JP7034748B2 - バイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法およびバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法 - Google Patents
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セルロースの解繊工程についても、グラインダー、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなど明確に定められていないが、この解繊工程は、CNF乾燥体を製造する上で重要な要素である。また、効果として、取扱性や再分散性の向上について述べているものの、樹脂と配合したときに特長的な物性は、未だ確認されていない。
本発明によれば乾燥前において、BNFを均一に撹拌混合することで、樹脂への分散性に優れた乾燥体となる。
本発明によれば、樹脂への分散性が低下することのない、有機成分が含有されたBNF乾燥体を製造することができる。
本発明によれば、熱風の入口温度を上記範囲内とすることにより、効率よく乾燥し、BNF乾燥体の形状を安定化させることができる。
本発明によれば、BNF乾燥体を熱可塑性樹脂に分散させると、BNF乾燥体の凝集体が100μm未満となったBNF樹脂複合体(BNF乾燥体と熱可塑性樹脂の複合体)を得ることができる。
水に分散させたバイオマススラリーを調整する。本発明に関するBNF(CNF)は、セルロースを機械粉砕して得られる繊維であり、セルロースとしては、結晶形がI型のセルロース(セルロースI型)である木材パルプや、コットン、リンター、麻、バクテリアセルロース、柔細胞繊維などの非木系パルプ、結晶形がII型のセルロース(セルロースII型)である溶解剤としてN一メチルモルホリンN―オキシド/水溶媒、銅アンモニア錯体、水酸化ナトリウム/二硫化炭素を用いた再生セルロース繊維などが用いられる。セルロースII型は、分子量および結晶化度が低下しているため、セルロースI型よりも繊維が切断されやすく、また、耐熱性も低いので、好ましい材料としては、セルロースI型である。原料セルロースを機械粉砕する方法としては、パルプをビーターやリファイナーで所定の長さとして、高圧ホモジナイザー、グラインダー、衝撃粉砕機、ビーズミルなどを用いて、フィブリル化または微細化することで機械粉砕する方法が知られている。
この解繊手法は、市販されている高圧ホモジナイザーのように、分散流体を高圧低速で狭い流路を通過させ、解放時に均質化させるせん断力だけではなく、衝突用硬質体に衝突させることによる衝突力や、キャビテーションを利用した、高圧での連続処理が可能である。これらWJのせん断力、衝突力、キャビテーションを利用した解繊手法をWJ法と定義する。また、衝突処理を1回行うことを1パスとして、均―なナノファイバーを得るには、好ましくは1~30パス、さらに好ましくは5~20パスの繰り返し衝突を行う必要がある。
また、セルロースBでは、パス回数による重合度低下は生じなかった。重合度は、原料セルロースの分子量や繊維サイズに依存し、高圧噴射処理による重合度の低下は原料の重合度の6~8割を維持しており、その減少幅が少ない。このため、原料セルロースの重合度を調整することで、重合度の異なる高結晶でアスペクト比の高いCNFを得ることができる。
本発明のBNF乾燥体の製造方法は、バイオマス単独または有機成分を混合撹拌したスラリーを、乾燥装置内で、予熱期間経過後に進行する恒率乾燥期間(食品などを一定の加熱条件で乾燥する過程で時間に対して含水率が一定の割合で減少していく乾燥過程の期間)において、その乾燥速度が0.0002~0.5[kg/m2・s]であることを特徴とする乾燥方法である。
このとき、乾燥前の湿り材料の質量をms[kg]の時間θ[s]に対する変化について、減少速度をrm[kg/s]として表すとrm=-dms/dθで表され、乾き材料の質量をm[kg]、水分の質量をmw[kg]とすると、ms=m+mwであり、乾燥工程中ではmは不変であり、rm=-d(m+mw)/dθ=-dmw/dθと示され、さらに、乾燥速度Rは、蒸発が起こる面積A[m2]を基準として、R=-1/A・dmw/dθ=rm/A[kg/m2・s]と表される。
ここで、出口温度は、40~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。出口温度を上記範囲内とすることにより、効率よく乾燥を行うことができる。本発明で用いるスプレードライヤーは、上述した構成のものに限定されるものではなく、市販されている機器を用いることができる。
BNF含有物を保存する場合は、例えば、アルミパウチなどの袋や密封できる容器に添加し、密封後、保存することが好ましい。また、アルミパウチや密封した容器は、そのままの形態で輸送することができる。
本発明において使用される有機成分は、乾燥工程の前にBNFのスラリーと十分に混合し、乾燥工程に進むのが好ましい。混合方法としては、マグネチックスターラーや、プロペラ式の撹拌装置、ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散機などが挙げられる。
混合する樹脂体は、溶融温度が300℃以下の熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリエチレン、PP、ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂、ポリエチレンテレフタレート、PVA樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、アセタール樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、アセチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースエチルセルロースなどが挙げられる。
本発明では、CNFに限定して報告しているが、セルロースと同様にナノファイバー化するバイオマス由来材料であるキチン、キトサン、シルク、カルボキシメチルセルロースについても、同様の効果を得ることができる。
(CNFの調整)
図13は、本発明の製造工程を示す工程図である。
上述のWJ法を用いて、セルロースを10質量%になるようにイオン交換水で調整し(S1)、混合したスラリー状の流体を100~245MPaの超高圧に加圧し、図4に示すように、微細なオリフィスノズル102(φ0.1~0.8mm)から高圧で噴射し(S2)、乾燥速度0.0002~0.5[kg/m2・s]の範囲に含まれる乾燥処理させた(S3)、本発明のCNF乾燥体を得た(図13)。
また、構造上の噴流受けとして、ボール状または平板状のセラミック硬質体103を具え、噴射圧力を高く、噴流の速度の速い領域を用い、この硬質体への衝突力も粉砕に利用する。これらの複合的な要因によって、セルロースは、ナノファイバーヘと解繊されていき、平均繊維径が10~20nmのCNFとなる。
実施例1
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量15ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00083(kg/m2・s)であった。(図6、9)
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m2・s)であった。
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量55ml/minにて噴霧乾燥させ、CNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00333(kg/m2・s)であった。
WJ法で得られた10質量%CNFを、真空撹拌乾燥装置を用いて真空撹拌乾燥を行った。ジャケット温度を80℃として真空撹拌乾燥することで、同様にCNF乾燥体を得た。真空撹拌乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.01157(kg/m2・s)であった。
WJ法で得られたCNFが終濃度1質量%、さらにポリグリセリン誘導体として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、J0381V(理研ビタミン製)を終濃度でセルロース固形分濃度の20質量%となるように添加し、イオン交換水を加えて調整した後、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。得られたCNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m2・s)であった。
WJ法で得られたCNFが終濃度1質量%、オレイン酸(和光純薬製)を終濃度でセルロース固形分濃度の20質量%となるように添加し、イオン交換水を加えて調整した後、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。得られたCNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m2・s)であった。
WJ法で得られたCNFを80℃のオーブンで加熱乾燥することで得られたCNF乾燥体を粉砕機ワンダーブレンダーWB-1(大阪ケミカル製)で粉砕し、CNF乾燥体を得た。オーブン乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00012(kg/m2・s)であった。
WJ法とは別製法のナノファイバー化処理(高圧ホモジナイザー法)で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)にイオン交換水を加えて、終濃度1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m2・s)であった。(図11)
高圧ホモジナイザー法で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)10質量%CNFを真空撹拌乾燥装置を用いて、真空撹拌乾燥を行った。ジャケット温度を80℃として真空撹拌乾燥することで、同様にCNF乾燥体を得た。真空撹拌乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.01157(kg/m2・s)であった。
高圧ホモジナイザー法で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)10質量%CNFを真空撹拌乾燥装置で80℃のオーブンで加熱乾燥することで得られたCNF乾燥体を、粉砕機ワンダーブレンダーWB-1(大阪ケミカル製)で粉砕し、CNF乾燥体を得た。オーブン乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00012(kg/m2・s)であった。
ナノファイバー化前の原料セルロースを比較として使用した。(図12)
実施例2で得られたCNF乾燥体について、キーエンス製のマイクロスコープ、VHS-500にて外観を撮影した。スプレードライで得られたCNF乾燥体(図6)は、細かく粉末状であるのに対し、比較例1のオーブンドライで得られた乾燥体(図7)は、サイズがバラバラで表面が強く凝集した乾燥物であり、外観観察では大きく異なった形状であった。また、堀場製作所製の粒度分布測定装置LA-300にて粒度分布を測定により、メジアン径で1~5μm程度の粒子サイズであり、その粒度分布がシャープなピークを示した。
CNFとポリプロピレンとの複合化を行い、その分散性を評価する。CNFを、ポリプロピレンと溶融混錬により複合化する。樹脂成形物の全量を100質量%とすると、5質量%のCNF乾燥体、1質量%のマレイン酸変性ポリプロピレン ユーメックス1001(三洋化成製)、全量で94質量%のポリプロピレンPX600N(サンアロマー製)を加え、ブレンダーを用いて20,000rpmで1分間撹拌混合した。その後、二軸混練機によって200℃、80rpm、混練時間5分で溶融混錬し、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットは、テフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて200MPa、2分、200℃のプレス処理を行いフィルム体を得た。得られたフィルム体は、顕微鏡により観察し、表1に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、各乾燥体の樹脂への分散性を評価した。
一方、WJ法以外の方法でナノファイバー化したCNFは、樹脂への分散が不十分であり、300μmを超えるサイズの凝集物が多く確認され、樹脂への高分散可能なCNF乾燥体を得ることはできなかった。
2 ポンプ、
3 噴霧機、
4 乾燥室、
5 排風機、
6 ヒーター、
7 送風機、
8 捕集機、
9 回収槽、
Claims (7)
- 直径0.1~0.8mmのノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射処理により、バイオマス分散流体を衝突用硬質体に衝突させるか、または互いに噴射衝突させることでバイオマスナノファイバーを得る工程と、前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程、を含むバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法であって、
前記乾燥装置内で予熱期間経過後に進行する恒率乾燥期間において、前記バイオマスナノファイバーを乾燥速度0.0002~0.01157[kg/m2・s]の条件で乾燥させることを特徴とするバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。 - 前記乾燥速度が0.0002~0.00333[kg/m2・s]であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
- 前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程前において、前記バイオマスナノファイバーを撹拌混合させることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
- 前記バイオマスナノファイバーに有機成分を配合し、前記バイオマスナノファイバーと前記有機成分とを同時に噴霧乾燥させることによって、前記バイオマスナノファイバー乾燥体に前記有機成分を含有することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
- 前記有機成分は、水、エタノール、またはメタノールなどの水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項4に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
- 前記乾燥装置内において、150~220℃の熱風が送り込まれることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
- 請求項1から6のいずれか一項記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法により製造された前記バイオマスナノファイバー乾燥体を、融点300℃以下の前記熱可塑性樹脂に分散させて、前記バイオマスナノファイバー乾燥体と前記熱可塑性樹脂とを含むバイオマスナノファイバー樹脂複合体において、前記バイオマスナノファイバー乾燥体の凝集体を100μm未満とすることを特徴とするバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法。
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