JP7034748B2 - バイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法およびバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法 - Google Patents

バイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法およびバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース、キチン、キトサンなどの分散性に優れたバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法およびバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法に関する。
バイオマスナノファイバー(BNF)の1つであるセルロースナノファイバー(CNF)は、高強度・低熱膨張・高比表面積・軽量などの優れた特長を持ち、世界中で注目されている新機能性材料である。しかしながら、CNFの実用化に向けた大きな課題として、親水性の高さからくるハンドリングの悪さがある。CNFは、一般的に、水分散体で供給されており、親水性が高いことから、そのままの状態で疎水性の樹脂やゴムと複合化しようすると、母体中でのCNFの疑集や、母体とCNF界面の接着不良を起こすため、高分散状態での均―な複合化は困難である。さらに、CNFは、水分散状態で得られるため、水を含まないで混合分散させるには、CNFを乾燥させる必要があるが、CNFを単純に加熱乾燥させるとCNF同士の水素結合により凝集が起こり、再分散し難いという問題があった。また、輸送上の面でも大量の水を含んだ状態でCNFを運搬するには、輸送コストがかかるため、濃縮・乾燥形態での提供が望まれている。また、取扱いの面においても、使用方法の簡便さや配合量を高められることから濃縮・乾燥されたCNFが望まれている。
従来のCNFを乾燥する先行文献として、例えば、特許文献1から3が開示されている。特許文献1では、非フィブリル性微小セルロース粒子とカチオン性樹脂を含有する水性懸濁液を噴霧乾燥して、セルロース微粒子を製造する方法が開示されている。また、特許文献2では、流動性に優れたCNF含有物を製造する方法として、CNFと金属成分とを含むスラリーを噴霧乾燥する方法が開示されている。また、特許文献3では、噴霧乾燥以外の方法として、ダブルドラムドライヤーを利用する乾燥方法が開示されている。
通常、木材パルプを細分化する際には、叩解などの手段によりフィブリル化され、微細繊維が多く発生することになり、顕微鏡で、繊維に特有のフリンジ(fringe)やフィブリル(fibril)が観察される。しかしながら、特許文献1の非フィブリル性微小セルロース粒子とは、顕微鏡でフリンジやフィブリルが観察されない状態または極めて少ない状態のセルロース粒子であり、一般的なCNFとは全く異なるものである(段落0013参照)。
特許文献2の微細繊維状セルロースは、セルロース原料を解繊処理することによって得られるものであるが、解繊処理前にセルロース原料に化学的処理を施し、微細繊維状セルロースにイオン性置換基を付加する(段落0044参照)。化学的処理としては、例えば、酸処理、オゾン処理、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化処理、酵素処理、またはセルロースや繊維原料中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられている(段落0046参照)。このような化学的処理は、分散処理を促進するために従来から広く行われているが、廃液などによる環境高負荷・高コスト・生産効率などの問題が生じうる。
特許文献3では、スプレードライなどの噴霧乾燥は、エネルギーの消費量が多く、コストや環境面から好ましくないことが開示されており、乾燥に多大なエネルギーを要することが記載されている。さらに、噴霧乾燥では、微細な粉末状の乾燥体が得られるものの、再分散性は良好ではないことが記載されている(段落0004,0074参照)。特許文献3で使用されているダブルドラムドライヤーは、蒸気で加熱された2本のドラム表面に乾燥させる原液を付着させ、ドラムが1回転する間に蒸発・乾燥を行う手法であり、原液を2本のドラムの中心に送り込むことによりドラム表面に付着させ、スクレーパー(ナイフ)によって乾燥物を回収する手法である。CNF乾燥体は、フレーク状であり、水への再分散性は向上しているが(段落0073表1参照)、親水性が高いことから疎水的な樹脂への分散は難しい。また、CNF乾燥体の樹脂への分散データは、開示されていない。
また、特許文献4では、ウォータージェット(WJ)を用いたBNFの製造方法が報告されており、水分散体の高結晶でダメージの少ないCNFを得る上で有効な製造方法であるが、CNF乾燥体や乾燥方法についての検討はなされていない。
セルロースの解繊工程についても、グラインダー、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなど明確に定められていないが、この解繊工程は、CNF乾燥体を製造する上で重要な要素である。また、効果として、取扱性や再分散性の向上について述べているものの、樹脂と配合したときに特長的な物性は、未だ確認されていない。
特開2013‐173861号公報 特開2017‐57285号公報 特開2017‐78145号公報 特許5334055号
CNFは、一般的に、水分散体で供給されており、親水性が高いことから、そのままの状態で疎水性の樹脂やゴムヘの複合化は困難である。また、単純に乾燥してしまうと、水素結合による凝集が起こり、セルロース繊維が凝集し、フィルム状になってしまう。また、これまでに報告されている様々な方法によって乾燥することができても、得られた乾燥体は、樹脂に添加しても分散が十分にできず、CNFの凝集物が複合体のマトリックスである樹脂やゴムに分散した状態となる。
以上のように、いずれの特許文献においても、樹脂への再分散性についての効果は、明確に示されていない。従来技術であるスプレードライなどの噴霧乾燥では、乾燥に多大なエネルギーを必要とし、再分散性も良好ではないことが課題となっていた。
そこで、本発明の目的は、低コスト・環境低負荷・高効率で、分散性に優れ、樹脂への高分散が可能なBNF乾燥体およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、直径0.1~0.8mmのノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射により、バイオマス分散体を衝突用硬質体に衝突させるか、または互いに噴射衝突させることでバイオマスナノファイバーを得る工程と、前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程、を含むバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法であって、前記乾燥装置内で予熱期間経過後に進行する恒率乾燥期間において、前記バイオマスナノファイバーを乾燥速度0.0002~0.01157[kg/m・s]の条件で乾燥させることを特徴とする。
本発明によれば、従来のBNF、および酸処理、オゾン処理、TEMPO酸化処理、リン酸エステル化処理などの化学処理を行ったBNFを用いて乾燥させた場合と比較して、噴霧乾燥に必要なエネルギー量が低減されるとともに、乾燥体の再分散性が良好であることを見出した。低コスト・環境低負荷・高効率で、樹脂への分散性に優れたBNF乾燥体を製造することができる。
また、本発明によれば、BNFの乾燥速度を、0.0002[kg/m2・s]未満とした場合、極端に分散性が低下する。上記0.0002~0.00333[kg/m2・s]の範囲に含まれる乾燥速度で乾燥させることにより、BNF乾燥体は、乾燥時に強固な凝集を起こすことなく、樹脂への分散性が高くなる。
本発明のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法は、前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程前において、前記バイオマスナノファイバーを撹拌混合させることを特徴とする。
本発明によれば乾燥前において、BNFを均一に撹拌混合することで、樹脂への分散性に優れた乾燥体となる。
本発明のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法は、前記バイオマスナノファイバーに有機成分を配合し、前記バイオマスナノファイバーと前記有機成分とを同時に乾燥させることによって、前記バイオマスナノファイバー乾燥体に前記有機成分を含有することを特徴とする。
本発明によれば、樹脂への分散性が低下することのない、有機成分が含有されたBNF乾燥体を製造することができる。
前記有機成分は、水、エタノール、またはメタノールなどの水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤、またはこれらの混合物である。
本発明のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法は、前記乾燥装置内において、180~220℃の熱風が送り込まれることを特徴とする。
本発明によれば、熱風の入口温度を上記範囲内とすることにより、効率よく乾燥し、BNF乾燥体の形状を安定化させることができる。
本発明のバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法は、請求項1から5のいずれか一項記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法により製造された前記バイオマスナノファイバー乾燥体を、融点300℃以下の前記熱可塑性樹脂に分散させて、前記バイオマスナノファイバー乾燥体と前記熱可塑性樹脂とを含むバイオマスナノファイバー樹脂複合体において、前記バイオマスナノファイバー乾燥体の凝集体を100μm未満とすることを特徴とする。
本発明によれば、BNF乾燥体を熱可塑性樹脂に分散させると、BNF乾燥体の凝集体が100μm未満となったBNF樹脂複合体(BNF乾燥体と熱可塑性樹脂の複合体)を得ることができる。
本発明のBNF乾燥体の製造方法によれば、水素結合による凝集を抑制して、乾燥することができ、熱可塑性樹脂に高い分散性を有するBNF乾燥体を製造することができる。BNF乾燥体を含有させることによって、顕微鏡観察で100μm以上の凝集体が確認できない状態のBNF樹脂複合体を製造することができる。このため、従来、水分散体のBNFでは困難であった熱可塑性樹脂やゴムへの複合化が可能となる。また、本発明は、触媒や有害な薬品を一切使用せず、水と有機成分を利用した環境低負荷なBNF乾燥体およびBNF樹脂複合体の製造方法を提供する。
本発明を適用した実施形態の高圧噴射処理を複数回繰り返す(パス回数)の増加による結晶構造の変化図である。 本実施形態の高圧噴射処理を複数回繰り返す(パス回数)の増加に伴うセルロース重合度の変化図である。 本実施形態の1つである噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)の構成である。 上記撹拌装置の衝突部の構造図である。 本発明を適用して得られた得られたCNFの顕微鏡写真である。 本発明の実施形態のスプレードライによるCNF乾燥体の図である。 本発明の実施形態のオーブンドライによるCNF乾燥体の図である。 本発明の実施形態のCNF乾燥体の顕微鏡写真である。 本実施形態の実施例1のPP/CNF複合フィルムの写真である。 本実施形態の比較例1のPP/CNF複合フィルムの写真である。 本実施形態の比較例2のPP/CNF複合フィルムの写真である。 本実施形態の比較例5のPP/CNF複合フィルムの写真である。 本発明の製造工程を説明する工程図である。
以下、本発明の一実施の形態を、図面などを引用しながら説明する。
本発明において、高圧噴射処理の対象となる「バイオマス」とは、生物由来の高分子、特に、水に難溶性の高分子を意味し、具体的には、セルロース、キチン、キトサンなどが挙げられる。セルロース、キチン、キトサンは、溶解させる溶媒が限られており、分解がされにくく、加工も難しい材料であった。本発明によれば、セルロース、キチン、キトサンなどの結晶性や水難溶性の天然高分子を水の分散流体とし、高圧噴射処理によりナノファイバー化させることができ、得られたBNFは、酵素分解によりグルコース、N-アセチルグルコサミン、グルコサミンなどの単量体、またはそれらの二量体、三量体などのオリゴマーに導くことができる。
本発明で使用するバイオマスは、繊維状、粒状などの任意の形態であってもよい。バイオマスの分解(糖化)に関しては、セルロースの場合は、幅広い植物原料(稲わら、籾殻、麦わら、コーンコブなどに加えて木材、林地残材、製材工場などの残材、建設発生木材、古紙などの廃材を含む)、キチンの場合は、エビ、カニなどの甲殻類の殻などバイオマスを直接原料として使用するのが好ましい。一方、ナノファイバー化に関しては、セルロースの場合は、リグニンやヘミセルロースを除去した結晶セルロース、キチン・キトサンの場合は、一般的に知られている方法で除タンパク質・脱カルシウム処理された精製キチン・キトサンを原料として使用するのが好ましい。また、ナノファイバー化の場合は、セルロース、キチン・キトサンとも、市販の原料を使用してもよい。バイオマス分散流体を高圧噴射処理すると、セルロースおよびキチン・キトサンは、繊維の長さを保ったまま繊維同士の絡まりがほどけて細くなっていくが、噴射圧力や処理回数などの処理条件を変えることで、分子量を低下させることもできる。
本発明において「分散流体」とは、バイオマスを水に分散させた状態でナノファイバー化前の状態であり、本発明において「分散液」とは、ナノファイバー化後の分散液を指す。分散流体は、濃度が薄い場合には、流動性が高くなるが、バイオマスが微細化するにしたがって粘性が高くなり、濃度が高くなるとペーストに近い性状となる。分散流体の濃度は、高濃度ほど処理効率が高まるため好ましいが、ナノレベルに微細化した繊維の場合、粘度が高くなりすぎペースト状になると、高圧噴射が困難になる。本発明では、BNFが高濃度であっても高圧噴射することができ、分散流体中のバイオマスの濃度は、例えば、1~30重量%程度、好ましくは5~30重量%程度、より好ましくは10~30重量%程度、さらに好ましくは11~30重量%程度であってもよい。
本発明において「ナノファイバー」とは、繊維の幅がナノサイズになったものを意味する。例えば、セルロースは、繊維同士がほどけて1本の最小単位の繊維になると、その直径は、10~50nm程度となる。バイオマスやナノファイバーの直径(幅)は、電子顕微鏡写真により測定することができる。このような繊維は、長さはナノサイズではないが、直径(幅)がナノサイズであるので、本明細書において、ナノファイバーと記載する。本発明の方法により処理されて得られたナノファイバーの平均径は、10~100nm程度、好ましくは10~40nm程度、最も好ましくは10~25nm程度である。
本発明において「乾燥体」とは、ナノファイバーを乾燥させたものを意味する。乾燥体の乾燥方法は、限定はされないが、例えば、噴霧乾燥法、真空乾燥法、気流乾燥法、流動層乾燥法などが想定できる。
本発明において「樹脂複合体」とは、ナノファイバーと熱可塑性樹脂との複合体を意味する。本発明のBNFは、繊維長/繊維幅(アスペクト比)が大きいため、強度を保ちつつ、不織布のようにナノファイバーが絡み合ったフィルム・シート状に成型することが容易であり、各種の材料として好適に使用できる。
(BNFの調整)
水に分散させたバイオマススラリーを調整する。本発明に関するBNF(CNF)は、セルロースを機械粉砕して得られる繊維であり、セルロースとしては、結晶形がI型のセルロース(セルロースI型)である木材パルプや、コットン、リンター、麻、バクテリアセルロース、柔細胞繊維などの非木系パルプ、結晶形がII型のセルロース(セルロースII型)である溶解剤としてN一メチルモルホリンN―オキシド/水溶媒、銅アンモニア錯体、水酸化ナトリウム/二硫化炭素を用いた再生セルロース繊維などが用いられる。セルロースII型は、分子量および結晶化度が低下しているため、セルロースI型よりも繊維が切断されやすく、また、耐熱性も低いので、好ましい材料としては、セルロースI型である。原料セルロースを機械粉砕する方法としては、パルプをビーターやリファイナーで所定の長さとして、高圧ホモジナイザー、グラインダー、衝撃粉砕機、ビーズミルなどを用いて、フィブリル化または微細化することで機械粉砕する方法が知られている。
本発明では、BNFは、バイオマス分散流体を直径0.1~0.8mmの噴射ノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射処理により、衝突用硬質体に衝突させて解繊することで得られたものである。
この解繊手法は、市販されている高圧ホモジナイザーのように、分散流体を高圧低速で狭い流路を通過させ、解放時に均質化させるせん断力だけではなく、衝突用硬質体に衝突させることによる衝突力や、キャビテーションを利用した、高圧での連続処理が可能である。これらWJのせん断力、衝突力、キャビテーションを利用した解繊手法をWJ法と定義する。また、衝突処理を1回行うことを1パスとして、均―なナノファイバーを得るには、好ましくは1~30パス、さらに好ましくは5~20パスの繰り返し衝突を行う必要がある。
また、酸やアルカリを使用せずに、CNFを得ているため、セルロースの分子鎖へのダメージが少なく、結晶化度の高いCNFが得られる。図1に、高圧噴射処理を複数回繰り返す回数を増やすことで結晶パターンがどのように変化するかをX線結晶解析により調べたグラフを記載する。パス回数を増加させても結晶構造パターンが変わらず維持されており、解繊工程で結晶構造にダメージが少ないことを示している。なお、セルロースの場合、未処理に対する各パス回数(衝突回数)における結晶化度は、40~83%となった。また、キチンの結晶化度は、48~73%となった(不図示)。ボールミルやディスクミルなどの他の物理的粉砕法では、結晶化度が低下していくのに対して、WJ法では、結晶化度が低下し難いことが大きな特長である。
本発明では、CNFの繊維として、10~50nmの繊維径のナノファイバーが含まれているが、その平均繊維径は10~20nmである。また、本発明は、CNFの重合度が100以上1,500以下である。重合度は、セルロースの最小構成単位であるグルコース単位の連結数であり、本発明において、重合度は、鋼エチレンジアミン溶液を用いた粘度法によって求められる。セルロースの重合度900程度のセルロースAと重合度が200程度のセルロースBを原料として、パスごとに重合度を測定した結果を示す。(図2)20パス経過後、セルロースAでは、重合度は600程度に下がるものの、パスを増加させても重合が大きく下がることはない。
また、セルロースBでは、パス回数による重合度低下は生じなかった。重合度は、原料セルロースの分子量や繊維サイズに依存し、高圧噴射処理による重合度の低下は原料の重合度の6~8割を維持しており、その減少幅が少ない。このため、原料セルロースの重合度を調整することで、重合度の異なる高結晶でアスペクト比の高いCNFを得ることができる。
さらに、WJ法では、最大で30質量%の高濃度のバイオマス分散流体を直径0.1~0.8mmの噴射ノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射処理により、衝突用硬質体に衝突させて解繊することができ、一般的に行われている1~2質量%のナノファイバー化の工程に比べ、固形分当たりの処理量が飛躍的に向上することから、低コスト・環境低負荷・高効率でのCNF分散体を得ることができる。
(乾燥工程)
本発明のBNF乾燥体の製造方法は、バイオマス単独または有機成分を混合撹拌したスラリーを、乾燥装置内で、予熱期間経過後に進行する恒率乾燥期間(食品などを一定の加熱条件で乾燥する過程で時間に対して含水率が一定の割合で減少していく乾燥過程の期間)において、その乾燥速度が0.0002~0.5[kg/m・s]であることを特徴とする乾燥方法である。
このとき、乾燥前の湿り材料の質量をms[kg]の時間θ[s]に対する変化について、減少速度をrm[kg/s]として表すとrm=-dms/dθで表され、乾き材料の質量をm[kg]、水分の質量をmw[kg]とすると、ms=m+mwであり、乾燥工程中ではmは不変であり、rm=-d(m+mw)/dθ=-dmw/dθと示され、さらに、乾燥速度Rは、蒸発が起こる面積A[m]を基準として、R=-1/A・dmw/dθ=rm/A[kg/m・s]と表される。
WJ法によって製造したBNFを乾燥させる乾燥速度について、上記0.0002~0.5[kg/m・s]の範囲に含まれる場合は、乾燥時に強固な凝集を起こすことなく、樹脂への分散性が高いという特長を持つ。一方で、乾燥速度が0.0002[kg/m・s]を下回ると極端に分散性が低下するので注意が必要である。乾燥速度0.0002~0.5[kg/m・s]の範囲に含まれる条件の乾燥方法としては、所望の乾燥速度が得られる乾燥装置であれば、限定されず、種々の市販された乾燥装置を用いることができる。例えば、噴霧乾燥法を利用した噴霧乾燥装置だけでなく、真空乾燥法を利用した乾燥装置、気流乾燥法を利用した気流式乾燥装置、流動層乾燥法を利用した流動層乾燥装置などが想定できる。
噴霧乾燥は、液体や液体・固体の混合物(スラリー)を気体中に噴霧して急速に乾燥させ、乾燥粉体を製造する手法である。噴霧乾燥は、スプレードライやスプレードライングとも呼ばれ、食品や医薬品といった熱で傷みやすい材料を乾燥させるのが好ましく、乾燥体が安定した粒度分布となるので、触媒のような製品の乾燥に用いられる。
真空乾燥は、真空または減圧下で乾燥させる手法である。気圧が下がると空気中の水蒸気分圧が下がり、水分の沸点が低下し蒸発速度が加速されるので、対象物の乾燥を早めることができる。
気流乾燥は、粉状、湿潤状、泥状、または塊状の材料を300~600℃の高速熱気流中で浮遊させ、輸送しつつ数秒単位で急速に乾燥させる手法である。熱風が気流乾燥管内を一般に10~30m/sec程度で流れるので伝熱効率がよい。
流動層乾燥は、乾燥ガスを吹き込むことで粉体を流動化させ、乾燥させる手法であり、流動層の優れた混合性、ガス接触性、伝熱性を乾燥に利用したものである。被乾燥物は流動室の一端から投入されて浮遊流動しながら出口より排出される。被乾燥物の移動速度、流動状態などを適宜調節したり、仕切板を入れる場合もある。
また、本発明の製造方法は、BNF単独またはBNFと有機成分を混合撹拌したスラリーを上記の乾燥方法により乾燥させる工程を備える。BNFと有機成分の混合方法としては、マグネチックスターラーや、プロペラ式のホジナイザー、ホモミキサーなどが挙げられる。
噴霧乾燥を行うスプレードライヤーは、スラリーなどの溶液ノズルやディスク型アトマイザーなどの噴霧機により微粒子化して液滴の表面積をし、熱風と接触させることによって短時間に乾燥させる装置100である。本発明で使用されるスプレードライヤーは、スラリー槽1、乾燥室4、噴霧機3、ヒーター6、回収槽9を主要構成部として備える。
図3は、本発明で用いることができるスプレードライヤーの構成を説明する概略図である。図3に示されているように、本発明で用いることができるスプレードライヤーは、スラリー槽1、ポンプ2、噴霧機3、乾燥室4、排風機5、ヒーター6、送風機7、捕集機8、回収槽9を有する。
スラリー槽1は、BNFと有機成分を含むスラリーを保持する槽である。ここでは、BNFの含有量は、スラリーの全質量に対し、0.1~5質量%となるように調製される。また、スラリー槽1では、有機成分の含有量は、BNFの乾燥質量に対し、好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%となるように調製される。噴霧可能な条件としては、BNFのスラリー粘度が重要であり、好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは3,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下の条件である。
スラリー槽1は、撹拌装置を備えていることが好ましく、例えば、マグネチックスターラーや、プロペラ式の撹拌装置などを備えており、均―に撹拌できることが好ましい。スラリー槽で調製された上記のスラリーは、ポンプ2によって乾燥室4が備え付けられた噴霧機3に移送される。乾燥室内には、ヒーターにより加熱された空気が送風機によって、事前に噴霧機3に送り込まれていることが好ましい。これにより、スラリーを効率よく微粒子化することができる。乾燥室4は、噴霧機3を備えたものであり、乾燥室4内には、噴霧機3からスラリーが噴霧され、それと同時に熱風が送り込まれる。乾燥室4では、噴霧機3により微粒子化されたスラリーと熱風が接触することによって、スラリーに含まれる溶媒を短時間で乾燥させる。
乾燥室4に送り込まれる熱風温度は、100~300℃であることが好ましく、120~250℃であることがより好ましく、150~220℃であることがさらに好ましい。乾燥室4に送り込まれる熱風温度は、ヒーターと乾燥室間に設けられた入口温度センサによって検知される温度である。すなわち、本発明では、熱風の入口温度が上記範囲内であることが好ましく、入口温度を上記範囲内とすることにより、効率よく乾燥を行うことができる。また、入口温度を上記範囲内とすることにより、得られるBNF含有物の形状が安定になる。
噴霧機3は、スラリー槽1から移送されてきたスラリーを微粒子状に噴霧できるものであれば、制限されない。噴霧機3としては、例えば、ディスク型アトマイザーやノズル型の噴霧機などを挙げることができる。ディスク型アトマイザーは、回転による遠心力を利用しスラリーを噴霧する。また、噴射ノズルには、ポンプ2で液を加圧して旋回力を与えた後、オリフィスで膜化後に微粒化する加圧ノズルや、高圧空気の剪断により微粒子化する二流体ノズルなどの多流体ノズルまたは超音波ノズルが使われる場合もある。これらの噴霧機3については、粉粒物の粒形やスラリーの性状により選択することが好ましい。多流体ノズルを用いると、BNF含有物(粉粒物)の粒子径を所望の範囲にしやすくなる傾向がある。噴霧機3としてディスク型アトマイザーを用いる場合は、アトマイザーの回転数を10,000~30,000rpmとすることが好ましく、15,000~25,000rpmとすることがより好ましい。アトマイザーの回転数を上記範囲内とすることにより、スラリーを噴霧する際に、十分に微粒子化が可能となり、流動性に優れた粉粒物が得やすくなる傾向にある。乾燥室4における水分蒸発量は、スプレードライヤーの装置仕様によって異なり、適宜選択することが必要である。
乾燥室内のBNF含有物は、捕集機8に回収される。捕集機8としては、例えば、サイクロン型捕集機やバグフィルターなどを挙げることができる。また、複数のサイクロンを設置することによって、分級を行ってもよい。捕集機8には、排風機が連結されていることが好ましく、吸引作用によりBNFが捕集される。捕集機8で捕集されたBNFは、捕集機の下部に連結された回収槽内に保持される。捕集機8と回収槽9の連結部に、例えば、フィルターなどを設けることによって、分級を行ってもよい。捕集機8と回収槽9の間には、バルブ11が設けられており、バルブ11を介して適宜乾燥したサンプルを回収槽9へ取り入れることができる。また、捕集機8と回収槽9は、着脱可能に連結されており、回収槽9に溜まったBNFは、適宜充填・保管工程に移送したり、分級工程などに移すようにしてもよい。乾燥室4と捕集機8の間には、出口温度センサが設けられている。出口温度センサは、乾燥室4の出口温度を検知するものである。
ここで、出口温度は、40~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。出口温度を上記範囲内とすることにより、効率よく乾燥を行うことができる。本発明で用いるスプレードライヤーは、上述した構成のものに限定されるものではなく、市販されている機器を用いることができる。
上述した製造方法で得られたBNF含有物の保存温度は、4~40℃が好ましく、4~30℃がさらに好ましい。圧力は、常圧で保管することが好ましい。湿度は、70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましい。
BNF含有物を保存する場合は、例えば、アルミパウチなどの袋や密封できる容器に添加し、密封後、保存することが好ましい。また、アルミパウチや密封した容器は、そのままの形態で輸送することができる。
(有機成分)
本発明において使用される有機成分は、乾燥工程の前にBNFのスラリーと十分に混合し、乾燥工程に進むのが好ましい。混合方法としては、マグネチックスターラーや、プロペラ式の撹拌装置、ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散機などが挙げられる。
また、本発明において使用される有機成分は、水およびエタノール・メタノールなど水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤およびこれらの混合物であれば良く、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、グリセリン、およびその化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ステアリン酸は、動物性・植物性脂肪で最も多く含まれる飽和脂肪酸であり、油脂成分として天然に広く分布する。ステアリン酸として、具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸PEG、ステアリン酸PEG-グリセリル、ステアリン酸PG、ステアリン酸アスコルビル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸コレステリル、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ビニル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ステアリル、ジステアリン酸グリセロール、ステアリン酸イソヘキサデシル、モノステアリン酸グリセロール、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸2-エチルヘキシル、モノイソステアリン酸グリセロール、N,N'-エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
オレイン酸は、具体的には、オレイン酸、無水オレイン酸、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸グリシジル、オレイン酸銅(II)、オレイン酸コレステリル、ジオレイン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセリル、オレイン酸ブチルエステル、オレイン酸プロピルエステル、オレイン酸ジブチルアンモニウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチルエステル、N,N-ジエタノールオレイン酸アミド、N,N-ジエタノールオレイン酸アミド、オレイン酸4-メチルウンベリフェリル、トリオレイン酸トリメチロールプロパン、スルホスクシンイミジルオレイン酸ナトリウム、N,N'-エチレンビスオレイン酸アミド、オレイン酸5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルなどが挙げられる。
グリセリンは、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、PPG-9ジグリセリル、PPG-14ポリグリセリル-2エーテル、ジグリセリンモノカプリレート、POP(9)ポリグリセリルエーテル、POP(14)ポリグリセリルエーテル、POP(24)ポリグリセリルエーテル、POE(13)ポリグリセリルエーテル、POE(20)ポリグリセリルエーテル、POE(30)ポリグリセリルエーテル、POE(40)ポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、アジピン酸、ジエチレングリコール、エチルヘキシルグリセリン、オクトキシグリセリン、オゾン化グリセリン、シクロヘキシルグリセリン、チオグリセリン、ビスジオレオイルグリセロホスホグリセリン2Na、ヘキシルグリセリン、ポリグリセリン‐4、ポリグリセリン-6、ポリグリセリン-10、ポリグリセリン-20、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセライド、アセチル化モノグリセライド、有機酸モノグリセライド、中鎖脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。
本発明に関する有機成分は、バイオマスの乾燥重量の0.05~30質量%含有されていることが望ましく、さらに好ましくは1~20質量%である。0.05質量%未満では、BNFの凝集抑制効果が少なく、30質量%を超える添加量では、BNFに対して過剰量になり、その結果、変色や乾燥不良が見られる。
(熱可塑性樹脂)
混合する樹脂体は、溶融温度が300℃以下の熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリエチレン、PP、ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂、ポリエチレンテレフタレート、PVA樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、アセタール樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、アセチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースエチルセルロースなどが挙げられる。
(セルロース以外のBNFヘの適応)
本発明では、CNFに限定して報告しているが、セルロースと同様にナノファイバー化するバイオマス由来材料であるキチン、キトサン、シルク、カルボキシメチルセルロースについても、同様の効果を得ることができる。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものであり、本発明を限定するものではない。
(CNFの調整)
図13は、本発明の製造工程を示す工程図である。
上述のWJ法を用いて、セルロースを10質量%になるようにイオン交換水で調整し(S1)、混合したスラリー状の流体を100~245MPaの超高圧に加圧し、図4に示すように、微細なオリフィスノズル102(φ0.1~0.8mm)から高圧で噴射し(S2)、乾燥速度0.0002~0.5[kg/m・s]の範囲に含まれる乾燥処理させた(S3)、本発明のCNF乾燥体を得た(図13)。
オリフィスノズル102からの吐出流は、440~700m/sの高速噴流となるが、その速度までに加速されるオリフィス内では、高い剪断力が発生する。ここで使用するオリフィスノズル102の厚みは、0.4mmと極端に薄いため、圧カエネルギーのほぼ100%を噴射の速度エネルギーに変換できる。すなわち、オリフィス内部では、直径0.1~0.8mmという狭い隙間と、440~700m/sの超高速の状態となり、高い剪断力を得るための構成要素が満たされている。なお剪断力は以下の数式(1)により定義できる。
[剪断力]=[スラリーの粘度]×[速度]/[隙間]・・・(1)
スラリーの粘度については、本処理回路の各部を改善したことで、より高濃度すなわち高粘度のスラリーを処理することができるようになり、スラリー自身の剪断力(物体内部のある面の平行方向に、すべらせるように作用する応力のことである。シヤー応力やずり応力とも呼ばれる。)を高める要因にもなっている。
440~700m/sの高速噴流(高圧噴射状態)では、キャビテーション気泡が発生し、この気泡が消滅することによって強い衝撃力が発生する。オリフィスノズル102の下流側に衝撃増強領域104を設けることで、キャビテーションを効率的に発生させることができる。
また、構造上の噴流受けとして、ボール状または平板状のセラミック硬質体103を具え、噴射圧力を高く、噴流の速度の速い領域を用い、この硬質体への衝突力も粉砕に利用する。これらの複合的な要因によって、セルロースは、ナノファイバーヘと解繊されていき、平均繊維径が10~20nmのCNFとなる。
本発明に係るCNFをtert-ブチルアルコールに置換し、凍結乾燥することによって得られたサンプルをFE一SEM(電解放出形走査電子顕微鏡)にて観察したものを図5に示す。CNFの重合度が約650である。観察されたセルロース繊維は、十分に解れていることが確認された。
(CNFの乾燥)
実施例1
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量15ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00083(kg/m・s)であった。(図6、9)
実施例2
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m・s)であった。
実施例3
WJ法で得られた10質量%CNFにイオン交換水を加えて、終濃度が1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合させ、CNF分散液を調整した。得られた1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量55ml/minにて噴霧乾燥させ、CNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00333(kg/m・s)であった。
実施例4
WJ法で得られた10質量%CNFを、真空撹拌乾燥装置を用いて真空撹拌乾燥を行った。ジャケット温度を80℃として真空撹拌乾燥することで、同様にCNF乾燥体を得た。真空撹拌乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.01157(kg/m・s)であった。
実施例5
WJ法で得られたCNFが終濃度1質量%、さらにポリグリセリン誘導体として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、J0381V(理研ビタミン製)を終濃度でセルロース固形分濃度の20質量%となるように添加し、イオン交換水を加えて調整した後、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。得られたCNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m・s)であった。
実施例6
WJ法で得られたCNFが終濃度1質量%、オレイン酸(和光純薬製)を終濃度でセルロース固形分濃度の20質量%となるように添加し、イオン交換水を加えて調整した後、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。得られたCNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m・s)であった。
比較例1
WJ法で得られたCNFを80℃のオーブンで加熱乾燥することで得られたCNF乾燥体を粉砕機ワンダーブレンダーWB-1(大阪ケミカル製)で粉砕し、CNF乾燥体を得た。オーブン乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00012(kg/m・s)であった。
比較例2
WJ法とは別製法のナノファイバー化処理(高圧ホモジナイザー法)で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)にイオン交換水を加えて、終濃度1質量%になるように調整し、スリーワンモーター撹拌機BLW3000(新東科学製)にて十分に撹拌混合した。1質量%CNF分散液を噴霧乾燥装置により入口温度200℃、供給量30ml/minにて噴霧乾燥させCNF乾燥体を得た。噴霧乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00250(kg/m・s)であった。(図11)
比較例3
高圧ホモジナイザー法で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)10質量%CNFを真空撹拌乾燥装置を用いて、真空撹拌乾燥を行った。ジャケット温度を80℃として真空撹拌乾燥することで、同様にCNF乾燥体を得た。真空撹拌乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.01157(kg/m・s)であった。
比較例4
高圧ホモジナイザー法で得られたCNF(ダイセル製 商品名セリッシュFD-100G)10質量%CNFを真空撹拌乾燥装置で80℃のオーブンで加熱乾燥することで得られたCNF乾燥体を、粉砕機ワンダーブレンダーWB-1(大阪ケミカル製)で粉砕し、CNF乾燥体を得た。オーブン乾燥による乾燥速度を計算したところ、0.00012(kg/m・s)であった。
比較例5
ナノファイバー化前の原料セルロースを比較として使用した。(図12)
(形状観察)
実施例2で得られたCNF乾燥体について、キーエンス製のマイクロスコープ、VHS-500にて外観を撮影した。スプレードライで得られたCNF乾燥体(図6)は、細かく粉末状であるのに対し、比較例1のオーブンドライで得られた乾燥体(図7)は、サイズがバラバラで表面が強く凝集した乾燥物であり、外観観察では大きく異なった形状であった。また、堀場製作所製の粒度分布測定装置LA-300にて粒度分布を測定により、メジアン径で1~5μm程度の粒子サイズであり、その粒度分布がシャープなピークを示した。
さらに、FE-SEM(電解放出形走査電子顕微鏡)にて、CNF乾燥体を観察したものを図8に示す。CNF乾燥体は、球形ではなく、繊維状のCNFが絡まり合って、歪に丸まった形状をとっている。
(ポリプロピレンへの複合化)
CNFとポリプロピレンとの複合化を行い、その分散性を評価する。CNFを、ポリプロピレンと溶融混錬により複合化する。樹脂成形物の全量を100質量%とすると、5質量%のCNF乾燥体、1質量%のマレイン酸変性ポリプロピレン ユーメックス1001(三洋化成製)、全量で94質量%のポリプロピレンPX600N(サンアロマー製)を加え、ブレンダーを用いて20,000rpmで1分間撹拌混合した。その後、二軸混練機によって200℃、80rpm、混練時間5分で溶融混錬し、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットは、テフロン(登録商標)シートで挟み、熱プレス装置にて200MPa、2分、200℃のプレス処理を行いフィルム体を得た。得られたフィルム体は、顕微鏡により観察し、表1に示す分散評価方法を用いて、凝集物の有無やそのサイズを測定し、各乾燥体の樹脂への分散性を評価した。
Figure 0007034748000001
(実験結果)
Figure 0007034748000002
樹脂への分散評価としては、AA、A、Bの評価では良好に分散していると判断され、ナノファイバー化処理をWJ法で行うのと同時に乾燥速度0.0002(kg/m・s)以上で、乾燥処理を行うことで、樹脂と高分散することが可能なCNF乾燥体を製造することができる。また、有機成分と混合して乾燥することで、CNF乾燥体に任意の有機成分の含有が可能であり、これにより樹脂への分散性が低下することはなく、有機成分を含有したCNF乾燥体を製造することができる。
一方、WJ法以外の方法でナノファイバー化したCNFは、樹脂への分散が不十分であり、300μmを超えるサイズの凝集物が多く確認され、樹脂への高分散可能なCNF乾燥体を得ることはできなかった。
1 スラリー槽、
2 ポンプ、
3 噴霧機、
4 乾燥室、
5 排風機、
6 ヒーター、
7 送風機、
8 捕集機、
9 回収槽、

Claims (7)

  1. 直径0.1~0.8mmのノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射処理により、バイオマス分散流体を衝突用硬質体に衝突させるか、または互いに噴射衝突させることでバイオマスナノファイバーを得る工程と、前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程、を含むバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法であって、
    前記乾燥装置内で予熱期間経過後に進行する恒率乾燥期間において、前記バイオマスナノファイバーを乾燥速度0.0002~0.01157[kg/m・s]の条件で乾燥させることを特徴とするバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  2. 前記乾燥速度が0.0002~0.00333[kg/m・s]であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  3. 前記バイオマスナノファイバーを乾燥装置内で乾燥させる工程前において、前記バイオマスナノファイバーを撹拌混合させることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  4. 前記バイオマスナノファイバーに有機成分を配合し、前記バイオマスナノファイバーと前記有機成分とを同時に噴霧乾燥させることによって、前記バイオマスナノファイバー乾燥体に前記有機成分を含有することを特徴とする請求項1からのうちいずれか一項に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  5. 前記有機成分は、水、エタノール、またはメタノールなどの水可溶性アルコールに溶解および分散可能なアニオン系、ノニオン系界面活性剤、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  6. 前記乾燥装置内において、150~220℃の熱風が送り込まれることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法。
  7. 請求項1からのいずれか一項記載のバイオマスナノファイバー乾燥体の製造方法により製造された前記バイオマスナノファイバー乾燥体を、融点300℃以下の前記熱可塑性樹脂に分散させて、前記バイオマスナノファイバー乾燥体と前記熱可塑性樹脂とを含むバイオマスナノファイバー樹脂複合体において、前記バイオマスナノファイバー乾燥体の凝集体を100μm未満とすることを特徴とするバイオマスナノファイバー樹脂複合体の製造方法。
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