以下、本発明の実施の形態に係る巻線装置及び巻線方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。図に示す直交座標系XYZにおいて、巻線装置が備える加圧板を正面に位置させた場合の、左右方向がX軸、上下方向がZ軸、X軸とZ軸とに直交する方向がY軸である。以下、適宜、この座標系を引用して説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る巻線装置は、電動機又は発電機に使用されるステータのコアの部材、すなわち、鉄心の部材であるコア片に導線を巻線する巻線装置である。コア片は、複数の電磁鋼板が積層されることで形成されているため、電磁鋼板と電磁鋼板との間に微小な空間が生じやすく、その結果、コア片に巻回された導線が緩みやすい。そこで、この巻線装置では、巻回された導線の緩みを防止するため、電磁鋼板の積層方向を鉛直に向けてコア片を保持する保持機構と、その状態のコア片を加圧する加圧機構と、を備える。まず図1-図3を参照して、巻線装置が巻線するコア片の構成について説明する。続いて、図4-図6を参照して、巻線装置の構成について説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る巻線装置が巻線するコア片100A-100Cの平面図である。図2は、図1に示すII-II切断線の断面図である。図3は実施の形態1に係る巻線装置が巻線するコア片100で組み立てられたステータ200の平面図である。なお、図1及び図2では、位置関係を示すため、3つのコア片に別々の符号100A-100Cを付している。これに対して、図3では、全てのコア片に同じ符号100を付している。以下の説明では、コア片を総称する場合、符号100を用いて説明し、コア片の位置関係を説明する場合、符号100A-100Cを用いて説明する。
巻線装置が巻線するコア片100は、図1に示すように、他のコア片100と連結されている。そして、コア片100それぞれは、図1及び図2に示すように、積層された複数の電磁鋼板140で構成されている。
電磁鋼板140それぞれは、図1に示すように、平面視で、T字状に形成されている。詳細には、電磁鋼板140は、外周側C1が円弧状、内周側C2が直線状に形成されたバックヨーク部141と、バックヨーク部141の中央から径方向RDに延在するティース部142と、を有する形状に形成されている。
バックヨーク部141の周方向中央には、後述する巻枠110を嵌めるため、楕円形状の貫通孔143が形成されている。そして、貫通孔143よりも外周側には、導線時に巻線装置が電磁鋼板140を保持するため、外周側から内周側に向かって凹んだ溝144が形成されている。溝144には、巻線装置の後述する拘持部によって拘持可能とするため、内周側に向かって溝幅が拡大する形状に形成されている。
一方、バックヨーク部141は、ティース部142の中心線CLから右方向Rの端部までの長さと中心線CLから左方向Lの端部までの長さが異なる左右非対称の形状に形成されている。図示しないが、電磁鋼板140それぞれは、図1に示すコア片100Bの電磁鋼板140の向きを表向きとすると、ティース部142の中心線CLを揃えた状態で、積層方向Sに向けて、表向き、裏向き、表向き・・の順序で積層されている。そして、積層された電磁鋼板140それぞれには、バックヨーク部141の周方向両端、かつ中心線CLから等距離だけ離れた位置に、平面視円形状の連結部145Rと145Lが形成されている。
連結部145Rと145Lは、プレス加工により、積層方向Sと反対側に電磁鋼板140が凸状、かつ円筒状に曲げられることで形成された、凹部146Lと凸部147Lで構成されている。
連結部145Lは、図2に示すように、積層方向Sと反対側から順に、コア片100Cの電磁鋼板140に形成された凹部146Lと、この凹部146Lに挿入され、コア片100Bの電磁鋼板140に形成された凸部147Lと、コア片100Bの電磁鋼板140に形成された凹部146Lと、この凹部146Lに挿入され、コア片100Cの電磁鋼板140に形成された凸部147Lと、・・で構成されている。これにより、連結部145Lは、コア片100Bとコア片100Cを連結している。連結部145Lは、円筒状の凹部146Lと凸部147Lで構成されるため、コア片100Bは、コア片100Cに対して回動可能である。
連結部145Rは、図示しないが、連結部145Lと同様に、コア片100Bの電磁鋼板140の凹部146L、コア片100Aの電磁鋼板140の凸部147L、コア片100Bの電磁鋼板140の凹部146L、コア片100Aの電磁鋼板140の凸部147L・・で構成されている。これにより、連結部145Rは、コア片100Aとコア片100Bを連結している。連結部145Rも、円筒状の凹部146Lと凸部147Lで構成されるため、コア片100Aは、コア片100Bに対して回動可能である。
コア片100は、図3に示すように、9つ連結されている。そして、コア片100それぞれには、絶縁材料で形成された巻枠110がバックヨーク部141の貫通孔143に装着される。コア片100には、他のコア片100と連結され、かつ巻枠110が装着された状態で、巻線装置によって導線120が巻回される。そして、導線120が巻回されたコア片100を導線120が巻回された他のコア片100に対して回動させて、円環状に配置することで、ステータ200が形成される。
次に、図4-図6を参照して、連結されたコア片100に導線120を巻線する巻線装置の構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る巻線装置1Aの正面図である。図5は、図4に示すV-V切断線の断面図である。図6は、図4に示すVI-VI切断線の断面図である。なお、図4では、理解を容易にするため、巻線装置1Aが備えるフライヤ40、姿勢変換板12、押さえ板61、62、姿勢変換板51を省略している。
巻線装置1Aは、図4-図6に示すように、コア片100を搬入する搬入機構10と、搬入されたコア片100を保持する保持機構20と、保持機構20に保持されたコア片100を加圧する加圧機構30と、コア片100に導線120を巻回するフライヤ40と、保持機構20から搬出する搬出機構50と、で構成されている。
搬入機構10は、互いに連結する複数のコア片100を保持機構20に搬入する機構である。搬入機構10は、図6に示すように、複数のコア片100を保持機構20に搬送する搬送部11と、複数のコア片100のうち、保持機構20まで搬送されたコア片100を保持機構20に保持される姿勢に変換する姿勢変換板12と、で構成されている。
搬送部11は、保持機構20よりも-X側かつ-Y側に配置されている。搬送部11は、コア片100のティース部142をバックヨーク部141よりも-X側に位置させた状態で、コア片100を+Y方向へ搬送する。
姿勢変換板12は、ティース部142の-X壁に嵌合可能な+X壁を有する。姿勢変換板12は、図示しない、電動式又はエア式シリンダを備える駆動部によって、XY平面に平行かつ+X方向へ移動されることで、+X壁を、搬送部11の+Y端まで搬送されたコア片100のティース部142の-X壁に嵌合させる。これにより、+Y端まで搬送されたコア片100の姿勢に変換する。姿勢変換板12は、さらに+X方向へ移動して、+Y端まで搬送されたコア片100を保持機構20に押し付ける。
保持機構20は、姿勢変換板12によって押し付けられたコア片100を保持し、保持されたコア片100をフライヤ40で導線120を巻回可能な状態にする機構である。保持機構20は、姿勢変換板12によって姿勢変換されたコア片100が載置される支持板21と、そのコア片100を位置決めする位置決め柱22と、位置決め柱22に位置決めされたコア片100を拘持する拘持部23と、で構成されている。
支持板21は、円板状に形成されている。支持板21の中心には、支持板21を固定する回転軸24が設けられている。また、支持板21の径方向には、姿勢変換板12が配設されている。図示しないが、支持板21は、姿勢変換板12よりも-Z側に配設されている。支持板21は、姿勢変換板12によって位置決め柱22に押し付けられたコア片100が載置される。
また、支持板21は、図4及び図5に示すように、板面がXY平面に平行に延在している。これにより、支持板21は、コア片100が載置されたときに、コア片100の電磁鋼板140をXY平面に平行にして、電磁鋼板140の積層方向をZ方向に向ける。また、支持板21は、加圧機構30の、後述する加圧板33Aよりも-Z側に配設されている。支持板21は、加圧板33Aによってコア片100が加圧されたときに、コア片100の最下層にある電磁鋼板140を支持する。支持板21には、図6に示すように、外周に沿って1対1組の位置決め柱22が6組配設されている。
位置決め柱22は、図示しないが、Z方向に延在している。6組の位置決め柱22のうち、1組の位置決め柱22は、姿勢変換板12によってコア片100が押し付けられた場合に、コア片100に当接する。これにより、この1組の位置決め柱22がコア片100を位置決めする。また、別々の2組の位置決め柱22は、保持機構20の、姿勢変換板12が位置する径方向とは別々の径方向に設けられた押さえ板61、62によって、押し付けられたコア片100に当接する。これにより、別々の2組の位置決め柱22は、コア片100を位置決めする。
拘持部23は、位置決め柱22によって位置決めされたコア片100を拘持する部材である。拘持部23は、上述した1対の位置決め柱22の間に配設されている。そして、拘持部23は、コア片100の溝144に挿入可能、かつ溝144の内壁に係合可能な2つの係合部23A、23Cを有する。
係合部23A、23Cは、図5及び図6に示すように、回転軸24から径方向に延在する柱状部材の先端が、回転軸24へ延在する溝23Gによって2分割された形状に形成されている。係合部23Aと23Cの幅は、図6に示すように、溝144に挿入可能な幅に形成されている。また、係合部23A、23Cは、溝144に挿入されたときに溝144の内壁に係合可能とするため、係合部23Aと23Cとの間隔、すなわち、溝23Gの溝幅が拡大又は縮小可能に設けられている。詳細には、係合部23Aと23Cは、図示しない弾性部材によって溝23Gを狭める方向に付勢されている。そして、溝23Gには、係合部駆動柱23Pが挿通されている。また、図示しないが、係合部駆動柱23Pは、+Z方向に向かって径が太くなる形状に形成されている。
係合部23A、23Cでは、係合部駆動柱23Pが+Z方向に向かって移動することで、溝23Gの溝幅が縮小する。これにより、係合部23Aと23Cの、回転軸24の周方向の幅は、コア片100の溝144よりも小さくなる。その結果、係合部23Aと23Cは、コア片100の溝144に挿入可能な状態となる。以下、この状態を、拘持部23、又は係合部23A、23Cの挿入可能状態という。
また、係合部23A、23Cでは、係合部駆動柱23Pが-Z方向に向かって移動することで、溝23Gの溝幅が拡大する。これにより、係合部23Aと23Cの、回転軸24の周方向の幅は、コア片100の溝144の内壁に係合可能な幅に拡大する。その結果、係合部23Aと23Cは、コア片100の溝144の内壁に係合してコア片100を拘持可能な状態となる。以下、この状態を、拘持部23、又は係合部23A、23Cの拘持可能状態という。なお、本明細書では、拘持とは、係合部23A、23Bが溝144の内壁に係合すると共に、内壁を加圧することで、コア片100を拘束して保持することである。
上述した、係合部23A、23Cを構成する、回転軸24から径方向に延在する柱状部材は、図6に示すように、回転軸24の反対側の径方向にも延在し、その反対側に位置する先端に、係合部23B、23Dで構成される拘持部23を有している。係合部23B、23Dは、係合部駆動柱23Pの+Z方向、又は-Z方向への移動によって、係合部23A、23Cと共に、挿入可能状態、又は拘持可能状態となる。
保持機構20は、係合部23A、23Cを有する拘持部23と、係合部23B、23Dを有する拘持部23と、係合部駆動柱23Pと、の組み合わせを3組、備えている。その結果、保持機構20は、6つの拘持部23を備え、6つのコア片100を拘持可能である。そして、保持機構20では、回転軸24の回転に連動して、2つの拘持部23と、係合部駆動柱23Pと、の組み合わせが回転軸24の周りに回転する。回転軸24は、60°毎回転して、拘持部23を、回転軸24を中心にした時計回りに、-Y方向から、0°、60°、120°、180°、240°、300°の位置に移動させる。ここで、時計回りとは、図6に示す断面視の時計回りのことである。保持機構20には、180°の位置に移動した拘持部23の+Z側に加圧機構30が配設されている。
加圧機構30は、拘持部23に拘持されたコア片100を支持板21に押して加圧する機構である。加圧機構30は、図4に示すように、Z方向に移動可能な移動台31と、移動台31の移動によってZ方向に直動する直動部32と、直動部32に固定され、直動部32が-Z方向に直動した場合に、コア片100を加圧する加圧板33Aと、で構成されている。
移動台31は、Z方向に延在し、駆動源31Aによって回動するボールネジ31Bに螺合されている。移動台31は、駆動源31Aによってボールネジ31Bが一方向又はその逆方向に回動することで、+Z方向又は-Z方向に移動する。移動台31には、連結板31Cによって直動部32が連結している。
直動部32は、Z方向に直線的に延在する案内部32Aに保持されている。直動部32は、移動台31が移動すると、案内部32Aに案内されてZ方向に直線的に移動する。直動部32には、直動部32から+X側に延在する加圧板33Aが固定されている。
加圧板33Aは、図5に示すように、保持機構20の、上述した180°の位置にある拘持部23に拘持されたコア片100よりも+Z側に配置されている。加圧板33Aは、直動部32が-Z側へ移動すると、そのコア片100に当接して、そのコア片100の最上層にある電磁鋼板140を加圧する。コア片100は支持板21に載置されているため、コア片100は、加圧板33Aに加圧されて圧縮される。
フライヤ40は、加圧板33Aに圧縮されたコア片100の巻枠110に導線120を巻回する巻回機構である。フライヤ40は、導線120を供給するノズル41を有する。フライヤ40は、図示しない駆動部よって、コア片100に対してノズル41を移動させ、ノズル41から供給される導線120を巻枠110に巻回する。
図6に戻って、搬出機構50は、フライヤ40によって導線120が巻回されたコア片100を、保持機構20から搬出する機構である。搬出機構50は、保持機構20の拘持部23からコア片100を外すため、コア片100の姿勢を変換する姿勢変換板51と、姿勢変換された複数のコア片100を搬送する搬送部52と、で構成されている。
姿勢変換板51は、上述した、回転軸24を中心にして-Y方向から240°に位置する拘持部23に拘持されたコア片100を拘持部23から外す板である。姿勢変換板51は、保持機構20の支持板21の-Y端近傍に配置されている。そして、姿勢変換板51は、図示しない、電動式又はエア式のシリンダを備える駆動部によって+X方向へ移動して、240°に位置する拘持部23に拘持されたコア片100の一部、又はそのコア片100に連結されたコア片100の一部を押す。これにより、姿勢変換板51は、コア片100の姿勢を変えて、拘持部23からコア片100を外す。姿勢変換板51は、外されたコア片100をさらに+X方向へ押す。
搬送部52は、姿勢変換板51よりも+X側に配置され、姿勢変換板51によって+X方向へ押されたコア片100を受け取って、そのコア片100を-Y方向に搬送する。
次に、図7Aから図12までの図を参照して、巻線装置1Aの動作について説明する。以下の説明では、上述した、回転軸24を中心にして時計回りに、-Y方向から、0°、60°、120°、180°、240°、300°にある拘持部23それぞれの位置を、位置P1、P2、P3、P4、P5、P6と称するものとする。これらの位置のうち、位置P2が、上述した、搬入機構10の姿勢変換板12がコア片100を押し付ける位置である。位置P4が、上述した、加圧板33Aが加圧し、フライヤ40が導線120を巻回する位置である。位置P6が、上述した、搬出機構50の姿勢変換板51がコア片100を外す位置である。
また、以下の説明では、搬入機構10によって3つのコア片100が搬入され、既に搬入された6つのコア片100のうち、4つのコア片100が保持機構20に保持され、2つのコア片100が搬出機構50によって搬出されている状態から説明する。この状態では、保持機構20に保持された4つのコア片100のうち、2つのコア片100に、フライヤ40によって導線120が巻回されている。以下、この状態から、次のコア片100がフライヤ40によって巻回されるまでの、巻線装置1Aの1サイクルの動作を説明する。
図7Aは、連結された9つのコア片100のうち、4つのコア片100に導線120を巻回した巻線装置1AのXY平面断面図である。図7Bは、図7Aに示す巻線装置1AのYZ平面断面図である。図8Aは、図7Aに示す状態から押さえ板61、62、姿勢変換板12、51、加圧板33A及びフライヤ40を後退させたときの巻線装置1AのXY平面断面図である。図8Bは、図8Aに示す巻線装置1AのYZ平面断面図である。図9は、図8Aに示す状態から回転軸24を回転させたときの巻線装置1AのXY平面断面図である。図10Aは、押さえ板61、62、加圧板33A及びフライヤ40を前進させたときの巻線装置1AのXY平面断面図である。図10Bは、図10Aに示す巻線装置1AのYZ平面断面図である。図11は、姿勢変換板12、51を前進させたときの巻線装置1AのXY平面断面図である。図12は、フライヤ40がコア片100を巻回するときの巻線装置1AのXY平面断面図である。なお、図7A、図8A、図9、図10A、図11及び図12のXY平面断面図は、図4に示すVI-VI切断線の断面を示している。また、図7B、図8B及び図10BのYZ平面断面図は、図4に示すV-V切断線の断面を示している。図7Aから図12までの図において、拘持部23に記載された黒丸は、拘持部23が、上述した拘持可能状態にあることを示す。また、拘持部23に記載された白丸は、拘持部23が上述した挿入可能状態にあること、すなわち、コア片100が解放された解放状態にあることを示す。
まず、巻線装置1Aの1サイクルの動作の開始から説明する。図7Aに示す状態では、フライヤ40による導線120の巻回が完了している。詳細には、位置P4にある拘持部23に拘持されたコア片100に導線120が巻回されている。この状態では、位置P1-P6にある拘持部23すべてが拘持可能状態にあり、位置P2-P5にある拘持部23がコア片100を拘持している。また、姿勢変換板12が矢印A1で示す方向に前進して、位置P2にある拘持部23に拘持されたコア片100を押さえている。押さえ板61、62は、矢印A2、A3で示す方向に前進して、位置P3、P5にある拘持部23に拘持されたコア片100を押さえている。図7Bに示すように、加圧板33Aは、矢印A3で示す方向、すなわち、-Z方向に移動して、位置P4の拘持部23が拘持するコア片100を加圧している。一方、図7Aに示すように、姿勢変換板51は、矢印A4に示す方向に前進して、位置P6にある拘持部23からコア片100を外している。以下、この状態を、巻回完了状態という。なお、この状態は、拘持部23がコア片100を拘持した、後述する保持工程後の状態である。
次に、巻線装置1Aは、巻回完了状態から、姿勢変換板12、51、押さえ板61、62、及び加圧板33Aを後退させる。詳細には、巻線装置1Aは、図8Aに示すように、姿勢変換板12を矢印A5で示す方向に後退させて、姿勢変換板12を、位置P2にある拘持部23に拘持されたコア片100から離す。また、巻線装置1Aは、押さえ板61、62を矢印A6、A7で示す方向に後退させて、押さえ板61、62を、位置P3、P5にある拘持部23に拘持されたコア片100から離す。図8Bに示すように、巻線装置1Aは、加圧板33Aを、矢印A8で示す方向、すなわち、+Z方向に移動させて、位置P4の拘持部23が拘持するコア片100の加圧を解除する。このとき、巻線装置1Aは、フライヤ40を矢印A9で示す方向に移動させて、フライヤ40をコア片100から離れた退避位置に移動させる。巻線装置1Aは、図8Aに示すように、姿勢変換板51を矢印A10に示す方向に後退させて、姿勢変換板51をコア片100から離す。以下、この工程を、加圧解除工程という。
次に、加圧解除工程後、巻線装置1Aは、回転軸24を時計回り、すなわち、図9に示す矢印A11方向に60°回転させる。これにより、位置P1-P6にある拘持部23を位置P2-P6、P1に移動させて、位置P2-P5の拘持部23に拘持されたコア片100を搬出機構50側へ移動させる。以下、この工程を、回転工程という。
次に、回転軸24を回転させた後、巻線装置1Aは、押さえ板61、62、及び加圧板33Aを前進させる。詳細には、巻線装置1Aは、図10Aに示すように、押さえ板61、62を、図7Aの場合と同じ矢印A2、A3方向に前進させて、押さえ板61、62で、位置P3、P5にある拘持部23に拘持されたコア片100を押さえる。また、巻線装置1Aは、加圧板33Aを、図7Aの場合と同じ矢印A3方向に前進させて、位置P4の拘持部23が拘持するコア片100を加圧する。これにより、コア片100が圧縮されて、導線120を巻回可能な状態となる。このため、巻線装置1Aは、図10Bに示すように、フライヤ40を矢印A12方向、すわなち、コア片100側に移動させて、フライヤ40を巻回可能状態にする。以下、この工程を、加圧工程という。
加圧工程に続いて、巻線装置1Aは、姿勢変換板12、51を前進させる。詳細には、図11に示すように、巻線装置1Aは、位置P1、P4以外の位置にある拘持部23を挿入可能状態、すなわち、解放状態にする。この状態で、巻線装置1Aは、姿勢変換板12を、図7Aの場合と同じ矢印A1で示す方向に前進させて、コア片100を姿勢変換板12で位置P2の拘持部23と位置決め柱22に押し付ける。これにより、コア片100の姿勢が拘持部23に拘持可能な姿勢に変換される。このとき、姿勢変換板12をXY平面に平行に前進させる。これにより、コア片100がXY平面、すなわち、水平方向に延在する支持板21に載置された状態のまま、Z方向に延在する位置決め柱22に押し付けられる。その結果、コア片100の電磁鋼板140の板面がXY平面に平行かつ積層方向がZ方向に向いた状態となる。また、巻線装置1Aは、姿勢変換板51を、図7Aの場合と同じ、矢印A4に示す方向に前進させて、位置P6にある拘持部23からコア片100を外す。
次に、姿勢変換板12、51を前進させた後、巻線装置1Aは、図12に示すように、位置P1-P6にあるすべての拘持部23を拘持可能状態にする。これにより、位置P2-P5にある拘持部23がコア片100を拘持する。このとき、位置P2にある拘持部23は、コア片100を、上述した、電磁鋼板140の板面がXY平面に平行かつ積層方向がZ方向に向いた状態のままで、拘持する。以下、この工程を、保持工程という。
位置P2-P5にある拘持部23がコア片100を拘持すると、巻線装置1Aは、フライヤ40を動作させて、位置P4の拘持部23に拘持されたコア片100に導線120を巻回する。以下、この工程を巻回工程という。
以上の動作により、巻線装置1Aの1サイクルの動作が終了する。巻線装置1Aは、このサイクルを繰り返して、9つのコア片100全てに導線120を巻回する。
なお、上記では、加圧工程後の、すべての拘持部23を拘持可能状態にした後に巻回工程を行っているが、巻回工程は、加圧工程後かつ加圧解除工程前に行えばよく、加圧工程後に姿勢変換板12、51を前進させた状態で、行ってもよい。また、加圧工程後、保持工程を行っているが、逆に保持工程の後、加圧工程を行ってもよい。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る巻線装置1Aでは、拘持部23がコア片100を、電磁鋼板140の積層方向をZ方向に向けた状態で、すなわち、積層方向を鉛直方向に向けた状態で、拘持する。このため、電磁鋼板140の間に微小な隙間が生じにくい。
さらに、加圧機構30が備える加圧板33Aは、コア片100を-Z方向に、すなわち、電磁鋼板140の積層方向に加圧する。このため、電磁鋼板140が積層方向に圧縮変形される。その結果、導線120のテンションによる圧縮変形を抑制することができる。この状態で、フライヤ40がコア片100に導線120を巻回するため、巻回された導線120が緩みにくい。また、巻乱れが発生しにくい。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る巻線装置1Bは、加圧板33Bを押圧する押圧部34を備えている。以下に、図13及び図14を参照して実施の形態2に係る巻線装置1Bの構成を説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成について説明する。
図13は、実施の形態2に係る巻線装置1Bの正面図である。図14は、図13に示すXIV-XIV切断線の断面図である。なお、図13では、理解を容易にするため、押圧部34が備える、+X側に位置する回動軸及び駆動部を省略している。これらの構成は、-X側に位置する回動軸34B及び駆動部34Cと同じである。このため、以下の説明では、-X側に位置する回動軸34B及び駆動部34Cを説明し、+X側に位置する回動軸及び駆動部の説明を省略する。
図13に示すように、巻線装置1Bは、支持板21よりも+Z側かつ正面側に配設された加圧板33Bと、加圧板33Bの+Z端を-Z方向に押圧する押圧部34と、を備えている。
加圧板33Bは、長手方向がZ方向に延在する矩形状に形成されている。そして、図14に示すように、加圧板33Bは、拘持部23の両側に2つずつ設けられている。
押圧部34は、図13に示すように、加圧板33Bよりも+Z側に一端が位置する押圧板34Aと、加圧板33Bを回動可能に支持する回動軸34Bと、加圧板33Bを回動させる駆動部34Cと、で構成されている。
押圧板34Aは、正面視矩形状に形成されている。そして、押圧板34Aの長手方向の一端は、加圧板33Bの一端面、すなわち、+Z端面まで延在している。押圧板34Aの長手方向の一端は、図14に示すように、実施の形態1で説明した位置P4にある拘持部23の両側の加圧板33Bまで延在している。図13に戻って、押圧板34Aの長手方向の中間部は、回動軸34Bに回動可能に支持されている。押圧板34Aの長手方向の他端は、駆動部34Cと接続されている。
回動軸34Bは、加圧板33Bの+Z端とX方向に並び、加圧板33Bの+Z端と同じZ座標に配設されている。一方、駆動部34Cは、ピストンをZ方向に伸縮させる電動式又はエア式のシリンダで構成されている。図示しないが、ピストンには、押圧板34Aの長手方向の他端が接続されている。
押圧板34Aは、駆動部34Cによって他端がZ方向に移動することで、回動軸34Bを中心に回動する。詳細には、押圧板34Aの一端は、駆動部34Cによって押圧板34Aの他端が+Z方向に移動することで、-Z方向に移動する。その結果、押圧板34Aは、加圧板33Bの+Z端面に当接して、加圧板33Bを-Z方向に押す。これにより、加圧板33Bは、実施の形態1で説明した位置P4にある拘持部23によって拘持されたコア片100を加圧する。
押圧板34Aでは、長手方向の一端から回動軸34Bの中心までの長さL1が、回動軸34Bの中心から押圧板34Aの長手方向の他端にある駆動部34Cとの接続位置までの長さL2よりも短い。このため、押圧板34Aでは、駆動部34Cの、押圧板34Aの長手方向の他端を+Z方向に移動させる力が、より強い力に変換されて、押圧板34Aの長手方向の一端に伝えられる。その結果、加圧板33Bを強い力で押すことができる。
なお、加圧板33Bは、実施の形態1と-Z方向に移動させる構成が異なるだけで、実施の形態1で説明した加圧板33Aと同じ動作をする。このため、実施の形態2では、巻線装置1Bの動作の説明を省略する。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る巻線装置1Bは、加圧板33Bを押圧する押圧部34を備え、押圧部34は、駆動部34Cの+Z方向に移動させる力をより強い力に変換する押圧板34Aを有している。このため、巻線装置1Bは、コア片100をより強い力で加圧して、巻回された導線120をより緩みにくくすることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る巻線装置1Cは、加圧板33Cを-Z方向に案内することで、加圧板33Cを-Z方向に押圧する押圧部35を備えている。以下に、図15を参照して実施の形態3に係る巻線装置1Cの構成を説明する。実施の形態3では、実施の形態1及び2と異なる構成について説明する。
図15は、実施の形態3に係る巻線装置1Cの正面図である。なお、図15では、理解を容易にするため、押圧部35が備える、+X側に位置する連結部、駆動部、及び直動部を省略している。これらの構成は、-X側に位置する連結部35B、駆動部35C、及び直動部35Dと同じである。このため、以下の説明では、-X側に位置する連結部35B、駆動部35C、及び直動部35Dを説明し、+X側に位置する連結部、駆動部、及び直動部の説明を省略する。
図15に示すように、巻線装置1Cが備える押圧部35は、X方向に移動可能な移動板35Aと、移動板35Aに固定された連結部35Bと、連結部35Bによって移動板35Aと連結された駆動部35Cと、移動板35AをX方向に直動させる直動部35Dと、で構成されている。
移動板35Aは、加圧板33Cの一端面、すなわち、+Z端面の、X方向に配設されている。移動板35Aの加圧板33C側の端部には、+Z方向に向かって+X方向に傾斜する形状に形成された案内部350が設けられている。
これに対して、加圧板33Cの+Z端面にも、同方向に傾斜する傾斜部330が設けられている。ここで、加圧板33Cは、傾斜部330が設けられていることを除いて、実施の形態2で説明した加圧板33Bと同じ構成である。このため、加圧板33Cの構成の説明は省略する。
連結部35Bは、移動板35Aの+Z壁に固定されている。連結部35Bの-X壁には、駆動部35Cが有するピストンが連結されている。
駆動部35Cは、ピストンをX方向に伸縮させる電動式又はエア式のシリンダで構成されている。駆動部35Cは、ピストンを伸縮させることで、連結部35BをX方向に移動させる。これにより、駆動部35Cは、連結部35Bを介して、移動板35AをX方向に移動させる。
直動部35Dは、駆動部35CによってX方向に移動される移動板35AをX方向に案内する。
押圧部35では、-X側にある移動板35Aが+X方向に移動することで、加圧板33Cの+Z端面に当接する。また、+X側にある移動板35Aが-X方向に移動することで、加圧板33Cの+Z端面に当接する。このとき、移動板35Aの案内部350が加圧板33Cの傾斜部330を-Z方向に案内する。これにより、移動板35AのX方向への移動が加圧板33CのZ方向への移動に変換される。また、加圧板33Cは、移動板35AのX方向への移動距離に応じた距離だけZ方向へ移動する。
なお、加圧板33Cは、実施の形態1と加圧板33Cを-Z方向に移動させる構成が異なるだけである。このため、実施の形態1で説明した加圧板33Aと同じ動作をする。実施の形態3では、巻線装置1Cの動作の説明を省略する。
以上のように、本発明の実施の形態3に係る巻線装置1Cでは、移動板35Aに、X方向に移動可能であると共に、X方向に移動した場合に、加圧板33CをZ方向に案内する案内部350が設けられている。案内部350が移動板35AのX方向の移動を加圧板33CのZ方向の移動に変換するため、実施の形態1と比較して、巻線装置1CをZ方向に小型化することができる。
(実施の形態4)
実施の形態4に係る巻線装置1Dは、加圧板33Cを-Z方向に引っ張る引張部36を備えている。以下に、図16及び図17を参照して実施の形態4に係る巻線装置1Dの構成を説明する。実施の形態4では、実施の形態1-3と異なる構成について説明する。
図16は、実施の形態4に係る巻線装置1Dの正面図である。図17は、図16に示すXVII-XVII切断線の断面図である。
図16に示すように、巻線装置1Dが備える引張部36は、位置決め柱22の、-Z端面の側に設けられた係止片36Aと、係止片36Aに係止可能に形成され、係止片36Aが係止したときに、-Z方向へ移動する係止板36Bと、で構成されている。
係止片36Aは、位置決め柱22の-Z端よりも太い外径を有する円柱状に形成されている。
これに対して、係止板36Bには、図16及び図17に示すように、回転軸24が回転して、位置決め柱22が図示しない拘持部23と共に位置P4まで回転したときに、係止片36Aが挿通可能な溝36Cが形成されている。詳細には、図示しないが、溝36Cは、Z方向視で、円弧状に延在している。そして、溝36Cは、図17に示すように、逆T字状の断面形状を有する。溝36Cの+Z側にある開口は、位置決め柱22の-Z端よりも大きい。また、溝36Cは、係止片36Aを係止可能にするため、+Z側で溝幅が小さく、-Z側で溝幅が大きい。
係止板36Bは、係止板36BをZ方向に移動させる駆動部36Dに接続されている。駆動部36Dは、係止板36Bに接続されたピストンをZ方向に伸縮させる電動式又はエア式のシリンダで構成されている。係止板36Bは、駆動部36Dが有するピストンによってZ方向に移動する。係止板36Bは、上述した、位置決め柱22が図示しない拘持部23と共に位置P4まで回転したときに、駆動部36Dによって-Z方向に移動されて、係止片36Aを-Z方向に引っ張る。
一方、係止片36Aが形成された位置決め柱22のZ方向の中間部には、加圧板33Dが設けられている。
加圧板33Dは、図示しない拘持部23よりも+Z側に設けられている。そして、加圧板33Dは、係止片36Aが係止板36Bによって-Z方向に引っ張られた場合に、拘持部23に拘持されたコア片100を加圧する。
なお、加圧板33Dは、実施の形態1と加圧板33Dを-Z方向に移動させる構成が異なるだけである。このため、実施の形態1で説明した加圧板33Aと同じ動作をする。実施の形態4では、巻線装置1Dの動作の説明を省略する。
以上のように、本発明の実施の形態4に係る巻線装置1Dは、加圧板33Dが設けられた位置決め柱22を-Z方向に引っ張る引張部36を備えている。引張部36は、位置決め柱22の-Z端に形成された係止片36Aを-Z方向に移動させる係止板36Bを有するだけであるため、実施の形態1と比較して、巻線装置1Dが+Z方向に大型化しない。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態1では、コア片100が9つ連結している。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、コア片100が積層された複数の電磁鋼板140を備えていればよく、複数のコア片100が連結していなくてもよい。
実施の形態1では、コア片100が備える電磁鋼板140に、巻枠110を装着するための貫通孔143が形成されている。しかし、本発明では、貫通孔143の有無は任意であり、巻枠110の装着も任意である。コア片100に絶縁材料を介して導線120が巻回可能であればよい。
実施の形態1-4では、保持機構20がコア片100を拘持する拘持部23を有している。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、保持機構20が積層された複数の電磁鋼板140を備えるコア片100を、電磁鋼板140の積層方向を鉛直にした状態で保持すればよい。例えば、電磁鋼板140に形成された溝144に替えて、電磁鋼板140に突起が形成され、電磁鋼板140の積層方向を鉛直にした状態で、保持機構20がその突起を保持してもよい。
また、実施の形態1-4では、加圧機構30が加圧板33A-33Dを有している。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、加圧機構30が保持機構20に保持されたコア片100を、コア片100が備える電磁鋼板140の積層方向に加圧すればよい。このため、加圧板33A-33Dの形状は、板状に限定されない。例えば、加圧機構30が加圧板33A-33Dの替わりに、柱状の加圧柱を有してもよい。