JP7029150B2 - 透明なコーティング皮膜で被覆した低光沢度の化学発色ステンレス加工品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ステンレス加工品を着色する方法としては、ステンレス加工品の表面を酸化発色させて発色皮膜を生成した後に電解処理して皮膜を硬化させる方法があり、クロム酸を使用したインコ法による酸化発色が広く採用されている(特許文献1)。しかしながら、発色機能を有する酸化皮膜の厚みを均一に制御する技術が十分でないため、色むらが生じやすいという問題がある。
以下、本発明において、処理対象となる金属材及び金属材加工品、並びに処理方法であるサンドブラスト処理工程、電解研磨処理工程、発色処理工程、硬化処理工程、コーティング処理工程の順に説明し、併せて評価方法についても説明する。なお、本発明は以下の発明を実施するための態様に限定されるものではない。
本発明において使用する金属材としては、サンドブラスト処理、電解研磨処理により表面凹凸加工が可能であって、かつ化学発色処理が可能な金属材であれば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼などのステンレス材に限定されるものではない。具体的には、アルミ、アルミ合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、亜鉛、又は、亜鉛合金等が挙げられ、さらに公知の金属材料も使用することができる。
ステンレスは、SUS 301、SUS 304、SUS 310、SUS 316、SUS 430、SUS 631(いずれもJIS規格)などを用いることができる。軟鋼は、炭素が0.15質量%以下の軟鋼を用いることができ、JIS G3141に記載の軟鋼等を用いることができる。鉄ニッケル合金は、Niを35~85質量%含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、具体的には、JIS C2531に記載の鉄ニッケル合金等を用いることができる。
本発明の金属材加工品としては、化学発色処理を行って優れた美観を呈する金属材加工物品、すなわち意匠性に優れた金属加工物品であれば、完成品、部品を問わない。具体的には、建築用資材(例えば、釘、ボルト、ナット、ネジ、ヤスリ、線材、パイプ、鋼板、ホース継手、鍵穴キャップ等)、日用品(例えば、マグカップ、スプーン、ホーク、メガネフレーム、しおり、カゴ、椅子、机、魔法瓶、玩具、爪切り等)、水回り用品(シンク、浴槽、システムキッチン、水切りプレート、洗いかご等)、服飾用品(ホック、ボタン、かんざし、バックル、ファスナー、メダル等)、機械部品(チェーン、フリクションリング、マニホールド、自動車のボディー、自転車のフレーム、車いすのフレーム等)、その他広告パネル等がある。
金属材加工品は化学発色処理をした金属材を加工したものでも、金属材を加工した後に化学発色処理をしたもののいずれでもよい。
サンドブラスト処理は、投射材(研削材や研磨剤と称されることもある。)を被処理体に衝突させて表面処理を行うものである。投射材の投射方法には、機械式、空気式、湿式がある。空気式には、負圧によって投射材を運ぶバキューム式と、正圧によって投射材を運ぶ直圧式がある。
サンドブラスト処理工程において、金属材表面を効率良く加工するために本工程で使用される投射材としては、金属材より高硬度(例えば、モース硬度で6以上、より好適には8以上のもの)な無機材料を使用することが好ましく、球形あるいは多角形などの角のある粒子が好ましく、とくに角のある粒子が好ましい。具体例としては、ガラスビーズ、ジルコニア粒子、スチールグリッド、アルミナ粒子、シリカ粒子、炭化ケイ素粒子などがある。
電解研磨は、金属に応じた電解研磨溶液中で、金属をプラスとして直流電流を流して、微細な凹凸のある金属表面の凸部分の溶解により金属表面を平滑化し光沢化する研磨方法である。バフ研磨などの物理的研磨により発生した汚れ、異物、加工変質層を除去できる。
発色処理により、サンドブラスト処理、電解研磨処理を経た金属材表面に極薄の光透過性酸化皮膜(以下、「発色皮膜」という。)が形成される。金属材は発色皮膜による光の干渉作用を利用して発色する。金属材の素地表面が持つ美麗さを反映した趣のある色調を発現させることが可能である。以下は、ステンレス加工品を具体例として述べる。
発色方法としては、硫酸とクロム酸との混合液(以下、「発色溶液」という。)中にステンレス加工品を陽極として直流による電気分解を行い、水溶液中に浸漬した参照電極との電位差により所望する発色皮膜を生成する、いわゆるインコ法を採用する(特開昭48-011243号公報参照)。
光の干渉ピークから光学的に発色皮膜の厚みを求めると、ステンレス加工品の表面に生成される発色皮膜の厚みは、陽極と参照極との電位差(以下、「発色電位」という。)に比例する。その値は、各色調において、6mV(ブルー:90nm)、13mV(ゴールド:150nm)、16mV(レッド:180nm)、19.5mV(グリーン:220nm)である(竹内 武著、実務表面技術33巻11号、1986年 参照)。この発色皮膜の厚みは、ステンレス加工品に生成されている不動態皮膜の厚み(1~3nm)に比べて有意に大きい。
したがって、発色ステンレス加工品に生じる色ムラは、発色皮膜の厚みのばらつきにより生じるため、発色皮膜の厚みを制御することが肝要である。
発色皮膜の生成速度を低くすることで、色調の発現を穏やかにして、色むらを低減することができる。ステンレス加工品の表面に生成される発色皮膜の厚みは、発色電位と相関があるからである。
発色溶液中の硫酸とクロム酸の混合比(クロム酸/硫酸)は、クロム酸15~30wt/vl%に対し、硫酸40~50wt/vl%が好適である。クロム酸濃度を低減することで、発色皮膜の生成速度を低くすることができ、発色皮膜の生成厚みを精密に制御できるからである。
発色皮膜の生成速度は、発色電位速度(mV/sec)で制御することができる。発色電位速度は、0.02~0.08mV/sec、好ましくは0.050~0.065mV/secである。発色電位速度が0.02mV/sec未満であると発色皮膜の生成が遅れ生産性が低下するからである。発色電位速度が0.08mV/secを超えると生成した発色皮膜の厚みが不均一となり、色調の違和感、色ムラが生じるからである。
発色溶液中のクロム酸濃度の低減に伴う発色皮膜の生成速度を補うために、マンガンイオン(Mn2+)を添加することができる。発色溶液に用いるマンガン塩としては、塩酸マンガン(MnCl2)、硫酸マンガン(MnSO4)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)などがあり、これらの中の1種または2種以上を用いることができる。発色溶液中のマンガンイオン(Mn2+)濃度は、0.5~300mmol/Lが好ましく、5~150mmol/Lがより好ましい。マンガンイオン(Mn2+)濃度が0.5mmol/L未満では、発色皮膜の生成を促す効果がなく、マンガンイオン(Mn2+)濃度が300mmol/Lを超えると不溶な部分が残って、発色皮膜の生成に影響を及ぼすからである。
酸化発色させて発色皮膜を形成したステンレス加工品を電解処理して発色皮膜を硬化させる。この硬化処理は、リン酸とクロム酸との混液中で電解によりクロムを発色皮膜の多孔部分に埋め込ませることにより発色皮膜を硬化させる(硬化処理を施し、ステンレス加工品表面に金属光沢を有する各種色調の発色を施すようにしたものである。
本発明のコーティング処理は、耐摩耗性、耐傷性、耐指紋性を付与し、かつ色調変化の少ない透明なコーティング皮膜を発色ステンレス加工品表面に形成するものである。具体的には、耐摩耗性、耐傷性、耐指紋性を付与し、かつ色調変化の少ない透明なコーティング皮膜を形成できるコーティング組成物(クリア塗料)を化学発色ステンレス加工品表面に塗布することで形成する。
本発明のコーティング組成物は、耐摩耗性、耐傷性、耐指紋性を付与し、かつ色調変化の少ない透明なコーティング皮膜を発色ステンレス加工品表面に形成するものであれば、無機系コーティング組成物、有機系コーティング組成物のいずれも用いることができる。
触媒は、無機ポリシラザンを常温でシリカに転化する機能を有するものである。具体的には、N-ヘテロ環状化合物(例えば、1-メチルピペラジン、ピロール、イミダゾール等)、アミン類(メチルアミン、プロピルアミン等)である。
希釈溶剤は、無機ポリシラザン及び触媒を溶解することができ、無機ポリシラザンと反応性がなく保存安定性に優れるものである。具体的には、石油系溶剤、芳香族系溶剤、環式脂肪族系溶剤が好適に用いられる。
また、アルカリケイ酸カリウムと超微粒子状シリカを加熱溶解したシリカと酸化カリウムを主たる成分とする無機系コーティング組成物(特開平2-129269参照)、分散媒中にベーマイト粒子が分散したアルミナゾルと分散媒中にシリカ粒子が分散したシリカゾルとを混合した無機系コーティング組成物(特開2007-099884参照)等がある。
油性コーティング組成物は、希釈溶剤として有機溶剤(例えば、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等)を用いるコーティング組成物である。例えば、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に酸性触媒を添加したものがある。
水性コーティング組成物は、希釈溶剤として水を主体とする溶剤を用いるコーティング組成物である。例えば、水性樹脂(ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等)に、硬化剤(メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物等)、シリカ粒子(球状シリカ等)及び潤滑剤(ポリエチレン樹脂粒子等)を添加したものがある。
有機系素材としては、
コーティング組成物の塗布量は、乾燥後の膜厚が0.1~2μmとなる程度である塗布量が好ましい。
発色ステンレス加工品の外観について、「色調」、「視角色調識別性」と「60度鏡面光沢度〔Gs(60°)〕」により評価した。なお、色調については、「目視による視認」と1976年にCIE(国際照明委員会)で決められたL*、a*、b*表色系(JISZ8781-4:2013)に準拠(以下、「CIELAB」により評価した。以下詳細に述べる。
発色ステンレス加工品の試験品(図2参照、以下、「本試験品」という。)について、目視により色の識別を行い、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを測定した。
ここで、CIELABとは、ほぼ完全な色空間であり、国際照明委員会(CIE)が策定したものである。人間の目で見えるすべての色を記述でき、機器固有モデルの基準として利用できるようにしたものである。CIELABの3つの座標、色の明度(L*=0は黒、L*=100は白の拡散色)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a*<0は緑寄り、a*>0はマゼンタ寄り)、黄/青の間の位置(b*<0は青寄り、b*>0は黄寄り)に対応している。
試験品について、視線を、水平に置いた試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。色調の変化のないものを「○」、色調の変化があるものを「×」と判定した。
本試験品表面の鏡面状態を数値として表すために、60°鏡面光沢法(Gs60°)を用いた。60°鏡面光沢度の測定方法は、JIS Z8741「鏡面光沢度-測定方法」に記載されており、この記載に基づいて発色ステンレス加工品表面の光沢度を測定した。測定装置は、光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を用いた。
めっきの耐摩耗性試験方法(JIS H 8503-1989)に提示される平板回転摩耗試験方法(テーパ式摩耗試験方法)に準じて耐摩耗試験を行い、素地露出までの回数を計測した。
(1)サンドブラスト処理
試験片(30×30×1mmt)をサンドブラスト装置(図示せず)に入れ、本試験品板の主面に対して、投射材:アルミナ粒子(#200)、投射圧:0.3MPa、投射角度:40°、投射時間:15秒、投射距離:50mm、投射量:450g/minとして、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理品1を作製した。
サンドブラスト処理品1を以下の条件で発色処理を行い、発色処理品1を作製した。
〔発色処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L
・処理温度 80℃
・処理時間 8min
・発色電位 9mV
発色処理品1を以下の条件で硬化処理を行い、硬化処理品1を作製した。
〔硬化処理条件〕
・硬化液組成 酸化クロム250g/L、リン酸2.5g/L
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
・電流密度 0.5A/dm2
硬化処理品1にシリカ系コーティング剤(奥野製薬工業株式会社製 Protector HB-LTC2)を塗布して透明なコーティング皮膜を被覆したコーティング処理品1を作製した。
硬化処理品1とコーティング処理品1について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品1について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品1とコーティング処理品1について、視線を、水平に置いた本試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品1とコーティング処理品1のいずれも色調変化は、ほとんどなく、「○」と判定した。
硬化処理品1と試験品1について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(12.0%)、コーティング後(31.5%)であり、いずれも50%以下であった。
コーティング処理品1について、めっきの耐摩耗性試験方法(JIS H 8503-1989)に提示される平板回転摩耗試験方法(テーパ式摩耗試験方法)に準じて、以下の条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は40回であった。
〔耐摩耗試験条件〕
・研磨紙 クラフト紙(Cw)
・研磨材 炭化ケイ素質研磨材(C)、粒度:P600
・試験荷重 5.20N
コーティング処理をアクリル系コーティング剤(株式会社ソフト99コーポレーション製 ボデーペンクリアー)に変えた以外は、実施例1と同じ処理を行って、硬化処理品2とコーティング処理品2を作製した。
硬化処理品2とコーティング処理品2について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品2について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品2とコーティング処理品2について、視線を、水平に置いた本試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品2とコーティング処理品2のいずれも色調変化は、ほとんどなく、「○」と判定した。
硬化処理品2と試験品2について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(12.0%)、コーティング後(36.8%)であり、いずれも50%以下であった。
コーティング処理品2について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は60回であった。
(1)サンドブラスト処理
実施例1と同じ条件で、サンドブラスト処理品3を作製した。
サンドブラスト処理品3をそれぞれ以下の条件で、電解研磨処理を行い、電解研磨処理品3を作製した。
[電解研磨処理条件]
・電解研磨液組成 リン酸70ml/L、硫酸20ml/L、エチレングリコール0.2ml/L
・処理温度 70℃
・処理時間 5min
・電流密度 10A/dm2
(3)発色処理
電解研磨処理品3について、実施例1と同じ条件で発色処理を行い、発色処理品3を作製した。
発色処理品3について、実施例1と同じ条件で硬化処理を行い、硬化処理品3を作製した。
硬化処理品3に実施例1と同じシリカ系コーティング剤(奥野製薬工業株式会社製 Protector HB-LTC2)を塗布して透明なコーティング皮膜を被覆したコーティング処理品3を作製した。
硬化処理品3とコーティング処理品3について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品3について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品3とコーティング処理品3について、視線を、水平に置いた本試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品3とコーティング処理品3のいずれも色調変化は、ほとんどなく、「○」と判定した。
硬化処理品3とコーティング処理品3について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(36.7%)、コーティング後(44.95%)であり、いずれも50%以下であった。
コーティング処理品3について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は40回であった。
コーティング処理をアクリル系コーティング剤(株式会社ソフト99コーポレーション製 ボデーペンクリアー)に変えた以外は、実施例3と同じ処理を行って、硬化処理品4とコーティング処理品4を作製した。
(1)色調評価
硬化処理品4とコーティング処理品4について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品4について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品4とコーティング処理品4について、視線を、水平に置いた本試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品4とコーティング処理品4のいずれも色調変化は、ほとんどなく、「○」と判定した。
硬化処理品4と試験品4について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(36.7%)、コーティング後(48.7%)であり、いずれも50%以下であった。
コーティング処理品4について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は60回であった。
サンドブラスト処理及び電解研磨処理を行わず、発色処理及び硬化処理を実施例1と同じ条件で行い、硬化処理品5を作製した。また、コーティング処理も行わなかった。
硬化処理品5について、目視で色調を確認した。色調は、「紺」であった。さらに、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品5について、視線を、水平に置いた試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品5の色調変化は、ほとんどなく、「○」と判定した。
硬化処理品5について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(5.0%)であった。
硬化処理品5について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は30回であった。
サンドブラスト処理を行わず、電解研磨処理、発色処理及び硬化処理を実施例3と同じ条件で行い、硬化処理品6を作製した。また、コーティング処理も行わなかった。
硬化処理品6について、目視で色調を確認した。色調は、「紺」であった。さらに、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品6について、視線を、水平に置いた試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品6は、上面側と下面側で色調が異なり、「×」と判定した。
硬化処理品6について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(100%)であった。
硬化処理品6について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は30回であった。
サンドブラスト処理を行わず、電解研磨処理、発色処理、硬化処理及びコーティング処理を実施例3と同じ条件で行い、硬化処理品7とコーティング処理品7を作製した。
硬化処理品7とコーティング処理品7について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品7について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品7とコーティング処理品7について、視線を、水平に置いた試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品7とコーティング処理品7の色調は、いずれも上面側と下面側で色調が異なり、「×」と判定した。
硬化処理品7とコーティング処理品7について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(100%)、コーティング後(65.6%)であり、いずれも50%を超えた。
コーティング処理品7について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は40回であった。
サンドブラスト処理を行わず、電解研磨処理、発色処理、硬化処理及びコーティング処理を実施例4と同じ条件で行い、硬化処理品8とコーティング処理品8を作製した。
硬化処理品8とコーティング処理品8について、目視で色調を確認した。色調は、いずれも「紺」であった。さらに、コーティング処理品8について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)によりCIELABを計測した。CIELABは、表1に示す通りであった。
硬化処理品8とコーティング処理品8について、視線を、水平に置いた試験品に対して鉛直方向から60°ずらした位置に置いたとき(俯角30°で試験品を見たとき)の試験品の色調変化の有無を評価した。硬化処理品8とコーティング処理品8の色調は、いずれも上面側と下面側で色調が異なり、「×」と判定した。
硬化処理品8とコーティング処理品8について、60度鏡面光沢度(Gs60°)はJIS Z8741に準拠した光沢度計(東洋精機製作所製 グロスメーターU)を使用して入射角60度で測定した。光沢度は、表1に示す通り、コーティング前(100%)、コーティング後(94.1%)であり、いずれも50%を超えた。
コーティング処理品8について、実施例1と同じ条件で耐摩耗試験を行った。素地露出までの回数は60回であった。
(1)本発明のサンドブラスト処理を行った発色ステンレス加工品は、コーティング処理後においても、視角色調識別性に優れるものである。また、60度鏡面光沢度(Gs60°)も50%以下である(実施例1,2)。
(2)本発明のサンドブラスト処理と電解研磨処理を併用した発色ステンレス加工品は、60度鏡面光沢度(Gs60°)は36.7%であり、サンドブラスト処理のみを行った発色ステンレス加工品(12.0%)比べて光沢度が高い。電解研磨処理を併用することで、60度鏡面光沢度(Gs60°)を高くすることができる。ただし、コーティング処理後であっても、60度鏡面光沢度(Gs60°)は50%以下である。また、コーティング処理後においても視角色調識別性に優れるものである(実施例3,4)。
(3)本発明の透明コーティング皮膜で被覆した発色ステンレス加工品は、いずれも視角色調識別性に優れるものである。また、コーティング処理により耐摩耗性も向上する(実施例1~4,比較例1~4)。
Claims (4)
- 研削痕からなる凹凸表面に発色皮膜を形成した発色ステンレス加工品の表面を透明なコーティング皮膜で被覆した化学発色ステンレス加工品であって、前記透明なコーティング皮膜で被覆した凹凸表面の60度鏡面光沢度〔Gs(60°)〕が5~50であり、かつ、視線を水平に置いた目視による色調と視線を俯角30°に置いた目視による色調とに差がないことを特徴とする化学発色ステンレス加工品。
- 前記透明なコーティング皮膜が、無機系または有機系コーティング組成物の塗布により形成された皮膜であることを特徴とする請求項1に記載した化学発色ステンレス加工品。
- 研削材と圧縮空気の混合物をステンレス加工品表面に吹き付けることにより、前記ステンレス加工品表面に凹凸面を形成するサンドブラスト処理工程、
サンドブラスト処理されたステンレス加工品を、クロム酸と硫酸の混合溶液からなる発色処理液に浸漬して、ステンレス加工品表面に発色皮膜を形成する発色処理工程、
発色処理されたステンレス加工品を、クロム酸とリン酸の混合溶液からなる硬化処理液に浸漬して、発色処理工程で形成された発色皮膜を硬化する硬化処理工程、
硬化処理されたステンレス加工品表面に無機系または有機系コーティング組成物を塗布するコーティング処理工程、
とからなることを特徴とする化学発色ステンレス加工品の製造方法。 - 研削材と圧縮空気の混合物をステンレス加工品表面に吹き付けることにより、前記ステンレス加工品表面に凹凸面を形成するサンドブラスト処理工程、
サンドブラスト処理されたステンレス加工品表面を、電解研磨する電解研磨処理工程、
電解研磨処理されたステンレス加工品を、クロム酸と硫酸の混合溶液からなる発色処理液に浸漬して、ステンレス加工品表面に発色皮膜を形成する発色処理工程、
発色処理されたステンレス加工品を、クロム酸とリン酸の混合溶液からなる硬化処理液に浸漬して、発色処理工程で形成された発色皮膜を硬化する硬化処理工程、
硬化処理されたステンレス加工品表面に無機系または有機系コーティング組成物を塗布するコーティング処理工程、
とからなることを特徴とする化学発色ステンレス加工品の製造方法。
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JP2017248993A JP7029150B2 (ja) | 2017-12-26 | 2017-12-26 | 透明なコーティング皮膜で被覆した低光沢度の化学発色ステンレス加工品及びその製造方法 |
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