JP7029134B2 - ダイヤモンドの製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、熱フィラメントを用いた化学気相成長法(CVD(chemical vapor deposition)法)によってダイヤモンドを基材の表面に成膜させるダイヤモンドの製造方法、及び当該製造方法に利用可能な熱フィラメントCVD装置に関する。なお、ダイヤモンドの製造方法は、基材と当該基材に成膜されたダイヤモンドを含む製品の製造方法の一部であってよい。
フィラメントによって原料ガスに熱を与えてダイヤモンドを成膜させるCVD法が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1では、上下に延びるフィラメントを円柱状の基材の外周面に沿って周方向に配列し、基材の外周面にダイヤモンドを成膜させる技術を開示している。
特開2007-230799号公報
ダイヤモンドの更なる利用を可能とするダイヤモンドの製造方法、及び当該製造方法に利用可能な熱フィラメントCVD装置が提供されることが望まれる。
本開示の一態様に係るダイヤモンドの製造方法は、複数のフィラメントを基材の貫通孔に挿通するとともに前記貫通孔の内面に沿って周方向に配列する準備ステップと、前記複数のフィラメントに電力を供給して熱フィラメントCVD法によって前記貫通孔の内面にダイヤモンドを成膜させる成膜ステップと、を有している。
一例において、前記準備ステップでは、前記貫通孔の貫通方向において前記基材を挟んで互いに対向する1対の電極に前記複数のフィラメントを架け渡し、前記1対の電極の互いに対向する面それぞれには、前記複数のフィラメントを取付け可能な複数の取付部が分布しており、前記準備ステップでは、前記複数のフィラメントを前記複数の取付部の一部にのみ選択的に取り付ける。
一例において、前記複数の取付部は、前記1対の電極を貫通する複数の孔であり、前記準備ステップでは、前記複数のフィラメントを前記複数の孔に挿通するとともに前記1対の電極の互いに対向する面とは反対側の面に係合させる。
一例において、前記準備ステップでは、前記複数の取付部をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレートによって前記1対の電極のそれぞれを構成し、前記貫通方向に見て1枚の前記プレートに収まる大きさの前記貫通孔を有する複数の前記基材を互いに並列に前記1対の電極間に配置する。
一例において、前記準備ステップでは、前記複数の取付部をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレートによって前記1対の電極それぞれを構成し、前記貫通方向に見て1枚の前記プレートに収まらない大きさの前記貫通孔を有する前記基材を前記1対の電極間に配置する。
一例において、前記準備ステップでは、水平面に沿って互いに並列に配置された複数の棒上に、前記貫通方向を上下方向にして前記基材を載置し、前記複数のフィラメントを前記複数の棒間の隙間に通す。
一例において、前記準備ステップでは、前記貫通方向を上下方向として複数の前記基材を積層し、複数の前記貫通孔に前記複数のフィラメントを挿通する。
本開示の一態様に係る熱フィラメントCVD装置は、互いに対向する1対の電極と、前記1対の電極に架け渡される複数のフィラメントと、を有しており、前記1対の電極の互いに対向する面それぞれには、前記複数のフィラメントを取付け可能な複数の取付部が縦横に一定のピッチで配列されている。
上記の手順によれば、ダイヤモンドの更なる利用が可能となる。
図1(a)は第1実施形態に係るCVD装置の要部構成を示す模式的な斜視図、図1(b)は図1(a)のCVD装置の一部の模式的な平面図。 図2(a)は図1(a)のCVD装置の電極の一例を示す平面図、図2(b)は電極の他の例を示す平面図、図2(c)は、下方の電極11の一部の断面図。 図3(a)及び図3(b)は電極の更に他の例を示す平面図。 第1実施形態に係るCVD装置の要部構成を示す模式的な斜視図。
<第1実施形態>
(CVD装置の全体構成)
図1(a)は、本開示の第1実施形態に係るCVD装置1の要部構成を示す模式的な斜視図である。図1(a)において、紙面上下方向は、例えば、鉛直方向である。図1(b)は、CVD装置1の一部の模式的な平面図である。
CVD装置1は、貫通孔101hを有する基材101の内周面にダイヤモンドからなる薄膜103(図1(b))を形成可能な装置として構成されている。CVD装置1は、例えば、基材101を収容するチャンバ3と、チャンバ3内を減圧する減圧装置4と、チャンバ3にガス(原料ガス等)を供給するガス供給部5と、基材101を支持するステージ7と、チャンバ3内のガスに熱を付与する複数のフィラメント9と、複数のフィラメント9に接続された1対の電極11と、1対の電極11を介して複数のフィラメント9に電力を供給する電源装置13とを有している。
複数のフィラメント9に電力を供給して複数のフィラメント9によってチャンバ3内のガスに熱を付与することにより、チャンバ3内のガスは化学反応を生じる。その結果、ガスから生じた炭素が、基材101の表面のうち複数のフィラメント9に面している領域に付着して成長し、薄膜103が形成される。
(基材)
図示の例では、上下に積層された複数の基材101の内周面に薄膜103を形成するようにCVD装置1が運用されている状態が示されている。複数の基材101は、複数の貫通孔101hが互いに通じ合うように貫通方向を上下方向に向けて積層されている。複数の基材101は、互いに当接していてもよいし、適宜なスペーサを介して積層されていてもよい。なお、図示の例とは異なり、1つの基材101の内周面に薄膜103を形成するようにCVD装置1が運用されても構わない。
基材101は、貫通孔101hを有していればよく、その具体的な形状及び寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、基材101は、高さ(紙面上下方向)が直径に比較して小さい薄型形状とされている。また、内周面及び外周面は、平面視において円形である。基材101の内周面及び外周面の径は、貫通孔101hの貫通方向において一定である。基材101の上面及び下面は、互いに平行な平面である。
ただし、図示の例とは異なり、基材101は、高さが直径に比較して大きい筒状であっても構わない。また、内周面及び/又は外周面は、平面視において、円形以外の形状であってもよく、例えば、楕円又は多角形であってもよい。基材101の内周面及び/又は外周面の径は、貫通孔101hの貫通方向において変化していてもよい。例えば、基材101の外周面及び/又は内周面は、錐体状となっていてもよい。内周面及び外周面は、互いに相似でなくても構わない。基材101の上面及び/又は下面は、互いに平行でなくてもよいし、平面でなくてもよい。
基材101の材料は、本開示に係る技術分野における公知の種々のものと同様とされてよい。例えば、基材101の材料として、炭化ケイ素(SiC)等の炭化物を挙げることができる。基材101は、単一の材料から構成されるのではなく、複数の材料から構成されていてもよい。例えば、基材101は、比較的融点の高い金属材料を炭化物で覆った構成であってもよい。
(チャンバ、減圧装置及びガス供給部)
チャンバ3、減圧装置4及びガス供給部5の構成は、本開示に係る技術分野における公知の種々の構成と同様とされてよい。チャンバ3は、その内部を気密に保つことが可能に構成されている。減圧装置4は、例えば、真空ポンプを含んで構成され、チャンバ3内の気体をチャンバ3外へ排出してチャンバ3内の減圧を行う。
ガス供給部5は、例えば、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスをチャンバ3内に供給する。原料ガスは、ダイヤモンドの原料(炭素)を含むガスであり、体表的なものとして、メタン等の炭化水素を挙げることができる。キャリアガスとしては、例えば、水素を挙げることができる。原料ガスと水素との比率は適宜に設定されてよく、例えば、原料ガスの体積は、混合ガスの体積の5%未満である。
(ステージ)
ステージ7は、例えば、水平面に沿って互いに並列に配列された複数の棒8を有している。複数の棒8は、例えば、不図示の支持部材によってその端部において互いに連結されるとともにチャンバ3内で支持されている。
複数の棒8によって、基材101が載置される面が構成されている。複数の棒8は、互いに同一の形状及び寸法であってもよいし、互いに異なっていてもよい。各棒8の形状及び各種寸法、並びに複数の棒8の数及び間隔は適宜に設定されてよい。図示の例では、棒8は、概略、一定の断面(横断面)形状で直線状に延びている。棒8の断面形状は、例えば、矩形又は円形である。ただし、棒8は、適宜に屈曲乃至は湾曲していてもよいし、断面形状が変化してもよい。
ステージ7(複数の棒8及び不図示の支持部材等)の材料は、ダイヤモンドの成膜を行っているときの比較的高温の温度環境下で基材101の荷重を支持可能なものであれば、適宜に選択されてよい。例えば、ステージ7は、比較的融点が高い金属によって構成されていてもよいし、セラミックによって構成されていてもよい。
なお、特に図示しないが、ステージ7は、基材101を加熱及び/又は冷却するための機構を備えていてもよい。例えば、複数の棒8の内部に電熱線及び/又は冷却流路が設けられていてもよい。
(フィラメント)
フィラメント9は、金属からなる線状の部材である。フィラメント9自体の基本的な構成は、本開示に係る技術分野における公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、フィラメント9の横断面は、直径0.05mm以上1mm以下の円形である。なお、横断面は、円形以外の形状であってもよい。フィラメント9の材料としては、例えば、タングステン、タンタル又はモリブデンを挙げることができる。複数のフィラメント9は、互いに同一の構成である。
複数のフィラメント9は、貫通孔101hに挿通され、基材101の内周面に沿って周方向(円周方向)に配列されている。図示の例では、平面視において基材101の内周面は円形であることから、複数のフィラメント9は、平面視において概ね円周上に配置されている。また、図示の例では複数の基材101が積層されていることから、複数のフィラメント9は、複数の貫通孔101hに共通に挿通されている。
複数のフィラメント9が基材101の内周面に近接して配置されていることから、複数のフィラメント9によってチャンバ3内のガスを加熱したときに、基材101の内周面上においてダイヤモンドを成長させやすい。ひいては、基材101の内周面に薄膜103を形成することができる。
フィラメント9と基材101の内周面との距離は、例えば、貫通孔101hの全長に亘って概ね一定であり、また、複数のフィラメント9間で概ね一定である。当該距離の具体的な長さは、公知のCVD装置と同様に設定されてよく、例えば、1mm以上10mm未満である。また、複数のフィラメント9の周方向における間隔は、例えば、概ね一定である。当該間隔の具体的な大きさは、公知のCVD装置と同様に設定されてよく、例えば、1mm以上20mm以下である。
(電極)
1対の電極11は、例えば、複数のフィラメント9の支持と、複数のフィラメント9への電力供給とに寄与する部材である。1対の電極11は、上下方向(貫通孔101hの貫通方向)において基材101を挟んで互いに対向した状態で、不図示の支持機構によってチャンバ3内で支持されている。複数のフィラメント9は、1対の電極11に架け渡されている。
1対の電極11は、ダイヤモンドの成膜を行っている間、基本的に、ステージ7に対して固定的にされている。従って、1対の電極11に支持されている複数のフィラメント9と、ステージ7に載置されている基材101との位置関係は、成膜を行っている間は基本的に一定に保たれる。
1対の電極11は、例えば、それぞれ不図示の支持機構によって支持されてよい。このの場合、熱膨張によってフィラメント9に撓みが生じないように、フィラメント9に適宜な張力を付与する、及び/又は1対の電極11間の距離を調整する機構が設けられていてもよい。また、上方の電極11のみが不図示の支持機構によって支持され、下方の電極11は、複数のフィラメント9を介して上方の電極11に支持されていてもよい。この場合、下方の電極11の自重によって複数のフィラメント9に張力が付与される。必要に応じて錘が下方の電極11に取り付けられてもよい。
下方の電極11は、ステージ7よりも下方に位置している。従って、複数のフィラメント9は、ステージ7の複数の棒8間の隙間を介して下方の電極11まで延びている。下方の電極11は、例えば、複数の棒8から下方に離れている。ただし、複数の棒8が絶縁性である場合等においては、下方の電極11は、複数の棒8に対して下方から当接していてもよい。
上方の電極11は、例えば、基材101(図示の例では最も上層の基材101)の上面から上方に離れている。従って、例えば、熱膨張によって基材101の上面が上昇しても、基材101は上方の電極11に当接しない。なお、基材101と上方の電極11との隙間の大きさは適宜に設定されてよい。
(電源装置)
電源装置13は、1対の電極11に交流電力又は直流電力を付与する。電源装置13の構成は、公知のCVD装置における種々の構成と同様とされてよい。
(複数のフィラメントの電極に対する取り付け構造)
図2(a)は、電極11の一例を示す平面図である。図2(b)は、電極11の他の例を示す平面図である。図2(c)は、下方の電極11の一部の断面図である。
1対の電極11それぞれは、例えば、プレート15によって構成されている。プレート15は、例えば、いわゆるパンチングメタルによって構成されている。すなわち、プレート15は、概略板状であるとともに、厚さ方向に貫通する複数の取付孔15hを有している。そして、図2(c)に示すように、複数のフィラメント9は、複数の取付孔15hに挿通されるとともに、端部が折り曲げられて1対の電極11の互いに対向する面とは反対側の面に係合することによって1対の電極11に取り付けられる。
プレート15の平面形状及び各種の寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、プレート15の平面形状は概略正方形である。その他、プレート15の平面形状は、例えば、長方形又は円形とされてよい。プレート15の材料は、公知のCVD装置における電極の種々の材料と同様とされてよい。例えば、プレート15の材料として、ステンレス鋼を挙げることができる。
取付孔15hの径は、フィラメント9を挿通可能にフィラメント9の径よりも大きい。また、取付孔15hの径は、平面視において基材101の貫通孔101h内に複数の取付孔15hが位置することが可能に貫通孔101hに比較して十分に小さい。取付孔15hの形状は適宜に設定されてよく、例えば、平面視における形状は円形である。
複数の取付孔15hは、比較的多数(少なくともフィラメント9の数よりも多い数)で2次元的に分布している。そして、複数のフィラメント9は、複数の取付孔15hの一部に対して選択的に取り付けられる。これにより、複数のフィラメント9は環状に配列される。複数の取付孔15hの配置は、適宜に設定されてよい。例えば、プレート15の内側から外側へ多重に複数の取付孔15hが分布していれば、種々の径の貫通孔101hに対して複数のフィラメント9を適切に配置することができる。
図2(a)の例では、複数の取付孔15hは、縦横に一定のピッチで配列されている。ただし、互いに隣接する列同士は、その列に沿う方向において、取付孔15hの位置が半ピッチでずれている。複数の取付孔15hは、互いに適宜な角度で傾斜する2方向において一定のピッチで配列されていると捉えられてもよい。また、別の観点では、複数の取付孔15hは、3つの取付孔15hによって三角形17が構成される配置とされている。三角形17は、例えば、正三角形又は二等辺三角形である。
また、図2(b)の例においても、複数の取付孔15hは、縦横に一定のピッチで配列されている。ただし、図2(a)とは異なり、互いに隣接する列同士は、その列に沿う方向において、取付孔15hの位置が一致している。別の観点では、複数の取付孔15hは、4つの取付孔15hによって長方形19が構成される配置とされている。長方形19は、正方形であってもよいし、正方形を除く狭義の長方形であってもよい。
この他、例えば、複数の取付孔15hは、放射状に配列されていたり、及び/又は複数の同心円に沿って配列されていたりしてもよいし、一見して不規則に分布していてもよい。また、複数の取付孔15hは、必ずしもプレート15の全域に亘って設けられている必要はない。例えば、プレート15の外周部及び/又は中央部においては、複数の取付孔15hが設けられていなくてもよい。ただし、図2(a)及び図2(b)のような縦横の配列でプレート15の広い範囲に取付孔15hを形成すると、後述する図3(b)のような運用方法の実現が容易である。
図2(a)及び図2(b)の例では、平面視において1枚のプレート15に対して1つの基材101を配置する場合の複数のフィラメント9の配置が示されている。ただし、平面視において1枚のプレート15に対して複数の基材101を配置して(複数の基材101を並列に配置して)、複数の基材101に対して同時に成膜が行われてもよい。
(プレートの連結)
図3(a)及び図3(b)は、それぞれ電極11の他の例を示す平面図である。
図2(a)及び図2(b)に示したように、プレート15は、単体で1つの電極11を構成してよい。また、図3(a)及び図3(b)に示すように、プレート15は、複数枚が平面方向に連結されて1つの電極11を構成してもよい。
図3(a)に示すように、複数のプレート15を連結することにより、例えば、平面視において1枚のプレート15に収まる大きさの貫通孔101hを有する複数の基材101に対して同時に成膜を行うことが容易になる。
また、図3(b)に示すように、複数のプレート15を連結することにより、例えば、平面視において1枚のプレート15に収まらない大きさの貫通孔101hを有する基材101に対して成膜を行うことが容易になる。
なお、図3(a)では、取付孔15hの配列は、図2(a)に示したものとなっており、図3(b)では、取付孔15hの配列は、図2(b)に示したものとなっている。ただし、図3(a)及び図3(b)それぞれの運用方法は、図2(a)及び図2(b)のいずれの配列によって実現されてもよいし、他の配列によって実現されてもよい。
複数のプレート15の連結枚数は適宜に設定されてよい。図示の例では、4枚の概ね正方形のプレート15が連結されて、概ね正方形の電極11を構成している。この他、例えば、特に図示しないが、長方形のプレート15が長辺同士を隣接させて並べられたり、正方形のプレート15が長方形の電極11を構成するように並べられたりしてもよい。
複数のプレート15は、互いに隙間なく隣接するように連結されてもよいし、一部が重なるように連結されてもよいし、互いに隙間を空けるように連結されてもよい。なお、複数のプレート15間に隙間がある場合、図3(a)の例では、平面視において貫通孔101hが1枚のプレート15に収まればよく、基材101の外周面が1枚のプレート15に収まる必要は必ずしもない。
複数のプレート15の連結方法は、適宜なものとされてよい。例えば、連結方法は、連結の解除が容易な方法とされる。より具体的には、例えば、互いに隣り合うプレート15は、縁部が互いに重ねられてボルト及びナットによって固定されてもよいし、縁部が互いに重なっている状態又は重なっていない状態で、万力のような挟持器具によって共に挟まれて固定されてもよい。
複数のプレート15は、互いに導通するように連結される。例えば、複数のプレート15は、互いに当接するように連結されたり、及び/又は導電性の器具によって互いに連結されたりする。これにより、電源装置13は、電極11を構成する複数のプレート15のいずれかに電力を供給すればよいから、電気的な接続の構成が簡素化される。ただし、電源装置13から各プレート15に電力を供給したり、機械的な連結とは別個に複数のプレート15の接続がなされたりしても構わない。
なお、図3(a)の例では、平面視において1枚のプレート15につき1つの基材101に対して成膜を行う場合の複数のフィラメント9の配置が示されている。ただし、基材101の数とプレート15の数とは同一でなくてもよい。例えば、図3(a)の例において、電極11の中央側の4枚のプレート15に跨る位置にも基材101を配置するなど、プレート15の数よりも基材101の数を多くすることも可能である。
図3(a)の例について、平面視において貫通孔101hの大きさが1枚のプレート15に収まる例として説明した。ただし、図3(a)の例は、平面視において基材101の数がプレート15の数以上である例として捉えられてもよい。
また、図3(b)の例では、複数枚のプレート15につき1つの基材101に対して成膜を行う場合のフィラメント9の配置が示されている。ただし、プレート15の形状、枚数及び大きさ、並びに貫通孔101h(又は基材101)の大きさの相対関係によっては、1枚のプレート15の面積よりも貫通孔101hの開口面積が大きい基材101が複数配置されてもよい。例えば、長方形の2枚のプレート15を長辺が互いに隣接するように配置し、プレート15の短辺よりも直径が大きい貫通孔101hを有する2以上の基材101をプレート15の長辺に沿って配列してもよい。
(成膜の手順)
ダイヤモンドの製造方法は、基材101及びCVD装置1を準備する準備ステップと、フィラメント9に電力を供給してダイヤモンドを成膜させる成膜ステップとを含んでいる。
準備ステップは、具体的には、例えば、1対の電極11を適宜な枚数のプレート15によって構成する作業、1対の電極11をステージ7に対して位置決めする作業、1対の電極11を互いに対向させるように配置する作業、基材101をステージ7上に載置する作業、複数のフィラメント9を基材101に対して挿通する作業、複数のフィラメント9を基材101の内周面に沿って配列させる作業、複数のフィラメント9を各電極11に対して取り付ける作業、並びにフィラメント9、1対の電極11及び基材101等を個別に又は纏めてチャンバ3に配置する作業等を含む。
上記の種々の作業は、適宜な順番で行われてよいし、一の作業の一部又は全部が他の作業の途中で行われたり、2以上の作業の一部又は全部が同時に行われたりしてもよい。最終的に、図1(a)等を参照した状態に、チャンバ3、ステージ7、フィラメント9、電極11及び基材101等が配置されればよい。
成膜ステップでは、具体的には、例えば、まず、減圧装置4によってチャンバ3内の減圧が行われる。次に、ガス供給部5によって混合ガス(原料ガス及びキャリアガス)がチャンバ3内に供給される。そして、電源装置13によって1対の電極11を介して複数のフィラメント9に電力が供給される。
この際のチャンバ3内の圧力、混合ガスの供給量、フィラメント9の温度及び基材101の温度等は適宜に設定されてよい。例えば、チャンバ3内の圧力は、27kP未満である。フィラメント9の温度は、例えば、2000℃以上である。基材101の温度は、例えば、700℃以上1000℃以下である。
以上のとおり、本実施形態では、ダイヤモンドの製造方法は、複数のフィラメント9を基材101の貫通孔101hに挿通するとともに貫通孔101hの内面に沿って周方向に配列する準備ステップと、複数のフィラメント9に電力を供給して熱フィラメントCVD法によって貫通孔101hの内面にダイヤモンド(薄膜103)を成膜させる成膜ステップと、を有している。
従って、例えば、貫通孔101hを有する基材101の内周面にダイヤモンドを成膜することができ、ダイヤモンドの利用が広がる。例えば、薄膜103を有する基材101は、内部に摺動部材が配置される装置に利用可能である。より詳細には、例えば、薄膜103を有する基材101は、回転軸を軸支する軸受、ピストンが摺動するシリンダチューブ、ポンプの摺動部分、バルブの摺動部分等に利用可能である。
本実施形態の準備ステップでは、貫通孔101hの貫通方向において基材101を挟んで互いに対向する1対の電極11に複数のフィラメント9を架け渡す。1対の電極11の互いに対向する面それぞれには、複数のフィラメント9を取付け可能な複数の取付部(取付孔15h)が分布している。準備ステップでは、複数のフィラメント9を複数の取付孔15h部の一部にのみ選択的に取り付ける。
従って、例えば、複数のフィラメント9の1対の電極11に対する取付位置を設定又は変更することによって、種々の径の貫通孔101h及び/又は種々の形状の貫通孔101hに対して、適切に複数のフィラメント9を配置することができる。従って、CVD装置1のコストを削減しつつ、CVD装置1の汎用性を向上させることができる。
本実施形態では、複数の取付部は、1対の電極11を貫通する複数の孔(取付孔15h)である。準備ステップでは、複数のフィラメント9を複数の取付孔15hに挿通するとともに1対の電極11の互いに対向する面とは反対側の面に係合させる。
従って、例えば、フィラメント9と電極11とを固定する部材は不要であり、構成が簡素化される。また、フィラメント9を電極11に挿通して折り曲げるだけであるので、作業も容易である。
本実施形態の準備ステップでは、複数の取付部(取付孔15h)をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレート15によって1対の電極11のそれぞれを構成し、貫通方向に見て1枚のプレート15に収まる大きさの貫通孔101hを有する複数の基材101を互いに並列に1対の電極11間に配置してもよい(図3(a))。
この場合、例えば、複数の基材101に対して同時にダイヤモンドを成膜することができ、生産性が向上する。また、プレート15は、1枚で用いたり、任意の数で連結したりすることができ、汎用性が高い。さらに、複数のプレート15からなる電極11は、図3(b)のように運用することもできる。
本実施形態の準備ステップでは、複数の取付部(取付孔15h)をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレート15によって1対の電極11のそれぞれを構成し、貫通方向に見て1枚のプレート15に収まらない大きさの貫通孔101hを有する基材101を1対の電極11間に配置してもよい(図3(b))。
この場合、例えば、比較的大きな基材101に対してダイヤモンドを成膜することが容易である。また、上記のように、プレート15は、1枚で用いたり、任意の数で連結したりすることができ、汎用性が高い。さらに、複数のプレート15からなる電極11は、図3(a)のように運用することもできる。
本実施形態の準備ステップでは、水平面に沿って互いに並列に配置された複数の棒8上に、貫通孔101hの貫通方向を上下方向にして基材101を載置し、複数のフィラメント9を複数の棒8間の隙間に通す。
従って、例えば、基材101を支持するステージ7は、複数のフィラメント9を下方の電極11に取り付ける障害になりにくい。また、複数の棒8を配列するだけでよいので、構成が簡素である。
本実施形態の準備ステップでは、貫通孔101hの貫通方向を上下方向として複数の基材101を積層し、複数の貫通孔101hに複数のフィラメント9を挿通してもよい。
この場合、例えば、複数の基材101に対して同時にダイヤモンドを成膜することができ、生産性が向上する。また、例えば、基材101の上下面に意図せずにダイヤモンドが成膜されるおそれを低減することができる。なお、積層と挿通とはいずれが先であってもよい。
本実施形態に係るCVD装置1は、互いに対向する1対の電極11と、1対の電極11に架け渡される複数のフィラメント9と、を有している。1対の電極11の互いに対向する面それぞれには、複数のフィラメント9を取付け可能な複数の取付部(取付孔15h)が縦横に一定のピッチで配列されている。
従って、例えば、複数の取付孔15hに対して選択的に複数のフィラメント9を取り付けることによって、平面視において複数のフィラメント9を結んだ形状を適宜な径及び/又は形状にすることが容易である。その結果、CVD装置1の汎用性が向上する。
特に図示しないが、このようなCVD装置1は、貫通孔101hを有する基材101の内周面にダイヤモンドを成膜するだけでなく、任意の形状(例えば円柱状)の基材の外周面にダイヤモンドを成膜することもできる。また、貫通孔101hを有する基材101の内周面と外周面との両面に同時にダイヤモンドを成膜することもできる。
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係るCVD装置201の要部構成を示す模式的な斜視図である。この図において、紙面上下方向は、例えば、鉛直方向である。
CVD装置201は、基本的に、基材111、複数のフィラメント9及び1対の電極11が横向きとされている点のみが第1実施形態のCVD装置1と相違する。具体的には、基材111は、貫通孔111hの貫通方向が水平になるようにステージ7に載置され、複数のフィラメント9は、水平方向に延びており、1対の電極11は、水平方向において互いに対向している。
なお、ここでは図示を省略しているが、CVD装置201は、CVD装置1と同様に、チャンバ3、減圧装置4、ガス供給部5及び電源装置13を有している。また、図示の例では、1対の電極11間には、1つの基材111のみが配置されている。ただし、適宜な連結手段及び/又は支持手段によって、複数の基材が直列又は並列に1対の電極11間に配置されてもよい。各電極11は、第1実施形態と同様に、1枚のプレート15から構成されてもよいし、複数のプレート15から構成されてもよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
フィラメントを取り付け可能な電極の取付部は、電極を貫通する孔に限定されない。例えば、取付部は、フィラメントを巻き付けたり、係合させたりする、突部又はフックであってもよいし、フィラメントの端部に設けられた被取付部が圧入される凹部であってもよい。また、取付部が電極を貫通する孔である場合において、フィラメントを折り曲げることによってフィラメントを電極の裏側に係合させるのではなく、電極の裏側に配置した係合部材を孔に挿通されたフィラメントの端部に固定してもよいし、フィラメントの端部に設けられた被取付部を孔に圧入してもよい。
基材は、ステージ上に載置されるのではなく、例えば、外周面が把持されてチャンバ内に保持されてもよい。また、ステージは、並列に配列された複数の棒を有するものに限定されず、例えば、網状の部材(パンチングメタルを含む)によって構成されてもよい。
CVD装置は、ダイヤモンド以外の材料の成膜に利用されてもよい。また、ダイヤモンドの成膜は、炭素を含むフィラメント自体が原料とされてもよい。
1…CVD装置、9…フィラメント、101…基材、101h…貫通孔、103…薄膜(ダイヤモンド)。

Claims (6)

  1. 複数のフィラメントを基材の貫通孔に挿通するとともに前記貫通孔の内面に沿って周方向に配列する準備ステップと、
    前記複数のフィラメントに電力を供給して熱フィラメントCVD法によって前記貫通孔の内面にダイヤモンドを成膜させる成膜ステップと、
    を有しており、
    前記準備ステップでは、前記貫通孔の貫通方向において前記基材を挟んで互いに対向する1対の電極に前記複数のフィラメントを架け渡し、
    前記1対の電極の互いに対向する面それぞれには、前記複数のフィラメントを取付け可能な複数の取付部が分布しており、
    前記準備ステップでは、前記複数のフィラメントを前記複数の取付部の一部にのみ選択的に取り付ける
    ダイヤモンドの製造方法。
  2. 前記複数の取付部は、前記1対の電極を貫通する複数の孔であり、
    前記準備ステップでは、前記複数のフィラメントを前記複数の孔に挿通するとともに前記1対の電極の互いに対向する面とは反対側の面に係合させる
    請求項に記載のダイヤモンドの製造方法。
  3. 前記準備ステップでは、前記複数の取付部をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレートによって前記1対の電極のそれぞれを構成し、前記貫通方向に見て1枚の前記プレートに収まる大きさの前記貫通孔を有する複数の前記基材を互いに並列に前記1対の電極間に配置する
    請求項又はに記載のダイヤモンドの製造方法。
  4. 前記準備ステップでは、前記複数の取付部をそれぞれ有する、平面方向に連結された複数枚のプレートによって前記1対の電極それぞれを構成し、前記貫通方向に見て1枚の前記プレートに収まらない大きさの前記貫通孔を有する前記基材を前記1対の電極間に配置する
    請求項又はに記載のダイヤモンドの製造方法。
  5. 複数のフィラメントを基材の貫通孔に挿通するとともに前記貫通孔の内面に沿って周方向に配列する準備ステップと、
    前記複数のフィラメントに電力を供給して熱フィラメントCVD法によって前記貫通孔の内面にダイヤモンドを成膜させる成膜ステップと、
    を有しており、
    前記準備ステップでは、水平面に沿って互いに並列に配置された複数の棒上に、前記貫通方向を上下方向にして前記基材を載置し、前記複数のフィラメントを前記複数の棒間の隙間に通す
    イヤモンドの製造方法。
  6. 複数のフィラメントを基材の貫通孔に挿通するとともに前記貫通孔の内面に沿って周方向に配列する準備ステップと、
    前記複数のフィラメントに電力を供給して熱フィラメントCVD法によって前記貫通孔の内面にダイヤモンドを成膜させる成膜ステップと、
    を有しており、
    前記準備ステップでは、前記貫通方向を上下方向として複数の前記基材を積層し、複数の前記貫通孔に前記複数のフィラメントを挿通する
    イヤモンドの製造方法。
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