以下、ここに開示するポンプ及びポンプシステムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、ポンプ及びポンプシステムの一例である。図1は、ポンプシステムの構成を概念的に例示する図である。
ポンプシステム20は、本実施形態では、二台の水中ポンプ1が、貯留槽21の底面に設置されている。後述するように、二台の水中ポンプ1は、基本的には、貯留槽21内における略同じ高さ位置に設置されるが、二台の水中ポンプ1の設置高さが異なることも起こり得る。
本実施形態において、貯留槽21は、内部に水(汚水)が流入して貯留される合併浄化槽や排水処理槽であるが、貯留槽は、これらに限らず、水が貯留されかつ、排水が必要な槽であれば、どのようなものであってもよい。ポンプシステム20は、後述するように、貯留槽21内の水位に応じて、水中ポンプ1が起動をすることによって、貯留槽21内の水を貯留槽21外へ排出する。
二台の水中ポンプ1は同じものであるので、以下では、1つの水中ポンプ1の構成のみを説明する。また、二台の水中ポンプ1について区別するときには、一方を水中ポンプ1Aといい、他方を水中ポンプ1Bという。
図2は、水中ポンプ1の構成を示している。図2に示すように、水中ポンプ1のポンプ本体1aは、モータ2を収容する金属製のモータケーシング3と、このモータケーシング3の上ケーシング部3aの上側を覆うように上ケーシング部3aに装着された樹脂製のモータカバー5と、ポンプ本体1aの最下部に位置して不図示の羽根車を収容する樹脂製のポンプケーシング6と、モータケーシング3とポンプケーシング6との間に配置され、内部に潤滑油を収容する油室を構成する油室ハウジング7とを備えている。
前記モータ2は、駆動軸2bを含むロータ部2aと、このロータ部2aの外周側を囲むように配設されたステータ部2cとを有している。駆動軸2bは、油室ハウジング7と上ケーシング部3aとにそれぞれ軸受8を介して上下方向に軸心回りに回転自在に支持されている。駆動軸2bの下部は、油室ハウジング7を上下方向に貫通してポンプケーシング6まで延びて、その下端部に前記羽根車が装着されている。
ポンプケーシング6の下面には、ポンプケーシング6内に水を吸い込むための吸込み口6aが設けられており、ポンプケーシング6の上面には、吐出管19が接続される吐出口が設けられている。また、ポンプケーシング6の下面における吸込み口6aを除く部分には、水中ポンプ1を貯留槽21の底面に設置するための複数の脚6cが設けられており、これら脚6cにより、吸込み口6aは貯留槽21の底面から僅かに離れた高さ位置に位置している。
モータ2が駆動をすることによって水中ポンプ1が起動すると、前記羽根車が回転し、これにより、貯留槽21内の水が吸込み口6aからポンプケーシング6内に吸い込まれ、この吸い込まれた水が吐出口からポンプケーシング6の外側へ吐出される。吐出口には、貯留槽21の外側へ延びる吐出管19が接続されており、この吐出管19を介して、貯留槽21内の水が貯留槽21外へ排出されることになる(図1参照)。
前記上ケーシング部3aの上面には、回路基板11が取り付けられている。この回路基板11は、プリント基板からなり、この回路基板11上に、コントローラ12やその他の電装品を含む回路部品と、後述の水位センサ10とが実装されている。回路基板11には、水中ポンプ1の外部の電源からモータ2等に電力を供給する電源ケーブル9が接続されており、この電源ケーブル9は、モータカバー5を貫通して上方へ延びている。
ポンプ本体1aには、貯留槽21内の水位を検知するように構成された水位センサ10が設けられている。本実施形態では、水位センサ10は、静電容量型水位センサであって、高さ位置の異なる三つの電極10a、10b、10cを有している。三つの電極10a、10b、10cは、水に浸漬したときに、水位検知信号を出力する2つの電極10a、10bと、この2つの電極10a、10bのそれぞれに対するアースとして機能する接地電極10cとを構成している。2つの電極10a、10bは、ポンプ本体1aの上部に配置されており、ポンプ本体1aに取り付けられる電極セット13を構成している。接地電極10cは、この実施形態では、金属製のモータケーシング3によって構成されている。
図3は、水位センサ10を構成する電極セット13を示している。電極セット13を構成する二つの電極10a、10bのうちの一方である上部電極10aは、上方に向けて延びる電極棒14として形成されている。一方、二つの電極10a、10bのうちの他方である下部電極10bは、上部電極10aよりも下方に固定されかつ、上部電極10aに対して電気的に絶縁されている第2電極22と、導電性を有する部材から構成され、電極セット13をポンプ本体1aの上部に固定する電極固定具18とから構成されている。
詳しくは、図3に示すように、電極セット13は、絶縁部材13bと、絶縁部材13bの上端面から上方に向かって延びる電極棒14と、この電極棒14に対して絶縁部材13bを挟んで下方に固定された第2電極22と、電極棒14及び第2電極22のそれぞれに接続された導線15、15と、これらの部材をポンプ本体1aに固定するための電極固定具18とを備えている。
上部電極10aは、貯留槽21内の水位が上昇し、電極棒14の下部の少なくとも一部が水に浸漬すると、導線15を介して、コントローラ12へ信号を出力する。上部電極10aは、貯留槽21内の水位が所定の上側水位以上であることを検知するよう構成された上側水位センサ101(図4参照)を構成する。上側水位センサ101は第1水位センサに相当する。
電極セット13をモータカバー5に固定した状態では、第2電極22と電極固定具18との間には、上方に向かって開口しかつ、水が貯留するよう形成された凹部23が設けられている。詳しくは、この凹部23は、水位が低下したときに、水が貯留するように構成されている。電極固定具18は、凹部23に水が貯留したときに、その水を介して、第2電極22に対して電気的に接続されるように構成されている。電極固定具18は、第2電極22に対して電気的に接続された状態にあっては、その第2電極22と共に一体的な下部電極10bとして機能するようになっている。
下部電極10bは、貯留槽21内の水位が上昇し、第2電極22及び電極固定具18の少なくとも一部が水に浸漬すると、導線15を介して、コントローラ12へ信号を出力する。下部電極10bは、貯留槽21内の水位が、前記の上側水位よりも低い所定の下側水位以上であることを検知するよう構成された下側水位センサ102(図4参照)を構成する。下側水位センサ102は第2水位センサに相当する。
ここで、所定の上側水位とは、貯留槽21内への水の流入速度が所定速度(通常生じ得る速度の最大値)以下である場合において、該上側水位で一つの水中ポンプ1を起動しないと、貯留槽21から水が溢れる可能性がある水位よりも低い水位であって、この水位で毎回水中ポンプ1が起動しても水中ポンプ1の起動頻度が頻繁になり過ぎない水位である。
尚、上側水位センサ101及び下側水位センサ102の構成は、前述した上部電極10a及び下部電極10bを有する構成に限らない。上側水位センサ101及び下側水位センサ102は、貯留槽21内の水位が所定の上側水位以上であること、及び、所定の下側水位以上であることを検知することができる構成であれば、どのような構成を採用してもよい。上側水位センサ101及び下側水位センサ102のいずれか一方、又は、双方は、電極を有する静電容量型水位センサではなく、例えばフロート式の水位センサによって構成してもよい。また、水位センサ10は、水中ポンプ1に直接に取り付けられる構成に限らない。
図4は、コントローラ12を含む、水中ポンプ1の制御系の構成を示している。コントローラ12は、周知のマイクロコンピュータをベースとするものであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)等を有し、そのプログラムの実行により、水中ポンプ1を動作させる。コントローラ12は、前述した上側水位センサ101の水位検知信号、及び、下側水位センサ102の水位検知信号のそれぞれを受ける。コントローラ12は、上側水位センサ101及び下側水位センサ102の水位検知信号に基づいて、モータ2に、制御信号を出力する。これにより、モータ2が回転し、水中ポンプ1が運転する、又は、モータ2の回転が停止し、水中ポンプ1が停止する。
コントローラ12は、後述するように、水中ポンプ1の運転に関係する運転継続時間等の情報を記憶する記憶部121、時間を計測するためのカウンタ122、水中ポンプ1の停止に利用するタイマ(遅延回路)123を有している。
このポンプシステム20は、二台の水中ポンプ1が、各々独立して、自動起動及び自動停止をすることによって、結果として、二台の水中ポンプ1が、交互運転を行うよう構成されている。
その実現のために、コントローラ12は、水中ポンプ1を第1モード又は第2モードで起動する。第1モードは、上側水位センサ101により貯留槽21内の水位が上側水位以上であることを検知したことを含む第1起動条件が成立したときには少なくとも水中ポンプ1を起動するモードである。第2モードは、上側水位センサ101による検知状態にありかつ第1起動条件が成立したときには水中ポンプ1を起動せず、第1起動条件に加えて第2起動条件が成立したときに水中ポンプ1を起動するモードである。尚、コントローラ12は、第1モードにおいては、第1起動条件が成立したときだけでなく、第2起動条件が成立したときも、水中ポンプ1を起動する(尚、通常、第1モードにおいては、第1起動条件が成立した時点で、水中ポンプ1が起動する)。
本実施形態では、第1起動条件は、上側水位センサ101が水位を検知している状態(つまり、上側水位センサ101のON状態)が第1所定時間T1継続した、という条件である。第2起動条件は、上側水位センサ101が水位を検知している状態が、第1所定時間T1を超え、第2所定時間T2継続した、という条件である。第2起動条件が成立するときには、第1起動条件も成立していることになる(つまり、第1起動条件に加えて第2起動条件が成立している)。
第1所定時間T1は、上側水位センサ101の上部電極10aが水に浸かり始める際のチャタリングによる誤作動を防止するための時間であって、誤作動を防止することができる範囲でできる限り短いことが好ましい。本実施形態では、一例として、T1=5秒とする。尚、第1起動条件は、上側水位センサ101が水位を検知したことであってもよい。
第2所定時間T2は、貯留槽21内への水の流入速度が前記所定速度以下である場合において、第1モードの一方の水中ポンプ1Aが第1起動条件の成立によって起動した排水動作により、後述の如く第2モードの他方の水中ポンプ1Bにて、上側水位センサ101による前記検知から第2所定時間T2が経過する前に、上側水位センサ101による前記検知がなされなくなる(上側水位センサ101がOFF状態となる)ような時間である。本実施形態では、一例として、T2=12秒とする。
また、コントローラ12は、水位センサ10(具体的には下側水位センサ102)が水位を検知した後、水位センサ10が水位を検知しなくなる度に、水中ポンプ1を起動させたか否かに関わらず、水中ポンプ1のモードを、第1モードと第2モードとの間で切り替える。つまり、第1モードであったときには、次のモードを第2モードに設定し、第2モードであったときには、次のモードを第1モードに設定する。
但し、コントローラ12は、第2起動条件が成立することによって(つまり、上側水位センサ101の検知が第2所定時間T2継続することによって)水中ポンプ1を起動させたときには、該水中ポンプ1の停止後における次のモードを、第1モード及び第2モードの中の一つのモード(第1モード又は第2モード)にランダムに設定する。すなわち、第2起動条件の成立によって起動した水中ポンプ1の停止後における次のモードは、1/2の確率で、第1モード又は第2モードとなる。
また、コントローラ12は、水中ポンプ1の起動後において、下側水位センサ102が水位を検知しなくなった後(下側水位センサ102がOFF状態となった後)、第3の所定条件が成立したときに、該水中ポンプ1を停止させる。
第3の所定条件は、本実施形態では、下側水位センサが水位を検知しなくなった時点から、所定の運転継続時間が経過した、という条件である。運転継続時間は、この構成例においては具体的に、上側水位センサ101が水位を検知しなくなった時点から下側水位センサ102が水位を検知しなくなった時点まで水位低下時間を計測し、計測した水位低下時間を定数倍(例えば4倍)した時間である。この運転継続時間は、水中ポンプ1が停止したときに、貯留槽21内の水位が、吸込み口6aよりも高くてエアロックが発生しない水位であって水中ポンプ1の起動及び停止が頻繁に行われない水位(前記上側水位との差ができる限り大きい水位)になるような時間である。
コントローラ12はさらに、詳細は後述するが、所定のモード固定条件が成立したときには、水中ポンプ1のモードを、第1モード又は第2モードに固定する。二台の水中ポンプ1の検出水位の高さが異なっているときに、二台の水中ポンプ1の内の一方の水中ポンプ1のみが起動を繰り返し、他方の水中ポンプ1が停止し続ける事態を回避する。
次に、図5、図6、図7、図9及び図11に示すフローチャートを参照しながら、ポンプシステム20における各水中ポンプ1の運転制御について説明をする。これらのフローチャートは、各水中ポンプ1のコントローラ12が実行する水中ポンプ1の運転制御に係る。二台の水中ポンプ1が、各々独立して、これらのフローチャートに従い自動起動及び自動停止をすることによって、結果として、二台の水中ポンプ1が、交互運転を行うようになる。
図5のフローは、水中ポンプ1の基本制御に係る。図5のフローは、水中ポンプ1の電源を投入することによってスタートする。電源投入後のステップS51で、コントローラ12は初期制御を行う。初期制御の詳細は、後述する。初期制御が終わると、コントローラ12は、続くステップS52において通常制御を実行する。通常制御は、水中ポンプ1の電源がオンの間、繰り返される。
図6は、通常制御のフローチャートを示している。図6のフローにおける最初のステップS61において、コントローラ12は、モード固定判定を行う。モード固定判定についての詳細は後述するが、水中ポンプ1のモードを固定する場合は、制御プロセスは、ステップS61のサブルーチン内に留まる。制御プロセスがステップS61からステップS62に移行するときは、水中ポンプ1のモードは固定されない。このときに、水中ポンプ1のモードは、第1モード及び第2モードのいずれか一方に設定されている。
ステップS62において、コントローラ12は、下側水位センサ102がON状態にあるか否かを判定する。つまり、下側水位センサ102が水位を検知したか否かを判定する。ステップS62の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS62を繰り返す。ステップS62の判定がYESのときには、続くステップS63でコントローラ12は、上側水位センサ101が水位を検知したか否かを判定する。このステップS63の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS613に移行する。上側水位センサ101が水位を検知したときには、ステップS63の判定がYESになる。ステップS63の判定がYESになれば、制御プロセスはステップS64に移行する。
ステップS613においてコントローラ12は、下側水位センサ102が水位を検知しなくなったか否かを判定する。ステップS613の判定がNOのときには、制御プロセスは、ステップS63に戻る。一方、ステップS613の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS614に進む。
ステップS614においては、水位センサ10が水位を検知したものの、もう一つの水中ポンプ1が起動することにより水位が低下したと考えられる(つまり、空振り動作)。コントローラ12は、水中ポンプ1のモードを切り替える。つまり、今のモードが第1モードであれば、次のモードを第2モードに切り替え、今のモードが第2モードであれば、次のモードを第1モードに切り替える。制御プロセスは、しかる後にステップS61に戻る。
ステップS64において、コントローラ12は、上側水位センサ101がON状態になってからの経過時間T(上側水位センサ101がON状態になったときにカウントを開始したカウンタ122によるカウント時間)がTm(T1又はT2)以上であるか否かを判定する。つまり、水中ポンプ1が第1モードであれば、Tm=T1(つまり、第1所定時間)であり、水中ポンプ1が第2モードであれば、Tm=T2(つまり、第2所定時間(>T1))である。このステップS64の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS610に進む一方、ステップS64の判定がYESであるときには、制御プロセスは、ステップS65に進む。
ステップS610では、コントローラ12は、上側水位センサ101がON状態にあるか否かを判定し、このステップS610の判定がYESであるときには、制御プロセスは、ステップS64に戻る。一方、ステップS610の判定がNOであるとき、つまり、上側水位センサ101のON状態がTm時間継続する前に上側水位センサ101がOFF状態となったとき(つまり、空振り動作)には、制御プロセスは、ステップS612に進む。ステップS612において、コントローラ12は、水中ポンプ1のモードを切り替える。つまり、今のモードが第1モードであれば、次のモードを第2モードに切り替え、今のモードが第2モードであれば、次のモードを第1モードに切り替える。制御プロセスは、しかる後にステップS61に戻る。すなわち、水中ポンプ1の停止中であって、水位センサ10が水位を検知した後、(当該水中ポンプ1とは別の水中ポンプ1が先に起動して水位が低下することにより)水位センサ10が水位を検知しなくなったときには、水中ポンプ1のモードが切り替わる。
ステップS64の判定がYESであるときに進むステップS65では、コントローラ12は、水中ポンプ1を起動する。すなわち、水中ポンプ1は、第1起動条件の成立により(つまり、上側水位センサ101のON状態がT1時間継続したときに)起動するか、又は、第2起動条件の成立により(つまり、上側水位センサ101のON状態がT2時間継続したときに)起動する。尚、第2起動条件の成立により水中ポンプ1を起動する場合は、基本的には第2モードであるが、第1モードである場合もあり得る(第1モードにおいて、何らかの原因により、第1起動条件の成立により水中ポンプ1が起動しなかった場合等)。
次のステップS66で、コントローラ12は、水中ポンプ1が第2起動条件の成立により起動したか否か(つまり、m=2か否か)を判定する。
ステップS66の判定がYESであるとき、つまり水中ポンプ1を第2起動条件の成立により起動させたときには、制御プロセスはステップS68に進んで、コントローラ12は、次のモードを、第1モード又は第2モードにランダムに設定する。制御プロセスは、しかる後にステップS69に進む。一方、ステップS66の判定がNOであるとき、つまり水中ポンプ1を第1起動条件の成立により起動させたときには、制御プロセスは、ステップS67に進む。水中ポンプ1は第1モードであったため、コントローラ12は、次のモードを第2モードに設定する。制御プロセスは、しかる後にステップS69に進む。すなわち、水中ポンプ1を第2起動条件の成立により起動させたときには、水中ポンプ1の今のモードに関わらず、次のモードを、第1モード及び第2モードの中の1つのモードにランダムに設定する。一方、水中ポンプ1を第1起動条件の成立により起動させたときには、次のモードを第2モードに設定する(今のモードは第1モードであるため)。
ステップS69では、コントローラ12は、水中ポンプ1の停止制御を実行する。水中ポンプ1の停止制御についての詳細は、後述する。水中ポンプ1が停止すれば、制御プロセスは、ステップS61に戻る。
ここで、ステップS68のランダム設定について、さらに詳細に説明をする。二台の水中ポンプ1のモードが、共に第2モードであったと仮定する。コントローラ12による制御動作により、二台の水中ポンプ1は第2起動条件が成立することに伴い略同時に起動する。その後、ステップS68で、二台の水中ポンプ1の次のモードが、第1モード又は第2モードにランダムにそれぞれ設定される。これにより、1/2の確率で、一方の水中ポンプ1Aと他方の水中ポンプ1Bとでモードが異なるようになる。また、たとえ同じ第2モードとなったとしても、二台の水中ポンプ1が再び第2起動条件の成立により略同時に起動した後は、二台の水中ポンプ1の次のモードが、第1モード又は第2モードにランダムに設定される。さらに、たとえ二台の水中ポンプ1が同じ第1モードとなったとしても、二台の水中ポンプ1が第1起動条件の成立により略同時に起動した後、二台の水中ポンプ1の次のモードが共に、第2モードになるので、ランダム設定が行われる。遅かれ早かれ、二台の水中ポンプ1のモードが異なるようになる。
こうして二台の水中ポンプ1の起動タイミングが異なるようになれば、以後の起動は、通常、一方の水中ポンプ1Aと他方の水中ポンプ1Bとで交互に生じる。すなわち、一方の水中ポンプ1Aが第1モードに設定され、他方の水中ポンプ1Bが第2モードに設定されているとした場合、水中ポンプ1Aは、上側水位センサ101のON状態がT1時間(5秒)継続したときに(第1起動条件の成立により)、水中ポンプ1Bよりも先に起動する。貯留槽21内への水の流入速度が所定速度以下である場合には、水中ポンプ1Aの起動による排水動作により、水中ポンプ1Bにて、上側水位センサ101のON状態がT2時間(12秒)継続する前に、上側水位センサ101がOFF状態となる(ステップS610の判定がNOとなる)。このため、水中ポンプ1Bは起動することがなく、水中ポンプ1Bのモードが第2モードから第1モードに変更される(ステップS612)。また、水中ポンプ1Aは、ステップS67で、次のモードが第1モードから第2モードになる。この結果、次回は、水中ポンプ1Bが第1モードであるから起動し、水中ポンプ1Aは第2モードであるから起動しないことになる。
また、水中ポンプ1Aの起動後、貯留槽21内への水の流入速度が所定速度よりも大きいために、水中ポンプ1Bにおいて、上側水位センサ101が水位を検知した状態でT2時間継続したときには、水中ポンプ1Bも起動するので、二台の水中ポンプ1の作動により、貯留槽21から水が溢れるのを防止することができる。このようにして水中ポンプ1Bが起動した場合、この水中ポンプ1Bの次のモードは、第1モード又は第2モードにランダムに設定されるので、問題は生じない。すなわち、二台の水中ポンプ1のモードが同じになる可能性はあるが、同じになっても、前記の如く、遅かれ早かれ、二台の水中ポンプ1でモードが異なるようになる。
さらに、使用している間に何らかの異常が生じて二台の水中ポンプ1のモードが同じになったとしても、前記の如く、遅かれ早かれ、二台の水中ポンプ1のモードが異なるようになる。
従って、二台の同じ水中ポンプ1を貯留槽21内に設置する際に、一方の水中ポンプ1Aのモードを他方の水中ポンプ1Bのモードと異ならせるような作業を行う必要がなく、しかも、長期間に亘って二台の水中ポンプ1の自動交互運転を行えるようにすることができる。
以上説明をした、二台の水中ポンプ1の自動交互運転は、上側水位センサ101が検知する水位が、二台の水中ポンプ1の間で同じ、又は、ほぼ同じであれば成立する。しかしながら、二台の水中ポンプ1は、必ずしも同じ高さに設置されるとは限らず、例えば貯留槽21内の底面が傾斜をしているため、上側水位センサ101が検知する水位が二台の水中ポンプ1の間で異なったり、貯留槽21内の底面の設置スペースの関係上、二台の水中ポンプ1を同じ高さに設置することができず、上側水位センサ101が検知する水位が二台の水中ポンプ1の間で、若干、異なったりすることがある。
この水中ポンプ1は、上側水位センサ101が検知する水位が二台の水中ポンプ1の間で異なっていても、二台の水中ポンプ1が、できる限り交互に運転するようにして、二台の水中ポンプ1の運転頻度が均等に近づくように構成している。具体的には、所定のモード固定条件が成立したときに、コントローラ12は、水中ポンプ1のモードを、第1モード又は第2モードに固定する。モード固定条件の成立の有無は、水中ポンプ1の電源を投入した直後(つまり、図5のステップS51の初期制御時)に行うと共に、水中ポンプ1の稼働中、随時(つまり、図6のステップS61のモード固定判定時)行う。
図7は、初期制御に係るフローチャートを例示している。この制御プロセスにおいては先ず、ステップS71において、水中ポンプ1のモードを第2モードにする(つまり、m=2)。続くステップS72において、コントローラ12は、起動時モード固定条件が成立したか否かを判定する。
図8は、起動時モード固定条件の成立について説明をする図である。図8は、ポンプシステム20における二台の水中ポンプ1A、1Bの水位の検知に伴う起動条件の成立状態を説明している。図8における符号81~84はそれぞれ、ポンプシステム20における水中ポンプ1の起動回数(「1回目」~「4回目」)を表している。各回において、横軸は時間の進行(t)を示している。また、Sは、水位センサ10が水位を検知したタイミングを示し、T1及びT2は、上側水位センサ101による水位検知の継続時間を表し、T1時間が経過した三角印(つまり左側の三角印)は、第1起動条件が成立するタイミングを、T2時間が経過した三角印(つまり右側の三角印)は、第2起動条件が成立するタイミングを示している。
ここで、二台の水中ポンプ1A、1Bにおいて、一方の水中ポンプ1Aが、他方の水中ポンプ1Bよりも高い位置に設置されているため、水位センサ10が水位を検知する高さがΔhだけずれていると仮定する。また、貯留槽21内の水位は一定速度で上昇していると仮定する。
二台の水中ポンプ1A、1Bの間における検知水位のずれによって、一方の水中ポンプ1Aの水位センサ10が水位を検知するタイミングは、他方の水中ポンプ1Bの水位センサ10が水位を検知するタイミングよりもΔtだけ遅れることになる。この水位検知タイミングの遅れによって、一方の水中ポンプ1Aにおいて第1起動条件及び第2起動条件が成立するタイミングは、他方の水中ポンプ1Aにおいて第1起動条件及び第2起動条件が成立するタイミングよりもΔtだけ遅れる。
図8において水中ポンプ1A、1Bのモードは、黒の三角印によって表される。水中ポンプ1の電源投入時には、水中ポンプ1A、1Bのモードは第2モードである(ステップS71)。水中ポンプ1A、1Bは、黒の三角印に至ったタイミングで起動する。
符号81に示すように、一方の水中ポンプ1Aの水位センサ10も水位を検知しているが、他方の水中ポンプ1Bの方が、第2起動条件が成立するタイミングが早い。そのため、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。一方の水中ポンプ1Aは、水位の低下によって、第2起動条件が成立せず、起動しない。
初期制御においては、前記と同様に、水位センサ10が水位を検知した後、当該水位センサ10が水位を検知しなくなる度に、第1モードと第2モードとを切り替える。また、第2起動条件が成立したときも、第1モードと第2モードとを切り替える(次のモードをランダムに設定しない)。よって、一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第1モードになる(符号82における左側の黒の三角印参照)。同様に、他方の水中ポンプ1Bの次のモードも、第1モードになる。
次に、符号82に示すように、他方の水中ポンプ1Bは、一方の水中ポンプ1Aよりも先に、第1起動条件が成立する。このときに、他方の水中ポンプ1Bは起動する。一方の水中ポンプ1Aの水位センサ10は水位を検知していない。他方の水中ポンプ1Bの次のモードは、第1モードから第2モードになる(符号83における右側の黒の三角印参照)。一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第1モードのままである(符号83における左側の黒の三角印参照)。
次に、符号83に示すように、他方の水中ポンプ1Bは、水位センサ10が水位を検知するものの、第2モードであるためT2まで待たなければならない。これに対し、一方の水中ポンプ1Aは、水位センサ10の検知タイミングは遅れるものの、第1モードであるため、他方の水中ポンプ1Bよりも先に、第1起動条件が成立して起動する。その結果、他方の水中ポンプ1Bは、水位を検知するものの、起動しない。
他方の水中ポンプ1Bのコントローラ12は、この時点で、モード固定条件が成立したとして、他方の水中ポンプ1Bのモードを第2モードに固定する。これに対し、一方の水中ポンプ1Aのコントローラ12は、水中ポンプ1Aのモードを固定しない。一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第2モードに切り替わる(符号84の右側の黒の三角印参照)。
次に、符号84に示すように、一方の水中ポンプ1Aは第2モードであり、他方の水中ポンプ1Bも第2モードである。従って、1回目と同様に、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。他方の水中ポンプ1Bのモードは第2モードに固定されているため、第2モードのままである。これに対し、一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第1モードに切り替わる。
図示は省略するが、5回目の水中ポンプの起動は、一方の水中ポンプ1Aが第1モードであり、他方の水中ポンプ1Bが第2モードであるため、3回目と同じになる。従って、一方の水中ポンプ1Aが起動をする。
このように、他方の水中ポンプ1Bのモードを第2モードに固定した後は、図8における符号83と符号84とが交互に繰り返される。よって、二台の水中ポンプ1A、1Bの交互運転が実現する。
図7のフローに戻り、図8に示したように、起動時モード固定条件が成立したときには、制御プロセスは、ステップS72からステップS73に進んで、水中ポンプ1のモードを第2モードに固定する。起動時モード固定条件が成立しないときには、制御プロセスは、ステップS73に移行しない。その後、制御プロセスは、図7の初期制御を終了して、図6のステップS61に進む。
図8に示すように、
(1)電源投入時の第2モードにおいて、水位センサ10が水位を検知すると共に第2起動条件が成立することによって水中ポンプ1を起動し(符号81)、
(2)第2モードから切り替わった第1モードにおいて、水位センサ10が水位を検知すると共に第1起動条件が成立することによって水中ポンプ1を起動し(符号82)、
(3)第1モードから切り替わった第2モードにおいて、水位センサ10が水位を検知する一方で、水中ポンプ1を起動することなく、当該水位センサ10が水位を検知しなくなると(符号83)、モードを第2モードに固定する
ことによって、二台の水中ポンプ1の水位の検知高さが異なるときに、交互運転を実現することができる。
尚、図8に示すように、水位検知を三回行うと、モードを固定するか否かが決定されるため、初期制御に係るフローチャートは、電源投入後、3回の水位検知を行う間、行われる。
次に、図9は、ステップS61のモード固定判定制御に係るフローチャートを例示している。この制御プロセスにおいては先ず、ステップS91において、コントローラ12は、水中ポンプ1のモードが(第2モードに)固定されているか否かを判断する。モードが固定されているときには、制御プロセスは、ステップS91からステップS92に進む。モードが固定されていないときには、制御プロセスは、ステップS91からステップS910に進む。
ステップS92でコントローラ12は、下側水位センサ102がON状態にあるか否かを判定する。ステップS92の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS92を繰り返す。ステップS92の判定がYESのときには、続くステップS93でコントローラ12は、上側水位センサ101が水位を検知したか否かを判定する。このステップS93の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS98に移行する。ステップS93の判定がYESになれば、制御プロセスはステップS94に移行する。
ステップS98においてコントローラ12は、下側水位センサ102が水位を検知しなくなったか否かを判定する。ステップS98の判定がNOのときには、制御プロセスは、ステップS93に戻る。一方、ステップS98の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS97に進む。この場合、他方の水中ポンプ1が起動することにより水位が低下したと考えられる(つまり、空振り動作)。
ステップS94において、コントローラ12は、上側水位センサ101がON状態になってからの経過時間TがT2以上であるか否かを判定する(第2モードに固定されているため)。このステップS94の判定がNOであるときには、制御プロセスは、ステップS99に進む。ステップS99においてコントローラ12は、上側水位センサ101が水位を検知しなくなったか否かを判定する。ステップS99の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS94に戻る。一方、ステップS99の判定がNOのときには、制御プロセスは、ステップS97に進む。この場合も、他方の水中ポンプ1が起動することにより水位が低下したと考えられる(つまり、空振り動作)。一方、ステップS94の判定がYESであるときには、制御プロセスは、ステップS95に進み、水中ポンプ1を起動する。
水中ポンプ1の起動後、制御プロセスはステップS96に進み、後述するポンプ停止制御を実行する。その後、制御プロセスは、ステップS97に進んで、固定したモードの解除判定を行う。
ステップS97の解除判定は、以下の2つの条件の少なくとも一方が成立したときに、モードの固定を解除する。
(a)水位センサ10が水位を検知する一方で、水中ポンプ1を起動することなく、当該水位センサ10が水位を検知しなくなる空振り動作を介在しないで、水位センサ10が水位を検知する度に水中ポンプ1を起動することが所定回数連続したとき
(b)水位センサ10が水位を検知する一方で、水中ポンプ1を起動することなく、当該水位センサ10が水位を検知しなくなる空振り動作が所定回数連続したとき
つまり、図8の符号83及び84に示すように、第2モードに固定をした水中ポンプ1Bは、二台の水中ポンプ1が交互運転をしているときには、運転(符号84)と、空振り動作(符号83)とを交互に繰り返す。
前記(a)のように、空振り動作をしないで運転を繰り返しているときには、もう一つの水中ポンプ1Aが運転していないと考えられる。前記(b)のように、空振り動作を繰り返して運転をしていないときには、もう一つの水中ポンプ1Aだけが運転をしていると考えられる。そのため、(a)(b)いずれかの条件が成立したときには、モードの固定を解除して、図6のフローに従って制御を行うことにより、二台の水中ポンプ1が交互に運転することが期待される。
図9のフローに戻り、ステップS97においてモードの固定が解除されたときには、制御プロセスは、ステップS91に戻った後、ステップS910に進み、後述するように、このステップS910においてモードの固定条件が成立しなければ、制御プロセスは、図6のフローのステップS62に進むことになる。
ステップS910において、コントローラ12は、モード固定条件が成立したか否かを判定する。
図10は、水中ポンプ1の稼働中におけるモード固定条件の成立について説明をする図である。図10において、一方の水中ポンプ1Aの水位検知位置と、他方の水中ポンプ1Bの水位検知位置との相対関係は、図8と同じである。
先ず、符号101に示すように、一方の水中ポンプ1Aが第1モードで、他方の水中ポンプ1Bが第2モードであるとする。この場合、一方の水中ポンプ1Aにおいて、第1起動条件が成立することにより、一方の水中ポンプ1Aが起動をする。他方の水中ポンプ1Bは、起動しない(つまり、空振り動作)。
一方の水中ポンプ1A及び他方の水中ポンプ1Bはそれぞれ、モードを切り替える。一方の水中ポンプ1Aは、第1モードから第2モードに切り替わり、他方の水中ポンプ1Bは、第2モードから第1モードに切り替わる。
次に、符号102に示すように、他方の水中ポンプ1Bにおいて、第1起動条件が成立して、他方の水中ポンプ1Bが起動する。このときに、一方の水中ポンプ1Aの水位センサ10は水位を検知していない。一方の水中ポンプ1Aは、起動しない。他方の水中ポンプ1Bの次のモードは、第1モードから第2モードになる。一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第2モードのままである。
次に、符号103に示すように、一方の水中ポンプ1A及び他方の水中ポンプ1Bは共に、第2モードであるため、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。一方の水中ポンプ1Aは起動しない(空振り動作)。
他方の水中ポンプ1Bのコントローラ12は、この時点で、モード固定条件が成立したとして、他方の水中ポンプ1Bのモードを第2モードに固定する。これに対し、一方の水中ポンプ1Aのコントローラ12は、モードを固定しないため、一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第1モードに切り替わる。
次に、符号104に示すように、一方の水中ポンプ1Aは第1モードであり、他方の水中ポンプ1Bは第2モードである。従って、1回目と同様に、一方の水中ポンプ1Aが起動をする。一方の水中ポンプ1Aの次のモードは、第2モードに切り替わる。他方の水中ポンプ1Bのモードは第2モードに固定されているため、第2モードのままである。
図示は省略するが、5回目の水中ポンプの起動は、一方の水中ポンプ1Aが第2モードであり、他方の水中ポンプ1Bが第2モードであるため、3回目と同じになる。従って、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。
このように、他方の水中ポンプ1Bのモードを第2モードに固定した後は、図10における符号103と符号104とが交互に繰り返される。よって、二台の水中ポンプ1A、1Bの交互運転が実現する。
図9のフローに戻り、図10に示したように、モード固定条件が成立したときには、制御プロセスは、ステップS910からステップS911に進んで、水中ポンプ1のモードを第2モードに固定する。モード固定条件が成立しないときには、制御プロセスは、ステップS911に移行しないで、図6のステップS62に進む。
図10に示すように、
(1)第2モードにおいて、水位センサ10が水位を検知する一方で、水中ポンプ1を起動することなく、当該水位センサ10が水位を検知しなくなると、第1モードに切り替え(符号101)、
(2)第1モードにおいて、水位センサ10が水位を検知すると共に第1起動条件が成立することによって水中ポンプ1を起動し(符号102)、
(3)第1モードから切り替わった第2モードにおいて、水位センサ10が水位を検知すると共に第2起動条件が成立することによって水中ポンプ1を起動すると(符号103)、モードを第2モードに固定する
ことによって、二台の水中ポンプ1の水位の検知高さが異なるときに、交互運転を実現することができる。
図6のステップS61においてモード固定判定制御を行うことにより、ポンプシステム20の稼働中においても随時、必要に応じて水中ポンプ1のモードが固定されるようになり、二台の水中ポンプ1の交互運転を実現して、二台の水中ポンプ1の運転頻度を近づけることが可能になる。
また、例えば二台の水中ポンプ1の内の一方が、新たな水中ポンプ1に交換された場合(他方の水中ポンプ1は電源がオンのまま)であっても、モード固定判定制御を随時行うことによって、二台の水中ポンプ1の交互運転に移行することができ、二台の水中ポンプ1の運転頻度を近づけることが可能になる。
次に、図11を参照しながら、水中ポンプ1の停止制御(つまり、図6のフローにおけるステップS69、及び、図9のフローにおけるステップS96)について説明をする。
図11のフローにおける最初のステップS111において、コントローラ12は、上側水位センサ101の検知信号がONからOFFになったか否かを判定する。つまり、水中ポンプ1の運転によって、貯留槽21内の水位が低下して、上側水位センサ101が水位を検知しなくなったか否かを判定する。ステップS111の判定がNOのときには、ステップS111を繰り返す。ステップS111の判定がYESになれば、制御プロセスは、ステップS112に移行する。
ステップS112において、コントローラ12のカウンタ122は、カウントを開始する。その後、ステップS113において、コントローラ12は、下側水位センサ102の検知信号が、ONからOFFになったか否かを判定する。水中ポンプ1の運転によって、貯留槽21内の水位が低下して、下側水位センサ102が水位を検知しなくなったか否かを判定する。ステップS113の判定がNOのときには、ステップS113を繰り返す。カウンタ122は、カウントを継続する。ステップS113の判定がYESになれば、制御プロセスは、ステップS114に移行する。
ステップS114において、コントローラ12は、カウンタ122のカウントを停止する。これにより、上側水位センサ101が水位を検知しなくなった時点から、下側水位センサ102が水位を検知しなくなった時点までの時間を計測することができる。この時間は、図3に示すように、貯留槽21内の水位が、上部電極10aから下部電極10bまで低下するまでの時間であるから、貯留槽21内の水位の低下速度に関係する水位低下時間ΔTである。前述したように、二台の水中ポンプ1の内のいずれか一方の水中ポンプ1のみが起動をしたときには、単位時間当たりの排水量は相対的に少なくなるため、水位の低下速度は低く、よって、水位低下時間ΔTは長くなる。一方、二台の水中ポンプ1の両方が起動をしたときには、単位時間当たりの排水量は相対的に多くなるため、水位の低下速度は高く、よって、水位低下時間ΔTは短くなる。
また、ステップS114において、コントローラ12は、タイマ123のカウントTを開始する。
続くステップS115において、コントローラ12は、計測した水位低下時間ΔTに基づいて、運転継続時間Tcを決定する。運転継続時間Tcは、予め定めた計算式(Tc=f(ΔT))に従って算出する。例えば、水位低下時間ΔTの定数倍(例えば4倍)を、運転継続時間Tcとしてもよい。また、水位低下時間ΔTに基づき、貯留槽21内の水位が所定の水位となるまでの時間として,運転継続時間Tcを算出してもよい。運転継続時間Tcは、水中ポンプ1が停止したときに、貯留槽21内の水位が、吸込み口6aよりも高い水位であって水中ポンプ1の起動及び停止が頻繁に行われない水位になるような時間として、適宜設定することができる。
ステップS116において、コントローラ12は、算出した運転継続時間Tcが、予め定めた最短運転時間Tminよりも短いか否かを判定する。ステップS116の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS117に移行をし、コントローラ12は、運転継続時間Tcを、最短運転時間Tminにする。しかる後に、制御プロセスはステップS118に移行する。上側水位センサ101及び下側水位センサ102による水位の検知に基づいて算出した運転継続時間Tcが、何らかの原因で短くなりすぎたときでも、予め設定した最短運転時間Tminは、水中ポンプ1を継続して運転することができるから、貯留槽21内の水位を適宜低下させることができる。
続くステップS118において、コントローラ12は、タイマ123のカウントTが、予め設定した最長運転時間Tmaxを超えたか否かを判定する。ステップS118の判定がNOのときには、制御プロセスは、ステップS119に移行する。一方、ステップS118の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS1110に移行し、コントローラ12は、設定した運転継続時間Tcが経過していなくても、水中ポンプ1を停止する。上側水位センサ101及び下側水位センサ102による水位の検知に基づいて算出した運転継続時間Tcが、何らかの原因で長くなったときでも、最長運転時間Tmaxで水中ポンプ1を停止することにより、貯留槽21内の水位が低くなり過ぎてエアロックが発生してしまう事態を、回避することができる。
ステップS119で、コントローラ12は、タイマ123のカウントTが、運転継続時間Tcを超えたか否かを判定する。ステップS119の判定がNOのときには、制御プロセスは、ステップS118に戻る。一方、ステップS119の判定がYESのときには、制御プロセスは、ステップS1110に移行し、コントローラ12は水中ポンプ1を停止する。上側水位センサ101及び下側水位センサ102による水位の検知に基づいて算出した運転継続時間Tcに基づいて、水中ポンプ1を停止することによって、一台の水中ポンプ1が運転をしているときも、二台の水中ポンプ1が運転をしているときも、最適なタイミングで水中ポンプ1を停止することができる。
ここで、上側水位センサ101及び下側水位センサ102のそれぞれが正常であれば、上側水位センサ101が水位を検知すれば、下側水位センサ102も水位を検知する。しかしながら、例えば上側水位センサ101及び/又は下側水位センサ102の異常により、上側水位センサ101が水位を検知しかつ、下側水位センサ102が水位を検知していない状況が起こり得る。この場合も、貯留槽21から水が溢れることを防止するために、水中ポンプ1を起動することが望ましい。
そこで、このポンプシステム20では、所定の異常条件が成立したときも水中ポンプ1を起動するように構成されていると共に、そのときの停止条件が設定されている。図12は、水中ポンプ1を起動する異常条件と、異常条件に対応する水中ポンプ1の停止条件とを含むテーブル120を示している。
具体的には、上側水位センサ101の検知信号がONで、下側水位センサ102の検知信号がOFFからONになったときに、コントローラ12は、水中ポンプ1を起動する。この起動条件は、上側水位センサ101がON状態のままになる故障時に対応する。
上側水位センサ101がOFFにならないため、前述した水位低下時間ΔTを計測することができない。そこで、コントローラ12は、下側水位センサ102がOFFとなってから所定時間Ts1が経過したときに、水中ポンプ1を停止する。こうすることで、異常条件の成立によって起動した水中ポンプ1を適切に停止させることができる。尚、所定時間Ts1は、常時、一定としてもよいし、実際に計測された水位低下時間ΔTに基づき算出された運転継続時間Tcに応じて、適宜変更してもよい。例えばコントローラ12は、所定時間Ts1を記憶部121に記憶しておくと共に、算出された運転継続時間Tcに応じて、所定時間Ts1を更新して記憶してもよい。
また、下側水位センサ102の検知信号がOFFで、上側水位センサ101の検知信号がOFFからONになったときに、コントローラ12は、水中ポンプ1を起動する。この起動条件は、下側水位センサ102がOFF状態のままになる故障時に対応する。この場合、コントローラ12は、上側水位センサ101がOFF及び下側水位センサ102がOFFになってから所定時間Ts2が経過したときに、水中ポンプ1を停止する。こうすることで、異常条件の成立によって起動した水中ポンプ1を適切に停止させることができる。尚、所定時間Ts2は、常時、一定としてもよいし、Ts1と同様に、実際に計測された水位低下時間ΔTに基づき算出された運転継続時間Tcに応じて、適宜変更してもよい。例えばコントローラ12は、所定時間Ts2を記憶部121に記憶しておくと共に、算出された運転継続時間Tcに応じて、所定時間Ts2を更新して記憶してもよい。
また、図11のフローとは別に、上側水位センサ101及び下側水位センサ102の検知に関わらず、水中ポンプ1を起動してから所定の時間が経過すると、水中ポンプ1を強制的に停止するようにしてもよい。水中ポンプ1を正常に起動した後、上側水位センサ101及び/又は下側水位センサ102の異常によって、上側水位センサ101がONからOFFにならなかったり、下側水位センサ102がONからOFFにならなかったりしたときにも、水中ポンプ1を適切に停止することができる。
(モードの固定に関する変形例)
図13は、図8に示す起動時のモード固定条件に変えて採用することが可能な、モード固定条件を示している。
符号131に示すように、水中ポンプ1の電源投入時には、水中ポンプ1A、1Bのモードは第2モードである。他方の水中ポンプ1Bの方が、第2起動条件が成立するタイミングが早いため、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。一方の水中ポンプ1Aは、水位センサ10が水位を検知するものの、起動しない。
一方の水中ポンプ1Aのコントローラ12は、このタイミングで、一方の水中ポンプ1Aのモードを、第1モードに固定する。これに対し、他方の水中ポンプ1Bのコントローラ12はモードを固定せず、前述したように、(次のモードをランダムにせずに)第1モードに切り替える。
次に、符号132に示すように、他方の水中ポンプ1Bは、一方の水中ポンプ1Aよりも先に、第1起動条件が成立するため、他方の水中ポンプ1Bが起動する。他方の水中ポンプ1Bのコントローラ12は、再び、他方の水中ポンプ1Bのモードを第2モードに切り替える。一方の水中ポンプ1Aのモードは、第1モードのままである。
次に、符号133に示すように、他方の水中ポンプ1Bは、水位センサ10が水位を検知するものの、第2モードであるため、一方の水中ポンプ1Aが先に起動する。他方の水中ポンプ1Bは、水位を検知しているため、次のモードを第1モードに切り替える。
こうして、図示は省略するが、4回目の水中ポンプの起動は、一方の水中ポンプ1Aが第1モードであり、他方の水中ポンプ1Bが第1モードであるため、2回目と同じになる。従って、他方の水中ポンプ1Bが起動をする。
このように、一方の水中ポンプ1Aのモードを第1モードに固定した後は、図13における符号132と符号133とが交互に繰り返される。よって、二台の水中ポンプ1A、1Bの交互運転が実現する。
従って、図13に示すように、
電源投入時の第2モードにおいて、水位センサ10が水位を検知する一方で、水中ポンプ1を起動することなく、当該水位センサ10が水位を検知しなくなると(符号131)、モードを第1モードに固定する
ことによって、二台の水中ポンプ1の水位の検知高さが異なるときに、交互運転を実現することができる。
この構成では、水位検知を一回行うと、モードを固定するか否かを決定することができる。
(他の実施形態)
尚、前記の構成では、第1起動条件を、上側水位センサ101が水位を検知している状態が、第1所定時間T1継続したという条件とし、第2起動条件を、上側水位センサ101が水位を検知している状態が、第2所定時間T2継続したという条件にしている。第1起動条件及び第2起動条件は、こうした時間に関する条件に限らない。
例えば、第1起動条件を、下側水位センサ102が水位を検知しているという条件とし、第2起動条件を、上側水位センサ101が水位を検知しているという条件にしてもよい。図8、10、13は、紙面左から右に時間が経過していることを示しているが、これらの図は、紙面左から右に水位が上昇することに置き換えることが可能である。つまり、第1起動条件を、下側水位センサ102が水位を検知しているという条件とし、第2起動条件を、上側水位センサ101が水位を検知しているという条件にしても、前記で説明した手順と同じ手順により、モード固定条件の成立を判断することができる。センサの検出高さに関する第1起動条件及び第2起動条件においても、モード固定条件が成立したときには、二台の水中ポンプ1のいずれか一方のモードを固定することにより、二台の水中ポンプ1を交互に運転することが実現する。
また、第1起動条件及び第2起動条件を、水位センサ10の検出高さの高低と、水位検知状態の時間の長短とを組み合わせて設定することも可能である。
加えて、水中ポンプ1の停止は、算出した運転継続時間Tcを用いるのではなく、予め設定した運転継続時間を用いて、水中ポンプ1を停止してもよい。
尚、前述したポンプシステム20及び水中ポンプ1の構成は、例示であり、ポンプシステム20及び水中ポンプ1の構成は、前記の構成に限定されない。