設定部74、入出力制御部75を有する。
機構制御部71は、排気部23、ガス供給部25、搬送部30のモータ32、スパッタ源4のモータ120A、120B、ロードロック部60等の駆動源、バルブ、スイッチ、電源等を制御する処理部である。電源制御部72は、電源部45、RF電源56を制御する処理部である。
記憶部73は、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する構成部である。設定部74は、外部から入力された情報を、記憶部73に設定する処理部である。入出力制御部75は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
さらに、制御装置70には、入力装置76、出力装置77が接続されている。入力装置76は、オペレータが、制御装置70を介して成膜装置1を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。例えば、成膜を行うスパッタ源4の選択を、入力手段により入力できる。
出力装置77は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。例えば、成膜を行っているスパッタ源4に対応する成膜ポジションMを、出力装置77に、他の成膜ポジションMと区別して表示することができる。
[動作]
以上のような本実施形態の動作を、上記に示した図面に加えて、図16、図17及び図18を参照して以下に説明する。図16は、電子部品10が定着磁束Lt1、Lt2の方向で磁化される様子を示す。また、図17は電子部品10の天面12aに形成される電磁波シールド膜13の分解斜視図である。図18は、天面12aに電磁波シールド膜13が形成された電子部品10の斜視図である。なお、図17及び図18は、側面12bの電磁波シールド膜13の図示を省略している。
なお、図示はしないが、ロードロック部60に対しては、コンベア、ロボットアーム等の搬送手段により、トレイ34の搬入、搬出が行われる。本実施形態は、電子部品10が貼り付けられた載置部35を載置したトレイ34が、搬送手段で搬送される例で説明する。但し、載置部35の状態、電子部品10の状態で搬送されるようにしてもよい。
電子部品10は、図8に示すように、載置部35におけるフレーム352内の貼付領域S上に、間隔を空けてマトリクス状に並べて貼着される。このような複数の載置部35が、図7に示すように、トレイ34の載置面34aに搭載される。
成膜装置1におけるチャンバ20の真空室21内は、排気部23によって排気して減圧することによりあらかじめ真空となっている。複数のトレイ34は、ロードロック部60の搬送手段により、真空室21内を真空に維持した状態で、チャンバ20内に順次搬入される。回転テーブル31は、空の保持部33を、順次、ロードロック部60からの搬入箇所に移動させる。保持部33は、搬送手段により搬入されたトレイ34を、それぞれ個別に保持する。このようにして、図4及び図5に示すように、成膜対象となる電子部品10を搭載したトレイ34が、回転テーブル31上に全て載置される。
以上のように成膜装置1に導入された電子部品10に対する成膜処理を説明する。なお、以下の動作は、成膜処理部40A、40B、40Cによって、電子部品10の表面に、電磁波シールド膜13を形成する例である。電磁波シールド膜13は、図17及び図18に示すように、下地層131、シールド層132、保護層133を積層することにより形成される。電子部品10に直接形成される下地層131は、SUSの層であり、モールド樹脂、NiFeとの密着度を高める層である。中間のシールド層132は、NiFeの層であり、電磁波を遮蔽する機能を有する層である。最上層の保護層133は、SUSの層であり、NiFeの錆等を防ぐ保護層である。なお、シールド層として、他の材料、例えば、Cuを成膜処理部40Dによって積層してもよい。
まず、回転テーブル31が回転を開始して、所定の回転速度に達する。保持部33に保持された電子部品10は、搬送経路P上を円を描く軌跡で移動して、処理ユニット5における筒形電極51の開口部51aに対向する位置を通過する。処理ユニット5では、プロセスガス導入部55から筒形電極51にプロセスガスG2であるアルゴンガスを導入し、RF電源56から筒形電極51に高周波電圧を印加する。高周波電圧の印加によってアルゴンガスがプラズマ化され、電子、イオン及びラジカル等が発生する。プラズマはアノードである筒形電極51の開口部51aから、カソードである回転テーブル31へ流れる。プラズマ中のイオンが開口部51aの下を通過する電子部品10の表面に衝突することで、表面が洗浄および粗面化される。そして、表面処理部50による表面処理時間が経過したら、表面処理部50を停止する。つまり、プロセスガス導入部55からのプロセスガスG2の供給、RF電源56による電圧の印加を停止する。
次に、成膜処理部40Bのガス供給部25は、スパッタガスG1を、ターゲット41の周囲に供給する。保持部33に保持された電子部品10は、搬送経路P上を円を描く軌跡で移動しているので、スパッタ源4に対向する位置も周期的に通過する。そして、成膜処理部40Bの電源部45が、ターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Bの成膜ポジションM2を通過する電子部品10の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、SUSの層が形成される。このとき、電子部品10は成膜処理部40A、40C、40Dの成膜ポジションM1、M3、M4を通過するが、成膜処理部40A、40C、40Dはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理は行われず、電子部品10は加熱されない。また、成膜ポジションM1、M3、M4以外の非成膜領域Dにおいても(図2、図3参照)、電子部品10は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品10は熱を放出する。
成膜処理部40Bによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Bを停止する。つまり、電源部45によるターゲット41への電力の印加を停止する。そして、成膜処理部40Aの電源部45が、ターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Aの成膜ポジションM1を通過する電子部品10の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、NiFeの層が形成される。この層は、図17に示すように、シールド層132の一部を構成する第1のシールド層132aとなる。
図16に示すように、電子部品10は、定着磁束Lt1を通過して、成膜領域Cから非成膜領域D(図2、図3参照)に移動することにより、堆積した成膜材料であるNiFeの磁化方向が、定着磁束Lt1に沿った方向となって定着していく。このため、図17に示すように、第1のシールド層132aの容易軸方向Ax1が、定着磁束Lt1に沿った方向に揃った状態で形成される。
このとき、電子部品10は成膜処理部40B~40Dの成膜ポジションM2~M4を通過するが、成膜処理部40B~40Dはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理が行われず、電子部品10は加熱されない。また、成膜ポジションM2~M4以外の領域においても、電子部品10は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品10は熱を放出する。なお、成膜処理部40B~40Dを通過する際に、成膜処理部40B~40Dの磁性部材110から電子部品10へ漏洩磁界が加えられるけれども、成膜処理部40Aにより定着した膜の磁化方向は変化しない。
成膜処理部40Aによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Aを停止する。つまり、電源部45によるターゲット41への電力の印加を停止する。そして、成膜処理部40Cの電源部45が、ターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Cの成膜ポジションM3を通過する電子部品10の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、NeFiの層が形成される。この層は、図17に示すように、シールド層132の一部を構成する第2のシールド層132bとなる。
図16に示すように、電子部品10は、定着磁束Lt2を通過して、成膜領域Cから非成膜領域D(図2、図3参照)に移動することにより、堆積した成膜材料であるNiFeの磁化方向が、定着磁束Lt2に沿った方向となって定着していく。このため、図17に示すように、第2のシールド層132bの容易軸方向Ax2が、定着磁束Lt2に沿った方向に揃った状態で形成される。この容易軸方向Ax2は、第1のシールド層132aの容易軸方向Ax1と略直交する方向となる。
このとき、電子部品10は成膜処理部40A、40B、40Dの成膜ポジションM1、M2、M4を通過するが、成膜処理部40A、40B、40Dはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理が行われず、電子部品10は加熱されない。また、成膜ポジションM1、M2、M4以外の領域においても、電子部品10は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品10は熱を放出する。なお、成膜処理部40A、40B、40Dを通過する際に、成膜処理部40A、40B、40Dの磁性部材110から電子部品10へ漏洩磁界が加えられるけれども、成膜処理部40Cにより定着した膜の磁化方向は変化しない。
成膜処理部40Cによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Cを停止する。つまり、電源部45によるターゲット41への電力の印加を停止する。
また、上記と同様に、成膜処理部40Aによる成膜を行うことにより、図17に示すように、第2のシールド層132bに重ねて第3のシールド層132cを形成する。第3のシールド層132cの容易軸方向Ax3は、上記のように、第1のシールド層132aと平行となるため、第2のシールド層132bの容易軸方向Ax2に略直交する。なお、さらに、同様の成膜を繰り返すことにより、3層より多いシールド層を、容易軸方向が互いに略直交するように重ねて形成することもできる。
そして、上記のように、成膜処理部40Bによる成膜を行うことにより、保護層133を形成する。これにより、図17及び図18に示すように、電子部品10の天面12aに、SUSの下地層131、NiFeのシールド層132、SUSの保護層133が積層された電磁波シールド膜13が形成される。なお、図17及び図18では図示を省略しているが、図1に示すように、電子部品10の側面12bにも、電磁波シールド膜13が形成される。
以上のような成膜処理の間、回転テーブル31は回転を継続し電子部品10を搭載したトレイ34を循環搬送し続ける。そして、成膜処理が完了した後、電子部品10を搭載したトレイ34は、回転テーブル31の回転により、順次、ロードロック部60に位置決めされ、搬送手段により、外部へ搬出される。さらに、図7に示すように、搬出されたトレイ34から載置部35が取り出される。
[作用効果]
(1)本実施形態の成膜装置1は、スパッタリングにより電子部品10の表面に成膜材料を堆積させて成膜する複数の成膜処理部40A~40Dと、電子部品10を搬送することにより、複数の成膜処理部40の少なくとも一つの成膜領域Cと、非成膜領域Dとを繰り返し通過させる搬送部30と、を有し、複数の成膜処理部40A~40Dのうちの少なくとも一つの成膜処理部40Aは、電子部品10の天面12aに沿う第1の方向の定着磁束Lt1を含む磁界Fを形成する磁性部100を有し、他の少なくとも一つの成膜処理部40Cは、電子部品10の天面12aに、第1の方向に交差する第2の方向の定着磁束Lt2を含む磁界Fを形成する磁性部100と、を有する。
このため、搬送部30により電子部品10を搬送しながら、成膜処理部40Aによって一方向の容易軸方向Ax1の第1のシールド層132aを形成した後、成膜処理部40Cによって容易軸方向Ax1に交差する容易軸方向Ax2の第2のシールド層132bを重ねて形成することにより、互いに交差する容易軸方向Ax1、Ax2を含む電磁波シールド膜13を容易に形成することができる。
(2)電子部品10の天面12aにおいて、第1の方向と第2の方向は略直交している。このため、互いに略直交する容易軸方向Ax1、Ax2を含む電磁波シールド膜13を形成して、シールド効果を高めることができる。
(3)第1の方向と第2の方向は、電子部品10の搬送経路Pに対して略45°である。このため、第1の方向と第2の方向の交差する関係を維持しつつ、磁性部100に対応する成膜領域Cを広く確保することができる。
(4)成膜処理部40Aの磁性部100は、第1の方向に並んだ複数の磁性部材110A、110Bを有し、成膜処理部40Cの磁性部100は、第2の方向に並んだ複数の磁性部材110A、110Bを有する。このため、磁性部材110A、110Bの並び方向を特定の方向に合わせることによって、交差する容易軸方向Ax1、Ax2を含む電磁波シールド膜13を形成する成膜装置1を構成できる。
(5)成膜処理部40A、40Bは、それぞれ複数の磁性部材110A、110Bを、同位相で偏心回転させるモータ120A、120Bを有する。このため、定着磁束Ltの方向を一定に維持することができる。
(6)成膜処理部40A、40Bは、スパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜するスパッタ源4を有し、磁性部100は、スパッタ源4を介して成膜領域Cに漏洩磁界を生じさせる。このため、マグネトロンスパッタ装置の磁性部100を利用して、交差する容易軸方向Ax1、Ax2を含む電磁波シールド膜13を形成する成膜装置1を構成できる。
搬送部30は、電子部品10を円周の軌跡で循環搬送させる。このため、少ないスペースで、成膜領域Cと非成膜領域Dを繰り返し通過させて、交差する容易軸方向Ax1、Ax2を含む電磁波シールド膜13を形成することができる。搬送経路Pに配置された成膜処理部40A~40Dを選択的に切り替えることにより、成膜材料及び容易軸方向Ax1、Ax2の切り替えも容易となる。
磁性部100の漏洩磁界を利用するので、容易軸方向を制御するために新たに磁場印加装置を成膜装置1に追加する必要が無い。また、磁場印加装置の磁場がスパッタ源4の磁性部材100の磁場と干渉することが無いため、成膜レートや膜分布に影響を与えることも無い。
[変形例]
本発明は、上記の態様に限定されるものではなく、以下のような態様も含む。
(1)上記の態様は、複数の磁性部材110A、110Bを第1の方向、第2の方向に並べることにより、磁性部100を構成していた。但し、図19に示すように、成膜処理部40Aのスパッタ源4の磁性部100として、第1の方向に沿う長尺の磁性部材110Cを用い、成膜処理部40Cのスパッタ源4の磁性部100として、第2の方向に沿う長尺の磁性部材110Cを用いてもよい。
この場合、磁性部材110Cは回転させず、ターゲット41も、磁性部材110Cと相似形の長尺の部材とする。磁性部材110Cとしては、長手方向が第1の方向、第2の方向に沿うトラック形状、楕円形状等の永久磁石である磁石114、115を同心に配置することができる。磁石114と磁石115の磁極の方向は、上記の磁石111、112と同様である。
このような磁性部材110Cを用いると、図20に示すように、定着磁束Ltを磁石114、115の長手方向に沿った直線状にすることができるので、各シールド層の容易磁化方向を、より正確に一定の方向に揃えることができる。また、モータ120A、120B等の駆動部を省略できる。
さらに、磁性部材としては、永久磁石には限定されない。上記と同様の定着磁束Ltを含む磁界Fを形成できれば、電磁石を用いてもよい。また、複数の成膜処理部40のうち、少なくとも2つの成膜処理部40が、第1の方向及び第2の方向の磁束を含む磁界を形成する磁性部100を有していればよいが、第1の方向に対応する成膜処理部40が、第2の方向に対応する成膜処理部40の一方又は双方が複数あってもよい。
(2)搬送部3が有する搬送手段は、回転テーブル31には限定されない。搬送部3は、保持部33を有する角柱形又円柱形等の回転ドラムを有してもよい。この場合、回転ドラムの外周の側面に保持部33が設けられ、駆動源により軸を中心に回転する。回転ドラムを収容するチャンバ20内には、保持部33に対向する位置に、成膜処理部40等を設ける。また、搬送部3は、コンベアやガイドレール等のインライン式の搬送装置を有してもよい。この場合、搬送装置に保持部33が設けられ、成膜対象は直線状又は曲線状に移動する。このような保持部33に対向する位置に、成膜処理部40等を設ける。保持部33は、無端状に循環搬送されるか又は相反する方向に往復移動させることにより、成膜処理部40に対向する位置を繰り返し通過する。
回転テーブル31、回転ドラム、インライン式の搬送装置等の搬送手段を用いる場合において、容易軸方向を揃えるために磁界を形成する磁性部100は、上記のように成膜処理部40内のマグネトロンスパッタ用の磁石を用いてもよいが、成膜処理部40内においてマグネトロンスパッタ用の磁石とは別に設けられた永久磁石又は電磁石等を用いてもよい。さらに、磁性部100を、成膜処理部40外に設けてもよい。例えば、上記のような搬送手段を挟んで、成膜処理部40に対向する位置に、磁性部100を設けてもよい。このように、磁性部100の配置位置は、種々の態様が適用可能である。成膜対象となる面全体において、磁界の方向を一定とすることは比較的難しいが、成膜領域Cから非成膜領域Dの境界付近の定着磁束Ltの方向のみ制御すればよいので、磁界を形成する磁性部材100を種々の位置に設けたとしても、制御は容易である。
(3)パッケージ12の形態は、例えば、BGA、LGA、SОP、QFP、WLPなど、現在又は将来において利用可能なあらゆる形態が適用可能である。電子部品10が外部との電気的な接続を行う電極11aとしても、例えば、底面に設けるBGA等の半球状のものやLGA等の平面状のもの、側面に設けるSОP、QFPの細板状のもの等が考えられるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる端子が適用可能であり、その形成位置も問わない。また、電子部品10の内部に封止される素子11は、単数であっても複数であってもよい。
(4)成膜対象となるワークは、電子部品10には限定されない。電磁波シールドの機能を必要とする容器、筐体、板状態等、種々の大きさ、形状、材料の部材を、成膜対象とすることができる。
(5)成膜材料については、スパッタリングにより成膜可能な種々の材料を適用可能である。例えば、シールド層としては、Al、Ag、Ti、Nb、Pd、Pt、Zr等を用いることもできる。さらに、シールド層となる磁性体として、Ni、Fe、Cr、Co等を使用することができる。定着磁束Ltの磁束密度の大きさについては、上記は例示に過ぎず、材料によって相違する。例えば、10~100Oe(1~10mT)とすることが一例であるが、本発明はこの範囲には限定されない。さらに、また、下地の密着層として、SUS、Ni、Ti、V、Ta等を用いたり、最表面の保護層として、SUS、Au等を用いることができる。
(6)成膜ポジションにおけるターゲットの数は、2つには限定されない。ターゲットを1つとしても、3つ以上としてもよい。また、成膜ポジションも2つ以下としても、4つ以上としてもよい。
(7)成膜装置における搬送部により同時搬送されるトレイ、電子部品の数、これを保持する保持部の数は、少なくとも1つであればよく、上記の実施形態で例示した数には限定されない。つまり、1つの電子部品が循環して成膜を繰り返す態様でもよく、2つ以上の電子部品が循環して成膜を繰り返す態様でもよい。
(8)エッチングやアッシングによる洗浄や表面処理は、成膜ポジションを有するチャンバとは別のチャンバで行ってもよい。なお、酸化処理を行う場合は、プロセスガスG2として酸素を用いることができる。窒化処理を行う場合は、プロセスガスG2として窒素を用いることができる。
(9)上記の実施形態では、回転テーブル31が水平面内で回転する例としている。但し、搬送部の回転面の向きは、特定の方向には限定されない。例えば、垂直面内で回転する回転面とすることもできる。さらに、搬送部が有する搬送手段は、回転テーブルには限定されない。例えば、ワークを保持する保持部を有する円筒形状の部材が、軸を中心に回転する回転体としてもよい。また、搬送の軌跡は、円周には限定されない。無端状の搬送経路により、循環搬送される態様を含む。例えば、矩形や楕円であってもよいし、クランクや蛇行する経路を含んでいてもよい。搬送経路は、例えば、コンベア等により構成してもよい。さらに、ワークを成膜領域と非成膜領域とを繰り返し通過させることができれば、搬送の軌跡は、上記のような種々の態様の経路を往復搬送させる態様であってもよい。例えば、直線上を往復搬送させる態様であってもよい。
(10)上記の実施形態では、成膜材料を1種ずつ選択的に堆積させて成膜するようにしている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、成膜材料を選択的に堆積させることにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成できればよい。このため、2種以上の成膜材料を同時に堆積させるようにしても良い。例えば、電磁波シールド膜を、Co、Zr、Nbの合金で形成することがある。このような場合に、複数の成膜処理部のうち、Coを成膜材料とする成膜処理部と、Zrを成膜材料とする成膜処理部とNbを成膜材料とする成膜処理部を同時に選択して成膜を行なうようにしても良い。この場合にも、シールド効果が得られる厚さの層が、一定の容易軸方向となるようにするとよい。
そしてこの場合、円周の軌跡のうち、これらの成膜中に成膜ポジションを通過する軌跡よりも、成膜中の成膜ポジション以外の部分を通過する軌跡の方が長くなるように、成膜に用いる成膜処理部を選択する、あるいは、成膜処理部を区切る区切部の配置を設定すると良い。
つまり、1種、または、複数種の成膜処理部を複数個選択して成膜を行なう場合、或いは単一の成膜処理部を選択して成膜を行なう場合のいずれにおいても、円周の軌跡のうち、成膜中に成膜ポジションを通過する軌跡よりも、成膜中の成膜ポジション以外の部分を通過する軌跡の方が長くなるように、成膜に用いる成膜処理部を選択する、あるいは、成膜処理部を区切る区切部の配置を設定すると良い。
(11)以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。