JP7036506B2 - 二成分自己接着性歯科用組成物、保存安定性開始剤系、及びそれらの使用 - Google Patents

二成分自己接着性歯科用組成物、保存安定性開始剤系、及びそれらの使用 Download PDF

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Description

本発明は、アスコルビン酸又はその誘導体、酸化剤、遷移金属構成成分、安定剤を含む保存安定性開始剤系、及びそのような開始剤系を含む二成分自己接着性組成物に関する。本組成物は、任意選択で、二重硬化組成物を提供するための光開始剤又は光開始剤系を追加的に含有してもよい。開始剤系及びそのような開始剤系を含有する組成物は、歯科用途及び歯科矯正用途などの様々な用途のために使用することができ、特に、自己接着性、自己エッチング性、かつ自己硬化性の歯科用又は歯科矯正用組成物を配合するために使用することができる。
歯科用コンポジットは、歯科医学においては周知であり、歯科補綴分野においては、修復材(充填用コンポジット)又はセメント(レジンセメント)として広く使用されている。一般的に、コンポジットは、本質的に疎水性であり、配合組成の主要部分として、無機フィラー、(メタ)アクリレート系レジンマトリックス、及びラジカル重合用の開始剤を含有する。
レドックス開始系は、歯科用コンポジットの領域では周知であり、例えば、暫間クラウン及びブリッジ材、支台築造材料、並びにレジンセメントなどの様々な自己硬化性及び二重硬化性材料において使用されている。
エナメル質及び象牙質に対する接着力を得るために、コンポジットは、典型的には、ボンディング材又はボンディング系を使用することによる歯表面の前処理を必要とする。これにより、手順がより複雑になり、時間もかかる場合がある。そのため、追加的なボンディング材/系の使用を必要としない自己接着性コンポジットを開発する試みがなされ、その結果、歯科医にとって使用がより容易かつより迅速な材料がもたらされた。
一方で、歯科補綴分野においては、自己接着性レジンセメントは、十分に確立された材料である。市販の製品は、例えば、RelyX(商標)Unicem 2 Automix(3M Oral Care;3M ESPE)である。これらの材料は、二成分系として配合され、複雑な硬化メカニズムによって硬化される。
異なるメカニズムによる様々な歯科用組成物の硬化もまた、特許文献に記載されている。
欧州特許出願公開第2 153 811号(Kerr)は、3つの異なる重合性モノマーと、光開始剤と、1つ以上のフィラーとを含む、1パート光硬化性自己接着性歯科修復用組成物に関する。
米国特許出願第2004/0110864号(Hechtら)は、1つ以上の単官能性又は多官能性エチレン性不飽和酸性化合物と、1つ以上の単官能性又は多官能性エチレン性不飽和非酸性化合物と、フィラーと、開始剤と、添加剤とを含む、自己接着性組成物に関する。
米国特許第6,953,535号(Hechtら)は、歯科用配合物をフリーラジカル重合によって酸性媒体中で硬化させることができるレドックス開始剤系であって、バルビツール酸又はチオバルビツール酸誘導体と、ペルオキソジサルフェートと、スルフィン酸化合物と、銅化合物とを含む、レドックス開始剤系に関する。
米国特許第5,154,762号(Mitraら)は、水と、酸反応性フィラーと、水混和性酸性ポリマーと、エチレン性不飽和部分と、光開始剤と、水溶性還元剤と、水溶性酸化剤とを含有する、歯科用セメントについて記載している。このセメントは、3つの硬化様式、すなわち、酸-フィラーのイオン反応、光開始架橋反応、及びレドックス開始架橋反応を有すると説明されている。
米国特許第4,918,136号(Kawaguchiら)は、ある特定のモノマー混合物と、フィラーと、重合開始剤と、ある特定の量のアスコルビン酸又はその誘導体とを含む、接着材組成物について記載している。
米国特許第5,501,727号(Wangら)は、エチレン性不飽和部分と、酸化剤と、金属錯体化アスコルビン酸とを含む、歯科用硬化性組成物に関する。金属錯体化アスコルビン酸を組み込むことにより、改善された色安定性を呈する硬化性組成物がもたらされる。
米国特許第5,338,773号(Luら)は、歯科用合着用セメント、ライナー、義歯床、及び修復材として有用な歯科用セメント組成物について記載している。このセメントは、象牙質又はエナメル質を別途酸エッチングしなくても、歯に対する優れた接着力を有すると説明されている。このセメントは、粉末/液体組成物として提供することができ、粉末は、アルミノフルオロケイ酸ストロンチウムガラス粉末と、過酸化ベンゾイルと、アスコルビン酸パルミテートと、銅アセチルアセトネートとを含有する。
J.M.Antonucciらは、歯科用レジンのための新しい開始剤系について記載している。提案された開始剤系は、酸化剤としてのペルエステル及びヒドロペルオキシド、促進剤としてのアスコルビン酸などの天然の還元剤を、レドックス金属系とともに含有する(Journal of Dental Research,Vol.58,No.9,1979年9月,1887~1899ページ)。
米国特許出願第2011/0245368(A1)号(Yarimizuら)は、ペルオキシド、アスコルビン酸化合物、酸基を有する(メタ)アクリレート、酸基を有しない(メタ)アクリレート、酸及び水と反応しないフィラーを含む、ペースト状重合性組成物について記載している。この組成物は、保存安定性であると説明されている。
米国特許出願第2008/0207841(A1)号(Koersら)は、ペルオキシドを伴うレドックス系の形成にとって好適であり、高い保存安定性を有する促進剤溶液について記載している。この溶液は、アスコルビン酸及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムから選択される還元剤と、遷移金属塩、リチウム塩、及びマグネシウム塩から選択される金属塩と、有機酸素含有溶媒とから本質的になる。
保存安定性であり、酸性条件下でも機能する開始剤系を有することが望ましい。
また、エナメル質だけでなく象牙質に対しても良好な接着力を示し、良好な機械的特性と、可能であれば、審美的特性とを併せ持つ、二成分の、好ましくは二重硬化性組成物を有することが望ましい。
具体的には、エナメル質及び象牙質の表面に対する良好な接着力を示し、自己硬化の様式で、良好な機械的特性を併せ持つ、二成分組成物を有することが望ましい。
この目的は、本明細書に記載されている開始剤系及びパーツキットによって達成することができる。
一実施形態によれば、本発明は、パートA及びパートBを含む、本明細書に記載されているパーツキットであって、
パートAは、
そのアスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、又はそれらの混合物から選択される安定剤、
任意選択の、酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
任意選択の、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
任意選択の1つ又は複数のフィラー、
任意選択の1つ又は複数の添加剤を含み、
パートBは、
酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
1つ又は複数の遷移金属構成成分、
1つ又は複数の有機ペルオキシド、
任意選択の1つ又は複数のフィラー、
任意選択の1つ又は複数の添加剤を含む、
パーツキットに関する。
構成成分のそれぞれについては、本明細書に記載されている通りである。
本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載されているパーツキットのパートAの組成物及びパートBの組成物を混合し、得られた混合物を硬化させることによって得ることができる、あるいはそれによって得られる、歯科用又は歯科矯正用組成物であって、自己エッチング性、自己接着性、かつ自己硬化性の組成物である、歯科用又は歯科矯正用組成物を対象とする。
本発明の更なる実施形態は、アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、1つ又は複数の遷移金属構成成分、1つ又は複数のペルオキシド、1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤を対象とする。
本発明の更なる実施形態は、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分を含む歯科用組成物を硬化するための、本明細書に記載されている開始剤系、具体的には、本明細書に記載されている、アスコルビン酸又はその1つ又は複数の誘導体と、1つ又は複数の遷移金属構成成分と、1つ又は複数の有機ペルオキシドと、1つ又は複数の安定剤とを含む開始剤系の使用を対象とする。
本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載されているパーツキット又は本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られる組成物を使用する方法であって、組成物を表面に適用する工程と、自己硬化メカニズムによって、あるいは任意選択で放射線を適用することによって、組成物を硬化させる工程とを含む、方法を対象とする。
本発明の他の実施形態、特色、及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」、「図面」、及び「特許請求の範囲」から明らかとなるであろう。
別途定義されない限り、本明細書において、以下の用語は所与の意味を有するものとする。
「一成分」とは、保存及び使用中に、構成成分のすべてが組成物中に存在することを意味する。すなわち、適用又は使用される組成物は、使用前に、組成物の異なるパーツを混合することによって調製されるものではない。一成分組成物とは対照的に、これらの組成物は、二成分組成物と呼ばれることが多い(例えば、粉末/液体、液体/液体、又はペースト/ペースト組成物として配合される)。
「二成分」とは、パーツキット又は系が、使用前には、互いに別々のパーツで提供されることを意味する。「二成分系」とは対照的に、「一成分系」は、1つだけのパーツとして提供される。
「歯科用組成物」、又は「歯科使用のための組成物」、又は「歯科分野において使用される組成物」は、歯科分野において使用することができる任意の組成物である。この点に関して、組成物は、患者の健康にとって有害であるべきではなく、したがって、組成物から漏出し得る有害成分及び有毒成分を含むべきではない。歯科用組成物の例としては、永久及び暫間クラウン、並びにブリッジ材、人工クラウン、前歯用又は奥歯用充填材、接着材、ミルブランク、ラボ材料、合着材、並びに歯科矯正用デバイスが挙げられる。歯科用組成物は、典型的には、30分、又は20分、又は10分の時間枠内で、15~50℃又は20~40℃の範囲の温度などの周囲条件において固化することができる、固化性組成物である。これよりも高い温度では、患者に痛みをもたらす場合があり、患者の健康にとって有害である場合があるため、推奨されない。歯科用組成物は、典型的には、比較的小容量で、すなわち、0.1~100mL、又は0.5~50mL、又は1~30mLの範囲の容量で、施術者に提供される。したがって、有用なパッケージングデバイスの保存容量は、これらの範囲内である。
「化合物」又は「構成成分」という用語は、特定の分子的同一性を有する化学物質であるか、あるいはそのような物質、例えばポリマー性物質の混合物で作製された化学物質である。
「モノマー」は、オリゴマー又はポリマーへと重合され、それによって分子量が増加され得る、重合性の基((メタ)アクリレート基など)を有する化学式によって特徴付けることができる任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられた化学式に基づいて簡単に計算することができる。
本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH=CH-C(O)-O-)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH=C(CH)-C(O)-O-)のいずれかを指す短縮語である。同様に、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す短縮語である。
「固化性構成成分若しくは材料」又は「重合性構成成分」は、例えば、重合を引き起こすための加熱、化学的架橋、放射線誘発性重合、又はレドックス開始剤の使用による架橋によって硬化又は固めることができる、任意の構成成分である。固化性構成成分は、1つのみ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性基を含有し得る。重合性基の典型的な例としては、特に、(メタ)アクリレート基中に存在するビニル基などの不飽和炭素基が挙げられる。
「エチレン性不飽和酸性化合物」は、エチレン性不飽和官能基、並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有する、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを包含することを意図する。酸性前駆体官能基としては、例えば、酸無水物、酸ハロゲン化物、及びピロホスフェートが挙げられる。酸性基は、好ましくは、-COOH又は-CO-O-CO-などの1つ以上のカルボン酸残基、-O-P(O)(OH)OHなどのリン酸残基、C-P(O)(OH)OHなどのホスホン酸残基、-SOHなどのスルホン酸残基、又は-SOHなどのスルフィン酸残基を含む。
「フィラー」は、固化性組成物中に存在するすべてのフィラーを含む。1種類のフィラーのみが使用されてもよく、又は異なるフィラーの混合物が使用されてもよい。
「ペースト」は、液体中に分散した固体(すなわち、粒子)の、軟らかく、粘稠な塊を意味する。
「粒子」は、幾何学的に決定することができる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は、規則的であっても、あるいは不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒度及び粒度分布に関して分析することができる。
「粉末」は、粒子形態の固体構成成分のみを含むことによって特徴付けられる。
「非表面処理フィラー」は、フィラーの表面を改質して、組成物の他の構成成分に対するフィラーの適合性又は反応性をより高くするための、反応性物質への曝露が行われていない表面を有するフィラーである。
「接着材」又は「歯科用接着材」とは、「歯科用材料」(例えば、「修復材」、歯科矯正装置(例えば、ブラケット)、又は歯科矯正用接着材)を歯牙表面に接着させるための、歯科構造体(例えば、歯)に対する前処理として使用される組成物を指す。「歯科矯正用接着材」とは、歯牙(例えば、歯)表面に対して歯科矯正装置を接着させるために使用される組成物を指す。一般的に、歯牙表面は、「歯科矯正用接着材」の歯牙表面への接着力を高めるために、例えば、エッチング、下塗り、及び/又は接着材の適用によって前処理される。
「歯牙表面」又は「歯表面」とは、歯牙構造(例えば、エナメル質、象牙質、及びセメント質)並びに骨の表面を指す。
「自己エッチング性」組成物とは、歯牙表面をエッチング材で前処理しなくても歯牙表面に固着する組成物を指す。好ましくは、自己エッチング性組成物は、別のエッチング材又はプライマーを使用しない自己プライマーとして機能することもできる。
「自己接着性」組成物とは、歯牙表面をプライマー又はボンディング材で前処理しなくても歯牙表面に固着することができる組成物を指す。好ましくは、自己接着性組成物は、別のエッチング材を使用しない自己エッチング性組成物でもある。
「自己硬化組成物」とは、放射線を適用しなくても、レドックス反応によって硬化する組成物を意味する。
「未処理」の歯牙表面とは、自己エッチング性接着材又は自己接着性組成物を適用する前に、エッチング材、プライマー、又はボンディング材による処理を受けていない、歯又は骨の表面を指す。
「未エッチング」の歯牙表面とは、本発明の自己エッチング性接着材又は自己接着性組成物を適用する前に、エッチング材による処理を受けていない、歯又は骨の表面を指す。
「エッチング材」とは、歯牙表面を完全に又は部分的に可溶化する(すなわち、エッチングする)ことができる、酸性組成物を指す。エッチング効果は、ヒトの肉眼で見ることができ、かつ/又は計器によって(例えば、光学顕微鏡検査によって)検出可能であってもよい。典型的には、エッチング材は、10~30秒間、歯科構造体の表面に適用される。
ある組成物が、相当な長期間(周囲条件下で少なくとも約4週間~約12ヶ月超)にわたって安定であり続ける場合、その組成物は、「保存安定性」であると分類することができる。保存安定性組成物は、典型的には、それに含有された構成成分の経時的な分解又は早期重合を示さない。また、組成物の物理的特性及び材料特性(硬化挙動、機械的特性、及び接着性能など)が、保存中に、所望される状態よりも減少してはならない。
理想的には、50℃で4週間保存された組成物の凝結時間(Tf)は、新しく調製された組成物の凝結時間(Tf)と比較して、80%超、又は70%超、又は60%超、又は50%超、又は40%超、延長されるべきではない。所望される場合、凝結時間は、「実施例」のセクションに記載されている通りに決定することができる。
「ナノサイズフィラー」は、その個々の粒子が、ナノメートル範囲のサイズ、例えば約200nm未満の平均粒径を有する、フィラーである。有用な例は、米国特許第6,899,948号及び米国特許第6,572,693号に与えられている。これらの特許の内容、特にナノサイズシリカ粒子に関する内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
「開始剤系」は、本明細書において「固化性構成成分を硬化させる」とも記載される、固化性構成成分の硬化プロセスを始める、又は開始することができる、歯科用組成物の構成成分を含むものとする。
「硬化(curing)」、「固化(hardening)」、及び「凝結(setting)反応」は、互換的に使用され、組成物の物理的特性、例えば粘度及び硬度などが、個々の構成成分間での化学反応に起因して経時的に変化する(例えば、上昇する)反応を指す。
ある組成物が、放射線によって又は放射線ではなくレドックス反応によって、すなわち自己硬化メカニズムによって組成物を硬化させ得る1つ以上の開始剤系を含有する場合、その組成物は、「二重硬化性」として特徴付けられる。
「放射線硬化性」とは、構成成分(又は場合によっては、組成物)が、放射線の適用、好ましくは、周囲条件下かつ合理的な時間枠内(例えば、約60、30、又は10秒以内)で、可視光スペクトルの波長の電磁放射線の適用によって硬化させ得ることを意味する。
「誘導体」又は「構造類似体」は、対応する参照化合物に密接に関連した化学構造を示し、対応する参照化合物の特色となるすべての構造的要素を含むが、対応する参照化合物と比較して、例えばアルキル部分、Br、Cl、又はFのような追加的な化学基を有したり、あるいは例えばアルキル部分のような化学基を有しなかったりすることなど、軽微な変更を有する化学化合物である。すなわち、誘導体は、参照化合物の構造類似体である。化学化合物の誘導体は、前述の化学化合物の化学構造を備える化合物である。誘導体の別の例は、化学化合物によって、例えば酸塩基反応で生成された塩である。
以下の例によってこれを例証することができる。参照化合物であるビスフェノールAに対して、4つの追加的なメチル基を有するテトラメチルビスフェノールA、及び参照化合物であるビスフェノールAに対して、2つの追加的なメチル基を有しないビスフェノールFは、この定義の意味において、ビスフェノールAの誘導体である。
ある特定の化学部分を含む1つ又は複数の構成成分は、その化学部分の誘導体又は構造類似体と分類できることが多い。
「アスコルビン酸部分」を含む構成成分は、以下の構造的要素を含む構成成分である。
Figure 0007036506000001
式中、「」という記号は、別の化学部分又は原子に対する接続点を示す。
「可視光」という用語は、400~800ナノメートル(nm)の波長を有する光を指すように使用される。
「周囲条件」は、本発明の組成物が、保存中及び取り扱い中に通常供される条件を意味する。周囲条件は、例えば、900~1100mbarの圧力、-10~60℃の温度、及び10~100%の相対湿度であってもよい。実験室では、周囲条件は、23℃及び1013mbarに調整されている。歯科分野及び歯科矯正分野においては、周囲条件は、合理的には、950~1050mbarの圧力、15~40℃の温度、及び20~80%の相対湿度と理解される。
ある組成物が、本質的な特色として、ある特定の構成成分を含有しない場合、その組成物は、本発明の意味内で、当該構成成分を「本質的に又は実質的に含まない」。したがって、当該構成成分が、それ自体で、あるいは他の構成成分又は他の構成成分の成分と組み合わせて、組成物に対して故意に添加されることはない。ある特定の構成成分を本質的に含まない組成物は、通常、組成物全体に対して、その構成成分を、約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含有する。理想的には、この組成物又は溶液は、当該構成成分をまったく含有しない。しかしながら、例えば、不純物が原因となり、当該構成成分が少量存在してしまうのを回避できない場合もある。
「含む」は、「含有する」、「~から本質的になる」、及び「~からなる」という用語を包含する。本明細書において使用される場合、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。「含む(comprise)」又は「含有する(contain)」という用語、及びそれらのバリエーションは、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有しない。また、本明細書において、数値範囲が端点によって列挙される場合、その範囲内に包含されるすべての数が含まれる(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
用語に「1つ又は複数の」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、「1つ又は複数の添加剤」という用語は、1つの添加剤及びそれより多い添加剤(例えば、2つ、3つ、4つなど)を意味する。
別途指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、物理的特性の測定値、例えば下に記載されているものなどを表すすべての数は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。
従来技術に記載されているレドックス開始剤は、典型的には、ペルオキシド-アミン、ペルオキシド/ヒドロペルオキシド-チオ尿素、ペルサルフェート-アスコルビン酸、及びバルビツール酸-ペルオキシド-銅-塩化物(いわゆる、Bredereck系)に基づく系である。
しかしながら、これらの系のほとんどは、酸性条件下では効率良く機能せず、硬化が不十分となることがあるため、自己接着性組成物又は自己硬化性接着材の配合には使用することができない。
加えて、レドックス開始剤系によってもたらされる機械的特性は、光開始系に匹敵するまでには至らないことが多い。これらの欠点は、本明細書に記載されている系及び組成物によって回避される。これらの材料は、酸性条件下であっても効率的に硬化することから、象牙質及びエナメル質に対する向上した接着力と、光開始剤又は光開始剤系を使用した場合に得ることができるものに匹敵する機械的特性とを有する、自己接着性組成物の配合が可能となる。
最新のレドックス開始剤系とは対照的に、本明細書に記載されているレドックス開始剤系は、例えば、1つ又は複数の(メタ)アクリレートなどの不飽和構成成分についても、酸性条件下のフリーラジカル重合によって固化させることができる。この開始剤系は、良好な機械的特性(例えば、曲げ強さ)によって示されるように、効率的な硬化をもたらすだけでなく、エナメル質及び象牙質に対する接着力もまた促進する。したがって、この開始剤系は、自己接着性かつ自己硬化性の充填材及び合着材を含む、自己硬化性自己接着性コンポジットの開発にとって非常に有用である。
したがって、本明細書に記載されている組成物及びパーツキットは、例えば、特に象牙質表面に関して良好な接着特性を有する、二成分、自己エッチング性、自己接着性、任意選択で二重硬化性の歯科用組成物を提供するという、上述の目的のうちの少なくとも1つを解決するのに好適である。
本明細書に記載されている組成物及びパーツキットは、ジルコニア又はアルミナなどの高強度セラミック、ガラスセラミック、コンポジット材料、並びに貴金属(例えば、Au)及び非貴金属(例えば、Ti)、並びにそれぞれの合金に対して固着するのに好適である。
本明細書に記載されている組成物及びパーツキットは、化学的な前処理工程(シラン、ジルコニア、及び/又は金属プライマーによる処理など)がなくても、これらの材料の表面に対して固着が可能であることが判明した。
しかしながら、更に高い接着強さが必要とされる場合には、所望により、化学的な前処理工程を適用することができる。
アスコルビン酸及びその多くの構造類似体は、経時的な分解又は変色を受けやすいことが公知である。したがって、貯蔵寿命の末期であっても、十分な量の「活性」アスコルビン酸が確実に存在するように、多くの場合、アスコルビン酸は過剰に使用される。しかしながら、これは所望されていないことが多く、硬化した組成物の全体的な美観に影響が及ぶ場合もある。
また、本明細書に記載されている1つ又は複数の安定剤を使用することによって、系の全体的な性能に対して所望されていない程度にまで影響を及ぼすことなく、アスコルビン酸部分を含む構成成分の量(molに関する)を低く保つことができることも判明した。
本明細書に記載されている本発明によって、保存安定性パーツキットの配合が可能となり、すなわち、それぞれのパーツに含有された組成物は、高温で(例えば、約50℃で)数週間保存された場合でも「活性」なままである。それぞれのパーツを組み合わせたときに得られる組成物は、やはり、所望される時間枠内で固化し、固化した組成物は、やはり、所望される物理的特性(例えば、機械的特性、接着性能、美観)を示す。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA又はパートBに含有された組成物は、ペーストの形態であってもよく、あるいは液体の形態であってもよい。したがって、パーツキットは、ペースト/ペースト、ペースト/液体、又は液体/液体配合物として提供することができる。
パートAに含有された組成物は、典型的には、以下の特色のうちの少なくとも1つ、それ以上、又はすべてによって特徴付けることができる。
ペースト又は液体であること、
水と接触した際のpH値が3~10又は6~8であること、
50℃で少なくとも3週間、保存安定性であること。
アスコルビン酸部分を含む構成成分及び安定剤を含有するパートAが、中性に近いpH値を有する場合、保存安定性を更に向上できることが判明した。
パートBに含有された組成物は、典型的には、以下の特色のうちの少なくとも1つ、それ以上、又はすべてによって特徴付けることができる。
ペースト又は液体であること
湿ったpH感応紙と接触した際のpH値が6未満、又は4未満、又は2未満であること。
十分な保存安定性に加えて、本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られる組成物は、自己エッチング性かつ/又は自己接着性である。すなわち、本組成物は、例えば、エッチング材及び/又はボンディング系を使用して前処理しなくても、歯牙表面に対して接着する。
自己接着性という特色に加えて、本組成物はまた、典型的には、全体的に良好な機械的特性も有する。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られる組成物は、典型的には、以下の固化前の特色のうちの少なくとも1つ、又はそれ以上、又はすべてによって特徴付けることができる。
湿ったpH感応紙と接触した際のpH値が、混合直後に7未満であること、
23℃で測定した場合に粘度が0.01~1,000Pasであること。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られる組成物は、典型的には、以下の硬化後の特色のうちの少なくとも1つ、又はそれ以上、又はすべてによって特徴付けることができる。
ISO 4049:2009に準じて決定した場合に、曲げ強さが少なくとも50MPa、又は少なくとも70MPa、又は少なくとも90MPaであること、
せん断接着強さ試験(実験パートを参照されたい)に準じて決定した場合に、象牙質に対する接着力が少なくとも5MPa、又は少なくとも7MPa、又は少なくとも9MPaであること、
せん断接着強さ試験(実験パートを参照されたい)に準じて決定した場合に、エナメル質に対する接着力が少なくとも5MPa、又は少なくとも7MPa、又は少なくとも9MPaであること。
組成物の粘度は、典型的には、意図する用途に応じて調整される。
組成物が、歯科小窩裂溝封鎖材又は歯科用フロアブルコンポジットとして使用される場合、好適な粘度としては、例えば、1~150Pas又は10~120Pasが挙げられる(23℃、せん断速度:100 1/s)。
所望される場合、粘度は、「実施例」のセクションに記載される通りに決定することができる。
本組成物は、本組成物中に含有されたレドックス開始剤系によって、許容できる時間枠内、例えば、温度37℃において、300秒未満、又は180秒未満、又は120秒未満以内で硬化させることができる。
個々のペースト又は混合された組成物のpH値は、湿ったpH感応紙を使用することによって決定することができる。
本明細書に記載されている組成物は、典型的には、パートA及びパートBを含むパーツキットとして提供される。それらのパーツに加えて、典型的には、このパーツキットの使用方法及び個々のパーツ中に含有された組成物を組み合わせることによって得られる組成物の適用方法に関するヒントを含む、使用説明書も含まれている。
個々のパーツに中に含有されたパートA及びパートBを組み合わせることによって得られる組成物は、
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
1つ又は複数の安定剤、
1つ又は複数の有機ペルオキシド、
1つ又は複数の遷移金属構成成分、
酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
任意選択の1つ又は複数のフィラー、
任意選択の光開始剤、及び
任意選択の1つ又は複数の添加剤を含み、
それぞれの構成成分については、本明細書に記載されている通りである。
本明細書に記載されているパーツキットのパートAは、アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、例えばアスコルビン酸の塩及びエステル、エーテル、ケタール、又はアセタールを含有する。
好適な塩としては、Na、K、Caなどのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。
アスコルビン酸のエステルとしては、アスコルビン酸のヒドロキシル官能基のうちの1つ以上を、カルボン酸、具体的にはC~C30カルボン酸と反応させることによって形成されるものが挙げられる。
~C30カルボン酸の好適な例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノールエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸のような脂肪酸が挙げられる。
具体的には、酸性部分を有しない重合性構成成分を含む残りのレジンマトリックス中に、容易に溶解することができる、又はそれと容易に混合することができる、アスコルビン酸部分含有構成成分が好ましい。
すなわち、疎水性部分を追加的に有するアスコルビン酸部分含有構成成分を使用することが、好ましくあり得る。好適な疎水性部分としては、飽和及び不飽和脂肪族残基(例えば、C~C30又はC12~C30)が挙げられる。それらのアスコルビン酸誘導体はまた、表面活性物質(いわゆる「頭/尾構造」を有する物質)としても機能し得る。
アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、それらの混合物及び塩が、特に好ましい。
アスコルビン酸部分を含む構成成分は、典型的には、組成物全体の重量に対して、以下の量で存在する。
下限:少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大5重量%、又は最大3重量%、又は最大1重量%、
範囲:0.01重量%~5重量%、又は0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~1重量%。
アスコルビン酸部分を含む構成成分の量が多過ぎる場合、組成物の凝結時間が速くなり過ぎる可能性がある。
アスコルビン酸部分を含む構成成分の量が少な過ぎる場合、組成物の凝結時間が遅くなり過ぎる可能性がある。
開始剤系を含有する、本明細書に記載されているパーツキットは、1つ以上の安定剤を含む。一般的に、上で特定した目的のうちの1つ以上を解決するのに好適であるすべての安定剤を使用することができる。
安定剤が歯科用又は歯科矯正用配合物において使用される場合、その安定剤は、毒物学的観点から許容できるものでなければならない。
1つ又は複数の安定剤は、パーツキットのうち、アスコルビン酸部分を含む構成成分を含有するパートに含有される。
具体的には、1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤が有用であることが判明した。
有機の1つ又は複数の安定剤、すなわち、塩ではない1つ又は複数の安定剤が好ましい場合がある。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、安定剤の組成物中での溶解度及び/又は安定剤のpK値について考慮する必要があると考えられる。
高い溶解度を有する安定剤を使用することが好ましい場合がある。また、酸性度が低い安定剤を使用することが好ましい場合もある。
有機サルファイト又は有機ホスファイト安定剤の安定効果は、無機サルファイト又は無機ホスファイト安定剤の安定効果よりも良好な場合があることが判明した。
一実施形態によれば、1つ又は複数の安定剤は、以下の特色のうちの少なくとも1つ又はそれ以上によって特徴付けることができる。
分子量が80~600又は120~350g/molであること、
23℃において液体であること。
1つ又は複数の安定剤は、典型的には、以下の量で存在する。
下限量:少なくとも0.01、又は少なくとも0.05、又は少なくとも0.1重量%、
上限量:最大5、又は最大3、又は最大1重量%、
範囲:0.01~5重量%、又は0.05~3重量%、又は0.1~1重量%。
重量%は、組成物全体の重量に対するものである。
一実施形態によれば、パーツキットのパートAにおける、アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分の、1つ又は複数の安定剤に対する比は、典型的には、molに関して、1:5~5:1又は1:2~2:1の範囲である。
一実施形態によれば、1つ又は複数の安定剤は、molに関して、アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分よりも過剰に使用される。
過剰な安定剤を使用することは、パーツキットの保存中にパッケージングシステムを通って移動する可能性がある酸素に対して、系を安定させるのに有益である場合があり得る。
1つ又は複数の無機サルファイトの例としては、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、重亜硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
1つ又は複数の有機サルファイトの例としては、ジアルキル又はアリール(例えば、C1~C12)サルファイト(例えば、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジ-n-プロピル、亜硫酸ジイソプロピル、亜硫酸グリコール、1,3-プロピレンサルファイト)、ジアリルサルファイト、及びそれらの混合物が挙げられる。
所望される場合、有機サルファイト及び無機サルファイトの混合物を使用することもできる。
1つ又は複数の無機ホスファイトの例としては、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
1つ又は複数の有機ホスファイトの例としては、ジアルキル又はアリール(例えば、C1~C40)ホスファイト(例えば、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジ-n-プロピル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリアリル)、及びそれらの混合物が挙げられる。
所望される場合、有機ホスファイト及び無機ホスファイトの混合物を使用することもできる。
所望される場合、有機ホスファイト及び無機ホスファイトの混合物、並びに/又は有機サルファイト及び無機サルファイトの混合物を使用することもできる。
一実施形態によれば、有機サルファイト、有機ホスファイト、及びそれらの混合物から選択される安定剤を使用することが好ましい。
本明細書に記載されているパーツキットのパートBは、1つ以上の遷移金属構成成分を含有する。
好適な1つ又は複数の遷移金属構成成分としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び/又は亜鉛から選択される1つ又は複数の有機及び/又は無機塩が挙げられ、銅及び鉄が好ましい場合がある。
有用な塩としては、1つ又は複数の酢酸塩、1つ又は複数の塩化物、1つ又は複数の硫酸塩、1つ又は複数の安息香酸塩、1つ又は複数のアセチルアセトネート、1つ又は複数のナフテン酸塩、1つ又は複数のカルボン酸塩、ビス(1-フェニルペンタン-1,3-ジオン)錯体、1つ又は複数のサリチル酸塩、遷移金属のいずれかのエチレンジアミン四酢酸との錯体、及びそれらの混合物が挙げられる。
一実施形態によれば、遷移金属構成成分は、酸化段階にあり、これにより、構成成分を還元することができる。有用な酸化段階としては、適宜、+2、+3、+4、+5、+6、及び+7が挙げられる。
1つ又は複数の銅構成成分が好ましい場合がある。1つ又は複数の銅構成成分における銅の酸化段階は、好ましくは+1又は+2である。
使用することができる1つ又は複数の銅構成成分の典型的な例としては、酢酸銅、塩化銅、安息香酸銅、銅アセチルアセトネート、ナフテン酸銅、カルボン酸銅、銅ビス(1-フェニルペンタン-1,3-ジオン)錯体(銅プロセトネート)、サリチル酸銅、銅とチオ尿素、エチレンジアミン四酢酸との錯体、及び/又はそれらの混合物などの、銅の塩及び錯体が挙げられる。これらの銅化合物は、水和物の形態で使用されてもよく、あるいは非水和物の形態で使用されてもよい。酢酸銅が特に好ましい。
使用することができる遷移金属構成成分の量は、特に限定されない。遷移金属塩は、意図する目的を達成するのに十分な量で使用されなければならない。
1つ又は複数の遷移金属構成成分は、典型的には、以下の量で存在する。
下限:少なくとも0.00001重量%、又は少なくとも0.0001重量%、又は少なくとも0.001重量%、
上限:最大3重量%、又は最大2重量%、又は最大1.5重量%、
範囲:0.00001重量%~3重量%、又は0.0001重量%~2重量%、又は0.001重量%~1.5重量%。
重量%は、パーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせることによって得られる組成物全体の重量に対するものである。使用される遷移金属構成成分の量が多過ぎる場合、組成物の凝結時間が速くなり過ぎる可能性がある。
使用される遷移金属構成成分の量が少な過ぎる場合、組成物の凝結時間が遅くなり過ぎる可能性があり、接着力が低減される可能性がある。
所望される結果を達成するのに好適であるならば、ほぼすべての1つ又は複数の有機ペルオキシドを使用することができる。
無機ペルオキシドとは対照的に、1つ又は複数の有機ペルオキシドは、金属又は金属イオンを含まない。したがって、有機ペルオキシドは、典型的には、C、O、H、及び任意選択でハロゲン(例えば、F、Cl、Br)しか含まない。使用することができる有機ペルオキシドには、1つ又は複数のジペルオキシド及びヒドロペルオキシドが含まれる。
一実施形態によれば、有機ペルオキシドは、アスコルビン酸部分を含む構成成分の重量に対して、過剰に使用される。
一実施形態によれば、有機ペルオキシドはジペルオキシドであり、好ましくは、部分R-O-O-R-O-O-R[式中、R及びRは、独立して、H、アルキル(例えば、C~C)、分枝状アルキル(例えば、C~C)、シクロアルキル(例えば、C~C10)、アルキルアリール(例えば、C~C12)、又はアリール(例えば、C~C10)から選択され、Rは、アルキル(例えば、C~C)又は分枝状アルキル(例えば、C~C)から選択される]を含むジペルオキシドである。
好適な有機ジペルオキシドの例としては、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、並びにそれらの混合物が挙げられる。
別の実施形態によれば、有機ペルオキシドは、ヒドロペルオキシドであり、具体的には、構造部分
R-O-O-H
[式中、Rは、(例えば、C~C20)アルキル、(例えば、C~C20)分枝状アルキル、(例えば、C~C12)シクロアルキル、(例えば、C~C20)アルキルアリール、又は(例えば、C~C12)アリールである]を含むヒドロペルオキシドである。
好適な有機ヒドロペルオキシドの例としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、並びにそれらの混合物が挙げられる。
文献に記載されていることが多い他のペルオキシドは、1つ又は複数のケトンペルオキシド、1つ又は複数のジアシルペルオキシド、1つ又は複数のジアルキルペルオキシド、1つ又は複数のペルオキシケタール、1つ又は複数のペルオキシエステル、及び1つ又は複数のペルオキシジカーボネートである。
ケトンペルオキシドの例としては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、及びシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられる。
ペルオキシエステルの例としては、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、及びt-ブチルペルオキシマレイン酸が挙げられる。
ペルオキシジカーボネートの例としては、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピル-1-ペルオキシ-ジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチル-ペルオキシジカーボネート、及びジアリルペルオキシジカーボネートが挙げられる。
ジアシルペルオキシドの例としては、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドが挙げられる。
ジアルキルペルオキシドの例としては、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキサンが挙げられる。
ペルオキシケタールの例としては、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、及び4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチルエステルが挙げられる。
1つ又は複数の有機ペルオキシドは、典型的には、以下の量で存在する。
下限:少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大5重量%、又は最大4重量%、又は最大3重量%、
範囲:0.01重量%~5重量%、又は0.05重量%~4重量%、又は0.1重量%~3重量%。
重量%は、組成物全体の重量に対するものである。
1つ又は複数の有機ペルオキシドの量が多過ぎる場合、組成物の凝結時間が速くなり過ぎる可能性がある。
1つ又は複数の有機ペルオキシドの量が少な過ぎる場合、組成物の凝結時間が遅くなり過ぎる可能性がある。
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分と、1つ又は複数の安定剤と、1つ又は複数の遷移金属構成成分と、1つ又は複数の有機ペルオキシドとを含む、記載されている開始剤系に加えて、本明細書に記載されているパーツキットはまた、光開始剤又は光開始剤系を追加的に含むこともできる。
この任意選択の光開始剤の性質は、意図する目的に悪影響が及ぼされない限り、特に限定されない。
光開始剤系を組み込むことによって、「二重硬化性」として特徴付けることができる組成物が得られ、すなわち、この組成物は、放射線を用いずに組成物を固化するのに好適であるレドックス開始剤系(「暗硬化性又は自己硬化性」)と、放射線の適用によって組成物を固化するのに好適である光開始剤系(「光硬化性」)とを含有する。
フリーラジカル重合にとって好適な光開始剤は、一般的に、歯科材料を取り扱う当業者には公知である。典型的な光開始剤は、増感剤と還元剤との組み合わせを含み、これは、多くの場合、光開始剤系と呼ばれる。
増感剤としては、390nm~830nmの波長を有する可視光の作用によって、1つ又は複数の重合性モノマーを重合させることができるものが好ましい。
好適な増感剤は、多くの場合、αジ-ケト部分を含有する。
その例としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2-メトキシエチル)ケタール、4,4’-ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’-ビスジエチルアミノ-ベンゾフェノンが挙げられる。
還元剤としては、第三級アミンなどが一般的に使用される。第三級アミンの好適な例としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、メチル4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル4-ジメチルアミノベンゾエート、メチルジフェニルアミン、及びイソアミル4-ジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。他の還元剤としては、スルフィン酸ナトリウム誘導体及び有機金属化合物も使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、あるいは混和物として使用してもよい。
また、米国特許第6,187,833号、米国特許第6,025,406号、米国特許第6,043,295号、米国特許第5,998,495号、米国特許第6,084,004号、米国特許第5,545,676号、及び国際公開第2009151957号、及び米国特許出願第10/050218号に記載されているような、増感剤、電子供与体、及びオニウム塩からなる三元光重合開始系を使用することができ、参照により、本発明に包含される。
三元光開始剤系において、第1の構成成分は、ヨードニウム塩、すなわち、ジアリールヨードニウム塩である。
ヨードニウム塩は、増感剤及び供与体の存在下でモノマー中に溶解された場合、モノマーに対して可溶性であり、かつ保存安定性である(すなわち、自発的には重合を促進しない)ことが好ましい。したがって、具体的なヨードニウム塩の選択は、選ばれた具体的なモノマー、ポリマー又はオリゴマー、増感剤、及び供与体に、ある程度左右され得る。好適なヨードニウム塩については、米国特許第3,729,313号、米国特許第3,741,769号、米国特許第3,808,006号、米国特許第4,250,053号、及び米国特許第4,394,403号に記載されており、これらの特許のヨードニウム塩に関する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl、Br、I、又はCSO などのアニオンを含有する)であってもよく、あるいは金属錯塩(例えば、SbFOH又はAsF を含有する)であってもよい。所望される場合、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
三元光開始剤系における第2の構成成分は、増感剤である。増感剤は、モノマーに対して可溶性であり、かつ400超~1200ナノメートル、より好ましくは400超~700ナノメートル、最も好ましくは400超~600ナノメートルの波長範囲内のいずこかにおいて光を吸収可能であることが望ましい。増感剤はまた、米国特許第3,729,313号に記載されている試験手順を使用して、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンを増感することが可能であってもよい。この特許は、参照により本明細書に組み込まれる。また、この試験に合格することに加えて、増感剤は、有効期間中の安定性についてある程度考慮した上で選択されることが好ましい。したがって、具体的な増感剤の選択は、選ばれた具体的なモノマー、オリゴマー又はポリマー、ヨードニウム塩、及び供与体に、ある程度左右され得る。
好適な増感剤としては、以下の範疇の化合物:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はα-ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp-置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。高度の硬化(例えば、高度充填コンポジットの硬化)が必要とされる用途の場合、光重合にとって所望される照射波長で、約1000未満、より好ましくは約100未満の減衰係数を有する増感剤を用いるのが好ましい。あるいは、照射の際の励起波長において、光吸収の低減を呈する染料が使用されてもよい。
例えば、ケトン増感剤の好ましいクラスは、式:ACO(X)Bを有し、式中、XはCO又はCRであり、R及びRは同じであっても又は異なっていてもよく、かつ水素、アルキル、アルカリール、又はアラルキルであってもよく、bは0又は1であり、A及びBは同じであっても又は異なっていてもよく、かつ置換された(1つ以上の非干渉置換基を有する)又は非置換のアリール基、アルキル基、アルカリール基、又はアラルキル基であってもよく、あるいはA及びBは一緒になって、置換された又は非置換の脂肪族環、芳香族環、複素芳香族環、又は縮合芳香族環であり得る環状構造を形成してもよい。
上記式の好適なケトンとしては、モノケトン(b=0)、例えば、2,2-、4,4-又は2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ-2-ピリジルケトン、ジ-2-フラニルケトン、ジ-2-チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2-フルオロ-9-フルオレノン、2-クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1-又は2-アセトナフトン、9-アセチルアントラセン、2-、3-又は9-アセチルフェナントレン、4-アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n-ブチロフェノン、バレロフェノン、2-、3-又は4-アセチルピリジン、3-アセチルクマリンなどが挙げられる。好適なジケトンとしては、アラルキルジケトン、例えば、アントラキノン、フェナントレンキノン、o-、m-及びp-ジアセチルベンゼン、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-、1,7-及び1,8-ジアセチルナフタレン、1,5-、1,8-及び9,10-ジアセチルアントラセンなどが挙げられる。好適なα-ジケトン(b=1かつX=CO)としては、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオン、ベンジル、2,2’-、3,3’-及び4,4’-ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ-3,3’-インドリルエタンジオン、2,3-ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2-シクロヘキサンジオン、1,2-ナフタキノンなどが挙げられる。
三元開始剤系の第3の構成成分は、供与体である。好ましい供与体としては、例えば、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランが含まれる)、アミド(ホスホルアミドが含まれる)、エーテル(チオエーテルが含まれる)、尿素(チオ尿素が含まれる)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアン酸塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。供与体は、非置換であってもよく、あるいは1つ以上の非干渉置換基によって置換されていてもよい。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又はイオウ原子などの電子供与体原子と、電子供与体原子に対してα位置にある炭素原子又はケイ素原子に結合している引き抜き可能な水素原子とを含有する。多様な供与体が、米国特許第5,545,676号に開示されており、この特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
あるいは、本発明において有用なフリーラジカル開始剤としては、アシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドのクラスが挙げられる。
好適なアシルホスフィンオキシドは、以下の一般式によって説明することができる。
(R)2-P(=O)-C(=O)-R10
式中、各Rは、個々に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルなどのヒドロカルビル基であってもよく、そのいずれもがハロ-、アルキル-、又はアルコキシ基で置換されていてもよく、あるいは2つのR基が結合して、リン原子とともに環を形成していてもよく、R10は、ヒドロカルビル基、S、O、若しくはN含有の5員若しくは6員複素環基、又は-Z-C(=O)-P(=O)-(R基であり、式中、Zは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレンなどの二価のヒドロカルビル基を表す。
好ましいアシルホスフィンオキシドは、R及びR10基が、フェニル、又は低級アルキル-若しくは低級アルコキシ-置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、そのような基が1~4個の炭素原子を有することを意味する。また、例えば米国特許第4,737,593号に例を見出すこともできる。
好適なビスアシルホスフィンオキシドは、以下の一般式によって説明することができる。
Figure 0007036506000002
式中、nは、1又は2であり、R、R、R及びRは、H、C1~4アルキル、C1~4アルコキシル、F、Cl、又はBrであり、R及びRは、同じであっても又は異なっていてもよく、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル若しくはビフェニリルラジカル、F、Cl、Br、I、C1~4アルキル及び/若しくはC1~4アルコキシルによって置換されている、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル若しくはビフェニリルラジカル、又はS若しくはN含有の5員若しくは6員複素環を表すか、あるいはR及びRが結合して、4~10個の炭素原子を含有し、かつ1~6個のC1~4アルキルラジカルによって置換されていてもよい環を形成する。
更なる例としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,4-ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、及びビス-(2-クロロ-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
アシルホスフィンオキシドビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819、Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)が好ましい場合がある。
第三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドとともに使用することもできる。本発明において有用な例証的第三級アミンとしては、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
400nm超~1200nmの波長で照射された場合にフリーラジカルを開始できる市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの25:75重量混合物(IRGACURE(商標)1700,Ciba Specialty Chemicals)、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(IRGACURE(商標)369,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタン(IRGACURE(商標)784 DC,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの1:1重量混合物(DAROCUR(商標)4265,Ciba Specialty Chemicals)、エチル-2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN(商標)LR8893X,BASF Corp.,Charlotte,NC)、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819,BASF Corp.,Charlotte,NC)が挙げられる。
増感剤及び還元剤は、典型的には、本明細書に記載されているパーツキットの1つのパート中に一緒に存在する。あるいは、光開始剤系の構成成分は、パートAとパートBとの間で配分されていてもよい。
安定性の理由から、光開始剤又は光開始剤系が、パートA、すなわち、アスコルビン酸又はその1つ又は複数の誘導体を含有しているパートに含有されていることが好ましい場合がある。
本明細書に記載されているパーツキットのパートBは、1つ又は複数の酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分を含有する。
所望される場合、1つ又は複数の酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分は、パーツキットのパートAに含有されてもよいが、ただし、得られるパートAの組成物のpH値が、湿ったpH感応紙と接触させた場合に、3~10の範囲内にあることを条件とする。
所望される場合、1つ又は複数の酸性部分を有する1つ以上の重合性構成成分が存在してもよい。それらの構成成分の性質及び構造は、意図する目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
酸部分を有する重合性構成成分は、典型的には、以下の式によって表すことができる。
-B-C
式中、Aは、(メタ)アクリル部分などのエチレン性不飽和基であり、
Bは、スペーサー基、例えば、(i)任意選択で、他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iが含まれる)、OH、又はそれらの混合物)によって置換された、直鎖又は分枝状C~C12アルキル、(ii)任意選択で、他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、又はそれらの混合物)によって置換された、C~C12アリール、(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基などであり、
Cは、酸性基、又は酸無水物などの酸性基の前駆体であり、
m、nは、独立して、1、2、3、4、5、又は6から選択され、
酸性基は、-COOH又は-CO-O-CO-などの1つ以上のカルボン酸残基、-O-P(O)(OH)OHなどのリン酸残基、C-P(O)(OH)OHなどのホスホン酸残基、-SOHなどのスルホン酸残基、又は-SOHなどのスルフィン酸残基を含む。
酸部分を有する重合性構成成分の例としては、限定されるものではないが、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ又はトリメタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル-ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸などが挙げられる。また、例えば水と容易に反応して、酸ハロゲン化物又は無水物のような上述の具体例を形成可能である、これらの酸部分を有する固化性構成成分の誘導体も企図される。
また、(メタ)アクリル酸、芳香族の(メタ)アクリル化酸(例えば、メタクリレート化トリメリト酸)などの不飽和カルボン酸のモノマー、オリゴマー及びポリマー、並びにそれらの無水物を使用することもできる。
これらの化合物の一部は、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得ることができる。酸官能性構成成分及びエチレン性不飽和構成成分の両方を有するこの種の追加的な化合物については、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び米国特許第5,130,347号(Mitra)に記載されている。多種多様な、エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有するこのような化合物を使用することができる。所望される場合、このような化合物の混合物が使用されてもよい。
(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸は、歯牙硬組織に対する接着力、均質な層の形成、粘度、又は耐湿性のような特性を向上するのに有用であることが判明しているため、それらの構成成分を使用することは好ましいことが多い。
一実施形態によれば、本組成物は、(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸、例えば、AA:ITA:IEM(ペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー)を含有する。
これらの構成成分は、例えば、AA:ITAコポリマーを、2-イソシアナトエチルメタクリレートと反応させて、コポリマーの酸基の一部をペンダントメタクリレート基に変換させることによって作製することができる。これらの構成成分を生成するためのプロセスについては、例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra)の実施例11に記載されており、米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、米国特許第4,499,251号(Omuraら)、米国特許第4,537,940号(Omuraら)、米国特許第4,539,382号(Omuraら)、米国特許第5,530,038号(Yamamotoら)、米国特許第6,458,868号(Okadaら)、並びに欧州特許出願公開第0 712 622(A1)号(Tokuyama Corp.)及び欧州特許出願公開第1 051 961(A1)号(Kuraray Co.,Ltd.)に列挙されているものがある。
存在する場合、1つ又は複数の酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分は、パートBのpH値が、水と接触させた場合に、6未満、又は4未満、又は2未満となるような量で存在するべきである。
存在する場合、1つ又は複数の酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分は、典型的には、以下の量で存在する。
下限:少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも重量%、
上限:最大50重量%、又は最大40重量%、又は最大30重量%、
範囲:2重量%~50重量%、又は3重量%~40重量%、又は4重量%~30重量%。
重量%は、パーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせることによって得られる組成物全体の重量に対するものである。
本明細書に記載されているパーツキットのパートB、及び任意選択でパートAは、1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分を含有する。
所望される場合、1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ以上の重合性構成成分が存在してもよい。それらの構成成分の性質及び構造は、意図する目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
パーツキットのパートAに含有された1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分は、パーツキットのパートBに含有された1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分と同じであっても又は異なっていてもよい。
1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分は、典型的には、エチレン性不飽和モノマーなどのフリーラジカル重合性材料のモノマー、又はオリゴマー、又はポリマーである。
好適な、1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分は、以下の式によって特徴付けることができる。
-B-A
式中、Aは、(メタ)アクリル部分などのエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)任意選択で、他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iが含まれる)、OH、若しくはそれらの混合物)によって置換された、直鎖又は分枝状C~C12アルキル、(ii)任意選択で、他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、若しくはそれらの混合物)によって置換された、C~C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは、独立して、0、1、2、3、4、5、又は6から選択されるが、ただし、n+mは0よりも大きく、すなわち、少なくとも1つのA基が存在することを条件とする。
そのような重合性材料としては、モノ、ジ、又はポリアクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)との反応生成物であるUDMAと呼ばれるジウレタンジメタクリレート(異性体の混合物、例えば、Roehm Plex 6661-0)、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-(メタ)アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン(BisGMA)、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシ-フェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレートなど;分子量200~500のポリエチレングリコールのビス-アクリレート及びビス-メタクリレート、アクリレート化モノマーの共重合性混合物(米国特許第4,652,274号を参照されたい)、及びアクリレート化オリゴマーの共重合性混合物(米国特許第4,642,126号を参照されたい);並びにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートなどのビニル化合物;ウレタン、尿素、又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望される場合、これらのフリーラジカル重合性材料のうちの2つ以上の混合物が使用されてもよい。
存在してもよい更なる重合性構成成分としては、エトキシ化ビス-フェノールAのジ(メタ)アクリレート、例えば、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、ウレタン(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。使用されるモノマーは、更には、[α]-シアノアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、及びソルビン酸のエステルであってもよい。
また、欧州特許出願公開第0 235 826号において言及されているメタクリル酸エステル、例えば、ビス[3[4]-メタクリル-オキシメチル-8(9)-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチルトリグリコレートなどを使用することも可能である。また、2,2-ビス-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン(ビス-GMA)、2,2-ビス-4(3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニルプロパン、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザへキサデカン-1,16-ジオキシジメタクリレート(UDMA)、ウレタン(メタ)アクリレート、及びビスヒドロキシメチルトリシクロ-(5.2.1.02,6)デカンのジ(メタ)アクリレートも好適である。
これらのエチレン性不飽和モノマーは、1つ又は複数の歯科用組成物において、単独で用いられてもよく、あるいは他のエチレン性不飽和モノマーと組み合わせて使用されてもよい。それらの構成成分に加えて又はそれらの構成成分の他に添加することができる他の固化性構成成分としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、及びポリウレタン(メタ)アクリレートなどのオリゴマー性又はポリマー性化合物が挙げられる。これらの化合物の分子量は、典型的には、20,000g/mol未満、特に15,000g/mol未満、具体的には10,000g/mol未満である。
また、ヒドロキシル部分及び/又は1,3-ジケト部分を含む重合性モノマーも添加することができる。好適な化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びに更に、1,2-又は1,3-、及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1,3-ジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル-1,2-ジ(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-1,2-ジヒドロキシプロピルアミン、N-(メタ)アクリロイル-1,3-ジヒドロキシプロピルアミン、フェノール及びグリシジル(メタ)アクリレートの付加物、例えば、1-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
1,3-ジケト基を有する重合性構成成分の例は、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEMA)である。所望される場合、これらの構成成分のうちの1つ以上の混合物が使用されてもよい。これらの構成成分の添加は、レオロジー特性を調整するため、又は機械的特性に影響を及ぼすために使用され得る。
1つ又は複数の酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分は、典型的には、以下の量で存在する。
下限:少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、
上限:最大65重量%、又は最大55重量%、又は最大45重量%、
範囲:5重量%~65重量%、又は10重量%~55重量%、又は20重量%~45重量%。
重量%は、パーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせることによって得られる組成物全体の重量に対するものである。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBは、1つ又は複数のフィラーを含有してもよい。
所望される場合、1つ以上のフィラーが存在してもよい。1つ又は複数のフィラーの性質及び構造は、意図する目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
フィラーの添加は、例えば、粘度のようなレオロジー特性の調整にとって有益であり得る。また、フィラーの含有量も、典型的には、硬度又は曲げ強さのような、固化後の組成物の物理的特性に影響を及ぼす。
フィラー粒子のサイズは、レジンマトリックスを形成する固化性構成成分との均質な混合物を得ることができるようなサイズとするべきである。
フィラーの平均粒度は、5nm~100μmの範囲であってもよい。
所望される場合、フィラー粒子の粒度の測定は、TEM(transmission electron microscopy、透過型電子顕微鏡検査)法によって行うことができ、これによって集団を分析して、平均粒径を得る。粒径を測定するための好ましい方法は、以下のように説明することができる。
厚さがおよそ80nmのサンプルを、炭素安定化ホルムバール基板付き200メッシュの銅グリッド(Structure Probe,Inc.,West Chester,PAの一部門であるSPI Supplies)の上に配置する。透過型電子顕微鏡写真(TEM)を、200Kvで、JEOL 200CX(日本、昭島の日本電子株式会社、販売はJEOL USA,Inc.による)を使用して撮影する。約50~100個の粒子の集団サイズを測定することができ、平均直径が決定される。
1つ又は複数のフィラーは、典型的には、非酸反応性フィラーを含む。非酸反応性フィラーは、酸との酸/塩基反応を受けないフィラーである。
有用な非酸反応性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、非酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス、石英、粉末ガラス、CaFなどの非水溶性フッ化物、ケイ酸、具体的には発熱性ケイ酸などのシリカゲル及びその顆粒、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、分子篩を含むゼオライトに基づくフィラーが挙げられる。
好適なヒュームドシリカとしては、例えば、Aerosil(商標)シリーズOX-50、-130、-150、及び-200の商品名で販売されている製品、Degussa AG(Hanau,Germany)から入手可能であるAerosil R8200、-R805、Cabot Corp(Tuscola,Ill.)から入手可能であるCAB-O-SIL(商標)M5、並びにWackerから入手可能であるHDKタイプ、例えば、HDK-H2000、HDK H15、HDK H18、HDK H20、及びHDK H30が挙げられる。
また、使用が可能であり、本明細書に記載されている歯科用材料に放射線不透過性を提供する1つ又は複数のフィラーとしては、1つ又は複数の重金属酸化物及び1つ又は複数のフッ化物が挙げられる。本明細書において使用される場合、「放射線不透過性」とは、従来の様式の標準的な歯科用X線装置を使用して歯牙構造から区別される、固化した歯科用材料の能力を表す。歯科用材料における放射線不透過性は、X線を使用して歯牙の状態を診断する、ある特定の事例において有利である。例えば、放射線不透過性材料は、充填材を囲んでいる歯組織に形成されている場合がある二次齲蝕の検出を可能とし得る。放射線不透過性の所望される度合いは、具体的な用途及びX線フィルムを評価する施術者の予測に応じて変わり得る。
約28を超える原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が好ましい場合がある。重金属酸化物又はフッ化物は、分散される固化レジンに対して望ましくない色又は濃淡が付与されることがないように選択するべきである。例えば、鉄及びコバルトは、歯科用材料の歯の無彩色に、暗く対比的な色を付与するため、好まれない。重金属酸化物又はフッ化物は、30を超える原子番号を有する金属の酸化物又はフッ化物であることがより好ましい。好適な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、原子番号が57~71の範囲(両端の値を含む)の元素)、セリウムの酸化物、及びそれらの組み合わせである。好適な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウム及び三フッ化イッテルビウムである。30超~72未満の原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が、任意選択で、本発明の材料中に含まれることがより好ましい。特に好ましい、放射線不透過性を付与する金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。重金属酸化物粒子は凝集してもよい。この場合、凝集した粒子の平均直径は、約200nm未満であることが好ましく、約90nm未満であることがより好ましい。
放射線不透過性を上昇させる他の好適なフィラーは、バリウム及びストロンチウムの塩、特に、硫酸ストロンチウム及び硫酸バリウムである。
また、使用することができる1つ又は複数のフィラーとしては、ナノサイズシリカなどのナノサイズフィラーも挙げられる。
好適なナノサイズ粒子は、典型的には、約5~約80nmの範囲の平均粒度を有する。
好ましいナノサイズシリカは、商品名NALCO COLLOIDAL SILICASで、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)(例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329を使用して得ることができる)から、Nissan Chemical America Company,Houston,Texas(例えば、SNOWTEX-ZL、-OL、-O、-N、-C、-20L、-40、及び-50)から;株式会社アドマテックス、日本(例えば、SX009-MIE、SX009-MIF、SC1050-MJM、及びSC1050-MLV)から;Grace GmbH & Co.KG,Worms,Germany(例えば、製品名LUDOX、例えば、P-W50、P-W30、P-X30、P-T40、及びP-T40ASで入手可能なもの)から;Akzo Nobel Chemicals GmbH,Leverkusen,Germany(例えば、製品名LEVASIL、例えば、50/50%、100/45%、200/30%、200A/30%、200/40%、200A/40%、300/30%、及び500/15%として入手可能なもの)から、並びにBayer MaterialScience AG,Leverkusen,Germany(例えば、製品名DISPERCOLL S、例えば、5005、4510、4020及び3030で入手可能なもの)から市販されている。
歯科用材料に入れる前にナノサイズシリカ粒子を表面処理すると、レジン中に、より安定して分散させることができる。好ましいことに、表面処理は、粒子が固化性レジン中に良好に分散されるようにナノサイズ粒子を安定化させ、結果として、実質的に均質な組成物をもたらす。更に、安定化された粒子が、硬化中に、固化性レジンと共重合したり、あるいは別様に反応したりできるように、シリカの表面の少なくとも一部分を、表面処理剤によって改質することが好ましい。
したがって、シリカ粒子及び他の好適な非酸反応性フィラーは、レジン相溶化表面処理剤で処理されてもよい。
特に好ましい表面処理剤又は表面改質剤としては、レジンと重合可能であるシラン処理剤が挙げられる。好ましいシラン処理剤としては、Witco OSi Specialties(Danbury,Conn.)から販売名A-174で市販されている、ガンマ-メタクリルオキシルプロピルトリメトキシシラン、及びUnited Chemical Technologies(Bristol,Pa.)から販売名G6720で入手可能な製品である、ガンマ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
あるいは、表面改質剤の組み合わせが有用である場合があり、これらの薬剤のうち少なくとも1つは、固化性レジンと共重合可能である官能基を有する。例えば、重合性基は、エチレン性不飽和官能基、又は開環重合を起こす環式官能基であり得る。エチレン性不飽和重合性基は、例えば、アクリレート基若しくはメタクリレート基、又はビニル基であり得る。開環重合を起こす環式官能基は、一般的に、酸素、硫黄、又は窒素などのヘテロ原子を含有しており、エポキシドなどの酸素を含有する3員環であることが好ましい。一般的に固化性レジンとは反応しない他の表面改質剤が、分散性又はレオロジー特性を強化するために含まれてもよい。この種のシランの例としては、例えば、アルキル若しくはアリールポリエーテルシラン、アルキルシラン、ヒドロキシアルキルシラン、ヒドロキシアリールシラン、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
また、無機材料に加えて、1つ又は複数のフィラーは有機材料に基づいてもよい。好適な有機フィラー粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシドなどが挙げられる。
本明細書に記載されているパーツキットのパートAが、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分を含有しない場合には、所望により、酸反応性フィラーがパートAに含有されてもよい。
パーツキットのパートA中に存在し得る酸反応性フィラーの例としては、酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス(GICガラスと呼ばれる場合もある)、カルシウム、マグネシウム、ランタン、ストロンチウム、亜鉛の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩、又はそれらの混合物のような塩基性フィラーが挙げられる。これらのフィラーもまた、表面処理することができる。また、好適な酸反応性フィラーについては、例えば、英国特許第1,316,129号及び国際公開第95/22956号(Wangら)にも記載されている。
フィラーマトリックスに使用されるフィラーの量は、通常、組成物が使用されるべき目的に左右される。
存在する場合、フィラーは、典型的には、以下の量で存在する。この量は、組成物全体の重量に対して与えられたものである。
下限:少なくとも1重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、
上限:最大90重量%、又は最大80重量%、又は最大70重量%、
範囲:1重量%~90重量%、又は5重量%~80重量%、又は10重量%~70重量%。
フィラーの量が少な過ぎる場合、硬化した組成物の機械的強度が、意図する用途にとって低くなり過ぎる可能性がある。
フィラーの量が多過ぎる場合、粘度が高くなり過ぎるなどの望ましくない取り扱い上の特性が生じたり、歯牙硬組織の湿潤及び透過が不良になったりする可能性がある。
上述の構成成分に加えて、本明細書に記載されている組成物又はパーツキットのパートは、1つ、2つ又はそれ以上の添加剤を更に含有してもよい。
使用することができる補助剤の添加剤としては、促進剤、阻害剤又は遅延剤、吸収剤、安定剤、色素、染料、表面張力抑制剤、及び湿潤助剤、酸化防止剤、並びに当業者に周知の他の成分が挙げられる。組成物中の各成分の量及び種類は、重合前及び重合後に所望される物理的特性及び取り扱い特性がもたらされるように調整すべきである。
使用することができる染料又は色素の例としては、二酸化チタン又は硫化亜鉛(リトポン)、赤色酸化鉄3395、Bayferrox 920 Z Yellow、Neazopon Blue 807(銅フタロシアニン系染料)、又はHelio Fast Yellow ERが挙げられる。これらの添加剤は、歯科用組成物の個々の着色のために使用することができる。
存在し得る光漂白性着色剤の例としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’-ジブロモフルオレセイン、及びそれらのブレンドが挙げられる。光漂白性着色剤の更なる例は、米国特許第6,444,725号に見出すことができる。本発明の組成物の色は、増感化合物によって追加的に付与することができる。
存在し得るフッ化物剥離剤の例としては、天然又は合成フッ化物鉱物が挙げられる。これらのフッ化物源は、任意選択で、表面処理剤で処理することができる。
添加することができる更なる添加剤としては、安定剤、特にフリーラジカルスカベンジャー、例えば、置換された及び/又は非置換のヒドロキシ芳香族化合物(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エトキシフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(ジメチルアミノ)メチルフェノール、又は2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(UV-9)、2-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジ-tert-ペンチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、フェノチアジン、及びHALS(ヒンダードアミン光安定剤)が挙げられる。このような補助剤は、任意選択で、レジンと共重合するように反応性部分を含んでもよい。
添加することができる更なる添加剤としては、遅延剤(例えば1,2-ジフェニルエチレン)、可塑剤(ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリエステル、フタル酸ジブチル、ジオクチル、ジノニル及びジフェニル、ジ(イソノニルアジペート)、トリクレジルホスフェート、パラフィン油、三酢酸グリセロール、ビスフェノールAジアセテート、エトキシル化ビスフェノールAジアセテート、並びにシリコーン油が含まれる)、風味剤、抗菌剤、香粧料、蛍光及び/又は乳光を付与する薬剤が挙げられる。
また、歯科用材料の可撓性を増大させるために、ポリ酢酸ビニルなどの可溶性有機ポリマー、及びそれらのコポリマーを添加することも可能である。
これらの補助剤又は添加剤は絶対的に存在する必要があるわけではないため、補助剤又は添加剤は、まったく存在しない場合もある。しかしながら、これらの補助剤又は添加剤は、存在する場合、典型的には、意図する目的にとって有害ではない量で存在する。
存在する場合、1つ又は複数の添加剤は、典型的には、以下の量で存在する。この量は、組成物全体の重量に対して与えられたものである。
下限:少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大15重量%、又は最大10重量%、又は最大5重量%、
範囲:0.01重量%~15重量%、又は0.05重量%~10重量%、又は0.1重量%~5重量%。
一実施形態によれば、本明細書に記載されているパーツキットはパートA及びパートBを含み、
パートAは、
0.1~2重量%の量であることが好ましい、アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
0.1~1重量%の量であることが好ましい、1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤、
0.01~0.2重量%の量であることが好ましい、光開始剤、
60~85重量%の量であることが好ましい、1つ又は複数のフィラー、
15~35重量%の量であることが好ましい、酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分
を含み、
パートBは、
0.005~0.5重量%の量であることが好ましい、銅イオン又は鉄イオンを含有する塩を含む、1つ又は複数の遷移金属構成成分、
0.5~3重量%の量であることが好ましい、本明細書において上に記載されている、構造R-O-O-H[式中、Rは、(例えば、C~C20)アルキル、(例えば、C~C20)分枝状アルキル、(例えば、C~C12)シクロアルキル、(例えば、C~C20)アルキルアリール、又は(例えば、C~C12)アリールである]を有する1つ又は複数の有機ペルオキシド、
50~70重量%の量であることが好ましい、1つ又は複数のフィラー、
10~45重量%の量であることが好ましい、酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
3~20重量%の量であることが好ましい、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分
を含み、
重量%は、それぞれ、パートA又はパートBの重量に対するものであり、
パートA及びパートBを混合した直後に得られる組成物は、水と接触した際のpH値が7未満であり、
パートA及びパートBのどちらも、
スルフィネート部分を含む1つ又は複数の構成成分、
バルビツール酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
チオバルビツール酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
ホウ酸アリール部分を含む1つ又は複数の構成成分、
チオ尿素部分を含む1つ又は複数の構成成分
から選択される構成成分を含まず、
パートA及びパートBに含有された組成物は、組み合わせた際に、自己接着性、自己エッチング性、自己硬化性、又は任意選択で二重硬化性の歯科用組成物を形成する。
本明細書に記載されているパーツキットに含有された1つ又は複数の組成物は、組成物の個々の構成成分を、好ましくは「安全な光」条件下で組み合わせる(混合及び混練が含まれる)ことによって得ることができる。
混合物を準備する際、所望されるならば、好適な不活性溶媒を用いてもよい。感知できるほどには本発明の組成物の構成成分と反応しない、任意の溶媒を使用することができる。
溶媒の例としては、限定されるものではないが、2~10個のC原子を有する、直鎖、分枝状、又は環状の飽和又は不飽和アルコール、ケトン、エステル、又はこれらの種類の溶媒のうち2つ以上の混合物が挙げられる。好ましいアルコール性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn-プロパノールが挙げられる。
他の好適な有機溶媒は、THF、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、トルエン、アルカン、及び酢酸アルキルエステル、具体的には酢酸エチルエステルである。
上述の溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは溶媒混合物が、所望される結果が得られなくなるほど接着特性を損なわないのであれば、これらの溶媒のうちいずれか2つ以上の混合物として使用してもよい。
本発明はまた、本明細書に記載されているパーツキットに含有された1つ又は複数の構成成分を組み合わせる(例えば、混合する又はブレンドする)ことによって得ることができる、あるいはそれによって得られる組成物も対象とする。
そのような組成物は、本明細書に記載されている開始剤系と、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分と、酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分と、任意選択の1つ又は複数のフィラーと、任意選択の1つ又は複数の添加剤とを含有し得る。
組成物は、これらの構成成分を、以下の量で含み得る。
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分:0.01重量%~5重量%、又は0.05~3重量%、又は0.1~1重量%、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤:0.01重量%~5重量%、又は0.05~3重量%、又は0.1~1重量%、
1つ又は複数の遷移金属構成成分:0.00001重量%~3重量%、又は0.0001~2重量%、又は0.001~1.5重量%、
1つ又は複数の有機ペルオキシド:0.01重量%~5重量%、又は0.05~4重量%、又は0.1~3重量%、
酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分:5重量%~65重量%、又は10~55重量%、又は20~45重量%、
酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分:2重量%~50重量%、又は3~40重量%、又は4~30重量%、
1つ又は複数のフィラー:1重量%~90重量%、又は5~80重量%、又は10~70重量%、
1つ又は複数の添加剤:0.01重量%~15重量%、又は0.05~10重量%、又は0.1~5重量%。
重量%は、組成物全体の量に対するものである。
一実施形態によれば、本明細書に記載されており、パートAの組成物及びパートBの組成物を組み合わせることによって得ることができる、あるいはそれによって得られる、歯科用組成物は、構成成分を、以下の量で含む。
アスコルビン酸を含む1つ又は複数の構成成分:0.1重量%~1重量%、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤:0.1重量%~1重量%、
1つ又は複数の遷移金属構成成分:0.001重量%~1.5重量%、
1つ又は複数の有機ペルオキシド:0.1重量%~3重量%、
酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分:20重量%~45重量%、
酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分:4重量%~30重量%、
1つ又は複数のフィラー:存在する場合、10重量%~70重量%、
1つ又は複数の添加剤:存在する場合、0.1重量%~5重量%。
重量%は、組成物全体の量に対するものである。
本明細書に記載されている組成物は、多様な歯科用材料及び歯科矯正用材料としての使用に対して特に良く適合され、これらの材料は、充填されるものであっても、あるいは充填されないものであってもよい。
そのような材料としては、直接審美的修復材料(例えば、前歯用及び奥歯用修復材)、口腔硬組織用の接着材、シーラント、キャビティライナー、任意の種類のブラケット(例えば、金属、プラスチック、及びセラミックなど)とともに使用するための歯科矯正ブラケット用の接着材、クラウン及びブリッジセメントなどが挙げられる。
これらの材料は口内で使用され、天然歯に隣接して配置される。本明細書において使用される場合、「隣接して配置される」という語句は、歯科用材料を、天然歯に対して一時的又は永久的に固着(例えば、接着)させるように、又は天然歯と接触(例えば、咬合又は近位)させるように配置することを指す。「コンポジット」という用語は、歯科用材料の文脈で本明細書において使用される場合、充填される歯科用材料を指す。「修復材」という用語は、本明細書において使用される場合、歯に隣接して配置された後に重合される、歯科用コンポジットを指す。「プロテーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、歯に隣接して配置される前に、最終用途(例えば、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレーなどとしての用途)に応じて成形及び重合されるコンポジットを指す。「シーラント」という用語は、本明細書において使用される場合、歯に隣接して配置された後に硬化される、軽く充填された歯科用コンポジット又は充填されていない歯科用材料を指す。
歯科分野又は歯科矯正分野における、本明細書に記載されている組成物の可能な用途としては、前歯用又は奥歯用充填材、接着材、キャビティライナー、フロアブル、セメント、コーティング組成物、根管充填材、根管シーラント、又は支台築造材料としての使用が挙げられる。
本明細書に記載されている組成物は、歯牙硬組織の表面に対して適用し、自己硬化メカニズムによって、又は任意選択で放射線を適用することによって硬化させることができる。
本明細書に記載されている組成物のための典型的な適用プロセスは、典型的には、所望される順序で以下の工程を含む。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を準備する工程、
組成物を、歯牙硬組織、特にその表面と接触させて配置する工程、
その組成物を、自己硬化メカニズムによって、又は任意選択で重合プロセスを開始するのに十分な期間(例えば、5~20秒間)、組成物に対して放射線(例えば、可視光)を適用することによって硬化させる工程。
組成物は自己接着性であるため、予めエッチング工程を行ったり、ボンディング材/プライマーを使用したりする必要はない。したがって、本明細書に記載されている組成物は、自己接着性、自己エッチング性セメントとして使用することができる。
しかしながら、所望される場合、予めエッチング工程を適用したり、接着材/プライマー系を使用したりすることも可能である。したがって、本明細書に記載されている組成物は、接着セメント合着処置(すなわち、接着材と組み合わせたセメント組成物)において使用することもできる。
驚くべきことに、例えば、本明細書に記載されている組成物が適用される前に、歯の表面が自己エッチング性接着材によって処理されていた場合でも、硬化された、本明細書に記載されている組成物の物理的特性/機械的特性は悪影響を受けないことが判明した。しかしながら、予めエッチング工程及び/又は接着結合工程が実行されると、硬化された、本明細書に記載されている組成物の接着強さは、典型的には更に向上される。
したがって、一実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物のための適用プロセスは、以下の工程を含む。
自己エッチング性接着材を歯牙硬組織の表面に対して適用する工程、
任意選択で、自己エッチング性接着材を硬化させる工程、
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を準備する工程、
その組成物を、硬化性自己エッチング性接着材で予め処理された歯牙硬組織と接触させる工程、
その組成物を、自己硬化メカニズムによって、又は任意選択で重合プロセスを開始するのに十分な期間(例えば、5~20秒間)、組成物に対して放射線(例えば、可視光)を適用することによって硬化させる工程。
自己エッチング性接着材は、典型的には、歯科用セメントと比較すると、より低い粘度を有する。使用することができる、好適な自己エッチング性接着材としては、例えば、Scotchbond(商標)Universal Adhesive又はAdper(商標)Prompt(商標)L-Pop(両方とも3M ESPE製)が挙げられる。自己エッチング性接着材は、別のエッチング工程(例えば、リン酸による工程)を必要としない接着材である。
別の実施形態(トータルエッチング手順)によれば、本明細書に記載されている組成物のための適用プロセスは、以下の工程を含む。
歯牙硬組織の表面のエッチング(例えば、リン酸を使用することによる)及び水によるすすぎ工程、
接着材を、エッチングを施した歯牙硬組織の表面に適用する工程、
任意選択で、接着材を硬化させる工程、
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を組み合わせる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を準備する工程、
この組成物を、接着材で予め処理された歯牙硬組織と接触させる工程、
この組成物を、自己硬化メカニズムによって、又は任意選択で重合プロセスを開始するのに十分な期間(例えば、5~20秒間)、組成物に対して放射線(例えば、可視光)を適用することによって硬化させる工程。
接着材は、典型的には、歯科用セメントと比較すると、より低い粘度を有する。好適なトータルエッチング接着材としては、例えば、Adper(商標)Scotchbond(商標)1XT及びAdper(商標)Scotchbond(商標)Multipurpose(両方とも3M ESPE製)が挙げられる。
放射線の適用にとって好適なツールとしては、歯科用硬化光が挙げられる。好適な歯科用硬化光については、例えば、米国特許出願第2005/0236586号に記載されている。ここに、この文書の内容が、参照により組み込まれる。また、好適な歯科用硬化光は、例えば、Elipar(商標)S10(3M Oral Care、3M ESPE)の商品名で市販もされている。
本明細書に記載されているパーツキットのパートA及びパートBは、別々の密封容器(例えば、プラスチック又はガラスで作製されている)に格納されてもよい。
使用する場合、施術者は、格納されている組成物の適当なポーションを容器から取り出し、そのポーションを混合プレート上で手作業によって混合してもよい。
好ましい実施形態によれば、パートA及びパートBは、保存デバイスの別々のコンパートメントに格納されている。
保存デバイスは、典型的には、それぞれのパートを保存するための2つのコンパートメントを備え、各コンパートメントには、それぞれのパートを送達するためのノズルが備え付けられている。適当なポーションが送達された後、これらのパーツは、混合プレート上で手作業によって混合され得る。
別の好ましい実施形態によれば、保存デバイスは、静的ミキシングチップを受容するための境界面を有する。ミキシングチップは、それぞれのペーストを混合するために使用される。静的ミキシングチップは、例えば、Sulzer Mixpac companyから市販されている。
好適な保存デバイスは、カートリッジ、シリンジ、及びチューブを含む。
保存デバイスは、典型的には、ノズルを伴う前端及び後端を有する2つのハウジング又はコンパートメントと、少なくとも1つの、ハウジング又はコンパートメント中で移動可能なピストンとを備える。
使用することができるカートリッジについては、例えば米国特許出願第2007/0090079号又は米国特許第5,918,772号に記載されており、これらの開示は、参照により組み込まれる。使用することができるカートリッジの一部は、例えば、Sulzer Mixpac AG(Switzerland)から市販されている。使用することができる静的ミキシングチップについては、例えば米国特許出願第2006/0187752号又は米国特許第5,944,419号に記載されており、これらの開示は、参照により組み込まれる。使用することができるミキシングチップも、Sulzer Mixpac AG(Switzerland)から市販されている。
他の好適な保存デバイスについては、例えば国際公開第2010/123800号(3M)、国際公開第2005/016783号(3M)、国際公開第2007/104037号(3M)、国際公開第2009/061884号(3M)、具体的には、国際公開第2009/061884号(3M)の図14に示されているデバイス、又は国際公開第2015/073246号(3M)、具体的には、国際公開第2015/07346号の図1に示されているデバイスに記載されている。これらの保存デバイスは、シリンジの形状を有している。ここに、これらの参考文献の内容も、参照により組み込まれる。
あるいは、好ましさはより低いが、本明細書に記載されているペースト/ペースト組成物は、2つの個々のシリンジ中に準備してもよく、個々のペーストを、使用前に手作業によって混合してもよい。
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているパーツキットを保存するためのデバイスであって、デバイスは、2つのコンパートメント、コンパートメントA及びコンパートメントBを備え、コンパートメントAはパートAを格納し、コンパートメントBはパートBを格納し、パートA及びパートBは本明細書に記載されている通りであり、コンパートメントA及びコンパートメントBは両方とも、ノズル、又は静的ミキシングチップのエントランスオリフィスを受容するための境界面を備える、デバイスも対象とする。
パートA及びパートBの混合比は、典型的には、体積に関して、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1:1である。
低粘度組成物はまた、熱シールによって相互連結し、かつ液体を受容するためのコンパートメントと、ブラシを受容するためのポケットとを協働して形成する2枚のシートによって形成される容器中において保存されてもよい。これらの種類のデバイスについては、例えば、米国特許第6,105,761号に記載されている。
容器の容量は、典型的には、0.1~100mL、又は0.5~50mL、又は1~30mLの範囲である。
選ばれた配合に応じて、本明細書に記載されている組成物は、液体/液体又はペースト/ペースト配合物として提供することができる。
本発明はまた、以下:
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤、
銅イオン含有塩又は鉄イオン含有塩、
好ましくは、ヒドロペルオキシド部分又はジペルオキシド部分を有する構成成分を含む、1つ又は複数の有機ペルオキシド
を含む開始剤系も対象とする。
個々の構成成分については、本明細書に記載されている通りである。
本発明はまた、以下:
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤、
好ましくは、銅イオン含有塩又は鉄イオン含有塩を含む、1つ又は複数の遷移金属構成成分、
ヒドロペルオキシド部分又はジペルオキシド部分を有する構成成分
を含む開始剤系も対象とする。
個々の構成成分については、本明細書に記載されている通りである。
本発明はまた、以下:
アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
1つ又は複数のサルファイト、1つ又は複数のホスファイト、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の安定剤、
銅イオン含有塩又は鉄イオン含有塩、
ヒドロペルオキシド部分又はジペルオキシドを有する構成成分、
増感剤(例えば、αジ-ケト部分を含む構成成分)及び還元剤(例えば、第三級アミン)
を含む開始剤系も対象とする。
個々の構成成分については、本明細書に記載されている通りである。
このような開始剤系は、酸性組成物の硬化にとって特に有用であり、本明細書に記載されているものを含めた、自己接着性、自己エッチング性、かつ/又は自己硬化性組成物の配合にとって特に有用である。
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されている、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分を含む組成物を硬化させるための、本明細書に記載されている開始剤系の使用、又は本明細書に記載されている、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分と開始剤系とを含む組成物も対象とする。
本発明はまた、本明細書に記載されている、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分を含む歯科用組成物を、本明細書に記載されている開始剤系を使用することによって固化するプロセスも対象とする。
本発明はまた、本明細書に記載されている、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分と、20重量%を超えるフィラーと、開始剤系とを含む組成物も対象とする。このような組成物は、具体的には、歯科用充填材又はコンポジット材料として有用である。
本発明はまた、本明細書に記載されている、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分と、15重量%未満のフィラーと、開始剤系とを含む組成物も対象とする。このような組成物は、具体的には、歯科用接着材として有用である。
開始剤系の個々の構成成分については、パーツキットに関して本明細書に記載されている通りである。
本明細書に記載されている組成物又は開始剤系は、典型的には、スルフィネート部分(特に、トルエンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩)、バルビツール酸部分、チオバルビツール酸部分、ホウ酸アリール部分、チオ尿素部分、又はこれらの混合物を含む構成成分を含有しない。
したがって、更なる実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物又は開始剤系は、以下の構成成分又はそれらの組み合わせのいずれも含んではならない。
バルビツール酸部分又はチオバルビツール酸部分を含む構成成分、
ホウ酸アリール部分を含む構成成分、
スルフィネート部分を含む構成成分、
チオ尿素部分、
ホウ酸アリール部分を含む構成成分、及びスルフィネート部分を含む構成成分。
一実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、組成物全体の重量に対して、1、又は3、又は5重量%を超える量でBis-GMAを含まない。一実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、Bis-GMAを本質的に含まない。
更なる実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、組成物全体の重量に対して、1、又は3、又は5重量%を超える量でHEMAを含まない。一実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、HEMAを本質的に含まない。
更なる実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、組成物全体の重量に対して、0.5、又は1、又は2重量%を超える量の水を含まない。一実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、水を本質的に含まない。水の量を低く保つことにより、所望されない組成物の膨張のリスクを低減することができ、十分な曲げ強さのような所望される物理的特性を達成するのに役立てることができる。
更なる実施形態によれば、本明細書に記載されている組成物は、組成物全体の重量に対して、0.5、又は0.2、又は0.1重量%を超える量でポリ酸を含まない。ポリ酸は、典型的には、水の存在下におけるポリ酸と酸反応性フィラーとの反応によって硬化する、いわゆるガラス-イオノマーセメント組成物において使用される。したがって、本明細書に記載されている組成物は、水の存在下におけるポリ酸と酸反応性フィラーとの反応によって硬化することはない。
これらの構成成分は、(例えば、使用される原材料中の不純物に起因して)わずかな量が不可避的に存在してもよい。しかしながら、それらの構成成分は、典型的には、硬化反応に関与する量で故意に添加されることはない。
別途指示のない限り、すべての部及び百分率は重量に基づき、すべての水は脱イオン水であり、すべての分子量は重量平均分子量である。また、別途指示のない限り、すべての実験は、周囲条件(23℃)下で実行した。また、ほぼすべてのプロセス工程は、約50%の相対湿度の雰囲気下で実行する。
方法
粘度
所望される場合、粘度は、23℃での制御されたせん断速度において、コーン/プレートジオメトリーCP25-1を備えたPhysica MCR 301レオメーター(Anton Paar,Graz,Austria)を使用して測定することができる。コーン径は25mmであり、コーン角は1°であり、コーンの先端とプレートの間の距離は49μmである。せん断速度は、100秒-1から0.001秒-1まで、対数的に低下させる。
曲げ強さ及びE-弾性率
この測定は、ISO 4049:2000に従って実行した。
接着力(せん断接着強さ)
この測定は、以下の通りに実行した。基材として、ウシの歯を冷硬化エポキシレジンに埋め込み、320グリットのSiCペーパーで研磨して象牙質又はエナメル質を露出させた。最後に、各歯の表面を水ですすぎ、穏やかに風乾した。直径4mm及び高さ2mmの、サンドブラスト処理及びシラン処理を行ったステンレス鋼ロッドに、混合したセメントを適用した。ロッドを歯表面上に置き、デバイスを用いて、20g/mmの圧力をロッドに適用した。過剰なセメントは直ぐに取り除いた。自己硬化の場合、酸素阻害ゲル(例えば、グリセリンゲル)を適用し、36℃で10分間、装置を保存した。光硬化の場合、セメントを4方向から光硬化し(Elipar(商標)S10を用いてそれぞれ10秒)、これもまた、デバイスを36℃で10分間放置した。36℃で10分間経過した後、固着した試験体を装置から取り外し、36℃及び相対湿度100%において、24時間保存した。その後、万能試験機(Zwick)を用いて、0.75mm/分のクロスヘッド速度で、せん断接着強さ(shear bond strength、SBS)を測定した。
曲げ強さ(flexural strength、FS)、並びにエナメル質及び象牙質に対する接着力を決定するため、パートA及びパートBをそれぞれ、1:1の比(体積)で混合した。
保存安定性の決定
保存安定性は、保存中の組成物の作用時間(Ta)及び凝結時間(Tf)を測定することによって決定することができる。理想的には、これらのパラメーターは、貯蔵寿命の間、一定であるべきである。
長期の貯蔵寿命のシミュレーションを行うため、それぞれのパートをカートリッジ中に充填し、以下の通りに保存した。パートAは50℃で保存し、パートBは23℃で保存した。
作用時間及び凝結時間は、以下の通りに決定した。
直径8mmのプレート/プレートジオメトリーを備えたPhysica MCR 301レオメーター(Anton Paar,Graz,Austria)を、28℃の温度で使用した。プレートの間にセメントを適用し、ギャップは0.75mmに設定した。周波数は1.25Hzであり、振動は1.75%の偏向を伴った。
作用時間(Ta)は、混合の開始から、G’及びG’’の交点に達した時間までの時間として定義される。凝結時間(Tf)は、混合の開始から、混合ペーストが、100,000Paのせん断応力に達するまでの時間までの時間として定義される。
Figure 0007036506000003

Figure 0007036506000004

Figure 0007036506000005
パートAの組成物及びパートBの組成物を、体積比1:1で混合して、本発明の組成物1(Inventive Composition 1、IC 1)及び比較用組成物2(Comparative Composition 2、CC 2)を得た。Ta及びTfを決定した。
Figure 0007036506000006
発見:安定剤を含有する組成物は、安定剤を含有しない組成物と比較して、4週間後でも、Ta及びTfの増加は低減されていた。
IC 1及びCC 2の組成物はまた、曲げ強さ及びせん断接着強さに関しても試験した。
Figure 0007036506000007

Claims (9)

  1. パートA及びパートBを含む歯科用パーツキットであって、
    パートAは、
    アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
    有機サルファイト、有機ホスファイト、又はそれらの混合物から選択される安定剤、
    任意選択の、酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
    任意選択の、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
    任意選択の1つ又は複数のフィラー、
    任意選択の1つ又は複数の添加剤を含み、
    パートBは、
    酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
    酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
    1つ又は複数の遷移金属構成成分であって、遷移金属として、水和物又は乾燥物の形態であるTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、及びそれらの混合物から選択される遷移金属構成成分、
    1つ又は複数の有機ペルオキシド、
    任意選択の1つ又は複数のフィラー、
    任意選択の1つ又は複数の添加剤を含む、
    パーツキット。
  2. パートAは、
    アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分、
    有機サルファイト、有機ホスファイト、又はそれらの混合物から選択される安定剤、
    酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
    1つ又は複数のフィラー、
    任意選択の、酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
    任意選択の1つ又は複数の添加剤を含み、
    パートBは、
    酸性部分を有しない1つ又は複数の重合性構成成分、
    酸性部分を有する1つ又は複数の重合性構成成分、
    1つ又は複数の遷移金属構成成分、
    1つ又は複数のヒドロペルオキシド及び1つ又は複数のジペルオキシドから選択される1つ又は複数の有機ペルオキシド、
    1つ又は複数のフィラー、
    任意選択の1つ又は複数の添加剤を含み、
    前記パーツキットは、ペースト/ペースト系として提供される、
    請求項1に記載のパーツキット。
  3. 前記パーツキットのパートAにおける、前記アスコルビン酸部分を含む1つ又は複数の構成成分の、前記1つ又は複数の安定剤に対する比は、molに関して、1:5~5:1の範囲である、請求項1又は2に記載のパーツキット。
  4. パートAの組成物は、湿ったpH感応紙と接触させた場合に、6~8のpH値を有し、
    パートBの組成物は、湿ったpH感応紙と接触させた場合に、4未満のpH値を有する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のパーツキット。
  5. 前記1つ又は複数の有機ペルオキシドは、構造部分R-O-O-H(式中、Rは、アルキル、分枝状アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、又はアリール部分である)を含むヒドロペルオキシドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のパーツキット。
  6. 前記1つ又は複数の有機ペルオキシドは、部分R-O-O-R-O-O-R(式中、R及びRは、独立して、H、アルキル、分枝状アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、又はアリールから選択され、Rは、アルキル又は分枝状アルキルから選択される)を含むジペルオキシドである、請求項1~5のいずれか一項に記載のパーツキ ット。
  7. 前記1つ又は複数の遷移金属構成成分は、水和物又は乾燥物の形態である酢酸銅、塩化銅、安息香酸銅、銅アセチルアセトネート、ナフテン酸銅、カルボン酸銅、銅ビス(1-フェニルペンタン-1,3-ジオン)、銅錯体、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のパーツキット。
  8. パートA又はパートBは、光開始剤を追加的に含み、前記光開始剤は、好ましくは、増感剤と、前記アスコルビン酸部分を含む構成成分とは異なる、更なる還元剤とを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のパーツキット。
  9. 請求項1~のいずれか一項に記載のパーツキットのパートAの組成物及びパートBの組成物を混合し、得られた混合物を硬化させることによって得ることができる、歯科用又は歯科矯正用組成物であって、自己エッチング性、自己接着性、かつ自己硬化性の組成物である、歯科用組成物。
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