以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
実施の形態1.
<冷凍サイクル装置の構成>
図1に示されるように、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100は、空気調和機であって、圧縮機1、室外熱交換器2、室内熱交換器3、膨張装置4および四方弁9を含む冷媒回路を備えている。膨張装置4は、第1絞り部5、第2絞り部6、貯留部7、および冷媒管路8を有している。上記冷媒回路は、冷媒を、圧縮機1、室外熱交換器2、第1絞り部5、貯留部7、第2絞り部6、室内熱交換器3、冷媒管路8を順に経て圧縮機1に戻る順方向Y1、または圧縮機1、室内熱交換器3、第2絞り部6、貯留部7、第1絞り部5、室外熱交換器2、冷媒管路8を順に経て圧縮機1に戻る逆方向Y2に循環させる。冷媒の循環方向の変更は、四方弁9が切替えられることにより、実施される。
図1に示されるように、圧縮機1、室外熱交換器2、膨張装置4、四方弁9および室外ファン14は例えば室外機101内に収容され、室内熱交換器3および室内ファン15は例えば室内機102に収容されている。上記冷媒回路は、室外機101と室内機102とを接続している延長配管16,17をさらに含む。延長配管16は、上記冷媒回路において第2絞り部6と室内熱交換器3との間に配置されている。延長配管17は、上記冷媒回路において四方弁9と第2絞り部6と室内熱交換器3との間に配置されている。
四方弁9は、第1ポート、第2ポート、第3ポートおよび第4ポートを有し、第1ポートと第2ポートとを接続する流路および第4ポートと第3ポートとを接続する流路が構成された状態と、第1ポートと第3ポートとを接続する流路および第4ポートと第2ポートとを接続する流路が構成された状態と、を切り替え可能に設けられている。図1に示されるように、四方弁9の第1ポートは圧縮機1の吐出口と接続されている。四方弁9の第2ポートは室外熱交換器2と接続されている。四方弁9の第3ポートは室内熱交換器3と接続されている。四方弁9の第4ポートは、膨張装置4の冷媒管路8を介して圧縮機1の吸入口と接続されている。
室外熱交換器2および室内熱交換器3の各々は、例えば上記冷媒回路の一部としての図示しない伝熱管と、該伝熱管と接続されている図示しないフィンとを有している。室外熱交換器2の上記伝熱管の一端は四方弁9の第2ポートと接続されており、その他端は膨張装置4の第1絞り部5と接続されている。室内熱交換器3の上記伝熱管の一端は四方弁9の第3ポートと接続されており、その他端は膨張装置4の第2絞り部6と接続されている。
室外熱交換器2は、該伝熱管を流れる冷媒と室外ファン14により伝熱管およびフィンに供給される室外の空気との間で熱交換可能に設けられている。室内熱交換器3は、該伝熱管を流れる冷媒と室内ファン15により伝熱管およびフィンに供給される室内の空気との間で熱交換可能に設けられている。上記冷媒回路において室外熱交換器2内にある部分の容積、すなわち室外熱交換器2の内容積と、上記冷媒回路において室内熱交換器3内にある部分の容積、すなわち室内熱交換器3の内容積との大小関係は、制限されるものではない。室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積とは、等しくてもよいし、一方が他方よりも大きくてもよい。例えば室外熱交換器2の内容積は室内熱交換器3の内容積超えである。
<膨張装置の構成>
図1に示されるように、第1絞り部5は、上記冷媒回路において貯留部7と室外熱交換器2との間に配置されている。第1絞り部5は、配管10を介して室外熱交換器2と接続されている。第2絞り部6は、上記冷媒回路において前記貯留部と前記室内熱交換器との間に配置されている。第2絞り部6は、配管11を介して室内熱交換器3と接続されている。冷房運転時には、第1絞り部5が上流絞り部として第2絞り部6が下流絞り部として作用する。暖房運転時には、第2絞り部6が上流絞り部として第1絞り部5が下流絞り部として作用する。第1絞り部5および第2絞り部6の各開度は、変更可能である。
図1に示されるように、貯留部7は、上記冷媒回路において第1絞り部5と第2絞り部との間に配置されている。貯留部7は、上記冷媒回路において室外熱交換器2と室内熱交換器3との間に配置されている。貯留部7は、冷凍サイクル装置100に封入された冷媒の一部を貯留可能に設けられている。
図1に示されるように、冷媒管路8は、貯留部7の内部に引き回されている。冷媒管路8の一端は四方弁9の第4ポートと接続されており、その他端は圧縮機1の吸入口と接続されている。冷媒管路8は、その内部を冷媒が流通可能に設けられている。
膨張装置4は、貯留部7内の冷媒と冷媒管路8内の冷媒とが熱交換するように、設けられている。異なる観点から言えば、膨張装置4は、内部熱交換器を有している。
図2に示されるように、貯留部7は、圧力容器40の内部に配置されている。圧力容器40の上方には、上記冷媒回路において圧力容器40の内部と外部とを接続している第1出入口5Aおよび第2出入口6Aが配置されている。第1出入口5Aは、上記冷媒回路において貯留部7と配管10との間、すなわち上記冷媒回路において貯留部7と室外熱交換器2との間に配置されている。第2出入口6Aは、上記冷媒回路において貯留部7と配管11との間、すなわち上記冷媒回路において貯留部7と室内熱交換器3との間に配置されている。第1出入口5Aおよび第2出入口6Aの各平面形状は、任意の形状であればよいが、例えば円形状である。第1出入口5Aおよび第2出入口6Aの各中心軸が延びる方向は、例えば第1方向は重力方向Gと交差する方向である。
図2に示されるように、第1絞り部5は、第1出入口5Aと、第1出入口5Aの開口面積を変化させる第1弁体50とを有している。第2絞り部は、第2出入口6Aと、第2出入口6Aの開口面積を変化させる第2弁体60とを有している。
図2に示されるように、第1弁体50および第2弁体60は、例えばニードル弁である。第1弁体50は、外形が円錘面を有している錘状部50Aと、錘状部50Aの底面と接続されている柱状部50Bとを有している。柱状部50Bの外径は、第1出入口5Aの内径以上である。錘状部50Aの中心軸は、上記第1出入口5Aの中心軸と重なるように配置されている。第1弁体50は、錘状部50Aの中心軸に沿った方向A,Bに移動可能に設けられている。これにより、第1弁体50の錘状部50Aの少なくとも一部は第1出入口5Aに挿通可能である。第1出入口5A内に挿通されている錘状部50Aの第1出入口5Aの開口面上の断面積は方向A,Bにおける錘状部50Aの移動量に応じて変化する。第1出入口5Aの開口面積は方向A,Bにおける錘状部50Aの移動量に応じて変化する。
第1出入口5Aの開口面積とは、第1出入口5A内を流れる冷媒の流路面積であり、第1出入口5A内に第1弁体50が挿通されている状態においては、第1出入口5Aの外縁部と第1弁体50との間に形成される隙間の、第1出入口5Aの開口面上での面積である。第1絞り部5の開度は、第1出入口5Aの開口面積であってもよいし、またはそれに比例するパラメータであってもよい。第1絞り部5の開度は、例えば第1出入口5A内に第1弁体50が挿通されていない全開時の第1出入口5Aの開口面積に対する面積比としてもよいし、第1弁体50がステッピングモータにより駆動される場合には駆動パルス数またはその比率としてもよい。
第2弁体60は、外形が円錘面を有している錘状部60Aと、錘状部60Aの底面と接続されている柱状部60Bとを有している。柱状部60Bの外径は、第2出入口6Aの内径以上である。錘状部60Aの中心軸は、上記第2出入口6Aの中心軸と重なるように配置されている。第2弁体60は、錘状部60Aの中心軸に沿った方向A,Bに移動可能に設けられている。これにより、第2弁体60の錘状部60Aの少なくとも一部は第2出入口6Aに挿通可能である。第2出入口6A内に挿通されている錘状部60Aの第2出入口6Aの開口面上の断面積は方向A,Bにおける錘状部60Aの移動量に応じて変化する。第2出入口6Aの開口面積は方向A,Bにおける錘状部60Aの移動量に応じて変化する。
第2出入口6Aの開口面積とは、第2出入口6A内を流れる冷媒の流路面積であり、第2出入口6A内に第2弁体60が挿通されている状態においては、第2出入口6Aの外縁部と第1弁体50との間に形成される隙間の、第2出入口6Aの開口面上での面積である。第2絞り部6の開度は、第2出入口6Aの開口面積であってもよいし、またはそれに比例するパラメータであってもよい。第2絞り部6の開度は、例えば第1出入口5A内に第1弁体50が挿通されていない全開時の第1出入口5Aの開口面積に対する面積比としてもよいし、第2弁体60がステッピングモータにより駆動される場合には駆動パルス数またはその比率としてもよい。
方向Aは、第1弁体50を第1出入口5Aから引き出す方向であって、第2弁体60を第2出入口6Aに押し入れる方向である。方向Bは、方向Aの逆方向であって、第1弁体50を第1出入口5Aに押し入れる方向であって、第2弁体60を第2出入口6Aから引き出す方向である。第1弁体50および第2弁体60は、後述する制御部45により、同じ方向に移動される。第1弁体50が方向Aに向けて移動されるときには、第2弁体60も方向Aに向けて移動される。第1弁体50が方向Bに向けて移動されるときには、第2弁体60も方向Bに向けて移動される。
図2に示されるように、圧力容器40の内部には、上記冷媒回路において第1出入口5Aと貯留部7との間に配置された第1冷媒流路41を構成するための壁部42、および上記冷媒回路において第2出入口6Aと貯留部7との間に配置された第2冷媒流路43を構成するための壁部44が設けられている。壁部42,44は、圧力容器40の頂部と接続されている。壁部42,44と圧力容器40の頂部との間には、冷媒が出入可能な隙間が設けられていない。壁部42,44と圧力容器40の底部との間には、冷媒が出入可能な隙間が設けられている。壁部42,44と圧力容器40の底部との間に設けられている当該隙間は、例えば後述する第1状態および第2状態において貯留部7に貯留される冷媒に浸漬されるように設けられている。貯留部7は、壁部42,44よりも内側に配置されている。
図2に示されるように、圧力容器40の内部において壁部42および壁部44よりも内側には、冷媒管路8が引き回されている。冷媒管路8の一端は、配管12に接続されており、他端は配管13に接続されている。冷媒管路8は、圧力容器40の頂部に設けられた2つの貫通孔を通されている。冷媒管路8は、例えば圧力容器40の内部において折り曲げられており、その屈曲部分は、圧力容器40の頂部よりも底部に近い位置に配置されている。冷媒管路8の屈曲部分の頂部は、例えば壁部42,44よりも圧力容器40の底部に近い位置に配置されている。冷媒管路8の屈曲部分の数は、1以上の任意の数であればよい。
図2に示されるように、膨張装置4は、例えば第1弁体50および第2弁体60の移動を制御する制御部45をさらに含む。制御部45は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように、第1絞り部5および第2絞り部6を制御する。つまり、第1絞り部5および第2絞り部6は、制御部45により、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように、制御される。制御部45は、例えばステッピングモータなどの図示しない回転部と、該回転部の回転運動を直線運動に変換する変換部とを有している。上述のように、制御部45は、第1弁体50および第2弁体60を同じ方向に移動させる。制御部45は、第1弁体50および第2弁体60を方向Aに移動させ、または第1弁体50および第2弁体60を方向Bに移動させる。第1弁体50の方向A,Bの移動量は、例えば第2弁体60の方向A,Bの移動量と等しくされる。
図3は、上記膨張装置4の合成流量特性を示すグラフである。図3の横軸は上流絞り部の開度(単位:pulse)を示し、図3の縦軸は膨張装置4の全体、第1絞り部5および第2絞り部6の各流量係数Cvを示す。上流絞り部とは、第1絞り部5および第2絞り部6のうち上記冷媒回路の上流側に配置されている一方を指し、冷房運転時には第1絞り部5であり、暖房運転時には第2絞り部6である。つまり、図3に示す膨張装置4の合成容量特性は、冷凍サイクル装置100の冷房運転時および暖房運転時のいずれにおいても実現されるものである。また、膨張装置4の全体の流量係数Cvは、第1絞り部5の流量係数Cv1と第2絞り部6の流量係数Cv2との合成値であり、以下の式1で示される。
1/Cv2=(1/Cv1
2)+(1/Cv2
2)・・・(式1)
図3中の線分L1は膨張装置4の全体の流量係数Cvを示す。図3中の線分L2は、冷房運転時には第1絞り部5の流量係数Cv1を示し、暖房運転時には第2絞り部6の流量係数Cv2を示す。図3中の線分L3は、冷房運転時には第2絞り部6の流量係数Cv2を示し、暖房運転時には第1絞り部5の流量係数Cv1を示す。
以下では冷房運転時を例に説明する。図3の線分L2に示されるように、第1絞り部5の流量係数Cv1は、第1絞り部5の開度の増加に伴い増加する。図3の線分L3に示されるように、第2絞り部6の流量係数Cv2は、第1絞り部5の開度の減少、すなわち第2絞り部6の開度の増加に伴い増加する。
図3の線分L2,L3に示されるように、第1絞り部5の開度と第1絞り部5の流量係数Cv1との関係と、第1絞り部5の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係とは、例えば第1絞り部5の開度の最小値と最大値との間の中央値を対称軸として線対称とされる。言い換えると、第1絞り部5の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係と、第2絞り部6の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係とは、例えば等しくされる。
図3の線分L1に示されるように、このような膨張装置4の全体の流量係数Cv値と第1絞り部5の開度との関係は、ピーク形状を示す。該ピーク形状は、第1絞り部5の開度の最小値と最大値との間の中央値を対称軸として線対称とされる。言い換えると、膨張装置4の全体の流量係数Cv値の最大値は、第1絞り部5の開度が最小値と最大値との間の中央値とされ、かつ第2絞り部6の開度が最小値と最大値との間の中央値とされたときに実現される。一方、膨張装置4の全体の流量係数Cv値が最大値未満とされるときには、膨張装置4の全体の流量係数Cv値は、第1絞り部5および第2絞り部6のうち上流に配置された上流絞り部の開度が中央値よりも小さくかつ下流に配置された下流絞り部の開度が中央値よりも大きくされた第1状態、または第1絞り部5および第2絞り部6のうち上流に配置された上流絞り部の開度が中央値よりも大きくかつ下流に配置された下流絞り部の開度が中央値よりも小さくされた第2状態の、2つの状態で実現される。
なお、膨張装置4の全体の流量係数Cvは、膨張装置4を単位時間に流れる冷媒流量、膨張装置4の両ポートの圧力差、および冷媒の比重から求められる。例えば、膨張装置4の全体の流量係数Cvの測定は、一定の温度の液体(例えば清水)を一定の流量Qlで流したときの膨張装置4の両ポートの圧力差ΔPを測定し、流量Ql、圧力差ΔP、液体の比重Glから以下の式2により求められる。なお、液体が清水の場合、Glは1となる。
Cv=0.366×Ql×(Gl/ΔP)1/2・・・(式2)
図4は、冷房運転、暖房運転および除霜運転時などの定常運転時において、上記上流絞り部の開度が、第1絞り部5および第2絞り部6のうち上記冷媒回路の下流側に配置されている下流絞り部の開度よりも小さくされたときの、冷凍サイクル装置100のモリエル線図である。図5は、定常運転時において、上記上流絞り部の開度が、上記下流絞り部の開度よりも大きくされたときの、冷凍サイクル装置100のモリエル線図である。図4および図5の横軸は比エンタルピー(単位:kJ/kg)であり、図4および図5の縦軸は圧力(単位:MPa)である。なお、図4および図5中の線分L4は、冷媒の飽和液線および飽和蒸気線を示し、線分L5,L6は冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路を循環する冷媒の状態変化を示す。図4および図5中の他の複数の線分は冷媒の等温線を示し、図4および図5中の上方に横軸に沿って記載された各数値は各等温線の温度(単位:℃)を示す。
図4および図5に示されるように、上記第1状態において上記上流絞り部を経て貯留部7に流入する中圧の気液2相冷媒は、上記第2状態において上記上流絞り部を経て貯留部7に流入する中圧の気液2相冷媒よりも低圧となる。上記第1状態において貯留部7に貯留される中圧の気液2相冷媒の密度は、上記第2状態において上記上流絞り部を経て貯留部7に流入する中圧の気液2相冷媒の密度よりも低くなる。そのため、上記第1状態において貯留部7に貯留される中圧の気液2相冷媒の量は、上記第2状態において上記上流絞り部を経て貯留部7に流入する中圧の気液2相冷媒の量よりも少なくなる。これにより、上記第1状態において冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路を循環する冷媒の量(冷媒循環量)は、上記第2状態において冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路を循環する冷媒の量(冷媒循環量)よりも多くなる。
なお、上記上流絞り部を経て貯留部7に流入した中圧の気液2相冷媒は、冷媒管路8を流れる低温低圧の気液2相冷媒と熱交換することにより、飽和液状態とされる。貯留部7に貯留された飽和液状態の冷媒は、上記下流絞り部でさらに減圧されて低圧の気液2相冷媒とされる。冷媒管路8を流れる低温低圧の気液2相冷媒または気相冷媒は、貯留部7に貯留された中圧の気液2相冷媒と熱交換することによって液相を含まない状態(飽和蒸気状態または過熱ガス状態)とされた後、圧縮機1に吸入される。
図2に示されるように、例えば冷凍サイクル装置100の冷房運転時には、第1絞り部5は、凝縮器としての室外熱交換器2から流出した過冷却状態の液相冷媒RE1を減圧して気液2相冷媒RE2とする。気液2相冷媒RE2は、例えば冷媒管路8を流れる低温低圧の気液2相冷媒RE5と熱交換することにより、飽和液状態とされる。第2絞り部6は、貯留部7に貯留された飽和液状態の冷媒RE3を減圧して気液2相冷媒RE4とする。冷媒管路8を流れる低温低圧の気液2相冷媒RE5は、飽和液状態の冷媒と熱交換することにより、液相を含まない気相冷媒RE6とされる。
<膨張装置の第1絞り部および第2絞り部の各開度の決定方法>
膨張装置4の第1絞り部5および第2絞り部6の各開度は、上記冷媒回路に適正量の冷媒を循環させて冷凍サイクル装置100が適正な冷房能力または暖房能力を発揮することができるように、例えば図3に示されるグラフに基づいて決定される。
具体的には、圧縮機1の回転数を一定としながら膨張装置4の全体の流量係数Cvを変化させた場合、冷凍サイクル装置の運転効率(成績係数COP)は膨張装置4の全体の流量係数Cvに応じて変化する。そのため、膨張装置4の全体の流量係数Cvには、高効率な運転を実現する観点から好適な値が存在し、その値が予め設定値とされている。さらに、図3に示されるような膨張装置4の全体の流量係数Cvと第1絞り部5および第2絞り部6の各開度との関係が、第1絞り部5および第2絞り部6の各構造に基づいて予め設定されている。第1絞り部5および第2絞り部6の各開度は、例えば、図3に示されるグラフから、膨張装置4の全体の流量係数Cvを上記設定値とすることができるように予め設定されている。
なお、第1絞り部5および第2絞り部6の各開度は、冷凍サイクル装置100の運転中に各構成部材から取得され得る情報に基づいて、決定されてもよい。膨張装置4の全体の流量係数Cvは、圧縮機1から吐出された気相冷媒の温度(あるいは圧縮機1に吸入される冷媒の過熱度SH)と相関する。そのため、図3に示されるような膨張装置4の全体の流量係数Cvと第1絞り部5および第2絞り部6の各開度との関係に加え、膨張装置4の全体の流量係数Cvと圧縮機1に吸入される気相冷媒の過熱度または圧縮機1から吐出される気相冷媒の温度等との関係が予め設定されていてもよい。この場合、各運転状態において圧縮機1に吸入される気相冷媒の過熱度または圧縮機1から吐出される気相冷媒の温度等が図示しない温度計により測定され、上記測定値および予め設定された上記関係から、高効率な運転を実現し得るように膨張装置4の全体の流量係数Cvが決定されてもよい。
上述のように、膨張装置4の全体の流量係数Cvの設定値がその最大値未満である場合、膨張装置4の全体の流量係数Cvは第1状態にあるときにも実現され得るし、第2状態にあるときにも実現され得る。膨張装置4を第1状態として膨張装置4の全体の流量係数Cvを上記設定値とするか、または膨張装置4を第2状態として膨張装置4の全体の流量係数Cvを上記設定値とするかは、上記冷媒回路の冷媒循環量がより適正化されるように、決定されればよい。
冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路の適正な冷媒循環量は、冷房運転時と暖房運転時とで異なる場合がある。上記冷媒回路において室外熱交換器2と室内熱交換器3との間に配置されている部分に流れる冷媒の状態は、冷媒運転時と暖房運転時とで異なる。上記冷媒回路において室外熱交換器2と室内熱交換器3との間に配置されている部分において、室内熱交換器3と膨張装置4との間に配置されている部分は、延長配管16を含むため、室外熱交換器2と膨張装置4との間に配置されている部分と比べて、内容積が大きい。そして、室内熱交換器3と膨張装置4との間に配置されている部分には、冷房運転時には気液2相冷媒が、暖房運転時には気液2相冷媒の密度より高密度である液相冷媒が、循環する。そのため、延長配管16を含む冷凍サイクル装置100では、高い冷房能力を実現するために必要とされる冷媒循環量、すなわち冷房運転時における適正な冷媒循環量は、高い暖房能力を実現するために必要とされる冷媒循環量、すなわち暖房運転時における適正な冷媒循環量と比べて、多くなる。
また、冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路の適正な冷媒循環量は、室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係に応じて異なる。例えば室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積超えである場合、暖房運転時には内容積の小さな室内熱交換器3が凝縮器となるのに対し、冷房運転時には内容積の大きな室外熱交換器2が凝縮器となる。そのため、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積超えである場合、冷房運転時における適正な冷媒循環量は、暖房運転時における適正な冷媒循環量と比べて、多くなる。一方、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積未満である場合、暖房運転時には内容積の大きな室内熱交換器3が凝縮器となるのに対し、冷房運転時には内容積の小さな室外熱交換器2が凝縮器となる。そのため、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積未満である場合、冷房運転時における適正な冷媒循環量は、暖房運転時における適正な冷媒循環量と比べて、少なくなる。また、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積と等しく、膨張装置4が室外機101内に配置されている場合、暖房運転時には室内機102から室外機101に至る延長配管に高密度の液冷媒が溜まって冷媒不足になりやすい。このような場合には、暖房運転時に冷媒不足を防止して高い暖房能力を実現するために必要とされる適正な冷媒循環量は、冷房運転時における適正な冷媒循環量と比べて多くなる。
冷凍サイクル装置100の上記冷媒回路に封入される冷媒量は、凝縮器出口の過冷却度を十分に確保することができるように、決定される。その上で、膨張装置4が、室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係および運転状態に応じて、第1状態または第2状態とされる。これにより、冷凍サイクル装置100では、冷房運転時および暖房運転時のいずれにおいても、適正な冷媒量を循環させることができる。
なお、室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係は、冷凍サイクル装置100の設計時に、その使用態様等に応じて任意に設定され得る。室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積超えである場合、上記冷媒回路に封入される冷媒量は冷房運転時にCOPが最大となるように決定されるのが好ましい。この場合、冷凍サイクル装置100が冷房運転または除霜運転されているときには膨張装置4は第1状態とされ、暖房運転されているときには暖房運転時の上記適正な冷媒循環量を実現するために膨張装置4は第2状態とされる。室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積以下である場合、上記冷媒回路に封入される冷媒量は暖房運転時にCOPが最大となるように決定されるのが好ましい。この場合、冷凍サイクル装置100が冷房運転または除霜運転されているときには冷房運転または除霜運転時における適正な冷媒循環量を実現するために膨張装置4は第2状態とされ、冷凍サイクル装置100が暖房運転されているときには膨張装置4は第1状態とされる。制御部45は、例えば四方弁9の状態または室外熱交換器2または室内熱交換器3の温度等から冷凍サイクル装置100の運転状態を判別し、その結果に基づいて上記のように第1状態と第2状態とを切り替えてもよい。
<作用効果>
冷凍サイクル装置によれば、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、第1絞り部5のCv値と第2絞り部6のCv値の一方が増加すると他方が減少する。第1絞り部5のCv値と第2絞り部6のCv値との合成値である膨張装置4の全体の流量係数Cv値は、第1絞り部5の開度または第2絞り部6の開度との関係において、ピーク形状を示す。
その結果、冷凍サイクル装置100の高効率な運転を可能とするように設定される膨張装置4の全体の流量係数Cv値は、そのピーク値よりも小さい場合に、上記第1状態および上記第2状態において、実現される。
さらに、第1状態と第2状態とでは、貯留部7内の圧力が異なるため、冷媒回路内を循環する冷媒量が異なる。冷凍サイクル装置100では、運転状態に応じて、第1状態または第2状態を選択可能に設けられている。
つまり、冷凍サイクル装置100は、高効率な運転を可能とする膨張装置の全体の流量係数Cv値が実現されるとともに、冷凍サイクル装置100の運転状態に応じて適正な量の冷媒を循環させることができる。そのため、冷凍サイクル装置100は、第1絞り部および第2絞り部の一方の開度のみが変化される冷凍サイクル装置、および両絞り部の開度が変化されるが一方が増加すると他方が減少するようには変化されない冷凍サイクル装置と比べて、あらゆる運転状態において高効率な運転が可能である。
また、冷凍サイクル装置100は、製造時に上記冷媒回路に封入される冷媒量がその設定値に対してばらつきを有している場合、該バラつきに起因した運転効率のバラつきを緩和することができる。封入冷媒量のばらつきが冷凍サイクル装置100の性能に及ぼす影響は、封入冷媒量が少ない低容量機種であるほど大きくなる。そのため、冷凍サイクル装置100は、封入冷媒量が少ない低容量機種に好適である。
また、上述のように上記冷媒回路の適正な冷媒循環量が冷房運転時と暖房運転時とで異なる場合、一般的な従来の冷凍サイクル装置では密度の大きい液冷媒を貯める液貯め部が膨張弁よりも上流側に設けられている。これに対し、冷凍サイクル装置100では、そのような液貯め部が不要であるため、そのような液貯め部を備える従来の冷凍サイクル装置と比べて製造コストが抑制されている。
また、冷凍サイクル装置100では、下流絞り部としての第1絞り部5または第2絞り部6に流入する冷媒を確実に液相冷媒とすることができる。そのため、冷凍サイクル装置100の下流絞り部では、冷媒音の発生が抑制されている。さらに、冷凍サイクル装置100では、圧縮機1に吸入される冷媒を確実に気相冷媒とすることができる。そのため、圧縮機1は、気液2相冷媒を圧縮することに伴う寿命低下が抑制されている。
上記冷凍サイクル装置100において、膨張装置4は、膨張装置4の全体の流量係数Cv値と第1絞り部5の開度との関係がピーク形状を示し、かつ該ピーク形状が第1絞り部5の開度の最小値と最大値との間の中央値を対称軸として線対称となるように、設けられている。言い換えると、上記膨張装置4では、第1絞り部5の開度に対する第1絞り部5の流量係数Cvの変化率(図3中の線分L2の傾き)が第2絞り部6の開度に対する第2絞り部6の流量係数Cvの変化率(図3中の線分L3の傾き)と等しくされている。
このような膨張装置4では、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度が比較的容易に制御することができる。具体的には、上記膨張装置4では、第1弁体50および第2弁体60の方向A,Bへの移動距離が等しくされることで、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少する。第1弁体50および第2弁体60を方向A,Bへ等距離移動させることは、制御部45により容易に実現される。
上記冷凍サイクル装置100では、第1絞り部5は、冷媒回路において貯留部7と室外熱交換器2との間に配置されている第1出入口5Aと、第1出入口5Aの開口面積を変化させる第1弁体50とを有している。第2絞り部6は、冷媒回路において貯留部7と室内熱交換器3との間に配置されている第2出入口6Aと、第2出入口6Aの開口面積を変化させる第2弁体60とを有している。第1弁体50の一部および第2弁体60の一部の各外形は錐面を有している。第1弁体50の一部は第1出入口5Aに挿通可能に設けられている。第2弁体60の一部は第2出入口6Aに挿通可能に設けられている。
このような膨張装置4によれば、第1弁体50および第2弁体60の上記方向A,Bの移動量に応じて、第1絞り部5および第2絞り部6の開度を変更することができる。第1弁体50および第2弁体60の上記方向A,Bの移動量は、例えばステッピングモータなどの図示しない回転部と該回転部の回転運動を直線運動に変換する変換部とを有している制御部45により容易に制御され得る。そのため、第1絞り部5および第2絞り部6の開度は、制御部45により容易に制御され得る。
上記冷凍サイクル装置100では、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積よりも大きくてもよい。この場合、第1絞り部5および第2絞り部6は、室内熱交換器3が凝縮器として作用している暖房運転時に第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも大きくされ、室内熱交換器3が蒸発器として作用している冷房運転時に第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも小さくされる。
上述のように、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積超えである場合、冷房運転時における適正な冷媒循環量は、暖房運転時における適正な冷媒循環量と比べて、多くなる。一方で、上述のように、膨張装置4が第1状態にあるときの上記冷媒回路の冷媒循環量は、膨張装置4が第2状態にあるときの上記冷媒回路の冷媒循環量よりも多くなる。そのため、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積超えである場合、冷房運転時には膨張装置4を第1状態とすることで冷媒循環量を冷房運転時における適正な冷媒循環量とすることができ、また暖房運転時には膨張装置4を第2状態とすることで冷媒循環量を暖房運転時における適正な冷媒循環量とすることができる。
上記冷凍サイクル装置100では、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積よりも小さくてもよい。この場合、第1絞り部5および第2絞り部6は、室内熱交換器3が凝縮器として作用している状態にあるときに、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも小さくされ、室内熱交換器3が蒸発器として作用している状態にあるときに、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも大きくされる。
上述のように、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積以下である場合、暖房運転時における適正な冷媒循環量は、冷房運転時における適正な冷媒循環量と比べて、多くなる。一方で、上述のように、膨張装置4が第1状態にあるときの上記冷媒回路の冷媒循環量は、膨張装置4が第2状態にあるときの上記冷媒回路の冷媒循環量よりも多くなる。そのため、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積以下である場合、暖房運転時には膨張装置4を第1状態とすることで冷媒循環量を暖房運転時における適正な冷媒循環量とすることができ、また冷房運転時には膨張装置4を第2状態とすることで冷媒循環量を冷房運転時における適正な冷媒循環量とすることができる。
上記冷凍サイクル装置100では、膨張装置4の内部に壁部42,44が設けられている。壁部42,44と圧力容器40の頂部との間には、冷媒が出入可能な隙間が設けられていない。壁部42,44と圧力容器40の底部との間には、冷媒が出入可能な隙間が設けられている。壁部42,44と圧力容器40の底部との間に設けられている当該隙間は、例えば第1状態および第2状態において貯留部7に貯留される冷媒に浸漬されるように設けられている。
膨張装置4の内部に壁部42,44が設けられていない場合、下流絞り部には貯留部7の上部に存在する中圧の気液2相冷媒も流入するため、下流絞り部が気液2相冷媒を絞ることになる。その結果、冷凍サイクル装置の動作は不安定となり、また大きな冷媒音が発生するという問題がある。これに対し、膨張装置4の内部に壁部42,44が設けられていれば、冷房運転時に第1絞り部5から貯留部7に流入する気液2相冷媒および暖房運転時に第2絞り部6から貯留部7に流入する気液2相冷媒は、壁部42,44によって、貯留部7に貯留されており、かつ冷媒管路8内を流通する低温低圧な気液2相冷媒または気相冷媒と熱交換されることにより飽和液状態とされている冷媒と混合される。そのため、膨張装置4から第1絞り部5または第2絞り部6を経て外部へ流出する冷媒の状態は、気液2相ではなく液相とされる。その結果、上記冷凍サイクル装置100は、下流絞り部が気液2相冷媒を絞ることによる上記問題の発生を抑制することができる。
実施の形態2.
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、図2に示される膨張装置4に替えて、図7に示される膨張装置4Aを備えている点で異なる。図7に示されるように膨張装置4Aの第1絞り部5、第2絞り部6および貯留部7の各構成は、図2に示されるこれらの構成を上下反転させた構成とされている。
図7に示されるように、第1絞り部5の第1出入口5Aおよび第2絞り6の第2出入口6Aは、圧力容器40の底部に設けられている。冷媒管路8は、圧力容器40の底部に設けられた2つの貫通孔を通されている。冷媒管路8の屈曲部分の頂部は、例えば圧力容器40の底部よりも圧力容器40の頂部に近い位置に配置されている。
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
さらに、図7に示されるように、実施の形態2に係る膨張装置4Aでは、図2に示される壁部42,44が不要とされる。つまり、膨張装置4Aでは、図2に示される壁部42,44を備えていなくても、第1出入口5Aおよび第2出入口6Aが貯留部7に貯留されている飽和液状態の冷媒に浸漬された状態とされ得る。そのため、膨張装置4Aの貯留部7に流入する気液2相冷媒は、貯留部7に貯留されている飽和液状態の冷媒と混合される。
実施の形態3.
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、図2に示される膨張装置4に替えて、図7に示される膨張装置4Bを備えている点で異なる。
図7に示されるように、膨張装置4Bは、冷房運転時および暖房運転時において上流絞り部として作用する第3絞り部18と、冷房運転時および暖房運転時において下流絞り部として作用する第4絞り部19とを含む。
図7に示されるように、第3絞り部18は、貯留部7に対して上方に配置されている。第4絞り部19は、貯留部7に対して下方に配置されている。
第3絞り部18の第1弁体70、第1出入口7Aは、第4絞り部19の第2弁体80、第2出入口8Aよりも上方に配置されている。第1弁体70および第2弁体80は、重力方向Gに沿って下降または上昇可能に設けられている。第1弁体70の錘状部70Aは、先端を下方に向けて配置されている。第2弁体80の錘状部80Aは、先端を上方に向けて配置されている。第1出入口7Aおよび第2出入口8Aは、重力方向Gに向いて開口している。
冷媒管路8は、例えば螺旋状に設けられており、その中心軸が重力方向Gに沿うように配置されている。
制御部45は、第1弁体70および第2弁体80を同時に下降または上昇させる。第1弁体70および第2弁体80は、第3絞り部18の開度が中央値よりも大きくかつ第4絞り部19の開度が中央値よりも小さくされた第1状態では、第3絞り部18の開度が中央値とされている状態のそれらよりも下方に配置されている。第1弁体70および第2弁体80は、第3絞り部18の開度が中央値よりも小さくかつ第4絞り部19の開度が中央値よりも大きくされた第2状態では、第3絞り部18の開度が中央値とされている状態のそれらよりも上方に配置されている。
第3絞り部18は、冷凍サイクル装置の運転モードに関わらず、上記冷媒回路において第4絞り部19よりも上流側に配置される。上記冷媒回路は、例えば図示しない第1切替弁および図示しない第2切替弁とをさらに含む。第1切替弁は、室外熱交換器2と第3絞り部18とを接続する冷媒流路と、室内熱交換器3と第3絞り部18とを接続する冷媒流路とを切替可能に設けられている。第2切替弁は、第4絞り部19と室内熱交換器3とを接続する冷媒流路と、第4絞り部19と室外熱交換器2とを接続する冷媒流路とを切替可能に設けられている。
冷房運転時には、第1切替弁は室外熱交換器2と第3絞り部18とを接続し、第2切替弁は第4絞り部19と室内熱交換器3とを接続する。暖房運転時には、第1切替弁は室内熱交換器3と第3絞り部18とを接続し、第2切替弁は第4絞り部19と室外熱交換器2とを接続する。これにより、冷媒は、冷房運転時には凝縮器としての室外熱交換器2、第3絞り部18、貯留部7、第4絞り部19、蒸発器としての室内熱交換器3を順に流れ、暖房運転時には凝縮器としての室内熱交換器3、第3絞り部18、貯留部7、第4絞り部19、蒸発器としての室外熱交換器2を順に流れる。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置は、第3絞り部18の開度および第4絞り部19の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
実施の形態4.
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、図2に示される膨張装置4に替えて、図8~図11に示される膨張装置4Cを備えている点で異なる。
図8~図11に示されるように、膨張装置4Cは、貯留部7に加えて、第3出入口20Aおよび第4出入口20Bを有する弁座20と、第3出入口20Aよりも開口面積が大きい第5出入口21Aおよび第4出入口20Bよりも開口面積が大きい第6出入口21Bが設けられている弁体21とを含む。弁体21は、第1軸Oを中心とする周方向に回転可能に設けられている。
図8に示されるように、第3出入口20Aおよび第5出入口21Aは、上記冷媒回路において貯留部7と室外熱交換器2との間に連なるように配置されている。第4出入口20Bおよび第6出入口21Bは、上記冷媒回路において貯留部7と室内熱交換器3との間に連なるように配置されている。
図9(A)に示されるように、第1軸Oの延在方向から視て、第3出入口20Aおよび第4出入口20Bの平面形状は、例えば円形状である。図9(B)に示されるように、第1軸Oの延在方向から視て、第1軸Oに向かう径方向における第5出入口21Aの幅は、上記周方向における第5出入口21Aの一端から他端に向かうにつれて徐々に小さくされている。上記径方向における第6出入口21Bの幅は、上記周方向における第6出入口21Bの一端から他端に向かうにつれて徐々に大きくされている。
図9(B)に示されるように、第5出入口21Aの一端21C、第5出入口21Aの他端21D、第6出入口21Bの一端21E、および第6出入口21Bの他端21Fは、周方向において順に並んで配置されている。第5出入口21Aの他端21Dと第6出入口21Bの一端21Eとは、上記周方向に間隔を隔てて配置されている。第5出入口21Aの一端21Cと第6出入口21Bの他端21Fとは、上記周方向に間隔を隔てて配置されている。各間隔は、例えば図9(A)に示される第3出入口20Aおよび第4出入口20Bの内径以上である。
図9(B)に示されるように、第5出入口21Aおよび第6出入口21Bは、第1軸Oの延在方向から視て第1軸Oを通る仮想直線Pを対称軸として線対称となるように、設けられている。
膨張装置4Cでは、第3出入口20Aおよび第5出入口21Aが第1絞り部5を構成し、第4出入口20Bおよび第6出入口21Bが第1絞り部6を構成している。
図9(A),図9(B)、図10および図11に示されるように、第1軸Oの延在方向から視て、第5出入口21Aにおいて第3出入口20Aと重なる領域の面積および第6出入口21Bにおいて第4出入口20Bと重なる領域の面積は、弁体21が弁座20に対して周方向に回転されることにより、それらの一方が増加するとともに他方が減少する。膨張装置4Cでは、上記周方向への弁体21の回転量として、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度が制御される。
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
実施の形態5.
実施の形態5に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、第1絞り部5の開度と第1絞り部5の流量係数Cv1との関係と、第1絞り部5の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係とが、第1絞り部5の開度の中央値を対称軸として線対称とされていない点で異なる。実施の形態5における膨張装置4では、第1絞り部5の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係と、第2絞り部6の開度と第2絞り部6の流量係数Cv2との関係とが異なっている。
図12は、実施の形態5に係る膨張装置4の合成流量特性を示すグラフである。図12の横軸は上流絞り部の開度(単位:pulse)を示し、図12の縦軸は膨張装置4の全体、第1絞り部5および第2絞り部6の各流量係数を示す。図12中の線分L1は、実施の形態4に係る膨張装置4の全体の流量係数Cvを示す。図12中の線分L2は、冷房運転時には第1絞り部5の流量係数Cv1を示し、暖房運転時には第2絞り部6の流量係数Cv2を示す。図12中の線分L3は、冷房運転時には第2絞り部6の流量係数Cv2を示し、暖房運転時には第1絞り部5の流量係数Cv1を示す。
図12に示されるように、第1絞り部5の開度の増加に伴う第1絞り部5の流量係数Cv1の増加率は、例えば第1絞り部5の開度の減少、すなわち第2絞り部6の開度の増加に伴う第2絞り部6の流量係数Cv2の増加率よりも小さい。この場合、膨張装置4の全体の流量係数Cv値の最大値は、第1絞り部5の開度がその中央値よりも大きくされ、かつ第2絞り部6の開度がその中央値よりも小さくされたときに実現される。
ここで、全体の流量係数Cv値が互いに等しい値とされた、図12に示される流量特性を有する膨張装置4(以下、前者)と、図3に示される流量特性を有する膨張装置4(以下、後者)とを比較する。第1絞り部5が上流絞り部とされる冷房運転時において、前者の貯留部7に貯留される冷媒量は、後者の貯留部7に貯留される冷媒量よりも少なくなる。また、第2絞り部6が上流絞り部とされる暖房運転時において、前者の貯留部7に貯留される冷媒量は、後者の貯留部7に貯留される冷媒量よりも、多くなる。そのため、冷房運転時と暖房運転時とで全体の流量係数CV値が一定とされる場合、前者の貯留部7に冷房運転時に貯留される冷媒量と暖房運転時に貯留される冷媒量との差は、後者の貯留部7に冷房運転時に貯留される冷媒量と暖房運転時に貯留される冷媒量との差よりも、大きくなる。そのため、前者は、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積と比べて特に大きい冷凍サイクル装置100に、好適である。
図12に示される膨張装置4の合成流量特性は、第1絞り部5の構成と第2絞り部6の構成とを異なるものとすることにより、実現される。例えば、図13に示されるように、第1出入口5Aと第2出入口6Aとは同等の構成とされている一方で、第1弁体50の錘状部50Aの錘面がその中心軸に対して成す角度は第2弁体60の錘状部60Aの錘面がその中心軸に対して成す角度超えとされている。この場合、第1弁体50および第2弁体60が方向Aまたは方向Bに同じ距離移動されると、第1出入口5Aの開口面積の増加率または減少率は第2出入口6Aの開口面積の増加率または減少率よりも小さくなる。
実施の形態5に係る冷凍サイクル装置は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
なお、第1絞り部5の開度の増加に伴う第1絞り部5の流量係数Cv1の増加率は、例えば第2絞り部6の開度の増加に伴う第2絞り部6の流量係数Cv2の増加率よりも大きくてもよい。このような膨張装置4は、室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積と比べて特に小さい冷凍サイクル装置100に、好適である。
実施の形態6.
実施の形態6に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係が設定値としてではなく任意のタイミングで判別され、該判別結果と冷凍サイクル装置100の運転状態の判別結果とに基づいて、膨張装置4が第1状態または第2状態とされる点で異なる。
室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係は、例えば第1状態と第2状態との切替時等の任意のタイミングで判別される。室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係は、例えば凝縮器出口の過冷却度(SC)に基づいて判別することができる。
図14に示されるように、例えば、まず室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積とを取得する(工程(S10))。次に、取得された各内容積の大小関係が判別される(工程(S20))。
工程(S20)において室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積を超えていると判断された場合、冷凍サイクル装置100の運転状態が判別される(工程(S31))。工程(S31)において冷房運転と判断された場合、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも小さくされる(工程(S40))。工程(S31)において暖房運転と判断された場合、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも大きくされる(工程(S41))。
工程(S20)において室外熱交換器2の内容積が室内熱交換器3の内容積を超えていない判断された場合、冷凍サイクル装置100の運転状態が判別される(工程(S32))。工程(S32)において冷房運転と判断された場合、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも大きくされる(工程(S41))。工程(S32)において暖房運転と判断された場合、第1絞り部5の開度が第2絞り部6の開度よりも小さくされる(工程(S42))。
なお、冷凍サイクル装置100の運転状態が判別された後に、室外熱交換器2の内容積と室内熱交換器3の内容積との大小関係が判別されてもよい。
実施の形態6に係る冷凍サイクル装置は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
実施の形態7.
実施の形態7に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100と基本的に同様の構成を備えるが、図2に示される膨張装置4に替えて、図15に示される膨張装置4Eを備えている点で異なる。
膨張装置4Eでは、第1弁体および第2弁体が一体に設けられている。具体的には、膨張装置4Eは、図2に示される第1弁体50および第2弁体60に替えて、第1出入口5Aおよび第2出入口6Aに挿通されている弁体23を有している。弁体23は、例えば第1弁体50の錘状部50Aと第2弁体60の錘状部60Aとが連結部23Cによって連結された構造を有している。
弁体23は、第1錘状部23A、第2錘状部23B、連結部23C、柱状部23D、柱状部23Eを有している。第1錘状部23Aの中心軸は、第1出入口5Aの中心軸と重なるように配置されている。第2錘状部23Bの中心軸は、第2出入口6Aの中心軸と重なるように配置されている。第1錘状部23Aの先端部は、第2錘状部23Bの先端部と対向するように設けられている。連結部23Cは、第1錘状部23Aの先端部と、第2錘状部23Bの先端部とを接続している。柱状部23Dは、連結部23Cと反対側において第1錘状部23Aと接続されている。柱状部23Eは、連結部23Cと反対側において第2錘状部23Bと接続されている。上記中心軸に垂直な方向における連結部23Cの幅は、第1出入口5Aおよび第2出入口6Aの各内径未満である。制御部45は、弁体23の柱状部23Dおよび柱状部23Eの少なくとも一方を方向A,Bに沿って移動可能に設けられていればよい。
実施の形態7に係る冷凍サイクル装置は、第1絞り部5の開度および第2絞り部6の開度の一方が増加するとそれらの他方が減少するように設けられているため、冷凍サイクル装置100と同様の効果を奏することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。