図1から図22は、第一実施形態に係るもので、図1は試薬ディスク(以下、試薬容器ホルダ、ないしドラムと称することがある)を含む自動分析装置の平面図、図2は自動分析装置の斜視図である。
図3、図4、図5はチップラック装填手段の斜視図、図6はチップラック装填手段の平面図、図7は図3におけるA-A断面図を示している。図8は図3におけるB-B断面図、図9はチップラック装填手段に設けられたチップラック移動方向転換手段の構成を示す分解斜視図、図10から図12はチップラック装填手段の動作を説明する概略A-A断面図である。
図1および図2に示す本実施形態に係る自動分析装置1において、鉛直軸のまわりに回転自在に支持された円筒形の試薬ディスク2の外周壁の内側に沿って、複数の試薬容器(以下、試薬コンテナ、試薬ボトル、ないし単にボトルと称する場合がある)を収納し、それぞれの試薬ボトル3から所定の試薬を所定量だけ、分注ピペットによって吸引して、反応容器に分注された血液や尿といった生物学的サンプルに供給して分析する機能を備える。自動分析装置1には、例えば後方に向けてヒンジで開閉可能に支持された、可動部分を覆う安全カバー4が設けられている。安全カバー4は図示しない例えばソレノイドなどによる所謂インターロックが設けられており、自動分析装置1の動作中はソレノイドに通電することによって閂をかけ、安全カバー4を閉じた状態に保持する構成である。自動分析装置1の停止中はソレノイドへの通電を解除することで安全カバー4は開放可能となるので、操作者が試薬ボトル3を交換することができる。
分析を行うサンプル5aは、ベルトコンベヤやラックハンドラ等のサンプル搬送手段5によって自動分析装置1内を移動し、サンプルを分注する分注ピペットを備えたサンプル分注手段6まで搬送されて分注される。
複数のサンプル分注チップと反応容器は、サンプル分注チップ/反応容器供給手段7(以降、チップラックと称することがある)に載置された状態で自動分析装置1内に供給される。
自動分析装置1は、前面に設けられた前面開口20を経由して、閉止位置から全開位置まで水平移動可能に支持され、1つないし複数のチップラック7を載置可能な引出し21を備えた、チップラック装填手段22を備える。引出し21の全開位置においてチップラック載置台24にチップラック7を載置した後、引出し21を後方に押して閉じることにより、チップラック7を前面開口20を介して自動分析装置1に供給することができる。ここで、閉止位置から全開位置までの開き量は、例えば400mmから500mm程度であり、引出し21全開時に、載置されたチッブラック7の取り出し取付けが容易に行える。
反応容器はチップラック7からサンプル分注チップ/反応容器搬送手段8によって一つずつ把持された後、上昇して、インキュベータ9(培養ディスクと称することがある)へ移動させる。サンプル分注チップ10はチップラック7からサンプル分注チップ/反応容器搬送手段8によって一つずつ把持された後、上昇してサンプル分注チップバッファ11まで移動させる。
このような移動を可能とするため、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8は、X軸(左右方向)、Y軸(前後方向)およびZ軸(上下方向)方向に移動可能に構成されており、その移動範囲としては、反応容器廃棄孔12、サンプル分注チップバッファ11、反応溶液撹拌手段13、チップラック7およびインキュベータ9の一部の上方、の範囲を移動可能に構成されている。
サンプル分注チップバッファ11は、複数のサンプル分注チップ10を一時的に載置するバッファであり、サンプル分注手段6はサンプル分注チップバッファ11の上部に移動して、サンプル分注チップ10のいずれか1つを把持する。
鉛直の中心軸のまわりに回転自在に軸支された円板状のインキュベータ9は、複数の反応容器14を外周近傍の円周上に係止する構成であり、インキュベータ9を回転することによって各々の反応容器14を所定位置まで移動させることができる。
次にサンプル分注手段6はサンプルの上部領域に移動し、サンプル分注チップ10の内部にサンプルを吸引した後、インキュベータ9上の反応容器14の上部領域へ移動し、サンプルをサンプル分注チップ10内部から反応容器14内に排出する。この後、サンプル分注手段6は、サンプル分注チップ/反応容器廃棄孔12の上部領域に移動し、サンプル分注チップ10を孔の内部に落下して廃棄する。
鉛直の中心軸のまわりに回転自在に軸支された円筒状、かつ内側を空洞とした試薬ディスク2は、内側空洞の外周壁に沿って複数の試薬ボトル3を放射状に保持するスロットを形成しており、試薬ディスク2を回転することで、各試薬ボトル3を円周上の所定位置へ移動させる。なお、試薬ボトル3の一部には、撹拌のための磁気粒子を多数含んだ試薬も含まれる。試薬ボトル3を一定の温度に制御するために、試薬ディスク2は断熱機能を有する。
試薬ディスク2の上面には、試薬ボトル3の試薬ディスク2内へのセット、および試薬ディスク2からの取り出しを行う試薬ボトル装填口23が設けられている。また、試薬ボトル装填口23には図示しない開閉式の試薬ボトル装填口フタが設けられており、さらに図示しないソレノイド等を用いたインターロックが設けられており、安全カバー4と同様、自動分析装置1の動作中にはロックされて閉じた状態であり、自動分析装置1の停止中には解除して開閉可能となる構成である。
試薬分注ピペット15は、試薬ボトル3内の試薬を吸引して所定の位置まで移動できるよう、移動可能に構成されている。まず、試薬ディスク2上の所定の種類の試薬の上部領域へ試薬分注ピペット15が移動して所定の量の試薬を吸引した後、インキュベータ9上の所定の反応容器14の上部領域へ移動して試薬を反応容器14内に排出する。
試薬ディスク2の上部には、試薬の撹拌手段16が設けられている。この撹拌手段16には、鉛直軸のまわりに回転可能な磁気粒子攪拌アーム(スティラーとも称される)が設けられている。この磁気粒子攪拌アームは、磁気粒子を含んだ攪拌するべき試薬が入っている試薬ボトル3の上部領域へ移動し、磁気粒子攪拌アームの下端に設けられた例えばパドル状ないし螺旋状の磁気粒子攪拌手段を試薬内に下降させ、この磁気粒子攪拌手段を回転させることによって磁気粒子溶液を攪拌する。溶液内の磁気粒子が自然沈殿しないようにするために、磁気粒子攪拌アームは、試薬が分注される直前に磁気粒子を攪拌する。攪拌後、磁気粒子攪拌アームは、試薬ボトル3の上部まで上昇した後、洗浄液が入った洗浄手段17の上部領域へ移動し、洗浄液内に降下した後、磁気粒子攪拌手段を回転させ、この攪拌手段に付着している磁気粒子を取り除く。
サンプルと所定の試薬を分注してから所定の反応時間が経過した後に、反応溶液が形成される。この反応溶液を反応溶液吸引ノズル18によって反応容器14から吸引し、さらに検出手段19へ供給する。この検出手段19は反応溶液を分析する。
次に、分析された反応溶液はサンプル分注チップ/反応容器搬送手段8によってサンプル分注チップ/反応容器廃棄孔12の上部領域まで移動され、サンプル分注チップ10をサンプル分注チップ/反応容器廃棄孔12内に廃棄する。
図3乃至図5は、チップラック装填手段22の斜視図である。
<チップラック形状>
チップラック7は、略直方体であって底面が開放された薄肉構造であり、上面には複数のサンプル分注チップおよび反応容器が所定の位置に載置可能な小穴が設けられており、サンプル分注チップおよび反応容器は一つずつ上方に抜去可能な構成である。チップラック7の開口した底面の四方周囲は、薄肉の縁取りが外側に向けて凸したフランジ部25となっている。
上面とフランジ部25との間に設けられた左面と右面と前面と後面とは、上面に近接するほど間隔が狭くなるよう先細のテーパ状となっており、チップラック7を樹脂で成型する際の抜きテーパとなる。
チップラック装填手段22は、上面開口26を備えた上板27と、前面開口20を備えた前板28と、右側板29と左側板30と底板31と後板32と、を備えた筐体33を備えている。チップラック装填手段22の前面は前後方向に開閉可能な引出し21の前面を構成する扉体34とし、全体として一つのモジュールとして構成されている。
引出し21は、筐体33の左右側面の内側に設けられた一対の伸縮自在な引出しレール35によって支持され、全開位置と全閉位置との間を前後方向に移動自在に支持されている。
扉体34は図示しない例えばソレノイドなどによる所謂インターロックが設けられており、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8の動作中は、ソレノイドに通電することによって閂をかけ、扉体34を閉じた状態に保持できる構成である。
引出し21には、チップラック7を載置するチップラック載置台24が設けられており、詳細は後述するが、引出し21に対して前後方向および上下方向に移動可能に支持されており、引出し21の前後方向への移動と連動して上下動作する構成である。
図3はチップラック7を装填した状態を示している。図4はチップラック装填手段22から扉体34を前方に引き出して、引出し21を全開した状態を示している。図4に示すように、チップラック7は、扉体34を引出した際には筐体33の前面に設けられた前面開口20から引出し21に設けられたチップラック載置台24を介して引き出され、図5に示すように使用者がチップラック7を交換可能に構成されている。なお、本実施形態において、引出し21に設けられたチップラック載置台24には前後方向に2式のチップラック7が載置可能としている。
図3に示す引出し21を閉じた状態から引出し21を前方に開くと、引出し21の開き動作と連動してチップラック7は上面開口26から下降し、チップラック7に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器の上端が前面開口20の上端よりも低い位置まで下降した後、引出し21とともに前面開口20から前方に引き出されて図4に示す全開状態に至る。
図4に示す引出し21を全開状態から引出し21を後方に閉じると、チップラック7は引出し21とともに前面開口20から筐体33内部に押し込まれる。その後、引出し21の後方への閉じ動作と連動してチップラック7は上昇して、チップラック7上面に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器の上端が上面開口26から露出し、ないし上面開口26よりも高い位置まで上昇して位置決めされ、セットされる。
したがって、サンプル分注チップないし反応容器を、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が確実に把持して上方に搬送しやすく、信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
すなわち、引出し21を前後方向に手動で移動して開閉する動作と連動して、チップラック7は上下方向にも移動するので、操作者は単に引出し21を前後方向に移動するだけでよく、チップラック7を上下動作するのに特段の操作は必要ではなく、またさらにチップラック7を上下方向に移動するための特段の移動機構も要さないので、構造が簡素であり、操作性の良好な自動分析装置を提供できる。
引出し21は前面開口20から出入りする構成なので、引出し21を開閉操作してチップラック7を交換するには安全カバー4を閉じたままでもよく、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が動作していなければ、自動分析装置1は動作中であってもよい。
ここで、サンプル分注チップと反応容器は、一例として直径が5~6mm程度の樹脂製の軽量なものなので、引出しを閉じてチップラック7をセットする際に衝撃が加わると、サンプル分注チップと反応容器が跳ね上がってチップラック7から飛び出してしまう場合がある。したがって、引出し21を閉止する際には、急激に閉じるのではなく、前後方向にも、上下方向にも、徐々に減速しつつスムーズに停止する移動特性が望ましい。
さらに、チップラック7を供給するときには、引出し21を開いてチップラック7をチップラック載置台24に載置してから引出し21を閉じる。さらに、引出し21を全開した際にも、減速して衝撃を低減することが望ましい。
しかし、引出し21を閉じてチップラック7を所定の位置に位置決めした際にもチップラック7がチップラック載置台24に載置されたままだと、動作中に使用者が引出し21を操作しようとして扉体34を押し引きして振動が加わったような場合に、その振動がチップラック載置台24を経由してチップラック7に伝達される。したがって、チップラック7が所定の位置に位置決めされた際には、チップラック7は引出し21に設けられたチップラック載置台24から離反して、筐体33に設けられた位置決め手段によって支持される構成が望ましい。
自動分析装置1の本体に取り付けられた筐体33は、底板31と、底板31の左右辺に固定された左側板30と右側板29と、底板31と左側板30と右側板29の後辺に固定された後板32と、底板31と左側板30と右側板29の前辺に固定された前板28と、左側板30と右側板29と後板32と前板28との上面に固定され、筐体33の上面をなす上板27によって、略箱体が形成されている。
前板28には、チップラック7を載置した引出し21が前後方向に移動するための前面開口20が設けられている。前面開口20は、自動分析装置1の本体上面に設けられた上面開口26よりも、低い位置に設けられている。
上板27には、引出し21の全閉位置において、チップラック7の上面に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器を上方にピックアップするための開口である、上面開口26が設けられている。
上面開口26の左辺に沿って、チップラック7ごとに前後方向に一対の位置決め対向ベアリング36が設けられており、引出し21が閉止されてチップラック7が所定の高さに配置された際には、チップラック7の左辺が当接することで、所定の位置精度が得られる構成である。
上面開口26の右辺に沿って、チップラック7ごとに右辺中央部を左方、すなわち位置決め対向ベアリング36に対して押し付ける、板バネ37によって支持された、位置決め対向ベアリング38が設けられている。
チップラック7を所定の高さに位置決めすることにより、チップラック7は位置決め対向ベアリング36を介して前後左右方向に所定の位置に精度良く位置決めされる構成である。
左側板30および右側板29の内側には、底板31に近接して、固定部と固定部に対して前後方向に移動可能な可動部とを備えた一対の引出しレール35が設けられている。引出しレール35の固定部を左側板30ないし右側板29に固定し、引出し21を構成する引出し底板39に可動部を固定することで、引出し21を前後方向に所定の移動量だけ移動することができる。
左側板30および右側板29の内側には、引出しレール35の内側および引出しレール35の上部に沿って、前後方向に延伸した左右一対のガイドレール40、40が設けられている。それぞれのガイドレール40、40の互いに対向した内側の面には、略前後方向に延伸した溝である、第一のガイド溝41と第二のガイド溝42とがそれぞれ設けられている。
ガイドレール40、40の上部には、左右一対の位置決め部材43がそれぞれのチップラック7ごとに設けられている。位置決め部材43には、引出し21の全閉位置において、2つのチップラック7のフランジ部25に当接してチップラック7を所定の高さにセットするための当接部である、高さ基準辺44が設けられている。その詳細は後述する。
チップラック載置台24の後方と後板32との間には、詳細は後述する位置決め駆動手段45が設けられている。位置決め駆動手段45は、高さ位置決め部材43を前後方向に貫通して回動する左右一対の位置決め駆動軸46を駆動して、位置決めばね47を介してチップラック7を位置決め部材43の高さ基準辺44に下側から当接する構成である。その詳細は後述する。
次に、引出し21の構成と動作について、図3から図15により説明する。
筐体33に設けられた一対の引出しレール35の可動側は引出し底板39によって連結され、さらに引出し底板39の前面には扉体34が設けられている。
扉体34は、引出しレール35を介して引出し底板39とともに筐体33に対して前後方向に開閉自在に支持されており、引出し21を閉止した際には筐体33の前面開口20を塞ぐ構成となっている。扉体34の前面には、引出し21を開く際に、操作者が手指を挿入するための凹部である把手48を設けている。
把手48の内側上部には、扉体34の左右方向の略全幅にわたって揺動自在に軸支されたハンドル軸49と、ハンドル軸49と一体に設けられたハンドル50と、ハンドル軸49の左右両端にハンドル軸49と一体に揺動する一対のロックレバー51とが設けられている。
左右一対のロックレバー51のそれぞれの後側には、上方に向けたツメであるロックツメ52が設けられている。
一方、筐体33の左右に設けられた一対のガイドレール40には、引出し21の全閉時にロックレバー51のロックツメ52と係合するツメ受け部53が設けられている。すなわち、引出し21の全閉時には、ロックレバー51を介して扉体34は筐体33にロックされて開かない構成である。
ここで、把手48に手指を挿入してハンドル50を前方に引くと、ハンドル50とともにロックレバー51とはハンドル軸49のまわりに回動して、ロックツメ52とツメ受け部53との係合が外れるので、扉体34とともに引出し底板39を引出しレール35に沿って前方に開くことができる。
逆に、引出し21の開状態から扉体34を閉じると、全閉位置でロックツメ52とツメ受け部53は係合するので、引出し21は扉体34を介して筐体33にロックされる。
さらに、全閉位置でロックツメ52とツメ受け部53が係合した状態で、図示しないソレノイドを動作させることで、所謂インターロックをかけて引出し21を開けないように操作することができる。
以上の構成により、扉体34に設けられたハンドル50を手前に引くだけで、自動分析装置1の前面に設けられた前面開口20から引出し21を開き、チップラック7を載置可能なチップラック載置台24を自動分析装置1から容易に引き出すことができる。
チップラック載置台24に、消耗品を載置したチップラック7を載置した後に、引出し21を閉じることで、自動分析装置1内に消耗品を供給できる。
あるいはまた、消耗品の空になったチップラック7を取り出すことができる。
またさらに、引出し21を閉じた時にはロックツメ52とツメ受け部53は係合するので、引出し21を確実に所定の位置に閉止できる。
またさらに、インターロックをかけることができるので、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が動作していて、チップラック7を取り外せない期間には、引出し21の開き動作を禁止することができる。
引出し底板39の上面には、スペーサ54を介して引出し台55が固定されており、引出し底板39と一体として前後方向に移動する。引出し台55は、概ねチップラック7を載置するチップラック載置台24の下部の範囲に設けられている。引出し台55の左右方向の幅は引出し底板39よりも小であり、引出し台55の左辺と右辺の前端近傍と後端近傍の一部は上方に折り曲げられ、側面視は後方に上端が延伸した略L字形状をなした、第一の引出しアーム56と第二の引出しアーム57としている。第一の引出しアーム56と第二の引出しアーム57の略L字形状をなした先端部には、それぞれ第一の支軸穴58と第二の支軸穴59が設けられている。
第一の支軸穴58には第一の連結軸60が回転自在に貫通しており、第二の支軸穴59には第二の連結軸61が回転自在に貫通している。第一の連結軸60と第二の連結軸61の左右幅は、左右のガイドレール40、40の互いに対向した内側面同士の間隔よりも小としている。
第一の連結軸60には歯付プーリ62aが固定されており、第一の連結軸60とともに回転する。第二の連結軸61には歯付プーリ62aと同じ歯数の歯付プーリ62bが固定されており、第二の連結軸61とともに回転する。歯付プーリ62aと歯付プーリ62bとの間には歯付ベルト63が張架されており、第一の連結軸60と第二の連結軸61とは歯付プーリ62aと歯付ベルト63と歯付プーリ62bを介して互いに同期して同一角度だけ同一方向に回転する構成である。回転自在に支持された円筒状のアイドラ64は、歯付ベルト63に適度な張力を付与するために、歯付ベルト63の一面に当接されている。
第一の連結軸60の両端には、第一の連結軸60と一体として回転する、一対の第一の回動アーム65と第二の回動アーム66が左右対称に設けられている。第一の回動アーム65の一端は第一の連結軸60に回転固定され、他端のガイドレール40に近接した側には回転自在な第一のガイドローラ67が設けられ、他端のガイドレール40から離反した側には、第一のガイドローラ67と同軸に第三の支軸71が設けられている。第二の回動アーム66の一端は第一の連結軸60に回転固定され、他端はガイドレール40に近接した側に回転自在な第二のガイドローラ68が設けられている。
第二の回動アーム66の他端は、第一の連結軸60よりも反対側にさらに延長され、詳細は後述するがガイド端69としている。
第一の回動アーム65と第二の回動アーム66とは、左右方向の側面視で、互いにやや角度の開いた略L字形状をなしている。なお、第一の回動アーム65と第二の回動アーム66とは一体であってもよい。
第二の連結軸61の両端には、第二の連結軸61と一体として回転する、一対の第三の回動アーム70が左右対称に設けられている。
第三の回動アーム70の一端は第二の連結軸61に回転固定され、他端はガイドレール40に近接した側に凸した第四の支軸72が設けられている。
第一の連結軸60に回転固定された第一の回動アーム65と、第二の連結軸61に回転固定された第三の回動アーム70とは、互いに平行かつ同一方向を向くよう、歯付プーリ62a、62bを介して歯付ベルト63を張架して連結される。第一の連結軸60と第二の連結軸61とは互いに同期して同一角度だけ回転する構成だから、第一の回動アーム65と第三の回動アーム70とは互いに平行かつ同一方向を向くよう同期しつつ回転する。
チップラック載置台24は、上面を水平とすることで安定してチップラック7を載置することができる。それぞれのチップラック7を載置する際の位置決めを行うガイド部材として、チップラック7を載置した際の内側の前辺近傍、後辺近傍、左辺近傍、右辺近傍には、それぞれ上方に向けて凸した略L字型断面をもつチップラックガイド73を備えている。
チップラックガイド73の略L字型の断面は、上端が下側よりもチップラック7の内側を向くよう鋭角に曲げられており、チップラック7をチップラック載置台24に上方からセットする際の案内をする。チップラック7をチップラック載置台24にセットした際に、チップラック7の内側とチップラックガイド73とは前後方向、左右方向に例えば1mm程度のガタを持たせた構成である。
チップラック載置台24の前端近傍と後端近傍の一部は下方に延伸され、側面視は前方に下端が延伸した略L字形状をなした、第一の支持アーム74と第二の支持アーム75としている。第一の支持アーム74と第二の支持アーム75は左辺近傍と右辺近傍に左右対称に設けられている。
第一の支持アーム74と第二の支持アーム75の略L字形状をなした先端部には、それぞれ第三の支軸穴76と第四の支軸穴77が設けられている。
第三の支軸穴76には第一の回動アーム65に設けられた第三の支軸71が回転自在に嵌合する。
第四の支軸穴77には第三の回動アーム70に設けられた第四の支軸72が回転自在に嵌合する。
チップラック載置台24に設けられた第三の支軸穴76と第四の支軸穴77の前後方向の間隔と、引出し台55に設けられた第一の支軸穴58と第二の支軸穴の前後方向の間隔とは互いに等しくしている。第一の回動アーム65ないし第二の回動アーム66を第一の支軸穴58のまわりに回動すると、第一の連結軸60、歯付プーリ62a、歯付ベルト63、歯付プーリ62b、第二の連結軸61、を介して第三の回動アーム70は同期して第一の回動アーム65と平行を維持しつつ回転する。したがって、チップラック載置台24は上面を水平に維持したまま、第三の支軸71ないし第四の支軸72の円弧軌跡に沿って移動可能な構成である。
引出し台55に設けられた第一の引出しアーム56とチップラック載置台24の第一の支持アームとは、第一の連結軸60の直下に第三の支軸71が位置しても互いに干渉することがないようにそれぞれ略L字形状としている。
引出し台55に設けられた第二の引出しアーム57とチップラック載置台24の第二の支持アームとは、第二の連結軸61の直下に第四の支軸72が位置しても互いに干渉することがないようにそれぞれ略L字形状としている。
次に、第一の回動アーム65に設けられた第一のガイドローラ67と、第二の回動アーム66に設けられた第二のガイドローラ68と、ガイドレール40に設けられた第一のガイド溝41と第二のガイド溝42と、引出し21の開閉動作について図10から図12を用い、さらに適宜図8、図9を参照して説明する。
図8、図9に示すように、左側板30と右側板29の内側には、一対のガイドレール40、40、が左右対称に設けられている。これら一対のガイドレール40、40の互いに対向した内側の面には、ガイドレール40、40の前端から後方に向けて水平に延伸するとともに、ガイドレール40、40の後端近傍では屈曲した第一のガイド溝41と第二のガイド溝42とがそれぞれに設けられている。
ガイドレール40、40の前端から後方に向けて水平に延伸した範囲では、第二のガイド溝42は第一のガイド溝41よりも上方かつ平行に設けられている。
第一のガイド溝41は、ガイドレール40、40の後端近傍で上方に向けて徐々に湾曲し、後端では鉛直上方に向きを変えた鉛直溝部78としている。
第二のガイド溝42は、水平から上方に向けて湾曲して上方に向きを変えた後、略鉛直下方に向きを変える反転部79を備え、さらに反転部79から後下方に向けて湾曲した形状をなしている。
さらに、反転部79の直下に、第二のガイド溝42が分岐する、分岐部80を備える。さらに、反転部79ないし分岐部80よりも後方に、第一のガイド溝41と第二のガイド溝42とが交差する交差部81を備える。
第一のガイド溝41には第一のガイドローラ67が摺動自在に嵌合しており、第二のガイド溝42には第二のガイドローラ68が摺動自在に嵌合している。引出し21の開閉によって引出し台55が前後方向に移動すると、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41に沿って摺動し、第二のガイドローラ68は第二のガイド溝42に沿って摺動する構成である。
反転部79に近接して反転部79の後方には、略上下方向に延伸された湾曲したガイド突起82が設けられており、反転部79に近接した面を凹面のガイド面83としている。このガイド面83の作用については後述する。
次に、引出し21を閉じる際の動作について、図10から図12を用いて説明する。ここでは、チップラック7がチップラック載置台24に載置された状態を一点鎖線で、扉体34と引出し底板39は破線で、また、筐体33も概略形状を一点鎖線で、それぞれ外形のみを図示している。
図10(a)は引出し21の全開状態を示す概略図である。図10(a)において、引出し21は引出しレール35の最大開き量まで開いている。
全閉状態から全開状態にいたるまで、第一の連結軸60と第二の連結軸61は引出し21とともに前後方向に、水平にのみ移動する。
第二のガイドローラ68は第二のガイド溝42の前端近傍に位置し、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41の前端よりも前方に位置して嵌合が外れた状態である。ここで、第二の回動アーム66は第一の連結軸60と第二のガイドローラ68によって支持されており、回動しないので、チップラック載置台24を安定に支持して、開き量を拡大できる。
第一の回動アーム65は第一の連結軸60に対して略鉛直下方を向き、第一のガイドローラ67は第一の連結軸60に対して最も下降した位置にある。
先に説明したように、第三の回動アーム70は第一の回動アーム65と平行を維持しつつ回転する構成だから、第三の回動アーム70は第二の連結軸61に対して略鉛直下方を向き、第四の支軸72は第二の連結軸61に対して最も下降した位置にある。
チップラック載置台24は、第一のガイドローラ67と同軸に設けられた第三の支軸71と、第四の支軸72によって支持される構成なので、図10(a)に示した引出しの全開状態では最も下降した位置にある。ここで、筐体33の前面に設けられた前面開口20の上辺よりも、チップラック7に載置されたサンプル分注チップ/反応容器10,14の上端の高さの方が低くなるように設定すれば、引出し21を開閉する際に、サンプル分注チップ/反応容器10,14が前面開口20に接触して脱落したり傷がつくことがないので好適である。
図10(b)は引出し21を閉じる途中状態を示している。後方のチップラック7は既に前面開口20から筐体33内に挿入されており、前方のチップラック7は前面開口20を通過しつつある。
第二のガイドローラ68は第二のガイド溝42が水平に延伸された区間に嵌合されており、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41が水平に延伸された区間に嵌合されている。したがって、チップラック載置台24は最も下降した位置にあるので、チップラック7に載置されたサンプル分注チップ/反応容器10,14が前面開口20の上辺に接触することはない。
図10(c)は、さらに引出し21が閉じられて、チップラック7は前面開口20を通過して、筐体33の内部に入った状態を示している。
第二のガイドローラ68が第二のガイド溝42が水平部分から上方に湾曲した部分に移行しつつあり、第二のガイドローラ68は上方に移動し始めるから、第二の回動アーム66と第一の回動アーム65とは第一の連結軸60のまわりに図示時計回りに回動し始める。
第一のガイドローラ67は上下方向へも僅かに移動するものの、第一の連結軸60に対して後方に移動し始める。すなわち、チップラック7を載置したチップラック載置台24もともに第一の連結軸60に対して後方に移動し始める。
図11(d)は、さらに引出し21が閉じられて、第二のガイドローラ68が第二のガイド溝42の反転部79に近接した状態を示している。
第二の回動アーム66の先端部に設けられたガイド端69は、ガイド突起82の前面側のガイド面83に沿って略上方に移動する。第二のガイドローラ68はさらに上方に移動するから、第二の回動アーム66と第一の回動アーム65とは第一の連結軸60のまわりにさらに図示時計回りに回動する。第一のガイドローラ67は、第一のガイド溝41が上方に湾曲した部分に勘合して、第一の連結軸60に対してさらに後方に移動するとともに、上方にも移動して、チップラック7を載置したチップラック載置台24も上昇する。
図11(e)は、さらに引出し21が閉じられて、第二のガイドローラ68が第二のガイド溝42の反転部79に嵌合した状態を示している。
第二のガイドローラ68は反転部79に沿って略上方に移動し、第二の回動アーム66と第一の回動アーム65とは第一の連結軸60のまわりにさらに図示時計回りに回動する。第一のガイドローラ67は、第一のガイド溝41が上方に湾曲した部分に勘合して、第一の連結軸60に対してさらに後方に距離xだけ移動するとともに、上方にも移動して、チップラック7を載置したチップラック載置台24も僅かではあるが、高さhだけ上昇する。
ここで、チップラック載置台24が後方に距離xだけ移動する、ということは、引出し21の閉じ動作による移動量よりも、チップラック載置台24が距離xだけ後方に先行して移動しているので、換言すれば引出し21の閉じる速度よりも、チップラック載置台24の後方への速度の方が大であって、チップラック載置台24が引き出しに対して後方に加速されていることを示している。
図11(f)は、さらに引出し21が閉じられて、第二のガイドローラ68が第二のガイド溝42の反転部79に嵌合した状態を示している。
第二のガイドローラ68は反転部79に沿ってさらに上方に移動し、前後方向には殆ど移動しない。第二の回動アーム66と第一の回動アーム65とは第一の連結軸60のまわりにさらに図示時計回りに回動する。第一のガイドローラ67は、第一のガイド溝41が上方に湾曲した部分に勘合して、第一の連結軸60に対して後方に距離x移動するとともに、上方にも高さh移動して、チップラック7を載置したチップラック載置台24も高さh上昇する。
図12(g)は、さらに引出し21が閉じられて、第二のガイドローラ68は第二のガイド溝42の反転部79から下降しつつあり、第一のガイドローラ67は、第一のガイド溝41の鉛直溝部78に近接した位置にある。第二の回動アーム66と第一の回動アーム65とは第一の連結軸60のまわりにさらに図示時計回りに回動する。第一のガイドローラ67は、後方に距離x移動するとともに、上方にも高さh移動して、チップラック7を載置したチップラック載置台24も高さh上昇する。
ここで、第一のガイドローラ67が引出し21よりも後方に先行する移動距離xの最大値は、図11(f)と図12(g)との間にあって、第一のガイドローラ67が第一の連結軸60と同じ高さに位置する際に生じ、その大きさは第一の回動アーム65の長さ、すなわち第一のガイドローラ67と第一の連結軸60との距離に等しい。
図12(h)は、さらに引出し21が閉じられて、第二のガイドローラ68は第二のガイド溝42の交差部にあり、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41の鉛直溝部78に嵌合して、第一の連結軸60の直上に位置し、第一の回動アーム65が直上を向いた頂点にある。言うまでもなく、この位置において、チップラック載置台24は最も上昇した最大値hmaxの位置となる。
ここで、図12(g)から図12(h)にいたるまで、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41の鉛直溝部78を上方に移動するだけだから、チップラック載置台24は前後方向に停止した速度0の状態である。第一のガイドローラ67は第一の連結軸60の直上に位置するので、ここで距離x=0となり、引出し21は、後方に向けて先行したチップラック載置台24に追いついたことになる。
図12(j)は、引出し21の全閉状態を示す。第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41の鉛直溝部78に位置したままであり、第一の連結軸60は引出し21とともに第一のガイドローラ67よりも距離xだけ後方に位置するので、チップラック載置台24の高さhは最大値hmaxよりは小となり、チップラック7は図12(h)に示した最大値よりは僅かに下降した位置となる。
第二のガイドローラ68は、第二のガイド溝42が後下方に向けて湾曲した後端近傍に位置する。
ここで、第一のガイドローラ67が第一のガイド溝41の鉛直溝部78に嵌合している範囲においては、引出し21を前後方向に移動してもチップラック載置台24は前後に移動しない、という特徴を備える。
またさらに、図12(h)においては、第一の回動アーム65が直上を向いた頂点にあるので、引出し21を前後方向に移動してもチップラック載置台24の上下方向の移動量は微小なものである。一例として、第一の回動アーム65の半径をr=25mm、引出し21の前後方向の移動量をa=2mmとして、チップラック載置台24の上下方向の移動量Δhは、Δh=r-[√(r2-a2)]=0.08mmと1/25にすぎず、a=5mmの場合でもΔh=0.5mmと1/10に過ぎない。
すなわち、本実施形態においては、引出しの閉止位置の近傍において、チップラック載置台24を支持する第三の支軸71と同軸な第一のガイドローラ67が、第一の連結軸60の直上に位置し、かつ第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41の鉛直部に嵌合していることで、引出し21が前後方向の位置ずれを生じた場合でも、チップラックは前後方向に停止したままであり、さらに上下方向の移動量も低減できる。そのため、引出し21の全閉位置がばらついたり、あるいは引出し21を前後にゆすったりした場合でも、チップラック載置台24は前後に移動することなく、安定して精度良くチップラック7を載置できる、という効果がある。
本実施形態においては、チップラック載置台24を支持する第三の支軸71は第一のガイドローラ67と同軸であり、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41に沿って移動する構成なので、引出し21の開閉動作においてチップラック載置台24が移動する動作軌跡は、第一のガイド溝41の形状と同一である。
引出し21の全開状態から閉じる水平方向の動作のみによって、チップラック載置台24に載置されたチップラック7を前面開口20を経由して後方に水平に移動して筐体33の内部に移動した後、徐々に上昇させる連動動作を行うことができ、全閉位置においてはチップラック7に載置されたサンプル分注チップ/反応容器10,14を上面開口26よりも上昇した位置まで供給することができる。
なお、上記の説明は引出し21を閉止する際の動作を説明したが、可逆的に逆方向への動作も行うことができ、引出し21を開く際の動作は逆方向の動作となる。
次に、図10(a)から図12(j)によって説明した、引出し21の閉じ動作と、チップラック載置台24の前後(X方向)および上下(Y方向)の変位特性について、図13を用いて説明する。
図13の横軸は引出し21の全閉位置から水平方向の開き量をとり、縦軸はチップラック載置台24の水平移動量および上昇量をとったグラフである。左端は全閉位置であり、右端は本実施形態では200mm開いた位置までとっている。200mmよりも大の範囲は、第一のガイド溝41と第二のガイド溝42とは水平であり、引出し21の開き量と、チップラック載置台24の移動量とが1:1になる。本実施形態では第一の回動アーム65の長さを25mmとした場合の一例であり、チップラック載置台24の上昇量は最大50mmである。
図13の右から左に向かう動作が閉じ方向であり、左から右に向かう動作が開き方向である。実線はチップラック載置台24の前後(X方向)の移動量であり、破線は上下(Y方向)の移動量である。一定速仮想線と記載した一点鎖線は、チップラック載置台24が引出し21と一体であった場合のX方向移動量を仮想的に示した直線であり、X方向の移動特性と比較するために示す。縦軸が0の時に横軸が0ではなくおよそ10mmの点を通るのは、図12(h)の位置でY方向の頂点となるためである。(b)から(j)は図10(b)から図12(j)に対応した符号であり、(a)はグラフの右端よりも右方なので記載していない。
図13のグラフ上端に記載したX方向の挙動、および下端に記載したY方向の挙動は、閉じ動作に際の挙動を示しており、開き動作の際には、減速と増速は逆となり、上昇は下降となる。
閉じ動作の場合なので、全開である右方から説明すると、図示しない全開状態(a)から(b)を経由して(c)の近傍に至るまでは、チップラック載置台24は引出し21と一体に水平移動するから、X方向は一定速仮想線と重なった直線状の特性となり、Y方向は0のままである。(c)から(f)までは、第一の回動アーム65が鉛直下方を向いた位置から、第一の連結軸60のまわりに後方に向けて回動して、第一のガイドローラ67が第一の連結軸60の水平後方に向くまで90゜回動する範囲は、X方向は引出し21よりもチップラック載置台24が増速して先行する区間である。
この区間において、Y方向にチップラック載置台24は上昇する。
(f)と(g)の間から(h)まで、すなわち第一の回動アーム65が後方を向いた位置から第一の連結軸60のまわりにさらに回転して上方を向くまで90゜回動範囲は、X方向は引出し21よりもチップラック載置台24が減速して停止する区間である。この区間において、Y方向にチップラック載置台24は上昇して(h)で頂点に至り、最大上昇位置となる。
さらに(h)から(j)までは、頂点を乗り越えた後のオーバーラン区間であり、後述するチップラック7の位置決め手段の動作領域を確保するために設けられている。
次に、図14と図15とを用いて、第二のガイド溝42に設けられた反転部79と分岐部80とを、第二のガイドローラ68が確実に通過するための構成について説明する。
図14と図15は、反転部79近傍を第二のガイドローラ68が通過する際の構成と動作を示す概略図である。
すなわち、第二のガイド溝42は反転部79の下部に溝を二股に分岐するための分岐部80を備える。分岐部80においては、図14(a)のハッチングで示すように、下側の溝幅がおよそ2倍に広がった略扇形の溝形状となるため、第二のガイドローラ68が反転部79から下降して分岐部80を通る際にはガタを生じてガイドできない。そこで、開き動作ないし閉じ動作に応じて、第二のガイドローラ68が、二股に分岐された溝のうち、所望の溝に確実に進行するための構成を要する。
図14(a)は、閉じ動作において、第二のガイドローラ68が第二のガイド溝42に沿って後方に向けて移動し、分岐部80に進入するより手前の状態を示している。第二のガイドローラ68は、第二のガイド溝42に嵌合されて、安定して移動する。
第二の回動アーム66の先端に設けられたガイド端69は、ガイドレール40に設けられたガイド突起82の前方に向いたガイド面83とは接触していない。
図14(b)は、さらに第一の連結軸60が後方に移動した状態を示しており、第二のガイドローラ68が分岐部に進入する直前に、ガイド端69はガイド面83に当接する。
図14(c)は、さらに第一の連結軸60が後方に移動して、第二のガイドローラ68が分岐部80に進入した状態を示しており、ガイド端69はガイド面83に当接している。ここで、ガイド突起82の一面であるガイド面83が無い場合の第一の回動アーム65と第二の回動アーム66の挙動を破線で示す。第二のガイドローラ68が分岐部80に進入しているために第二のガイドローラ68の位置を精度よくガイドすることができない。また、第一の回動アーム65と第一のガイドローラ67が破線のように回動しても、第一のガイドローラ67の移動する方向が第一のガイド溝41の接線方向と略等しいために、第一の回動アーム65の回動を阻止することができない。すなわち、ガイド突起82と、ガイド面83と、ガイド端69とによって、第二の回動アーム66を所定の位置に維持できる。
図15(d)は、第二のガイドローラ68が分岐部80から反転部79に進入し始めた状態を示しており、ガイド端69はガイド面83に当接している。
図15(e)は、第二のガイドローラ68が反転部79に進入して、ガイド端69はガイド面83の上端よりもさらに上方に移動して、ガイド面83から離反した状態を示している。ガイド端69はガイド面83から離反しても、反転部79は第二のガイドローラ68と摺動自在に勘合する溝幅とすれば、第二のガイドローラ68はがたつくことなく、第二の回動アーム66は所定の位置に維持できる。
図15(f)は、さらに第一の連結軸60が後方に移動して、第一の回動アーム65と第二の回動アーム66が図示時計まわりに回動して、第二のガイドローラ68は反転部79から下降して、分岐部80に位置する。
このとき、第一のガイドローラ67は第一のガイド溝41に沿って後上方に移動しており、精度よくガイドされるので、第二のガイドローラ68が分岐部80に位置していても、第一の連結軸60のまわりに第一の回動アーム65と第二の回動アーム66とは、所定の位置に維持できる。
上記は、引出し21を開いた状態から閉じる際の動作を示しているが、引出し21を開く際の動作は上記とは逆に(f)から(a)の順になり、第一の連結軸60と第一の回動アーム65と第二の回動アーム66は後方から前方に向けて移動する。
ここで、ガイド面83が無い場合には、引出し21を開く途中で図14(c)の状態となった時に、第二のガイドローラ68が分岐部80に進入して破線で示す状態になる場合がある。
第二のガイドローラ68は引出し21の開き動作を継続するためには、第二のガイド溝42の前方に延伸した水平部分に向いて分岐した方に進行する必要があるが、逆に第二のガイド溝42の交差部81に向いて下向きに分岐した方に進行しようとする。すると、第二のガイドローラ68が分岐部80の下端にある鋭角の上向き先端をもつ尖角部84にひっかかって引出し21が開けない。
すなわち、反転部79の後方に近接して設けられたガイド突起82のガイド面83と、第二の回動アーム66の先端であるガイド端69とは、第二のガイドローラ68の尖角部84へのひっかかりを確実に防止するよう構成されている。このように構成したので、第二のガイドローラ68が安定して反転部79と分岐部80とを通過して、引出し21の開閉動作を行うことができる。
ここで、第一のガイドローラ67と第二のガイドローラ68は固定ピンではなく回転式のガイドローラとしたので、第一のガイド溝41および第二のガイド溝42に沿って移動する際の摩擦抵抗は微小であり、スムーズな開閉動作を行うことができる、という効果がある。
また、互いに交差する第一のガイド溝41および第二のガイド溝42に沿って、第一のガイドローラ67と第二のガイドローラ68とを摺動して第一の回動アーム65と第二の回動アーム66とを回動する構成としたので、第一のガイドローラ67を安定的に案内して、第一の回動アーム65を第一の連結軸60に対して下向きから上向きまで略180゜回動することができる。
さらに、引出しを開いた状態から全閉するまでに、第一の回動アーム65は第一の連結軸60に対して下向きから上向きまで略180゜回動するよう構成したので、第一の回動アーム65の半径に対するチップラック7の上昇量hmaxは最大となり、機構の小型化を実現する効果がある。また第一の回動アーム65は引出しを開いた状態から全閉するまでに所謂上死点と下死点の間を回動するので、チップラック7の上昇量の誤差が生じにくく高精度であり、信頼性の高い自動分析装置を提供できる。
引出し21を閉止すると、チップラック7はチップラック載置台24とともに上昇して、筐体33の上面に設けられた上面開口26からチップラック7に載置されたサンプル分注チップ/反応容器10,14を露出させる。
その後、サンプル分注チップ/反応容器10,14はサンプル分注チップ/反応容器搬送手段8によって一つずつ把持され、上方に移動される。
したがって、確実にサンプル分注チップ/反応容器搬送手段8によって把持されるために、チップラック7を上昇させた後には高精度で位置決めを行う必要がある。
あるいは、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が動作中の場合には、引出し21の扉体34にはインターロックをかけてロックし、不用意に引出し21が開かれないようにしているものの、動作中に使用者が引出し21を操作しようとして扉体34を押し引きして振動が加わったような場合に、その振動がチップラック7に伝達しないような構成が望ましい。
そのような位置決め構成の一例について、図16から図22を用いて以下に説明する。
図16はチップラック装填手段22の後面図であり、筐体の後板32を非表示して位置決め駆動手段45を示しており、図17はチップラック7の高さを位置決めするチップラック位置決め手段118の要部の構成と動作を示す部分概要図である。図18と図19は、チップラック7を下方から位置決め部材43に押し付ける構成を示す斜視図であり、図20と図21とは、チップラック7を下方から位置決め部材43の高さ基準辺44に当接して位置決めする動作を示す部分断面図である。図22は、引出し21の開閉動作と連動して、位置決め駆動手段45を駆動して位置決め動作を行うための、円筒カムの構成と動作を示す斜視図である。
左右一対のガイドレール40の上面には、チップラック載置台24に前後に縦列に載置された2つのチップラック7の右辺と左辺とに対応して、それぞれ左右一対の位置決め部材43,43が設けられている。位置決め部材43,43のうち、チップラック7に近接して延伸された部分の先端下辺は、チップラック7のフランジ部25の上面に当接して、チップラック7を所定の高さに位置決めを行う、高さ基準辺44としている。
円盤状のカム板85は、前後方向に沿って設けられた円筒カム中心86のまわりに回動自在に軸支されており、第五の支軸87と第六の支軸88とが外周から、円筒カム中心86から離反する方向に突出している。
カム板85の一部は下方に突出したストッパ89としており、ストッパ89の左端側が固定されたストッパ受け90に当接することで、カム板85の回転角度範囲を規制している。
ストッパ受け90の一部は回転カム中心を挟んで反対側まで延伸されて、第一のばね支点91としている。
カム板85の別の一部は外周に突出した第二のばね支点92としており、引きばね93を第一のばね支点91と第二のばね支点92との間に張架したときの引張力によって、円筒カム中心86のまわりに、カム板85に図16において図示反時計方向の回転トルクを生じ、引きばね93の引張力によってストッパ89がストッパ受け90に当接する方向の付勢力を付与する構成である。
左右一対の位置決め駆動軸46は位置決め部材43を前後方向に貫通して、前後方向の回転軸のまわりに回動可能に配置されている。
位置決め駆動軸46の上下方向高さは、高さ基準辺44よりやや低い位置に配置され、位置決め駆動軸46の左右方向位置は、チップラック7の下辺の周囲に設けられたフランジ部25の外周よりも外側で、かつ左右側板29,30よりも内側に設けられている。
右側の第一の位置決め駆動軸46aの後端には、一端を第一の位置決め駆動軸46aに回転固定され、他端を第七の支軸94となした第三のリンクアーム95が設けられている。
左側の第二の位置決め駆動軸46bの後端には、一端を第二の位置決め駆動軸46bに回転固定され、他端を第八の支軸96となした第四のリンクアーム97が設けられている。
第一のリンクアーム98の一端はカム板85に設けられた第五の支軸87に回転自在に軸支され、他端は第三のリンクアーム95に設けられた第七の支軸94に回転自在に軸支されている。
第二のリンクアーム99の一端はカム板85に設けられた第六の支軸88に回転自在に軸支され、他端は第四のリンクアーム97に設けられた第八の支軸96に回転自在に軸支されている。
カム板85が円筒カム中心86のまわりに回転すれば、第五の支軸87と第六の支軸88とが移動して、第一のリンクアーム98を介して第三のリンクアーム95が回動し、第二のリンクアーム99を介して第四のリンクアーム97が回動する構成である。
次に、位置決め駆動軸46と位置決めばね47と、位置決め部材43との構成について、図17、図18を用いて説明する。
図17(a)は、位置決め駆動軸46と位置決めばね47と、位置決め部材43の構成を示す部分分解斜視図、図17(b)はC-C断面図である。位置決めばね47は、位置決め駆動軸46の外周に設けられた、前後方向にコイル部が円筒状をなした捩りばねであり、前後方向の両端には、チップラック7のセット完了時にチップラック7のフランジ部25の下面に当接する押圧部100が、チップラック7に近接する方向に延伸されている。この押圧部100は、チップラック7を押圧した際にも傷をつけないよう、先端部を丸めた形状が望ましい。
位置決めばね47は、前後方向の中央部の係止部101から前方は右巻き、後方は左巻と巻方向を対称にしている。位置決めばね押え102は、中央と両端、計3本のねじで位置決め駆動軸46に係止される。中央の止めねじ104が位置決めばね47の係止部101を位置決め駆動軸46に係止して、係止部101は位置決め駆動軸46とともに回転する構成である。
位置決めばね押え102の両端近傍には、押圧部100の方向に延伸された押圧部押え103が設けられ、押圧部押え103のさらに外側に両端の止めねじ104が設けられて位置決め駆動軸46に係止される。
図17(b)はC-C断面図であって、押圧部押え103の位置での断面を示す。押圧部押え103と位置決め駆動軸46との間には位置決めばね47の線径より大なる隙間を設け、かつ押圧部押え103によって押圧部100の矢印方向へのねじり変位のみを許容する構成である。
図18は、位置決め駆動軸46と位置決めばね47と、位置決め部材43と、チップラック7と、位置決め対向ベアリング36と、位置決め対向ベアリング38との関係を示す分解斜視図である。
図19は、D-D断面図である。
チップラック7はチップラック載置台24を介して上昇して、フランジ部25の上面が高さ基準辺44に当接することで高さが定められる。
ここでさらに、押圧部100がチップラック7のフランジ部25を下方から高さ基準辺44に向けて押圧するよう、位置決め駆動軸46が回動すれば、チップラック7はチップラック載置台24から上方に離反するとともにフランジ部25が高さ基準辺44に当接して、チップラック7の高さを確実に精度良く確保できる。
さらに、チップラック7が所定の高さで位置決めされた際に、チップラック7の左上の辺に2箇所設けられたV溝である、位置決めV溝105に位置決め対向ベアリング36を当接し、図19に示すように右方から左方に向けて、板バネ37によって支持された位置決め対向ベアリング38によって予圧することで、チップラック7を前後方向および左右方向にも精度良く位置決めできる。
上記のような位置決め構成としたので、引出し21を閉じてチップラック7をセットした際に、チップラック7はチップラック載置台24を含めた引出し21からは離反するので、引出し21からの振動などがチップラック7に伝達されることがなく、かつ前後方向、左右方向、上下方向にも精度良く位置決めできる、という効果がある。
次に、チップラック7の上昇動作と、位置決めばね47の回動動作のタイミングについて、図20から図22を用いて説明する。
図20(a)~(d)は、引出し21の閉じ動作と連動して、チップラック7が高さ基準辺44に近接するよう上昇しつつ、位置決め駆動軸46が回動することで、押圧部100を介してチップラック7のフランジ部25が高さ基準辺44に当接されるまでの過程を順に示しており、図19における左側の位置決め駆動軸46近傍の拡大図である。
図20(a)において、引出し21の閉じ動作と連動してチップラック7は上昇する途中にあり、位置決め駆動軸46は、位置決めばね47の押圧部100は略下方を向くよう回動した位置にある。この状態を、「退避位置」ないし「退避状態」と称することがある。フランジ部25は押圧部100の下端よりも高い位置まで上昇している。
引出し21を開いてチップラック7が下降した区間は、引出し21の全開位置にいたるまで、位置決めばね47は「退避状態」を保つ。
図20(b)において、チップラック7はさらに上昇して、フランジ部25の高さは概ね位置決め駆動軸46の中心軸の位置にある。このとき、位置決め駆動軸46は押圧部100が下側からフランジ部25に近接する方向に回動しつつある。この状態を、「回動状態」と称することがある。
図20(c)において、位置決め駆動軸46はさらに回動して、押圧部100がフランジ部25の下面に当接してチップラック7を持ち上げ、チップラック7はチップラック載置台24から離反して、フランジ部25の上面が位置決め部材43の高さ基準辺44に当接してチップラック7は所定の高さにセットされる。すなわち、所定の高さとは、チップラック7が最大hmaxだけ上昇した位置よりも高い位置である。
図20(d)において、位置決め駆動軸46がさらに角度δだけ回動すると、その角度だけ位置決めばね47のねじり変位は大となって、押圧部100がフランジ部25を下側から押圧する力が増加して、チップラック7を確実に位置決めできる構成である。この状態を、「位置決め位置」ないし「位置決め状態」と称することがある。
引出し21を開いてチップラック7を取り出す際の動作は、上記とは逆に図20(d)(c)(b)(a)の順に位置決め駆動軸46が回転して押圧部100がフランジ部から下降するとともに、チップラック7が下降する。
次に、引出し21の閉じ動作と連動した位置決め駆動手段45の構成について図21を用いて説明する。
図21(a)は、引きばね93の引張力によってカム板85が反時計方向に一杯に回転して、ストッパ89がストッパ受け90に当接した状態である。このとき、位置決め駆動軸46は、位置決めばね47は図20(a)に示した「退避状態」である。
引出し21を開いてチップラック7が下降した区間は、引出し21の全開位置にいたるまで、位置決めばね47は「退避状態」を保つ。
図21(b)は、引出し21の閉じ動作と連動して、引きばね93の引張力による回転トルクに抗って、カム板85がψ1だけ図示時計まわりに回転した状態を示している。
カム板85とともに第五の支軸87と第六の支軸88が回動して、第一のリンクアーム98と第二のリンクアーム99が矢印方向に移動するので、第七の支軸94を介して第三のリンクアーム95と第一の位置決め駆動軸46aが矢印方向にθ1だけ回動し、同時に、第八の支軸96を介して第四のリンクアーム97と第二の位置決め駆動軸46bが、第一の位置決め駆動軸46aとは逆の、矢印方向にやはりθ1だけ回動する。
すなわち、押圧部100、100もともにθ1だけ、互いにチップラック7の下面フランジ部25に対して下方から近接するよう回動しており、これは図20(b)に示す「回動状態」である。
図21(c)は、カム板85がさらに最大回転角度であるψ2だけ、図示時計まわりに回転した状態を示している。ここでは、第一の位置決め駆動軸46aと第二の位置決め駆動軸46bとがそれぞれθ2だけ回動し、押圧部100、100もともにθ2だけ、互いにチップラック7の下面フランジ部25に対して下方から押圧するよう回動しており、これは図20(d)に示す「位置決め状態」である。ここで、第五の支軸87と第七の支軸94の位置関係、および第六の支軸88と第八の支軸96の位置関係を、例えばψ2≒60゜、θ2≒90゜、となるように適宜設定する。
次に、引出し21の閉じ動作に連動して、カム板85を適切に回転動作する構成について、図22により、さらに適宜図21、図20を参照して説明する。
引出し21を閉じる動作において、全開位置から例えば閉止位置まで40mm程度の、概ね図12(g)の位置まで閉止されて、図20(a)に示すようにチップラック7の下面フランジ部25が、「退避状態」にある押圧部100よりも高い位置に上昇するまでは、位置決め駆動軸46は回動せず「退避状態」を維持して、カム板85は図21(a)に示した位置のまま回動しない構成が望ましい。
引き続き引出し21の閉じ動作を継続して、開き量が40mm以下に減少するとカム板85は図21(b)~(c)に示す矢印方向に回動して、押圧部100は「回動状態」を経由して「位置決め状態」になる。
すなわち、引出し21の閉止位置から全開位置までの開き量が、例えば400mmから500mm程度であるのに対して、カム板85が回転する範囲は、閉止位置近傍の40mm程度の範囲に限られる。
このような、引出し21の動作範囲のうち、限られた範囲でのみカム板85を回転駆動する構成の一例について、図22により、適宜図7、図8も用いて説明する。
図22において、カム板85と同軸に円筒状に延伸された中空の円筒カム106は、引出し台55の後端近傍に固定されており、引出し21の開閉動作とともに前後方向に移動する構成である。円筒カム106の円筒面には、円筒面に沿って内周と外周とを貫通した螺旋状の螺旋溝107が複数設けられており、螺旋溝107は円筒カム106の前端と後端との間で所定の角度捩られている。この所定の角度は図21にて説明したカム板の回転角度に等しくψ2であり、一例としては60゜程度である。
カム板85から前方に向けて円筒状に延伸された回転カム108は、カム板85と一体として、円筒カム中心86と同軸の回転カム軸109のまわりに回動自在に支持されている。回転カム108の円筒カム106に近接した側の先端近傍には、回転カム108の円筒状の表面から放射状に凸した円筒状のカムピン110が複数設けられている。本実施形態において、カムピン110は一例として角度120゜ごとに3本、設けられており、それぞれのカムピン110は円筒カム106に設けられた螺旋溝107に嵌合して摺動する構成である。
引出し21が全開位置から、全閉位置の近傍で開き量が40mm程度に近接するまでの範囲においては、円筒カム106と回転カム108とは離反しており、図22(a)および図21(a)に示すようにカム板85は、引きばね93の引張力による回転トルクによって、ストッパ89がストッパ受け90に当接して、位置決めばね47は「退避状態」を保つ。
引出し21がさらに閉止されて、開き量が40mmよりも小となると、円筒カム106に設けられた螺旋溝107が、回転カム108に設けられたカムピン110と嵌合する。さらに引出し21が後方に移動すると、カムピン110は螺旋溝107に沿って移動するので、回転カム108は回転カム軸109のまわりに回動する。カム板85は回転カム108とともに回動するので、図21(b)に示すように位置決め駆動軸46が回動して、図20(b)に示すように押圧部100がチップラック7の下面フランジ部25に下方から近接する。
さらに引出し21が全閉位置に至ると、回転カム108は円筒カム106の内部に挿入され、カムピン110は螺旋溝107の前端近傍まで摺動される。カムピン110を備えた回転カム108は、螺旋溝107のねじれ角度だけ回転カム軸109のまわりにψ2≒60゜だけ回転する。
すなわち、回転カム108に備えられたカムピン110が、円筒カム106に設けられた螺旋溝107に沿って摺動することで、回転カム108およびカム板85が回転する構成である。したがって、円筒カム106および回転カム108の前後長さを長くすれば、回転カム108が回動し始める引出し21開き量を大とすることができる。あるいは、円筒カム106に設けられた螺旋溝107のねじれ角度を大きくすれば、回転カム108の回動角度ψ2を大きくすることができる。
ただし、螺旋溝107のねじれ角度を過大にすると、回転カム108が急激に回動しようとして、螺旋溝107とカムピン110の間に生じる圧接力が大きくなり、摩擦力が増加して回転カム108がスムーズに回転しづらくなるので、ねじれ角度は例えば45゜以下とし、望ましくは35゜以下とするのがよい。
位置決め駆動手段45は筐体33の後面と引出し21の後面との間に配置されるので、使用者が誤って触手することがないので安全性が高い。
次に、第二実施形態について図23により説明する。図23は第二実施形態におけるチップラック装填手段22の後面図である。
第二実施形態が第一実施形態と異なるところは、位置決め駆動手段45において、回転カム108とともに回転するカム板85に替えて第一の歯付プーリ111を設け、位置決め駆動軸46a,46bを回動する第三のリンクアーム95と第四のリンクアーム97に替えて、第一の位置決め駆動軸46aに第二の歯付プーリ112、第二の位置決め駆動軸46bに第二の歯車113を設けたことである。
第二実施形態はさらに、第二の歯車113とかみあう第一の歯車114と、第一の歯車114と一体に回転する第三の歯付プーリ115と、第一の歯付プーリ111と第二の歯付プーリ112と第三の歯付プーリ115に張架される歯付ベルト116と、歯付ベルト116に適切な張力を付加する回転自在なアイドラ117と、を備えたことである。回転カム108が回動すると、第二の歯付プーリ112は同じ方向に回転して第一の位置決め駆動軸46aを回動し、第三の歯付プーリ115も回転カム108と同じ方向に回転する。第二の歯車113は第一の歯車114とは逆方向に回転するから、第一の歯車114は回転カム108とは逆方向に回転し、結果として第二の位置決め駆動軸46bを第一の位置決め駆動軸46aとは逆方向に回転する。
回転カム108の回転角度に対する位置決め駆動軸46の回転角度は、歯付プーリ111,112,115の歯数と、歯車113,114の歯数を適切に設定すれば得ることができる。
次に、第三実施形態について図24および図25により説明する。図24は第三実施形態におけるチップラック装填手段22の図8と同様なB-B断面図、図25はチップラック押圧手段の構成を示す(a)上面図と、(b)E-E断面図である。
第三実施形態が第一実施形態と異なるところは、位置決め駆動手段45、位置決め駆動軸46、位置決めばね47を備えておらず、一方、チップラック7を下方から上方に向けて押圧するチップラック押圧手段119(上昇手段)をチップラック載置台24に備えたことである。
チップラック押圧手段119は、チップラック7の下面四隅に下方から当接する位置に配置され、チップラック載置台24には、上面が開口した有底の枠部120を備える。さらに、枠部120の内側には適度な隙間を持って上下方向に移動自在に支持された押圧部材121を備え、例えば圧縮ばねである付勢部材122は押圧部材121を下方から上方に付勢する。押圧部材121にはピン123が前後方向に貫通固定され、ピン123は枠部120に設けられた上下方向に長い溝124に隙間をもって貫通しており、押圧部材121はピン123が溝124に沿って移動可能な範囲で上下方向に移動できる構成なので、押圧部材121は、ピン123が溝124の上端に当接した状態に位置する。
押圧部材121の上面には有底の外周穴125が設けられ、外周穴125底面には外周穴125と同心に例えば直径1mm程度の中心穴126が穿設されている。外周穴125には、外周穴125の直径よりも小なる押圧球127が緩く挿入されており、中心穴126の縁に、外周穴125とは全周に例えば0.5mmから1mm程度の適度な隙間を持った同心位置で安定して載置される。押圧球127は、外力を受ければ外周穴125との隙間の範囲内ではころがることができる一方で、外力が働かなければ中心穴126の縁に載置するよう移動するので、外周穴125に対して同心位置に戻る。
またさらに、押圧球127が飛び出さないよう、外周穴125の上縁に、図示しない抜け止めストッパを設けてもよい。
付勢部材122による上方への付勢力は、チップラック7の自重よりも大となるようにしている。すなわち、チップラック載置台24を引き出してチップラック7をチップラックガイド73に沿って押圧球127の上面に載置しても、ピン123は溝124の上端に接したままで最も上昇した位置を保つようにしている。
次に、図10から図12に説明したような一連の引出し閉じ動作を行ってチップラック7を上昇させると、図12(h)に示すチップラック載置台24が最も上昇した頂点位置に至る以前より例えば1mm程度低い位置で、チップラック7のフランジ部25の上面が位置決め部材43の高さ基準辺44に下側から当接する位置関係としている。すなわち、図12(j)に示したように引出しが閉じられた状態では、図24ないし図25(b)に示すように、チップラック7のフランジ部25の上面が位置決め部材43の高さ基準辺44に下側から当接して位置決めされた後、チップラック載置台24はさらに例えば1mm程度上昇するから、付勢部材122は圧縮され、ピン123は溝124の上端から離反する。すなわち、チップラック7のフランジ部25は付勢部材122による付勢力によって押圧部材121と押圧球127を介して上向きに位置決め部材43に対して当接した状態を維持するので、引出しが閉じられた状態でチップラック載置台24の高さに誤差が生じたとしても、チップラック7は位置決め部材43に当接しているから高精度に位置決めすることができる。
押圧球127は、外周穴125とは全周に例えば0.5mmから1mm程度の適度な隙間を持った位置にあり、チップラック7はフランジ部25の四隅を押圧球127に載置された構成なので、押圧球127が外周穴125との隙間の範囲内でころがり移動する範囲内では、チップラック7は微小なころがり摩擦で自由に水平方向に移動自在な構成である。チップラック7の移動量は、押圧球127上面の移動量に等しいから押圧球127中心の移動量の2倍であり、外周穴125と押圧球127との外周隙間の2倍、例えば1mmから2mm程度、移動自在である。
一方、引出しを引き出した後にチップラック7を取り外せば、押圧球127はころがって中心穴126の縁に載置されて外周穴125と同心位置に戻る。
引出しを閉じて、チップラック押圧手段119によってチップラック7が位置決め部材43の高さ基準辺44に付勢された状態では、チップラック7は位置決め対向ベアリング36によって位置決めされた状態にある。ここで、例えば扉体34に外部から振動が加わってチップラック載置台24にその振動が伝達された場合、チップラック載置台24と一体の枠部120と押圧部材121との間には隙間があり、さらに押圧球127はチップラック7のフランジ部25下面と押圧部材121の外周穴125底面との間でころがる構成なので、チップラック載置台24からチップラック7に振動が伝達されたり、チップラック7に外力が伝達されることはなく、安定して高精度にチップラック7を位置決めすることができる。
さらに、第一の実施形態と異なるところは、位置決め対向ベアリング38’の回転軸方向を、前後方向ではなく、位置決め対向ベアリング36と同じように略上下方向に設け、上方ほどチップラック7に近接するよう傾斜して配置し、さらにベアリングの軸を軸方向に延長して、位置決め対向ベアリング38’が軸に沿って移動可能に配置したことである。さらに、位置決め対向ベアリング36も、ベアリングの軸を軸方向に延長して軸に沿って移動可能に配置したことである。このように位置決め対向ベアリング36、38’を軸に沿って移動可能に配置したことで、チップラック7の上辺が位置決め対向ベアリング36ないし位置決め対向ベアリング38’に接触して以降、チップラック7が位置決め部材43に当接するまで上昇する間、位置決め対向ベアリング36ないし位置決め対向ベアリング38’は軸に沿って上昇しつつ、チップラック7の前後方向には自在に回転できるので、チップラック7の上下方向および前後方向への摩擦抵抗は軽微である。先に説明したように、チップラック7が水平方向に移動しても押圧球127はころがるのでチップラック7の受ける摩擦抵抗は軽微であり、所定の位置に固定された位置決め対向ベアリング36に対して精度よく位置決めが可能、という効果がある。
本実施形態においては、押圧部材121は上下方向に移動し、付勢部材122は圧縮ばねであるとしたが、そのような構成に限定されるものではなく、押圧部材は一端に回転支軸を備えた揺動アームであってもよく、付勢部材は支軸のまわりに設けられたネジリバネであってもよい。また、押圧球127を押圧部材121と一体で形成し、例えばポアセタール樹脂やフッ素樹脂などの低摩擦樹脂材料で成型してもよいし、あるいはそれらを組み合わせた構成であってもよい。
次に、第四実施形態について図26から図29により説明する。図26は第四実施形態に係る自動分析装置におけるチップラック装填手段のB-B断面図であり、図27はA-A断面図、図28は減速手段の構成を示す(a)F-F断面図、(b)平面図、(c)G-G断面図である。図29はチップラック装填手段の概略平面図であって、(a)全閉状態、(b)開閉途中状態、(c)全開状態、を示す。
第四実施形態が第一実施形態ないし第三実施形態と異なるところは、引出し21と底板31との間に減速手段128を備え、引出し21と底板31との間に粘性抵抗力を付加する所謂ダンパ129を設けたことである。減速手段128を設けることによって、引出し21を開閉する際の速度を抑制し、全開時および全閉時の衝撃を低減できる、という効果がある。
以下、減速手段の構成の一例について説明する。図26から図28において、引出し21の一部をなす引出し台55には、底板31に向けて近接した方向に、前後方向に延伸した第一のラック131を設ける。底板31には、引出し台55に向けて近接した方向に、前後方向に延伸した第二のラック132とガイドレール133と、を設ける。
ダンパ129は回転自在なダンパ軸130を備え、ダンパ129内部には例えば粘性流体を内封している。ダンパ軸130を回転すると、ダンパ129内に設けられた図示しないロータがダンパ軸130とともに回転し、ダンパ129の内部との間に粘性流体の剪断変形を生じ、剪断変形の際に生じる剪断力によってダンパ軸130に粘性抵抗トルクを生じる構成である。粘性抵抗は速度の増加とともに増加する傾向を備えるので、ダンパ軸130の回転速度が大なるほど、大きな粘性抵抗トルクを生じる特性を備える。
スライダ134はガイドレール133に沿って前後方向に移動自在に設けられており、スライダ134には第一のギヤ支軸135と第二のギヤ支軸136とが引出し台55に近接する方向に延伸して設けられ、さらにダンパ129が回転固定されてダンパ軸130が引出し台55に近接した向きに設けられる。
第一のギヤ支軸135には第一のギヤ137が回転自在に設けられ、第一のギヤ137は第一のラック131と第一のかみあい部140にて噛み合う構成である。第二のギヤ支軸136には第二のギヤ138(以下、アイドラと称することがある)が回転自在に設けられ、第一のギヤ137とかみあう構成である。
ダンパ軸130には第三のギヤ139(以下、ダンパギヤと称することがある)が設けられ、ダンパギヤ139はダンパ軸130とともに回転する構成である。すなわち、ダンパギヤ139が回転すると粘性抵抗トルクが生じる。ダンパギヤ139はアイドラ138と噛み合い、さらにダンパギヤ139は第二のラック132と第二のかみあい部141で噛み合う構成である。
第一のかみあい部140と第二のかみあい部141とは、第一のギヤ137とダンパギヤ139のそれぞれ中心の前後方向の距離と等しい、距離Sだけ前後方向に離れた構成である。
引出し21を前方に移動して開く動作を行うと、引出し台55に設けられた第一のラック131が前方に移動し、第一のかみあい部140を介して第一のギヤ137を図28(b)の平面図において図示時計回り方向に回転する。アイドラ138は第一のギヤ137と噛み合っているから、逆に反時計回り方向に回転し、アイドラ138と噛み合ったダンパギヤ139は時計回りに回転し、ダンパギヤ139は第二のラック132と噛み合っており、第一のギヤ137とアイドラ138とダンパギヤ139とはスライダ134に載置されているから、ダンパギヤ139の回転に伴ってスライダ134は前方に移動する。
ここで、一例として第一のギヤ137の歯数とダンパギヤ139の歯数とを等しくすれば、スライダ134は第一のラック131の前方への移動量の1/2だけ前方に移動する構成である。先に説明したように、ダンパギヤ139が回転するとダンパ軸130がともに回転して粘性抵抗トルクを生じる構成としたので、引出し21を前方に移動すればダンパ軸が回転して粘性抵抗力が生じて、引出し21を開く際に抵抗力を付加することができる。
引出し21を閉じる際には第一のラック131が後方に移動するので、図28(b)に示す各ギヤの回転方向が逆向きになるものの、ダンパ軸130が回転するので粘性抵抗が生じ、引出し21を閉じる際にも抵抗力を付加することができる。
図29により引出し21の開き動作の際の減速手段128の動作について説明すると、図29(a)に示す全閉状態において、第一のラック131の後端は引出し台55の後端近傍に位置し、第一のギヤ137と第一のラック131との間の第一のかみあい部140は、第一のラック131の前端近傍にある。第一のかみあい部140はまた、筐体33ないし引出し台55の前後方向中央よりもやや前方に位置する。
第二のラック132の前端は筐体33の前面開口20の近傍ないし前面開口20よりやや後方に位置し、ダンパギヤ139と第二のラック132との間の第二のかみあい部141は、第二のラック132の後端近傍にある。第二のかみあい部141は第一のかみあい部140の距離S後方にあって、第二のラック132の後端近傍にある。第二のかみあい部141はまた、筐体33ないし引出し台55の前後方向中央よりもやや後方に位置する。
引出し21を前方に移動すると図29(b)に示す開閉途中状態となる。第一のラック131は引出し21とともに前方に移動するので、第一のギヤ137、アイドラ138、ダンパギヤ139が回転し、スライダ134は引出し21の移動量の1/2だけ前方に移動する。
さらに引出し21を前方に移動して図29(c)に示す全開状態に至ると、引出し台55の後端は筐体33の前面開口20よりも前方に移動して、引出し21に載置されたチップラック7が前面開口20よりも前方に移動するので、空のチップラック7の取り出しや消耗品を載置したチップラック7の装填が容易である。ここで、第一のかみあい部140と第二のかみあい部141は前後方向に距離S離れているので、全開した際に引出し台55の後端が筐体33の前面開口20よりも前方に距離Sより小なる範囲で移動した状態であっても、第一のギヤ137と第一のラック131の噛み合い、第二のギヤ138と第二のラック132の噛み合いをともに維持できる構成である。すなわち、引出し21の全閉状態から全開状態に至るまで、引出し21を前後方向に移動するとダンパギヤ139が回転して粘性抵抗トルクを生じて、引出し21の開閉動作に抵抗を付加することができるので、引出し21の開閉速度を抑制して、全開時や全閉時の衝撃を低減できるので好適である。
次に、第五実施形態について図30と図31により説明する。図30はチップラック装填手段の開き動作を説明する概略平面図であって、(a)全閉状態、(b)開途中状態、(c)全開状態、を示し、図31は閉じ動作を説明する概略平面図であって、(d)全開状態、(e)閉途中状態、(f)全閉状態、を示す。
第五実施形態が第四実施形態と異なるところは、引出し21と底板31との間に第二の減速手段142を備え、引出し21と底板31との間に粘性抵抗力を付加する所謂ダンパ129と、前後に方向に移動する第三のラック143を設けたことである。第二の減速手段142を設けることによって、引出し21を開閉する際の速度を抑制し、全開時および全閉時の衝撃を低減できる、という効果がある。
以下、第二の減速手段142の構成の一例について説明する。図30と図31において、引出し21の一部をなす引出し台55には、底板31に近接する向きにダンパ129を固定し、ダンパ129に設けられた回転自在なダンパ軸130には、ダンパ軸130とともに回転自在な第四のギヤ144(以下、ダンパギヤと称することがある)が設けられる。第三のラック143は、筐体33および引出し台55に対して前後方向に摺動自在に支持されている。第三のラック143の後端は左右方向に拡幅してラック後端ストッパ145としている。筐体33には、第三のラック143が最も前方に移動した位置でラック後端ストッパ145に当接する、ストッパ部146が第三のラック143に隣接して設けられている。
第三のラック143のラック後端ストッパ145は、引出し台55の後端に設けられた空隙147を通して前後方向に移動可能であり、第三のラック143が最も後方に移動した際にはラック後端ストッパ145の後端は筐体33の後板32に当接し、第三のラック143が最も前方に移動した際にはラック後端ストッパ145の前端はストッパ部146に当接し、第三のラック143はその範囲で前後方向に摺動自在に支持されている。
第三のラック143が前後方向に移動すると、第三のラック143とかみあった第四のギヤ144が回転することでダンパ129が作用して、粘性抵抗力を生じる構成である。
次に、第二の減速手段142を備えた引出し21の開き動作について図30により説明する。図30(a)に示す全閉位置において、第三のラック143は最も後方に位置し、ラック後端ストッパ145は筐体33の後板32に当接している。引出し21を全閉位置から前方に移動すると、引出し台55とともにダンパ129は前方に移動し、第三のラック143はダンパ129による粘性抵抗力を受けるので、引出し21とともに前方に移動する。すなわち、第四のギヤ144は回転せず、引出し21を前方に移動する際に粘性抵抗力は作用しない。
さらに引出し21を前方に移動すると、図30(b)に示すように、例えば全閉位置と全開位置との中間近傍でラック後端ストッパ145が筐体33のストッパ部146に当接する。図30(b)の状態からさらに引出し21を前方に移動すると、第三のラック143はラック後端ストッパ145がストッパ部146に当接しているために前方に移動することはできない。一方、ダンパ129および第四のギヤ144は引出し台55とともに前方に移動するから、図30(c)に示す全開位置に至るまで第四のギヤ144は第三のラック143に沿って回転し、ダンパ129は粘性抵抗力を生じて引出し21の開き力に対して抵抗力を生じる。
すなわち、全閉位置から全開位置に至るまで引出し21を開くと、全閉位置からラック後端ストッパ145がストッパ部146に当接するまではダンパ129が作用しないが、ラック後端ストッパ145がストッパ部146に当接してから全開位置まではダンパ129による粘性減衰力が作用する構成であり、開き速度を低減して全開時の衝撃を低減する効果がある。
次に、第二の減速手段142を備えた引出し21の閉じ動作について図31により説明する。図31(d)に示す全開位置は図30(c)と同じ状態であって、引出し21は全開位置にあり、第三のラック143は最も前方に位置し、ラック後端ストッパ145は筐体33に設けられたストッパ部146に当接している。引出し21を全開位置から後方に移動すると、第三のラック143はダンパ129による粘性抵抗力を受けるので、引出し21とともに後方に移動する。すなわち、第四のギヤ144は回転せず、引出し21を後方に移動する際に粘性抵抗力は作用しない。
さらに引出し21を後方に移動すると、図31(e)に示すように、例えば全開位置と全閉位置との中間近傍でラック後端ストッパ145の後端が筐体33の後板32に当接する。図31(e)の状態からさらに引出し21を後方に移動すると、第三のラック143はラック後端ストッパ145が後板32に当接しているために後方に移動することはできない。一方、ダンパ129および第四のギヤ144は引出し台55とともに後方に移動するから、図31(f)に示す全閉位置に至るまで第四のギヤ144は第三のラック143に沿って回転し、ダンパ129は粘性抵抗力を生じて引出し21の閉じ力に対して抵抗力を生じる。
すなわち、全開位置から全閉位置に至るまで引出し21を閉じると、全開位置からラック後端ストッパ145が後板32に当接するまではダンパ129が作用しないが、ラック後端ストッパ145が後板32に当接してから全閉位置まではダンパ129による粘性減衰力が作用する構成であり、閉じ速度を低減して全閉時の衝撃を低減する効果がある。
すなわち、第二の減速手段142を備えた引出し21において、全開時、および全閉時にはダンパ129による粘性減衰力が作用しており、全開時および全閉時の衝撃を低減する効果がある。
先に説明したように、粘性抵抗は速度の増加とともに増加する傾向を備えるので、引き出しが高速で引き出されるほど大なる抵抗を生じ、引出し21の減速効果が大となって衝撃低減効果が大となるので好適である。
なお、ここでは、ダンパ129は粘性抵抗トルクを付加する形態について説明したが、粘性抵抗トルクに限定されるものではなく、摩擦抵抗トルクを生じる構成であってもよい。
<効果>
扉体34に設けられたハンドル50を手前に引くだけで、自動分析装置1の前面に設けられた前面開口20から引出し21を開き、チップラック7を載置可能なチップラック載置台24を自動分析装置1から引き出すことができる。チップラック載置台24に、消耗品を載置したチップラック7を載置した後に、引出し21を閉じることで、自動分析装置1内に消耗品を容易に供給できる。あるいはまた、消耗品が空になったチップラック7を取り出すことも容易にできるので、チップラック7の交換作業の容易な自動分析装置1を提供できる、という効果がある。
またさらに、引出し21を閉じた時にはロックツメ52とツメ受け部53は係合するので、引出し21を確実に所定の位置に閉止できる、という効果がある。
またさらに、扉体34ないし引出し21にインターロックをかけることができるので、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が動作していて、チップラック7を取り外せない期間には、引出し21の開き動作を禁止することができる、という効果がある。
引出し21を前後方向に移動して開閉する動作と連動して、チップラック7は上下方向にも移動するので、操作者は単に引出し21を前後方向に移動するだけでよく、チップラック7を上下動作するのに特段の操作は必要ではなく、またさらにチップラック7を上下方向に移動するための特段の移動機構も要さないので、構造が簡素であり、操作性の良好な自動分析装置を提供できる。
チップラック載置台24は、上面を水平としたまま平行移動する構成としたので、引出し21の開閉動作および位置決めの際にチップラック7の姿勢は安定しており、信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
チップラック載置台24は、引出し21が閉止位置において、引出し21の後方への閉じ動作と連動してチップラック7は上昇して、チップラック7上面に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器の上端が上面開口26から露出し、ないし上面開口26よりも高い位置まで上昇して位置決めされ、セットされる。したがって、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8がサンプル分注チップないし反応容器を、確実に把持して上方に搬送しやすく、信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
引出し21は前面開口20から出入りする構成なので、引出し21を操作してチップラック7を交換するには安全カバー4を閉じたままでもよく、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が動作していなければ、自動分析装置1は動作中であってもよいので、自動分析装置1の分析スループットを上げることができる、という効果がある。
引出し21を閉止する際に、チップラック載置台24は引出し21と一体として動作して閉じるのではなく、前後方向にも、上下方向にも、徐々に減速しつつスムーズに停止する特性としたので、引出し21を閉止する際に、チップラック7に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器とが衝撃で振動したり、飛び出したりすることがなく、信頼性の高い操作性の良好な自動分析装置を提供できる。
引出し21を閉止してチップラック7を位置決めした際には、チップラック7はチップラック載置台24から離反して、位置決め駆動手段45により駆動される、位置決めばね47の押圧部100と、筐体33に固定された位置決め部材43との間にばね力で挟持されて高さ方向を位置決めされる構成とした。そのため、チップラック7は高精度に位置決めされるとともに、引出し21からの振動などの影響を受けないので、信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
チップラック7を所定の高さに位置決めすることにより、チップラック7は位置決め対向ベアリング36を介して、前後左右方向に所定の位置に精度良く位置決めされる構成としたので、引出し21を閉止すれば、チップラック7は上下、前後、左右に精度良く位置決めされる構成であり、サンプル分注チップ/反応容器搬送手段8が、チップラック7の上面に載置された複数のサンプル分注チップと反応容器を確実に把持して上方に搬送しやすく、信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
チップラック位置決め手段118は、チップラック載置台24に2式のチップラック7を前後方向に縦列に配置した場合でも、前後方向に延伸して設けられた位置決め駆動軸46によって連動して駆動されるので、カムやリンクを備えた位置決め駆動手段45は一式でよく、簡素な構成で信頼性の高い自動分析装置を提供できる、という効果がある。
また、位置決め駆動手段45は筐体33の後面近傍に設けられるので、使用者が誤って手を触れることがないので、安全性が高い、という効果がある。
チップラック位置決め手段118は、チップラック7が位置決め部材43に近接するまで上昇してから後、引出し21が閉止するまでの間に、円筒カム106の螺旋溝107に回転カム108に設けられたカムピン110が嵌合する。しかる後に回転カム108が回転して、位置決めばね47の押圧部100がチップラック7のフランジ部25の下面から当接するよう、位置決め駆動軸46を回動するように構成したので、チップラック位置決め手段118はチップラック7の上昇動作とタイミングを合わせて駆動するので、動作が確実であり、信頼性の高い自動分析装置を提供できる。
チップラック7を下方から位置決め部材43に当接してチップラック7を位置決めする、チップラック押圧手段119を備えたので、所定の位置に固定された位置決め対向ベアリング36に対して精度よく位置決めが可能であり、さらに、チップラック載置台24からチップラック7に振動が伝達されたり、チップラック7に外力が伝達されることはなく、安定して高精度にチップラック7を位置決めすることができる、信頼性の高い自動分析装置を提供できる。
減速手段128ないし第二の減速手段142を備えた引出し21において、全開時、および全閉時にはダンパ129による粘性減衰力が作用して、引出し21の開閉速度を抑制して、全開時や全閉時の衝撃を低減できる、という効果がある。
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。