本開示に係る眼科装置の一実施形態としての実施例1の眼科装置10を、図1から図4を用いて説明する。先ず、実施例1の眼科装置10の全体構成を説明する。
眼科装置10は、図1に示すように、本発明の眼科装置の一例としてのレーザ手術装置として構成されており、被検者の被検眼E(図2参照)内の治療部位に治療用のレーザ光L(図2参照)を照射して治療する眼内手術に用いられる。眼科装置10は、テーブル11上に、眼科本体部12と顔支持部13とモニタ14とが設けられて構成されている。眼科本体部12は、被検眼Eに相対されて眼科装置10における眼の検査や観察や測定等を行うもので、実施例1では眼科装置10がレーザ手術装置であることから手術装置本体として構成されている。この眼科本体部12の構成については後に説明する。
顔支持部13は、額当箇所13aと顎受箇所13bとを有し、テーブル11上において上下方向の間隔および位置を調整可能とされている。顔支持部13は、額当箇所13aに額を当接させつつ被検者が顎受箇所13bに顎を載せることで、被検者の顔を固定する。
モニタ14は、テーブル11上で眼科本体部12の側方に配置されており、眼科本体部12に接続されている。モニタ14としては、例えばタッチパネル式の液晶表示装置が用いられる。このモニタ14は、被検者の情報、および眼科本体部12からのレーザ光Lの照射パターン等の各種設定画面を表示する。そして、検者は、モニタ14上の設定画面に対してタッチ操作を行うことにより、眼科装置10(眼科本体部12)の各種設定を行うことができる。
テーブル11の下方には、フットスイッチ15が設けられている。フットスイッチ15は、検者により足で踏まれる操作(押下操作)される操作ペダルであり、眼科本体部12に接続されている。このフットスイッチ15は、眼科本体部12による治療用のレーザ光Lの照射を開始させるための操作が可能とされている。
テーブル11上には、基台16が設けられている。眼科本体部12は、駆動部17を介して基台16に設けられており、駆動部17により基台16に対して前後左右上下に移動可能とされている。駆動部17は、操作レバー18の操作に応じて後述の制御部36(図2参照)の制御の下で、基台16に対して眼科本体部12を移動させる。これにより、被検眼Eに対する眼科本体部12の位置調整が可能となる。
操作レバー18は、基台16に設けられ、基台16から立ち上がりつつ傾倒操作が可能とされている。操作レバー18は、傾倒されると眼科本体部12の前後左右方向への移動操作となり、軸線を回転中心として回転されると眼科本体部12の上下方向への移動操作となる。このため、操作レバー18を傾倒操作および回転操作することにより、眼科本体部12を用いて被検眼Eの治療を行うべく、顔支持部13に支持された被検者の被検眼Eに適合する位置へと眼科本体部12を基台16に対して三次元方向に移動させることができる。操作レバー18では、頂部に方向指示スイッチ40が設けられている。この方向指示スイッチ40の構成に関しては後に説明する。
眼科本体部12は、被検眼Eを照明して被検眼Eを観察しつつ被検眼E(その眼底)内の治療部位に治療用のレーザ光Lを照射することができる。眼科本体部12には、接眼部19が設けられている。接眼部19は、検者が被検眼Eの観察像51等を観察視野領域V内で両眼視することを可能とする(図3参照)。被検眼Eのレーザ手術を行う際、図2に示すように、コンタクトレンズ21が用いられる。コンタクトレンズ21は、検者が手で持った状態で被検眼Eに接触される。コンタクトレンズ21は、後述する照明光学部31からの照明光Iおよびレーザ光照射光学部32からのレーザ光Lを被検眼Eに入射させる。
眼科本体部12は、図2に示すように、照明光学部31と、レーザ光照射光学部32と、観察光学部33と、画像出射光学部34と、撮影光学部35と、を備える。
照明光学部31は、被検者の被検眼Eに照明光Iを入射させる。この照明光学部31は、例えばハロゲンランプ等を用いた照明光源から出射した照明光Iをレンズ等で適宜集光しつつミラー等で被検眼Eへ向けて進行させて、コンタクトレンズ21を経て被検眼Eに入射させる。
レーザ光照射光学部32は、被検眼Eの治療部位を光凝固させる治療用のレーザ光Lと、アライメントするための照準用のレーザ光Lと、を出射可能なレーザ光源を有する。レーザ光照射光学部32は、照準用のレーザ光Lが、治療用のレーザ光Lの照射位置を示すものとしており、照準用のレーザ光Lを用いることで治療用のレーザ光Lの照射位置の設定が可能とされている。レーザ光照射光学部32は、各レーザ光源から出射した各レーザ光Lを、レンズ等で適宜集光しつつミラー等で被検眼Eへ向けて進行させて、コンタクトレンズ21を経て被検眼Eに入射させる。
観察光学部33は、接眼部19による被検眼E等の観察を可能とする。観察光学部33は、照明光学部31からの照明光Iが被検眼Eで反射された反射光Rと、後述するように画像出射光学部34から入射される蛍光眼底画像52等と、を接眼部19の接眼レンズに導く。観察光学部33は、被検眼Eからの反射光R等をビームスプリッタで分割し、その一部を保護フィルタを通して接眼部19の接眼レンズに導く。保護フィルタは、治療用のレーザ光Lを遮蔽するもので、そのレーザ光Lの波長域に対応する光の通過を阻む。このため、検者は、接眼部19の接眼レンズを通して、入射する反射光Rすなわち反射光Rにより形成される被検眼Eの観察像51と、画像出射光学部34からの後述する蛍光眼底画像52等と、を安全に観察できる。このため、接眼部19は、照明光学部31および観察光学部33と協働して、被検眼Eを観察するための観察部として機能する。また、観察光学部33は、ビームスプリッタで分割した反射光R等の他部を撮影光学部35に向けて進行させる。
画像出射光学部34は、被検眼Eに関連する情報を示す眼情報画像を形成して、観察光学部33を通して被検眼Eの観察像51とともに表示させる。画像出射光学部34は、各種画像(画像の像光)を出射することで、接眼部19(その接眼レンズ)を介して各種画像を視認可能(以下では単に画像を形成ともいう)とする画像形成部を有する。この画像形成部は、例えば、反射型液晶パネル(Liquid crystal on silicon)、DMD(Digital Micromirror Device)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、ELディスプレイ(electro luminescence display)、透過型液晶ディスプレイ、または画像形成用のマイクロスキャナ等で構成される。画像形成部は、眼情報画像の一例として、後述する画像データベース23から取得した被検眼Eの蛍光眼底画像52を形成する。蛍光眼底画像52は、被検眼E内の血管53(図3参照)の位置を示す画像である。ここで、眼科装置10では、被検眼E内の血管53への治療用のレーザ光Lの照射を避ける必要があり、検者は、治療用のレーザ光Lを被検眼Eに照射する前に被検眼Eの蛍光眼底画像52を見ることで血管53の位置を確認できる。画像形成部は、眼情報画像として、蛍光眼底画像52(その原画像)の他に、後述するサムネイル画像55や蛍光眼底画像52を基に作成された血管強調画像54等を形成する。
画像出射光学部34は、画像形成部が形成した蛍光眼底画像52等をレンズ等で適宜集光し、ビームスプリッタ等を用いて観察光学部33の光路に合流させて、観察光学部33により接眼部19の接眼レンズに進行させる。このため、検者は、接眼部19を通して、反射光Rにより形成される被検眼Eの観察像51と、画像出射光学部34からの蛍光眼底画像52等と、の合成画像(並列表示または重畳表示)を観察できる。なお、眼科本体部12では、照明光学部31とレーザ光照射光学部32と観察光学部33と画像出射光学部34と撮影光学部35とにおいて、ミラーとして適宜ビームスプリッタを用いることとしてミラーやレンズ等の光学部材を適宜共用して共通の光路を構成してもよい。
撮影光学部35は、被検眼E等の観察画像を取得する。撮影光学部35は、被検眼Eからの反射光Rをミラー等で反射させて撮像素子へ向けて進行させ、その反射光Rをレンズにより撮像素子の受光面に結像させる。その撮像素子は、例えばCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型やCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサが用いられ、受光面に結像された反射光Rすなわち被検眼Eの観察像51を取得して、その観察像51の撮像画像データを後述する制御部36に出力する。
眼科本体部12には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部36が設けられる。制御部36は、接続された記憶部22または内蔵する内部メモリ36aに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、眼科装置10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ36aは、RAM等で構成され、記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。制御部36は、眼科本体部12における測定に必要な光学系の動作部(上述した照明光源、レーザ光源、撮像素子、画像形成部等)が接続され、適宜それらを制御する。制御部36は、モニタ14、フットスイッチ15、駆動部17、操作レバー18および後述する方向指示スイッチ40に接続され、モニタ14(そのタッチパネル)やフットスイッチ15や操作レバー18や方向指示スイッチ40に為された操作や上記のプログラムに従い、眼科本体部12で取得した画像や眼情報をモニタ14に適宜表示させる。眼科装置10では、商用電源から制御部36に電力が供給され、制御部36が眼科本体部12やモニタ14や駆動部17に電力を供給する。
制御部36には、画像データベース23が接続されている。画像データベース23は、被検者(患者)の診療情報等を格納した医療支援用のデータベース(サーバ)であり、一例として株式会社トプコンメディカルジャパンの「IMAGEnetR4」がある。画像データベース23は、被検者の被検眼Eをフルオレセイン蛍光眼底造影検査して得られた複数の蛍光眼底画像52を、被検者の固有識別情報(被検者の氏名及び患者番号等)に関連付けて記憶している。また、画像データベース23は、蛍光眼底画像52(原画像)に基づいて生成された被検眼Eの特徴部分である血管53(図3参照)を強調した血管強調画像54も、元の蛍光眼底画像52に関連付けて記憶している。なお、蛍光眼底画像52や血管強調画像54の生成に関しては、公知技術であるので具体的な説明は省略する。また、血管強調画像54は、制御部36が蛍光眼底画像52(後述するサムネイル画像55を含む)を解析して画像内の特徴部分(血管53)を検出することで生成してもよい。
制御部36は、画像出射光学部34の画像形成部を制御して眼情報画像を形成することで、接眼部19(観察光学部33)による眼情報画像の確認を可能とする。実施例1の制御部36は、画像データベース23から取得した蛍光眼底画像52や血管強調画像54のデータ応じて画像形成部を制御することで、蛍光眼底画像52や血管強調画像54を形成する。また、実施例1の制御部36は、画像データベース23から取得した蛍光眼底画像52のデータ応じて狭い領域に形成するように画像形成部を制御することで、蛍光眼底画像52を縮小したサムネイル画像55を形成する。これらの眼情報画像は、上記したように観察光学部33により接眼レンズに導かれることで、検者が接眼部19を介して確認することが可能となる。
この接眼部19を介する観察視野領域V内での眼情報画像の確認を可能とした一例を図3に示す。図3では、右側に大きく被検眼Eの観察像51を表示させるとともに、その左側に2つのサムネイル画像55を上下に並べて表示させている。この例では、観察光学部33は、接眼部19の観察視野領域V内において、被検眼Eの観察像51を右側に偏らせて表示させるものとしている。
制御部36は、画像データベース23から取得した被検眼Eの複数の蛍光眼底画像52をそれぞれ縮小してサムネイル画像55(そのデータ)を生成する。そして、制御部36は、生成した複数のサムネイル画像55の中の任意の個数(図3の例では2つ)のサムネイル画像55を、画像出射光学部34の画像形成部で形成させる。このとき、制御部36は、被検眼Eの観察像51の左側で重ならない位置で2つのサムネイル画像55が上下に並ぶように、画像形成部を駆動する。これにより、観察視野領域V内では、2個のサムネイル画像55と観察像51とが並んで同時に表示される。なお、表示されるサムネイル画像55の数は適宜設定することができる。また、サムネイル画像55は、血管強調画像54に基づくものであってもよい。
また、制御部36は、観察視野領域V内に表示したものの他にサムネイル画像55が存在している場合、画像出射光学部34の画像形成部で切替アイコン56の像を形成して表示させる。切替アイコン56は、表示するサムネイル画像55の切り替えの操作を可能とするもので、この例では2つのサムネイル画像55の上方と下方とに表示された三角形状の記号としている。これにより、検者は表示されている以外にもサムネイル画像55があることと、表示の切り替えが可能であることと、を認識できる。
さらに、制御部36は、画像出射光学部34の画像形成部でカーソル57の像を形成して観察視野領域V内に表示させる。カーソル57は、後述する方向指示スイッチ40での指示位置を示すもので、観察視野領域V内の任意の位置に表示される。カーソル57は、実施例1では図3に示すように矢印としているが、指し示す箇所が解るものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
制御部36は、カーソル57により選択されたサムネイル画像55を拡大した画像を観察視野領域V内に表示させることができる。この拡大した画像は、蛍光眼底画像52の原画像(そのデータ)を用いてもよく、サムネイル画像55(そのデータ)を拡大したものでもよい。この拡大した画像(蛍光眼底画像52)を表示することで、検者は、より詳細な情報(治療部位や血管53の位置等)を確認できる。
制御部36は、蛍光眼底画像52を観察像51に重畳させることができる。制御部36は、被検眼Eの観察像51と、蛍光眼底画像52と、を解析する。そして、制御部36は、観察像51が示す被検眼Eの各部(黄斑、血管53等)と、蛍光眼底画像52が示す被検眼Eの各部と、を一致させるように、画像出射光学部34の画像形成部の制御により形成する蛍光眼底画像52の位置および大きさを設定する重畳制御を行う。この重畳制御の具体的な方法としては、位相限定相関法、パターンマッチング法、及びテンプレートマッチング法等の公知の手法が用いられる。このように蛍光眼底画像52を観察像51に重畳させて表示することで、被検眼Eにおける各部の位置を容易にかつ適切に把握することができる。
制御部36は、蛍光眼底画像52に基づく血管強調画像54を表示させることができる。制御部36は、蛍光眼底画像52に対応する血管強調画像54を画像データベース23から取得し、その血管強調画像54を表示している蛍光眼底画像52の大きさおよび位置に合わせて、蛍光眼底画像52に替えて表示する。このように血管強調画像54を表示することで、検者は、被検眼E内の血管53の位置を容易にかつより適切に把握することができる。また、制御部36は、上記した重畳制御を、蛍光眼底画像52に替えて血管強調画像54を観察像51に重畳させるものとしてもよい。この場合、検者は、被検眼E内の血管53の位置をより容易にかつ確実に把握することができる。
この眼科装置10では、図4に示すように、操作レバー18に方向指示スイッチ40が設けられている。方向指示スイッチ40は、操作レバー18の先端部18aに形成された設置凹所18bに設けられている。方向指示スイッチ40は、設置凹所18bにおいて、操作レバー18に対して傾倒操作することが可能とされたレバー部41を有する。このため、設置凹所18bは、レバー部41の傾倒操作を可能とする大きさとされている。また、レバー部41は、実施例1では、操作レバー18に対して押下操作することが可能とされている。この方向指示スイッチ40は、制御部36に接続されており(図2参照)、レバー部41に為された傾倒操作および押下操作を示す信号を制御部36に出力する。
制御部36は、方向指示スイッチ40が何らかの操作をされると、画像出射光学部34の画像形成部を制御して観察視野領域V内にカーソル57を表示させる。そして、制御部36は、方向指示スイッチ40のレバー部41が傾倒操作されると、その傾倒方向に応じてカーソル57の表示位置を変更させる。ここで、方向指示スイッチ40(レバー部41)の傾倒操作は、操作レバー18(その設置凹所18b)に対するものであるので、操作レバー18が傾倒操作されているか否かに拘わらず、操作レバー18への傾倒操作から独立して行うことができる。このため、検者は、方向指示スイッチ40(レバー部41)を傾倒操作することで、観察視野領域V内に表示されたカーソル57を自在に移動させることができる。
また、制御部36は、方向指示スイッチ40のレバー部41が押下操作されると、その時点でカーソル57が表示されている位置が選択されたものとして、その選択に応じた制御を行う。この制御は、例えば、カーソル57がサムネイル画像55上にある場合には表示するそのサムネイル画像55を拡大した画像(蛍光眼底画像52等)を表示するものとし(拡大制御)、カーソル57が切替アイコン56上にある場合には表示するサムネイル画像55を切り替えるものとする(切替制御)。また、この制御は、例えば、カーソル57がサムネイル画像55上にある場合には、そのサムネイル画像55を拡大した画像である蛍光眼底画像52等を観察像51に重畳させるもの(重畳制御)としてもよい。さらに、この制御は、例えば、カーソル57がサムネイル画像55上にある場合には、そのサムネイル画像55が示す蛍光眼底画像52に基づく血管強調画像54を表示させるもの(強調制御)としてもよい。この制御は、例えば、カーソル57がサムネイル画像55上にある場合には、そのサムネイル画像55が示すものを変更する(例えば蛍光眼底画像52に基づくサムネイル画像55を表示している場合には血管強調画像54に基づくサムネイル画像55とする)もの(変更制御)としてもよい。
ここで、制御部36は、上記した例では、カーソル57がサムネイル画像55上にある場合、拡大制御と重畳制御と強調制御と変更制御とのいずれの操作が為されたのかを見分ける必要がある。この場合、例えば、押下操作の態様(長押し、二回押し等)に応じて各制御を見分けるものとしてもよく、観察視野領域V内に各制御を選択するためのアイコンを表示させてもよい。
また、制御部36は、観察像51を表示している状態において、観察像51とは重ならない位置に操作画面を表示させるものとしてもよい。この操作画面は、上記した各制御(操作)の選択を可能としたり、更に他の操作を可能としたりするもので、選択可能な各操作の一覧を示す複数のアイコンが表示されているものとする。この選択可能な各操作としては、上記した操作に加えて、例えば、眼底へのレーザ光Lの照射パターンの選択がある。この照射パターンは、複数のレーザ光Lの照射位置が所定の間隔、個数および形状で並べられたもので、血管53を避けつつ眼底の任意の領域へのレーザ光Lの照射を可能とするために様々なものが設定されている。また、選択可能な各操作としては、例えば、蛍光眼底画像52等の表示位置を上下左右に移動させることや、表示した蛍光眼底画像52等を右回りまたは左回りに回転させることや、観察像51等の明るさを変更することや、観察像51とその他の画像(蛍光眼底画像52等)とのコントラスト差を変更することや、蛍光眼底画像52等の各種画質の調整(ガンマ調整、及びシャープネス調整)を行うことがあげられる。
制御部36は、撮影光学部35から入力された観察像51の撮像画像データを用いて、モニタ14に観察像51を表示させることができる。また、制御部36は、画像データベース23から取得した被検眼Eの複数の蛍光眼底画像52や、それらに基づく上記した各サムネイル画像55および各血管強調画像54を、モニタ14に表示させることができる。さらに、制御部36は、接眼部19の観察視野領域V内に表示させる切替アイコン56やカーソル57や操作画面等をモニタ14に表示させることができ、方向指示スイッチ40での傾倒操作および押下操作によるカーソル57の移動や切替アイコン56等の選択を行うことができる。このため、検者は、接眼部19に替えてモニタ14を用いることで、接眼部19と同様に被検眼E等を観察できるとともに被検眼Eの眼情報画像を確認することができる。このことから、モニタ14は、被検眼Eを観察するための観察部として機能し、モニタ14における表示領域が観察視野領域Vとなる。
次に、眼科装置10を用いた被検眼Eのレーザ手術の流れを説明する。
先ず、眼科装置10の電源をオンして、タッチパネル式のモニタ14を介して被検者の氏名や患者番号等を入力する。すると、制御部36は、入力された氏名や患者番号等に対応する複数の蛍光眼底画像52および血管強調画像54を画像データベース23から取得する。
その後、検者は、顔支持部13の額当箇所13aおよび顎受箇所13bを位置調整し、椅子に座らせた被検者の額を額当箇所13aに宛がわせるとともに顎を顎受箇所13bに載せる。検者は、コンタクトレンズ21を被検者の被検眼Eに宛がいつつ、操作レバー18の傾倒操作および回転操作による眼科本体部12の位置調整を行い、被検眼Eと眼科本体部12との位置関係を調整する。この後、照明光学部31からの照明光Iがコンタクトレンズ21を経て被検眼Eに入射され、その被検眼Eからの反射光Rの一部がコンタクトレンズ21を経て接眼部19の接眼レンズに導かれる。これにより、検者は、接眼部19を通して、観察像51を確認することができる。このとき、反射光Rの他部は、撮影光学部35の撮像素子に結像されて被検眼Eの観察像51として取得され、その観察像51の撮像画像データが制御部36に出力される。
制御部36は、画像データベース23から取得した複数の蛍光眼底画像52からサムネイル画像55を生成し、生成した複数のサムネイル画像55のうちの所定の個数(図3の例では2個)のサムネイル画像55を画像出射光学部34で形成させる。この各サムネイル画像55は、観察光学部33を通して接眼部19の接眼レンズに導かれる。これにより、接眼部19の観察視野領域V内において観察像51と各サムネイル画像55とが合成表示(並列表示)され、検者が観察像51と各サムネイル画像55とを同時に確認できる。
ここで、眼科装置10は、電源がオンされた後にレーザ光照射光学部32を待機モードから作動モードに切り替えることができ、作動モードにおいてレーザ光照射光学部32から照準用のレーザ光Lの出射を開始させる。これにより、被検眼Eには、レーザ光照射光学部32からの照準用のレーザ光Lが、コンタクトレンズ21を経て被検眼Eへ入射される。検者は、被検眼Eで反射されてコンタクトレンズ21を経た照準用のレーザ光Lを、観察光学部33を通して接眼部19で観察しながら、操作レバー18の操作により眼科本体部12の位置調整を行って、照準用のレーザ光Lの照射位置を被検眼E内の治療部位に合わせる。
このとき、検者は、一方の手でコンタクトレンズ21を持ちつつ、他方の手で操作レバー18を傾倒操作している。ところが、眼科装置10では、操作レバー18の先端に方向指示スイッチ40が設けられているので、検者は、上記した状態を維持しつつ観察視野領域V内での任意の位置の選択の操作を行うことができる。このため、検者は、方向指示スイッチ40を適宜傾倒操作および押下操作することで、接眼部19の観察視野領域V内に表示された各サムネイル画像55の中から所望の蛍光眼底画像52を選択したり、所望の血管強調画像54を選択したり、観察像51に蛍光眼底画像52または血管強調画像54を重畳させたりできる。これにより、検者は、一方の手でコンタクトレンズ21を持ちつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している状態でも、被検眼E内の血管53を確実に避けるように照準用のレーザ光Lの位置を決定することができる。
検者は、照射位置が決定すると、フットスイッチ15を押下操作する。すると、眼科装置10は、レーザ光照射光学部32から治療用のレーザ光Lを出射させ、この治療用のレーザ光Lがコンタクトレンズ21を経て被検眼E内の治療部位に照射される。これにより、眼科装置10による被検眼Eの眼内手術が完了する。
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置10は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置10は、操作レバー18の先端部18aに操作レバー18に対して傾倒操作が可能とした方向指示スイッチ40を設け、観察部(実施例1では接眼部19またはモニタ14)の観察視野領域V内に表示されたカーソル57を方向指示スイッチ40の傾倒操作により移動可能としている。このため、眼科装置10を用いる検者は、一方の手で何かをしつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している状態でも、その他方の手で操作レバー18に対して方向指示スイッチ40を傾倒操作して、観察視野領域V内のカーソル57を任意の位置に移動させることができる。また、眼科装置10を用いる検者は、接眼部19を覗いていることで、操作位置等の確認が出来ない状態であっても、操作レバー18の先端に方向指示スイッチ40が設けられているので、操作レバー18を持つ手で方向指示スイッチ40を容易に傾倒操作することができる。これにより、眼科装置10は、操作性を著しく向上させることができる。
眼科装置10は、方向指示スイッチ40が操作レバー18に対して押下操作することが可能とされ、その押下操作によりカーソル57が表示された位置を選択させる。このため、眼科装置10を用いる検者は、一方の手で何かをしつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している状態でも、方向指示スイッチ40により観察視野領域V内で選択したい位置までカーソル57を移動させて押下操作することで、容易に任意の画像や操作を選択することができる。
眼科装置10は、観察視野領域Vに被検眼Eに関連する情報を示す複数の眼情報画像(実施例1では、蛍光眼底画像52、血管強調画像54、サムネイル画像55)を表示させ、方向指示スイッチ40でカーソル57を移動させることで眼情報画像を選択することができる。このため、眼科装置10を用いる検者は、所望の眼情報画像を容易に見付けて確認することができる。
したがって、本開示に係る眼科装置としての実施例2の眼科装置10は、操作レバー18を傾倒操作しつつ傾倒操作している手で観察視野領域V内での任意の位置の選択の操作を行うことができる。
次に、本開示の一実施形態である実施例2の眼科装置10Aについて、図5を用いて説明する。眼科装置10Aは、実施例1の眼科装置10から構成の一部を変更したものである。眼科装置10Aは、基本的な概念および構成が実施例1の眼科装置10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
実施例2の眼科装置10Aは、図5に示すように、操作レバー18Aの先端部18aの設置凹所18bにおいて、方向指示スイッチ40を取り囲んで押下スイッチ42が設けられている。この押下スイッチ42は、設置凹所18bに内接する筒状とされ、内側で方向指示スイッチ40のレバー部41の傾倒操作を可能としている。押下スイッチ42は、操作レバー18に対して押下操作することが可能とされている。この押下スイッチ42の押下操作は、方向指示スイッチ40(その操作)に何らの影響を与えないものとされている。押下スイッチ42は、制御部36に接続されており、為された押下操作を示す信号を制御部36に出力する。
制御部36は、押下スイッチ42が押下操作されると、それに応じた制御を行う。その制御は、例えば、フットスイッチ15の機能を替わりに行うものであってもよく、実施例1でレバー部41の押下操作で行える一部の機能を分担するものであってもよく、他の機能であってもよい。ここで、押下スイッチ42の押下操作は、操作レバー18(その設置凹所18b)に対するものであるので、操作レバー18が傾倒操作されているか否かに拘わらず、操作レバー18への傾倒操作から独立して行うことができる。また、押下スイッチ42の押下操作は、方向指示スイッチ40(その操作)に何らの影響を与えないものであるので、方向指示スイッチ40への傾倒操作および押下操作から独立して行うことができる。
実施例2の眼科装置10Aは、基本的に実施例1の眼科装置10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
それに加えて、眼科装置10Aは、操作レバー18において、方向指示スイッチ40を取り囲みつつ操作レバー18に対して押下操作することが可能とされた押下スイッチ42が設けられている。このため、眼科装置10は、一方の手で何かをしつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している状態でも、その他方の手で操作レバー18に対して方向指示スイッチ40を傾倒操作等できるとともに、操作レバー18に対して押下スイッチ42を押下操作することができる。これにより、眼科装置10の操作性を著しく向上させることができる。
したがって、本開示に係る眼科装置としての実施例2の眼科装置10Aは、操作レバー18Aを傾倒操作しつつ傾倒操作している手で観察視野領域V内での任意の位置の選択の操作を行うことができる。
以上、本開示の眼科装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、各実施例では、眼科装置10、10A(眼科本体部12)がレーザ手術装置(手術装置本体)として構成されていた例を記載している。しかしながら、眼科装置は、被検眼Eに対する眼科本体部(12)の位置の調整のために傾倒操作される操作レバー(18)を有するものであって、観察部の観察視野領域(V)内での選択が求められるものであれば、被検眼Eの眼情報を取得するものでもよく、被検眼Eを観察するものでもよく、各実施例の構成に限定されない。このような例としては、例えば、手術用顕微鏡、眼底カメラ、OCT(Optical Coherence Tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)、眼軸長計、スリットランプ、レフラクトメータ、ケラトメータ、トノメータ、スペキュラマイクロスコープ、およびレーザ手術装置を含めたこれらの複合機等にも本発明を適用できる。
ここで、例えば、眼科装置10、10A(眼科本体部12)が被検眼Eの眼特性を取得する眼特性測定装置として構成されている場合には、操作レバー18の方向指示スイッチ40を、被検眼Eの眼特性の取得のための操作に用いることができる。この眼特性測定装置は、眼屈折力(球面屈折力・円柱屈折力・乱視軸方向の測定)を測定するレフモードと、被検眼Eの角膜の形状(角膜曲率半径、角膜乱視軸方向、角膜屈折力の測定)を測定するケラトモードと、を実行することが可能とされている。なお、このような眼特性測定装置の構成に関しては、公知であるので説明は省略する。この眼特性測定装置(その制御部(26))は、図6に示すように、観察部の観察視野領域V内に、被検眼Eの前眼部(前眼部像)等を表示させるとともに、選択(切替)操作を可能するアイコンとしての各種記号(符号61~73参照)を表示させる。この表示では、測定した眼屈折力に関する各数値や、他覚測定により測定した眼屈折力に関する各数値を併せて示すものとしてもよい。
図6の例では、各種記号として、上下動記号61と移動終了記号62と測定モード記号63と白内障記号64と固視標記号65とターゲット像記号66と印刷実行記号67と測定値クリア記号68と角膜直径記号69と本体部移動記号71とスタート記号72とモード切換記号73とが設定されている。上下動記号61は、顎受箇所13bを上下動させるもので、移動終了記号62は、その移動の終了の合図に用いる。測定モード記号63は、レフモードと、ケラトモードと、それらの双方を連続して実行するレフ・ケラトモードと、の中からいずれかを選択できる。白内障記号64は、白内障の被検眼Eの測定を容易にでき、固視標記号65は、固視標の明るさを選択できる。ターゲット像記号66は、記憶させたターゲットの表示上での観察を可能とし、印刷実行記号67は、表示させている画面、もしくは表示させている表示内容(測定結果)を、印刷して出力させる。測定値クリア記号68は、測定データをクリアするもので、角膜直径記号69は、角膜直径測定モードにする。本体部移動記号71は、眼科本体部12を前後に移動させるもので、スタート記号72は、測定を開始するもので、モード切換記号73は、オートモードとマニュアルモードとを切り換える。
図6の例では、カーソル57を併せて表示し、方向指示スイッチ40(レバー部41)への傾倒操作に応じてカーソル57を移動させる。そして、方向指示スイッチ40が押下操作されると、その時点でカーソル57が表示されている位置の各種記号(符号61~73参照)が選択されたものとして、各種記号に設定された動作を行う。このため、図6の例では、操作レバー18の方向指示スイッチ40で、被検眼Eの眼特性の取得のための操作ができる。これにより、例えば、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、被検眼Eの眼特性の取得のための操作が可能となる。
また、例えば、眼科装置10、10A(眼科本体部12)がOCTとして構成されている場合には、操作レバー18の方向指示スイッチ40を、被検眼Eの眼底(後眼部)における断層像(測定画像)を取得するための基準位置の設定に用いることができる。なお、OCTの構成に関しては、公知であるので説明は省略する。OCT(その制御部(26))は、断層像を形成するための測定光の走査態様(スキャンパターン)として、例えば、横スキャン、縦スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャン等が設定されている。そして、OCTは、測定光の走査態様の基準位置の設定が可能とされている。この基準位置は、被検者(被検眼E)が適切な方向を見ている場合には中心位置とすることで適切に断層像を取得できるが、適切な方向を見ていない場合には適切な断層像の取得が困難となる。このため、基準位置の設定(位置調整)が必要となる場合がある。このため、OCTでは、方向指示スイッチ40を基準位置の設定に用いるものとすることが考えられる。
この例として、OCTは、例えば、図7に示すように、放射スキャン(ラジアルスキャン)を行うものとして、観察部の観察視野領域V内に調整のための画面を表示させる。この表示では、放射スキャンの態様が中央に示されるとともに、その上下左右に位置調整のための位置調整アイコン(81~84)と、位置の変更をリセットするためのリセットアイコン85と、が示されている。加えて、カーソル57を併せて表示し、方向指示スイッチ40(レバー部41)への傾倒操作に応じてカーソル57を移動させる。そして、方向指示スイッチ40が押下操作されると、その時点でカーソル57が表示されている位置の各種アイコン(符号81~85参照)が選択されたものとする。また、方向指示スイッチ40が押下操作された時点でカーソル57が表示されている位置が放射スキャンの態様を示す範囲内である場合、その位置が基準位置として選択されたものとする。このため、図7の例では、操作レバー18の方向指示スイッチ40で、断層像を取得するための基準位置を設定(調整)できる。これにより、例えば、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、断層像を取得するための基準位置を設定の操作が可能となり、適切な断層像の取得が可能となる。
なお、図7では、放射スキャンにおける基準位置の設定の例を示したが、他の走査態様における基準位置の設定であっても同様の表示で行うことができる。この他の走査態様の一例を図8に示す。図8の例では、十字スキャンの一例として5つのラインを十字状にクロスさせた5クロスラインを行う場合における表示を示している。この表示では、5クロスラインの態様が中央に示されるとともに、その上下左右に位置調整アイコン(81~84)と、位置の変更をリセットするためのリセットアイコン85と、が示されている。それに加えて、図8の例では、5クロスラインを回転させるための回転アイコン86、87が示されている。この例でも、方向指示スイッチ40(レバー部41)への傾倒操作に応じてカーソル57を移動させ、押下操作された時点でカーソル57が表示されている位置の各種アイコン(符号81~87参照)が選択されたものとする。また、方向指示スイッチ40が押下操作された時点でカーソル57が表示されている位置が5クロスラインの態様を示す範囲内である場合、その位置が基準位置として選択されたものとする。このため、図8の例では、例えば、一方の手で被検者を開瞼させつつ他方の手で操作レバー18を傾倒操作している場合であっても、断層像を取得するための基準位置を設定の操作が可能となり、適切な断層像の取得が可能となる。
なお、図7および図8では、各種アイコン(符号81~87参照)を選択することで、基準位置の設定を行うものとしていたが、断層像を取得するための基準位置を設定の操作を可能とするものであればよく、図7および図8の例に限定されない。また、上記した図7および図8の例のようにOCTで基準位置の設定を可能な構成とする場合、実施例2の操作レバー18Aを用いるものとして、押下スイッチ42の押下操作をOCTによる撮影を開始するための操作とすることで、操作レバー18Aを傾倒操作している他方の手で、上記した基準位置の設定と断層像の取得の開始とを容易に行うことができる。
また、各実施例では、方向指示スイッチ40の押下操作が可能とされていたが、傾倒操作のみができるものとしてもよい。この場合、例えば、カーソル57が所定時間を超えて停止している場合にカーソル57が表示されている位置が選択されたものとしてもよく、カーソル57が合わせられたら選択の有無を確認するアイコンを表示しそのアイコンの表示位置に移動させたカーソル57により選択を判断してもよい。
さらに、方向指示スイッチ40は、図4および図5に示すように構成されている。しかしながら、方向指示スイッチ40は、傾倒操作により観察部の観察視野領域V内に表示されたカーソル57を移動させるものであって、操作レバー18の先端部18aに任意の位置の選択の操作が可能に設けられていればよく、実施例1の構成に限定されない。この他の例として方向指示スイッチ(40)は、例えば、360度いずれの方向であっても回転操作が可能なトラックボールで構成することや、一方向の回転操作が可能なホイールで構成することが考えられる。これらの場合であっても、方向指示スイッチの押下操作を可能とすることができる。