1.積層体の構造
図1を参照して、本発明の積層体の一実施形態である積層体1について説明する。
積層体1は、樹脂シート2と、繊維強化樹脂層3と、発泡層4とを備えており、それらが順に積層されている。
樹脂シート2は、フィルム形状(平板形状)を有する。具体的には、樹脂シート2は、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有する。
樹脂シート2の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上、例えば、10mm以下、好ましくは、5mm以下である。
繊維強化樹脂層3は、樹脂シート2の厚み方向の一方面(表面)に積層される。繊維強化樹脂層3は、樹脂シート2と直接接触しており、樹脂シート2に接着されている。また、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3との間には、接着剤層などの他の層が介在していない。
繊維強化樹脂層3の厚みは、例えば、300μm以上、好ましくは、500μm以上、例えば、10mm以下、好ましくは、8mm以下である。
発泡層4は、繊維強化樹脂層3の厚み方向の一方面(表面)に積層され、繊維強化樹脂層3に対して樹脂シート2の反対側に位置する。発泡層4は、繊維強化樹脂層3に接着剤などを介して接着されてもよく、繊維強化樹脂層3に直接接着されてもよい。発泡層4は、好ましくは、繊維強化樹脂層3に直接接着される。
発泡層4の厚みは、例えば、100μm以上、好ましくは、300μm以上、例えば、100mm以下、好ましくは、50mm以下である。
2.樹脂シートの詳細
樹脂シート2は、樹脂材料から形成される。樹脂シート2の材料として、例えば、ポリエスエル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)など)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、酢酸セルロースなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂を含む。
樹脂シート2の材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
樹脂シート2の材料のなかでは、好ましくは、ポリカーボネート樹脂および(メタ)アクリル樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、ポリカーボネート樹脂およびポリメタクリル酸メチル樹脂が挙げられる。つまり、樹脂シート2の材料は、好ましくは、ポリカーボネート樹脂またはポリメタクリル酸メチル樹脂を含む。
樹脂シート2の材料がポリカーボネート樹脂または(メタ)アクリル樹脂を含むと、積層体1の変形を確実に抑制することができる。
また、樹脂シート2の材料の融点は、好ましくは、40℃以上170℃以下である。
3.繊維強化樹脂層の詳細
繊維強化樹脂層3は、繊維を樹脂中に入れて強化したプラスチック(繊維強化プラスチック)である。繊維強化樹脂層3は、繊維および樹脂を含有し、好ましくは、有機金属触媒および反応遅延剤をさらに含有する。
繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維、セルロースナノファイバー、人工の蜘蛛の糸などが挙げられる。繊維は、単独使用または2種類以上併用することができる。
繊維として、好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が挙げられ、さらに好ましくは、炭素繊維が挙げられる。
炭素繊維として、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが挙げられる。炭素繊維は、単独使用または2種類以上併用することができる。炭素繊維として、好ましくは、PAN系炭素繊維が挙げられる。
繊維束の形態として、例えば、ラージトウ、レギュラートウなどが挙げられる。また、繊維の形態として、例えば、紐状、織物状(平織物、一軸織物、多軸織物、ノンクリンプ織物など)、不織布状などが挙げられ、好ましくは、織物状が挙げられる。また、織物状の繊維を、複数枚(例えば、2~20枚)重ねて用いることもできる。
繊維強化樹脂層3において、繊維含有率は、体積基準で、例えば、20体積%以上、好ましくは、30体積%以上、例えば、80体積%以下、好ましくは、70体積%以下である。
樹脂は、繊維に含浸されている。樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応物(ポリウレタン樹脂)を含み、好ましくは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応物(ポリウレタン樹脂)からなる。
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(以下、p-MDIとする。)を含有する。
p-MDIは、公知の方法で製造され、具体的には、例えば、アニリンとホルマリンとの縮合反応により得られるポリメリックメチレンジアニリンを、ホスゲン化することによって製造される。なお、p-MDIは、一般に、ポリメリックMDI、クルードMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどとも表記される。
p-MDIは、通常、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノマー、以下、MDIとする。)と、MDIの縮合体とを含む。
MDIとして、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
p-MDIにおけるMDIの含有割合は、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下である。
p-MDIにおけるMDIの含有割合が上記下限以上であれば、樹脂シートと繊維強化樹脂層との密着性の向上を図ることができる。p-MDIにおけるMDIの含有割合が上記上限以下であれば、積層体の変形を抑制することができる。
MDIの縮合体として、例えば、MDIのオリゴマー、MDIのポリマーなどが挙げられる。
p-MDIにおけるMDIの縮合体の含有割合は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
さらに、p-MDIは、好ましくは、MDIおよび/またはMDIの縮合体のカルボジイミド誘導体(MDIのカルボジイミド誘導体、および/または、MDIの縮合体のカルボジイミド誘導体)を含む。つまり、p-MDIは、MDIおよびMDIの縮合体からなってもよく、MDI、MDIの縮合体およびそれらのカルボジイミド誘導体からなってもよい。
MDIおよび/またはMDIの縮合体のカルボジイミド誘導体は、例えば、上記したMDIおよび/またはMDIの縮合体を、公知の方法で脱炭酸縮合させることにより製造される。
p-MDIにおけるカルボジイミド誘導体の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
このようなp-MDIのイソシアネート基含有率(イソシアネート基濃度)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。なお、イソシアネート基含有率は、電位差滴定装置を用いて、JIS K-1603(2007年)に準拠したn-ブチルアミン法により測定できる(以下同様)。
また、p-MDIがカルボジイミド誘導体を含有する場合、p-MDIのカルボジイミド基含有率は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、25質量%以下である。なお、カルボジイミド基含有率は、13C-NMRにより測定できる。
p-MDIの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、90質量%以下である。
また、ポリイソシアネート成分は、任意成分として、脂環族ポリイソシアネートをさらに含有することができる。つまり、ポリイソシアネート成分は、p-MDIのみからなってもよく、p-MDIおよび脂環族ポリイソシアネートからなってもよい。
なお、ポリイソシアネート成分が任意成分(例えば、脂環族ポリイソシアネート)を含有する場合、p-MDIの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、94質量%以下である。
p-MDIの含有割合が上記の範囲であれば、樹脂シートと繊維強化樹脂層との密着性の向上を確実に図ることができながら、積層体の変形を確実に抑制できる。
脂環族ジイソシアネートとして、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,3-または1,4-シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(H6XDI)、2,5-または2,6-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンもしくはその混合物(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、NBDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)などが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
脂環族ポリイソシアネートのなかでは、好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、イソホロンジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
脂環族ポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、6質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下である。
また、ポリイソシアネート成分において、p-MDIおよび脂環族ポリイソシアネートの総量に対する、脂環族ポリイソシアネートの割合は、例えば、5mol%以上、好ましくは、10mol%以上、例えば、80mol%以下、好ましくは、70mol%以下、さらに好ましくは、50mol%以下である。
脂環族ポリイソシアネートの割合が上記下限以上であれば、後述するポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を確実に図ることができる。脂環族ポリイソシアネートの含有割合が上記上限以下であれば、後述するポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を確実に図ることができる。
このようなポリイソシアネート成分におけるMDIの含有割合は、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、65質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下である。
また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
また、ポリオール成分の水酸基の総和に対する、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の総和の割合(イソシアネートインデックス、(NCO/OH)×100)は、例えば、75以上、好ましくは、90以上、より好ましくは、100以上、例えば、400以下、好ましくは、300以下、より好ましくは、250以下である。
ポリオール成分として、例えば、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールが挙げられる。ポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500以上10000以下の化合物であって、例えば、国際公開第2017/014178号の[0052]段落~[0067]段落に記載の高分子量ポリオールなどが挙げられる。高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上500未満、好ましくは、400以下の化合物であって、例えば、国際公開第2017/014178号の[0068]段落~[0070]段落に記載の低分子量ポリオールなどが挙げられる。低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオール成分のなかでは、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールが挙げられる。つまり、ポリオール成分は、好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールを含み、より好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールからなる。
具体的には、低分子量ポリエーテルポリオールとして、ポリオキシアルキレン(炭素数(C)2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。低分子量ポリエーテルポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールは、アルキレンオキサイドの炭素数が2~3のポリオキシアルキレンポリオールであって、例えば、上記の低分子量ポリオールや公知の低分子量アミンを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)などが挙げられる。
具体的には、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールとして、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのランダムおよび/またはブロック共重合体などが挙げられる。なお、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールの官能基数は、開始剤の官能基数に応じて決定される。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとして、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に後述する2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
このような低分子量ポリエーテルポリオールのなかでは、好ましくは、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールが挙げられる。
低分子量ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、例えば、60以上、好ましくは、100以上、例えば、500未満、好ましくは、400以下である。
また、ポリオール成分の平均官能基数は、例えば、2.0以上、例えば、5.0以下、好ましくは、4.0以下である。ポリオール成分の平均水酸基価は、例えば、300mgKOH/g以上、好ましくは、350mgKOH/g以上、例えば、1200mgKOH/g以下、好ましくは、1000mgKOH/g以下である。なお、ポリオール成分の平均官能基数は、仕込み成分から算出することができ、また、平均水酸基価は、公知の滴定法から求めることができる。
有機金属触媒は、公知のウレタン化触媒であって、例えば、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機ニッケル化合物、有機銅化合物、有機ビスマス化合物、カリウム塩などが挙げられる。有機金属触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
有機錫化合物として、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、モノブチル錫トリオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどが挙げられる。
有機鉛化合物として、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などが挙げられる。有機ニッケル化合物として、例えば、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。有機コバルト化合物として、例えば、ナフテン酸コバルトなどが挙げられる。有機銅化合物として、例えば、オクテン酸銅などが挙げられる。有機ビスマス化合物として、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどが挙げられる。
カリウム塩として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどが挙げられる。
このような有機金属触媒のなかでは、好ましくは、有機錫化合物およびカリウム塩が挙げられ、さらに好ましくは、有機錫化合物およびカリウム塩の併用が挙げられ、とりわけ好ましくは、モノブチル錫トリオクテートおよびオクチル酸カリウムの併用が挙げられる。
有機錫化合物およびカリウム塩が併用される場合、カリウム塩の含有割合は、有機錫化合物1質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
有機金属触媒(有効成分量100%換算)の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、さらに好ましくは、0.1質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
反応遅延剤は、下記一般式(1)に示される複素環化合物である。
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環または芳香族環を示す。R1は、環Aを構成する炭素数1の炭化水素基を示す。R2は、環Aに結合する炭素数1の脂肪族炭化水素基を示す。R3は、環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示す。R4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示す。mは、1または2であり、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。)
一般式(1)において、R1は、環Aを構成する炭素数1の炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基(-CH2-)またはメチン基(-CH=)を示す。また、一般式(1)中において、mは、1または2である。
そのため、一般式(1)において、Aは、mが1である場合、5員複素脂肪族環(ピロリジン環)または5員複素芳香族環(ピロール環)であり、mが2である場合、6員複素脂肪族環(ピペリジン環)または6員複素芳香族環(ピリジン環)である。
一般式(1)において、R2は、環Aに結合する炭素数1の脂肪族炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基(-CH2-)を示す。一般式(1)において、R2は、R1に結合しており、R2の結合箇所は、環Aのα位(2位)またはβ位(3位)である。また、一般式(1)において、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。
そのため、一般式(1)において、カルボキシル基(-COOH)は、nが1である場合、環Aのα位の炭素原子(R1)に結合するメチレン基(R2)を介して、環Aに結合し、nが0である場合、環Aのα位またはβ位の炭素原子(R1)に直接結合する。
一般式(1)において、R3は、環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示す。一般式(1)において、R3として示されるアルキル基は、例えば、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)が挙げられる。一般式(1)において、R3は、好ましくは、水素原子である。
一般式(1)において、R4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
上記一般式(1)に示される反応遅延剤として、具体的には、下記一般式(2)に示される反応遅延剤、ニコチン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、プロリンなどが挙げられる。このような一般式(1)に示される反応遅延剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような一般式(1)に示される反応遅延剤のなかでは、好ましくは、下記一般式(2)に示される反応遅延剤が挙げられる。
(一般式(2)中、A、R2、R3およびnは、上記一般式(1)A、R2、R3およびnと同意義を示す。)
上記一般式(2)に示される反応遅延剤として、具体的には、ピコリン酸(一般式(2)において、A:芳香族環、R3:水素原子、n=0)、2-ピリジニル酢酸(一般式(2)において、A:芳香族環、R3:水素原子、n=1)、2-ピペリジンカルボン酸(一般式(2)において、A:脂肪族環、R3:水素原子、n=1)などが挙げられる。このような上記一般式(2)に示される反応遅延剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような一般式(2)に示される反応遅延剤のなかでは、好ましくは、ピコリン酸が挙げられる。つまり、反応遅延剤は、好ましくは、ピコリン酸を含み、より好ましくは、ピコリン酸からなる。
有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比は、例えば、0.20以上、好ましくは、0.45以上、さらに好ましくは、0.80以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.6以下、さらに好ましくは、2.0以下である。
反応遅延剤のmol比が上記範囲であれば、樹脂シートと繊維強化樹脂層との密着性を安定して確保することができながら、積層体の変形をより確実に抑制できる。また、反応遅延剤のmol比が上記下限以上であれば、後述するポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。反応遅延剤のmol比が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を図ることができる。
また、反応遅延剤の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.20質量部以上、例えば、2.0質量部以下、好ましくは、1.5質量部以下、さらに好ましくは、1.1質量部以下、とりわけ好ましくは、0.8質量部以下である。
また、繊維強化樹脂層3は、任意成分として、さらに、公知の添加剤を、適宜の割合で含有することができる。
公知の添加剤として、例えば、国際公開第2017/014178号の[0090]段落~[0138]段落および[0142]段落に記載の添加剤が挙げられ、具体的には、安定剤、離型剤、フィラー、衝撃吸収性微粒子、加水分解防止剤、脱水剤、難燃剤、消泡剤、顔料、染料、滑剤、可塑剤、ブロッキング剤などが挙げられる。
4.発泡層の詳細
発泡層4は、公知の発泡体を含み、好ましくは、発泡体からなる。
発泡体として、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリオレフィン発泡体、ポリエステル発泡体、ポリイミド発泡体、カーボン発泡体、シリコーン発泡体、SBR発泡体、EVA発泡体などが挙げられ、好ましくは、ポリウレタン発泡体が挙げられる。
このような発泡層4は、上記した発泡体に対応する樹脂原料と、公知の発泡剤(例えば、化学発泡剤、物理発泡剤など)とを含有する発泡組成物を、公知の発泡方法により発泡させることにより調製される。
5.積層体の製造方法
次に、図2A~図2Cを参照して、本発明の積層体の製造方法の一実施形態について説明する。
積層体1の製造方法として、例えば、RTM(Resin Transfer Molding)法、HP-RTM(High-Pressure Resin Transfer Molding)法、WCM(Wet Compression Molding)法、RIM(Reaction Injection Molding)法などが挙げられ、好ましくは、RTM法、HP-RTM法およびWCM法が挙げられ、さらに好ましくは、HP-RTM法およびWCM法が挙げられる。
HP-RTM法およびWCM法は、後述する金型内にポリウレタン樹脂組成物を注入する工程を除いて、RTM法と同様である。
そこで、以下において、積層体1がRTM法により製造される態様を主に説明し、HP-RTM法およびWCM法については、RTM法と異なる部分のみ説明する。
積層体1の製造方法は、具体的には、金型10内に樹脂シート2と繊維層3Aとを配置する工程(図2A参照)と、金型10内の繊維層3Aにポリウレタン樹脂組成物を供給する工程(図2B参照)と、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる工程(図2B参照)と、発泡層4を形成する工程(図2C参照)とを含む。
このような積層体の製造方法では、図2Aに示すように、まず、金型10を準備する。
金型10は、第1金型5と、第2金型6とを備える。
第1金型5と第2金型6とは、互いに組み合わせ可能である(図2B参照)。金型10は、第1金型5および2金型6が組み合わされた状態において、樹脂シート2および繊維強化樹脂層3の成形形状に対応する内部空間を有する。
第1金型5は、一方に向かって開放される断面凹形状を有する凹部5Aを備える。
第2金型6は、凹部5Aに挿入可能な凸部6Aを備える。また、第2金型6は、後述するポリウレタン樹脂組成物を金型10の内部空間に注入するための注入口6Bを有する。
次いで、上記した樹脂シート2および繊維層3Aを準備し、樹脂シート2および繊維層3Aを金型10内に配置する。
繊維層3Aは、上記した繊維からなり、層状(マット状)を有している。繊維層3Aは、樹脂を含有しない。繊維層3Aは、樹脂シート2の厚み方向の一方面に積層されている。
そして、第1金型5の凹部5Aを開放した状態において、繊維層3Aが樹脂シート2に対して第1金型5の反対側に位置するように、凹部5A内に繊維層3Aが積層された樹脂シート2を配置する。
なお、樹脂シート2を凹部5A内に配置した後、その樹脂シート2の厚み方向の一方面に繊維層3Aを配置してもよい。
これによって、樹脂シート2および繊維層3Aが金型10内に配置される。
その後、RTM法およびHP-RTM法では、図2Bに示すように、第2金型6の凸部6Aを凹部5Aに挿入して、第1金型5および第2金型6を組み合わせる。
そして、必要に応じて、金型10を予備加熱する。
金型10の予備加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、例えば、130℃以下、好ましくは、100℃以下、さらに好ましくは、90℃以下である。
次いで、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含有するポリウレタン樹脂組成物を、繊維層3Aに含浸させるように、金型10内の繊維層3Aに供給する。
ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、上記したポリイソシアネート成分を含むA剤と、上記したポリオール成分を含むB剤とを混合することにより調製される。なお、有機金属触媒、反応遅延剤および公知の添加剤のそれぞれは、A剤およびB剤のいずれに含有されてもよいが、好ましくは、B剤に含有される。
また、上記したポリイソシアネート成分を含むA剤、および/または、上記したポリオール成分を含むB剤は、好ましくは、加温して低粘度化させてから混合される。
それらの加温温度は、例えば、25℃以上、好ましくは、35℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
なお、ポリウレタン樹脂組成物は、A剤とB剤とを一度に混合して調製してもよく(ワンショット法)、A剤とB剤の一部とを混合し、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の一部とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを調製した後、イソシアネート基末端プレポリマーとB剤の残部とを混合して調製してもよい(プレポリマー法)。
その後、ポリウレタン樹脂組成物を、必要に応じて脱泡した後、RTM法およびHP-RTM法では、第2金型6の注入口6Bを介して、金型10内に注入する。
すると、ポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフが経過するまで金型10内を流動して、繊維層3Aの全体に均一に含浸される。これにより、ポリウレタン樹脂組成物は、樹脂シート2の表面と接触する。
また、ポリウレタン樹脂組成物を金型10内に注入する工程において、HP-RTM法では、金型10内を減圧して、加圧したポリウレタン樹脂組成物を高速で金型10内に注入する。これによって、ポリウレタン樹脂組成物が繊維層3Aに円滑に含浸される。
また、WCM法では、図示しないが、第2金型6を組み合わされる前の第1金型5を、上記した予備加熱温度に加熱した後、第1金型5内に樹脂シート2および繊維層3Aを配置し、その後、上記したポリウレタン樹脂組成物を繊維層3Aに直接滴下し、次いで、第2金型6を第1金型5に組み合わせて金型10を閉鎖し、所定時間加温・加重を実施する。これによって、ポリウレタン樹脂組成物が繊維層3Aに円滑に含浸される。
次いで、繊維層3Aに含浸したポリウレタン樹脂組成物を、所定の成形温度において、硬化させる。
成形温度は、例えば、25℃(室温)以上、好ましくは、35℃以上、例えば、130℃以下、好ましくは、100℃以下、さらに好ましくは、90℃以下である。また、成形時間は、例えば、10秒以上、好ましくは、20秒以上、例えば、5分以下、好ましくは、3分以下、さらに好ましくは、1分以下である。
すると、ポリウレタン樹脂組成物が、樹脂シート2上において、樹脂シート2の表面と接触した状態で硬化する。これによって、繊維強化樹脂層3が、樹脂シート2に直接接着されるとともに形成される。
以上によって、所望形状に成形された樹脂シート2および繊維強化樹脂層3が調製される。
その後、第2金型6を第1金型5から離脱させて、第1金型5の凹部5Aを開放する。
次いで、上記した発泡組成物を繊維強化樹脂層3の表面(樹脂シート2と反対側の表面)に配置する。
そして、図2Cに示すように、第3金型7を第1金型5に組み合わせて、第1金型5を閉鎖する。
第3金型7は、凹部5Aに挿入可能な凸部7Aを備える。第1金型5と第3金型7とが組み合わされた状態において、凹部5A内に配置される繊維強化樹脂層3と凸部7Aとの間には、発泡層4の厚みに対応する内部空間が形成される。
次いで、上記した発泡組成物を、公知の発泡方法により発泡させる。
以上によって、発泡層4が形成され、積層体1が製造される。
このような積層体1は、例えば、乗物(自動車、航空機、自動二輪車、自転車)の部材(例えば、構造部材、内装材、外装材、ホイール、スポークなど)として、好適に用いられる。
また、積層体1は、上記の他、例えば、ヘルメットの外殻材、ロボット部材、船舶部材、ヨット部材、ロケット部材、事務用いす、ヘルスケア部材(介護用義足、介護用いす、ベッド、アイウェアフレームなど)、ウェアラブル部材の構造材、スポーツ用品(ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレーム、スキー板、スノーボードなど)、アミューズメント部材(ジェットコースターなど)、ビル・住宅などの建築資材、製紙用ロール、電子部品(スマートフォン、タブレットなど)の筐体、発電装置(火力発電、水力発電、風力発電、原子力発電)の構造体、タンクローリーなどの構造体などとして、好適に用いられる。
6.作用効果
積層体1では、繊維強化樹脂層3が含有する樹脂が、p-MDIを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応物を含んでおり、p-MDIにおけるMDIの含有割合が、上記の範囲である。
そのため、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3とが直接積層される構成において、積層体1の変形を抑制できながら、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3との密着力の向上を図ることができる。
また、繊維強化樹脂層3は、好ましくは、有機金属触媒と、上記一般式(1)に示す反応遅延剤とを含有する。そして、有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比が上記の範囲である。
そのため、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3との密着性を安定して確保することができながら、積層体1の変形をより確実に抑制できる。
また、反応遅延剤のmol比が上記下限以上であるので、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との初期の反応を抑制でき、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。そのため、ポリウレタン樹脂組成物を繊維層3Aに確実に含浸させることができる。
また、反応遅延剤のmol比が上記上限以下であるので、ポットライフの経過後(つまり、ポリウレタン樹脂組成物の流動性が低下し始めた後)において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応を円滑に進行させることができ、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を図ることができる。
そのため、ポットライフと硬化時間とをバランスよく確保でき、積層体を効率よく製造することができる。
また、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートを含み、ポリフェニルメタンポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートの総量に対する、脂環族ポリイソシアネートの割合が、上記の範囲である。
そのため、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を確実に図ることができながら、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を確実に図ることができる。
また、樹脂シート2の材料は、好ましくは、ポリカーボネート樹脂または(メタ)アクリル樹脂を含有する。そのため、積層体1の変形を確実に抑制できる。
図2A~図2Cに示すように、積層体1の製造方法では、金型10内に樹脂シート2および繊維層3Aを配置した後、上記のポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含有するポリウレタン樹脂組成物を、繊維層3Aに含浸させるように金型10内に供給し、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる。
そのため、樹脂シート2上においてポリウレタン樹脂組成物を硬化させても、積層体1が変形することを抑制でき、ポリウレタン樹脂組成物の硬化後において、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3との密着力の向上を図ることができる。
その結果、変形が抑制され、かつ、樹脂シート2と繊維強化樹脂層3との密着性が向上した積層体1を円滑に製造することができる。
7.変形例
上記の実施形態では、積層体1は、発泡層4を備えるが、積層体1の構造はこれに限定されない。積層体1は、発泡層4を備えず、樹脂シート2および繊維強化樹脂層3から構成されていてもよい。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
<原料の準備>
<<ポリイソシアネート成分の準備>>
準備例1(イソシアネート(1))
コスモネートM-200(三井化学社製、MDIおよびMDIの縮合体の混合物、MDI含有量=20.4質量%、イソシアネート基含有率=31.2質量%)を、イソシアネート(1)として準備した。
準備例2(イソシアネート(2))
コスモネートLK(三井化学社製、MDIおよびMDIのカルボジイミド誘導体の混合物、MDI含有量=70.3質量%、イソシアネート基含有率=28.3質量%、カルボジイミド基含有率=30質量%)を、イソシアネート(2)として準備した。
準備例3(イソシアネート(3))
コスモネートPH(三井化学社製、MDI、MDI含有量=100質量%)を、イソシアネート(3)として準備した。
準備例4(イソシアネート(4))
国際公開第2009/051114号公報の製造例3に記載の方法で得られた1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、イソシアネート(4)として準備した。
イソシアネート(4)のイソシアネート基含有率は43.3質量%であった。
<<ポリオール成分の準備>>
準備例5(ポリオール(1))
アクトコールDiol-280(三井化学社製、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量=281、水酸基価400mgKOH/g、平均官能基数=2、25℃、粘度=63mPa・s)を、ポリオール(1)として準備した。
<<有機金属触媒の準備>>
準備例6(有機金属触媒(1))
SCAT-24(日東化成社製、モノブチル錫トリオクテート、分子量=605.43、錫含有量=1.65mmol/g)を、有機金属触媒(1)として準備した。
準備例7(有機金属触媒(2))
K-13(東栄化工社製、オクチル酸カリウム、カリウム含有量=3.3mmol/g)を、有機金属触媒(2)として準備した。
<<反応遅延剤の準備>>
準備例8(反応遅延剤(1))
ピコリン酸を、反応遅延剤(1)として準備した。
準備例9(反応遅延剤(2))
ニコチン酸を、反応遅延剤(2)として準備した。
準備例10(反応遅延剤(3))
2,6-ピリジンジカルボン酸を、反応遅延剤(3)として準備した。
準備例11(反応遅延剤(4))
2-ピリジニル酢酸を、反応遅延剤(4)として準備した。
準備例12(反応遅延剤(5))
2-ピペリジンカルボン酸を、反応遅延剤(5)として準備した。
準備例13(反応遅延剤(6))
プロリンを、反応遅延剤(6)として準備した。
<<エポキシ成分の準備>>
準備例14(エポキシ樹脂)
EP807(ジャパンエポキシレジン社製)100質量部と、ジェファーミンT-403(三井化学ファイン社製)45質量部とを混合して、エポキシ成分を準備した。
<<樹脂シートの準備>>
準備例15(PC)
ユーピロン(ポリカーボネートフィルム、三菱ガス化学社製、厚み100μm)を準備した。表1~4では、PCとして示す。
準備例16(PMMA)
PARAPURE(ポリメタクリル酸メチル樹脂フィルム、クラレ社製、厚み100μm)を準備した。表1~4では、PMMAとして示す。
準備例17(PVC)
アキレス タイプC(ポリ塩化ビニルフィルム、アキレス社製、厚み100μm)を準備した。表1~4では、PVCとして示す。
<積層体の製造>
実施例1~21および比較例1~3
以下の方法により、樹脂シートおよび繊維強化樹脂層からなる積層体を調製した。
金型内に、表1~4に示す樹脂シートと、樹脂シートの表面に積層される炭素繊維織物(SGL社製)とを配置した。
また、表1~4に示した成分(原料)中、ポリイソシアネート成分以外の各成分を秤量し、それらを、表1~4の配合処方に従って配合し、均一になるように攪拌混合することにより、B剤を調製した。なお、B剤の温度を40℃に調整した。
別途用意したポリイソシアネート成分を、表1~4の配合処方に従って秤量し、それらを均一になるように攪拌混合することにより、A剤を調製した。なお、A剤の温度を40℃に調整した。
その後、B剤にA剤を加えて、それらを真空減圧により脱気しながら高速撹拌機(回転数5000rpm)によって5秒間攪拌して、ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
そして、樹脂シートおよび炭素繊維織物が配置された金型を表1~4に示す成形温度に予熱した後、ポリウレタン樹脂組成物を金型内に手早く注入し、表1~4に示す成形温度および成形時間において硬化させた。
以上によって、積層体を製造した。積層体は、平面視矩形状を有し、積層体の縦方向の寸法は、600mm、積層体の横方向の寸法は、600mmであった。積層体において、繊維強化樹脂層の厚みは、2mmであった。
<評価>
<<密着力>>
各実施例および各比較例の積層体における樹脂シート面において、JIS K5600-5-6に準拠して、碁盤目剥離試験を実施した。そして、各実施例および各比較例の積層体における樹脂シートと繊維強化樹脂層との密着力を下記の基準で評価した。その結果を表1~4に示す。
○:JIS K5600-5-6評価法で分類0(剥離なし)、
△:JIS K5600-5-6評価法で分類1~2、
×:JIS K5600-5-6評価法で分類3以下。
<<変形(反り)>>
各実施例および各比較例の積層体を、樹脂シート面が上になるように、水平面に配置し、積層体の中心部を基準点0として、積層体の四隅の浮き高さ(水平面と各角部との鉛直方向の間の間隔)を測定し、それらの平均値を算出した。そして、各実施例および各比較例の積層体の変形(反り)を、下記の基準で評価した。その結果を表1~4に示す。
○: 積層体の四隅の浮き高さの平均値が0~5mm、
△: 積層体の四隅の浮き高さの平均値が6~10mm、
×: 積層体の四隅の浮き高さの平均値が10mm以上。
<<即硬化性>>
各実施例および各比較例における積層体(各成型条件下)において、樹脂成分のレオメーター粘度測定値が、上限飽和値に対してどの程度進行しているかを確認した。そして、各実施例および各比較例の繊維強化樹脂層の即硬化性を、下記の基準で評価した。その結果を表1~4に示す。
○: 上限飽和値の95%以上、
△: 上限飽和値の80%以上95%未満、
×: 上限飽和値の80%未満。
<<含浸性>>
各実施例および各比較例の積層体の外観における繊維強化樹脂層からの繊維の露出を目視により確認した。また、各実施例および各比較例の積層体において、繊維強化樹脂層を面方向に切断した切断面(60cm角)を、マイクロスコープ観察して、ボイドの有無を確認した。そして、各実施例および各比較例の繊維強化樹脂層の即硬化性を、下記の基準で評価した。その結果を表1~4に示す。
○:外観上繊維の露出はなく、マイクロスコープ観察において30μm以上のボイドがない、
△:外観上繊維の露出はないが、マイクロスコープ観察において30μm以上100μm未満のボイドがみられる、
×:外観上繊維の露出がある、もしくは、マイクロスコープ観察において100μm以上のボイドがみられる。