JP7030865B2 - リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用正極活物質及び該正極活物質を用いたリチウム二次電池に関するものである。
近年、家庭電器においてポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、ラップトップ型パソコン、携帯電話、ビデオカメラ等の小型電子機器の電源としてリチウムイオン二次電池が実用化されている。このリチウムイオン二次電池については、1980年に水島等によりコバルト酸リチウムがリチウムイオン二次電池の正極活物質として有用であるとの報告がなされて以来、リチウム系複合酸化物に関する研究開発が活発に進められており、これまで多くの提案がなされている。
しかしながら、コバルト酸リチウムを用いたリチウム二次電池にはコバルト原子の溶出等によるサイクル特性の劣化と言う問題がある。
下記特許文献1には、コバルト酸リチウムの粒子表面におけるチタンの存在割合が20%以上であるリチウムコバルト系複合酸化物を正極活物質とするリチウム二次電池が提案されている。また、下記特許文献2には、Ti原子を0.20~2.00重量%含有するリチウム遷移金属複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質であって、前記Ti原子はリチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面から深さ方向に存在し、且つ粒子表面で最大となる濃度勾配を有するリチウムコバルト系複合酸化物を正極活物質とすることが提案されている。また、下記特許文献3及び下記特許文献4には、Sr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト系複合酸化物を正極活物質とすることが提案されている。
特開2005-123111号公報 国際公開WO2011/043296号パンフレット 特開2013-182758号公報 特開2013-182757号公報
近年、リチウムイオン電池のさらなるエネルギー密度向上が求められている。その手段の一つとして、電池の充電終止電圧を上げるなどの高電圧化が挙げられる。しかしながら、これらの従来技術の方法であっても、高電圧下で充放電圧を繰り返すとサイクル特性が劣化するという問題がある。
従って、本発明の目的は、リチウム二次電池の正極活物質として用いたときに、高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池用正極活物質、及び高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面に、特定の化合物を付着させて存在させたものを正極活物質とするリチウム二次電池は、電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池になることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明(1)は、粒子表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子からなることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
また、本発明(2)は、Ti含有化合物が、チタンを含む酸化物であることを特徴とする(1)のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(3)は、前記Ti含有化合物の付着量が、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物粒子中のCoに対して、Tiとして0.01~5.00モル%であることを特徴とする(1)又は(2)のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(4)は、前記Mg含有化合物が、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム及びチタンとマグネシウムの複合化合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)~(3)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(5)は、前記Mg含有化合物が、硫酸マグネシウムであることを特徴とする(1)~(4)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(6)は、前記Mg含有化合物の付着量が、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物粒子中のCoに対して、Mgとして0.01~5.00モル%であることを特徴とする(1)~(5)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(7)は、前記リチウムコバルト系複合酸化物粒子が、Li、Co及びO以外に、1種又は2種以上のM元素(Mは、Mg、Al、Ti、Zr、Cu、Fe、Sr、Ca、V、Mo、Bi、Nb、Si、Zn、Ga、Ge、Sn、Ba、W、Na、K、Ni又はMnである。)を含有することを特徴とする(1)~(6)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(8)は、M元素が、Ti、Mg及びCaから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(7)のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(9)は、前記リチウムコバルト系複合酸化物粒子が、酸化コバルト(Co)を含有するものであることを特徴とする(1)~(8)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(10)は、酸化コバルト(Co)の含有量が、線源としてCuKα線を用いて、リチウムコバルト系複合酸化物をX線回折分析したときに、LiCoOに起因する2θ=37.4°付近の回折ピークの強度(B)に対するCoに起因する2θ=36.8°付近の回折ピークの強度(A)との比((A/B)×100)が、0.6より大きく5.0%以下であることを特徴とする(9)に記載のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(11)は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得、次いで、該混合処理物を、400~1000℃で加熱処理することにより得られるものであることを特徴とする(1)~(10)の何れか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(12)は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得、次いで、該混合処理物を、750~1000℃で加熱処理することにより得られるものであることを特徴とする(1)~(10)の何れか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を提供するものである。
また、本発明(13)は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得、次いで、該混合処理物を、400~1000℃で加熱処理することにより、リチウム二次電池用正極活物質を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供するものである。
また、本発明(14)は、(1)~(12)の何れかのリチウム二次電池用正極活物質を用いたことを特徴とするリチウム二次電池を提供するものである。
本発明によれば、リチウム二次電池の正極活物質として用いたときに、高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池用正極活物質、及び高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池を提供することができる。
実施例1で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例1で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例2で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 実施例2で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例3で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例4で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 LCO試料3のX線回折図。 実施例3で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例5で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。 比較例6で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、粒子表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子からなることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質である。つまり、本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、粒子表面の少なくとも一部にTi含有化合物及びMg含有化合物が存在しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子の集合物である。
よって、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を構成するリチウムコバルト系複合酸化物粒子では、粒子表面の一部分にTi含有化合物及びMg含有化合物が付着しているか、あるいは、粒子表面の全部を覆って、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着している。なお、粒子表面の一部分にTi含有化合物が付着しているとは、粒子表面に、Ti含有化合物以外に被覆対象物の表面が露出する部分を有する状態をいう。また、粒子表面の一部分にMg含有化合物が付着しているとは、粒子表面に、Mg含有化合物以外に被覆対象物の表面が露出する部分を有する状態をいう。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質に係るリチウムコバルト系複合酸化物粒子を形成するリチウムコバルト系複合酸化物は、少なくともリチウムとコバルトを含有する複合酸化物である。
リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するLiの原子換算のモル比(Li/Co)は、好ましくは0.90~1.20、特に好ましくは0.95~1.15である。リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対するLiの原子換算のモル比(Li/Co)が上記範囲にあることにより、リチウム二次電池用正極活物質のエネルギー密度が高くなる。
リチウムコバルト系複合酸化物は、性能又は物性を向上させることを目的として、必要に応じて、以下に示すM元素のうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。リチウムコバルト系複合酸化物が、必要に応じて含有するM元素は、Mg、Al、Ti、Zr、Cu、Fe、Sr、Ca、V、Mo、Bi、Nb、Si、Zn、Ga、Ge、Sn、Ba、W、Na、K、Ni又はMnである。
リチウムコバルト系複合酸化物は、サイクル特性、作動電圧、更にはレート特性等の電池特性がより一層高くなる点で、M元素として、Ti、Mg及びCaから選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましく、MgとCaを含有することが特に好ましい。
リチウムコバルト系複合酸化物がM元素を含有する場合、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するM元素の原子換算のモル%((M/Co)×100)は、好ましくは0.01~5.00モル%、特に好ましくは0.05~2.00モル%である。リチウムコバルト系複合酸化物がM元素を含有する場合において、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対するM元素の原子換算のモル%((M/Co)×100)が上記範囲にあることにより、充放電容量を損なうことなく電池特性を向上させることができる。なお、リチウムコバルト系複合酸化物が2種以上のM元素を含有する場合は、上記モル%の算出の基礎となる原子換算のM元素のモル数は、各M元素のモル数の合計を指す。
また、リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてTi、Mg及びCaから選ばれる1種又は2種以上を含有する場合、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するM元素の原子換算のモル%((M/Co)×100)は、好ましくは0.01~5.00モル%、特に好ましくは0.05~2.00モル%である。リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてTi、Mg及びCaから選ばれる1種又は2種以上を含有する場合において、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対するM元素の原子換算のモル%((M/Co)×100)が上記範囲にあることにより、高い充放電容量とサイクル特性、作動電圧、負荷特性、安全性等の電池特性を同時に満足させることができる。
リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてTiを含有する場合、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するTiの原子換算のモル%((Ti/Co)×100)は、好ましくは0.01~5.00モル%、特に好ましくは0.05~2.00モル%である。リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてTiを含有する場合において、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するTiの原子換算のモル%((Ti/Co)×100)が、上記範囲にあることにより、サイクル特性、作動電圧、更には負荷特性等の電池特性を特に向上させることができる。
リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてMgを含有する場合、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するMgの原子換算のモル%((Mg/Co)×100)は、好ましくは0.01~5.00モル%、特に好ましくは0.05~2.00モル%である。リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてMgを含有する場合において、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するMgの原子換算のモル%((Mg/Co)×100)が、上記範囲にあることにより、サイクル特性、負荷特性、安全性等の電池特性を特に向上させることができる。
リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてCaを含有する場合、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するCaの原子換算のモル%((Ca/Co)×100)は、好ましくは0.01~5.00モル%、特に好ましくは0.05~2.00モル%である。リチウムコバルト系複合酸化物がM元素としてCaを含有する場合において、リチウムコバルト系複合酸化物中、Coに対するCaの原子換算のモル%((Ca/Co)×100)が、上記範囲にあることにより、サイクル特性、負荷特性、安全性等の電池特性を特に向上させることができる。
M元素は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の内部に存在していてもよく、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に存在していてもよく、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の粒子内部及び粒子表面の両方に存在していてもよい。
リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面にM元素が存在する場合、M元素は、酸化物、複合酸化物、硫酸塩、リン酸塩等の形態として存在していてもよい。
また、リチウムコバルト系複合酸化物は、リチウムコバルト系複合酸化物の製造の際の原料酸化コバルト(Co)に起因する酸化コバルト(Co)を含有していてもよい。酸化コバルト(Co)の含有量は、線源としてCuKα線を用いて、リチウムコバルト系複合酸化物をX線回折分析したときに、LiCoOに起因する2θ=37.4°付近の回折ピークの強度(B)に対するCoに起因する2θ=36.8°付近の回折ピークの強度(A)との比((A/B)×100)が、好ましくは0.6より大きく5.0%以下、特に好ましくは0.8~2.5%であることが、高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が、いっそう少なく、エネルギー密度維持率がいっそう高いリチウム二次電池が得られる観点から好ましい。
なお、本発明において、回折ピークの強度の比は、回折ピークの高さの比で求められるものである。
そして、リチウムコバルト系複合酸化物粒子は、上記リチウムコバルト系複合酸化物の粒状物である。
リチウムコバルト系複合酸化物粒子は、例えば、リチウム化合物と、コバルト化合物と、を含有する原料混合物を調製する原料混合工程、次いで、得られる原料混合物を焼成する焼成工程を行うことにより製造される。
原料混合工程に係るリチウム化合物は、通常、リチウムコバルト系複合酸化物の製造用の原料として用いられるリチウム化合物であれば、特に制限されず、リチウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び有機酸塩等が挙げられる。
原料混合工程に係るコバルト化合物は、通常、リチウムコバルト系複合酸化物の製造用の原料として用いられるコバルト化合物であれば、特に制限されず、コバルトの酸化物、オキシ水酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び有機酸塩等が挙げられる。
原料混合工程において、リチウム化合物とコバルト化合物の混合割合は、原子換算で、Coのモル数に対するLiのモル数の比(Li/Coモル比)が、好ましくは0.90~1.20、特に好ましくは0.95~1.15となる混合割合である。リチウム化合物とコバルト化合物の混合割合が上記範囲にあることにより、単一相のリチウムコバルト系複合酸化物が得られ易くなる。
なお、酸化コバルト(Co)を含有するリチウムコバルト系複合酸化物を得るには、リチウム化合物とコバルト化合物の混合割合を、原子換算で、Coのモル数に対するLiのモル数の比(Li/Coモル比)で、0.950~1.000、好ましくは0.960~0.999とし、好ましくは後述する焼成温度を1000℃を超える温度とすることにより、上記酸化コバルト(Co)の含有量で、酸化コバルト(Co)を含有するリチウムコバルト系複合酸化物が得られ易くなる。
原料混合工程において、原料混合物に、M元素を含有する化合物を混合させることができる。
M元素を含有する化合物としては、M元素を含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、フッ化物及び有機酸塩等が挙げられる。M元素を含有する化合物として、M元素を2種以上含有する化合物を用いてもよい。
なお、原料のリチウム化合物、コバルト化合物及びM元素を含有する化合物は、製造履歴は問われないが、高純度のリチウムコバルト系複合酸化物粒子を製造するために、可及的に不純物含有量が少ないものであることが好ましい。
原料混合工程において、リチウム化合物と、コバルト化合物と、必要に応じて用いられるM元素を含有する化合物と、を混合する方法としては、例えば、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー等を用いる混合方法が挙げられる。なお、実験室レベルでは混合方法としては、家庭用ミキサーで十分である。
焼成工程は、原料混合工程を行い得られる原料混合物を、焼成することにより、リチウムコバルト系複合酸化物を得る工程である。
焼成工程において、原料混合物を焼成して、原料を反応させる際の焼成温度は、800~1150℃、好ましくは900~1100℃である。焼成温度が上記範囲にあることにより、リチウムコバルト系複合酸化物の容量減少の要因となる必要以上の未反応コバルト酸化物の残存を抑制し、又はリチウムコバルト系複合酸化物の過熱分解生成物の生成を少なくすることができる。
なお、酸化コバルト(Co)を含有するリチウムコバルト系複合酸化物を得るには、焼成温度を好ましくは1000℃より大きく、1100℃以下とすることが、酸化コバルト(Co)を上記範囲で残存させて含有させることが容易となる観点から好ましい。
焼成工程における焼成時間は、1~30時間、好ましくは5~20時間である。また、焼成工程における焼成雰囲気は、空気、酸素ガス等の酸化雰囲気である。
このようにして得られるリチウムコバルト系複合酸化物を、必要に応じて複数回の焼成工程に付してもよい。
Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着される前のリチウムコバルト系複合酸化物粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により求められる粒度分布における体積積算50%の粒子径(D50)で、0.5~30.0μm、好ましくは3.0~25.0μm、特に好ましくは7.0~25.0μmである。また、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着される前のリチウムコバルト系複合酸化物粒子のBET比表面積は、好ましくは0.05~1.0m/g、特に好ましくは0.15~0.60m/gである。Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着される前のリチウムコバルト系複合酸化物粒子の平均粒子径又はBET比表面積が上記範囲にあることにより、正極合剤の調製や塗工性が容易になり、さらには充填性の高い電極が得られる。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、リチウム二次電池用正極活物質を構成しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子が、粒子表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子である。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、Ti含有化合物は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着していてもよいし、あるいは、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の全部を覆って付着していてもよい。また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、Mg含有化合物は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着していてもよいし、あるいは、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の全部を覆って付着していてもよい。本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着していることにより、サイクルの劣化が少なく、エネルギー維持率が高くなる。そして、本発明のリチウム二次電池用正極活物質では、Mg含有化合物がリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の全部を覆って付着しており、且つ、Ti化合物がリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着していること、或いは、Mg含有化合物がリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着しており、且つ、Ti化合物がリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着していることが、リチウム二次電池において、高電圧で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率の高い正極活物質となる点で好ましい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部又は全部に付着しているMg含有化合物は、Mgを含有する化合物であり、該Mg含有化合物としては、例えば、Mgの硫酸塩、Mgの酸化物、Mgのフッ化物、チタンとマグネシウムの複合化合物(以下、「TiとMgとの複合酸化物」とも記載する。)等が挙げられる。
Mgの酸化物は、Mgの有機酸塩が400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で酸化分解されることにより生成したものであってもよい。Mgの有機酸塩としては、カルボン酸塩が好ましく、該カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のカルボン酸塩が挙げられる。なお、Mg含有化合物をリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に付着させる原料として、Mgの有機酸塩が用いられる場合、本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面にMgの有機酸塩を付着させた後に400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理して得られるものであるため、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に付着しているMg含有化合物は、Mgの有機酸塩の酸化分解物である。
Mg含有化合物としては、Mgの硫酸塩、Mgの酸化物、TiとMgとの複合酸化物が、充電状態においても安定性が高く、電池特性向上に寄与できることから好ましく、Mgの硫酸塩がリチウムコバルト系複合酸化物のpH低減効果もあることから特に好ましい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、Mg含有化合物の付着量は、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対して、Mgとして0.01~5.00モル%、好ましくは0.10~2.00モル%であることが好ましい。Mg含有化合物の付着量が上記範囲にあることにより、高い充放電容量とサイクル特性、負荷特性、安全性等の電池特性を両立させることができる。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質に係るTi含有化合物としては、チタンを含む酸化物等が挙げられる。
チタンを含む酸化物としては、例えば、Tiの酸化物、TiとLiとの複合酸化物、TiとM元素との複合酸化物、Ti、M元素及びLiの複合酸化物、TiとMgとの複合酸化物等が挙げられる。
チタンを含む酸化物は、有機チタン化合物が400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で酸化分解されることにより生成したものであってもよい。該有機チタン化合物としては、チタンの有機酸塩、チタンキレート化合物等が挙げられる。なお、Ti含有化合物をリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に付着させる原料として、Tiの有機酸塩又はチタンキレート化合物が用いられる場合、本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面にTiの有機酸塩又はチタンキレート化合物を付着させた後に、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理して得られるものであるため、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に付着しているTi含有化合物は、Tiの有機酸塩の酸化分解物又はチタンキレート化合物の酸化分解物である。
チタンの有機酸塩としては、チタンのカルボン酸塩が好ましく、該カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のこれらのカルボン酸の塩が挙げられる。
チタンキレート化合物は、チタン金属原子に、ヒドロキシカルボン酸が1分子以上配位した化合物である。該チタンキレート化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
Ti(R (1)
(式中、Rは、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基又はホスフィン類を示し、複数存在する場合、同一であってもよく、異なっていてもよい。Lはヒドロキシカルボン酸に由来する基を表し、複数存在する場合、同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0以上3以下の数を示し、nは1以上3以下の数を示し、m+nは3~6である。)
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アミノ基としては、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基等が挙げられる。ホスフィン類としては、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス-tert-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
Lで表されるヒドロキシカルボン酸に由来する基としては、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子又はヒドロキシカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に配位してなる基が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子及びヒドロキシルカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に2座で配位してなる基が挙げられる。これらの中、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子及びヒドロキシカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に2座で配位してなる基であることが好ましい。mが0の場合はm+nは3であることが好ましく、mが1以上3以下の場合はm+nは4又は5であることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、Ti含有化合物は、チタンを含む酸化物が充電状態においても安定性が高く、電池特性向上に寄与できる。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質において、Ti含有化合物の付着量は、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対して、Tiとして0.01~5.00モル%、好ましくは0.10~2.00モル%であることが好ましい。Ti含有化合物の付着量が上記範囲にあることにより、高い充放電容量とサイクル特性、負荷特性、安全性等の電池特性を両立させることができる。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により求められる粒度分布における体積積算50%の粒子径(D50)で、0.5~30.0μm、好ましくは3.0~25.0μm、特に好ましくは7.0~25.0μmである。また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.05~1.0m/g、特に好ましくは0.15~0.6m/gである。本発明のリチウム二次電池用正極活物質の平均粒子径又はBET比表面積が上記範囲にあることにより、正極合剤の調製や塗工性が容易になり、さらには充填性の高い電極が得られる。
本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質は、如何なる製造方法で製造されたものであってもよいが、下記の(a)~(c)の何れか方法により、製造されたものが高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池とする観点から好ましい。
(a)リチウムコバルト系複合酸化物粒子を、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液に接触させ、そのまま溶媒を全量乾燥した後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(a1)し、Mg含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子を得る。次いで、Mg含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子を、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液に接触させ、そのまま溶媒を全量乾燥した後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(a2)して、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を得る方法。
(b)リチウムコバルト系複合酸化物粒子を、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液に接触させ、そのまま溶媒を全量乾燥した後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(b1)し、Ti含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子を得る。次いで、Ti含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子を、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液に接触させ、そのまま溶媒を全量乾燥した後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(b2)して、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を得る方法。
(c)リチウムコバルト系複合酸化物粒子を、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体と、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体と、を含む表面処理液に接触させ、そのまま溶媒を全量乾燥した後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(c1)して、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を得る方法。
(a)、(b)及び(c)の製造方法で用いるリチウムコバルト系複合酸化物粒子は、前述した本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質に係るMg含有化合物及びTi含有化合物が付着される前のリチウムコバルト系複合酸化物粒子と同様である。
(a)及び(b)の製造方法で用いるMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液は、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を水及び/又は有機溶媒に溶解又は分散させた溶液である。
(a)及び(b)の製造方法で用いるTi含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液は、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を水及び/又は有機溶媒に溶解又は分散させた溶液である。
(c)の製造方法で用いるMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体と、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体と、を含む表面処理液は、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体と、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体と、を水及び/又は有機溶媒に溶解又は分散させた溶液である。
Mg含有化合物としては、例えば、Mgの硫酸塩、Mgの酸化物、Mgのフッ化物、TiとMgとの複合酸化物等が挙げられる。Mg含有化合物の前駆体としては、Mgの有機酸塩等が挙げられる。Mg含有化合物の前駆体は、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃での加熱処理により、リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面で熱分解する。
Mgの有機酸塩としては、カルボン酸塩が好ましく、該カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のカルボン酸塩が挙げられる。なお、これらのMgの有機酸塩は、後述する加熱処理により、Mgの酸化物に転換される。
Ti含有化合物としては、チタンを含む酸化物が挙げられる。チタンを含む酸化物としては、例えば、Tiの酸化物、TiとLiとの複合酸化物、TiとM元素との複合酸化物、Ti、M元素及びLiの複合酸化物、TiとMgとの複合酸化物等が挙げられる。
Ti含有化合物の前駆体としては、有機チタン化合物が挙げられる。有機チタン化合物としては、チタンの有機酸塩、チタンキレート化合物等が挙げられる。Ti含有化合物の前駆体は、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃での加熱処理により、リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面で熱分解する。そして、Mg含有化合物の前駆体は、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃での加熱処理により熱分解して、チタンを含む酸化物になる。
チタンの有機酸塩としては、チタンのカルボン酸塩が好ましく、該カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のこれらのカルボン酸の塩が挙げられる。
チタンキレート化合物は、チタン金属原子に、ヒドロキシカルボン酸が1分子以上配位した化合物である。Ti含有化合物の前駆体としては、下記一般式(1)で表されるチタンキレート化合物が好ましい。
Ti(R (1)
(式中、Rは、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基又はホスフィン類を示し、複数存在する場合、同一であってもよく、異なっていてもよい。Lはヒドロキシカルボン酸に由来する基を表し、複数存在する場合、同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0以上3以下の数を示し、nは1以上3以下の数を示し、m+nは3~6である。)
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アミノ基としては、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基等が挙げられる。ホスフィン類としては、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス-tert-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
Lで表されるヒドロキシカルボン酸に由来する基としては、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子又はヒドロキシカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に配位してなる基が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子及びヒドロキシルカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に2座で配位してなる基が挙げられる。これらの中、ヒドロキシカルボン酸におけるヒドロキシル基の酸素原子及びヒドロキシカルボン酸におけるカルボキシル基の酸素原子が、チタン原子に2座で配位してなる基であることが好ましい。mが0の場合はm+nは3であることが好ましく、mが1以上3以下の場合はm+nは4又は5であることが好ましい。
チタンキレート化合物は、例えば、チタンアルコキシドを溶媒で希釈して希釈液を得、該希釈液とヒドロキシカルボン酸とを混合することにより、チタンキレート化合物を含む溶液が得られる(WO2019/138989号パンフレット参照)。本製法においては、該チタンキレート化合物を含む溶液をそのまま前記有機チタン化合物を含む溶液として用いることができる。また、チタンキレート化合物を含む溶液に水を添加してもよい。これによりチタンキレート化合物の水含有溶媒の分散液又は溶解液を得ることができる。
なお、前記チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン(IV)、テトラエトキシチタン(IV)、テトラ-n-プロポキシチタン(IV)、テトライソプロポキシチタン(IV)、テトラ-n-ブトキシチタン(IV)及びテトライソブトキシチタン(IV)等が挙げられる。
また、前記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グルコール酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸等の1価のカルボン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸等の2価のカルボン酸、クエン酸、イソクエン酸等の3価のカルボン酸等が挙げられる。これらの中、乳酸が、室温で容易に溶液となり、チタンアルコキシド希釈液と混合しやすく、容易にチタンキレート化合物が製造できる観点から好ましい。
また、希釈液として用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタン等のアルコールを好ましく用いることができる。
また、希釈液とヒドロキシカルボン酸とを混合する際、又はチタンキレート化合物を含む溶液に、高い生産性により効率的にチタンキレート化合物を得ることを目的として、ヒドロキシカルボン酸以外に、チタンに配位可能な配位子化合物を添加してもよい。そのような配位子化合物としては、例えば、ハロゲン原子含有化合物、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ等の官能基を有するアミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス-tert-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。
また、チタンキレート化合物は、マツモトファインケミカル社で一部市販されており、市販品を用いてもよい。
(a)及び(b)の製造方法で用いるMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液中、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体の含有量は、原子換算で、Mgとして0.01~30.0質量%、好ましくは0.05~25.0質量%であることが、Mg溶液の安定性と被覆処理の操作性の観点から好ましい。
(a)及び(b)の製造方法で用いるTi含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液中、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体の含有量は、原子換算で、Tiとして0.01~30.0質量%、好ましくは0.05~20.0質量%であることが、Ti溶液の安定性と被覆処理の操作性の観点から好ましい。
(c)の製造方法で用いるMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体と、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体と、を含む表面処理液中、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体の含有量は、原子換算で、Mgとして0.01~30.0質量%、好ましくは0.05~25.0質量%であることが、溶液の安定性と被覆処理の操作性の観点から好ましく、また、Ti含有化合物又はTi含有化合物の前駆体の含有量は、原子換算で、Tiとして0.01~30.0質量%、好ましくは0.05~20.0質量%であることが、溶液の安定性と被覆処理の操作性の観点から好ましい。
(a)~(c)の製造方法において、Mg含有化合物及びMg含有化合物の前駆体と、Ti含有化合物及びTi含有化合物の前駆体との割合は、Mg含有化合物及びMg含有化合物の前駆体中のMg原子に対するTi含有化合物及びTi含有化合物の前駆体中のTi原子のモル比(Ti/Mg)で、0.01~5.00、好ましくは0.01~2.00であることが、高電圧下での容量維持率とエネルギー密度維持率が特に高いものになる観点から好ましい。
(a)の製造方法におけるリチウムコバルト系複合酸化物粒子とMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液との接触、Mg含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子とTi含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液との接触、(b)の製造方法におけるリチウムコバルト系複合酸化物粒子とTi含有化合物又はTi含有化合物の前駆体を含む表面処理液の接触、Ti含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子とMg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体を含む表面処理液との接触、及び(c)の製造方法におけるリチウムコバルト系複合酸化物と、Mg含有化合物又はMg含有化合物の前駆体とTi含有化合物又はTi含有化合物の前駆体とを含む表面処理液との接触を、例えば、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、Mg含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子、又はTi含有化合物で表面処理されたリチウムコバルト系複合酸化物粒子等の被表面処理粒子と所定の表面処理液とを混合処理することにより行うことができる。なお、被表面処理粒子と表面処理液との混合処理により得られる混合物は、粉末状、ペースト状、又はスラリー状であってもよい。該混合物が粉末状、ペースト状又はスラリー状の場合、例えば、被表面処理粒子に対する表面処理液の添加量を適宜調製することで、何れの形態のものも得ることができる。
(a)~(c)の製造方法において、被表面処理粒子と表面処理液を接触させた後の混合物の乾燥であるが、噴霧乾燥装置、ロータリーエバポレーター、流動層乾燥コーティング装置、振動乾燥装置等を用いて、該混合物の全量乾燥を行ってもよい。なお、該混合物の全量乾燥を行う場合は、Mg含有化合物及び/又はTi含有化合物のリチウムコバルト系複合酸化物粒子に対する付着量を、使用した表面処理液中のMg量及びTi量と、表面処理液に接触させたリチウムコバルト系複合酸化物粒子の量から求められる理論上の付着量として表すことができる。
(a)~(c)の製造方法では、被表面処理粒子に表面処理液を接触させて、乾燥させた後、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理する加熱処理を行う。加熱処理を行うことにより、表面処理液中のMg含有化合物は、被表面処理粒子の表面に強固に付着し、また、Mg含有化合物前駆体は、酸化分解して、Mg含有化合物となり、被表面処理粒子の表面に強固に付着する。また、表面処理液中のTi含有化合物は、被表面処理粒子の表面に強固に付着し、また、Ti含有化合物前駆体は、酸化分解して、Ti含有化合物となり、被表面処理粒子の表面に強固に付着する。
(a)~(c)の製造方法における加熱処理((a1)、(a2)、(b1)、(b2)及び(c1))では、加熱処理温度は、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃である。加熱処理温度が上記範囲未満だと、表面処理液にMgの有機酸塩やチタンキレート化合物のようなMg含有化合物の前駆体又はTi含有化合物の前駆体が含まれる場合、十分な分解及び酸化反応が行われず、一方、加熱処理温度が上記範囲を超えると、Mg及びTiとリチウムコバルト系複合酸化物との固溶反応が支配的となり、Ti含有化合物及びMg含有化合物の付着効果が低くなる。加熱処理の時間は、本製造方法において臨界的ではなく、通常は1時間以上、好ましくは2~10時間であれば、満足の行く性能のリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。加熱処理の雰囲気は、空気、酸素ガス等の酸化雰囲気であることが好ましい。
このようにして、(a)、(b)又は(c)の製造方法を行うことにより、粒子表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物及びMg含有化合物が付着しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子が得られる。
また、本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質は、前記(a)~(c)の製造方法に加えて、下記本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法(d)(以下、(d)の製造方法とも記載する。)により、得られるものであってもよい。
本発明において、特に(d)の製造方法により得られるリチウム二次電池用正極活物質によれば、高電圧下での容量維持率とエネルギー密度維持率が高いものを得ることができる。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法(d)は、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得、次いで、該混合処理物を、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(d1)することにより、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法である。
(d)の製造方法で用いるリチウムコバルト系複合酸化物粒子は、前述した本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質に係るMg含有化合物及びTi含有化合物が付着される前のリチウムコバルト系複合酸化物粒子と同様である。
(d)の製造方法に係る無機Mg含有化合物としては、例えば、Mgの酸化物、Mgの水酸化物、Mgの硫酸塩、Mgのフッ化物等が挙げられる。
無機Mg含有化合物の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により求められる平均粒子径で、30.0μm以下、好ましくは0.01~10.0μmであることがリチウムコバルト系複合酸化物表面に効率よくMg含有化合物を付着させることができる観点から好ましい。
なお、無機Mg含有化合物は、一次粒子が集合し二次粒子を形成する凝集体であってもよい。(d)の製造方法では、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理するため、凝集状の無機Mg含有化合物は、混合中に一次粒子まで解砕されて、リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面に無機Mg含有化合物を付着させることができる。
凝集状の無機Mg含有化合物を用いる場合は、無機Mg含有化合物の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から求められる一次粒子の平均粒子径で、2.0μm以下、好ましくは0.01~0.5μmであることが、リチウムコバルト系複合酸化物表面に効率よくMg含有化合物を付着させることができる観点から好ましい。
(d)の製造方法に係る無機Ti含有化合物としては、例えば、Tiの酸化物が挙げられる。
無機Ti含有化合物の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により求められる平均粒子径で、30.0μm以下、好ましくは0.01~10.0μmであることがリチウムコバルト系複合酸化物表面に効率よくTi含有化合物を付着させることができる観点から好ましい。
なお、無機Ti含有化合物は、一次粒子が集合し二次粒子を形成する凝集体であってもよい。(d)の製造方法では、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理するため、凝集状の無機Ti含有化合物は、混合中に一次粒子まで解砕されて、リチウムコバルト系複合酸化物の粒子表面に無機Ti含有化合物を付着させることができる。
凝集状の無機Ti含有化合物を用いる場合は、無機Ti含有化合物の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から求められる一次粒子の平均粒子径で、2.0μm以下、好ましくは0.01~0.5μmとすることが、リチウムコバルト系複合酸化物表面に効率よくTi含有化合物を付着させることができる観点から好ましい。
(d)の製造方法において、リチウムコバルト系複合酸化物への無機Mg含有化合物の混合量は、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対して、Mgとして0.01~5.00モル%、好ましくは0.10~2.00モル%となる混合量であることが、高い充放電容量とサイクル特性、負荷特性、安全性等の電池性能を両立させることができる観点から好ましい。
(d)の製造方法において、リチウムコバルト系複合酸化物への無機Ti含有化合物の混合量は、原子換算で、リチウムコバルト系複合酸化物中のCoに対して、Tiとして0.01~5.00モル%、好ましくは0.10~2.00モル%となる混合量であることが、高い充放電容量とサイクル特性、負荷特性、安全性等の電池性能を両立させることができる観点から好ましい。
(d)の製造方法において、無機Mg含有化合物と無機Ti含有化合物の混合割合は、無機Mg含有化合物中のMg原子に対する無機Ti含有化合物中のTi原子のモル比(Ti/Mg)で、0.01~5.00、好ましくは0.10~2.00であることが、高電圧下での容量維持率とエネルギー密度維持率が特に高いものになる観点から好ましい。
そして、リチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得ることができる。
混合処理で用いる装置としては、例えばハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びリボンブレンダー、V型混合機等の装置が挙げられる。なお、これら混合操作は、例示した機械的手段に限定されるものではない。また、実験室レベルでは、家庭用ミキサー、実験用ミルでも十分である。
このようにして得られるリチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物は、乾式混合の際に微粒に粉砕されて生じる無機Mg含有化合物の微粒子及び無機Ti含有化合物の微粒子が、リチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に付着したものである。
(d)の製造方法では、 次いで、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を、400~1000℃、好ましくは600~1000℃、特に好ましくは750~1000℃で加熱処理(d1)する。この加熱処理(d1)を行うことにより、被表面処理粒子のリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面に、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物を強固に付着させることができる。
(d)の製造方法において、加熱処理の時間は、臨界的ではなく、通常は1時間以上、好ましくは2~10時間であれば、満足の行く性能のリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。加熱処理の雰囲気は、空気、酸素ガス等の酸化雰囲気であることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質として、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を用いるものである。本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ、及びリチウム塩を含有する非水電解質からなる。
本発明のリチウム二次電池に係る正極は、例えば、正極集電体上に正極合剤を塗布乾燥等して形成されるものである。正極合剤は、正極活物質、導電剤、結着剤、及び必要により添加されるフィラー等からなる。本発明のリチウム二次電池は、正極に、本発明のリチウム二次電池用正極活物質が均一に塗布されている。このため本発明のリチウム二次電池は、電池性能が高く、特に高電圧下で充放電を繰り返しても(充放電)容量の劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高い。
本発明のリチウム二次電池に係る正極合剤に含有される正極活物質の含有量は、70~100質量%、好ましくは90~98質量%が望ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る正極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの等が挙げられる。これらの材料の表面を酸化して用いてもよく、表面処理により集電体表面に凹凸を付けて用いてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。集電体の厚さは特に制限されないが、1~500μmとすることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る導電剤としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に限定はない。例えば、天然黒鉛及び人工黒鉛等の黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、或いはポリフェニレン誘導体等の導電性材料が挙げられ、天然黒鉛としては、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び土状黒鉛等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。導電剤の配合比率は、正極合剤中、1~50質量%、好ましくは2~30質量%である。
本発明のリチウム二次電池に係る結着剤としては、例えば、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフロオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン-メタクリル酸共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、ポリエチレンオキシドなどの多糖類、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー等が挙げられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、多糖類のようにリチウムと反応するような官能基を含む化合物を用いるときは、例えば、イソシアネート基のような化合物を添加してその官能基を失活させることが好ましい。結着剤の配合比率は、正極合剤中、1~50質量%、好ましくは5~15質量%である。
本発明のリチウム二次電池に係るフィラーは、正極合剤において正極の体積膨張等を抑制するものであり、必要により添加される。フィラーとしては、構成された電池において化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素等の繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、正極合剤中、0~30質量%が好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る負極は、負極集電体上に負極材料を塗布乾燥等して形成される。本発明のリチウム二次電池に係る負極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの及びアルミニウム-カドミウム合金等が挙げられる。また、これらの材料の表面を酸化して用いてもよく、表面処理により集電体表面に凹凸を付けて用いてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。集電体の厚さは特に制限されないが、1~500μmとすることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る負極材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素質材料、金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素系合金、錫系合金、金属酸化物、導電性高分子、カルコゲン化合物、Li-Co-Ni系材料、LiTi12、ニオブ酸リチウム、酸化ケイ素(SiOx:0.5≦x≦1.6)等が挙げられる。炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化炭素材料、黒鉛系炭素材料等が挙げられる。金属複合酸化物としては、例えば、Sn(M11-p(M2qr(式中、M1はMn、Fe、Pb及びGeから選ばれる1種以上の元素を示し、M2はAl、B、P、Si、周期律表第1族、第2族、第3族及びハロゲン元素から選ばれる1種以上の元素を示し、0<p≦1、1≦q≦3、1≦r≦8を示す。)、LiFe23(0≦t≦1)、LiWO2(0≦t≦1)等の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、GeO、GeO2、SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb23、Pb34、Sb23、Sb24、Sb25、Bi23、Bi24、Bi25等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係るセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維あるいはポリエチレンなどからつくられたシートや不織布が用いられる。セパレータの孔径としては、一般的に電池用として有用な範囲であればよく、例えば、0.01~10μmである。セパレータの厚みとしては、一般的な電池用の範囲であればよく、例えば5~300μmである。なお、後述する電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレータを兼ねるようなものであってもよい。
本発明のリチウム二次電池に係るリチウム塩を含有する非水電解質は、非水電解質とリチウム塩とからなるものである。本発明のリチウム二次電池に係る非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質が用いられる。非水電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3-プロパンサルトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の非プロトン性有機溶媒の1種または2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係る有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体又はこれを含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体又はこれを含むポリマー、リン酸エステルポリマー、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のイオン性解離基を含むポリマー、イオン性解離基を含むポリマーと上記非水電解液の混合物等が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係る無機固体電解質としては、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化物等を用いることができ、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、P25、Li2S又はLi2S-P25、Li2S-SiS2、Li2S-GeS2、Li2S-Ga23、Li2S-B23、Li2S-P25-X、Li2S-SiS2-X、Li2S-GeS2-X、Li2S-Ga23-X、Li2S-B23-X、(式中、XはLiI、B23、又はAl23から選ばれる少なくとも1種以上)等が挙げられる。
更に、無機固体電解質が非晶質(ガラス)の場合は、リン酸リチウム(Li3PO4)、酸化リチウム(Li2O)、硫酸リチウム(Li2SO4)、酸化リン(P25)、硼酸リチウム(Li3BO3)等の酸素を含む化合物、Li3PO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li4SiO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li4GeO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li3BO3-u2u/3(uは0<u<3)等の窒素を含む化合物を無機固体電解質に含有させることができる。この酸素を含む化合物又は窒素を含む化合物の添加により、形成される非晶質骨格の隙間を広げ、リチウムイオンが移動する妨げを軽減し、更にイオン伝導性を向上させることができる。
本発明のリチウム二次電池に係るリチウム塩としては、上記非水電解質に溶解するものが用いられ、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO22NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等の1種または2種以上を混合した塩が挙げられる。
また、非水電解質には、放電、充電特性、難燃性を改良する目的で、以下に示す化合物を添加することができる。例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノンとN,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ポリエチレングルコール、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホンアミド、トリアルキルホスフィン、モルフォリン、カルボニル基を持つアリール化合物、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4-アルキルモルフォリン、二環性の三級アミン、オイル、ホスホニウム塩及び三級スルホニウム塩、ホスファゼン、炭酸エステル等が挙げられる。また、電解液を不燃性にするために含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適性を持たせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
本発明のリチウム二次電池は、特に高電圧下で充放電を繰り返してもサイクルの劣化が少なく、エネルギー密度維持率が高いリチウム二次電池であり、電池の形状はボタン、シート、シリンダー、角、コイン型等いずれの形状であってもよい。
本発明のリチウム二次電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ノートパソコン、ラップトップパソコン、ポケットワープロ、携帯電話、コードレス子機、ポータブルCDプレーヤー、ラジオ、液晶テレビ、バックアップ電源、電気シェーバー、メモリーカード、ビデオムービー等の電子機器、自動車、電動車両、ドローン、ゲーム機器、電動工具等の民生用電子機器が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
<リチウムコバルト系複合酸化物粒子(LCO)試料の調製>
<LCO試料1>
炭酸リチウム(平均粒子径5.7μm)、四酸化三コバルト(平均粒子径2.5μm)、更に二酸化チタン(平均粒子径0.4μm)及び硫酸カルシウム(平均粒子径7.3μm)とを秤量し、家庭用ミキサーで十分混合処理し、Li/Coのモル比が1.04、Ti/Coのモル比が0.01、Ca/Coのモル比が0.0006の原料混合物を得た。
次いで、得られた原料混合物を、アルミナ製の鉢で1050℃で5時間大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成品を粉砕、分級して、Coに対してTiを1.00モル%、Caを0.06モル%含有するリチウムコバルト系複合酸化物粒子を得た。
<LCO試料2>
炭酸リチウム(平均粒子径5.7μm)、四酸化三コバルト(平均粒子径2.5μm)、更にフッ化マグネシウム(平均粒子径2.8μm)、酸化マグネシウム(平均粒子径0.6μm)及び硫酸カルシウム(平均粒子径7.3μm)とを秤量し、家庭用ミキサーで十分混合処理し、Li/Coのモル比が1.05、F/Coのモル比が0.005、Mg/Coのモル比が0.005、Ca/Coのモル比が0.0013の原料混合物を得た。
次いで、得られた原料混合物を、アルミナ製の鉢で1080℃で5時間大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成品を粉砕、分級して、Coに対してMgを0.50モル%、Caを0.13モル%含有するリチウムコバルト系複合酸化物粒子を得た。
上記で得られたリチウムコバルト系複合酸化物試料(LCO試料)の諸物性を表1に示す。なお、平均粒子径はレーザ回折・散乱法により求めた。
Figure 0007030865000001
<表面処理液の調製>
<硫酸マグネシウム含有表面処理液の調製>
硫酸マグネシウムを水に溶解させ、さらにアンモニア水にてpHを8.5になるように調整して、下記の表2に示す濃度の硫酸マグネシウム含有表面処理液を作成した。
<乳酸チタンキレート含有表面処理液の調製>
イソプロパノール(IPA)にテトライソプロポキシチタン(TPT)を添加し、撹拌しながら乳酸を添加(モル比換算でTPT/IPA/乳酸=1/2/3)した後、水を加えて乳酸チタンキレート液を調整した。さらにアンモニア水にてpHを8.5になるように調整して、下記の表2に示す濃度の乳酸チタンキレート含有表面処理液を作成した。
なお、該乳酸チタンキレートは、前記一般式(1)におけるm=0、n=3であり、Lが、乳酸における水酸基の酸素原子及びカルボキシル基の酸素原子がチタン原子に2座で配位してなる基である化合物を主として含んでいた。
Figure 0007030865000002
(実施例1)
表1記載のLCO試料1をコニカルビーカーに30g採取し、そこに硫酸マグネシウム含有表面処理液A-1を6g添加しスパチュラ等で十分混練しペースト状の混合物を得た後、100℃の乾燥機にて全量乾燥させ、さらに得られた乾粉を800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、硫酸マグネシウム付着LCOを得た。
次いで、得られた硫酸マグネシウム付着LCO全量をコニカルビーカーに移し、そこに乳酸チタンキレート含有表面処理液B-1を6g添加しスパチュラ等で十分混練しペースト状の混合物を得た後、100℃の乾燥機にて全量乾燥させ、さらに得られた乾粉を800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、表3に示すマグネシウム及びチタンの付着量で、Mg含有化合物及びTi含有化合物が付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料1の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
(比較例1)
表1記載のLCO試料1、2を、そのまま800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、表3に示す正極活物質試料を得た。
(比較例2)
表1記載のLCO試料1をコニカルビーカーに30g採取し、そこに乳酸チタンキレート含有表面処理液B-1を6g添加しスパチュラ等で十分混練しペースト状の混合物を得た後、100℃の乾燥機にて全量乾燥させ、さらに得られた乾粉を800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、表3に示すチタン付着量で、チタン含有化合物が付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料1の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
(実施例2)
表1記載のLCO試料2を用い、硫酸マグネシウム含有表面処理液としてA-2及び乳酸チタンキレート含有表面処理液としてB-2を用い、表面処理液に接触後に全量乾燥させて得られた乾粉を1000℃で5時間焼成して、加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作にて、表3に示すマグネシウム及びチタンの付着量で、Mg含有化合物及びTi含有化合物が付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料2の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
(比較例3)
表1記載のLCO試料2を、そのまま1000℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、表3に示す正極活物質試料を得た。
(比較例4)
表1記載のLCO試料2をコニカルビーカーに30g採取し、そこに乳酸チタンキレート含有表面処理液B-2を6g添加しスパチュラ等で十分混練しペースト状の混合物を得た後、100℃の乾燥機にて全量乾燥させ、さらに得られた乾粉を1000℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、表3に示すチタン付着量で、チタン含有化合物が付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料2の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
Figure 0007030865000003
注)付着量は、LCO試料中のCoに対する原子換算のMg及び/又はTiの量をmol%で示した。
次いで、以下のようにして、電池性能試験を行った。
<リチウム二次電池の作製>
実施例及び比較例で得られた正極活物質95質量%、黒鉛粉末2.5質量%、ポリフッ化ビニリデン2.5質量%を混合して正極剤とし、これをN-メチル-2-ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。
この正極板を用いて、セパレータ、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してコイン型リチウム二次電池を製作した。このうち、負極は金属リチウム箔を用い、電解液にはエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF1モルを溶解したものを使用した。
次いで、得られたリチウム二次電池の性能評価を行った。その結果を、表4に示す。
<電池の性能評価>
作製したコイン型リチウム二次電池を室温で下記試験条件で作動させ、下記の電池性能を評価した。
(1-a)4.5Vサイクル特性評価の試験条件
実施例1、比較例1~2で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池について、下記の試験を行った。
先ず、0.5Cにて4.5Vまで2時間かけて充電を行い、更に4.5Vで3時間電圧を保持させる定電流・定電圧充電(CCCV充電)を行った。その後、0.2Cにて2.7Vまで定電流放電(CC放電)させる充放電を行い、これらの操作を1サイクルとして1サイクル毎に放電容量を測定した。このサイクルを20サイクル繰り返した。
また、実施例1、比較例1、2で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図を図1~3にそれぞれ示す。
(1-b)4.6Vサイクル特性評価の試験条件
実施例2、比較例3~4で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池について、下記の試験を行った。
先ず、0.5Cにて4.6Vまで2時間かけて充電を行い、更に4.6Vで3時間電圧を保持させる定電流・定電圧充電(CCCV充電)を行った。その後、0.2Cにて2.7Vまで定電流放電(CC放電)させる充放電を行い、これらの操作を1サイクルとして1サイクル毎に放電容量を測定した。このサイクルを20サイクル繰り返した。
また、実施例2、比較例3、4で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図を図4~6にそれぞれ示す。
(2)初回容量(活物質重量当たり)、初回充放電効率
サイクル特性評価における1サイクル目の充電及び放電容量を、初回充電容量及び初回放電容量とし、下記式により算出される効率を初回充放電効率とした。
初回充放電効率(%)=(1サイクル目の充電容量/1サイクル目の放電容量)×100
(3)容量維持率
サイクル特性評価における1サイクル目と20サイクル目のそれぞれの放電容量(活物質重量当たり)から、下記式により容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=(20サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
(4)エネルギー密度維持率
サイクル特性評価における1サイクル目と20サイクル目のそれぞれの放電時のWh容量(活物質重量当たり)から、下記式によりエネルギー密度維持率を算出した。
エネルギー密度維持率(%)=(20サイクル目の放電Wh容量/1サイクル目の放電Wh容量)×100
Figure 0007030865000004
Figure 0007030865000005
<リチウムコバルト系複合酸化物粒子(LCO)試料の調製>
<LCO試料3>
炭酸リチウム(平均粒子径5.7μm)、四酸化三コバルト(平均粒子径2.5μm)とを秤量し、実験用ミルで十分混合処理し、Li/Coのモル比が0.997の原料混合物を得た。
次いで、得られた原料混合物を、アルミナ製の鉢で1070℃で5時間大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成品を粉砕、分級して下記の表6のリチウムコバルト系複合酸化物粒子を得た。
得られたリチウムコバルト系複合酸化物を線源としてCuKα線を用いてX線回折分析した結果、LiCoOに起因する2θ=37.4°付近の回折ピークの強度(B)に対するCoに起因する2θ=36.8°付近の回折ピークの強度(A)との比((A/B)×100)は1.9%であった。また、LCO試料3のX線回折図を図7に示す。なお、回折ピークの強度は回折ピークの高さの比として求めた。
Figure 0007030865000006
(実施例3)
LCO試料3を30g採取し、そこに酸化マグネシウム(MgO)0.125g、酸化チタン(TiO)0.061gを添加し、実験用ミルにて十分混合処理し、さらに得られた混合処理物を800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、酸化マグネシウムと酸化チタンが付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料3の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
酸化マグネシウムとしては、一次粒子が集合した二次粒子からなる凝集体を用いた。また、その凝集体をレーザ回折・散乱法により平均粒子径を測定したところ3.6μmであり、SEM写真により求めた一次粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
また、酸化チタンとしては、一次粒子が集合した二次粒子からなる凝集体を用いた。レーザ回折・散乱法により求められる平均粒子径が0.4μmであり、SEM写真により求めた一次粒子の平均粒子径は0.05μmであった。
なお、一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡観察から任意に粒子100個を抽出して求めた。
(比較例5)
LCO試料3を、そのまま800℃で5時間焼成して、加熱処理を行い、正極活物質試料を得た。すなわち、比較例5では、無機Mg化合物及び無機Ti化合物を混合していない。
(比較例6)
酸化マグネシウムを添加しない以外は、実施例3と同様にして酸化チタンが付着した正極活物質試料を得た。
また、得られた正極活物質試料をSEM-EDX分析により、粒子表面のTi原子のマッピングを行い、LCO試料3の粒子表面の一部にTiが存在することが確認された。
Figure 0007030865000007
注)付着量は、LCO試料中のCoに対する原子換算のMg及び/又はTiの量をmol%で示した。
<電池性能試験>
実施例1及び実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作成し、実施例2と同様にして、4.6Vサイクル特性評価の試験を行い、初回容量、初回充放電効率、容量維持率、エネルギー密度維持率を評価した。その結果を表8に示す。
また、実施例3、比較例5及び比較例6で得られた正極活物質試料を用いたリチウム二次電池の充放電特性図を図8~図10にそれぞれ示す。
Figure 0007030865000008

Claims (5)

  1. 粒子表面の少なくとも一部に、Ti含有化合物として無機Ti含有化合物及びMg含有化合物として無機Mg含有化合物が付着しているリチウムコバルト系複合酸化物粒子であり、前記Ti含有化合物がリチウムコバルト系複合酸化物粒子の表面の一部に付着しているリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    Coに対するLiの原子換算のモル比(Li/Co)が0.90~1.20であるリチウムコバルト系複合酸化物粒子と、無機Mg含有化合物と、無機Ti含有化合物と、を乾式で混合処理することにより、リチウムコバルト系複合酸化物粒子、無機Mg含有化合物及び無機Ti含有化合物の混合処理物を得、次いで、該混合処理物を、400~1000℃で加熱処理することにより、リチウム二次電池用正極活物質を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記無機Mg含有化合物が、Mgの酸化物、Mgの水酸化物、Mgの硫酸塩及びMgのフッ化物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記無機Ti含有化合物が、Tiの酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記リチウムコバルト系複合酸化物が、酸化コバルト(Co)を含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウムコバルト系複合酸化物中の酸化コバルト(Co)の含有量が、線源としてCuKα線を用いて、リチウムコバルト系複合酸化物をX線回折分析したときに、LiCoOに起因する2θ=37.4°付近の回折ピークの強度(B)に対するCoに起因する2θ=36.8°付近の回折ピークの強度(A)との比((A/B)×100)が、0.6より大きく5.0%以下であることを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
JP2020036693A 2019-09-11 2020-03-04 リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 Active JP7030865B2 (ja)

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