JP7034212B2 - 枠付き電解質膜・電極構造体及び燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、枠付き電解質膜・電極構造体及び燃料電池に関する。
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。燃料電池は、固体高分子電解質膜の一方の面にアノード電極が、前記固体高分子電解質膜の他方の面にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備える。
電解質膜・電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持されることにより、発電セル(単位燃料電池)が構成されている。発電セルは、所定の数だけ積層されることにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
近年、比較的高価な固体高分子電解質膜の使用量を削減するとともに、薄膜状で強度が低い固体高分子電解質膜を保護するために、外周に樹脂枠部材を組み込んだ枠付きMEAが採用されている。特許文献1に開示された枠付きMEAでは、電解質膜の外周部に樹脂枠部材の内周部が接合されている。
米国特許第8399150号明細書
特許文献1では、電解質膜・電極構造体と樹脂枠部材とを熱圧着接合する際に、樹脂枠部材の内周端と電解質膜とが直接接触し、当該内周端が電解質膜に食い込んで電解質膜が潰れる場合がある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、電解質膜への樹脂シートの内周端の食い込みによる電解質膜の潰れを防止し、電解質膜の耐久性を向上させることができる枠付き電解質膜・電極構造体及び燃料電池を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、電解質膜の一方の面に第1電極が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極が設けられてなる電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シートを有する枠部材と、を備えた枠付き電解質膜・電極構造体であって、前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、枠付き電解質膜・電極構造体である。
本発明の他の態様は、電解質膜の一方の面に第1電極が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極が設けられてなる電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シートを有する枠部材と、を有する枠付き電解質膜・電極構造体と、前記枠付き電解質膜・電極構造体の両側にそれぞれ積層されたセパレータと、を備えた燃料電池であって、前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、燃料電池である。
本発明の枠付き電解質膜・電極構造体及び燃料電池によれば、電解質膜、樹脂シート及び接着層の弾性率の大小関係が適切に設定されることにより、接着層が保護層(クッション材)の役目を果たし、電解質膜と樹脂シートとが直接接触することがない。このため、電解質膜への樹脂シートの内周端の食い込みによる電解質膜の潰れを防止することができ、電解質膜・電極構造体の耐久性を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る発電セル(燃料電池)の要部分解斜視図である。 図1におけるII-II線断面図である。 図3Aは、枠部材の斜視図である。図3Bは、MEA接合工程の説明図である。図3Cは、得られた枠付き電解質膜・電極構造体の斜視図である。
図1及び図2に示すように、発電セル(燃料電池)12は、枠付き電解質膜・電極構造体10(以下、「枠付きMEA10」という)と、枠付きMEA10の両側に配置された第1セパレータ14及び第2セパレータ16とを備える。発電セル12は、例えば、横長(又は縦長)の長方形状の固体高分子型燃料電池である。複数の発電セル12は、例えば、矢印A方向(水平方向)又は矢印C方向(重力方向)に積層されて燃料電池スタック11aが構成される。燃料電池スタック11aは、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車(図示せず)に搭載される。
発電セル12では、枠付きMEA10が第1セパレータ14及び第2セパレータ16により挟持される。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、横長(又は縦長)の長方形状を有する。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成される。
長方形状の枠付きMEA10は、電解質膜・電極構造体10a(以下、「MEA10a」という)を備える。MEA10aは、電解質膜18と、電解質膜18の一方の面に設けられたアノード電極(第1電極)20と、電解質膜18の他方の面に設けられたカソード電極(第2電極)22とを有する。
電解質膜18は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜18は、アノード電極20及びカソード電極22に挟持される。電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
アノード電極20は、電解質膜18及びカソード電極22よりも大きな平面寸法(外形寸法)を有する。従って、アノード電極20の外周端20eは、全周に亘って、電解質膜18の外周端18e及びカソード電極22の外周端22eよりも外方に位置する。なお、上記の構成に代えて、アノード電極20は、電解質膜18及びカソード電極22よりも小さな平面寸法を有するように構成してもよい。
図2に示すように、アノード電極20は、電解質膜18の一方の面18aに接合される第1電極触媒層20aと、第1電極触媒層20aに積層される第1ガス拡散層20bとを有する。第1電極触媒層20a及び第1ガス拡散層20bは、互いに同一の平面寸法を有するとともに、電解質膜18及びカソード電極22よりも大きな平面寸法に設定される。
カソード電極22は、アノード電極20よりも小さい平面寸法に設定される。カソード電極22の外周端22e及び電解質膜18の外周端18eは、全周に亘ってアノード電極20の外周端20eよりも内方に位置する。
なお、カソード電極22は、アノード電極20よりも大きな平面寸法に設定され、カソード電極22の外周端22eは、全周に亘ってアノード電極20の外周端20eよりも外方に位置してもよい。
カソード電極22は、電解質膜18の面18bに接合される第2電極触媒層22aと、第2電極触媒層22aに積層される第2ガス拡散層22bとを有する。第2電極触媒層22a及び第2ガス拡散層22bは、互いに同一の平面寸法を有するとともに、電解質膜18と同一の平面寸法に設定される。従って、MEA10aの厚さ方向(矢印A方向)から見て、カソード電極22の外周端22eは、全周に亘って電解質膜18の外周端18eと同じ位置にある。
第1電極触媒層20aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第1ガス拡散層20bの表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層22aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第2ガス拡散層22bの表面に一様に塗布されて形成される。
第1ガス拡散層20b及び第2ガス拡散層22bは、カーボンペーパ又はカーボンクロス等から形成される。第2ガス拡散層22bの平面寸法は、第1ガス拡散層20bの平面寸法よりも小さく設定される。第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aは、各々電解質膜18の両面に形成される。
枠付きMEA10は、電解質膜18の外周を全周に亘って周回するとともに、アノード電極20及びカソード電極22に接合される矩形状の枠部材24をさらに備える。枠部材24は、2枚の枠状シート(樹脂シート)を有する。具体的には、枠部材24は、内周部24anがMEA10aの外周部に接合された第1枠状シート24aと、第1枠状シート24aに接合された第2枠状シート24bとを有する。
第1枠状シート24aと第2枠状シート24bとは、接着剤24dからなる接着層24cにより全周(第2枠状シート24bの第1枠状シート24a側の面の全面)に亘って直接接合される。第2枠状シート24bは、第1枠状シート24aの外周部に接合される。これにより、枠部材24の外周部24gは、枠部材24の内周部(第1枠状シート24aの内周部24an)よりも厚く構成される。
第1枠状シート24a及び第2枠状シート24bは樹脂材料により構成される。第1枠状シート24a及び第2枠状シート24bの構成材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィン等が挙げられる。
第1枠状シート24aの内周部24anは、アノード電極20の外周部20cとカソード電極22の外周部22cとの間に配置される。具体的に、第1枠状シート24aの内周部24anは、電解質膜18の外周部18cとアノード電極20の外周部20cとの間に挟持される。第1枠状シート24aの内周部24anと電解質膜18の外周部18cとは、接着層24cを介して接合される。これにより、電解質膜18の外周部18cは、カソード電極22と第1枠状シート24aとの間に配置され、カソード電極22の外周部22cに積層されるとともに、接着層24cを介して第1枠状シート24aの内周部に接合されている。なお、本実施形態では、接着層24cは、第1枠状シート24aの内周部から外周部に亘って連続的に設けられているが、第1枠状シート24aと第2枠状シート24bとを接合する接着層24cと、第1枠状シート24aの内周部と電解質膜18の外周部18cとを接合する接着層24cとが互いに独立(分離)して設けられてもよい。
第1枠状シート24aの内周部24anは、MEA10aの厚さ方向から見て、アノード電極20の外周部20cと全周に亘って重なる重なり部24akを有する。なお、第1枠状シート24aの内周部24anは、接着層24cを電解質膜18の面18bに接合した状態で電解質膜18とカソード電極22との間に挟持されてもよい。
上述したアノード電極20には、第1枠状シート24aの内周端24aeに対応する位置に段差が設けられる。具体的に、アノード電極20は、第1枠状シート24aの内周部24anに重なる領域21aと電解質膜18に重なる領域21bとの間に、電解質膜18に対して傾斜した傾斜領域21cを有する。
一方、カソード電極22は、第1枠状シート24aの内周部24anに重なる領域23aから電解質膜18に重なる領域23bに亘って、平坦状に形成される。なお、このような構成に代えて、カソード電極22は、第1枠状シート24aの内周部24anに重なる領域23aと電解質膜18に重なる領域23bとの間に、電解質膜18に対して傾斜した傾斜領域(傾斜領域21cとは逆方向に傾斜する領域)を有してもよい。アノード電極20が上記傾斜領域21cを有し、且つカソード電極22が上記傾斜領域を有していてもよい。
なお、上記構成と異なり、アノード電極20が、第1枠状シート24aの内周部24anに重なる領域21aから電解質膜18に重なる領域21bに亘って平坦状に形成され、カソード電極22が、第1枠状シート24aの内周部24anに重なる領域23aと電解質膜18に重なる領域23bとの間に、電解質膜18に対して傾斜する傾斜領域を有してもよい。
第2枠状シート24bは、第1枠状シート24aの外周部に接合される。第1枠状シート24a及び第2枠状シート24bは、互いに同じ厚みを有していてもよく、異なる厚みを有していてもよい。
第2枠状シート24bの内周端24beは、全周に亘って第1枠状シート24aの内周端24aeよりも外方(MEA10aから離れる方向)に位置する。第2枠状シート24bの内周端24beと、カソード電極22の外周端22eとの間には、全周に亘って隙間Gが形成される。
第2枠状シート24bの内周端24beは、全周に亘ってアノード電極20の外周端20eよりも内方に位置する。第2枠状シート24bの内周部は、MEA10aの厚さ方向(矢印A方向)から見て、アノード電極20の外周部20cと全周に亘って重なる重なり部24bkを有する。第2枠状シート24bの内周端24beは、電解質膜18の外周端18eよりも外方に位置する。
接着層24cは、第1枠状シート24aの第2枠状シート24b側(カソード側)の面24asに、全面に亘って設けられる。接着層24cは、第1枠状シート24aの内周部24anと電解質膜18の外周部18cとを接合する。第1枠状シート24aは、上述した隙間Gの箇所で、接着層24cを介して隙間Gに露出する。接着層24cを構成する接着剤24dとしては、例えば、液状接着剤やホットメルトシートが設けられる。なお、接着剤24dは、液体や固体、熱可塑性や熱硬化性等に制限されない。接着剤24dとしては、例えば、アクリル系接着剤が挙げられるが、ゴム系、ウレタン系、エステル系、エチレンビニル系の接着剤であってもよい。
アノード電極20と第1枠状シート24aとカソード電極22とが重なる重なり部Kは、第1セパレータ14に設けられアノード電極20に向かって突出した凸部39と、第2セパレータ16に設けられカソード電極22に向かって突出した凸部37とにより挟持されている。
第1枠状シート24aの弾性率E1と、接着層24cの弾性率E2と、電解質膜18の弾性率E3とは、以下の大小関係となるように設定されている。ここでいう「弾性率」は、いずれも「引っ張り弾性率」を意味する。第1枠状シート24aの弾性率E1は、電解質膜18の弾性率E3よりも大きい。接着層24cの弾性率E2は、第1枠状シート24aの弾性率E1及び電解質膜18の弾性率E3よりも小さい。すなわち、E1>E3>E2の関係を満たすように、第1枠状シート24aの弾性率E1、接着層24cの弾性率E2及び電解質膜18の弾性率E3が設定されている。
接着層24cの弾性率E2は、例えば、電解質膜18の弾性率E3の50%以下に設定される。接着層24cの弾性率E2は、例えば、電解質膜18の弾性率E3の30%以下に設定される。接着層24cの弾性率E2は、例えば、電解質膜18の弾性率E3の20%以下に設定される。接着層24cの弾性率E2は、例えば、電解質膜18の弾性率E3の10%以下に設定される。
120℃での第1枠状シート24aの弾性率E1は、例えば、1000Mpa以上である。120℃での接着層24cの弾性率E2は、例えば、0.5~10Mpaである。接着層24cの弾性率E2が低すぎる場合(例えば、0.1MPa以下)、クッション効果が発現できない。120℃での電解質膜18の弾性率E3は、例えば、10~100Mpaである。
電解質膜18及び接着層24cの各厚みは、第1枠状シート24aの厚みよりも小さい。電解質膜18の厚みと、接着層24cの厚みは、比較的近い厚み又は同程度(電解質膜18の厚みに対する接着層24cの厚みの割合が、例えば、80~120%程度)に設定されている。第1枠状シート24aの厚みは、例えば、25~150μmである。接着層24cの厚みは、例えば、6~20μmである。電解質膜18の厚みは、例えば、6~20μmである。
図1に示すように、発電セル12の矢印B方向(水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔30aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、冷却媒体入口連通孔32aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔34bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔32b、及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔30bが設けられる。燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体出口連通孔32b及び酸化剤ガス出口連通孔30bは、矢印C方向に配列して設けられる。
第1セパレータ14の枠付きMEA10に向かう面14aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通する燃料ガス流路38が設けられる。具体的に、燃料ガス流路38は、第1セパレータ14と枠付きMEA10との間に形成される。燃料ガス流路38は、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)を有する。
第2セパレータ16の枠付きMEA10に向かう面16aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路36が設けられる。具体的に、酸化剤ガス流路36は、第2セパレータ16と枠付きMEA10との間に形成される。酸化剤ガス流路36は、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)を有する。
互いに隣接する第1セパレータ14の面14bと第2セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路40が、矢印B方向に延在して形成される。
図2に示すように、第1セパレータ14の面14a(枠付きMEA10と対向する面)には、燃料ガス流路38を形成する凸部39が複数設けられる。凸部39は、アノード電極20側に向かって膨出するとともにアノード電極20に当接する。第2セパレータ16の面16a(枠付きMEA10と対向する面)には、酸化剤ガス流路36を形成する凸部37が複数設けられる。凸部37は、カソード電極22側に向かって膨出するとともにカソード電極22に当接する。凸部37、39間に、MEA10aが挟持される。
第1セパレータ14の面14aには、燃料ガスの外部への漏れを防止するため、第1セパレータ14の外周部を周回する1本又は複数本のビードシール42が設けられる。ビードシール42は、プレス成形により、枠部材24に向かって膨出成形される。内側のビードシール42は、燃料ガス流路38、燃料ガス入口連通孔34a及び燃料ガス出口連通孔34bを周回し且つこれらを連通させる。
ビードシール42の凸部先端面には、樹脂材43(又はゴム材)が印刷又は塗布等により固着される。ビードシール42は、樹脂材43を介して、第1枠状シート24a(第2枠状シート24bと重なる領域)に気密及び液密に当接する。樹脂材43は、第1枠状シート24aに固着されてもよい。
第1セパレータ14には、ビードシール42に代えて、枠部材24に向かって突出する弾性体からなる凸状シール部が設けられてもよい。
第2セパレータ16の面16aには、酸化剤ガスの外部への漏れを防止するため、第2セパレータ16の外周部を周回する1本又は複数本のビードシール44が設けられる。ビードシール44は、プレス成形により、枠部材24に向かって膨出成形される。内側のビードシール44は、酸化剤ガス流路36、酸化剤ガス入口連通孔30a及び酸化剤ガス出口連通孔30bを周回し且つこれらを連通させる。
ビードシール44の凸部先端面には、樹脂材45(又はゴム材)が印刷又は塗布等により固着される。ビードシール44は、樹脂材45を介して、第2枠状シート24b(第1枠状シート24aと重なる領域)に気密及び液密に当接する。樹脂材45は、第2枠状シート24bに固着されてもよい。
第2セパレータ16には、ビードシール44に代えて、枠部材24に向かって突出する弾性体からなる凸状シール部が設けられてもよい。
樹脂材43、45は、例えば、ポリエステル繊維、シリコーン、EPDM、FKM等が使用される。樹脂材43、45は、不可欠ではなく、なくてもよい(この場合、ビードシール42は第1枠状シート24aに直接当接し、ビードシール44は第2枠状シート24bに直接当接する)。
ビードシール42とビードシール44は枠部材24を介して対向する。枠部材24の外周部(第1枠状シート24aと第2枠状シート24bとが重なった領域)は、第1セパレータ14のビードシール42と、第2セパレータ16のビードシール44との間に挟持される。なお、第1セパレータ14及び第2セパレータ16に上記凸状シール部が設けられる場合、枠部材24の外周部(第1枠状シート24aと第2枠状シート24bとが重なった領域)は、第1セパレータ14の凸状シール部と、第2セパレータ16の凸状シール部との間に挟持される。
このように構成される発電セル12を含む燃料電池スタック11aの動作について、以下に説明する。
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aから第2セパレータ16の酸化剤ガス流路36に供給され、矢印B方向に移動してMEA10aのカソード電極22に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aから第1セパレータ14の燃料ガス流路38に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、MEA10aのアノード電極20に供給される。
従って、MEA10aでは、カソード電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード電極20に供給される燃料ガスとが、第2電極触媒層22a及び第1電極触媒層20a内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
次いで、図1において、カソード電極22に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極20に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14と第2セパレータ16との間の冷却媒体流路40に供給された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA10aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
次に、枠付きMEA10の製造方法の一例を説明する。
図3Aに示すように、第1枠状シート24aと第2枠状シート24bとが接着層24cにより接合されてなる上述した枠部材24を提供(作製)する。第2枠状シート24bの内周端24beよりも内側には、第1枠状シート24aの中央部に開口部53が形成されている。枠部材24には、燃料ガス入口連通孔34a、燃料ガス出口連通孔34b、酸化剤ガス入口連通孔30a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体入口連通孔32a及び冷却媒体出口連通孔32bが形成されている。
次に、図3Bに示すようにMEA接合工程を実施する。MEA接合工程では、第2枠状シート24bの内周端24beとカソード電極22(電解質膜18が接合されたもの)の外周端22eとの間に隙間G(図2参照)を設けた状態とする。そしてこの状態で、第1枠状シート24aの内周部24anを、アノード電極20の外周部20cとカソード電極22の外周部22cとの間に配置し、接合を行う。この場合、厚さ方向に重ねられたアノード電極20、第1枠状シート24a及び電解質膜18及びカソード電極22を加熱するとともに荷重を付与すること(ホットプレス)により、接合(熱圧着による接合)を行う。これにより、図3Cに示すように、MEA10aの外周部に枠部材24が接合された枠付きMEA10が得られる。
この場合、図2に示すように、本実施形態に係る枠付きMEA10及び発電セル12によれば、接着層24cの弾性率E2は、第1枠状シート24aの弾性率E1及び電解質膜18の弾性率E3よりも小さい。このように、電解質膜18、第1枠状シート24a及び接着層24cの弾性率の大小関係が適切に設定されることにより、接着層24cが保護層(クッション材)の役目を果たし、電解質膜18と第1枠状シート24aとが直接接触することがない。すなわち、第1枠状シート24a及び電解質膜18よりも弾性率が小さく設定された接着層24cが、第1枠状シート24aと電解質膜18との間に設けられているため、第1枠状シート24aの内周端24aeのエッジが、電解質膜18に直接接触することがない。このため、電解質膜18への第1枠状シート24aの内周端24aeの食い込みによる電解質膜18の潰れを防止することができ、MEA10aの耐久性を向上させることができる。
電解質膜18及び接着層24cの各厚みは、第1枠状シート24aの厚みよりも小さい。これにより、電解質膜18への第1枠状シート24aの内周端24aeの食い込みを一層効果的に防止することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
上記実施形態は、電解質膜(18)の一方の面に第1電極(20)が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極(22)が設けられてなる電解質膜・電極構造体(10a)と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シート(24a)を有する枠部材(24)と、を備えた枠付き電解質膜・電極構造体(10)であって、前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層(24c)を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、枠付き電解質膜・電極構造体(10)を開示している。
前記枠部材は、前記樹脂シートのうち前記第2電極よりも外方に延出する部位に前記接着層を介して接合された他の樹脂シート(24b)を有していてもよい。
前記第1電極には、前記樹脂シートの内周端(24ae)に対応する位置に段差が設けられていてもよい。
前記他の樹脂シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の厚さ方向から見て、前記第1電極の外周部と重なる重なり部(24bk)を有していてもよい。
前記電解質膜及び前記接着層の各厚みは、前記樹脂シートの厚みよりも小さくてもよい。
また、上記実施形態は、電解質膜(18)の一方の面に第1電極(20)が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極(22)が設けられてなる電解質膜・電極構造体(10a)と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シート(24a)を有する枠部材(24)と、を有する枠付き電解質膜・電極構造体(10)と、前記枠付き電解質膜・電極構造体の両側にそれぞれ積層されたセパレータ(14、16)と、を備えた燃料電池(12)であって、前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層(24c)を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、燃料電池を開示している。
10…枠付き電解質膜・電極構造体 10a…電解質膜・電極構造体
18…電解質膜 20…アノード電極
22…カソード電極 24…枠部材
24c…接着層

Claims (4)

  1. 電解質膜の一方の面に第1電極が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極が設けられてなる電解質膜・電極構造体と、
    前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シートを有する枠部材と、
    を備えた枠付き電解質膜・電極構造体であって、
    前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、
    前記枠部材は、前記樹脂シートのうち前記第2電極よりも外方に延出する部位に前記接着層を介して接合された他の樹脂シートを有し、
    前記他の樹脂シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の厚さ方向から見て、前記第1電極の外周部と重なる重なり部を有し、
    前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、
    前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、枠付き電解質膜・電極構造体。
  2. 請求項1記載の枠付き電解質膜・電極構造体において、
    前記第1電極には、前記樹脂シートの内周端に対応する位置に段差が設けられている、枠付き電解質膜・電極構造体。
  3. 請求項1記載の枠付き電解質膜・電極構造体において、
    前記電解質膜及び前記接着層の各厚みは、前記樹脂シートの厚みよりも小さい、枠付き電解質膜・電極構造体。
  4. 電解質膜の一方の面に第1電極が設けられるとともに前記電解質膜の他方の面に第2電極が設けられてなる電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂シートを有する枠部材と、を有する枠付き電解質膜・電極構造体と、
    前記枠付き電解質膜・電極構造体の両側にそれぞれ積層されたセパレータと、
    を備えた燃料電池であって、
    前記電解質膜の外周部は、前記第2電極と前記樹脂シートとの間に配置され、前記第2電極の外周部に積層されるとともに、接着層を介して前記樹脂シートの内周部に接合されており、
    前記枠部材は、前記樹脂シートのうち前記第2電極よりも外方に延出する部位に前記接着層を介して接合された他の樹脂シートを有し、
    前記他の樹脂シートの内周部は、前記電解質膜・電極構造体の厚さ方向から見て、前記第1電極の外周部と重なる重なり部を有し、
    前記樹脂シートの弾性率は、前記電解質膜の弾性率よりも大きく、
    前記接着層の弾性率は、前記樹脂シートの弾性率及び前記電解質膜の弾性率よりも小さい、燃料電池。
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