JP7029697B2 - 嚥下機能改善剤 - Google Patents
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Description
嚥下機能が低下すると、食べ物を口に入れても直ぐには嚥下反射が起こらず一定時間食べ物が口腔内や咽頭に滞留してしまうという症状が観察され、このような症状によって食べ物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」を起こしやすくなる。
例えば、嚥下反射を誘発しうる物質として、ブラックペッパー精油(特許文献1)等が報告されている。また、ショウガの辛み成分であるジンゲロールやショウガオールは嚥下反射を起動させる感覚神経のレセプターであるTRPV1のアゴニストとして働き、嚥下反射機能が改善することが報告されている(非特許文献1)。
1)ケール又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善剤。
2)ケール又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善用食品組成物。
3)ケール又はその抽出物とショウガ又はその抽出物を組み合わせてなる嚥下機能改善剤。
4)ケール又はその抽出物とショウガ又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善用食品組成物。
搾汁は、例えばケール葉を細断及び/又は粉砕した後、搾汁処理することにより得られる。搾汁処理手段としては、パルパー、スクリュープレス、フィルタープレス、デカンターなどの搾汁機で行うのが好ましい。また、ケール葉を必要により80~100℃で1~20分間熱処理した後に搾汁処理することもできる。
搾汁は、その後粉末化(エキス末化)して使用するのが、流通性、保存性の点で好ましい。なお、搾汁の粉末化は、熱風乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥により行われる。
抽出に用いられる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;酢酸エチル等のエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類;アセトン、酢酸等の親水性溶媒;ベンゼン、ヘキサン、キシレン等の炭化水素などを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
抽出条件は原料の状態、使用する溶媒の種類等により異なるが、例えば、常圧ないし加圧条件、すなわち、1気圧~2気圧の範囲で、室温或いは加温・加熱することが挙げられる。ケールの抽出物もまた、前記搾汁と同様に粉末化して用いてもよい。
両者の使用比率は特に限定されないが、例えばケール又はその抽出物1質量部に対し、ショウガ又はその抽出物を5.0×10-7~1質量部、より好ましくは5.0×10-5~5.0×10-2質量部用いることが挙げられる。
したがって、ケール又はその抽出物は嚥下機能改善剤となり、嚥下機能改善のために使用できる。
また、ケール又はその抽出物は嚥下反射潜時短縮剤となり、嚥下反射潜時短縮のために使用できる。
経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明のケール又はその抽出物を単独で、又は他の食品材料や種々の栄養成分を添加して、調製することができる。
例えば、ケール又はその抽出物に、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形すること、或いは種々の食品(例えば、食肉加工食品、水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品等)に添加すること、或いは水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加することにより調製することができる。
また、ショウガ又はその抽出物を併用する場合、ショウガ又はその抽出物の投与量は、固形分換算で、好ましくは0.1mg~4g、より好ましくは1mg~2gである。
また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回~数回に分け、数週間~数ヶ月間継続して投与することが好ましく、より好ましくは6週間以上、さらに好ましくは12週間以上継続して投与することが好ましい。
1)ケール搾汁粉末
ケール変種である「ハイクロップ」を搾汁したケールエキス末(ケール由来固形分:40%)の粉末青汁を用いた。
2)ショウガ粉末
株式会社坂田信夫商店の「ショウガ粉末」(原材料:黄金生姜、高知県産、ショウガ由来固形分:100%)を使用した。
嚥下機能は、中咽頭壁への刺激から嚥下開始までの時間である嚥下反射潜時(LSR:the latency of the swallowing reflex)を測定することにより評価した。嚥下反射潜時(LSR)は、簡易嚥下誘発試験を用いて測定した(図1)。
すなわち、対象者に仰臥位になってもらい、注入口に0.4mLの蒸留水の入った注射器を接続した小児用経鼻細管(5Fr:外径1.7mm、温湯で温めカテーテル先端を柔らかくしたもの)を鼻腔から中咽頭を目標に13~14cm挿入した。挿入後、口腔からライトを当てて、カテーテルの位置を確認した。対象者の呼気終末に合わせて注射器内の0.4mLの蒸留水を注入し、嚥下反射(喉頭拳上)が開始するまでをビデオカメラ(デジタルビデオカメラ iVIS HF M31)で撮影した。この時、注入開始と喉頭の動きを同じ画面で確認することが出来るように設定し撮影した。蒸留水の注入は同一研究者が行い、測定値に影響が出ないようにした。注入後1分休憩を挟んで3回実施した。3回の測定のうち、時間の短い2回の平均を測定値とした。測定値は、寺本らの報告(日呼吸誌,37(6),466-470)に則り3秒以内であれば正常とした。LSRは、Windows ライブムービーメーカー(パーソナルコンピューターVAIO Pro11)を用いて0.03秒単位のコマ送りで再生しながら、蒸留水注入から喉頭拳上開始までの時間から算出した。
(1)被験者
嚥下障害の診断を受けたことのない20歳代8名を対象に試験を行った。
実験は2日間で行い、被験者8名に対し、1日ごとに以下のケール搾汁粉末入りの飲料水(ケール群)または食紅入りの飲料水(水群(コントロール群))を摂取させた。被験者にはどちらの飲料水であるかを伝えずに実験を行った。
・ケール群:ケール搾汁粉末4.0gを飲料水(市販の天然水)100mLに溶解したもの
・水群(コントロール群):100mLの飲料水(市販の天然水)に食紅(緑0.04g)を溶解したもの
図2より、ケール群では水群(コントロール群)に比べ、摂取直後~摂取後30分までの嚥下反射潜時が短くなり、嚥下機能が改善していることが示された。
(1)被験者
嚥下障害の診断を受けたことのない20歳代4名を対象に試験を行った。
実験は4日間で行い、被験者4名に対し、1日ごとに以下の飲料水を摂取させた。被験者にはどの飲料水であるかを伝えずに実験を行った。
・ケール群:ケール搾汁粉末4.0gを飲料水(市販の天然水)100mLに溶解したもの
・ケール+ショウガ群:ケール搾汁粉末4g及びショウガ粉末2mgを飲料水(市販の天然水)100mLに溶解したもの
・水群(コントロール群):食紅(緑0.04g)を飲料水(市販の天然水)100mLに溶解したもの
・ショウガ群:飲料水100mgにショウガ粉末2mg及び食紅(緑0.04g)を溶解したものとした。
(3)飲料水の摂取は座位で行った。嚥下機能の測定(嚥下反射潜時)は、飲料水摂取前、摂取直後、摂取後10分、摂取後20分、摂取後30分の計5回測定した。結果を図3に示す。
図3より、ケールを含む2つの群においては、摂取直前に比べ摂取後の各時点でのばらつきが小さくなり嚥下機能が改善していることが示された。特にジンジャー+ケール群では、摂取直前に比べ摂取直後~摂取後30分までの嚥下反射潜時が短縮傾向にあり、より嚥下反射潜時が短く、強い嚥下機能改善作用が示された。
Claims (4)
- ケール又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善剤。
- ケール又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善用食品組成物。
- ケール又はその抽出物とショウガ又はその抽出物を組み合わせてなる嚥下機能改善剤。
- ケール又はその抽出物とショウガ又はその抽出物を有効成分とする嚥下機能改善用食品組成物。
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JP2018057563A JP7029697B2 (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 嚥下機能改善剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2004107285A (ja) | 2002-09-20 | 2004-04-08 | Mercian Corp | 嚥下障害改善剤 |
JP2008000005A (ja) | 2006-06-20 | 2008-01-10 | Shizuoka Prefecture | 嚥下障害改善剤および嚥下障害改善食品 |
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Non-Patent Citations (2)
Title |
---|
Food Science and Technology Research,2015年,Vol. 21, Issue 5,p. 705-714 |
日本味と匂学会誌,2006年,Vol. 13, No. 3,p. 363-366 |
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