次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1,図2を参照して、ロータリジョイント1の全体構成を説明する。図1において、ロータリジョイント1は、工作機械のスピンドル軸などの回転軸へ冷却用の流体を送給する流体供給機構に用いられるものであり、軸方向の回転流路が設けられた回転部1aおよび軸方向の固定流路が設けられた固定部1bを同軸配置して構成される。
回転部1aは回転軸であるスピンドル軸2の流路孔2aに締結されており、スピンドル軸2は、スピンドルに内蔵されたモータによって回転駆動されて軸心A廻りに回転するとともに、クランプ/アンクランプシリンダによって軸方向の進退動作を行う。また固定部1bはケーシング3に流路孔3bと連通して設けられた装着孔3aに、保持部材であるハウジング部材7を介して固定装着されており、スピンドル軸2が挿通するフレーム(図示省略)にボルトなどの締結手段によってケーシング3を着脱自在に締結することにより、固定部1bは回転部1aと同軸に配置される。流路孔3bには、流体供給源20より液体クーラントや冷却用のエアなどの送給対象の流体が供給される。
次に各部の詳細構造を説明する。回転部1aはスピンドル軸2に装着されたロータ4を主体としており、ロータ4は回転軸部4aの一方側の端部に回転軸部4aよりも外径が大きいフランジ部4bを設け、さらに軸心部に回転流路4eを軸方向に設けた形状となっている。回転軸部4aの外面には雄ねじ部4dが設けられており、流路孔2aの内面には雌ねじ部2bが設けられている。雄ねじ部4dを雌ねじ部2bに螺合させることにより、ロータ4はスピンドル軸2にねじ締結され、Oリング6によってねじ締結部が密封される。これにより、回転流路4eはスピンドル軸2の流路孔2aと連通する。
ロータ4の右側(固定部1bと対向する側)の側端面には、回転流路4eの開孔面を囲む配置で円形状の凹部4cが形成されており、凹部4cには第1のシールリング5が固定されている。第1のシールリング5はセラミックなどの耐摩耗性に富む硬質材料を、中央部に開口部5aを有する円環形状に成形したものであり、平滑面に仕上げられた第1のシール面5bを外面側にした状態で凹部4cに固定される。そしてこの状態では、回転流路4eは開口部5aと連通して第1のシール面5bに開口する。上記構成において、第1のシールリング5が固定されたロータ4は、回転部1aに設けられ側端面に回転流路4eが開口した第1のシール面5bを有する回転シール部となっている。
次に、ケーシング3に装着される固定部1bの構造を説明する。固定部1bは、フローティングシート8をハウジング部材7に装着した構成となっている。ケーシング3の装着面3cには流路孔3bと連通して設けられた装着孔3aが開口しており、装着孔3aには固定部1bの本体を構成する円筒形状のハウジング部材7が嵌合する。そしてハウジング部材7は、装着面3cに設けられたねじ孔(図示省略)にボルト締結され、Oリング11によって装着孔3aへの嵌合部が密封される。
フローティングシート8は、一方側(図において回転部1aと対向する側)に円板形状のフランジ部8bが設けられ、他方側に固定流路8eが軸方向に貫通して形成された固定軸部8aを有する形状となっている。フランジ部8bの左側(回転部1aと対向する端面)に円堤状に設けられた凸部8c内には、第2のシールリング9が固定されている。第2のシールリング9は第1のシールリング5と同様の硬質材料を中央部に開口部9aを有する円環形状に成形したものであり、平滑面に仕上げられた第2のシール面9bを外面側にした状態でフランジ部8bに固定される。そしてこの状態では、固定流路8eは開口部9aと連通して第2のシール面9bに開口する。
固定軸部8aは、ハウジング部材7の中心部に軸方向に貫通して設けられた嵌合孔7aに、軸方向の移動が許容された状態で嵌合する。すなわち、嵌合孔7a、固定軸部8aの形状・寸法設定により、嵌合孔7aの内周面7bと固定軸部8aの外周面8dとの間に所定の隙間寸法の摺動隙間(図示省略)が確保されるようになっている。この摺動隙間は嵌合孔7aの内周面にはシール部材12が装着されている。シール部材12は、嵌合孔7a内における固定軸部8aの移動を許容しつつ、摺動隙間内における流体の流動を密封する機能を有している。
ロータリジョイント1による流体送給動作において、フローティングシート8は回転部1a側に軸方向に進退する。フランジ部8bには、フローティングシート8の進退動作をガイドするガイド機構が設けられている。すなわちフランジ部8bにはボルト16およびボルト16を外包する円筒カラー17が螺設されており、ハウジング部材7には軸方向にガイド孔7d(図2参照)が設けられている。フローティングシート8の軸方向の進退において、円筒カラー17がガイド孔7d内を摺動することにより、フローティングシート8の軸方向の移動がガイドされるとともに、軸廻りの廻り止めが行われる。
上記構成において第2のシールリング9が固定されたフローティングシート8は、固定流路が軸方向に形成され保持部材であるハウジング部材7に設けられた嵌合孔7aに軸方向の移動が許容された状態で嵌合する固定軸部8aを有し、側端面に固定流路8eが開口した第2のシール面9bを有する固定シール部となっている。なお本実施の形態においては、フローティングシート8を保持部材としてのハウジング部材7を介してケーシング3に装着する例を示しているが、ケーシング3にフローティングシート8を直接装着するようにしてもよい。
ハウジング部材7において上述のガイド機構と軸対称の位置には、摺動状態検知部13が配設されている。摺動状態検知部13は、嵌合孔7aに嵌合した固定軸部8aの摺動状態を検知するために用いられる。摺動状態検知部13は、固定シール部であるフローティングシート8とともに移動する検知部材15を備えている。検知部材15は検知ブロック14に設けられた検知孔14a(図3参照)に嵌合しており、検知孔14aの上流側には内径が拡大した第1の拡径部14bが設けられている。第1の拡径部14bはケーシング3に設けられた配管部3dを介して空圧供給源21と接続されており、さらに配管部3dには流量センサ22が接続されている。
空圧供給源21によって所定圧の空圧を配管部3dを介して第1の拡径部14bに供給することにより、第1の拡径部14bには所定圧の空圧が付与される。すなわち第1の拡径部14bおよび配管部3dは、検知孔14aと連通し所定圧の空圧が付与された与圧空間を構成している。本実施の形態においては、この与圧空間から検知孔14aを介して流出する空気の流量を計測することにより、嵌合孔7aに嵌合した固定軸部8aの摺動状態を検知する構成となっている。
次に図2を参照して、ロータリジョイント1の動作を説明する。流路孔3bを介して嵌合孔7a内に送給対象の流体が供給され、さらに固定流路8e内に流入することにより、この流体の流体圧は固定軸部8aの上流側の側端面に作用する。これにより、固定軸部8aは嵌合孔7a内で回転部1a側へスライドし、第2のシールリング9は第1のシールリング5に対して、固定軸部8aの側端面の投影面積に流体圧を乗じた大きさの流体力で押圧される。この流体力は第2のシール面9bと第1のシール面5bとを相互に密着させ、これにより固定流路8eから軸廻りに回転状態の回転流路4eへ送給される流体の漏洩を防止する面シール部10が形成される。
このフローティングシート8の軸方向のスライドにおいて、フランジ部8bに螺設されたボルト16およびボルト16を外包する円筒カラー17が、ハウジング部材7に軸方向に設けられたガイド孔7d内を摺動することにより、フローティングシート8の軸方向の移動がガイドされるとともに、軸廻りの廻り止めが行われる。
ロータリジョイント1の作動状態においては、送給される流体の圧力によるフローティングシート8の進出と、スピンドル軸2の進退動作によって、面シール部10のシール面の接離が行われる。すなわちフローティングシート8が後退して第1のシール面5bと第2のシール面9bとが相互に離隔した状態において、流体が流路孔3bに送給されることにより、流体力が固定軸部8aの側端面に作用して軸方向に押圧する。これにより、フローティングシート8が前進(矢印a方向)し、第1のシール面5bと第2のシール面9bとが当接して相互に密着して面シール部10が形成された状態となる。固定流路8eから回転状態の回転流路4eへの流体の送給はこの状態で行われる。
そしてスピンドル軸2が固定部1bに対して相対的に前進(矢印d方向)することにより、フローティングシート8は後退(矢印b方向)し、フランジ部8bがハウジング部材7に近接した位置に復帰する。そしてこの状態からスピンドル軸2を相対的に後退(矢印c方向)させることにより、第1のシール面5bと第2のシール面9bとが相互に離隔した状態に戻る。
上述のように、ロータリジョイント1が正常に機能するためには、フローティングシート8とスピンドル軸2とが円滑に接離動作を行うことが求められる。このフローティングシート8とスピンドル軸2との接離動作において、フローティングシート8を流体力によって前進させる過程が、摺動隙間における異物の堆積などによる影響を最も受けやすい。そしてフローティングシート8の前進過程において摺動不良が生じた場合には、第1のシール面5bと第2のシール面9bとが密着した良好な面シール部10が形成されずに、クーラントなどが大量に漏洩する重大な不具合を生じる。
本実施の形態においては、このような不具合の発生をタイムリーに検知し、さらには不具合の前兆を適切に検知することを目的として、前述の摺動状態検知部13をロータリジョイント1に装備している。そしてロータリジョイント1による流体送給動作においては、摺動状態検知部13により、フローティングシート8の固定軸部8aを下流側へ押圧する際の摺動状態を検知するようにしている。
以下、このような目的で設けられた摺動状態検知部13の詳細構成および機能について、図3~図6を参照して説明する。まず図3(a)を参照して、摺動状態検知部13の構造を説明する。図3(a)において、ハウジング部材7に形成された収納孔7cには、検知ブロック14が収納されている。検知ブロック14を長手方向(上流~下流方向)に挿通して形成された検知孔14aには、フローティングシート8のフランジ部8bに結合された検知部材15がスライド自在に嵌合している。フローティングシート8の前進・後退において、検知部材15もともに検知孔14a内でスライドする。
検知ブロック14が収納孔7cに嵌合する嵌合部において、収納孔7cの内周面7eと検知ブロック14の外周面14cの間には所定の嵌合隙間Δdが確保されるように寸法設定されている。これにより、検知ブロック14は収納孔7c内において軸線と直交する方向への僅かな揺動が許容されるようになっている。すなわち同じく嵌合隙間を以て嵌合孔7aに嵌合した固定軸部8aが僅かに揺動しながら進退する動作において、フランジ部8bを介して結合されてともに移動する検知部材15は、固定軸部8aと同様の揺動が許容されるように構成されている。
検知部材15は、長手方向に縦通し下流側が外部に開口した内孔15aが設けられている。内孔15aにおける上流側には、検知部材15の外周面と内孔15aとを連通させる連通口15bが設けられている。検知孔14aの上流側は径が拡大された第1の拡径部14bとなっており、第1の拡径部14bにはケーシング3に形成された配管部3dが開口している。配管部3dは、図1に示す空圧供給源21に流量センサ22を介して接続されている。これにより、与圧空間である第1の拡径部14b内に所定圧の空圧を付与することができるようになっている。嵌合隙間内に侵入した空圧は、シール部材14dによってシールされ、外部への漏洩が防止される。
上記構成において、流量センサ22を介して与圧空間である第1の拡径部14b内に流入する空気の流量は、検知孔14aを介して流出する空気の流量に等しい。したがって、流量センサ22によって流量を計測することにより、与圧空間から流出する空気の流量を求めることができる。
フローティングシート8の前進・後退に伴う検知部材15の移動により、連通口15bの位置は検知ブロック14内で移動する。これにより、配管部3dを介して供給された空圧の内孔15aに対する連通・遮断が切り換えられる。すなわち図3(b)に示すように、検知部材15が上流側に位置した状態において、内孔15aは連通口15bを介して配管部3dおよび第1の拡径部14bと連通した連通状態となる。この連通状態では、空圧供給源21から配管部3dを介して供給された空圧は連通口15bを介して内孔15aに流入し、外部へ放出される。この流動経路においては流路抵抗は小さく、したがって流量センサ22による流量の検出値は相対的な大流量に相当する上値(Q1)となる。
これに対し、図3(c)に示すように、検知部材15が固定シール部であるフローティングシート8の移動に伴って下流側へ移動すると、連通口15bが検知孔14aの内部に位置して閉塞された状態となる。そしてこの状態において、連通口15bは第1の拡径部14bとの連通が絶たれ、内孔15aは配管部3dとの連通が絶たれた遮断状態となる。この遮断状態では、空圧供給源21から配管部3dを介して供給された空圧は連通口15bを介して外部へ放出されること無く、第1の拡径部14bに滞留する。したがって第1の拡径部14bから検知孔14aを介して流出する空気の流量は少なく、流量センサ22による流量の検出値は、上値(Q1)と比較して大幅に少ない下値(Q2)となる。
次に図4を参照して、本実施の形態における流体送給機構の構成を説明する。この流体送給機構は、摺動状態検知部13が組み込まれたロータリジョイント1によって、流体供給源20から供給される流体を、工作機械などの設備23に送給する機能を有するものである。
図4において、流体供給源20により供給されるクーラントなどの流体は、設備23において軸心廻りに回転する回転流路へ、ロータリジョイント1を介して送給される。ロータリジョイント1は摺動状態検知部13を備えており、摺動状態検知部13の予圧空間には、空圧供給源21によって流量センサ22を介して所定圧の空圧が付与される。ここで、流量センサ22による流量の計測値は、前述のように、摺動状態検知部13の予圧空間内から検知孔14aを介して流出する空気の流量の検出値に相当する。そして流量センサ22によって計測され、検出された流量の検出値は、設備23に付属した設備側制御部23aによって取り込まれる。
設備側制御部23aは取り込んだデータを処理するデータ処理部24を備えている。データ処理部24は、予圧空間内から検知孔14aを介して流出する空気の流量を流量センサ22によって時系列的に検出した流量パターンデータ(図6参照)に基づいて、フローティングシート8の固定軸部8aの摺動状態を判断する処理を行う。データ処理部24による判断結果は、表示パネルなどの報知部25によって報知される。
なお、本実施の形態に示すロータリジョイント1は、上述機能のデータ処理部24を有する設備に取り付けられることが必須条件となる。ここでデータ処理部24としては、設備23が備えた設備側制御部23aに固定的に設けられている必要は無く、タブレット端末などの携帯型のデータ処理装置にデータ処理部24の機能を持たせるようにしてもよい。
次に図5、図6を参照して、摺動状態検知部13による摺動状態検知における各部の動作および摺動状態検知において、流量センサ22によって予圧空間内から検知孔14aを介して流出する空気の流量を時系列的に検出することにより取得される流量パターンデータについて説明する。
図5(a)~図5(d)は、フローティングシート8が図1に示す状態から前進して図2に示す状態に移行する、1回の前進ストロークにおける摺動状態検知部13の各部の状態を動作ステップごとに示している。ここで、図5(a)~図5(d)は、フローティングシート8とともに移動する検知部材15の上流側端部が、ケーシング3の端面からそれぞれストロークL0(停止状態)、L1、L2、L3だけ前進した状態を示している。
そして図6では、フローティングシート8の固定軸部8aの摺動状態が異なる複数の状態において取得される流量パターンデータを、それぞれ図6(a)、(b)、(c)に示している。すなわち、図6(a)は、固定軸部8aの摺動状態が正常で、円滑な摺動動作が確保されている場合に得られる流量パターンデータである。また図6(b)は、嵌合孔7a内における摺動隙間に侵入した異物などによって固定軸部8aが固着し、前進動作が行われない異常状態となった場合に得られる流量パターンデータである。さらに図6(c)は、固定軸部8aの前進動作は行われているものの正常な状態と比べて移動速度が遅く、異常状態の前兆の流量パターンデータを示している。
以下、正常動作時の流量パターンデータを示す図6(a)を参照しながら、図5に示す摺動状態検知について説明する。まず図5(a)は、図1に示す状態、すなわちフローティングシート8が後退して固定部1bの第2のシールリング9が回転部1aの第1のシールリング5から離隔した状態を示している。この状態では、フローティングシート8が上流側へ後退した位置にあることから、ともに移動する検知部材15も上流側に位置している。
すなわち検知部材15の上流側端部が第1の拡径部14bの上流端にあり(ストロークL0)、連通口15bが第1の拡径部14b内に位置した状態にある。この状態は、図3(b)に示す連通状態に対応しており、したがってこの状態では、流量センサ22による検出値は前述の上値となり、図6(a)ではタイミングt0における流量の検出値は流量Q1(上値)となる。
図5(b)は、タイミングt0にてフローティングシート8の前進が開始されて(矢印e)、これに伴い検知部材15がストロークL1だけ前進したタイミングt1にて、連通口15bの先端部が検知孔14aの段付き部に到達した状態を示している。この状態では連通口15bは未だ第1の拡径部14b内に開口しており、流量センサ22による検出値は前述の流量Q1(上値)が維持されている。
図5(c)は、この状態からさらに検知部材15が前進して(矢印f)、連通口15bが検知孔14a内に完全に進入した状態を示している。この連通口15bの進入過程においては、連通口15bが検知孔14aの内周面によって閉塞される度合いが増加するのに伴い、第1の拡径部14bを含む与圧空間内から流出する空気の流量が減少する。そしてストロークL1とストロークL2の中間のストロークに対応するタイミングt2において、流量センサ22による流量の検出値は、図6(a)に示すように、前述の流量Q2(下値)に低下する。
この後、図5(d)に示すように、フローティングシート8がさらに前進すると(矢印g)、タイミングt3にて第2のシールリング9が第1のシールリング5に当接して、面シール部10(図2)が形成される。そしてこの状態において、図6(a)に示すように、タイミングt2からタイミングt3の間で、流量Q2(下値)が維持される。
図6(a)においてタイミングt0からタイミングt1までの第1の時間T1、タイミングt1からタイミングt2までの第2の時間T2は、検知対象となるロータリジョイント1における固定軸部8aの摺動状態の特性を示す特性パラメータとなっている。すなわち第1の時間T1は、静止状態から移動に至る起動しやすさを示すパラメータである。また第2の時間T2は、図3に定義する連通状態から遮断状態に遷移するのに要する遷移時間であり、起動後における加速の迅速さを示すパラメータである。
そして各機種のロータリジョイント1について、メンテナンスが良好な状態で、且つ標準的な動作条件で実際にフローティングシート8を移動させて得られた流量パターンデータより、摺動状態の良否を判断するための基準となる基準パラメータを求める。図4に示す構成の流体送給機構の稼働時には、摺動状態検知部13と流量センサ22とを組み合わせた摺動状態検出手段によって検出された流量パターンデータを上述の基準パラメータと比較することにより、摺動状態の良否を判断する。
これらのデータ処置および判断は、データ処理部24の機能によって実行され、判断結果は報知部25によって報知される。すなわちデータ処理部24は、流量パターンデータより前述の遷移時間である第2の時間T2を求め、この遷移時間に基づいて固定軸部8aの摺動状態を判断するようになっている。このデータ処理部24の処理機能については、後述する第2実施例においても同様である。
図6(b)は、固定軸部8aが固着状態にあって静止状態から起動しない異常状態における流量パターンデータを示している。この場合には、フローティングシート8が検知部材15とともに静止した状態にあることから、摺動状態検知部13は図5(a)に示す状態のままであり、流量センサ22による検出値はタイミングt0以降、流量Q1(上値)が継続されたままとなる。このような場合には、データ処理部24はロータリジョイント1が大量の流体の漏洩を招く異常状態であると判断して、報知部25によってその旨を報知する。そしてこの報知を承けたオペレータは、部品の交換などの必要な処置を行う。
また図6(c)に示す異常状態の前兆時の流量パターンデータでは、タイミングt0からタイミングt1までの第1の時間T1*、タイミングt1からタイミングt2までの第2の時間T2*が、いずれも図6(a)に示す基準パラメータよりも遅延した形となっている。すなわち固定軸部8aにおいて、摺動隙間内への異物の付着がある程度進行して固定軸部8aのスムーズな移動が阻害された結果、動作時間の遅延を招いたことを示している。そしてデータ処理部24は、第1の時間T1*、第2の時間T2*が予め設定された警告値を超えたならば、その旨を報知部25によって報知する。そしてこの報知を承けたオペレータは、部品の清掃・交換などの必要な処置を行う。
次に、本実施の形態における第2実施例の摺動状態検知部13Aの構成および機能について、図7~図9を参照して説明する。第2実施例の摺動状態検知部13Aでは、第1実施例においては検知孔14aの上流側に設けられていた第1の拡径部14bに替えて、検知孔14aの下流側に第2の拡径部14e設けるようにしている。摺動状態検知部13Aも摺動状態検知部13と同様の機能を有しており、図4に示す流体送給機構を構成するロータリジョイント1に組み込んで用いられる。
まず図7(a)を参照して、摺動状態検知部13Aの構造を説明する。図7(a)において、ハウジング部材7に形成された収納孔7cには、検知ブロック14が収納されている。検知ブロック14を長手方向(上流~下流方向)に挿通して形成された検知孔14aには、フローティングシート8のフランジ部8bに結合された検知部材15がスライド自在に嵌合している。フローティングシート8の前進・後退において、検知部材15もともに検知孔14a内でスライドする。
検知ブロック14が収納孔7cに嵌合する嵌合部において、収納孔7cの内周面7eと検知ブロック14の外周面14cの間には、第1実施例と同様の嵌合隙間Δdが確保されるように寸法設定されている。これにより、検知ブロック14は収納孔7c内において軸線と直交する方向への僅かな揺動が許容されるようになっている。すなわち同じく嵌合隙間を以て嵌合孔7aに嵌合した固定軸部8aが僅かに揺動しながら進退する動作において、フランジ部8bを介して結合されてともに移動する検知部材15は、固定軸部8aと同様の揺動が許容されるように構成されている。
検知部材15には、長手方向に縦通し下流側が外部に開口した内孔15aが設けられている。内孔15aにおける上流側には、検知部材15の外周面と内孔15aとを連通させる連通口15bが設けられている。検知孔14aの下流側は径が拡大された第2の拡径部14eとなっており、検知孔14aの上流側にはケーシング3に形成された配管部3dが開口している。配管部3dは、図1に示す空圧供給源21に流量センサ22を介して接続されている。これにより、与圧空間である配管部3d内に所定圧の空圧を付与することができるようになっている。嵌合隙間内に侵入した空圧は、シール部材14dによってシールされ、外部への漏洩が防止される。
上記構成において、流量センサ22を介して与圧空間である配管部3d内に流入する空気の流量は、検知孔14aを介して流出する空気の流量に等しい。したがって、流量センサ22によって流量を計測することにより、与圧空間から流出する空気の流量を求めることができる。
フローティングシート8の前進・後退に伴う検知部材15の移動により、連通口15bの位置は検知ブロック14内で移動する。これにより、配管部3dを介して供給された空圧の内孔15aに対する連通・遮断が切り換えられる。すなわち図7(b)に示すように、検知部材15が上流側に位置した状態では、連通口15bが検知孔14aの内部に位置して閉塞された状態となる。
そしてこの状態において、連通口15bおよび内孔15aは、配管部3dとの連通が絶たれた遮断状態となる。この遮断状態では、空圧供給源21から配管部3dを介して供給された空圧は外部へ放出されること無く配管部3dに滞留する。したがって与圧空間である配管部3dから検知孔14aを介して流出する空気の流量は少なく、流量センサ22による流量の検出値は前述の下値となる。
これに対し、図7(c)に示すように、検知部材15が固定シール部であるフローティングシート8の移動に伴って下流側へ移動すると、連通口15bが第2の拡径部14eと連通する位置に移動する。これにより、内孔15aは連通口15bを介して第2の拡径部14eおよび配管部3dと連通した連通状態となる。この連通状態では、空圧供給源21から配管部3dを介して供給された空気は連通口15bを介して内孔15aに流入し、外部へ放出される。したがって流量センサ22による流量の検出値は下値より大きい上値となる。
次に図8、図9を参照して、摺動状態検知部13Aによる摺動状態検知における各部の動作および摺動状態検知において流量センサ22の圧力を時系列的に検出することにより取得される流量パターンデータについて説明する。
図8(a)~図8(d)は、フローティングシート8が図1に示す状態から前進して図2に示す状態に移行する前進ストロークにおける摺動状態検知部13Aの各部の状態を動作ステップごとに示している。ここで、図8(a)~図8(d)は、フローティングシート8とともに移動する検知部材15の上流側端部が、ケーシング3の端面からそれぞれストロークL0(停止状態)、L1、L2、L3だけ前進した状態を示している。
そして図9では、フローティングシート8の固定軸部8aの摺動状態が異なる複数の状態において取得される流量パターンデータを、それぞれ図9(a)、(b)、(c)に示している。すなわち、図9(a)は、固定軸部8aの摺動状態が正常で、円滑な摺動動作が確保されている場合に得られる流量パターンデータである。また図9(b)は、嵌合孔7a内における摺動隙間に侵入した異物によって固定軸部8aが固着し、前進動作が行われない異常状態となった場合に得られる流量パターンデータである。さらに図9(c)は、固定軸部8aの前進動作は行われているものの正常な状態と比べて移動速度が遅く、異常状態の前兆の流量パターンデータを示している。
以下、正常動作時の流量パターンデータを示す図9(a)を参照しながら、図8に示す摺動状態検知について説明する。まず図8(a)は、図1に示す状態、すなわちフローティングシート8が後退して固定部1bの第2のシールリング9が回転部1aの第1のシールリング5から離隔した状態を示している。この状態では、フローティングシート8が上流側へ後退した位置にあることから、ともに移動する検知部材15も上流側に位置している。
すなわち検知部材15の上流側端部が検知孔14aの上流端にあり(ストロークL0)、連通口15bが検知孔14aに位置した状態にある。この状態は、図7(b)に示す遮断状態に対応している。したがって流量センサ22による検出値は前述の下値となり、図9(a)ではタイミングt0における流量の検出値は流量Q1(下値)となる。
図8(b)は、タイミングt0にてフローティングシート8の前進が開始されて(矢印h)、これに伴い検知部材15がストロークL1だけ前進したタイミングt1にて、内孔15aの下流端部が第2の拡径部14eの上流端部に到達した状態を示している。図8(c)に示すように、検知部材15がこの状態から下流側へ移動すると(矢印i)、検知孔14aから第2の拡径部14e内への空圧の流入が開始される。
この状態では、連通口15bは第2の拡径部14e内に位置しており、流入した空圧は連通口15bおよび内孔15aを介して外部へ排出される。したがって流量センサ22による流量の検出値は下値から増大する。そして所定のストロークL2だけ移動したタイミングt2にて、流量センサ22による検出値は前述の流量Q2(上値)に収束する。
この後、図8(d)に示すように、フローティングシート8がさらに前進すると(矢印j)、タイミングt3にて第2のシールリング9が第1のシールリング5に当接して、面シール部10(図2)が形成される。そしてこの状態において、図9(a)に示すように、タイミングt1からタイミングt2の間で、流量Q2(上値)が維持される。
図9(a)においてタイミングt0からタイミングt1までの第1の時間T1、タイミングt1からタイミングt2までの第2の時間T2は、検知対象となるロータリジョイント1における固定軸部8aの摺動状態の特性を示す特性パラメータとなっている。すなわち第1の時間T1は、静止状態から移動に至る起動しやすさを示すパラメータである。また第2の時間T2は、起動後における加速の迅速さを示すパラメータである。
そして各機種のロータリジョイント1について、メンテナンスが良好な状態で、且つ標準的な動作条件で実際にフローティングシート8を移動させて得られた流量パターンデータより、摺動状態の良否を判断するための基準となる基準パラメータを求める。図4に示す構成の流体送給機構の稼働時には、摺動状態検知部13と流量センサ22とを組み合わせた摺動状態検知手段によって検出された流量パターンデータを上述の基準パラメータと比較することにより、摺動状態の良否を判断する。これらのデータ処置および判断は、データ処理部24の機能によって実行され、判断結果は報知部25によって報知される。
図9(b)は、固定軸部8aが固着状態にあって静止状態から起動しない異常状態における流量パターンデータを示している。この場合には、フローティングシート8が検知部材15とともに静止した状態にあることから、摺動状態検知部13Aは図8(a)に示す状態のままであり、流量センサ22による検出値はタイミングt0以降、圧力P2(上値)が継続されたままとなる。このような場合には、データ処理部24はロータリジョイント1が大量の流体の漏洩を招く異常状態であると判断して、報知部25によってその旨を報知する。そしてこの報知を承けたオペレータは、部品の交換などの必要な処置を行う。
また図8(c)に示す異常状態の前兆時の流量パターンデータでは、タイミングt0からタイミングt1までの第1の時間T1*、タイミングt1からタイミングt2までの第2の時間T2*が、いずれも図9(a)に示す基準パラメータよりも遅延した形となっている。すなわち固定軸部8aにおいて、摺動隙間内への異物の付着がある程度進行して固定軸部8aのスムーズな移動が阻害された結果、動作時間の遅延を招いたことを示している。そしてデータ処理部24は、第1の時間T1*、第2の時間T2*が予め設定された警告値を超えている場合には、その旨を報知部25によって報知する。そしてこの報知を承けたオペレータは、部品の清掃・交換などの必要な処置を行う。
上記説明したように、本実施の形態に示す流体送給機構では、流体供給源20から供給される流体を設備23の回転流路へ固定流路を介して送給するロータリジョイント1に、固定流路を構成する固定軸部8aの摺動状態を検知するために用いられる摺動状態検知部13,13Aを設けるようにしている。摺動状態検知部13は固定軸部8aとともに移動する検知部材15および検知部材15が嵌合する検知孔14aと連通し所定圧の空圧が付与された与圧空間を備えており、この与圧空間内の圧力を流量センサ22によって検出し、検出結果をデータ処理部24によってデータ処理して、嵌合孔7aに嵌合した固定軸部8aの摺動状態を判断する。これにより、固定軸部8aと嵌合孔7aとの摺動隙間内に異物が侵入して堆積固化することに起因する摺動状態の変化を簡便且つ客観的に検知することができる。