以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係るワイパ装置を搭載した車両の概略図を、図2は図1のワイパ装置のDR側ピボットホルダ近傍の斜視図を、図3はDR側駆動レバーおよびDR側ピボット軸を側方から見た部分断面図を、図4は図3のA矢視図を、図5はかしめ量d[mm]と中心間距離Lの変位量[mm]との関係を示すグラフを、図6はかしめ凹部の成形に用いられるかしめポンチを示す図を、図7はDR側駆動レバーのDR側ピボット軸への固定手順を説明する図をそれぞれ示している。
図1に示されるように、自動車等の車両10のフロント側には、フロントウィンドシールド11が設けられている。また、フロントウィンドシールド11上には、フロントウィンドシールド11に付着した雨水や埃等を払拭するDR側ワイパ部材12およびAS側ワイパ部材13が設けられている。
DR側ワイパ部材12は、DR側ワイパブレード12aとDR側ワイパアーム12bとを備え、DR側ワイパブレード12aはDR側ワイパアーム12bの先端側に回動自在に装着されている。AS側ワイパ部材13は、AS側ワイパブレード13aとAS側ワイパアーム13bとを備え、AS側ワイパブレード13aはAS側ワイパアーム13bの先端側に回動自在に装着されている。
DR側,AS側ワイパブレード12a,13aは、フロントウィンドシールド11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間に形成されるDR側,AS側払拭範囲11a,11bを、それぞれ同期して同一方向に往復払拭動作するようになっている。つまり、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aの払拭パターンは、タンデム型となっている。
車両10におけるフロントウィンドシールド11の前端側で、かつバルクヘッド(図示せず)の近傍には、DR側,AS側ワイパ部材12,13を揺動駆動するワイパ装置14が搭載されている。ワイパ装置14は、DR側,AS側ピボット軸15a,15bを備え、DR側,AS側ピボット軸15a,15bの軸方向一側(先端側)には、DR側,AS側ワイパアーム12b,13bの基端側が締結ナット(図示せず)により固定されている。
また、DR側,AS側ピボット軸15a,15bには、DR側,AS側駆動レバー16a,16bの長手方向一側が固定されている。また、DR側,AS側駆動レバー16a,16bの長手方向他側は、それぞれボールジョイント(図示せず)を介して、連結ロッド17の端部が回動自在に連結されている。
AS側駆動レバー16bの長手方向他側には、さらにボールジョイント(図示せず)を介して、駆動ロッド18の長手方向一側が回動自在に連結されている。また、駆動ロッド18の長手方向他側は、ボールジョイント(図示せず)を介してクランクアーム19の長手方向一側に回動自在に連結されている。
クランクアーム19の長手方向他側は、ワイパモータ20の出力軸21に固定され、クランクアーム19は、出力軸21の回転に伴ってその長手方向一側(駆動ロッド18との連結部分)が回転するようになっている。ここで、クランクアーム19,駆動ロッド18および連結ロッド17は、ワイパモータ20の回転運動を揺動運動に変換するリンク機構を構成している。そして、このリンク機構は、DR側,AS側駆動レバー16a,16bおよびDR側,AS側ピボット軸15a,15bを、それぞれ揺動駆動するようになっている。
なお、ワイパモータ20の駆動源には、ブラシ付きの電動モータやブラシレスの電動モータが用いられる。ただし、静粛性の観点からは、ブラシの摺接音等を発生しないブラシレスの電動モータを採用するのが好ましい。
ここで、図1に示されるワイパ装置14は、そのDR側部分およびAS側部分において、それぞれ略同様の構成となっている。したがって、以下の説明では、AS側部分の説明を省略し、DR側部分のみについて説明する。
図2に示されるように、ワイパ装置14は、車体フレーム(図示せず)に固定されるDR側ピボットホルダ30を備えている。DR側ピボットホルダ30は、DR側ピボット軸15aおよびDR側駆動レバー16aを、それぞれ回動自在に支持している。
DR側ピボットホルダ30は、溶融されたアルミ材料等を鋳造成形することで所定形状に形成され、DR側ピボット軸15aが貫通される中空の本体筒部31を備えている。そして、本体筒部31の径方向内側でかつ軸方向両側には、軸受部材(図示せず)がそれぞれ圧入により固定されており、これらの軸受部材は、DR側ピボット軸15aを回転自在に支持している。
また、本体筒部31の軸方向一側(図中上側)には、DR側ピボット軸15aに固定されたDR側駆動レバー16aが摺接可能に設けられ、本体筒部31の軸方向他側(図中下側)には、DR側ピボット軸15aに固定された抜け止めワッシャWSが摺接可能に設けられている。これにより、DR側ピボット軸15aは、本体筒部31に対して、抜け止めされた状態で回動自在となっている。
本体筒部31の軸方向一側には、車体フレームに固定される支持腕32が一体に設けられている。支持腕32は、本体筒部31の径方向外側に突出して設けられ、当該支持腕32には、ゴム製のブッシュ(図示せず)が装着されるようになっている。そして、ブッシュには、締結ネジ(図示せず)が貫通され、これによりDR側ピボットホルダ30(ワイパ装置14)は、車体フレームに弾性支持される。よって、ワイパ装置14の駆動時に発生する振動等が、車室内に伝達されることが無い。
本体筒部31の軸方向他側には、フレーム支持脚33が一体に設けられている。フレーム支持脚33には、パイプ状の鋼材等よりなるフレーム部材FRの長手方向一側が嵌合して固定されている。このフレーム部材FRは、DR側ピボットホルダ30とAS側ピボットホルダ(図示せず)とを一体化させるものであって、ワイパ装置14は、所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置となっている。
次に、DR側ピボット軸15aにDR側駆動レバー16aを固定して形成されたピボット軸-駆動レバー組立体SA(図3および図4参照)について、図面を用いて詳細に説明する。
図2ないし図4に示されるように、DR側ピボット軸15aは、中実の鋼材等により円柱状に形成されている。DR側ピボット軸15aの軸方向基端側(図3中下側)には第1本体部40が設けられ、DR側ピボット軸15aの軸方向先端側(図3中上側)には第2本体部41が設けられている。第1本体部40は、DR側ピボットホルダ30の本体筒部31に設けられた一対の軸受部材により回動自在に支持されている。一方、第2本体部41は、DR側ピボットホルダ30の外部に露出されている。
図3に示されるように、DR側ピボット軸15aの軸方向に沿う第1本体部40と第2本体部41との間には、DR側駆動レバー16aが固定される第1セレーション部(固定部)42が設けられている。第1セレーション部42は、DR側ピボット軸15aの外周に設けられ、第1セレーション部42には、DR側ピボット軸15aの周方向に並んだ複数の微小な凹凸部42aが設けられている。なお、第1本体部40の軸方向長さの方が、第2本体部41の軸方向長さよりも長くなっている。すなわち、第1セレーション部42は、DR側ピボット軸15aの軸方向先端寄りに配置されている。
また、DR側ピボット軸15aの軸方向に沿う第1セレーション部42の長さ寸法は、DR側駆動レバー16aの厚み寸法(約4.5mm)と略同じ寸法とされ、これにより、第1セレーション部42は外部に露出されることが無い。
さらに、第1セレーション部42は、第1,第2本体部40,41の表面よりも、DR側ピボット軸15aの径方向内側に窪んで設けられている。具体的には、図3に示されるように、第1セレーション部42の深さ寸法tは、約0.5mm程度に設定されている。これにより、DR側駆動レバー16aをDR側ピボット軸15aに固定する際に、DR側駆動レバー16aの貫通孔50を、第1セレーション部42に容易に対向させることができる。
DR側ピボット軸15aの軸方向先端側、つまり、第2本体部41の軸方向に沿う第1セレーション部42が設けられた側とは反対側(図3中上側)には、第2セレーション部43が設けられている。この第2セレーション部43には、DR側ワイパアーム12b(図1参照)の基端側が相対回転不能に固定される。そして、第2セレーション部43は、雄ねじ部44がある側(図3中上側)に向けて先細り形状となっている。これにより、DR側ワイパアーム12bの基端側を第2セレーション部43に容易に装着可能となっている。
なお、第2セレーション部43においても、第1セレーション部42と同様に、DR側ピボット軸15aの周方向に並んだ複数の微小な凹凸部43aを有している。
また、第2セレーション部43の軸方向に沿う第1セレーション部42が設けられた側とは反対側(図中上側)には、雄ねじ部44が設けられている。この雄ねじ部44には、第2セレーション部43に装着されたDR側ワイパアーム12bを固定するための固定ナット(図示せず)が、ねじ結合されるようになっている。
さらに、第1本体部40の軸方向に沿う第1セレーション部42が設けられた側とは反対側(図中下側)には、環状のワッシャ装着溝45が設けられている。このワッシャ装着溝45は、第1本体部40の表面からDR側ピボット軸15aの径方向内側に窪むようにして形成されている。そして、ワッシャ装着溝45には、抜け止めワッシャWS(図2参照)が装着されるようになっている。
図2ないし図4に示されるように、DR側駆動レバー16aは、鋼板をプレス加工等することで板状に形成されている。DR側駆動レバー16aの長手方向一側(図中右側)には、DR側ピボット軸15aが貫通する貫通孔50が形成されている。一方、DR側駆動レバー16aの長手方向他側(図中左側)には、雌ねじ部51が形成されている。
雌ねじ部51には、ボールジョイント52がねじ結合されており、当該ボールジョイント52には、連結ロッド17の長手方向一側(図1中右側)が回動自在に連結されている。一方、貫通孔50の径方向内側、つまり当該貫通孔50の内周には、DR側ピボット軸15aの第1セレーション部42に対応するようにして、貫通孔50の周方向に並んだ複数の微小な凹凸部50a(図7参照)が設けられている。
ここで、第1セレーション部42の外周に設けられた凹凸部42aと、貫通孔50の内周に設けられた凹凸部50aとは、互いに押し付けられるようにして噛み合わされており、本発明における凹凸部をそれぞれ構成している。
図3に示されるように、DR側駆動レバー16aの長手方向一側(図中右側)で、かつその表面52aおよび裏面52b(両面)には、円弧状のかしめ凹部53がそれぞれ設けられている。具体的には、一対のかしめ凹部53は、貫通孔50の周囲に設けられ、図4に示されるように平面視で略C字形状に形成されている。そして、一対のかしめ凹部53は、DR側駆動レバー16aの板厚方向に対して、その表面52aおよび裏面52bに、互いに鏡像対称となるように設けられている。
略C字形状に形成された一対のかしめ凹部53の開口方向(図4中左側)は、いずれもDR側駆動レバー16aの長手方向に沿う雌ねじ部51が設けられた側となっている。つまり、一対のかしめ凹部53は、貫通孔50に対して、DR側駆動レバー16aの長手方向に沿うリンク機構が設けられた側とは反対側に設けられている。
また、一対のかしめ凹部53の形状について、より具体的に説明すると、DR側駆動レバー16aの長手方向に延び、かつ貫通孔50の中心を通る線分Cを中心に、一対のかしめ凹部53は鏡像対称の形状になっている。
これにより、駆動レバー16aの長手方向に沿う貫通孔50と雌ねじ部51との間に設けられる網掛領域ARには、かしめ凹部53が形成されない。また、DR側駆動レバー16aに、捻れ等が生じることが抑えられる。
ここで、一対のかしめ凹部53は、図6および図7に示される一対のかしめポンチ(押圧治具)Tによって形成される。つまり、DR側駆動レバー16aの表面52aおよび裏面52bでかつ貫通孔50の周囲に、一対のかしめポンチTを押し当てて、DR側駆動レバー16aを塑性変形させることで、一対のかしめ凹部53は形成される。このように、一対のかしめ凹部53は、DR側ピボット軸15aの軸方向に移動される一対のかしめポンチTにより形成され、これにより一対のかしめ凹部53は、DR側ピボット軸15aの軸方向に窪むようにして形成される。
一対のかしめ凹部53は、貫通孔50および第1セレーション部42の周囲の一部を囲うようにして設けられている。これにより、一対のかしめ凹部53の成形により塑性流動される部分が、貫通孔50の内周に設けられた凹凸部50aの一部となって、当該凹凸部50aが第1セレーション部42の凹凸部42aに強く押し付けられる。ここで、第1セレーション部42の凹凸部42aに貫通孔50の凹凸部50aが押し付けられるため、両者はギヤのように噛み合わされて、互いに十分な固定強度で相対回転不能に固定される。
ここで、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度は、図3に示されるように、一対のかしめ凹部53の深さ寸法、つまりかしめ量dによって決定される。すなわち、一対のかしめポンチT(図6および図7参照)の押圧力Fを弱めてかしめ量dを小さくする(深さ寸法を浅くする)と、第1セレーション部42の凹凸部42aに対する貫通孔50の凹凸部50aの押し付け力が小さくなる。よって、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度は小さくなる。
これに対し、一対のかしめポンチTの押圧力Fを強めてかしめ量dを大きくする(深さ寸法を深くする)と、第1セレーション部42の凹凸部42aに対する貫通孔50の凹凸部50aの押し付け力が大きくなる。よって、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度は大きくなる。すなわち、一対のかしめポンチTの押圧力Fを調整することで、製品に必要とされる固定強度(仕様)を任意に設定することができる。
ここで、図4に示されるように、円弧状のかしめ凹部53の開口部分の角度、つまりDR側ピボット軸15aを中心としたかしめ凹部53の切り欠かれた部分の角度は、α°(本実施の形態では90°)になっている。これにより、貫通孔50と雌ねじ部51との間の網掛領域ARには、かしめ凹部53が形成されないようになっている。つまり、一対のかしめポンチTを用いたかしめ作業の際に、貫通孔50と雌ねじ部51との間の網掛領域ARを変形させずに済む。
なお、かしめ凹部53の開口部分の角度α°は、製品に必要とされる固定強度(仕様)に応じて、任意に設定可能となっている。具体的には、角度α°を小さくすることで、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度は大きくなる。一方、角度α°を大きくすることで、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度は小さくなる。
ただし、角度α°を小さくすれば、貫通孔50と雌ねじ部51との間の網掛領域ARが変形する可能性が高くなる。一方、角度α°を大きくすれば、貫通孔50と雌ねじ部51との間の網掛領域ARが変形する可能性は低くなる。このように、角度α°の大きさと、網掛領域ARの変形量の大きさとの関係は、互いに相反する関係となっている。
上述のように、一対のかしめ凹部53を形成する際の「歪み」は、網掛領域ARに伝達され難くなっている。したがって、DR側駆動レバー16aの長手方向に沿う貫通孔50の中心と雌ねじ部51の中心との間の距離(中心間距離L)、つまりDR側ピボット軸15aとリンク機構(連結ロッド17)との離間距離は、上述のようなかしめ作業の前後で大きく変動することが無い。すなわち、かしめ作業後であっても、DR側駆動レバー16aは設計寸法通りになる。
次に、ワイパ装置14を構成するピボット軸-駆動レバー組立体SA(図3参照)の特性、特に、かしめ凹部53のかしめ量d[mm]と、貫通孔50と雌ねじ部51との中心間距離L[mm]との関係について、図面を用いて詳細に説明する。
なお、図5に示されるグラフの凡例における角度(0°,30°,60°,90°,120°,150°)は、円弧状のかしめ凹部53の開口部分の角度α°(図4参照)のバリエーションを示している。すなわち、本実施の形態では、α°=90°の実線グラフを参照するようにする。
当該グラフを見ると、本実施の形態では、かしめ量d[mm]を増加させても、中心間距離Lの変位量[mm]はそれほど大きく変化しない。具体的には、本実施の形態では、かしめ量dを0.1mmから0.8mmまで変化させた場合でも、中心間距離Lの変位量、すなわち、網掛領域AR(図4参照)の変形量は、-0.02mmから0.04mmの範囲に収まっている。ここで、従前の技術において許容される中心間距離Lの誤差は±0.18mmとなっている。よって、本実施の形態では、当該条件を十分に満たしている。
なお、かしめ量dの大きさを大きくし過ぎると、DR側駆動レバー16aの強度が低下することになる。したがって、製品として耐えられる強度のDR側駆動レバー16aを得るには、かしめ量dを0.6mmに設定するのが望ましい。なお、かしめ量dを0.6mmとした場合には、本実施の形態(α°=90°)では、中心間距離Lの変位量は0.025mm程度に抑えられる。
このように、本実施の形態におけるピボット軸-駆動レバー組立体SA(α°=90°)は、製品として十分に耐えられるものであることが判った。また、本実施の形態では、グラフの傾斜角度(変化の割合)が小さくなっている。そのため、製品精度のばらつきが少なく、歩留まりを向上させることが可能となっている。
これに対し、円弧状のかしめ凹部53の開口部分の角度α°を小さくしていくと、かしめ量dを0.6mmとしたときに、α°=60°では、中心間距離Lの変位量は0.13mmとなった。この数値は、ギリギリで使用可能な中心間距離Lの変位量であって、量産の具合によっては許容範囲を越えてしまうものも出ると考えられる。すなわち、α°=60°では、不合格品が発生することが考えられ、歩留まりの低下を招く虞がある。つまり、α°=60°では、量産には向かないことが判った。
また、α°=30°では、かしめ量dを0.6mmとしたときに、中心間距離Lの変位量は0.22mm(不合格品)となった。さらに、参考までに、α°=0°の従前の技術の場合では、かしめ量dを0.6mmとしたときに、中心間距離Lの変位量は0.30mm(不合格品)となった。すなわち、従前の場合(α°=0°)において、中心間距離Lの変位量を±0.18mm(許容範囲)に抑えるには、かしめ量dを0.25mm程度まで小さくする必要が生じる。これでは、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する固定強度が足りず、使用不能(不合格品)になってしまう。
さらに、上記とは逆に、円弧状のかしめ凹部53の開口部分の角度α°を大きくしていくと、かしめ量dを0.6mmとしたときに、α°=120°では、中心間距離Lの変位量が-0.025mm程度に抑えられた。また、かしめ量dを0.6mmとしたときに、α°=150°では、中心間距離Lの変位量を-0.030mm程度に抑えられた。すなわち、α°=120°,150°においても、本実施の形態と同様に、製品として十分に耐え得るものであることが判った。なお、α°=120°,150°においては、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aに対する若干の固定強度の低下が見られたが、何ら問題が無いことが確認された。
ただし、本実施の形態(α°=90°)と、α°=120°,150°とを比較した場合には、以下に示されるような差を生じ得る。つまり、本実施の形態のかしめ凹部53を成形するかしめポンチTでは、図6の網掛け部分に示されるように、比較的大きな先端部TPとなっている。言い換えれば、α°=120°,150°のように、円弧状のかしめ凹部53の開口部分の角度を大きくしていくに連れて、かしめポンチTの先端部TPは小さくなっていく。
このように、かしめポンチTの先端部TPが小さくなるほど、かしめポンチTの先端部TPに掛かる負荷が大きくなるため、かしめポンチTの寿命は短くなる。よって、かしめポンチTの長寿命化を図るには、先端部TPはなるべく大きい方が良い。このように、本実施の形態(α°=90°)におけるかしめ凹部53の形状は、かしめポンチTの長寿命化を図るためにも有利な形状であると言える。
ここで、かしめポンチTの形状について、図面を用いて詳細に説明する。
図6に示されるように、かしめポンチTは、中空の略円筒形状に形成され、その径方向内側には、DR側ピボット軸15aの第1,第2本体部40,41(図7参照)に摺接される小径内壁部SWが設けられている。これにより、かしめポンチTは、DR側ピボット軸15aに対してがたつくこと無く真っ直ぐに摺接される。
かしめポンチTの長手方向先端側には、DR側駆動レバー16aにかしめ凹部53(図2ないし図4参照)を成形するための先端部TPが設けられている。この先端部TPは、図6の網掛け部分に示されるように、略C字形状に形成され、かつかしめポンチTの長手方向に所定の高さで突出されている。ここで、本実施の形態では、先端部TPの突出高さは、かしめ量dに等しい0.6mmとなっている。
一方、かしめポンチTの長手方向基端側には、かしめ装置の昇降機構を形成する押圧部材(図示せず)に押圧される押圧部PSが設けられている。この押圧部PSには、押圧部材からの大きな荷重が加えられるようになっている。そのため、押圧部PSは、かしめポンチTの長手方向先端側よりも肉厚の環状に形成されている。
次に、以上のように形成されたワイパ装置14の組み立て手順、特に、ピボット軸-駆動レバー組立体SAの組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
図7に示されるように、まず、それぞれの製造工程で製造されたDR側ピボット軸15aと、DR側駆動レバー16aと、を準備する。次いで、DR側ピボット軸15aの第2本体部41(雄ねじ部44)側を、DR側駆動レバー16aの貫通孔50に挿通させる。これにより、図7に示されるように、第1セレーション部42の凹凸部42aに、貫通孔50の凹凸部50aを対向させる。
ここで、DR側ピボット軸15aの第1本体部40(ワッシャ装着溝45)側を、DR側駆動レバー16aの貫通孔50に挿通させることもできるが、第2本体部41の方が第1本体部40よりも短くなっている。そのため、DR側ピボット軸15aの第2本体部41側を、DR側駆動レバー16aの貫通孔50に挿通させた方が、両者の相対移動距離が短くて済む。つまり、組み立て時間の短縮が図れる。
次いで、かしめ装置の昇降機構(図示せず)を駆動して、一対のかしめポンチTを互いに近接するように移動させる。その後、一対のかしめポンチTをさらに移動させて、図中矢印に示されるように、押圧力FでDR側駆動レバー16aの貫通孔50の周囲を押圧する。これにより、一対のかしめポンチTの先端部TPが、DR側駆動レバー16aの貫通孔50の周囲の表面52aおよび裏面52bにそれぞれ食い込んで、当該部分が略C字形状に窪むようにして塑性変形される。よって、DR側駆動レバー16aの表面52aおよび裏面52bにそれぞれかしめ凹部53が形成される。
このとき、貫通孔50に設けられた凹凸部50aの一部(かしめ凹部53が形成された側)が、第1セレーション部42の凹凸部42aに強く押し付けられる。具体的には、貫通孔50の直径寸法が小さくなるように塑性変形される。その結果、貫通孔50の凹凸部50aの略全域が、図中矢印Mに示されるように、第1セレーション部42の凹凸部42aの略全域に強く押し付けられる。これにより、貫通孔50の凹凸部50aと第1セレーション部42の凹凸部42aとが、互いにギヤのように噛み合わされて、十分な固定強度で相対回転不能に固定される。
これにより、ピボット軸-駆動レバー組立体SA(図3および図4参照)の組み立てが完了する。
以上詳述したように、本実施の形態によれば、DR側ピボット軸15aの外周に、DR側駆動レバー16aが固定される第1セレーション部42を設け、DR側駆動レバー16aに、内周が第1セレーション部42に押し付けられる貫通孔50を設け、貫通孔50の周囲に、DR側駆動レバー16aの塑性変形により形成された円弧状のかしめ凹部53を設けている。
これにより、従前のような環状のかしめ凹部に比して、かしめ箇所を少なくすることができる。したがって、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aとリンク機構との間の変形を抑えることができる。
また、円弧状のかしめ凹部53のため、本実施の形態では、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aとリンク機構との間にかしめ凹部を形成していない。したがって、かしめ量dを大きくしても、DR側駆動レバー16aのDR側ピボット軸15aとリンク機構との間の変形が抑えられて、ひいてはDR側ピボット軸15aに対するDR側駆動レバー16aの固定強度を十分にできる。
よって、DR側駆動レバー16aの寸法精度が製品毎にばらつく等の問題を無くすことが可能となり、電気自動車やハイブリッド自動車等の静かな車両にも容易に適用することができる。
また、本実施の形態によれば、円弧状のかしめ凹部53が、貫通孔50のリンク機構が設けられた側とは反対側に設けられているので、DR側駆動レバー16aにおける貫通孔50のリンク機構が設けられた側とは反対側をかしめるだけで、DR側駆動レバー16aをDR側ピボット軸15aに固定することができる。よって、中心間距離L(図4参照)が変位することが抑えられ、かつかしめ荷重を低減することができる。
さらに、本実施の形態によれば、DR側駆動レバー16aの長手方向に延び、かつ貫通孔50の中心を通る線分C(図4参照)を中心に、円弧状のかしめ凹部53が鏡像対称の形状になっているので、中心間距離Lが変位することが抑えられ、かつDR側駆動レバー16aが捻れたりすることも抑えられる。
また、本実施の形態によれば、DR側駆動レバー16aが板状に形成され、DR側駆動レバー16aの表面52aおよび裏面52bに、かしめ凹部53が設けられているので、円弧状のかしめ凹部53であっても、従前のような環状のかしめ凹部と同等かそれ以上の十分な固定強度を得ることが可能となる。
さらに、本実施の形態によれば、第1セレーション部42の外周および貫通孔50の内周に、互いに噛み合わされる凹凸部42a,50aがそれぞれ設けられているので、DR側駆動レバー16aをDR側ピボット軸15aに対して、より十分な固定強度で相対回転不能に固定することが可能となる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、自動車等の車両のフロント側に搭載されたワイパ装置14を示したが、本発明はこれに限らず、大型トラック,鉄道車両,航空機,船舶,建設機械等のワイパ装置にも適用することができる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。